説明

スタッドボルト用結束バンド

【課題】全長が短いスタッドボルトの先端部にも確実な抜け止め状態に強固に固定できるスタッドボルト用結束バンドを提供する。
【解決手段】バンド部3の長さ方向基端側に一体に形成したバンドヘッド部4はスタッドボルト6を嵌入するボルト嵌入孔7aを有する短筒状固定部7と、バンド部3の自由先端部を挿通するバンド挿通孔部5を有する。ボルト嵌入孔7aの内部には、スタッドボルト6の嵌入により弾性拡開可能な少なくとも一対の弾性係止片12が各先端部どうしを互いに近づけ合う傾斜姿勢で相対向状に突設され、各弾性係止片12にスタッドボルト6のねじ溝に係合する少なくとも2個以上のボルト係止爪14が弾性係止片12の長さ方向に並べて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス等を結束保持してスタッドボルトに固定するためのスタッドボルト用結束バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスタッドボルト用結束バンドとして、たとえば、図5に示すように、所定長さのバンド部(図示せず)の長さ方向基端側にバンドヘッド部21を一体に形成し、該バンドヘッド部21に、トラックのシャーシ22等から突設されるスタッドボルト23の先端部を嵌入するボルト嵌入孔24を設け、該ボルト嵌入孔24の内部に、スタッドボルト23の先端部の嵌入により弾性拡開可能な一対の弾性係止片25,25を相対向状に設け、各弾性係止片25にスタッドボルト23のねじ溝に係合するボルト係止爪26を1個のみ設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−179523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トラックのシャーシ22等から突設される上記スタッドボルト23の取り付け状況によってはスタッドボルト23の先端部が十分な長さに突出されず、その突出量が比較的短い場合がある。このような場合、スタッドボルト23のねじ溝に係合するボルト係止爪26が弾性係止片25に1個だけ設けられている上記スタッドボルト用結束バンドではボルト係止爪26とスタッドボルト23のねじ溝との係合力が弱くてスタッドボルト23からの抜け止め阻止力に欠けるため、全長の短いスタッドボルト23の先端部にはバンドヘッド部21を確実に固定できなかったり、固定できたとしてもバンドヘッド部21がスタッドボルト23の先端部から抜け出し易くなったりするという問題があった。また、1個のボルト係止爪26が不慮に破損、欠損するとスタットボルト23から抜け出るという不具合が生じる。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、全長が短いスタッドボルトの先端部にも抜け止め状態に確実、強固に固定できるスタッドボルト用結束バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定長さのバンド部と、このバンド部の長さ方向基端側に一体に形成したバンドヘッド部とからなり、前記バンドヘッド部はスタッドボルトを嵌入するボルト嵌入孔を有する短筒状固定部と、前記バンド部の自由先端部を挿通するバンド挿通孔部を有しているスタッドボルト用結束バンドにおいて、前記ボルト嵌入孔の内周に、該ボルト嵌入孔の中心軸と平行な溝と凸条を円周方向に交互に設け、前記凸条の内端に前記スタッドボルトのねじ山の山頂に近接ないし当接する円弧状凹部を設けており、前記溝内には、前記スタッドボルトの嵌入により弾性拡開可能な少なくとも一対の弾性係止片が各先端部どうしを互いに近づけ合う傾斜姿勢で相対向状に突設され、各弾性係止片に前記スタッドボルトのねじ溝に係合する少なくとも2個以上のボルト係止爪が弾性係止片の長さ方向に並べて設けられていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
上記構成のスタッドボルト用結束バンドによれば、短筒状固定部のボルト嵌入孔内に設けた少なくとも一対の弾性係止片にそれぞれ少なくとも2個以上のボルト係止爪が弾性係止片の長さ方向に並べて設けられているので、スタッドボルトのねじ溝と弾性係止片との係合力を増強でき、全長の短いスタッドボルトの先端部にもバンドヘッド部を抜け止め状態に強固に固定することができる。また、バンドヘッド部は相対向する凸条の円弧状凹部間にスタッドボルトを介在させることでボルト嵌入孔の中心をスタッドボルトの軸心位置に合致させるように且つがたつきなく保持固定することができる。
【0008】
また、たとえ、ひとつの弾性係止片上に設けてある1個のボルト係止爪が不測に破損、欠損しても、残余のボルト係止爪とねじ溝との係合によりバンドヘッド部がスタットボルトから抜け出るのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示すスタッドボルト用結束バンドの斜視図、図2は図1に示すスタッドボルト用結束バンドのバンドヘッド部の断面図、図3は使用例を示す断面図、図4は図3におけるC部拡大断面図である。
【0010】
図1において、本発明に係るスタッドボルト用結束バンド1は、全体がナイロン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなる一体成形品であって、その長手方向に複数の係合突起2を列設した所定長さを有する可撓性のバンド部3と、このバンド部3の長さ方向基端側に一体に形成したバンドヘッド部4とからなる。バンドヘッド部4はバンド部3の自由先端部3aを挿通するバンド挿通孔部5と、スタッドボルト6(図3参照)を嵌入する短筒状固定部7とを有する。
【0011】
図2に示すように、バンド挿通孔部5はバンド部3の基端側にバンド挿通孔5aをバンド部3の長さ方向と直交する方向に貫通するよう一体に形成される。バンド挿通孔5aの内部には、バンド部3がこれの自由先端部3aから該バンド挿通孔5aに矢印方向aに挿入されると係合突起2が反挿入方向に引抜き不可能に係合する弾性変形自在な1個もしくは複数個の係止爪8が一体に形成されている。
【0012】
図1〜図3に示すように、短筒状固定部7はバンド挿通孔部5の外周一側部に全長の短いスタッドボルト6(図3参照)の長さに対応して短い筒状に一体に形成し、ボルト嵌入孔7aをバンド挿通孔5aと平行に貫通状に形成している。ボルト嵌入孔7aの内周には、ボルト嵌入孔7aの中心軸と平行な溝9と凸条10を円周方向に交互に設けている。各凸条10の内端にはスタッドボルト6のねじ山11の山頂に近接ないし当接する円弧状凹部10aを設けている。そして溝9内には、スタッドボルト6のb方向(図2参照)からの嵌入により弾性拡開可能な少なくとも一対(図示例では3個)の弾性係止片12,12が各先端部どうしを互いに近づけ合う傾斜姿勢で相対向状に突設される。各弾性係止片12にはスタッドボルト6のねじ山11,11間のねじ溝13に係合する少なくとも2個以上のボルト係止爪14が弾性係止片12の長さ方向に並べて設けられている。図示例ではボルト係止爪14は各弾性係止片12の最先端部と該最先端部の後ろ側とに2個並べて設けている。
【0013】
次に、上記構成のスタッドボルト用結束バンド1を用いて、例えば、図3に示すように、ワイヤハーネス等の被結束物15を結束保持してトラックのシャーシ16のスタッドボルト6に固定する使用要領の一例について説明する。
【0014】
バンド部3で被結束物15の外周を強く巻き付けて、その自由先端部3aをバンド挿通孔部5のバンド挿通孔5aに矢印方向aに挿入する。すると、バンド挿通孔5a内の係止爪8にバンド部3の係合突起2が係合してバンド部3が反挿入方向に引抜き不可能に係合するため、被結束物15が結束保持される。なお、バンド部3のバンド挿通孔5aから突出する先端部は適宜切断される。
この被結束物15の結束後または結束前には、短筒状固定部7のボルト嵌入孔7aをスタッドボルト6の先端部に嵌入すると、弾性係止片12が弾性的に拡開し、ボルト係止爪14がスタッドボルト6のねじ溝13に係合する。その際、ボルト係止爪14は少なくとも2個以上設けているので、スタッドボルト6のねじ溝13と弾性係止片12との係合力を増強でき、全長の短いスタッドボルト6の先端部にもバンドヘッド部4を抜け止め状態に強固に固定することができる。また、バンドヘッド部4は相対向する凸条10,10の円弧状凹部10a,10a間にスタッドボルト6を介在させることでボルト嵌入孔7aの中心をスタッドボルト6の軸心位置に合致させるように且つがたつきなく保持固定される。
このように、結束バンド1自体をスタッドボルト6に固定すると同時に、被結束物15を結束状態のままシャーシ16側に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示すスタッドボルト用結束バンドの斜視図である。
【図2】図1に示すスタッドボルト用結束バンドのバンドヘッド部の断面図である。
【図3】使用態様例を示す断面図である。
【図4】図3におけるC部拡大断面図である。
【図5】従来例のスタッドボルト用結束バンドのバンドヘッド部の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 スタッドボルト用結束バンド
3 バンド部
4 バンドヘッド部
5 バンド挿通孔部
6 スタッドボルト
7 短筒状固定部
7a ボルト嵌入孔
9 溝
10 凸条
10a 円弧状凹部
12 弾性係止片
13 ねじ溝
14 ボルト係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さのバンド部と、このバンド部の長さ方向基端側に一体に形成したバンドヘッド部とからなり、前記バンドヘッド部はスタッドボルトを嵌入するボルト嵌入孔を有する短筒状固定部と、前記バンド部の自由先端部を挿通するバンド挿通孔部を有しているスタッドボルト用結束バンドにおいて、
前記ボルト嵌入孔の内周に、該ボルト嵌入孔の中心軸と平行な溝と凸条を円周方向に交互に設け、前記凸条の内端に前記スタッドボルトのねじ山の山頂に近接ないし当接する円弧状凹部を設けており、前記溝内には、前記スタッドボルトの嵌入により弾性拡開可能な少なくとも一対の弾性係止片が各先端部どうしを互いに近づけ合う傾斜姿勢で相対向状に突設され、各弾性係止片に前記スタッドボルトのねじ溝に係合する少なくとも2個以上のボルト係止爪が弾性係止片の長さ方向に並べて設けられていることを特徴とする、スタッドボルト用結束バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−224933(P2007−224933A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43289(P2006−43289)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】