説明

スタッドボルトを介してスライド装着・係合するための係合ユニット

【課題】 比較的小さな押圧力によってスタッドボルトにスライド外嵌可能であり、スライド外嵌過程の後比較的大きな回転モーメントを回転固定のため及ぼしうるようにする。
【解決手段】
スタッドボルト(33)を介して差込装着し、係合するための係合ユニットが、内側部材(1)と、該内側部材(1)の上にスライド外嵌可能な外側部材(2)とを有する。内側部材(1)と外側部材(2)にはトルク吸収手段(8、9、23、24)が形成されており、これにより外側部材(2)に及ぼされるトルクが内側部材(1)に伝達される。これにより本発明の係合ユニットは、内側部材(1)がスタッドボルト(33)にスライド外嵌された後の取付け前の配置構成では、内側部材1(1)の弾性アームに形成され、スタッドボルト(33)と共同作用する係止手段が、スタッドボルト(33)に沿ってスライドすることができ、スタッドボルト(33)に沿ってスライド可能であり、外側部材(2)が内側部材(1)にスライド外嵌された後では、ネジの形式で締め付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念(前置部)による、スタッドボルト(Gewindebolzen)を介してスライド装着(ないし差込外嵌 Aufstecken)・係合するための係合ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の係合ユニットは、特許文献1から公知である。公知の係合ユニットには複数の弾性アームが装備されており、これらの弾性アームにはスタッドボルトを介して係合するための係止手段が形成されている。これによって係合ユニットは、簡単な形式とやり方でスタッドボルトにスライド外嵌される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第3525865号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基礎とする課題は、冒頭の述べた形式の係合ユニットにおいて、比較的小さな挿入力によってスタッドボルトにスライド外嵌(aufschieben)可能であり、スライド外嵌過程の終了後に比較的大きなトルクをさらなる回転固定のために加えることができるように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は冒頭に述べた形式の係合ユニットにおいて、請求項1の特徴部分の構成によって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の係合ユニットにおいて、内側部材と、この内側部材上にスライド外嵌可能な外側部材とが設けられており、内側部材に外側部材がスライド外嵌された配置構成では、内側部材に形成された弾性アームが半径方向外方への逃げ(回避)に対して阻止され、外側部材に及ぼされる比較的大きなトルクが確実に内側部材に伝達されるように前記内側部材と外側部材とは相互に適合されており、これによって内側部材が第1のステップで比較的小さなスライド押圧によってスタッドボルトにスライド外嵌され、外側部材が内側部材にスライド嵌着された後、今や(逃げを)阻止された弾性アームによりトルクが内側部材へ、ネジの場合のように、係合ユニットの締め付けのために伝達される。
【0007】
本発明のさらなる有利な実施形態は従属請求項の対象である。
【0008】
本発明のさらなる有利な構成および利点は、図面を参照した実施例の以下の説明の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】内側部材と外側部材を備える本発明の係合ユニットの実施例の斜視図であり、内側部材と外側部材とは取付け前の配置構成にあり、長手方向に相互に間隔をおいて配置され、かつ相互に結合されている。
【図2】取付け前の配置構成にある図1の実施例の縦断面図である。
【図3】スタッドボルト上で最終取付け配置構成にある、図1と図2の実施例の縦断面図である。
【図4】図3の最終取付け配置構成にある、図1から図3の実施例の断面斜視図である。
【実施例】
【0010】
図1は、内側部材1と外側部材2とを有する本発明の係合ユニットの実施例の斜視図である。
【0011】
内側部材1にはディスク状の丸い載置皿3が装備されている。この載置皿は中央に配置された導入切欠部4を、図1には図示されていないスタッドボルトを導入するために有する。さらに載置皿3には有利には、しかし必須ではないが直径方向に相互に対向する予圧舌片5、6が形成されている。この予圧舌片は周方向に伸長しており、図1に示した緩和された(自由状態の)配置構成では軸方向に、図1で観察者に向いた側の載置皿3の下面を越えて突き出ている。
【0012】
さらに内側部材1は2つの内側体7、8により形成されている。これらの内側体は、一緒になって周りを囲む基本形態においてシリンダ状の形状であり、載置皿3よりも小さな直径を有する。そしてこれらの内側体は、予圧舌片5、6とは反対の方向に載置皿3から離れるように伸長している。内側体7、8の外周は載置皿3の外周よりも小さい。
【0013】
各内側体7、8には直方体の縁部ブロック9、10が成形されている。これらの縁部ブロックは相互に直径方向に対向しており、その長手側は内側部材1の長手方向に伸長していると共に、縁部ブロックは載置皿3から間隔をおいて配置されている。載置皿3に向いた側の縁部ブロック9、10の端部と、載置皿3との間には、相互に対向する一対の係止ホック11、12、13、14が形成されている。この係止ホック(爪部)11、12、13、14は外側に向いており、周方向に対して直角に延在する縁部ブロック9、10の平坦面(側面)を越えて突き出ている。
【0014】
さらに内側部材1は、図示の実施例で相互に直径方向に対向する2つの弾性(可撓性)アーム(拡開可能アーム)15、16を有する。これらの弾性アームはそれぞれ、内側体7、8の間にある縁部ブロック9、10のほぼ中央に配置されている。図示しない実施例では、2つ以上の弾性アーム15、16を設けることもできる。
【0015】
外側部材2はディスク状の外側スリーブ17と、この外側スリーブ17に成形された装着ヘッド(ショルダ付多角形ヘッド)18とを有する。この装着ヘッドはトルクを伝達するためのものであり、通常の工具により係合できるよう、例えば図1に示すように六角ボルトとして、または他の幾何形状に構成されている。外側スリーブ17には、相互に対向する一対の係止切欠部19、20、21、22が形成されている。これらの係止切欠部は相互に対をなして、同一平面(面一)で外側スリーブ17を通って伸長しており、それぞれ係止ホック11、12、13、14により係合されるよう構成されている。
【0016】
さらに図1から外側部材2には一方では、周方向に寸法どおりに各縁部ブロック9、10を収容するための縁部ブロック収容部23、24と、各内側体7、8を収容するための内側体収容部25、26と、半径方向かつ周方向に寸法どおりに弾性アーム15、16を収容するための弾性アーム収容部27、28が構成されていることが分かる。
【0017】
図2は、図1の実施例を縦断面で示す図である。ここでの断面は弾性アーム15、16の中央を示す。図2から弾性アーム15、16がそれぞれ、弾性アームの他の領域よりも材料厚が小さく、載置皿3の近傍にあるバネ部分29によって、半径方向に弾性(可撓性)に構成されていることが分かる。各弾性アーム15、16は係止手段として係止ノーズ30、31を有する。これらの係止ノーズは半径方向で内側へ、内側体7、8と弾性アーム15、16により包囲されたスタッドボルト収容空間32に突入(突出)している。図示しない実施例では各弾性アーム15、16は係止手段として2つ以上の係止ノーズ30、31を有する。
【0018】
さらに図2から、図1と図2に示された取付(組付)け前の配置構成で内側部材1と外側部材2とは、軸方向に相互に間隔をおいて配置されていることが分かる。例えば内側部材1と外側部材2とは、図1と図2に図示しない少なくとも1つの接続部を介して相互に接続するか、または2つの個別の部材として予組付けすることができる。この接続部は押込力に対して比較的抵抗が小さいものとする。縁部ブロック収容部23、24、内側体収容部25、26、および弾性アーム収容部27、28は、図1と図2の実施例では長手方向に完全に外側部材2を通って伸長している。これにより外側部材2は、接続部が場合により破壊された後、長手方向に内側部材1に対して、外側部材2が載置皿3に当接するまでスライド可能となる。
【0019】
図3は、弾性アーム15、16のある面での縦断面において、図1と図2の実施例に示し、最終取付け配置構成において、支持部材34に固定されたスタッドボルト33と係合している。図3から、例えばスタッドボルト33が貫通する支持部材34に取付け部材35を固定するために、半径方向に装着ヘッド(Aufsatzkopf)18より突き出ている外側スリーブ17に端面側が当接する押込・回転工具によって、図1と図2に示した取付け前の配置構成で内側部材1が押し込まれる場合、係止ノーズ30、31がスタッドボルト33と接触して、スタッドボルト33に形成された外ねじ構造36が(係止ノーズ30,31を)乗り越え、その際弾性アーム15、16が外に向かって弾性的に変形し、最終的に載置皿3が最終的に取付け部材35に当接することが分かる。このときに予圧舌片5、6は、所定の予圧力により、係止ノーズ30、31が外ねじ構造36を後方から把持する位置に内側部材1を保持することによって高さ調整を行う。
【0020】
本発明の係合ユニットのこの押し込まれた配置構成では、外側部材2が図1と図2に示した取付け前の配置構成から出発して内側部材1に長手方向で、外側スリーブ17が載置皿3に当接するまで押し込まれる。最終取付け配置構成では、図3に示すように、半径方向で外側を指す弾性アーム収容部27、28の壁に当接し、半径方向外方に変位しないように確保することによって、また周方向に関し弾性アーム1、16の横(周方向側部)にある弾性アーム収容部27、28の端部に当接することによって、弾性アーム15、16が確保される。これにより係止ノーズ30、31が外ねじ構造36と確実に係合し、大きな引っ張り力を保証する。
【0021】
図4は、図1から図3の本発明の係合ユニットの実施例が図3の最終取付け配置構成にある様子を、縁部ブロック9を縦断面にして斜視図に示す。ここでの断面は、縁部ブロック9の半径方向外方を指す平坦面と平行であり、この縁部ブロック9と載置皿3との間に配置された係止ホック(爪部)11、12を通っている。図4から分かるように、係止ホック11、12は外から例えば長手の物体によってアクセスすることができる。これにより相応の力が係止ホック11、12に及ぼされると、係止ホック11、12、13、14と係止切欠部19、20、21、22との係合が解除され、載置皿3から離れる運動によって外側部材2を内側部材1から再び引き抜くことができる。
【0022】
さらに図4から、縁部ブロック9、10は周方向で外側にあるその両平坦面により、縁部ブロック収容部23、24の対向する平坦面に当接していることが分かる。これにより例えば工具の装着によりトルクが装着ヘッド18に及ぼされると、縁部ブロック9、10と外側部材2との係合を介してトルクが内側部材1に伝達され、本発明の係合ユニットをネジのように締めることができ、これにより取付け部材35が、ある程度の押し付け力によって支持部材34に固定される。さらに外ねじ構造36のネジ方向に対して反対方向のトルクが及ぼされると、本発明の係合ユニットはナットのように保守時にねじ解除(ねじ外し)されることができ、これにより取付け部材35を支持部材34から取り外すことができる。適切には、このようにして外側部材2を上に述べたように内側部材1から除去すれば、本発明の係合ユニットを所定のように再使用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 内側部材
2 外側部材
5,6 予圧手段(Vorspannungsmittel)、予圧舌片
9,10 縁部ブロック
9,10,23,24 トルク吸収部材
11〜14:19〜22 係止機構
11〜14 係止爪部(ホック)
15,16 弾性アーム(Federarm)
19〜22 係止切欠部
23,24 縁部ブロック収容部
17 外側スリーブ
27,28 弾性アーム収容部
30,31 係止手段
33 スタッドボルト(ねじ付ボルト、Gewindebolzen)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッドボルト(33)を介してスライド装着し、係合するための係合ユニットであって、
該スタッドボルト(33)を介して係合するための係止手段(30、31)が形成されている弾性アームを備える形式の係合ユニットにおいて、
内側部材(1)と、該内側部材(1)上にスライド外嵌可能な外側部材(2)とが設けられており、
前記弾性アーム(15、16)が前記内側部材(1)に形成されており、前記外側部材(2)が前記内側部材(1)にスライド外嵌された最終取付け配置構成では、前記外側部材(2)の弾性アーム収容部(27、28)によって半径方向で外方への運動が阻止されており、
前記内側部材(1)と前記外側部材(2)にはトルク吸収手段(9、10、23、24)が形成されており、
該トルク吸収手段は、前記外側部材(2)が前記内側部材(1)にスライド外嵌された最終取付け配置構成では、前記外側部材(2)を回動不能に接続するために前記内側部材(1)と相互に係合しており、
前記外側部材(2)には、トルクを及ぼす工具を装着するように構成された装着ヘッド(18)が形成されている、ことを特徴とする係合ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の係合ユニットにおいて、
前記トルク吸収手段は、前記内側部材(1)に形成され、外側に突き出た縁部ブロック(9、10)と、前記縁部ブロック(9、10)に対して相補的に前記外側部材(2)に形成された縁部ブロック収容部(23、24)とによって構成されている係合ユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載の係合ユニットにおいて、
前記内側部材(1)は、長手方向に挿入方向とは反対に作用する予圧手段(5、6)を有する係合ユニット。
【請求項4】
請求項3記載の係合ユニットにおいて、
前記プリロード手段は、前記内側部材(1)から外側を指す予圧舌片(5、6)により形成されている係合ユニット。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項記載の係合において、
前記内側部材(1)と前記外側部材(2)には係止機構(11から14、19から22)が形成されており、
該係止機構は、前記内側部材(2)にスライド外嵌された最終取付け配置構成では、軸方向にネジ解除の方向とは反対方向に前記外側部材(2)を固定する係合ユニット。
【請求項6】
請求項5記載の係合ユニットにおいて、
前記係止機構は、前記内側部材(1)に形成された係止爪部(11、12、13、14)と、前記外側部材(2)に形成された係止切欠部(19、20、21、22)とを有し、該係止切欠部に前記係止爪部(11、12、13、14)が最終取付け配置構成で係合する係合ユニット。
【請求項7】
請求項6記載の係合ユニットにおいて、
前記係止切欠部(19、20、21、22)は外に向かって開放しており、前記係止爪部(11、12、13、14)は外からアクセスでき、これにより前記係止切欠部(19、20、21、22)との係合を解除することができる係合ユニット。
【請求項8】
請求項7記載の係合ユニットにおいて、
前記外側部材(2)は外側スリーブ(17)を有しており、該外側スリーブ内には前記係止切欠部(19、20、21、22)が形成されている係合ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−509382(P2011−509382A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541706(P2010−541706)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010507
【国際公開番号】WO2009/086877
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(507046288)アー ライモント エ カンパニュイ (71)
【Fターム(参考)】