説明

スクリーン印刷体の製造方法

【課題】大面積の被印刷面を有する大型の被印刷体に対しても精度に優れたスクリーン印刷を行うことができ、印刷精度に優れたスクリーン印刷体を製造可能なスクリーン印刷体の製造方法を提供する。
【解決手段】被印刷体10の上方に所定のクリアランスCLを保持した状態で平行に配設されたスクリーン3と、製版枠4とを備えたスクリーン製版5のスクリーン3上をスキージで摺動して、被印刷体10上に印刷パターンが形成されたスクリーン印刷体を製造する方法である。製版枠4のスキージの摺動方向軸と直行する辺の内寸(L)に対する、スキージの幅(W)の比(W/L)が0.45以上であり、W/Lの値を一定にした条件下で把握した、0.1〜2.0mmの範囲内におけるクリアランスCLと、印刷パターンの印刷位置ズレ量との相関関係に基づき、被印刷体10とスクリーン3との最適クリアランスを選択及び設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷精度に優れたスクリーン印刷体を製造可能なスクリーン印刷体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷用製版(以下、単に「スクリーン製版」又は「製版」ともいう)を使用して、被印刷体の表面上にインクやペースト等からなる印刷膜を形成するスクリーン印刷は、微細パターンの形成が可能であり、また、優れた量産性を有することから幅広い産業分野で利用されている。一般に、スクリーン印刷は、樹脂(例えば感光性乳剤膜)等によってその開口が塞がれたメッシュが版枠に張設されることにより構成されたスクリーンマスクを使用し、このスクリーンマスクの上面にインク材料を載置するとともにスキージを摺動させることによって、スクリーンマスクに形成されている所定の開口部を通じてスクリーンマスクの下面側(基材側)にインク材料を押し出して印刷する方法である。
【0003】
このスクリーン印刷は、スクリーンマスクが柔軟であるとともに印圧が小さいため、紙類、布、プラスチック、ガラス、金属、セラミックス等の幅広い被印刷材への印刷が可能である。また、インク材料により形成されるパターンを厚くすることが可能であるため、厚膜IC(ハイブリッドIC)、プリント配線基板、抵抗体やコンデンサ等の電子部品の製造にも応用されている。ところで、スクリーンマスクは、通常、メッシュ上に塗布された感光性乳剤膜をフォトリソグラフィ技術によりパターン形成することによって製造される。或いは、金属膜をフォトリソグラフィ技術によって選択的にエッチングしてメッシュパターン形成することによっても製造される。
【0004】
スクリーン印刷に用いられる一般的なスクリーン製版は、紗等により構成された支持部材、及びこの支持部材に配設された所定の開口形状の開口部が形成されたマスク材を有する膜状のスクリーンと、このスクリーンがその内側に張設された製版枠とを備えたものである。印刷に際しては、先ずこのスクリーン製版のスクリーンを適当な被印刷体の表面(被印刷面)に配設するとともに、スクリーン上にインクやペースト等を載せる。次いで、スクリーン上でスキージ等を摺動させて開口部からペースト等を押し出せば、被印刷体の被印刷面に、開口部の開口形状、及び開口部が複数形成されている場合には、その配列パターンに対応した印刷パターンを形成することができる。
【0005】
例えば、電子部品製造の分野では、精度及び量産性の面から、上述のスクリーン印刷が取り入れられている。この分野においては、部品サイズの微小化という近年の技術の流れに伴い、より微細な印刷パターンを、更に高精度に形成したいとする要請が高まりつつある。
【0006】
しかしながら、製版枠は若干の歪みを有するものであるため、製版枠に張設したスクリーンを完全にフラットな状態とすることは困難である。更に、製版枠の歪みは製版枠によってそれぞれ異なるため、製版枠に張設されたスクリーン上の開口部の配列パターンもそれぞれのスクリーン製版毎に微妙に異なっている。従って、開口部の配列パターンが異なる複数のスクリーン製版を使用してスクリーン印刷を行うと、得られるスクリーン印刷体毎の印刷パターンが微妙に異なってしまうといった不具合が生ずる場合があった。
【0007】
近年、被印刷体となる基板が大型化される傾向にあるため、大型化した基板への印刷に使用するスクリーン(スクリーン製版)も同様に大型化される傾向にある。従って、基板やスクリーン製版の大型化によって、得られるスクリーン印刷体毎の印刷パターンの相違が更に顕著になっていた。
【0008】
スクリーン製版毎の開口パターンの相違の度合いは、印刷により得られる印刷体に応じて許容される一定の公差範囲内であれば、特段の問題を生ずることはない。しかしながら、近年の技術進歩に対応して、印刷精度を更に向上させる必要がある。特に、スクリーン印刷体を積層して積層電子部品を製造する場合には、スクリーン印刷体毎の微細な印刷位置のズレが、これらが積層されることによってより顕著なズレを生じさせることとなる。このため、より高性能な積層電子部品を製造するためには、スクリーン印刷体の印刷位置のズレ量を、許容される一定の公差範囲内とすることが重要である。
【0009】
関連する従来技術として、スクリーンの支持部材を構成するワイヤ(紗)の交差する部分を係止したスクリーン印刷用製版(特許文献1参照)、製版枠の線熱膨張係数を規定したスクリーン印刷用製版(特許文献2参照)、製版枠の所定の辺を凸形状に湾曲させた状態でスクリーン印刷をする方法(特許文献3参照)、並びに内外両方向に変形可能な製版枠を備えたスクリーン印刷用製版、及びこれを用いた印刷体の製造方法(特許文献4参照)が開示されている。しかしながら、これらのスクリーン印刷用製版や、これらを用いた印刷方法であっても、高い印刷精度を確保する、或いは印刷位置のズレ量を許容される範囲内に抑える等の要請には十分に応えられるものではなく、更なる改良を図る必要性がある。
【0010】
【特許文献1】特開平9−136394号公報
【特許文献2】特開平11−34288号公報
【特許文献3】特開2000−318120号公報
【特許文献4】特開2006−62241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、大面積の被印刷面を有する大型の被印刷体に対しても精度に優れたスクリーン印刷を行うことができ、印刷精度に優れたスクリーン印刷体を製造可能なスクリーン印刷体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、被印刷体とスクリーンとのクリアランスと、形成される印刷パターンの印刷位置ズレ量との相関関係に基づいて、被印刷体とスクリーンとの最適クリアランスを選択及び設定することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明によれば、以下に示すスクリーン印刷体の製造方法が提供される。
【0014】
[1]平板状の被印刷体の上方に所定のクリアランスを保持した状態で平行に配設された、開口部が形成されたマスク材を有するスクリーンと、前記スクリーンが張設された製版枠とを備えたスクリーン製版の前記スクリーン上をスキージで所定方向に摺動して、前記被印刷体上に所定の印刷パターンが形成されたスクリーン印刷体を得るスクリーン印刷体の製造方法であって、前記製版枠の前記スキージの摺動方向軸と直行する辺の内寸(L)に対する、前記スキージの幅(W)の比(W/L)が0.45以上であり、前記W/Lの値を一定にした条件下で把握した、0.1〜2.0mmの範囲内における前記クリアランスと、前記印刷パターンの印刷位置ズレ量との相関関係に基づき、前記被印刷体と前記スクリーンとの最適クリアランスを選択及び設定するスクリーン印刷体の製造方法。
【0015】
[2]前記最適クリアランスを、下記(1)〜(5)の手順に従って選択及び設定する前記[1]に記載のスクリーン印刷体の製造方法。
(1)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の二点以上の値に前記クリアランスを設定して試し刷りを行い、第一の試行印刷体を得る。
(2)前記第一の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定した前記クリアランスに対して測定した前記印刷位置ズレ量をプロットして検量線を得る。
(3)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の一点以上の値に前記クリアランスを設定して試し刷りを行い、第二の試行印刷体を得る。
(4)前記第二の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定した前記クリアランスに対して測定した前記印刷位置ズレ量をプロットし、次いで、前記検量線をオフセットしてプロットした点を通る仮想検量線を得る。
(5)前記仮想検量線から、前記印刷パターンの印刷位置ズレ量が最も小さくなる前記最適クリアランスを選択及び設定する。
【0016】
[3]前記最適クリアランスを、下記(6)〜(8)の手順に従って選択及び設定する前記[1]に記載のスクリーン印刷体の製造方法。
(6)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の二点以上の値に前記クリアランスを設定して試し刷りを行い、第三の試行印刷体を得る。
(7)前記第三の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定した前記クリアランスに対して測定した前記印刷位置ズレ量をプロットして検量線を得る。
(8)前記検量線から、前記印刷パターンの印刷位置ズレ量が最も小さくなる前記最適クリアランスを選択及び設定する。
【0017】
[4]前記クリアランスが、0.3〜1.5mmである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のスクリーン印刷体の製造方法。
【0018】
[5]前記被印刷体が、焼成されたセラミックス基板又はセラミックスグリーンシートである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のスクリーン印刷体の製造方法。
【0019】
[6]前記被印刷体が、前記セラミックスグリーンシートであり、前記スクリーン印刷体が、その複数が積層されて得られる積層基板の構成要素である前記[5]に記載のスクリーン印刷体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスクリーン印刷体の製造方法によれば、大面積の被印刷面を有する大型の被印刷体に対しても精度に優れたスクリーン印刷を行うことができ、印刷精度に優れたスクリーン印刷体を製造することができる。また、本発明のスクリーン印刷体の製造方法によれば、印刷位置のズレ量が一定の範囲内に抑えられたスクリーン印刷体を製造することが可能である。このため、本発明のスクリーン印刷体の製造方法によって得られるスクリーン印刷体を用いれば、特にこれらの複数を積層した場合であっても、印刷位置のズレ量の総計(積層ズレ)を許容される範囲内に小さく抑えることができるため、より高性能な積層電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0022】
図1は、本発明のスクリーン印刷体の製造方法で用いるスクリーン製版の一例を示す側面図であり、図3は、スクリーン製版を製版枠ホルダに載置する状態を示す斜視図である。図1及び図3に示すように、本発明のスクリーン印刷体の製造方法の一実施形態においては、先ず、スクリーン製版5を、製版枠ホルダ11上に載置する。スクリーン製版5は、膜状のスクリーン3と、このスクリーン3が張設された製版枠4とを備えたものである。なお、図3における符号6は、スクリーン製版5を製版枠ホルダ11上に固定するエアシリンダを示す。
【0023】
図2は、本発明のスクリーン印刷体の製造方法で用いるスクリーン製版の一例を示す上面図である。図2に示すように、スクリーン製版5を構成するスクリーン3は、所定の開口形状の開口部1が一以上形成されたマスク材2を有するものである。なお、スクリーン3は、通常、紗等によって構成された膜状の支持部材(スクリーンメッシュ)を備えており、このスクリーンメッシュの少なくとも一方の膜面上にマスク材が配設されている。スクリーンメッシュを構成する材料については特に限定されないが、高強度、高剛性の材料を用いることが好ましく、具体的には、ムラカミ社製のスクリーンメッシュであるER線材、ERH線材(いずれも商品名)等の材料を好適例として挙げることができる。
【0024】
マスク材を構成する材料の具体例としては、樹脂や金属等を挙げることができる。このスクリーン3には、所望とする印刷パターンに応じた形状及び数の開口部が形成されている。なお、便宜上、図2においては開口形状が長方形の開口部1が9箇所形成された状態を示している。また、スクリーン製版5は、製版枠4にスクリーン3が張設されることによって構成されており、製版枠4は、一般的には可撓性を有する材質によって形成されている。
【0025】
図1及び図4に示すように、製版枠4のスキージの摺動方向軸と直行する辺の内寸(製版枠4の内寸)を「L」、スキージ7の幅(それ自体(スキージ7)の摺動方向軸と直行する辺の長さ)を「W」とした場合に、W/Lの値は0.45以上であることが必要であり、好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.55以上、特に好ましくは0.6以上である。W/Lの値を0.45以上とすることにより、印刷精度に優れたスクリーン印刷体を製造することができる。一般のスクリーン印刷法では、W/Lの値が0.4前後で実施されることが多い。しかしながら、被印刷体とスクリーンとのクリアランスを、印刷精度を高めるためのパラメータとして利用する場合には、W/Lの値が0.45未満であると、顕著な効果が現れない。そこで、本発明のスクリーン印刷体の製造方法では、W/Lの値を0.45以上とすることで、クリアランスを印刷精度向上のためのパラメータとして有効に利用している。また、W/Lの値を、好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.55以上、特に好ましくは0.6以上とすることにより、クリアランスを僅かに変動させただけでも印刷位置ズレ量を高感度に変動させることが可能となる。このことから、W/Lの値をより大きく設定することで、印刷位置ズレ量の微調整をし易くなるといった利点がある。なお、W/Lの値の上限については特に限定されないが、0.8以下とすることが好ましい。
【0026】
図1に示すように、スクリーン3の下方には、平板状の被印刷体10が、製版枠4の枠面と概ね平行となるように印刷ステージ12上に載置されている。被印刷体10の具体例としては、従来のスクリーン印刷で用いられているものを挙げることができる。好適な被印刷体としては、焼成されたセラミックス基板、セラミックスグリーンシート、樹脂基板、ガラス基板、及び金属基板等を挙げることができる。
【0027】
図1及び図4に示すように、本実施形態のスクリーン印刷体の製造方法では、製版枠ホルダ11上に、被印刷体10(の被印刷面)とスクリーン3とが平行となるように、スクリーン製版5を載置する。このとき、被印刷体10とスクリーン3との間に所定のクリアランスCLを保持した状態となるように、スクリーン製版5を載置する。保持するクリアランスCLは、0.1〜2.0mmの範囲内とすることが必要であり、好ましくは0.3〜1.5mmの範囲内、更に好ましくは0.4〜1.5mmの範囲内とする。クリアランスCLを0.1〜2.0の範囲内とすることにより、繰り返し印刷を行った場合であっても印刷精度が低下し難くなるといった利点がある。なお、クリアランスCLが0.1mm未満であると、形成される印刷パターンににじみ等の不具合が生ずる場合がある。一方、クリアランスCLが2.0mm超であると、スキージの摺動によって生ずるスクリーン3の伸び量が大きくなり過ぎてしまうために、高精度な印刷を繰り返し行うことが困難となる場合が想定される。
【0028】
従来、スクリーン印刷によって形成される印刷パターンの位置精度を向上するために、ガラスマスクを用いたリソグラフィの採用やメッシュの高剛性化等、主としてスクリーン製版の工夫や改良等の取り組みがなされてきた。一方、被印刷体とスクリーンとのクリアランスの調整は、形成される印刷パターンの形状を制御する因子と考えられてきた。
【0029】
これに対して本発明では、所定の数値範囲内におけるクリアランスと、形成される印刷パターンの印刷位置ズレ量(所望とする設計値からみたズレ量)とが、W/Lの値を一定にした条件下において高い相関関係を有することを見出し、この相関関係を利用して印刷位置ズレ量が最も小さくなる最適クリアランスを選択し、選択した最適クリアランスを保持した状態で被印刷体とスクリーンを配置して、スクリーン印刷を実施する。即ち、本発明のスクリーン印刷体の製造方法は、印刷パターンの位置精度を向上するための手段としては従来着目されていなかった、被印刷体とスクリーンとのクリアランス調整により、印刷パターンの印刷位置ズレ量を低減し、印刷精度に優れたスクリーン印刷体を製造可能とする方法である。以下、最適クリアランスを選択及び設定する方法を中心に、本発明のスクリーン印刷体の製造方法の更なる詳細について説明する。
【0030】
本発明において、最適クリアランスを選択及び設定する方法の具体例としては、以下に示す(1)〜(5)の手順による方法(第一の選択及び設定方法)、並びに(6)〜(8)の手順による方法(第二の選択及び設定方法)を挙げることができる。
【0031】
(第一の選択及び設定方法)
(1)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の二点以上の値にクリアランスを設定して試し刷りを行い、第一の試行印刷体を得る(手順(1))。次いで、(2)第一の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定したクリアランスに対して測定した印刷位置ズレ量をプロットして検量線を得る(手順(2))。
【0032】
手順(2)においては、設定したそれぞれのクリアランス(mm)に対して、測定した印刷位置ズレ量(mm)をプロットして検量線を作成する。検量線は、プロットした点に基づいてn次最小自乗法によって作成すればよい。
【0033】
次に、(3)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の一点以上の値にクリアランスを設定して試し刷りを行い、第二の試行印刷体を得る(手順(3))。手順(3)においては、通常、手順(2)で用いたスクリーン製版とは同一の設計仕様であるが異なる(別個体の)スクリーン製版を使用する。同一の設計仕様によるスクリーン製版同士は、一般的に、個体差があるために同一のクリアランスであっても異なる印刷位置ズレ量となる場合が多い。但し、設計仕様が同一であるために、別個体であっても、クリアランスと印刷位置ズレ量との相関関係が相互に近似しているものと想定することができる。
【0034】
手順(3)において設定するクリアランスの点数は1点以上であればよい。但し、3点以上のクリアランスを設定とすると、手順が煩雑となるために好ましくない。
【0035】
その後、(4)第二の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定したクリアランスに対して測定した印刷位置ズレ量をプロットし、次いで、検量線をオフセットしてプロットした点を通る仮想検量線を得る(手順(4))。手順(4)においては、手順(2)と同様、設定したクリアランス(mm)に対して、測定した印刷位置ズレ量(mm)をプロットする。
【0036】
次に、手順(2)で作成した検量線(1)をY軸方向にオフセットし、プロットした点を通る仮想検量線を作成する。検量線は、X軸(クリアランス)方向及び/又はY軸(印刷位置ズレ量)方向にオフセットすればよい。
【0037】
次いで、(5)作成した仮想検量線から、印刷パターンの印刷位置ズレ量が最も小さくなる最適クリアランスを選択及び設定する(手順(5))。手順(5)においては、印刷位置ズレ量=0(mm)と仮想検量線との交点から、スクリーン製版についての最適クリアランスを読み取る。その後、被印刷体とスクリーンとのクリアランスを、読み取った最適クリアランスの値に設定し、その状態でスクリーン印刷を実施すればよい。
【0038】
(第二の選択及び設定方法)
(6)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の二点以上の値にクリアランスを設定して試し刷りを行い、第三の試行印刷体を得る(手順(6))。次いで、(7)第三の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定したクリアランスに対して測定した前記印刷位置ズレ量をプロットして検量線を得る(手順(7))。手順(6)において設定するクリアランスの点数は2点以上であればよいが、印刷位置ズレ量とのより高い相関性を得るためには、3点以上のクリアランスを設定することが好ましく、4〜5点のクリアランスを設定することが更に好ましい。但し、8点以上のクリアランスを設定とすると、手順が煩雑となるために好ましくない。
【0039】
手順(7)においては、設定したそれぞれのクリアランス(mm)に対して、測定した印刷位置ズレ量(mm)をプロットして検量線を作成する。検量線は、プロットした点に基づいてn次最小自乗法によって作成すればよい。
【0040】
次に、(8)検量線から、印刷パターンの印刷位置ズレ量が最も小さくなる最適クリアランスを選択及び設定する(手順(8))。手順(8)においては、印刷位置ズレ量=0(mm)と仮想検量線との交点から、スクリーン製版についての最適クリアランスを読み取る。その後、検量線を作成したスクリーン製版を使用し、被印刷体とスクリーンとのクリアランスを読み取った最適クリアランスの値に設定し、その状態でスクリーン印刷を実施すればよい。
【0041】
上述のように、第一の選択及び設定方法によって最適クリアランスを選択及び設定する場合には、検量線を作成するのに使用したスクリーン製版と、実際の印刷を行うスクリーン製版とが、同一の設計仕様(ロット)であるが別個体であるときに特に有効である。一方、第二の選択及び設定方法によって最適クリアランスを選択及び設定する場合には、検量線を作成するのに使用したスクリーン製版と、実際の印刷を行うスクリーン製版とが同一個体であることを前提としている。
【0042】
また、図5から、W/Lの値が0.4である場合にはクリアランスと印刷位置ズレとの相関性が低いのに対し、W/Lの値が0.45、0.5、0.6、及び0.67である場合にはクリアランスと印刷位置ズレとの相関性が極めて高いことが明らかである。このため、W/Lの値を0.45以上に設定すると、クリアランスと印刷位置ズレとの相関性を的確に把握することが可能となる。また、図5から、W/Lの値を0.45→0.5→0.6→0.67と高く設定するに従って、クリアランス(mm)に対して印刷位置ズレ量(mm)をプロットして得られる直線(一次関数グラフ)の傾きが大きくなることが明らかである。即ち、W/Lの値を大きく設定すると、クリアランスを調整することで、印刷位置ズレ量が高感度に変動することが分かる。
【0043】
本発明のスクリーン印刷体の製造方法においては、印刷パターンの印刷位置ズレ量と極めて相関性が高く、印刷パターンの印刷位置ズレ量を高感度に微調整可能な、被印刷体とスクリーンとのクリアランスをパラメータとし、最適なクリアランスを選択して印刷を行うため、極めて精度の高い印刷を行なうことができる。従って、高精度の所定の印刷パターンが形成されたスクリーン印刷体を簡易に製造することができる。また、一般的なスクリーン製版とスクリーン印刷機を、特段の改造等をすることなく使用可能であるために汎用性が高く、印刷コストの低減を図ることができる。
【0044】
次に、スクリーン印刷体の製造方法の第二の実施態様について説明する。スクリーン印刷体の製造方法の第二の実施態様は、平板状の被印刷体の上方に所定のクリアランスを保持した状態で平行に配設された、開口部が形成されたマスク材を有するスクリーンと、スクリーンが張設された製版枠とを備えたスクリーン製版のスクリーン上をスキージで所定方向に摺動して、被印刷体上に所定の印刷パターンが形成されたスクリーン印刷体を得るスクリーン印刷体の製造方法であり、製版枠の枠内面積が90000mm以上であり、製版枠のスキージの摺動方向軸と直行する辺の内寸(L)に対する、スキージの幅(W)の比(W/L)が0.45〜0.8であり、クリアランスを一定にした条件下で把握した、W/Lの値と、印刷パターンの印刷位置ズレ量との相関関係に基づき、最適幅のスキージを選択して使用するスクリーン印刷体の製造方法である。以下、その詳細について説明する。
【0045】
スクリーン印刷体の製造方法の第二の実施態様においては、図1及び図3に示すように、先ず、スクリーン製版5を、製版枠ホルダ11上に載置する。第二の実施態様においては、図1及び図4に示すように、製版枠4のスキージの摺動方向軸と直行する辺の内寸(製版枠4の内寸)を「L」、スキージ7の幅(それ自体(スキージ7)の摺動方向軸と直行する辺の長さ)を「W」とした場合に、W/Lの値は0.45〜0.8であることが必要であり、好ましくは0.5〜0.8、更に好ましくは0.55〜0.8、特に好ましくは0.6〜0.75である。W/Lの値を0.45〜0.8の範囲内とすることにより、印刷精度に優れたスクリーン印刷体を製造することができる。一般のスクリーン印刷法では、W/Lの値が0.4前後で実施されることが多い。しかしながら、被印刷体とスクリーンとのクリアランスを、印刷精度を高めるためのパラメータとして利用する場合には、W/Lの値が0.45未満であると、顕著な効果が現れない。そこで、スクリーン印刷体の製造方法の第二の実施態様では、W/Lの値を0.45〜0.8とすることで、クリアランスを印刷精度向上のためのパラメータとして有効に利用している。
【0046】
図1及び図4に示すように、スクリーン印刷体の製造方法の第二の実施態様では、製版枠ホルダ11上に、被印刷体10(の被印刷面)とスクリーン3とが平行となるように、スクリーン製版5を載置する。このとき、被印刷体10とスクリーン3との間に所定のクリアランスCLを保持した状態となるように、スクリーン製版5を載置する。保持するクリアランスCLは0.5mm以上であることが必要であり、好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは1.0mm以上である。なお、クリアランスCLの上限値については特に限定されないが、2.0mm以下とすることが好ましい。クリアランスCLを2.0mm以下とすることにより、繰り返し印刷を行った場合であっても印刷精度が低下し難くなるといった利点がある。また、クリアランスCLを0.7mm以上、更に好ましくは1.0mm以上とすることにより、W/Lの値を僅かに変動させただけでも印刷位置ズレ量を高感度に変動させることが可能となる。このことから、クリアランスCLをより大きく設定することで、印刷位置ズレ量の微調整をし易くなるといった利点がある。
【0047】
第二の実施態様では、W/Lの値と、形成される印刷パターンの印刷位置ズレ量(所望とする設計値からみたズレ量)とが、クリアランスCLを一定にした条件下において高い相関関係を有することを見出し、この相関関係を利用して印刷位置ズレ量が最も小さくなる最適幅のスキージを選択し、選択したスキージを使用してスクリーン印刷を実施する。即ち、スクリーン印刷体の製造方法の第二の実施態様は、印刷パターンの位置精度を向上するための手段としては従来着目されていなかったスキージの幅に着目して最適なものを選択することにより、印刷パターンの印刷位置ズレ量を低減し、印刷精度に優れたスクリーン印刷体を製造可能とする方法である。以下、第二の実施態様の更なる詳細につき、最適幅のスキージを選択する方法を中心にして説明する。
【0048】
第二の実施態様において、最適幅のスキージを選択する方法の具体例としては、以下に示す(9)〜(13)の手順による方法(第一の選択方法)、並びに(14)〜(16)の手順による方法(第二の選択方法)を挙げることができる。
【0049】
(第一の選択方法)
(9)0.45〜0.8の範囲内における任意の二点以上の値にW/Lの値を設定して試し刷りを行い、第四の試行印刷体を得る(手順(9))。次いで、(10)第四の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定したW/Lの値に対して測定した印刷位置ズレ量をプロットして検量線を得る(手順(10))。
【0050】
図6は、検量線及び仮想検量線をプロットした他の例を示すグラフである。図6においては、クリアランスCLを0.5mm(△)、1.0mm(●)、1.3mm(◇)、及び1.5mm(□)に設定するとともに、0.4〜0.8の範囲内においてW/Lの値を0.1刻みで設定し、それぞれのW/Lの値とした状態で試し刷りを実施している。手順(9)において設定するW/Lの値の点数は2点以上であればよいが、印刷位置ズレ量とのより高い相関性を得るためには、3点以上のW/Lの値を設定することが好ましく、4〜5点のW/Lの値を設定することが更に好ましい。但し、8点以上のW/Lの値を設定すると、手順が煩雑となるために好ましくない。
【0051】
また、図6から、クリアランスCLが0.5mmである場合には、W/Lの値と印刷位置ズレとの相関性が低いのに対し、クリアランスCLが1.0mm、1.3mm、及び1.5mmである場合には、W/Lの値と印刷位置ズレとの相関性が極めて高いことが明らかである。このため、クリアランスCLを1.0mm以上に設定すると、クリアランスと印刷位置ズレとの相関性を的確に把握することが可能となる。また、図6から、クリアランスCLを1.0mm→1.3mm→1.5mmと大きく設定するに従って、W/Lの値に対して印刷位置ズレ量(mm)をプロットして得られる直線(一次関数グラフ)の傾きが大きくなることが明らかである。即ち、クリアランスCLを大きく設定すると、スキージの幅を調整することで、印刷位置ズレ量が高感度に変動することが分かる。
【0052】
手順(10)においては、図6に示すように、設定したそれぞれのW/Lの値に対して、測定した印刷位置ズレ量(mm)をプロットして検量線を作成する。検量線は、プロットした点に基づいてn次最小自乗法によって作成すればよい。
【0053】
次に、(11)0.45〜0.8の範囲内における任意の一点以上の値にW/Lの値を設定して試し刷りを行い、第五の試行印刷体を得る(手順(11))。手順(11)においては、通常、手順(10)で用いたスクリーン製版とは同一の設計仕様であるが異なる(別個体の)スクリーン製版を使用する。同一の設計仕様によるスクリーン製版同士は、一般的に個体差があるため、同一のW/Lの値に設定したとしても異なる印刷位置ズレ量となる場合が多い。但し、設計仕様が同一であるために、別個体であっても、W/Lの値と印刷位置ズレ量との相関関係が相互に近似しているものと想定することができる。
【0054】
手順(11)において設定するW/Lの値の点数は1点以上であればよい。但し、3点以上のW/Lの値を設定とすると、手順が煩雑となるために好ましくない。
【0055】
その後、(12)第五の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定したW/Lの値に対して測定した印刷位置ズレ量をプロットし、次いで、検量線をオフセットしてプロットした点を通る仮想検量線を得る(手順(12))。手順(12)においては、手順(10)と同様、設定したW/Lの値に対して、測定した印刷位置ズレ量(mm)をプロットする。
【0056】
次に、手順(10)で作成した検量線(1)をY軸方向にオフセットし、プロットした点を通る仮想検量線を作成する。検量線は、X軸(W/L)方向及び/又はY軸(印刷位置ズレ量)方向にオフセットすればよい。
【0057】
次いで、(13)仮想検量線から、印刷パターンの印刷位置ズレ量が最も小さくなるW/Lの値を満たす最適幅のスキージを選択する(手順(13))。手順(13)においては、印刷位置ズレ量=0(mm)と仮想検量線との交点から、スクリーン製版についての最適なW/Lの値を読み取る。その後、読み取った最適なW/Lの値から最適な幅を有するスキージを選択し、選択したスキージを使用してスクリーン印刷を実施すればよい。
【0058】
(第二の選択方法)
(14)0.45〜0.8の範囲内における任意の二点以上の値にW/Lの値を設定して試し刷りを行い、第六の試行印刷体を得る(手順(14))。次いで、(15)第六の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定したW/Lの値に対して測定した印刷位置ズレ量をプロットして検量線を得る(手順(15))。手順(14)において設定するW/Lの値の点数は2点以上であればよいが、印刷位置ズレ量とのより高い相関性を得るためには、3点以上のW/Lの値を設定することが好ましく、4〜5点のW/Lの値を設定することが更に好ましい。但し、8点以上のW/Lの値を設定とすると、手順が煩雑となるために好ましくない。
【0059】
手順(15)においては、設定したそれぞれのW/Lの値に対して、測定した印刷位置ズレ量(mm)をプロットして検量線を作成する。検量線は、プロットした点に基づいてn次最小自乗法によって作成すればよい。
【0060】
次に、(16)検量線から、印刷パターンの印刷位置ズレ量が最も小さくなるW/Lの値を満たす最適幅のスキージを選択する(手順(16))。手順(16)においては、印刷位置ズレ量=0(mm)と仮想検量線との交点から、スクリーン製版についての最適なW/Lの値を読み取る。その後、検量線を作成したスクリーン製版を使用し、読み取った最適なW/Lの値から最適な幅を有するスキージを選択し、選択したスキージを使用してスクリーン印刷を実施すればよい。
【0061】
上述のように、第一の選択方法によって最適幅のスキージを選択する場合には、検量線を作成するのに使用したスクリーン製版と、実際の印刷を行うスクリーン製版とが、同一の設計仕様(ロット)であるが別個体であるときに特に有効である。一方、第二の選択方法によって最適幅のスキージを選択する場合には、検量線を作成するのに使用したスクリーン製版と、実際の印刷を行うスクリーン製版とが同一個体であることを前提としている。
【0062】
スクリーン印刷体の製造方法の第二の実施態様においては、印刷パターンの印刷位置ズレ量と極めて相関性の高いW/Lの値をパラメータとし、最適幅のスキージを選択して印刷を行うため、極めて精度の高い印刷を行なうことができる。従って、高精度の所定の印刷パターンが形成されたスクリーン印刷体を簡易に製造することができる。また、一般的なスクリーン製版とスクリーン印刷機を、特段の改造等をすることなく使用可能であるために汎用性が高く、印刷コストの低減を図ることができる。
【0063】
スクリーン印刷は、具体的には以下の要領で行うことができる。即ち、スクリーン3上に所定のインクやペースト等を載せる(図1参照)。次いで、スクリーン3上でスキージ等を摺動させて開口部からペースト等を押し出せば、被印刷体10の被印刷面に、開口部の開口形状、及び開口部が複数形成されている場合には、その配列パターンに対応した印刷パターンが形成されたスクリーン印刷体を得ることができる。なお、同一の被印刷面に繰り返し印刷を行なえば、印刷パターンを積層することも可能である。
【0064】
被印刷面の面積が200mm×200mm(□200mm、40000mm)のLTCC基板(被印刷体)に対してスクリーン印刷を行う場合において、LTCC基板の積層ズレ抑制の観点から、その印刷パターンには、通常、5μm程度の位置精度が要求される。本発明のスクリーン印刷体の製造方法は、製版枠(スクリーン)のサイズ(内寸)が300mm×300mm(□300mm、90000mm)〜400mm×400mm(□400mm、160000mm)の大型である場合に特に有効である。なお、印刷パターンのサイズについては、150mm×150mm(□150mm、22500cm)以上の大型である場合に特に有効であり、180mm×180mm(□180mm、32400mm)以上であることが更に好ましい。
【0065】
本発明のスクリーン印刷体の製造方法によって得られるスクリーン印刷体としては、高精度の印刷パターンが形成された印刷体を簡易に製造することができるといった特性を生かし、少なくとも誘電体若しくは導体により構成される回路を備えたもの、又は受動素子若しくは能動素子を有するパターンを備えたものを挙げることができる。なお、受動素子としては、コンデンサ素子等を挙げることができ、能動素子としては電気機械変換素子等を挙げることができる。
【0066】
また、被印刷体が、セラミックスグリーンシートである場合には、スクリーン印刷体が、その複数が積層されて得られる積層基板の構成要素であることが好ましい。なお、この積層基板の具体例としては、LTCC基板、セラミックコンデンサ、積層型圧電アクチュエータ、NO・酸素センサー等を挙げることができる。即ち、本発明のスクリーン印刷体の製造方法によれば、高精度の印刷パターンが形成された印刷体を製造可能であるため、この印刷体を複数積層すれば、印刷体相互の積層ズレが極めて少ないLTCC基板等を簡便に作製することができる。また、このようにして作製されたLTCC基板を焼成等すれば、極めて精密に回路配置された高性能の回路基板を作製することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
(参考例1)
図4に示すようなスクリーン製版5(ムラカミ社製、内寸(L)=330mm×330mm)、及び表1に示す幅(W)のスキージ(異なる幅(W)の5種類)を使用し、0.3〜1.5mmの範囲内においてクリアランスを0.15mm刻みで設定し、それぞれのクリアランスで試し刷りを行って、9×5個の第一の試行印刷体を作製した。なお、それぞれの幅を有するスキージによって形成される印刷パターンのサイズ(P(mm)×P(mm))は、表1に示すとおりである。作製した第一の試行印刷体の印刷位置ズレ量(設計中心からのズレ量)を測定した。測定結果をプロットしたグラフを図5に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
(考察)
図5に示すように、W/Lの値が0.4である場合には、クリアランスと印刷位置ズレとの相関性が低いのに対し、W/Lの値が0.45、0.5、0.6、及び0.67である場合にはクリアランスと印刷位置ズレとの相関性が極めて高いことが明らかである。また、W/Lの値を0.45→0.5→0.6→0.67と高く設定するに従って、クリアランス(mm)に対して印刷位置ズレ量(mm)をプロットして得られる直線(一次関数グラフ)の傾きが大きくなることが明らかである。このことから、W/Lの値を大きく設定すると、印刷位置ズレ量を、クリアランスの微調整によって鋭敏にコントロール可能であることが分かる。
【0071】
(参考例2)
図4に示すようなスクリーン製版5(ムラカミ社製、内寸(L)330mm×330mm)を使用し、クリアランスCLを0.5、1.0、1.3、及び1.5mmの4段階に設定するとともに、表2に示すように0.4〜0.8の範囲内においてW/Lの値を0.1刻みで設定し、それぞれのクリアランスCL及びW/Lの値で試し刷りを行って、4×5個の第四の試行印刷体を作製した。なお、使用したスキージの幅(W(mm))、及びそれぞれのスキージによって形成される印刷パターンのサイズ(P(mm)×P(mm))は、表2に示すとおりである。作製した第四の試行印刷体の印刷位置ズレ量(設計中心からのズレ量)を測定した。測定結果をプロットしたグラフを図6に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
(考察)
図6に示すように、クリアランスCLが0.5mmである場合には、W/Lの値と印刷位置ズレとの相関性が低いのに対し、クリアランスCLが1.0mm、1.3mm、及び1.5mmである場合には、W/Lの値と印刷位置ズレとの相関性が極めて高いことが明らかである。また、クリアランスCLを1.0mm→1.3mm→1.5mmと大きく設定するに従って、W/Lの値に対して印刷位置ズレ量(mm)をプロットして得られる直線(一次関数グラフ)の傾きが大きくなることが明らかである。このことから、クリアランスCLを大きく設定すると、印刷位置ズレ量を、スキージの幅の微調整によって鋭敏にコントロール可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のスクリーン印刷体の製造方法は、微細パターンの形成が可能であるとともに汎用性が高く、量産にも適していることから、各種電子部品を製造する方法として好適である。また、本発明のスクリーン印刷体の製造方法によれば、スクリーン印刷体の位置ズレ量を、許容される一定の公差範囲内とすることが可能である。従って、本発明のスクリーン印刷体の製造方法は、複数のスクリーン印刷体を積層すること等によって積層電子部品を製造する場合に、特に顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のスクリーン印刷体の製造方法で用いる印刷機の一例を示す側面図である。
【図2】本発明のスクリーン印刷体の製造方法で用いるスクリーン製版の一例を示す上面図である。
【図3】スクリーン製版を製版枠ホルダに載置する状態を示す斜視図である。
【図4】印刷位置ズレ量の測定点を説明する模式図である。
【図5】第一の試行印刷体の印刷位置ズレ量の測定結果をプロットしたグラフである。
【図6】第四の試行印刷体の印刷位置ズレ量の測定結果をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0076】
1:開口部、2:マスク材、3:スクリーン、4:製版枠、5:スクリーン製版、6:エアシリンダ、7:スキージ、10:被印刷体、11:製版枠ホルダ、12:印刷ステージ、30:印刷パターン、A〜H:測定点、CL:クリアランス、L:製版枠の内寸、P,P:印刷パターンのサイズ、W:スキージの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の被印刷体の上方に所定のクリアランスを保持した状態で平行に配設された、開口部が形成されたマスク材を有するスクリーンと、前記スクリーンが張設された製版枠とを備えたスクリーン製版の前記スクリーン上をスキージで所定方向に摺動して、前記被印刷体上に所定の印刷パターンが形成されたスクリーン印刷体を得るスクリーン印刷体の製造方法であって、
前記製版枠の前記スキージの摺動方向軸と直行する辺の内寸(L)に対する、前記スキージの幅(W)の比(W/L)が0.45以上であり、
前記W/Lの値を一定にした条件下で把握した、0.1〜2.0mmの範囲内における前記クリアランスと、前記印刷パターンの印刷位置ズレ量との相関関係に基づき、前記被印刷体と前記スクリーンとの最適クリアランスを選択及び設定するスクリーン印刷体の製造方法。
【請求項2】
前記最適クリアランスを、下記(1)〜(5)の手順に従って選択及び設定する請求項1に記載のスクリーン印刷体の製造方法。
(1)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の二点以上の値に前記クリアランスを設定して試し刷りを行い、第一の試行印刷体を得る。
(2)前記第一の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定した前記クリアランスに対して測定した前記印刷位置ズレ量をプロットして検量線を得る。
(3)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の一点以上の値に前記クリアランスを設定して試し刷りを行い、第二の試行印刷体を得る。
(4)前記第二の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定した前記クリアランスに対して測定した前記印刷位置ズレ量をプロットし、次いで、前記検量線をオフセットしてプロットした点を通る仮想検量線を得る。
(5)前記仮想検量線から、前記印刷パターンの印刷位置ズレ量が最も小さくなる前記最適クリアランスを選択及び設定する。
【請求項3】
前記最適クリアランスを、下記(6)〜(8)の手順に従って選択及び設定する請求項1に記載のスクリーン印刷体の製造方法。
(6)0.1〜2.0mmの範囲内における任意の二点以上の値に前記クリアランスを設定して試し刷りを行い、第三の試行印刷体を得る。
(7)前記第三の試行印刷体の印刷位置ズレ量を測定するとともに、設定した前記クリアランスに対して測定した前記印刷位置ズレ量をプロットして検量線を得る。
(8)前記検量線から、前記印刷パターンの印刷位置ズレ量が最も小さくなる前記最適クリアランスを選択及び設定する。
【請求項4】
前記クリアランスが、0.3〜1.5mmである請求項1〜3のいずれか一項に記載のスクリーン印刷体の製造方法。
【請求項5】
前記被印刷体が、焼成されたセラミックス基板又はセラミックスグリーンシートである請求項1〜4のいずれか一項に記載のスクリーン印刷体の製造方法。
【請求項6】
前記被印刷体が、前記セラミックスグリーンシートであり、
前記スクリーン印刷体が、その複数が積層されて得られる積層基板の構成要素である請求項5に記載のスクリーン印刷体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−143223(P2009−143223A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284486(P2008−284486)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】