説明

スクリューカッタ機構およびこれを用いた掘削装置

【課題】攪拌性能の向上や移送能力の調整が図れるとともに、切削土砂の回転軸方向の移送能力を変えることで、地盤の土圧に対応する圧力を一定とし、地表面沈下の発生を抑えることができる。
【解決手段】スクリューカッタ20は、軸部21の周囲に一連の螺旋羽根22が設けられ、その螺旋羽根22の外周部に切削ビット23が取り付けられ、螺旋羽根22の軸回転により切削ビット23で地盤を切削するとともに切削土砂を排土側に移送する構成であり、螺旋羽根22の軸部21側には、螺旋巻き方向に沿って複数の開口部24、24、…が形成され、それら開口部24は排土側に向かうにしたがって開口率が小さくなり、配置間隔が大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューカッタ機構およびこれを用いた掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市域に設けられる比較的小規模のトンネルの断面形状は円形断面とするよりも矩形断面とすることが合理的である場合が多いことから、矩形断面のトンネル掘削機が採用されている。このようなトンネル掘削機の切削機構としては、掘削方向に直交し略水平方向に配置させるとともに、螺旋状の羽根の外周部に土砂を切削するための切削ビットを配置させたスクリュー形状のカッタ(以下、スクリューカッタという)を、掘削機本体の先端に上下方向に平行に複数配列させたものがある(例えば、特許文献1、2、3参照)。
このようなスクリューカッタによる機構は、油圧モータ等の回転駆動により、螺旋羽根を回転させて土砂を切削しながら、左右方向に切削した土砂を移送し、スクリュー端部付近でスクリューカッタの回転軸方向と直角方向に設置したスクリューコンベヤによりシールド機の後方に掘削土砂を排出するものである。
【特許文献1】特許第3667717号公報
【特許文献2】特開平11−229774号公報
【特許文献3】特公平7−59878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1、2、3で開示されているスクリューカッタ機構は、水平なスクリューカッタにより地盤を幅方向に掘削するとともに左右方向(横方向)へ土砂を移送するものであるため、スクリューカッタは、土砂攪拌能力が低い欠点があることから、その点で改良の余地があった。また、その左右方向への移送能力が一定であるため、スクリューカッタの回転軸方向で排土側ほどスクリュー内部への取込み土量が多くなり、スクリュー内圧も高くなる。つまり、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタの圧力が軸方向(トンネル幅方向)の範囲で一定にならず、圧力差が生じることから、地盤の土圧が部分的に低下し、地表面沈下を発生させてしまうおそれがあった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、本発明の主な目的は、攪拌性能の向上や移送能力の調整が図れるスクリューカッタ機構およびこれを用いた掘削装置を提供することである。また、切削土砂の回転軸方向の移送能力を変えることで、地盤の土圧に対応する圧力を一定とし、地表面沈下の発生を抑えるようにしたスクリューカッタ機構およびこれを用いた掘削装置を提供することを他の目的とする。
また、
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るスクリューカッタ機構では、軸部の周囲に一連の螺旋羽根が設けられ、螺旋羽根の外周部に切削ビットが取り付けられ、螺旋羽根の軸回転により切削ビットで地盤を切削するとともに切削土砂を排土側に移送するスクリューカッタ機構であって、螺旋羽根には、螺旋巻き方向に沿って複数の開口部が形成されていることを特徴としている。
【0006】
本発明では、螺旋羽根に開口部を適宜な位置に設けることで、切削土砂の一部が開口部より螺旋羽根の裏側(排土側と反対側)に戻され、排土側へ向けて移送されないことから、切削土砂の攪拌能力が向上することになり、切削部付近に添加材を加える場合は強制攪拌することで、均質な泥土状にして流動性、止水性をもたせ、切羽の安定とスクリューコンベヤからの地下水の噴出を防ぐことの確実性を高めることが可能となる。そして、開口部の開口率や配置間隔を変えた場合には、切削土砂の回転方向で移送能力を変えることができる。例えば、排土側からの距離が遠くなるにしたがって開口部を大きくしたり配置間隔を小さくすることで、排土側の移送能力を大きくすることができる。これにより、スクリュー内部への取込み土量が軸方向全体にわたって一定に保持され、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタ機構の圧力も軸方向全体にわたる範囲でほぼ一定となって圧力差が生じなくなり、その結果、地盤を安定させた状態で掘削することができる。つまり、移送能力が一定である場合のように、スクリューカッタ機構の排土側で取込み土量が減少し、部分的にスクリューカッタ機構の圧力が大きくなるといった不具合を防ぐことができる。
【0007】
上述のように、本発明に係るスクリューカッタ機構では、開口部の開口率は、排土側に向かうにしたがって小さくなることが好ましい。
本発明では、螺旋羽根に形成される開口部が排土側と反対側ほど大きくなる構成であって、切削土砂の移送能力は排土側で大きく、その反対側で小さくなることから、スクリュー内部への取込み土量が軸方向全体にわたって一定に保持され、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタ機構の圧力も軸方向全体にわたる範囲でほぼ一定となって圧力差が生じなくなる効果を高めることができる。
【0008】
また、本発明に係るスクリューカッタ機構では、開口部の配置間隔は、排土側に向かうにしたがって大きくなることが好ましい。
本発明では、螺旋羽根に形成される開口部の配置間隔が排土側ほど大きくなる構成であって、切削土砂の移送能力は排土側で大きく、その反対側で小さくなることから、スクリュー内部への取込み土量が軸方向全体にわたって一定に保持され、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタ機構の圧力も軸方向全体にわたる範囲でほぼ一定となって圧力差が生じなくなる効果を高めることができる。
【0009】
また、本発明に係るスクリューカッタ機構では、螺旋羽根の羽根ピッチは、排土側に向かうにしたがって大きくなることが好ましい。
本発明では、切削土砂の移送能力は螺旋羽根の羽根ピッチが大きい排土側で大きく、羽根ピッチが小さい排土側と反対側で移送能力が小さくなることから、スクリュー内部への取込み土量が軸方向全体にわたって一定に保持され、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタ機構の圧力も軸方向全体にわたる範囲でほぼ一定となって圧力差が生じなくなる効果を高めることができる。
【0010】
また、本発明に係るスクリューカッタ機構では、軸部の軸径は、排土側に向かうにしたがって細くなることが好ましい。
本発明では、軸部の軸径が細い部分では螺旋羽根の羽根ピッチ間の移送路断面が広くなる構成となり軸部の細い排土側の移送路断面ほど切削土砂の移送能力が大きく、その反対側の移送路断面で移送能力が小さくなることから、スクリュー内部への取込み土量が軸方向全体にわたって一定に保持され、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタ機構の圧力も軸方向全体にわたる範囲でほぼ一定となって圧力差が生じなくなる効果を高めることができる。
【0011】
また、本発明に係るスクリューカッタ機構では、螺旋羽根には、切削土砂を開口部に誘導する誘導板が設けられていてもよい。
本発明では、スクリューカッタ機構によって移送される切削土砂の一部が誘導板によって開口部に誘導されることから、攪拌能力の向上や移送能力の調整をより確実に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係るスクリューカッタ機構を用いた掘削装置では、上述したスクリューカッタ機構を備えた掘削装置であって、掘削機本体の先端に、スクリューカッタ機構をその回転軸方向を掘削方向に交差する方向に配置されていることを特徴としている。
本発明では、螺旋羽根に開口部を設けることで、攪拌能力の向上や切削土砂の移送能力を調整可能としたスクリューカッタ機構を掘削装置に備えているので、安定した掘削を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスクリューカッタ機構およびこれを用いた掘削装置によれば、スクリューカッタにおける攪拌能力の向上や切削土砂の移送能力を調整することが可能であるので、安定した掘削が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施の形態によるスクリューカッタ機構およびこれを用いた掘削装置について、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態によるトンネル掘削機の概略構成を示す側面図、図2は図1に示すA−A線断面図、図3は図1に示すトンネル掘削機の正面図、図4はトンネル掘削機に備えられるスクリューカッタの概略構成を示す斜視図、図5(a)は図4に示すB−B線矢視図、(b)は同じくC−C線矢視図である。
【0015】
図1に示すように、本第1の実施の形態によるスクリューカッタ20(スクリューカッタ機構)は、トンネル掘削機1(掘削装置)の先端部に備えられ、掘削機1の推進とともに回転させて掘削土砂を取り込むためのものである。
【0016】
図1に示すように、先ず、本第1の実施の形態が装備されているトンネル掘削機1の概略構成について説明する。
図1乃至図3に示すトンネル掘削機1は、ボックスカルバート等の矩形断面のトンネルを掘削するためのものであって、基本的には通常のシールド機と同様に、地盤を掘削しつつその後方において、コンクリート造のボックス2を組み立て、その組み立て済みのボックス2から反力をとって掘進していくように構成されたものである。
【0017】
トンネル掘削機1の基本構成は、通常のシールド機とほぼ同様に築造すべきトンネルの断面形状に合わせて掘削機本体3の内部にトンネル掘削に必要な各種の機器類のほぼ全てを収容し、その掘削機本体3の前部には地盤掘削のためのカッタを配置したものである。
さらに具体的には、掘削機本体3は掘削すべきトンネルの断面形状に合致する矩形筒状のスキンプレート4を外殻とし、その後部には施工済みのボックス2を押圧してそこから反力をとって推進するための推進ジャッキ5が多数設けられている。また、掘削機本体3の内部にはボックス2の組み立てに使用するためのエレクタ装置6が備えられている他、トンネル掘削に必要な装置類が備えられている。
【0018】
本トンネル掘削機1では、掘削機本体3の前部に配置されているカッタとして、切羽を矩形断面に掘削するための複数段(図では5段)のスクリューカッタ20、10、…と、その前部に配置された先端カッタ7とが併用されている。スクリューカッタ20の詳細な構成については後述する。
【0019】
各スクリューカッタ20の前方には、それらスクリューカッタ20では有効に掘削し得ない範囲を掘削するために先端カッタ7が配置され、その先端カッタ7として本実施の形態では一般的な回転カッタが採用されている。先端カッタ7は、各段のスクリューカッタ20の端部を支持しているサイドフレーム8およびセンターフレーム9内に配置されていて掘削方向と平行をなす回転軸10の先端部に設けられていて、サイドフレーム8およびセンターフレーム9の前方の地盤を掘削するものである。
【0020】
なお、センターフレーム9内に組み込まれている回転軸10は先端カッタ専用のものであって、それはセンターフレーム9の後部に設けられている第1駆動モータ11によって回転駆動されるものであるが、サイドフレーム8内に組み込まれている回転軸10はスクリューコンベヤ12を兼用している。つまり、先端カッタ7の回転軸10に土砂移送用の螺旋羽根を形成した構成となっており、そのスクリューコンベヤ12および先端カッタ7はサイドフレーム8の後部に設けられている第2駆動モータ13により回転駆動されるものである。このようにサイドフレーム8は、スクリューコンベヤ12のケーシングの機能を兼ねたものとなっている。
【0021】
さらに、上記した各段のスクリューカッタ20および先端カッタ7は、図1に示すように上段側のものほどやや前方に位置するように鉛直面に対して傾斜状態で並べられて配置されることが基本とされ、その状態で固定的に設置することでも良いが、図示例のように各段のスクリューカッタ20および先端カッタ7をそれぞれが独立に前後方向に進退可能とすることが好ましい。
【0022】
すなわち、図示例においては、各スクリューカッタ20の両端部を支持しているサイドフレーム8とセンターフレーム9とは支持フレーム14によって支持されていた構成となっている。
【0023】
そして、各段の支持フレーム14と掘削機本体3内のメインフレーム15との間には進退ジャッキ16が介装されていて、各段の進退ジャッキ16の操作により各段の支持フレーム14を介して各段のスクリューカッタ20および先端カッタ7を前後方向に進退させることによって、地盤状況や掘削作業工程に応じてそれぞれを最適位置に配置することができるようになっており、これにより上段側のものほどやや前方に位置するように配置するばかりでなく、逆に下段側のものほどやや前方に位置するように配置したり、全ての位置を揃えることが可能となっている。
なお、上述のように各段の支持フレーム14には主移送装置としてのスクリューコンベヤ12が組み込まれていることから、各段の支持フレーム14を進退させた際には同時に各段のスクリューコンベヤ12も一体に進退することになる。
【0024】
次に、本トンネル掘削機1のメインカッタをなすスクリューカッタ20の構成について具体的に説明する。
ここで、図4は、図3に示すトンネル掘削機1の正面斜視図で図3の紙面に向かって右側に位置するスクリューカッタ20を示している。つまり、図4で紙面右側から左側を見た断面視で軸部21を右回転させた場合に矢印E方向が土砂移送方向であり、その終点側が排土側となっている。
図2に示すように、スクリューカッタ20は、その回転軸方向が掘削方向と直交して交差する方向に配置され、一対2台が中央のセンターフレーム9を挟んで左右両側に対称配置されていて、それらの両端部がサイドフレーム8とセンターフレーム9に対して回転自在に支持され、それらの端部内側に組み込まれた第3駆動モータ17によって回転されるようになっている。これにより、それぞれが切羽を幅方向に掘削して、それら複数のスクリューカッタ20、20、…全体で矩形断面のトンネルを掘削するようになっている。
【0025】
そして、各段における左右一対のスクリューカッタ20、20により掘削された掘削土砂は、それぞれ中央側(センターフレーム9側)から両側(サイドフレーム8、8側)に向かって移送されるようになっている。そして、スクリューカッタ20によって掘削の両側方に移送された掘削土砂は、各段のサイドフレーム8内のスクリューコンベヤ12に受け渡され、そのコンベヤ12によって後方に移送され、排土口18(図1、図2参照)より排出されるようになっている。
【0026】
図4に示すように、スクリューカッタ20は、軸部21の周囲に一連の螺旋羽根22が設けられるとともに、螺旋羽根22の外周部に沿って切削ビット23、23、…が取り付けられている。このスクリューカッタ20は、螺旋羽根22の右回転により切削ビット23で地盤を掘削すると同時に切削土砂を螺旋羽根22によって排土側(矢印E方向)に向けて移送する構成となっている。
【0027】
そして、螺旋羽根22には適宜な大きさ(開口率)の複数の開口部24、24、…が形成され、その開口部24は螺旋羽根22の延びる方向に所定間隔をあけて配置されている。この開口部24は、螺旋羽根22の切削ビット23を配した外周部を残した軸部21側の一部を切り欠いたものであり、これら開口部24、24、…は排土側に向かうにしたがって開口率が小さくなるとともに、配置間隔が大きくなっている。
つまり、図5(a)に示す排土側(サイドフレーム8側)に設けられる開口部24(符号24A)は、図5(b)に示す螺旋羽根22の排土側と反対側(トンネル掘削機1の幅方向中央部側、センターフレーム9側)に設けられる開口部24(ここでは符号24B)より開口率が小さく、且つ隣り合う開口部24、24どうしの間隔も小さくなっている。
【0028】
次に、上述したトンネル掘削機1による掘削方法およびスクリューカッタ1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、本トンネル掘削機1では、各段のスクリューカッタ20および先端カッタ7を順次(例えば上方から順に)、前方に推進させて地盤を掘削する。このときの推進順は、上方のスクリューカッタ20から順に先に掘削することが地盤の緩みを抑える点で好ましいが、この順に限定されることはなく、また複数のスクリューカッタ20、20、…を同時に推進させるようにしてもかまわない。
【0029】
各段のスクリューカッタ20による掘削は、図1に示す推進ジャッキ16を伸長させつつ、スクリューカッタ20を適宜な回転速度で回転させ、螺旋羽根22の外周部に配置されている切削ビット23によって切羽の地盤を切削するとともに、その切削土砂は螺旋羽根22の回転とともに排土側(図4に示す矢印E方向)へ移送され、サイドフレーム8内に備えられているスクリューコンベヤ12に受け渡され、掘削機本体3の後方へ搬出される。
【0030】
図4に示すように、スクリューカッタ20は、螺旋羽根22に複数の開口部24、24、…を適宜な位置に設けることで、切削土砂の一部が開口部24より螺旋羽根22の裏側22a(排土側と反対側)に戻され、排土側(矢印E方向)へ向けて移送されないことから、開口部24の開口率や配置間隔を変えることで、切削土砂の移送能力を調整することができる。
【0031】
つまり、本実施の形態のスクリューカッタ20は、図5(a)、(b)に示すように、螺旋羽根22に形成される開口部24の面積が排土側から反対側(土砂移送方向起点側)に行くほどほど大きくなる(開口率が大きくなる)、つまり排土側に向かうほど開口率が小さくなるとともに、配置間隔は逆に排土側に行くほど大きくなる構成であって、切削土砂の移送能力は排土側で大きく、その反対側で小さくなることから、スクリュー内部への取込み土量が軸方向全体にわたって一定に保持され、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタ20の圧力も軸方向全体にわたる範囲でほぼ一定となって圧力差が生じなくなり、その結果、地盤を安定させた状態で掘削することができる。したがって、移送能力が一定である場合のように、スクリューカッタ機構の排土側で取込み土量が減少し、部分的にスクリューカッタ機構の圧力が大きくなるといった不具合を防ぐことができる。
【0032】
さらに、螺旋羽根22に開口部24を設けることで、トンネルの切羽付近に注入する添加材と切削土砂の攪拌能力が向上することになり、切削部付近に添加材を加えて強制攪拌し、均質な泥土状にして流動性、止水性をもたせ、切羽の安定とスクリューコンベヤ12からの地下水の噴出を防ぐことの確実性を高めることが可能となる。
【0033】
上述した本第1の実施の形態によるスクリューカッタ機構およびこれを用いた掘削装置では、スクリューカッタ20における攪拌能力の向上や切削土砂の移送能力を調整することが可能であるので、安定した掘削が可能である。すなわち、スクリューカッタ20の軸方向全体にわたって、スクリュー内部への取込み土量を一定に保持することができ、これにより地盤の土圧に対応するスクリューカッタ20の圧力も軸方向全体にわたってほぼ一定となり、地盤の土圧の低下をなくすことができ、トンネルの場合において、土圧低下の影響による地表面沈下の発生を抑制することができる。
また、螺旋羽根22に開口部24が設けられているので、攪拌性能の向上を図ることができる。
【0034】
次に、本発明の他の実施の形態および変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
図6は第1の実施の形態の変形例によるスクリューカッタの概略構成を示す斜視図であって、図4に対応する図である。
図6に示すように、第1の実施の形態の変形例によるスクリューカッタ20は、軸部21の周囲に設けられた一連の螺旋羽根22に、切削土砂を開口部24に誘導する誘導板25を設けた構成である。そして、複数の開口部24、24、…は、上述した第1の実施の形態では排土側(矢印E方向)に向かうにしたがって開口率と配置間隔が小さくなる構成(図4参照)としているが、本変形例では開口率、配置間隔ともに変わらない構成となっている。
【0035】
誘導板25は、図4と同様に軸部21が右回転した場合に、その回転方向に対して開口部24の下流側端部24aに、また移送方向(E方向)に対しては開口部24の下流側に取り付けられている。さらに、誘導板25は、螺旋羽根22の表面より切削土砂の進行方向に対して鋭角となるように回転方向上流側に向かって突出された板状部材である。これにより、スクリューカッタ20によって移送される切削土砂の一部が誘導板25によって矢印F方向に示すように開口部24に誘導されることから、攪拌能力向上と誘導板25の大きさや突出角度を調整することで切削土砂の移送能力の調整を行うことができる。
【0036】
次に、図7は第2の実施の形態によるスクリューカッタの概略構成を示す斜視図であって、図4に対応する図である。
図7に示すように、本第2の実施の形態によるスクリューカッタ30は、軸部31の周囲に設けられた一連の螺旋羽根32の羽根ピッチP(P1〜P5)は、排土側(矢印E方向)に向かうにしたがって大きくなる構成となっている。つまり、羽根ピッチPは、排土側と反対側に位置する符号P5から排土側に位置する符号P1の羽根ピッチの順で漸次大きくなっている。
そして、複数の開口部34、34、…は、上述した第1の実施の形態では排土側(矢印E方向)に向かうにしたがって開口率が小さく、且つ配置間隔が大きくなる構成(図4、図5参照)としているが、本第2の実施の形態では開口率、配置間隔ともに変わらない構成となっている。
【0037】
このように、本第2の実施の形態では、切削土砂の移送能力は螺旋羽根32の羽根ピッチPが大きい排土側(符号P5の羽根ピッチ側)で大きく、羽根ピッチPが小さい排土側と反対側(符号P1の羽根ピッチ側)で移送能力が小さくなることから、上述した第1の実施の形態と同様に、スクリュー内部への取込み土量が軸方向全体にわたって一定に保持され、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタ30の圧力も軸方向全体にわたる範囲でほぼ一定となって圧力差が生じなくなる効果を高めることができる。合わせて、攪拌能力も向上する。
【0038】
次に、図8は第3の実施の形態によるスクリューカッタの概略構成を示す斜視図であって、図4に対応する図である。
図8に示すように、本第3の実施の形態によるスクリューカッタ40は、軸部41の軸径が排土側(矢印E方向)に向かうにしたがって細くなる構成となっている。
そして、複数の開口部44、44、…は、上述した第1の実施の形態では排土側(矢印E方向)に向かうにしたがって開口率が小さく、且つ配置間隔が大きくなる構成(図4、図5参照)としているが、本第3の実施の形態では開口率、配置間隔ともに変わらない構成となっている。
【0039】
このように、本第3の実施の形態では、軸部41の軸径が細い部分では螺旋羽根42の羽根ピッチ間の切削土砂の移送路断面Sが広くなる構成となり軸部の細い排土側の移送路断面(符号S1)ほど切削土砂の移送能力が大きく、その反対側の移送路断面(S2)で移送能力が小さくなることから、上述した第1および第2の実施の形態と同様に、スクリュー内部への取込み土量が軸方向全体にわたって一定に保持され、切削する地盤の土圧に対応するスクリューカッタ40の圧力も軸方向全体にわたる範囲でほぼ一定となって圧力差が生じなくなる効果を高めることができる。合わせて、攪拌能力も向上する。
【0040】
以上、本発明によるスクリューカッタ機構およびこれを用いた掘削装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、スクリューカッタ20、30、40の外径寸法、軸方向の長さ寸法、螺旋羽根の厚さ寸法などの構成は、第1〜第3の実施の形態に限定されることはなく、切削する地盤の硬さや地質、切削能力などの条件に応じて適宜設定することができる。
また、本実施の形態ではスクリューカッタ20、30、40を矩形断面を掘削するトンネル掘削機1に採用しているが、このような形態に限定されることはなく、またトンネル掘削機1に配置されるスクリューカッタの台数、配置形態は任意に設定することができる。
【0041】
この他、第1の実施の形態では、螺旋羽根に設けた開口部について、排土側に向かうにしたがって開口率を小さくし、且つ開口部の配置間隔を大きくしているが、排土側に向かうにしたがって、開口率を小さくするか、配置間隔を大きくするか、いずれか一方を採用するだけでもよい。
また、第1の実施の形態の変形例および第2、第3の実施の形態においては、螺旋羽根に設けた開口部の開口率、配置間隔をともに一定の値としたが、開口率については排土側に向かうにしたがって小さくすること、配置間隔については排土側に向かうにしたがって大きくすることのいずれか又は双方を採用するようにしてもよい。
それから、第2、第3の実施の形態において第1の実施の形態の変形例における誘導板を開口部に設けてもよい。
さらにまた、回転軸方向に切削土砂の移送能力の変化をつけるといった観点だけでとらえれば、第2、第3の実施の形態において、螺旋羽根の開口部は設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるトンネル掘削機の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示すA−A線断面図である。
【図3】図1に示すトンネル掘削機の正面図である。
【図4】トンネル掘削機に備えられるスクリューカッタの概略構成を示す斜視図である。
【図5】(a)は図4に示すB−B線矢視図、(b)は同じくC−C線矢視図である。
【図6】第1の実施の形態の変形例によるスクリューカッタの概略構成を示す斜視図であって、図4に対応する図である。
【図7】第2の実施の形態によるスクリューカッタの概略構成を示す斜視図であって、図4に対応する図である。
【図8】第3の実施の形態によるスクリューカッタの概略構成を示す斜視図であって、図4に対応する図である。
【符号の説明】
【0043】
1 トンネル掘削機(掘削装置)
20、30、40 スクリューカッタ(スクリューカッタ機構)
21、31、41 軸部
22、32、42 螺旋羽根
23、33、43 切削ビット
24、34、44 開口部
25 誘導板
21a 上面
3 スクリューコンベヤ
S1、S2 移走路断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の周囲に一連の螺旋羽根が設けられ、該螺旋羽根の外周部に切削ビットが取り付けられ、前記螺旋羽根の軸回転により前記切削ビットで地盤を切削するとともに切削土砂を排土側に移送するスクリューカッタ機構であって、
前記螺旋羽根には、螺旋巻き方向に沿って複数の開口部が形成されていることを特徴とするスクリューカッタ機構。
【請求項2】
前記開口部の開口率は、排土側に向かうにしたがって小さくなることを特徴とする請求項1に記載のスクリューカッタ機構。
【請求項3】
前記開口部の配置間隔は、排土側に向かうにしたがって大きくなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリューカッタ機構。
【請求項4】
前記螺旋羽根の羽根ピッチは、排土側に向かうにしたがって大きくなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスクリューカッタ機構。
【請求項5】
前記軸部の軸径は、排土側に向かうにしたがって細くなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスクリューカッタ機構。
【請求項6】
前記螺旋羽根には、切削土砂を前記開口部に誘導する誘導板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスクリューカッタ機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のスクリューカッタ機構を備えた掘削装置であって、
掘削機本体の先端に、前記スクリューカッタ機構をその回転軸方向を掘削方向に交差する方向に配置されていることを特徴とするスクリューカッタ機構を用いた掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−37912(P2010−37912A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205724(P2008−205724)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】