説明

スクロースポリエステル

本明細書に開示されたものは、スクロースポリエステルのブレンドを含む組成物であり、それぞれのスクロースポリエステルは、スクロース部分と複数の脂肪酸エステル部分とを含み、ブレンド中のスクロースポリエステルの組み合わされた脂肪酸エステル部分の百分率範囲は、トランス含量を有する炭素鎖を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロースポリエステル組成物、そのような組成物を含む製品、並びにそのような組成物及び製品の製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロースポリエステルは、それらの嵩及び形状のために、特定の天然油脂とは全く異質である融解プロファイルを有する異なる結晶構造を形成する。典型的には、米国食品医薬局によって認可されたようなOlestra(登録商標)の組成上の制限を満たしているスクロースポリエステルは、広い温度範囲にわたって、非常に均一の融解プロファイルを有する。
【0003】
スクロースポリエステルを水素化することによって、不飽和炭素鎖を有するスクロースポリエステルを、飽和炭素鎖を有するスクロースポリエステルへと変換させることによって、融点を上昇させることが可能であるが、そのようなスクロースポリエステルの融解プロファイルが均一の状態にとどまり、結果的に体温(約37℃)にて高い固形分含有量を生じる。これらのスクロースポリエステルが食品に組み込まれる場合、そのような高い固形含有量は、食品を摂取する消費者に不快な蝋のような口内触感を引き起こす。このことは、消費者が、幾分か、これら製品に関連する特有の口内触感のためにこのような製品を好むので、スクロースポリエステルがチョコレート又は他の糖菓に組み込まれる場合に特に不都合である。言い換えれば、消費者の口内で融解する製品の特質のために、特定の食品(例えば、チョコレート、フロスティング、アイシングなど)が、特に好まれる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、食品に組み込まれ得る脂肪代替物への継続的なニーズがあるが、このような脂肪代替物は、食品を摂取する際に、好ましい口内触感を消費者に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
スクロースポリエステル組成物、そのような組成物を含む製品、並びにそのような組成物及び製品の製造方法及び使用方法が開示される。
【0006】
1つの実施形態では、本開示は、スクロースポリエステルのブレンドを含む組成物を提供し、それぞれのスクロースポリエステルが、スクロース部分と複数の脂肪酸エステル部分とを含み、ブレンド中のスクロースポリエステルの約90%〜約100%が、オクタ−、ヘプタ−、及びヘキサ−スクロースポリエステルからなる群から選択され、ブレンド中のスクロースポリエステルの組み合わされた脂肪酸エステル部分の約25%〜50%が、トランス含量を有する炭素鎖を含み、ブレンド中のスクロースポリエステルの組み合わされた脂肪酸エステル部分の約60%〜約100%が、C18炭素鎖を含み、ブレンド中のスクロースポリエステルの脂肪酸エステル部分の残りが、C12〜C17又はC19〜C22炭素鎖から独立して選択される炭素鎖を含む。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、スクロース分子をエステルでトランスエステル化する工程を含む上記詳説したスクロースポリエステルの製造のプロセスを提供し、エステルが、約25%〜約50%のトランス脂肪酸含量を有する水素化油を低級アルコールでエステル化することを経て生成される。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、スクロースポリエステルと少なくとも1つの食物成分とを含む食品を提供する。
【0009】
更に別の実施形態では、本開示は、スクロースポリエステルを食品に組み込む工程を含む、改善された口内触感を有する低減された脂肪含有量の食品を提供するための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用するとき、請求項で使用されるときの冠詞「a」及び「an」は、請求又は記載されていることの1つ以上を意味すると理解される。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「包含する(include)」、「包含する(includes)」及び「包含している(including)」は、非限定的であるように意味される。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は、本開示の組成物の調製において共に使用される種々の成分を意味する。それゆえに、用語「から本質的になる」及び「からなる」は、「含む」という用語に包含される。
【0013】
本明細書で使用するとき、「完全融点」とは、固体の最後の目に見える痕跡が消失する温度を意味する。所与の組成物又は成分の完全融点は、AOCS方法Cc 1〜25(米国油脂化学協会)に従って測定される。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「低級アルコール」は、C1、C2、C3、又はC4アルコール、及びこれらの組み合わせを意味する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「融点」は、成分が固体相から液体相に変化し始める温度を意味する。
【0016】
本明細書で使用するとき、「オクタ−スクロースポリエステル」は、スクロース分子上の8つの利用可能なヒドロキシル部分が脂肪酸でエステル化されていることを意味し、用語「ヘプタ−スクロースポリエステル」は、スクロース分子上の7つの利用可能なヒドロキシル部分が脂肪酸でエステル化されていることを意味し、用語「ヘキサ−スクロースポリエステル」は、スクロース分子上の6つの利用可能なヒドロキシル部分が脂肪酸でエステル化されていることを意味し、用語「ペンタ−スクロースポリエステル」は、スクロース分子上の5つの利用可能なヒドロキシル部分が脂肪酸でエステル化されていることを意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、「固体脂肪含量」又は「SFC」は、所与の温度にて結晶形状で存在する脂肪又は油の百分率を意味する。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「固体脂肪指数」は、標準温度チェック点にての固体脂肪含量(SFC)の経験的測定値である。
【0019】
本明細書で使用するとき、「スクロースポリエステル」は、脂肪酸でエステル化されたスクロース分子上の少なくとも5つの利用可能なヒドロキシル部分を備えた、スクロースと脂肪酸とを含む組成物を意味する。
【0020】
本明細書で使用するとき、すべての試験及び測定は、特に指示がない限り、25℃で行われる。
【0021】
本出願人らの発明のパラメータの各値を求めるためには、本出願の試験方法の項で開示する試験方法を使用するべきである。
【0022】
特記しない限り、成分又は組成物の濃度はすべて、当該成分又は組成物の活性部分に関するものであり、このような成分又は組成物の市販の供給源に存在し得る不純物、例えば残留溶媒又は副生成物は除外される。
【0023】
百分率及び比率はすべて、特に指示しない限り、重量で計算される。百分率及び比率はすべて、特に指示しない限り、組成物全体を基準にして計算される。
【0024】
本明細書全体にわたって記載されるあらゆる最大数値限定は、それより小さいあらゆる数値限定を、そのような小さい数値限定が本明細書に明示的に記載されたものとして包含すると理解されるべきである。本明細書全体を通じて記載される最小数値限定は、それより大きいあらゆる数値限定を、そのような大きい数値限定が本明細書に明確に記載されているかのように包含する。本明細書全体を通じて記載される数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入るそれよりも狭いあらゆる数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲がすべて本明細書に明確に記載されているかのように包含する。
【0025】
引用されるすべての文献は、その関連部分において参照により本明細書に組み込まれるが、いずれの文献の引用もそれが本発明に関連する先行技術であることの容認として解釈されるべきではない。
【0026】
チョコレート及び他の糖菓(例えば、コーティング、フロスティング、フィリング、アイシング、焼き菓子、キャンディー及び他の食品)で有用となるためには、ノンカロリーの脂肪代替物は、理想的には室温で固体であるが、体温又はそれに近い融点を有する。チョコレート及び他の糖菓で用いられるノンカロリー脂肪代替物の融点及び融解プロファイルは、食品のこれらタイプに関連した好ましい口内触感に寄与する。理想的には、ノンカロリー脂肪代替物は、体温(約37℃)にて、固体をほとんど又は全く含まないであろう。上記のように、このような食品のスクロースポリエステルの特定の実施形態を使用することに関するような技術における問題は、消費者に好ましい口内触感を供給する食品を提供する能力である。
【0027】
本件出願者は、スクロースポリエステルが製造されるプロセスが、融解プロファイルに影響を及ぼす可能性があることも認識している。特に、本件出願者は、スクロースポリエステルの生成前に水素化された脂肪/油を用いて作られたスクロースポリエステルが、スクロースポリエステルの生成後に水素化されるスクロースポリエステルと同様な固体脂肪指数を有さないことを認識している。
【0028】
本明細書で開示されたスクロースポリエステルは、チョコレート、糖菓、又は他の同様の食品に適した好ましい口内触感を消費者に提供する。このようなスクロースポリエステルの製造のプロセス、並びにこのようなスクロースポリエステルを含む食品組成物も開示される。
【0029】
スクロースポリエステル
スクロースポリエステルのブレンドを含む組成物が開示されていて、それぞれのスクロースポリエステルは、1のスクロース部分と複数の脂肪酸エステル部分とを含み、
a.ブレンド中のスクロースポリエステルの約90重量%〜約100重量%、又は約95重量%〜約100重量%が、オクタ−、ヘプタ−、及びヘキサ−スクロースポリエステルからなる群から選択され、
b.ブレンド中のスクロースポリエステルの組み合わされた脂肪酸エステル部分の約25重量%〜約50重量%、又は約40重量%〜約50重量%、又は約40重量%〜45重量%が、トランス含量を有する炭素鎖を含み、
c.ブレンド中のスクロースポリエステルの組み合わされた脂肪酸エステル部分の約60重量%〜約100重量%、又は約75重量%〜約95重量%、又は約85重量%〜約90重量%が、C18炭素鎖を含み、ブレンド中のスクロースポリエステルの脂肪酸エステル部分の残りが、C12〜C17又はC19〜C22炭素鎖から独立して選択される炭素鎖を含む。
【0030】
1つの態様では、ブレンド中のスクロースポリエステルの組み合わされた脂肪酸エステル部分の約40重量%〜約90重量%、又は約50重量%〜約85重量%、又は約60重量%〜70重量%、又は約75%が、不飽和炭素鎖を含む。
【0031】
1つの態様では、トランス含量を有する炭素鎖は、C18:1トランス、C18:2トランス、及びこれらの組み合わせからからなる群から選択されるC18炭素鎖であってもよい。
【0032】
1つの態様では、組成物は、少なくとも1つのトランス脂肪酸を含む食用油から誘導された脂肪酸エステルを含む。1つの態様では、食用油は、菜種油、獣脂油、ココナッツ油、ババス油、コーン油、ラード、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、大豆油、キャノーラ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油、及びこれらの組み合わせから選択され得るトランス脂肪酸を含む。
【0033】
1つの態様では、組成物は、本明細書に記載された試験方法を用いて測定されたような、33.3℃にて約50,000〜約300,000、又は約100,000〜約200,000パスカル/秒のチキソトロピック性領域を示してもよい。1つの態様では、組成物は、本明細書に記載された試験方法を用いて測定されたような、33.3℃にて約50,000〜約100,000パスカル/秒のチキソトロピック性領域を示してもよい。
【0034】
1つの態様では、組成物は、
a)スクロースポリエステルが室温では液体であり得るような、スクロースポリエステルブレンド中の総重量に基づいて約60重量%〜約99重量%の、約40℃未満の完全融点を有するスクロースポリエステルと、
b)、スクロースポリエステルが室温で固体であり得るような、スクロースポリエステルブレンド中の総重量に基づいて約1重量%〜約40重量%、又は約2重量%〜約20重量%、又は約5重量%〜約8重量%の、約40℃〜約100℃、又は約60℃〜約75℃の完全融点を有するスクロースポリエステルと、を含んでもよい。
【0035】
1つの態様では、組成物は、スクロースポリエステルブレンド中の総重量に基づいて約0重量%〜約0.5重量%のペンタ−スクロースポリエステルを含んでもよい。
【0036】
1つの態様では、スクロースポリエステルブレンド中の総重量に基づいて、組成物が、
a)10℃にて、約45重量%〜約75重量%、又は約65重量%〜約75重量%固体と、
b)30℃にて、約5重量%〜約25重量%、又は約15重量%〜約20重量%固体と、
c)40℃にて、約5重量%〜約10重量%、又は約7重量%〜約10重量%固体と、を含むように、組成物は固体脂肪指数を含んでもよい。
【0037】
1つの態様では、本明細書に記載されたような組成物を製造するプロセスが開示されている。1つの態様では、プロセスは、スクロース分子をエステルでトランスエステル化する工程を含んでもよく、エステルは、約25%〜約50%のトランス脂肪酸含量を有する水素化油を低級アルコールでエステル化することを経て生成される。
【0038】
1つの態様では、プロセスは、スクロース分子を約25%〜約50%のトランス脂肪酸含量を有する水素化油でトランスエステル化する工程を含んでもよい。
【0039】
1つの態様では、プロセスは、
a.)油又は油から誘導されたメチルエステルを部分的に水素化して、約25%〜約50%のトランス脂肪酸含量を有する炭素鎖を含む油又はメチルエステルを生成する工程と、
b.)約25%〜約50%のトランス脂肪酸含量を有する炭素鎖を含む油又はメチルエステルでスクロース分子をトランスエステル化して、約25%〜約50%のトランス脂肪酸含量を有する炭素鎖を含むエステル化スクロース分子を生成する工程と、を含んでもよい。
【0040】
上記詳説された工程によって生成されたスクロースポリエステルを含むスクロースポリエステルブレンドは、水素化後スクロースポリエステルと比較したとき、消費者に摂取された際に、好ましい口内触感を有してもよい。
【0041】
1つの態様では、油は食用油を含んでもよい。1つの態様では、油は、菜種油、獣脂油、ココナッツ油、ババス油、コーン油、ラード、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、大豆油、キャノーラ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油、及びこれらの組み合わせから選択される油を含んでもよい。
【0042】
1つの態様では、本明細書に記載されるようなスクロースポリエステルと、少なくとも1つの食物成分と、を含む、食物組成物が開示される。本態様では、食物組成物はスクロースポリエステルを含んでもよく、食物組成物は、食物組成物の総重量に基づいて、約1重量%〜約99重量%、又は約10重量%〜約90重量%、又は約20重量%〜約80重量%の本明細書に記載されるようなスクロースポリエステル組成物を含んでもよい。1つの態様では、食物成分は、ココアパウダー、ココアバター、チョコレートリキュール、糖、ノンカロリー甘味剤、部分的又は全体的に非消化性の炭化水素増量剤、トリグリセリド、乳化剤、水、卵製品、砂糖、小麦粉、非前糊化デンプン、卵固形物、タンパク質固形物、風味剤、及びこれらの混合物から選択されてもよい。代表的食物組成物として、チョコレート、チョコレートコーティング、焼き菓子、フロスティング、キャンディー製品などが挙げられてもよい。別の態様では、本明細書に記載されたようなスクロースポリエステルは、揚げ物食物組成物又は炒め物食物組成物に使用されてもよい。
【0043】
1つの態様では、改善された口内触感を有する脂肪含量が低減された食品を提供する方法が開示され、方法は、上述されたような組成物を食品に組み込む工程を含んでもよい。1つの態様では、食品はチョコレートである。
【0044】
試験方法
本出願の目的のために、固体脂肪含量、トランス含量、チキソトロピック性領域並びに脂肪酸組成が次のように決定される。
【0045】
固体脂肪含量(「SFC」)−試験組成物のサンプルが、60℃(140°F)の温度に30分間又はサンプルが完全に融解されるまで加熱される。次いで、融解したサンプルが、次のように焼き戻しされる。26.7℃(80°F)にて15分間、0℃(32°F)にて15分間、26.7℃(80°F)にて30分間、並びに0℃(32°F)にて15分間。焼き戻し後に、10℃(50°F)、21.1℃(70°F)、26.7℃(80°F)、33.3℃(92°F)、並びに37℃(98.6°F)の温度でサンプルのSFC値が、それぞれの温度で30分間の平衡化の後に、パルス核磁気共鳴(PNMR)によって決定される。PNMRによってSFCを決定する方法は、Madison and Hill,J.Amer.Oil Chem.Soc.,Vol.55(1978),pp.328〜31に記載されている。PNMRによるSFCの測定は、A.O.C.S.Official Method Cd.16〜81,Official Methods and Recommended Practices of The American Oil Chemists Society.3rd.Ed.,1987にも記載されている。
【0046】
トランス含量の測定−ポリエステルサンプル中の不飽和脂肪酸の二重結合の百分率としてのトランス含量、又はトランス脂肪酸含量は、フーリエ変換赤外分光光度法(FTIR)によって決定される。使用されるFTIR法は、2009年に再承認された、AOCS Official Method Cd 14d−99,Reapproved in 2009、「Rapid Determination of Isolated trans Geometric Isomers in Fats and Oils by Attenuated Total Reflection Infrared Spectroscopy」に記載されていて、この方法は1%のトランス異性体に等しい又はそれ以上のトランス異性体を含有するサンプルに対して正確である。ポリエステルサンプルの脂肪酸組成物と共に、FTIRによって取得されたトランス値が、シス:トランス二重結合の比を計算するために用いられる。
【0047】
チキソトロピック性領域の決定−約8.0グラムのサンプルを57mmのアルミニウムパンに移動させることによって、サンプルが調製される。サンプルは、完全に液体になるまで113℃以上で加熱されて、次いで撹拌しながら29℃に冷却することによって焼き戻しされる。その後、サンプルは7日間21℃で維持される。37.8℃で維持されて、0〜800s−1にプログラムされた昇順又は降順せん断速度に関する非ニュートン流量曲線ヒステリシスを測定可能である適切な円錐及び平板レオメータ(Contraves Rheomat 115A、円錐CP−6など)を用いて、レオメータを0s−1にて120秒間維持し、次いで7.5分間で800s−1に上昇させ、そこで1秒間維持し、それから7.5分間で0s−1に下げ、チキソトロピック性領域を測定する。レオメータ精度が、Cannon ASTM Certified Viscosity Standards、S−2000及びN−350又はその等価物のような粘度標準によって確認される。平板と円錐との間のギャップを充填するために、試験サンプルの適当量がレオメータ平板上に配置される。その後、チキソトロピック性領域が測定される。
【0048】
脂肪酸組成の決定−開示されたスクロースポリエステルの脂肪酸組成は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定されてもよい。先ず初めに、スクロースポリエステルの脂肪酸メチルエステルを、当該技術分野で既知の任意の標準方法を経て(例えば、ナトリウムメトキシドを用いるトランスエステル化を経て)調製し、次いで水素炎イオン化検出器及びHewlett−Packard自動サンプラー7683モデルを装備したHewlett−Packard Model 6890ガスクロマトグラフを用いて、毛細管カラム(Supeico SP2340、60×0.32mm×0.2マイクロメートル)上で分離する。脂肪酸メチルエステルが、鎖の長さ、不飽和度、並びにシス、トランス及び共役を含む異性体変動によって分離される。方法がプログラムされ、250℃の注入温度及び325℃の検出温度で、140〜195℃の温度に昇温させて約50分間運転する。較正のために、メチルエステル参照標準Nuchek Prep(#446)が用いられる。
【実施例】
【0049】
実施例1.部分的に水素化された大豆油(Golden Brands(Louisville,Kentucky)から入手可能な生産物番号LP426)20キログラムを、撹拌器及び還流冷却器が装備された30リットルの反応槽内に配置し、ナトリウムメトキシドの226.6グラムを触媒として用いて、メタノールの5375グラムと反応させる。混合物が、65℃で6時間撹拌されて、メタノールが還流される。次いで、グリセリン副生産物が反応槽の底に沈殿するまで、反応混合物が撹拌することなく静置される。次にグリセリン層が除去され、メチルエステル層が、メチルエステルの10重量%の水で30℃にて洗浄されて、残留するメタノール、触媒、石鹸及び残存するグリセリンのすべてを除去する。洗浄工程が、更に2回繰り返される。次いで、メチルエステルが、95℃にて真空(25mm Hg(3.3kPa))下で乾燥される。続いて、メチルエステルが195℃及び〜1mm Hg(0.13kPa)絶対圧で、塗り付けフィルム蒸発器内で蒸留されて、いかなる未反応グリセリドからもメチルエステルを分離する。メチルエステルは、次の脂肪酸組成を有する。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例2.液体スクロースポリエステルサンプルが、実施例1で調製されたメチルエステルを用いて調製される。実施例1のメチルエステルの1073グラム、スクロースとパルミチン酸カリウムの粉砕した混合物の1,212グラム、及び炭酸カリウムの4.5グラムが、頭上式機械撹拌器と、加熱マントルと、窒素導入管と、を備えた5リットルの反応槽に添加される。反応フラスコの内容物を、激しく撹拌し、窒素導入を〜3時間行いながら135℃に加熱する。実施例1のメチルエステルの別の1073グラムが、K2CO3の4.5グラムと共に次いで添加される。スクロースポリエステルの総変換が>75%のオクタ−エステルを測定するまで、反応を135℃にて続ける。
【0052】
上述からの粗反応混合物を、〜230mLの水で更に水和処理し、フラスコの内容物を、撹拌することなく沈殿させる。最上層(油層)が、水和された石鹸層からデカントされる。次いで、残留する水がなくなるまで、油層を95℃(25mm Hg(3.3kPa))にて乾燥させる。次いで、油層を1%のトリシル(W.R.Graceから入手可能)で漂白処理し、漂白土を除去するために加圧濾過する。次いで、処理された油層を、塗り付けフィルム蒸発器を通過させて、残留するメチルエステルを除去する。生成した液体スクロースポリエステルは、次のような特性を有する。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
実施例3.実施例2からの液体スクロースポリエステルの93グラムが、65℃の融点を有する固体スクロースポリエステルの7グラムと混合され、スクロースポリエステルブレンドが得られる。固体スクロースポリエステルは、次の特性を有する。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
生成したスクロースポリエステルブレンド(実施例2からの液体スクロースポリエステルと上記詳述した固体スクロースポリエステルとを含む)は、次の特性を有する。
【0059】
【表6】

【0060】
【表7】

【0061】
【表8】

【0062】
実施例4.実施例3のスクロースポリエステルブレンドの特性を、Olean(登録商標)の商標名でProcter & Gamble Companyによって販売されている市販のスクロースポリエステルブレンドの特性と比較した。本実施例で使用された特定のOlean(登録商標)製品は、その水素化条件がトランス脂肪酸異性体の生成を最小にとどめるように選択される、部分的に水素化された大豆油から生成される。両サンプルの脂肪酸組成及び固体脂肪含量が以下のように比較される。
【0063】
【表9】

【0064】
【表10】

【0065】
【表11】

【0066】
実施例5.大豆油から商業規模で生成されたスクロースポリエステルが水素化されて、実施例2で記載された生産物と不飽和脂肪酸の同様なレベルを備えた液体スクロースポリエステル分画物(fraction)が生成される。この液体分画物の94gが、実施例3のサンプルブレンドで記載され、使用された同様な固体スクロースポリエステル分画物の6グラムと混合されたとき、生成されたものは、水素化後スクロースポリエステルを含むブレンドである。本ブレンドの特性が、実施例3のスクロースポリエステルブレンドの特性と比較された。
【0067】
【表12】

【0068】
【表13】

【0069】
【表14】

【0070】
実施例6.ココアパウダー62g、全乳固体173g、バニリン0.6g、並びにスクロース580gがブレンドされる。実施例3のスクロースポリエステルブレンドの216gが添加されて、混合物が再度ブレンドされる。次いで、ブレンドされた混合物を、Lehman Four−rollリファイナーに2回通過させる(200pisのNIP圧)。次に、融解したチョコレートリキュール(55g)が精粉された混合物に添加され、速度#2に設定されたHobart C−100ミキサーを用いて、60℃にて3時間乾式コンチングされる。次いで温度を50℃に下げ、Olean(登録商標)(高エライジン型)の更に50gとレシチン0.6gとを添加する。次いで、混合物が速度#1にて、16時間、52℃で湿式コンチングされる。実施例3のスクロースポリエステルブレンドの別の55gを添加し、ブレンドを40℃に冷却して、成形型に注ぎ、次のように焼き戻しする。10℃で16〜18時間、15℃で24時間、21℃で24時間。
【0071】
実施例7.スクロース80gと実施例3のスクロースポリエステテルブレンド20gとを60℃にて混合する。次いで、水3gが、レシチン0.3gと共に添加される。水が除去されるまで、Hobart C−100混合機を用いて、混合が60℃にて継続される。脱脂粉乳26gが、次いでココアパウダー12g、ココアバター3.5g、及び実施例3のスクロースポリエステル2gと共に添加される。生成物を更に2〜3時間混合し、次いで実施例3のスクロースポリエステルの更に15gが、レシチン0.4gと共に添加される。生成物が〜40℃に冷却されるまで、加熱することなく混合が継続される。次いで、混合物が成形型に注がれて、実施例6に記載したように焼き戻しされる。
【0072】
実施例8.市販されている、85%のカカオエキストラダークチョコレートバー90gが複式罐内で加熱されて、52℃(125°F)にて完全に融解される。融解したチョコレートに、製菓用粉糖14.4gが添加されて、スパチュラで混合される。次いで、実施例3のスクロースポリエステルブレンド28.6gが、添加される。混合物を複式罐から取り出し、市販されている、85%のカカオエキストラダークチョコレートバーの更に10gを混合物に添加し、混合物が46℃(115°F)に冷却するまで、撹拌しながら混合物中に融解させる。混合物にチョコレートバーの追加の10gが添加される本工程は、脂質結晶を所望の多形結晶形態に「種付する」ために用いられる。次いで、チョコレート混合物が、一口サイズの成形型に注がれて、冷蔵庫内に配置されて冷却される。チョコレート混合物が冷却の際に硬化して、成形型から取り外される。
【0073】
実施例9.同様の市販されている、実施例8からの85%のカカオエキストラダークチョコレートバーの90gが、複式罐内で加熱されて、52℃(125°F)にて完全に融解される。融解したチョコレートに、製菓用粉糖14.4gが添加されて、スパチュラで混合される。実施例4で詳説した市販のOlean(登録商標)の28.6gが、次いで添加される。混合物を複式罐から取り出し、市販されている85%のカカオエキストラダークチョコレートバーの更に10gを混合物に添加し、生成物が46℃(115°F)に冷却するまで、撹拌によって混合物内に融解させる。チョコレートバーの追加の10gを混合物に添加する本工程は、脂質結晶を所望の多形結晶形態に「種付する」ために用いられる。チョコレート混合物が、次いで一口サイズ成形型に注がれて、冷蔵庫内に配置されて冷却される。しかしながら、本実施例のチョコレート混合物は、固体形状で取り扱うために十分なほど硬化しなかった。
【0074】
実施例10.同様の市販されている、実施例8及び9からの85%のカカオエキストラダークチョコレートバーの90gが、複式罐内で加熱されて、52℃(125°F)にて完全に溶解される。溶解したチョコレートに、製菓用粉糖の14.4gが添加されて、スパチュラで混合される。実施例5からの水素化後スクロースポリエステルの28.6gが、次いで添加される。混合物を複式罐から取り出し、市販されている85%のカカオエキストラダークチョコレートバーの更に10gを混合物に添加し、生成物が46℃(115°F)に冷却するまで、混合物内に融解させる。チョコレートバーの追加の10gを混合物に添加する本工程は、脂質結晶を所望の多形結晶形態に「種付する」ために用いられる。次いで、チョコレート混合物が一口サイズの成形型に注ぎ込まれて、冷蔵庫内に配置されて冷却される。チョコレート混合物は冷却の際に硬化して、成形型から取り外される。
【0075】
口内触感に関する盲検試験の結果
実施例8によって調製されたチョコレートと実施例10によって調製されたチョコレート間の口内触感性能を評価するために、盲検試験が実施された。7人の被験者が、実施例8により調製されたチョコレートと実施例10により調製されたチョコレートとを盲検下で試食して、次いでどちらのチョコレートが、口溶け特性としても知られている口内触感に関して好ましいかが被験者に質問された。すべての7人の被験者が、口内触感に関して、実施例10によって調製されたチョコレートではなく、実施例8によって調製されたチョコレートを選択した。被験者達は、実施例8によって調製されたチョコレートの口内触感特性を、実施例10によって調製されたチョコレートと比較して、くせがなく蝋状感が少ないと説明した。
【0076】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、それぞれのそのような寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味することを意図したものである。
【0077】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願書類を含め、本明細書において引用されるすべての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、その全体を参考として本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。
【0078】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロースポリエステルのブレンドを含む組成物であって、それぞれのスクロースポリエステルが、1のスクロース部分と複数の脂肪酸エステル部分とを含み、
a.前記ブレンド中の前記スクロースポリエステルの90重量%〜100重量%が、オクタ−、ヘプタ−、及びヘキサ−スクロースポリエステルからなる群から選択され、
b.前記ブレンド中の前記スクロースポリエステルの前記組み合わされた脂肪酸エステル部分の25重量%〜50重量%が、トランス含量を有する炭素鎖を含み、
c.前記ブレンド中の前記スクロースポリエステルの前記組み合わされた脂肪酸エステル部分の60重量%〜100重量%が、C18炭素鎖を含み、前記ブレンド中の前記スクロースポリエステルの脂肪酸エステル部分の残りが、C12〜C17又はC19〜C22の炭素鎖から独立して選択される炭素鎖を含む、組成物。
【請求項2】
前記ブレンド中の前記スクロースポリエステルの前記組み合わされた脂肪酸エステル部分の40重量%〜90重量%が、不飽和炭素鎖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
トランス含量を有する前記炭素鎖が、C18:1トランス、C18:2トランス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるC18炭素鎖である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸エステル部分が、少なくとも1つのトランス脂肪酸を含む食用油から誘導され、好ましくは前記脂肪酸エステル部分が、菜種油、獣脂油、ココナッツ油、ババス油、コーン油、ラード、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、大豆油、キャノーラ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される油から誘導される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
a.前記スクロースポリエステルブレンド中の前記総重量に基づいて60重量%〜99重量%の、40℃未満の完全融点を有するスクロースポリエステルと、
b.前記スクロースポリエステルブレンド中の前記総重量に基づいて1重量%〜40重量%の、40℃〜100℃の完全融点を有するスクロースポリエステルと、を含み、
33.3℃にて50,000〜300,000パスカル/秒のチキソトロピック性領域を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記スクロースポリエステルブレンド中の前記総重量に基づいて、0重量%〜0.5重量%のペンタ−スクロースポリエステルを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記スクロースポリエステルブレンドが、前記スクロースポリエステルブレンド中の総重量に基づいて、
a.10℃にて45重量%〜75重量%固体、
b.30℃にて5重量%〜25重量%固体、並びに
c.40℃にて5重量%〜10重量%固体の固体脂肪指数を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
スクロース分子をエステルでトランスエステル化する工程を含み、前記エステルが、25%〜50%のトランス脂肪酸含量を有する水素化油を低級アルコールでエステル化することを経て生成される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の製造プロセス。
【請求項9】
スクロース分子を25%〜50%のトランス脂肪酸含量を有する水素化油でトランスエステル化する工程を含み、好ましくは前記油が食用油を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の製造プロセス。
【請求項10】
前記油が、菜種油、獣脂油、ココナッツ油、ババス油、コーン油、ラード、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、大豆油、キャノーラ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、綿実油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される油を含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
a.油又は油から誘導されたメチルエステルを部分的に水素化して、25%〜50%のトランス脂肪酸含量を有する炭素鎖を含む油又はメチルエステルを生成する工程と、
b.25%〜50%のトランス脂肪酸含量を有する炭素鎖を含む油又はメチルエステルでスクロース分子をトランスエステル化して、25%〜50%のトランス脂肪酸含量を有する炭素鎖を含むエステル化スクロース分子を生成する工程と、を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物を製造するプロセス。
【請求項12】
請求項1〜7に記載の組成物と少なくとも1つの食物成分とを含む食品。
【請求項13】
前記食品が、前記食品の総重量に基づいて1重量%〜99重量%のスクロースポリエステルブレンドを含む、請求項12に記載の食品。
【請求項14】
少なくとも1つの食物成分が、ココアパウダー、ココアバター、チョコレートリキュール、糖、ノンカロリー甘味剤、部分的又は全体的に非消化性の炭水化物増量剤、トリグリセリド、乳化剤、水、生卵、砂糖、小麦粉、非前糊化デンプン、卵固形物、タンパク質固形物、風味剤、着色剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の食品。
【請求項15】
前記食品がチョコレートである、請求項12に記載の食品。

【公表番号】特表2013−512261(P2013−512261A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541232(P2012−541232)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058471
【国際公開番号】WO2011/068817
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】