説明

スクロール式流体機械

【課題】駆動スクロール体と従動スクロール体とを同期回転させる連動機構の長寿命化及び低コスト化を実現する。
【解決手段】駆動スクロール側端板14の周縁部に貫通孔14bを穿設し、貫通孔14bにピン部材52を固定する。貫通孔14bに対面する従動スクロール側渦巻き状突起体26に基台44,46を設ける。基台44,46の対向面44a、46aに円柱形状の凹部48を刻設し、凹部48にアルミ製の回転体50を遊嵌する。回転体50に偏心孔51を穿設し、偏心孔51にピン部材52を遊嵌する。かかる構成の連動機構42Aをスクロール端板の外縁部に、等間隔に奇数個等間隔に配設する。回転体50に付加される荷重F及びFが同一面に作用するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、膨張機、及び真空ポンプとして機能するスクロール式流体機械に係り、特に、一対の駆動スクロール体及び従動スクロール体が互いに同期回転する両回転型スクロール流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動スクロール体の回転に従動スクロール体が従動して同期回転する両回転型スクロール流体機械において、駆動スクロール体と従動スクロール体とを同期回転させる連動機構は、オルダム方式、リング内をピンが案内される方式、凹部内をローラが案内される方式、及びピンクランク方式等がある。オルダム方式は特許文献1に開示され、リング内をピンが案内される方式は特許文献2に開示され、凹部内をローラが案内される方式は特許文献3に開示され、ピンクランク方式は特許文献4に開示されている。
【0003】
このうち、ピンクランク方式は、前記他の方式と比べて構造が簡単であり、しかも両スクロール体の自転運動と従動スクロール体の公転運動とを安定して行なうことができ、重心アンバランスによる振動を抑制できる利点をもつ。
【0004】
以下、特許文献4に開示されたピンクランク方式の連動機構の構成を図11〜図13により説明する。このスクロール流体機械100は、互いに連動するように配置された駆動スクロール体102と従動スクロール体112を備えている。駆動スクロール体102は、円板形状の端板104と、端板104に固着された螺旋状ラップ106とからなり、端板104に連結された駆動軸108によって回転駆動される。駆動軸108はモータ等の駆動装置に連結されている。
【0005】
従動スクロール体112は、円板形状の端板114と、端板114に固着された螺旋状ラップ116とからなり、端板114に従動軸118が連結されている。従動軸118の回転中心は、駆動軸108の回転中心に対して偏心した位置にある。端板104及び114の周縁部には、互いに対面する位置に夫々奇数個の貫通孔110及び120が設けられている。
【0006】
駆動スクロール体102と従動スクロール体112とを連動させるため、図13に示す連動機構122が設けられている。連動機構122は、円柱状中実体124と、円柱状中実体124に一体形成され、下端面及び上端面から夫々軸方向に突出した円柱状突出部126及び128とからなる。円柱状突出部126及び128の中心軸間距離Lは、駆動スクロール体102と従動スクロール体112との回転中心軸間の偏心距離と同一となるように構成されている。
【0007】
図11及び図12に示すように、円柱状突出部126は駆動スクロール側端板104の貫通孔110に軸受(図示省略)を介して挿入され、円柱状突出部128は従動スクロール側端板114の貫通孔120に軸受(図示省略)を介して挿入される。
【0008】
かかる構成において、駆動スクロール体102が矢印方向に回転すると、連動機構122を介して伝達される回転力によって、従動スクロール体112が同期回転する。同時に、従動スクロール体112は、駆動スクロール体102の回転中心の回りを距離Lだけ偏心した位置で公転する。これによって、例えば、スクロール圧縮機の場合、端板104,114と螺旋状ラップ106、116と囲まれた密閉空間に圧縮性流体が取り込まれ、圧縮されて、端板114の中心部に設けられた吐出口から、従動軸118の内部に形成された吐出路を経て吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭64−302号公報
【特許文献2】特開平1−267379号公報
【特許文献3】特開平2−305390号公報
【特許文献4】特開平4−76201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献4に開示された連動機構122では、図11に示すように、円柱状突出部126に駆動スクロール102の駆動力fが付加され、円柱状突出部128には、従動スクロール112から、駆動力fとは反対方向の反力fが付加される。また、図10に示すように、円柱状中実体124は重量をもつため、駆動スクロール102及び従動スクロール112の回転によって、遠心力fが働く。また、遠心力fに対する反力として、遠心力fと反対方向に夫々遠心力fの1/2の反力f及びfが、円柱状突出部126及び128に働く。
【0011】
このように、円柱状突出部126及び128に同一平面にない離れた作用点に力f〜fが付加されるため、円柱状中実体124に大きな曲げモーメントが発生する。駆動スクロール102及び従動スクロール112の重量が大きくなり、あるいはそれらの回転速度が大きくなると、大きな遠心力fとなり、円柱状中実体124や円柱状突出部126、128及び軸受に大きな荷重が付加される。
【0012】
そのため、駆動スクロール102の回転力を円柱状中実体124を介して従動スクロール112に安定して伝達するのが困難になる。また、連動機構122の耐久性を高くする必要があり、そのため、円柱状中実体124や円柱状突出部126、128等を高強度材料で製作せざるを得ず、高コストとなる。また、これらを鋼材等の高強度材で製作すると、重量が増加し、さらに大きな遠心力が付加されることになる。
【0013】
そこで、本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、駆動スクロールから従動スクロールへ安定して回転力を伝達可能にすると共に、長寿命化と低コスト化を可能にする連動機構を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため、本発明の両回転型スクロール流体機械は、連動機構が、駆動スクロール体及び従動スクロール体の端板が互いに対面する部位で、一方の端板に凹設された円柱形状又は円錐形状の凹部に遊嵌され、軸方向に偏心孔を有する円柱形状又は円錐形状の回転体と、他方の端板から突設され、該偏心孔に挿入遊嵌されるピン部材と、凹部と回転体との間及び偏心孔とピン部材との間の摺動面に夫々介在された回転軸受と、からなり、該連動機構がスクロール体の周方向複数箇所に設けられているものである。
【0015】
本発明装置では、凹部内で回転体が回転自在に配置され、回転体に対してピン部材が偏心した位置に摺動自在に配置されているので、特許文献4に開示されたピンクランク方式と同様に、他の方式と比べて、構造が簡単であり、両スクロール体の自転運動と従動スクロール体の公転運動とを安定して行なうことができ、重心アンバランスによる振動を抑制できる利点をもつ。
【0016】
さらに、凹部及び回転体との間、及び偏心孔とピン部材との間に形成される2つの摺動面に加わる荷重が同一面上で働くので、モーメント荷重とならない。そのため、円筒体や軸受にモーメント荷重が作用しないので、駆動スクロールの回転力を安定して従動スクロールに伝達できる。
【0017】
また、ピン部材の重量が遠心力として回転体に付加されないので、円筒体や軸受に過大なモーメント荷重や偏荷重が付加されない。そのため、駆動スクロールから従動スクロールへ安定して回転力を伝達できると共に、凹部と回転体との間、及び偏心孔とピン部材との間の摺動面の摩耗を低減できる。従って、回転体や軸受を長寿命化できると共に、回転体や軸受を高強度材で製作する必要がなくなるので、低コスト化できる。例えば、回転体をアルミニウムや樹脂等の軽量材で製作可能になり、これによって、回転体の重量軽減が可能になり、回転体に作用する遠心力を軽減できる。
【0018】
なお、本発明で、凹部と回転体との間、及び偏心孔とピン部材との間の摺動面に介在する回転軸受は、例えば、すべり軸受や転がり軸受を含むものである。また、すべり軸受として、摺動面を形成する凹部、回転体又はピン部材の表面に焼入れ硬化処理や表面硬化処理を、あるいは低摩擦化処理を行って、軸受層を形成し、摺動面の滑りを良好にする場合も含まれる。
【0019】
本発明装置において、駆動スクロール体又は従動スクロール体の一方の端板の背面に対面する位置に配置され、他方の端板の外周部位と連結された連結体を備え、連動機構を他方の端板と連結体との間に介設するようにするとよい。これによって、連動機構の配置位置が螺旋状ラップの制約を受けなくなり、螺旋状ラップより端板の中心側に配置できるようになる。そのため、連動機構に作用する遠心力をさらに低減でき、連動機構の耐久性をさらに向上できる。
【0020】
なお、連結体は、中心部にスクロール体の軸部を通す貫通孔を有する環状円板で構成され、外周端に一方の端板の外周部位と連結する連結部が形成されているとよい。これによって、連結体をコンパクト化でき、連結体を配置するためのスペースを縮減できる。そのため、スクロール流体機械を小型化できる。
【0021】
本発明装置において、凹部と回転体との間及び偏心孔とピン部材との間に夫々介在する回転軸受が、すべり軸受、又は玉軸受やころ軸受等の転がり軸受であるとよい。これによって、前記凹部と回転体との間、及び偏心孔とピン部材との間の摺動を円滑に行なうことができる。そのため、これら摺動面の焼き付きや磨耗をなくすことができる。特に、転がり軸受としたとき、前記部材間の摺動を円滑に行なうことができる。
【0022】
回転軸受を、フッ素樹脂等のように、低摩擦係数を有する自己潤滑性の材料で構成すれば、潤滑油を必要としない。また、回転軸受を転がり軸受とすれば、容易にグリース封入ができるため、潤滑油を必要としない利点がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、駆動源により回転駆動される駆動スクロール体と、該駆動スクロール体の軸心に対して偏心した位置に配置され、駆動スクロール体と連動して流体を圧縮する従動スクロール体と、該従動スクロール体を駆動スクロール体の軸心回りに公転運動をさせながら、駆動スクロール体の回転に従動して同期回転させる連動機構とを備えたスクロール式流体機械において、連動機構が、駆動スクロール体及び従動スクロール体の端板が互いに対面する部位で、一方の端板に凹設された円柱形状又は円錐形状の凹部に遊嵌され、軸方向に偏心孔を有する円柱形状又は円錐形状の回転体と、他方の端板から突設され、該偏心孔に挿入遊嵌されるピン部材と、凹部と回転体との間及び偏心孔とピン部材との間の摺動面に夫々介在された回転軸受と、からなり、該連動機構がスクロール体の周方向複数箇所に設けられているので、ピンクランク方式がもつ前述の長所に加えて、回転体や軸受に過大なモーメント荷重や偏荷重が付加されないので、駆動スクロールから従動スクロールへ安定して回転力を伝達できると共に、凹部と回転体との間、及び偏心孔とピン部材との間の摺動面の摩耗を低減できるので、回転体や軸受を長寿命化できる。また、回転体や軸受を高強度材で製作する必要がなくなるので、低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明装置の第1実施形態に係るスクロール圧縮機の正面視断面図である。
【図2】前記スクロール圧縮機を分解して示す斜視図である。
【図3】前記スクロール圧縮機を分解して別方向から視た斜視図である。
【図4】(A)は図1中のA―A線に沿う断面図であり、(B)は(A)中のC部拡大図である。
【図5】図1中のB部拡大図である。
【図6】前記スクロール圧縮機を分解した一部拡大斜視図である。
【図7】本発明装置の第2実施形態に係るスクロール圧縮機の一部拡大断面図である。
【図8】本発明装置の第3実施形態に係るスクロール圧縮機の正面視断面図である。
【図9】第3実施形態に係るスクロール圧縮機を分解して示す斜視図である。
【図10】図8のC部拡大図である。
【図11】従来のスクロール流体機械の連動機構に加わるモーメント力を示す説明図である。
【図12】従来のスクロール流体機械の連動機構に加わる遠心力を示す説明図である。
【図13】従来のスクロール流体機械の連動機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0026】
(実施形態1)
本発明をスクロール式圧縮機に適用した第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1〜図3において、本実施形態のスクロール式圧縮機10Aは、互いに連動するように配置された駆動スクロール体12と従動スクロール体22を備えている。駆動スクロール体12は、円板形状の端板14と、端板14に一体に形成された螺旋状ラップ16とからなり、端板14にボルトで連結された駆動軸18によって回転駆動される。駆動軸18は駆動モータ(図示省略)に連結されている。
【0027】
従動スクロール体22は、円板形状の端板24と、端板24と一体に形成された渦巻き形状の突起体26とからなり、端板24に従動軸28がボルト27で連結されている。端板24の中央には、圧縮された圧縮性流体が吐出する吐出口29が設けられている。従動軸28の回転中心Oは、駆動軸18の回転中心Oに対して、距離Lだけ偏心した位置にある。駆動スクロール体12及び従動スクロール体22は、螺旋状ラップ16及び26が互いに噛み合うように対面して配置され、吸入口(図示省略)を除き、ハウジング内の密閉空間に配置されている。
【0028】
該ハウジングは、ハウジング32、34及び36で構成されている。ハウジング32は、円筒形の軸受部32aと円板体32bとからなり、L型断面を形成している。ハウジング34も同様に、円筒形の軸受部34aと円板体34bとからなり、L型断面を形成している。円板体32b及び34bが互いに対面して配置され、円板体32b及び34bの外周縁にハウジング36で連結している。駆動軸18は、軸受部32aの内面に対して転がり軸受38で回転可能に支持され、従動軸28は、軸受部34aの内面に転がり軸受40で回転可能に支持されている。
【0029】
駆動スクロール体12と従動スクロール体22とを同期回転させるため、端板の周方向3箇所に、等間隔(120°ピッチ)に連動機構42Aが設けられている。以下、連動機構42Aの構成を図4〜図6に基づいて説明する。図4に示すように、3箇所に設けられた連動機構42Aのうち、2箇所の連動機構では、従動スクロール体22の渦巻き状突起体26の外周面に一体形成された基台44を備えている。残り1箇所の連動機構では、螺旋状ラップ26との間に駆動スクロール体12の螺旋状ラップ16が配置されるため、螺旋状ラップ26とは別体の基台46が端板24に固定されている。なお、連動機構42Aは、スクロール端板の周方向に等間隔に3個以上の奇数個設けるのがよい。
【0030】
図5は、螺旋状ラップ26と一体に形成された基台44を備えた連動機構を示し、図6は、螺旋状ラップ26とは別体の基台46を備えた連動機構を示す。基台44の上面(対向面)44a及び基台46の上面(対向面)46aは、螺旋状ラップ26の端面と同一高さとなるように構成されている。そのため、対向面44a及び46aは、端板14の対向面14aにほぼ接する位置関係となっている。
【0031】
対向面44a及び46aには、円柱形状の凹部48が刻設されている。該凹部48に、凹部48と同一形状を有する回転体50が遊嵌されている。一方、対向面44a、46aに対面する端板14には、断面が円形の貫通孔14bが穿設され、該貫通孔14bに円柱形状のピン部材52が装着されている。ピン部材52には拡径された鍔部54が形成されており、鍔部54が端板14の対向面14aに係止すると共に、ピン部材52の頭部にボルト56が螺着され、ボルト56の周縁部56aが端板14の背面14cに係止する。これら鍔部54及びボルト56によって、ピン部材52が端板14に固定されている。
【0032】
円筒体50はアルミ材で製造されている。回転体50には、中心から偏心した位置に、軸方向に断面円形の貫通孔51が穿設されている。回転体50の中心Oに対する貫通孔51の中心Oは、駆動軸18の回転中心Oに対する従動軸28の回転中心Oの偏心距離Lと同じ距離Lだけ偏心している。該偏心孔51にピン部材52が遊嵌されている。回転体50の外周面及び偏心孔51の表面は、表面硬化処理が施され、硬度が大きく、かつ耐摩耗性が良い軸受層50aが形成されている。
【0033】
かかる構成において、駆動スクロール12が回転中心Oを中心に自転すると、従動スクロール22は、回転中心Oを中心に同期回転すると共に、偏心距離Lを半径とした公転運動を行なう。連動機構42Aでは、回転体50が凹部48に遊嵌され、ピン部材52が偏心孔51に遊嵌されているため、これら摺動面で摺動しながら、端板24と回転体50とピン部材52とが相対運動を行なうことで、従動スクロール体22の前記公転運動を可能にする。駆動スクロール体12及び従動スクロール体22の同期回転により、ハウジング32、34及び36に設けられた吸入口(図示省略)から圧縮性流体が吸引され、端板14、24及び螺旋状ラップ16、26で形成された空間で圧縮された後、吐出口29及び従動軸28に設けられた突出路30から吐出される。
【0034】
本実施形態によれば、前記ピンクランク方式と同様に、他の方式と比べて、構造が簡単であり、かつスクロール体の回転時に、重心アンバランスによる振動を抑制できる利点をもつ。また、2箇所の摺動面に形成された軸受層50aを、例えば、フッ素樹脂等の事故潤滑性樹脂で構成すれば、潤滑油を必要としない。
【0035】
また、図4において、スクロール圧縮機10Aの作動中、回転体50にはピン部材52の重量が遠心力として付加されない。また、回転体50には、ピン部材52から荷重Fが付加されると共に、端板24から荷重Fが付加される。しかし、これらの荷重は同一平面内で作用するので、モーメント荷重とならない。即ち、回転体50に付加される荷重は、駆動スクロール体12で従動スクロール体22を駆動するために必要な駆動荷重(単純な圧縮荷重)のみとなる。
【0036】
従って、回転体50には偏荷重が付加されないので、駆動スクロール体12から従動スクロール体22へ安定して回転力を伝達できると共に、凹部48と回転体50の外周面、及び偏心孔51の内周面とピン部材52との間の摩耗を低減できる。これによって、回転体50を長寿命化できると共に、高強度材で製作する必要がなく、アルミ材や樹脂材等の軽量材料を用いることができ、低コスト化できる。
【0037】
また、本実施形態によれば、基台44、46の対向面44a、46aを駆動スクロール側端板14の対向面14a又はスペーサ58の対向面に略接する位置に配置しているので、ピン部材52の軸方向長さを短縮できると共に、円筒体50からピン部材52に加わる荷重によってピン部材52に発生する応力を低減できる。
【0038】
(実施形態2)
次に、本発明をスクロール圧縮機に適用した第2実施形態を図7によって説明する。本実施形態の連動機構42Bは、回転体50の外周面及び偏心孔51の内周面に軸受層50aを形成する代わりに、凹部48と回転体50との摺動面に転がり軸受(ころ軸受)60を介装し、偏心孔51とピン部材52との摺動面にニードルベアリング62を介装している。その他の構成は、前記第1実施形態と同一である。
【0039】
本実施形態の連動機構42Bによれば、転がり軸受60及びニードルベアリング62を設けたことによって、凹部48と回転体50との間の相対回転を一層円滑に行なうことができる。また、転がり軸受60及びニードルベアリング62に容易にグリース封入ができるため、潤滑油を必要としない。そのため、これら摺動面の焼付きや摩耗をなくすことができる。
【0040】
(実施形態3)
次に、本発明装置の第3実施形態を図8〜図10により説明する。本実施形態のスクロール圧縮機10Bは、従動スクロール体22の端板24の外径が、駆動スクロール体12の端板14の外径より大径に形成されている。端板14の背面14c側に連結キャップ70の対向面70aが対向して配置されている。連結キャップ70は、中心に駆動軸18を通すための貫通孔72が設けられている。また、連結キャップ70の外周端の3箇所に等間隔に端板24側に向けて突出した連結部74が一体形成されている。
【0041】
連結部74は、基台44及び46の低段面44b及び46bに対面する位置に設けられ、低段面44b、46bにボルト結合されている。本実施形態の連動機構42Cは、端板14の背面14cに対する連結キャップ70の対向面70aに凹部48が設けられ、凹部48に外周面に軸受層50aをもつ回転体50が摺動可能に遊嵌されている。一方、端板14の外周端に貫通孔14bが穿設され、貫通孔14bにピン部材52が挿入され、ボルト56によって固定されている。
【0042】
ピン部材52は、回転体50に穿設された偏心孔51に摺動自在に遊嵌されている。回転体50のピン部材52に接する面には軸受層50aが形成されている。なお、軸受層50aは第1実施形態の軸受層50aと同一のものである。その他の構成は第1実施形態と同一であり、同一の機器又は部位には同一符号を付している。
【0043】
かかる連動機構42Cによって、駆動スクロール体12と従動スクロール体22とは同期回転し、かつ従動スクロール体22は、駆動スクロール体12の回転中心Oの周囲に偏心距離Lで公転運動する。
【0044】
本実施形態によれば、連動機構42Cの配置位置が螺旋状ラップ16及び26の制約を受けなくなり、螺旋状ラップ16,26より端板14,24の中心側に配置できるようになる。即ち、回転軸線O及びOとピン部材52の中心との距離Rを第1実施形態より短縮できる。そのため、連動機構42Cに作用する遠心力を第1実施形態より低減でき、これによって、連動機構42Cの耐久性をさらに向上でき、長寿命化できる。
【0045】
また、連結キャップ70を、中心部に駆動スクロール体12の駆動軸18を通す貫通孔74を有する環状体で構成しているので、連結キャップ70をコンパクト化でき、連結キャップ70を配置するためのスペースを縮減できる。そのため、スクロール圧縮機10Bを小型化できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、駆動スクロール体と従動スクロール体とを同期回転させる両回転型スクロール流体機械において、連動機構に発生するモーメント荷重や偏荷重をなくし、連動機構の長寿命化及び低コスト化を実現できる。
【符号の説明】
【0047】
10A、10B スクロール圧縮機
12,102 駆動スクロール体
14,24,104,114 端板
14a、44a、46a、70a 対向面
14b、72、110、120 貫通孔
14c 背面
16,26,106,116 渦巻き状突起体
18,108 駆動軸
22,112 従動スクロール体
28,118 従動軸
29 吐出口
30 突出路
32,34,36 ハウジング
32a、34a 軸受部
32b、34b 円板体
38,40,60 転がり軸受
42A、42B、42C、122 連動機構
44,46 基台
44b、46b 低段面
48 凹部
50 回転体
50a 軸受層
51 偏心孔
52 ピン部材
54 鍔部
56 ボルト
56a 周縁部
62 ニードルベアリング
70 連結キャップ(連結体)
74 連結部
100 スクロール流体機械
124 円柱状中実体
126,128 円柱状突出部
、F 荷重
L 中心軸間距離(偏心距離)
,O、O,O 回転中心
駆動力
、f、f 反力
遠心力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動スクロール体と、該駆動スクロール体の軸心に対して偏心した位置に配置され、駆動スクロール体と連動して流体を圧縮又は膨張させる従動スクロール体と、該従動スクロール体を駆動スクロール体の軸心回りに公転運動をさせながら、駆動スクロール体の回転に連動して同期回転させる連動機構とを備えた両回転型スクロール流体機械において、
前記連動機構が、前記駆動スクロール体及び従動スクロール体の端板が互いに対面する部位で、一方の端板に凹設された円柱形状又は円錐形状の凹部に遊嵌され、軸方向に偏心孔を有する円柱形状又は円錐形状の回転体と、他方の端板から突設され、該偏心孔に挿入遊嵌されるピン部材と、前記凹部と前記回転体との間及び前記偏心孔と前記ピン部材との間の摺動面に夫々介在された回転軸受と、からなり、
該連動機構がスクロール体の周方向複数箇所に設けられていることを特徴とする両回転型スクロール流体機械。
【請求項2】
前記駆動スクロール体又は従動スクロール体の一方の端板の背面に対面する位置に配置され、他方の端板の外周部位と連結された連結体を備え、
前記連動機構が前記他方の端板と前記連結体との間に介設されていることを特徴とする請求項1に記載の両回転型スクロール流体機械。
【請求項3】
前記連結体は、中心部にスクロール体の軸部を通す貫通孔を有する環状円板で構成され、外周端に前記一方の端板の外周部位と連結する連結部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の両回転型スクロール流体機械。
【請求項4】
前記回転軸受がすべり軸受又は転がり軸受であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の両回転型スクロール流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−251427(P2012−251427A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121464(P2011−121464)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】