説明

スクイズロールスタンド

【課題】 スクイズロールのロール替えが容易で、装置構造も簡単なスクイズロールスタンドを提供する。
【解決手段】 電縫管製造ラインの接合位置に設置され、左右の上ロールを除くスクイズロールが脱着可能に組み込まれた固定部10と、固定部10上に重ねられ、内部に左右の上ロールが脱着可能に組み込まれると共に、固定部10上の組み立て位置から、当該固定部10上を開放する退避位置へ背面側(ライン下流側)を支点として同側へ傾動する可動部20との組合せによりスクイズロールスタンドを構成する。可動部20は、シリンダー式のアクチュエータ24を駆動機構40として、組み立て位置と退避位置との間を往復駆動される。退避位置では、可動部20は固定部10の背面側(ライン下流側)に配置されたビード切削装置50上に正面を上にして仰向けに重ねられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫管製造ラインの接合位置に配置されるスクイズロールスタンドに関し、より詳しくは、スクイズロールのロール替え作業が容易なスクイズロールスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
電縫管製造ラインでは、スケルプと呼ばれる帯状の材料を円筒状に徐々に成形し、突き合わせエッジ部を加熱すると共にその加熱された突き合わせエッジ部をスクイズロールで押圧することにより連続的に溶接接合して、製品である断面円形の電縫管を連続的に製造する。このような電縫管製造ラインでは、サイズが異なる様々な種類の製品を製造するのが通例であり、このために、成形ロールのサイズを変更するロール替えが頻繁に行われる。
【0003】
このロール替えについては、電縫管製造ラインの接合位置に設置されるスクイズロールスタンドにおいても例外ではなく、製造する製品のサイズに応じてスクイズロールの交換が行われる。その手法は次のとおりである。スクイズロールスタンドにおけるスクイズロールとしては、対向エッジ部を上にして侵入するオープンパイプを下から支持する下ロール、そのオープンパイプを両側から押圧する左右一対のサイドロール、対向エッジ部の近傍を斜め上方から押圧する左右一対の上ロールがあり、ロール替えではこれらのロール全てが新たな製品サイズに対応したものに交換されるが、下ロール及び左右のサイドロールを交換する際に上ロールが障害になる。このためスクイズロールのロール替えでは、下ロール及び左右のサイドロール替えに先立って上ロールを取り外す必要がある。
【0004】
しかしながら、上ロールの取り外しは、従来は上ロールアッセンブリをクレーンで吊り上げて下のスタンド本体から分離することにより行われており、スタンド本体から分離された上ロールアッセンブリはオフラインに運ばれ、ここで上ロールの交換が行われた後、上ロールアッセンブリ全体が元に戻される。上ロールアッセンブリが取り外されている間にスタンド本体内のサイドロール及び下ロールの交換が行われる。
【0005】
スクイズロールスタンドにおけるロール替え作業は、上述のように大掛かりで手数がかかるために、様々な改善策が特許文献1〜3により提示されているが、基本的には上ロールアッセンブリの吊り上げ作業による分離であるために、期待するほどの効果が得られていないのが現状である。すなわち、上ロールアッセンブリの吊り上げ作業による分離の場合は、その作業自体が大掛かりで手数がかかる上に、上ロールアッセンブリに外部から接続された配線、配管を作業の都度、取り外し、作業後に復旧させるため、多大な時間を要するなど問題が多く、生産性を著しく低下させていたのである。
【0006】
また、スクイズロールスタンドで溶接を終えて管になった材料は、通常はスクイズロールスタンドの下流側に連設されたビード切削装置で外面溶接ビードを除去される(特許文献4〜7参照)。すなわち、スクイズロールスタンドはライン下流側のビード切削装置と組み合わされているのが通例である。そのビード切削装置では、ライン上に支持された切削刃物の高さが製品サイズに応じて調整される。その高さ調整機構もまた切削刃物と共にライン上に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3053534号公報
【特許文献2】特許第4250848号公報
【特許文献3】特許第4461549号公報
【特許文献4】特開平10−58194公報
【特許文献5】特開2001−150189号公報
【特許文献6】特開2006−88215号公報
【特許文献7】実開平6−85715号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、スクイズロールのロール替えが容易で、装置構造も簡単なスクイズロールスタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のスクイズロールスタンドは、電縫管製造ラインの接合位置に設置され、左右の上ロールを除くスクイズロールが脱着可能に組み込まれた固定部と、該固定部上に重ねられ、内部に左右の上ロールが脱着可能に組み込まれると共に、固定部上の組み立て位置から、当該固定部上を開放する退避位置へ少なくとも一方向側を支点としてその側へ傾動する可動部と、該可動部を固定部上の組み立て位置に固定するロック機構と、前記可動部を組み立て位置と退避位置との間で往復駆動する駆動機構とを具備している。
【0010】
本発明のスクイズロールスタンドにおいては、スクイズロールのうち、上ロールを収容する上ロールアッセンブリとしての可動部が、他のスクイズロールを収容する固定部に対して連結されており、固定部上の組み立て位置から一方向側の退避位置へ傾動することにより固定部上を開放してロール替えが可能な状態とするので、上ロールアッセンブリをクレーンで吊り上げて分離除去する従来タイプと比べてロール替え操作が極めて容易である。
【0011】
可動部の傾動方向は特に問わない。電縫管製造ラインの上流側でもよいし下流側でもよく、ライン側方でもよい。ライン側方へ傾動させる場合はライン側方に可動部受け入れスペースが別途必要になるのに対し、電縫管製造ラインの上流側又は下流側の場合はライン上方の空間を可動部受け入れスペースとして活用できるので合理的である。特に電縫管製造ライン下流側はビード切削装置が存在するので、可動部をライン下流側へ傾動させるのが好ましい。こうすることにより、ライン下流側へ傾動した可動部を下流側のビード切削装置上に重ねることができ、この位置を退避位置とするならば、ビード切削装置の上方空間を有効活用でき、装置占有面積の増大を回避できる。また、ビード切削装置を可動部の退避位置における支持体として活用することができ、装置構成の簡略化が可能となる。
【0012】
ビード切削装置上を可動部の退避位置とするためには、可動部がライン下流側へ直角に傾動するように、ビード切削装置の高さを制限する必要がある。ビード切削装置の高さがこれより大きいと可動部の傾動角度が不足し、固定部上が完全に開放しない。ビード切削装置の高さを制限するためには、本来はビード切削装置における切削部の上方に配置される切削部の高さ調整機構及び支持ロールの高さ調整機構をライン側方又は下方に配置するのが合理的で好ましい。
【0013】
可動部を固定部上の組み立て位置に固定するロック機構については、可動部の下端部から正面側及び背面側に突出し、固定部上面の正面側の縁部(前縁部)及び背面側の縁部(後縁部)にそれぞれ係合する板状ストッパと、固定部上面の正面側の縁部及び背面側の縁部に取り付けられて板状ストッパ係合部を両側から固定する複数のクランプとの組合せが構造が簡単で好ましい。
【0014】
ここにおける板状ストッパは、可動部の支持部材を兼ねることができる。そうすることにより、構造の一層の簡略化を図ることができる。
【0015】
また、複数のクランプは左右均等に配置し、且つ当該スクイズロールスタンドにおける成形反力以上の荷重で前記板状ストッパを常時押し付ける構成が好ましい。この構成により、板状ストッパ係合部のガタつきを最小限に抑制することができ、高剛性なスクイズロールスタンドの製造が可能となる。
【0016】
固定部における左右のサイドロールについては、下方に配置された左右の駆動シャフトに対して左右の差し込み式カップリングを介して脱着可能に連結し、且つ左右の差し込み式カップリングを、ラインに直角な横方向に位置調節が可能な構成とするのがよい。左右のサイドローラを取り付ける際に、この構成によって左右の差し込み式カップリングを事前に位置調整しておくことにより、左右のサイドローラと左右の駆動シャフトとの連結を容易に行うことができる。
【0017】
ここにおける左右の駆動シャフトは、左右の差し込み式カップリングの横方向移動を許容するためにユニバーサルジョイントで構成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスクイズロールスタンドは、スクイズロールのうち上ロールを収容する上ロールアッセンブリとしての可動部が、他のスクイズロールを収容する固定部に対して傾動することにより固定部上を開放するので、スクイズロールのロール替えに際して可動部を固定部から分離する操作、分離後の可動部をクレーンで吊り上げてライン外へ搬出する操作、元のところに戻す操作、並びに可動部を固定部と再結合する操作が不要になるだけでなく、配線、配管の脱着作業も不要になり、ロール替え操作がすこぶる簡単となる。更には、固定部が決まった軌跡を描いて傾動するので、位置合わせ機構やガイド機構が極めて簡単となり、吊り上げクレーンが不要となることなどを考慮すると、装置構造の簡略化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示すスクイズロールスタンドの側面図である。
【図2】同スクイズロールスタンドの平面図である。
【図3】同スクイズロールスタンドの動作を示す側面図である。
【図4】同スクイズロールスタンドの動作を示す平面図である。
【図5】同スクイズロールスタンドの正面図である。
【図6】同スクイズロールスタンドの内部構造を示す正面図である。
【図7】同スクイズロールスタンドの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の一実施形態を説明する。
【0021】
本実施形態のスクイズロールスタンドは、図1〜図4に示すように、電縫管製造ラインの特に接合位置に設置されており、図示されない成形ローラ群を通過し対向エッジ部を上にして侵入するオープンパイプ60の対向エッジ部の接合を行う。このスクイズロールスタンドは、製造ラインの接合位置に設置された固定部10と、固定部10上に重ねられる傾動式の可動部20と、可動部20を固定部10上に固定するロック機構30と、可動部20を傾転駆動する駆動機構40とを備えており、当該スクイズロールスタンドのライン下流側に設置されたビード切削装置50と組み合わされている。
【0022】
スクイズロールスタンドの固定部10は、図5及び図6に示すように、架台11とその上に連設されたスタンド本体12とからなる。
【0023】
固定部10のスタンド本体12内には、スクイズロールとして、オープンパイプ60を下から支持する下ロール13と、そのオープンパイプ60を両側から押圧する左右のサイドロール14,14とが設けられている。下ロール13は、下方のブラケット13′により回転自在に支持された水平のフリーローラである。
【0024】
左右のサイドロール14,14は垂直ロールであり、支持側を外側に向けた片持ち式の支持体14′,14′により回転自在に支持されている。両側の支持体14′,14′は、それらの両側に設けられた油圧サーボ制御シリンダー15,15によりラインに直角な水平方向に駆動される。これにより、左右のサイドロール14,14は押し込み量を調整される。そして、両側の油圧サーボ制御シリンダー15,15のシリンダーケース15′,15′と脱着可能な前後のフレームパネル12′,12′とにより、スタンド本体12は構成されており、スタンド本体12の上面は、前後の縁部及び左右の縁部を除いて実質的に全面開放されている(図4参照)。
【0025】
固定部10の架台11内には、スタンド本体12内のサイドロール14,14の回転駆動を行う左右一対の第1モータ16,16が設置されている。また架台11の上には、スタンド本体12内の下ロール13を昇降駆動する第2モータ17が搭載されている。
【0026】
第1モータ16,16は、架台11内の両側端部に、出力軸を内側に向けて配置されている。各出力軸の回転は、それぞれの内側に配置されたギヤボックス16′,16′、スタンド本体12内に垂直に配置された左右一対の駆動シャフト16″,16″、及びそれらの上方に取り付けられた左右一対の差し込み式カップリング18,18を介して上方のサイドロール14,14にそれぞれ伝達されることにより、サイドロール14,14を同期的に回転駆動する。
【0027】
ここで、左右の差し込み式カップリング18,18は、駆動シャフト16″,16″の上端部に固着されており、サイドロール14,14の下端部から下方に突出する連結ピンが差し込まれることにより、サイドロール14,14を脱着可能に連結する。差し込み式カップリング18,18は、ラインに直角な水平方向のガイド18′,18′により横方向に移動自在に支持されており、モータ式ジャッキ18″,18″により横方向の任意位置に誘導される。駆動シャフト16″,16″は、差し込み式カップリング18,18の横方向移動、すなわちサイドロール14,14の押し込み量変化を許容するために、ユニバーサルジョイントにより構成されている。
【0028】
第2モータ17は、架台11の正面側(ライン上流側)の側縁部上に、出力軸を内側に向けて搭載されている。第2モータ17の出力軸は、架台11の正面側(ライン上流側)の中央部上に搭載された方向転換用のギャボックス17′、及びスタンド本体12内に配置されたジャッキ17″を介してその上のブラケット13′を昇降駆動することにより、下ロール13の高さ調整を行う。
【0029】
固定部10上の可動部20は、図5〜図7に示すように、正面からみて逆U字形をしたアーチ状のフレーム25と、フレーム25内に昇降可能に支持された左右一対の上ロール26,26とを備えている。アーチ状のフレーム25の内側は下方に開放している。上ロール26,26は下ロール13と同様のフリーローラからなり、対向エッジ部を上にして侵入するオープンパイプ60の両エッジ部を斜め上方から押圧するように内側へやや傾斜して配置されている。オープンパイプ60の両エッジ部を押圧するために、上ロール26,26はフレーム25内に昇降自在に設けられた可動ベース27内に取り付けられている。
【0030】
詳しく説明すると、可動ベース27はフレーム25の中央部に取り付けられた油圧サーボ制御シリンダー28により昇降駆動される。可動ベース27には左右一対の油圧サーボ制御シリンダー29,29が下向きに取り付けられると共に、その下方に位置して上ロール26,26を案内するガイド26′,26′が設けられている。油圧サーボ制御シリンダー29,29及びガイド26′,26′は、上ロール26,26の傾斜に対応して内側へやや傾斜している。そして、油圧サーボ制御シリンダー28による可動ベース27の昇降操作と、油圧サーボ制御シリンダー29,29による上ロール26,26の昇降操作とにより、上ロール26,26は高さを独立に調整される。
【0031】
可動部20は又、固定部10の背面側(ライン下流側)の上端部を中心として固定部10の背面側(ライン下流側)へ約90度回動するように構成されている。この回動のために、可動部20は、固定部10の背面側(ライン下流側)の上端部に固着された左右一対の第1ブラケット21,21と、第1ブラケット21,21により水平に支持された左右一対の回転軸22,22と、回動部20の背面側(ライン下流側)の下端部に固着された左右一対の第2ブラケット23,23とを有している。
【0032】
回動部20の背面側(ライン下流側)の下端部に固着された左右の第2ブラケット23,23は、左右の第1ブラケット21,21の各内側にそれぞれ配置されており、前記回転軸22,22とは固着されている。また、回転軸22,22の両端部に固着された左右一対のレバー24′,24′の先端部が、架台11の背面側(ライン下流側)の両端部上に軸支された左右一対のシリンダーからなるアクチュエータ24,24のロッド先端部と軸着されている。
【0033】
そして、可動部20が固定部10上の組み立て位置にあるときに、アクチュエータ24,24のロッドは縮退しており、この状態からアクチュエータ24,24のロッドが伸出することにより、可動部20は背面側(ライン下流側)の水平な回転軸22,22を中心として背面側(ライン下流側)へ約90度傾動することにより、背面側(ライン下流側)に配置されたビード切削装置50の上に正面を上にして仰向けに載置される。
【0034】
ここにおけるアクチュエータ24,24は、可動部20を傾転駆動する駆動機構40である。また、可動部20が背面側(ライン下流側)へ約90度傾動して、背面側(ライン下流側)に配置されたビード切削装置50上に正面を上にして載置された仰向け状態が、可動部20の退避位置である。22′,22′は左右の回転軸22,22をレバー24′,24′の内側で回動自在に支持する軸支部である。
【0035】
可動部20を固定部10上に固定するロック機構30は、図2及び図4に示すように、固定部10の上面に設けられた複数個、ここでは8個のクランプ31の組合せにより構成されている。8個のクランプ31のうち、4個は固定部10の正面側の縁部(前縁部)上面に2個を1組として2組取り付けられており、残りの4個は固定部10の背面側の縁部(後縁部)上面に2個を1組として2組取り付けられている。前縁部上面に取り付けられた2組のクランプ31は中央部を挟む両側に配置されており、各組2個のクランプ31,31は対向配置されている。同様に、後縁部上面に取り付けられた2組のクランプ31は中央部を挟む両側に配置されており、各組2個のクランプ31,31は対向配置されている。
【0036】
ここにおける4組8個のクランプ31は、可動部20が固定部10上の組み立て位置にあるときに、可動部20におけるフレーム25の両下端部から前後に突出した両側の板状ストッパ32,32を拘束して固定部10上に固定する。具体的には、フレーム25の両下端部から上流側へ突出する2枚の板状ストッパ32,32の各端部、及び下流側へ突出する2枚の板状ストッパ32,32の各端部が、固定部10の前縁部上及び後縁上に係合することにより、固定部10上に可動部20が支持される。
【0037】
そして、上流側へ突出する板状ストッパ32,32の各端部が固定部10の前縁部上に載った状態で、各端部を前縁側の2組のクランプ31が両側からそれぞれ係止し、下流側へ突出する板状ストッパ32,32の各端部が固定部10の後縁部上に載った状態で、各端部を後縁側の2組のクランプ31が両側からそれぞれ係止することにより、可動部20は固定部10上に支持され固定される。前後各2枚の板状ストッパ32,32は可動部20の支持部材を兼ねているのである。
【0038】
前記の8個のクランプ31はここでは油圧式であり、それらによるクランプ力、すなわち前後に突出した両側の板状ストッパ32,32を8個のクランプ31が固定部10上に固定する力は、管形成時に係合固定部に発生する荷重以上とすることで、係合固定部のガタつきを最小限に抑制し、当該スクイズロールスタンドを高剛性なものとしている。
【0039】
固定部10の下流側に連設されたビード切削装置50は、図1〜図4に示すように、電縫管製造ライン下流側の退避位置へ可動部20が傾動するのを許容し、且つ退避位置に傾動した可動部20の下側にあって可動部20の支持体を兼ねるように、高さを制限されている。この高さ制限のために、ビード切削装置50は以下のような固有の構成を採用している。
【0040】
ビード切削装置50は、図1〜図4に示すように、固定部10の下流側に配置されたメインフレーム55と、スクイズロールスタンドを出た管状材料を支持するために、ライン長手方向に間隔をあけてメインフレーム55内に設けられた複数の支持ローラ51と、支持ローラ51の上方に位置してメインフレーム55内に設けられた複数(ここでは2個)の切削刃物53とを有している。
【0041】
複数の支持ローラ51は、昇降可能な共通の支持フレーム52に取り付けられており、支持フレーム52がライン側方に設けられたモータジャッキ52′にて昇降駆動されることにより一括して高さを調節される。複数の支持ローラ51と共にライン長手方向に間隔をあけて配置された複数の切削刃物53は、個別の昇降フレーム54に取り付けられている。複数の昇降フレーム54は、ライン側方に各昇降フレーム対応して設けられた複数のモータジャッキ54′にて個別に昇降駆動されることにより、複数の切削刃物53の高さを個別に調節する。複数の切削刃物53を個別に支持する複数の昇降フレーム54には、切削刃物53の周方向位置を調節する位置調節機構がそれぞれ設けられている。
【0042】
このように、複数の支持ローラ51の高さ調節機構であるモータジャッキ52′及び複数の昇降フレーム54の高さ調節機構である複数のモータジャッキ54′を電縫管製造ライン(管材パスライン)の側方に配置することにより、可動部20が下流側へ約90度傾動するのが可能なレベルまで、ビード切削装置50の高さが低減されている。
【0043】
ビード切削装置50のメインフレーム55内には、複数の切削刃物53の更に下流側に位置してビードワインダーユニット56が配置されており、メインフレーム55の更に下流側には、サポート上ロールユニット57が配置されている。サポート上ロールユニット57は、メインフレーム55と共に、スクイズロールスタンドの下流側に配置された架台58上に設置されている。
【0044】
ビード切削装置50のメインフレーム55上は開放しており、操業中はこの上に可動部20が重ならないため開放状態となる。その結果、ヒュームの滞留がなく作業環境上からも好ましい形態となる。
【0045】
以上が、本実施形態のスクイズロールスタンドの構造である。以下に、本実施形態のスクイズロールスタンドの機能を主に図1〜図4に基づいて説明する。
【0046】
操業中は、図1及び図2に示すように、スクイズロールスタンドの可動部20は固定部10上の組み立て位置にロック機構30により固定されている。これにより、スクイズロールスタンドにおけるスクイズロール、すなわち固定部10内の下ロール13及び左右のサイドロール14,14、並びに可動部20内の左右一対の上ロール26,26は、定位置に存在する。そして、固定部10の架台11内に設けられた左右一対の第1モータ16,16が作動することにより、固定部10内の左右のサイドロール14,14が回転駆動される。
【0047】
これに先立って、固定部10内の下ロール13の高さ調節が架台11上の第2モータ17により、左右のサイドロール14,14の押し込み量の調節が油圧サーボ制御シリンダー15,15により、差し込み式カップリング18,18の横方向の位置調節がモータ式ジャッキ18″,18″により、可動部20内の上ロール26,26の高さ調節が油圧サーボ制御シリンダー29によりそれぞれ行われる。
【0048】
また、ビード切削装置50においては、複数の支持ローラ51の高さ調節がモータジャッキ52′により、複数の切削刃物53の高さ調節が複数のモータジャッキ54′によりそれぞれ行われる。
【0049】
オープンパイプ60は、対向エッジ部を上にしてスクイズロールスタンドに進入し、図示されない加熱装置による加熱、並びに左右のサイドロール14,14による押し込み及び左右の上ロール26,26による圧下により、対向エッジ部を接合される。接合を終えた管状材料は引き続き下流側のビード切削装置50内に進入し、接合部に生じている外面ビードを複数の切削刃物53により段階的に除去されて、製品である断面円形の電縫管とされる。ロック機構30における8個のクランプ31によるクランプ力が成形荷重反力以上に設定されているため、係合部のガタつきが最小限に抑制され、当該スクイズロールスタンドの剛性が高まることは前述したとおりである。
【0050】
製造する電縫管のサイズが変わるときは、スクイズロールスタンド内のスクイズロールを交換する。このスクイズロールのロール替えの際には、まずサイドロール14,14の回転を停止した状態でロック機構30における8個のクランプ31を解放方向に作動させる。これにより、固定部10の最上部における前縁部との間、及び後縁部との間にかけ渡された可動部20における両側の板状ストッパ32,32が前縁部及び後縁部からそれぞれ解放される。
【0051】
こうしてロック機構30が解除されると、可動部20の駆動機構40である固定部10両側の油圧シリンダー式のアクチュエータ24,24がロッド退入状態からロッド進出状態へ切り替わる。これにより、回転軸22の両端部に固着された左右一対のレバー24′,24′が押され、可動部20が背面側(ライン下流側)の回転軸22を支点として背面側(ライン下流側)へ回動する方向へ、回転軸22が回動する。そして最終的には、可動部20が背面側(ライン下流側)のビード切削装置50のフレーム55上へ重なるまで約90度傾動する。これが図3及び図4に示す状態である。
【0052】
スクイズロールスタンドにおける固定部10上の可動部20が背面側(ライン下流側)の回転軸22を支点として背面側(ライン下流側)へ約90度傾動して背面側(ライン下流側)のビード切削装置50上へ正面を上にして重なることにより、固定部10の上面が開放される。また、可動部20におけるアーチ状のフレーム25の内側が開放される。これらにより、固定部10内の左右のサイドロール14,14が簡単に交換される。また、下ロール13の交換が必要な場合、その交換も容易である。更には、可動部20内の左右の上ロール26,26の交換が必要な場合、その交換も容易である。
【0053】
すなわち、本実施形態のスクイズロールスタンドにおいては、ロール替えを行う際に、上ロールアッセンブリである可動部20をその下の固定部10に対してライン下流側へ傾動可能とし、その傾動操作により固定部10上から可動部20を退避させるので、上ロールアッセンブリをクレーンで吊り上げて下の固定部10から分離退避させる場合と比べて退避操作が容易である。また、退避された可動部20は、ライン下流側のビード切削装置50上に正面を上にして仰向けに重ねられるので、ライン外に仮置きスペースを必要としない。その上、ビード切削装置50のフレーム55が可動部20の支持体を兼ねるので構成が簡単である。更に、可動部20が退避した後の固定部10上は開放状態となる。このため、固定部10上に門型フレームを組むなどして、固定部10内のロール替えを自動で行うこともできる。自動ロール替えの方法としては小型ホイストを使うとか、各種シリンダーを使うといった様々な方法が可能である。
【0054】
固定部10内の左右のサイドロール14,14を交換する際、それらのサイドロール14,14は下方の駆動シャフト16″,16″と差し込み式カップリング18,18を介して連結されているので、サイドロール14,14を上に持ち上げるだけで駆動シャフト16″,16″から分離することかできる。次の製品サイズに応じた左右のサイドロール14,14をセットする際には、それらのロールサイズに応じて差し込み式カップリング18,18の横方向位置をモータ式ジャッキ18″,18″により調節しておく。これにより、次の製品サイズに応じた左右のサイドロール14,14を定位置に上方からセットするだけで、下方の駆動シャフト16″,16″と連結することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、スクイズロールスタンドにおける固定部10上の可動部20を固定部10上から排除するために、可動部20をライン下流側のラインに直角な水平軸(回転軸22)を支点としてライン下流側へ傾動させたが、ライン上流側のラインに直角な水平軸を支点としてライン上流側へ傾動させることも可能であり、ライン側方のラインに平行な水平軸を支点としてライン側方へ傾動させることも可能である。更に、ライン下流側のラインに直角な水平軸とライン側方のラインに平行な水平軸というように2軸を支点として2段階に傾動させることも可能である。
【0056】
また、固定部10における前後のフレームパネル12′,12′は、上記実施形態では構造体であるために脱着を想定していないが、別にフレームを設けて脱着可能とすることもできる。そうすることにより、ロール替えの際にそれらの一方又は両方を取り外すことが可能となり、その結果、固定部10の前面及び/又は後面が開放されるので、固定部10内のスクイズロールの交換が一層容易となる。
【符号の説明】
【0057】
10 固定部
11 架台
12 スタンド本体
13 下ロール
14 サイドロール
15 油圧サーボ制御シリンダー
16 第1モータ
17 第2モータ
18 差し込み式カップリング
20 可動部
21 第1ブラケット
22 回転軸
23 第2ブラケット
24 アクチュエータ
25 フレーム
26 上ロール
27 可動ベース
28 油圧サーボ制御シリンダー
29 油圧サーボ制御シリンダー
30 ロック機構
31 クランプ
32 板状ストッパ
40 駆動機構(アクチュエータ24)
50 ビード切削装置
51 支持ローラ
52 支持フレーム
53 切削刃物
54 昇降フレーム
55 メインフレーム
56 ビードワインダーユニット
57 サポート上ロールユニット
58 架台
60 オープンパイプ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電縫管製造ラインの接合位置に設置され、左右の上ロールを除くスクイズロールが脱着可能に組み込まれた固定部と、該固定部上に重ねられ、内部に左右の上ロールが脱着可能に組み込まれると共に、固定部上の組み立て位置から、当該固定部上を開放する退避位置へ少なくとも一方向側を支点としてその側へ傾動する可動部と、該可動部を固定部上の組み立て位置に固定するロック機構と、前記可動部を組み立て位置と退避位置との間で往復駆動する駆動機構とを具備するスクイズロールスタンド。
【請求項2】
請求項1に記載のスクイズロールスタンドにおいて、前記ロック機構は、可動部の下端部から正面側及び背面側に突出し、固定部上面の正面側の縁部及び背面側の縁部にそれぞれ係合する板状ストッパと、固定部上面の正面側の縁部及び背面側の縁部に取り付けられて板状ストッパ係合部を両側から固定する複数のクランプとの組合せからなるスクイズロールスタンド。
【請求項3】
請求項2に記載のスクイズロールスタンドにおいて、前記板状ストッパは、可動部の支持部材を兼ねるスクイズロールスタンド。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のスクイズロールスタンドにおいて、前記複数のクランプは左右均等に配置されており、且つ当該スクイズロールスタンドにおける成形反力以上の荷重で前記板状ストッパを常時押し付けるスクイズロールスタンド。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のスクイズロールスタンドにおいて、前記可動部は電縫管製造ラインの下流側に傾動するスクイズロールスタンド。
【請求項6】
請求項5に記載のスクイズロールスタンドにおいて、前記固定部はライン下流側に設置されたビード切削装置と組み合わされており、前記可動部はライン下流側へ傾動した状態で前記ビード切削装置上に重なるスクイズロールスタンド。
【請求項7】
請求項6に記載のスクイズロールスタンドにおいて、ライン下流側に傾動した可動部がビード切削装置上に重なるように、ビード切削装置における支持ロール及び切削部の高さ調整機構がライン側方又は下方に配置されて、ビード切削装置の高さが制限されているスクイズロールスタンド。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−223782(P2012−223782A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91994(P2011−91994)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000150419)株式会社中田製作所 (10)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】