説明

スクリーン印刷用粘着シート、スクリーン印刷粘着シートおよびスクリーン印刷粘着シートの製造方法

【課題】基材としてポリオレフィン系樹脂フィルムを使用し、かつ耐カール性に優れたスクリーン印刷用粘着シート、ならびにカール量の小さいスクリーン印刷粘着シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】基材2と、粘着剤層3と、剥離材4とを積層してなる粘着シート1であって、基材2は、ポリオレフィン系樹脂フィルムを主層とし、基材2の23℃における引張弾性率E(MPa)と、基材2の雰囲気温度を5℃/分で昇温させたときに、基材2の25℃から64℃の温度領域で求められる平均線膨張係数α(/℃)との積:E×αが0〜2.5×10−1(MPa/℃)であるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷用の粘着シート、ならびにスクリーン印刷を施してなる粘着シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、二輪車等の車両に貼付されるマーキングシート、看板、ショーウィンドウ等に貼付される広告ステッカー、標識、案内表示、警告表示等に用いられる表示ラベルなどとして、スクリーン印刷が施された粘着シート(スクリーン印刷粘着シート)が多く用いられている。
【0003】
従来より、スクリーン印刷用の粘着シート(スクリーン印刷用粘着シート)の基材としては、スクリーンインキの密着性、耐候性、柔軟性、および印刷後の加熱乾燥時における耐カール性を備えたポリ塩化ビニル(PVC)系の樹脂フィルムが使用されてきた。
【0004】
しかしながら、PVC系樹脂フィルムは、焼却処分時に、PVCが熱分解して、塩化水素等の有害なガスが発生するおそれがある。
【0005】
上記問題を解決するために、ポリオレフィン系の樹脂フィルムが各種提案された(特許文献1〜5)。かかるポリオレフィン系樹脂フィルムであれば、焼却したときに、塩化水素等の有害なガスは発生しない。
【特許文献1】特開平8−157780号公報
【特許文献2】特開2000−326408号公報
【特許文献3】特開2002−370328号公報
【特許文献4】特開2003−103725号公報
【特許文献5】特開2003−119442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のポリオレフィン系樹脂フィルムでは、スクリーン印刷を施した後の加熱乾燥時のカール量が大きいという問題があった。枚葉で印刷・乾燥を行うスクリーン印刷において、加熱乾燥時のカール量が大きいと、乾燥ラックの天板に印刷層が接触して印刷層が剥がれる、また、多色刷りの際に位置合わせが困難になる等の不具合が発生する。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、基材としてポリオレフィン系樹脂フィルムを使用し、かつ耐カール性に優れたスクリーン印刷用粘着シート、ならびにカール量の小さいスクリーン印刷粘着シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、少なくとも、基材と、粘着剤層と、剥離材とを備えたスクリーン印刷用粘着シートであって、前記基材は、ポリオレフィン系樹脂フィルムを主層とし、前記基材の23℃における引張弾性率E(MPa)と、前記基材の雰囲気温度を5℃/分で昇温させたときに、前記基材の25℃から64℃の温度領域で求められる平均線膨張係数α(/℃)との積:E×αが0〜2.5×10−1(MPa/℃)であることを特徴とするスクリーン印刷用粘着シートを提供する(発明1)。
【0009】
なお、本明細書において、「シート」にはフィルムの概念、「フィルム」にはシートの概念が含まれるものとする。
【0010】
上記発明(発明1)に係るスクリーン印刷用粘着シートは、基材が上記条件を満たすことで、スクリーン印刷を施して加熱乾燥したとしてもカール量が小さく、耐カール性に優れる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記スクリーン印刷用粘着シートの昇温時または降温時に温度変化による前記基材の伸縮が拘束されたときに、前記基材の内部に生じる熱応力σ(MPa)が、9.8以下であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)において、前記基材は、ポリオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面に易接着層が設けられてなる積層シートであることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1〜3)において、前記基材のポリオレフィン系樹脂フィルムは、3層構造を有する積層フィルムであることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明4)において、前記3層構造を有する積層フィルムの中間層は、着色剤を含有してもよい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1〜5)において、前記基材のポリオレフィン系樹脂フィルムは、プロピレン成分を主成分とすることが好ましい(発明6)。
【0016】
上記発明(発明1〜6)において、前記剥離材は、上質紙の両面に樹脂層が積層され、前記粘着剤層と接する面に剥離処理がなされた剥離紙であることが好ましい(発明7)。
【0017】
上記発明(発明7)において、前記剥離紙は、秤量が130g/m以上であり、厚さが140μm以上であり、水分率が3.0〜7.0%であり、カール量が20mm以下の剥離紙であることが好ましい(発明8)。
【0018】
第2に本発明は、前記スクリーン印刷用粘着シート(発明1〜8)の基材表面にスクリーン印刷を施してなることを特徴とするスクリーン印刷粘着シートを提供する(発明9)。
【0019】
第3に本発明は、前記スクリーン印刷用粘着シート(発明1〜8)の基材表面にスクリーン印刷を施し、50〜80℃で乾燥することを特徴とするスクリーン印刷粘着シートの製造方法を提供する(発明10)。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスクリーン印刷用粘着シートは、スクリーン印刷を施して加熱乾燥したとしてもカール量が小さく、耐カール性に優れる。また、本発明のスクリーン印刷粘着シートは、基材としてポリオレフィン系樹脂フィルムを使用しているものの、カール量の小さいものとなっている。さらに、本発明のスクリーン印刷粘着シートの製造方法によれば、カール量の小さいスクリーン印刷粘着シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスクリーン印刷用粘着シート(以下、単に「粘着シート」という。)1の断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、基材2と、粘着剤層3と、剥離材4とを積層してなるものである。なお、剥離材4は、粘着シート1の使用時に剥離されるものである。
【0022】
基材2は、基材2の23℃における引張弾性率E(MPa)と、基材2の雰囲気温度を5℃/分で昇温させたときに、基材2の25℃から64℃の温度領域で求められる平均線膨張係数α(/℃)との積:E×αが0〜2.5×10−1(MPa/℃)、好ましくは0〜1.0×10−1(MPa/℃)であるものである。なお、引張弾性率Eおよび平均線膨張係数αの測定方法は、後述する実施例に示される。
【0023】
基材2のE×αが2.5×10−1(MPa/℃)以下であることによって、基材2は、スクリーン印刷を施して加熱乾燥したとしても、カール量が小さいものとなる。これにより、粘着シート1は、耐カール性に優れるものとなる。粘着シート1の耐カール性が基材2のE×αに依存することは、本願発明者が初めて見出したものであり、通常、粘着シートの物性に関してE×αのパラメータが使用されることはない。
【0024】
なお、本明細書における「カール量」とは、矩形のシートを平面に置いたときの四隅における浮き上がり量のうち最大のものをいう。
【0025】
粘着シート1の昇温時または降温時に温度変化による基材2の伸縮が拘束されたとき、基材2の内部に生じる熱応力σ(MPa)は、9.8以下であることが好ましく、特に9.0以下であることが好ましい。なお、熱応力σ(MPa)は、E(MPa)×α(/℃)×温度差ΔT(℃)で表される。また、「粘着シート1の昇温時または降温時に温度変化による基材2の伸縮が拘束されたとき」としては、例えば、粘着シート1にスクリーン印刷を施して加熱乾燥したときが挙げられる。このとき、基材2は伸縮しようとするが、粘着剤層3を介して剥離材4に拘束されるため、基材2の内部には熱応力σが生じる。
【0026】
基材2の内部に生じる熱応力σが9.8以下であることにより、温度差が大きい場合であっても、E×αの値が小さくなるため、基材2のカール量は小さく、粘着シート1の優れた耐カール性が維持される。
【0027】
基材2は、ポリオレフィン系樹脂フィルムを主層とするものであり、ポリオレフィン系樹脂フィルムのみからなってもよいし、ポリオレフィン系樹脂フィルムに他の層が積層されたものであってもよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面にインキまたは粘着剤密着用の易接着層(プライマー層)が設けられてなる積層フィルムであってもよい。また、ポリオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面は、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂フィルムは、単層からなるフィルムであってもよいし、複数層からなる積層フィルムであってもよい。複数層からなる積層フィルムは、共押出し積層フィルムであることが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂フィルムが複数層からなる場合、各層は同一の材料からなってもよいし、異種の材料からなってもよい。層数は奇数であることが好ましく、特に3層であることが好ましい。層数が奇数であると、ポリオレフィン系樹脂フィルムの物性が厚さ方向に対称(図1中では上下対称)になり易く、カールが発生し難くなる。
【0030】
図2に示されるように、ポリオレフィン系樹脂フィルム20が3層構造を有する場合、ポリオレフィン系樹脂フィルム20は、粘着シート1の表面側の外層21と、粘着剤層3側の内層23と、外層21および内層23に挟まれる中間層22とから構成される。ポリオレフィン系樹脂フィルム20を着色する場合には、この中間層22に着色剤を含有させることが好ましい。このような構成にすることにより、ポリオレフィン系樹脂フィルム20の物性が厚さ方向に対称(図2中では上下対称)になり易く、カールが発生し難くなる。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂フィルムを構成する材料としては、E×αが上記数値範囲を満たすポリオレフィン系の樹脂(樹脂組成物を含む)であれば特に限定されないが、ポリエチレンまたはポリプロピレン単独の場合には、通常は上記数値範囲を満たさない。使用可能なポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィンの単独重合体;エチレン−プロピレン共重合体(エチレン成分≧プロピレン成分)、プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分>エチレン成分)等の2種以上のオレフィンの共重合体;およびエチレン系熱可塑性エラストマー、プロピレン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系熱可塑性エラストマー、から選ばれる2種以上の成分を含有する樹脂組成物が挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0032】
上記樹脂組成物の中でも、好ましくは、エチレン−プロピレン共重合体10〜90質量部と、プロピレン−エチレン共重合体90〜10質量部との混合物、ポリプロピレン5〜60質量部と、プロピレン−エチレン共重合体5〜90質量部と、プロピレン系熱可塑性エラストマー5〜90質量部との混合物等を使用することができる。これら樹脂組成物は、プロピレン成分を主成分とする。プロピレン成分を主成分とするポリプロピレン系樹脂は、E×αおよび熱応力σが上記数値範囲を満たし易い。
【0033】
易接着層の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を使用することができる。易接着層の厚さは、通常は0.005〜10μm、好ましくは0.01〜5μm程度である。
【0034】
基材2の厚さは、20〜300μmであることが好ましく、特に30〜250μmであることが好ましい。基材2の厚さがかかる範囲内にあることで、E×αの数値限定による耐カール性効果がより効果的なものとなる。
【0035】
粘着剤層3を構成する粘着剤の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。また、粘着剤はエマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれであってもよい。
【0036】
粘着剤層3の厚さは、通常は1〜300μm、好ましくは5〜100μm程度であるが、粘着シート1の用途に応じて適宜変更することができる。なお、粘着剤層3は、その引張弾性率E等が基材2に比べて著しく小さいため、粘着シート1の耐カール性にほとんど影響を与えない。
【0037】
剥離材4の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンなどの樹脂からなる樹脂フィルム、またはそれらをシリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したもの;グラシン紙、クレーコート紙、ラミネート紙等の紙を上記剥離剤で剥離処理した剥離紙を使用することができる。
【0038】
上記の中でも、紙、特に上質紙の両面に、ポリエチレン等からなる樹脂層が積層され、粘着剤層3と接する面に剥離処理がなされた剥離紙(ラミネート紙)を剥離材4として使用することが好ましい。剥離紙は、樹脂フィルムに剥離処理したものと比較して静電気が発生し難く、粘着シート1を貼付するときに、位置決めし易いという利点がある。また、上記のように樹脂層が紙の両面に積層されることにより、剥離材4の物性が厚さ方向に対称(図1中では上下対称)になり易く、剥離材4自体にカールが発生し難くなる。さらには、紙中の水分が外部に移動しにくいため、含水量の変化に起因する剥離材4のカールを防止することができる。
【0039】
上記剥離紙は、紙の秤量が130g/m以上、特に135g/m以上であり、紙の厚さが140μm以上、特に145μm以上であり、紙の水分率が3.0〜7.0%、特に3.5〜6.5%であり、剥離紙のカール量が20mm以下、特に15mm以下であるものが好ましい。剥離紙が上記条件を満たすことで、粘着シート1の優れた耐カール性が維持される。
【0040】
剥離材4の厚さは、通常10〜250μm程度であり、好ましくは20〜200μm程度である。
【0041】
粘着シート1の製造は、常法によって行えばよく、例えば、剥離材4の剥離面(剥離性を有する面)に粘着剤層3を形成した後、粘着剤層3の表面に基材2を圧着すればよい。粘着剤層3は、粘着剤層3を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって剥離材4の剥離面に塗布して乾燥させることによって形成することができる。
【0042】
以上説明した粘着シート1の基材2の表面にスクリーン印刷を施し、加熱乾燥、好ましくは50〜80℃で乾燥することにより、図3に示すようなスクリーン印刷粘着シート5が得られる。このスクリーン印刷粘着シート5は、粘着シート1の基材2の表面にスクリーン印刷層6が形成されたものである。スクリーン印刷は、常法によって行えばよい。
【0043】
前述したように、基材2のE×αが2.5×10−1(MPa/℃)以下であることによって、粘着シート1は耐カール性に優れるものとなっているため、粘着シート1は、上記のようにスクリーン印刷を施して加熱乾燥したとしても、カール量が小さい。したがって、得られるスクリーン印刷粘着シート5は、カール量が小さく、平面度が高いものとなっている。
【0044】
スクリーン印刷粘着シート5のカール量は、15mm以下であることが好ましく、特に10mm以下であることが好ましい。カール量が15mmを超えると、スクリーン印刷粘着シート5が正確な位置に貼付し難いものとなり、また、スクリーン印刷粘着シート5を加熱乾燥用のラックに収納したときに、スクリーン印刷層6が天板に接触して、スクリーン印刷層6が剥がれたり崩れたりするおそれがある。
【0045】
上記粘着シート1においては、基材2がポリオレフィン系樹脂フィルムを主層とするため、PVC系樹脂フィルムからなるものと異なり、焼却したときに、塩化水素等の有害なガスは発生しない。
【0046】
得られたスクリーン印刷粘着シート5は、例えば、自動車、二輪車等の車両に貼付されるマーキングシート、看板、ショーウィンドウ等に貼付される広告ステッカー、標識、案内表示、警告表示等に用いられる表示ラベルなどとして使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1〕
融点138℃、曲げ弾性率700MPaのプロピレン−エチレンランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)50質量部と、融点140℃、曲げ弾性率200MPaのエチレン−プロピレン共重合体(多段重合型ポリオレフィン)50質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,キマソーブ944)0.1質量部とを混合した樹脂組成物を調製した。
【0049】
上記樹脂組成物を原料とし、Tダイ押出成型機により、厚さ80μmの3層積層体(層厚比は内層:中間層:外層=1:6:1)からなる透明のポリオレフィン系樹脂フィルムを作製した。
【0050】
得られたポリオレフィン系樹脂フィルムの両面をコロナ処理した後、その片面に、ポリエステルウレタン系樹脂(リンテック社製,X−2011)を乾燥後の厚さが0.2μmになるようにマイヤーバーによって塗布し、80℃で1.5分間乾燥させ、易接着層を形成した。このようにして得られた積層体を、スクリーン印刷用粘着シートの基材とした。
【0051】
上質紙の両面にポリエチレン層が積層され、片面がシリコーン樹脂系剥離剤で剥離処理された剥離紙(王子特殊紙社製,12HL,秤量:162g/m,厚さ:174μm,水分率:5.2%,カール量:1mm)の剥離面に、アクリル系溶剤型粘着剤(リンテック社製,SK−1)を乾燥後の厚さが35μmになるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させた。
【0052】
このようにして形成した粘着剤層に、上記基材を圧着し、これをスクリーン印刷用粘着シートとした。
【0053】
〔実施例2〕
実施例1において、ポリオレフィン系樹脂フィルムの中間層にのみ酸化チタン顔料を配合し(配合量:15質量部)、隠蔽率が90%の白色フィルムを得た。得られた白色のポリオレフィン系樹脂フィルムを基材として使用する以外、実施例1と同様にしてスクリーン印刷用粘着シートを作製した。
【0054】
〔実施例3〕
融点160℃、曲げ弾性率1400MPaのホモポリプロピレン20質量部と、融点138℃、曲げ弾性率700MPaのプロピレン−エチレンランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)50質量部と、融点160℃の低結晶性プロピレン単独重合体(ポリオレフィン系熱可塑性エラストマ−,結晶融解熱量ΔH:50g/J,曲げ弾性率:500MPa)30質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,キマソーブ944)0.1質量部とを混合した樹脂組成物を調製した。
【0055】
上記樹脂組成物を原料とし、Tダイ押出成型機により、厚さ100μmの3層積層体(層厚比は内層:中間層:外層=1:8:1)からなるポリオレフィン系樹脂フィルムを作製した。このとき、中間層にのみカーボンブラック顔料を配合し(配合量:1.5質量部)、上記ポリオレフィン系樹脂フィルムを黒色とした。
【0056】
得られた黒色のポリオレフィン系樹脂フィルムの両面をコロナ処理した後、その片面に、ポリエステルウレタン系樹脂(リンテック社製,X−2011)を乾燥後の厚さが0.15μmになるようにマイヤーバーによって塗布し、80℃で1.5分間乾燥させ、易接着層を形成した。
【0057】
このようにして得られた基材を使用する以外、実施例1と同様にしてスクリーン印刷用粘着シートを作製した。
【0058】
〔比較例1〕
基材として、白色のポリエチレン樹脂フィルム(ジェイフィルム社製,PEワダニユウハク70LF3カイ2PT,厚さ:70μm)を使用する以外、実施例1と同様にしてスクリーン印刷用粘着シートを作製した。
【0059】
〔比較例2〕
基材として、透明のポリプロピレン樹脂フィルム(王子特殊紙社製,アルファン SD−101,厚さ:40μm)を使用する以外、実施例1と同様にして、スクリーン印刷用粘着シートを作成した。
【0060】
〔試験例〕
(1)引張弾性率Eの測定
実施例および比較例で使用した基材のMD(Machine Direction;フィルムを製膜する際の流れ方向)およびCD(Cross Direction;フィルムを製膜する際の幅方向)について、万能試験機テンシロンを使用し、JIS K7161に準拠して、23℃下における引張弾性率E(MPa)を測定した。なお、サンプルサイズは、幅15mm、長さ(=チャック間距離)100mmとし、引張速度は200mm/分とした。結果を表1に示す。
【0061】
(2)平均線膨張係数αの測定
実施例および比較例で使用した基材のMDおよびCDについて、JIS K7197に準拠して、熱機械分析装置(マック・サイエンス社製,TMA4000S)を使用し、以下のようにして平均線膨張係数α(/℃)を測定した。サンプルサイズを、幅4.5mm、長さ(=チャック間距離)15mmとし、当該サンプルを熱機械分析装置にセットして、−2gfの一定荷重(引張方向に2gfの荷重)をかけながら、昇温速度5℃/分にて23℃から70℃(雰囲気温度として)まで昇温し、30分間保持した。このとき、25℃から64℃の温度領域(サンプル温度として)で求められる平均線膨張係数α(1/℃)を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
(3)E×αおよび熱応力σの算出
上記(1)および(2)の測定結果に基づいて、E×α(MPa/℃)および熱応力σ(MPa)を算出した。なお、熱応力σは、式:E×α×ΔTによって求められるが、ΔTは、39℃(64℃−25℃)として計算した。
【0063】
(4)カール量の測定
実施例および比較例で作製したスクリーン印刷用粘着シートを210mm×297mmに裁断し、このサンプルをスクリーン印刷乾燥用のラック中に剥離紙が下側になるようにセットし、60℃の加熱乾燥下に30分放置した。
【0064】
その後、上記サンプルをラックから取り出し、常温(23℃)下、剥離紙を下側にして60分放置した。次いで、そのサンプルを、剥離紙を下側にして平らな台上に移し、当該サンプルの四隅における台表面からの最大浮き上がり量(カール量)を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
なお、スクリーン印刷層は、粘着シートのカール量にほとんど影響を与えないため、本測定では、スクリーン印刷を施していない状態の粘着シートを測定対象とした。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から分かるように、E×αが2.5×10−1以下である(および熱応力σが9.8以下である)基材を使用したスクリーン印刷用粘着シートは、カール量が5mm以下と小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のスクリーン印刷用粘着シートは、加熱乾燥時のカールが大きいと印刷・乾燥時に支障があるスクリーン印刷用途に好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係るスクリーン印刷用粘着シートの断面図である。
【図2】3層構造を有するポリオレフィン系樹脂フィルムの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスクリーン印刷粘着シートの断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1…スクリーン印刷用粘着シート
2…基材
20…ポリオレフィン系樹脂フィルム
21…外層
22…中間層
23…内層
3…粘着剤層
4…剥離材
5…スクリーン印刷粘着シート
6…スクリーン印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材と、粘着剤層と、剥離材とを備えたスクリーン印刷用粘着シートであって、
前記基材は、ポリオレフィン系樹脂フィルムを主層とし、前記基材の23℃における引張弾性率E(MPa)と、前記基材の雰囲気温度を5℃/分で昇温させたときに、前記基材の25℃から64℃の温度領域で求められる平均線膨張係数α(/℃)との積:E×αが0〜2.5×10−1(MPa/℃)である
ことを特徴とするスクリーン印刷用粘着シート。
【請求項2】
前記スクリーン印刷用粘着シートの昇温時または降温時に温度変化による前記基材の伸縮が拘束されたときに、前記基材の内部に生じる熱応力σ(MPa)が、9.8以下であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷用粘着シート。
【請求項3】
前記基材は、ポリオレフィン系樹脂フィルムの片面または両面に易接着層が設けられてなる積層シートであることを特徴とする請求項1または2に記載のスクリーン印刷用粘着シート。
【請求項4】
前記基材のポリオレフィン系樹脂フィルムは、3層構造を有する積層フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーン印刷用粘着シート。
【請求項5】
前記3層構造を有する積層フィルムの中間層は、着色剤を含有することを特徴とする請求項4に記載のスクリーン印刷用粘着シート。
【請求項6】
前記基材のポリオレフィン系樹脂フィルムは、プロピレン成分を主成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスクリーン印刷用粘着シート。
【請求項7】
前記剥離材は、上質紙の両面に樹脂層が積層され、前記粘着剤層と接する面に剥離処理がなされた剥離紙であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスクリーン印刷用粘着シート。
【請求項8】
前記剥離紙は、秤量が130g/m以上であり、厚さが140μm以上であり、水分率が3.0〜7.0%であり、カール量が20mm以下の剥離紙であることを特徴とする請求項7に記載のスクリーン印刷用粘着シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のスクリーン印刷用粘着シートの基材表面にスクリーン印刷を施してなることを特徴とするスクリーン印刷粘着シート。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のスクリーン印刷用粘着シートの基材表面にスクリーン印刷を施し、50〜80℃で乾燥することを特徴とするスクリーン印刷粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−100715(P2010−100715A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272639(P2008−272639)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】