スタンディング型バッグ製造方法及びスタンディング型バッグ
【課題】医療用輸液バッグ等の用途に適した自立型のスタンディング型バッグに関し、密閉型の菌・塵埃混入の恐れを解消する。
【解決手段】リップにおける円周方向直径対立位置に突起部を備えており、筒状シートにおける肉薄の帯状領域が形成される。肉薄の第1の帯状領域に沿ってガゼット部が形成され、その折返し部の対向面は溶着され、スタンディング型バッグの底部W1が形成される。肉薄の第2の帯状領域は中間で分割され、それぞれがスタンディング型バッグの開口部となり、輸液バックとした場合は排出口90が装着される。内容物を収容後の滅菌等熱処理による硬化があっても肉薄化によりバッグ底部の適宜の柔軟性を確保し、排液に伴うバッグのスムースな潰れを確保することができる。
【解決手段】リップにおける円周方向直径対立位置に突起部を備えており、筒状シートにおける肉薄の帯状領域が形成される。肉薄の第1の帯状領域に沿ってガゼット部が形成され、その折返し部の対向面は溶着され、スタンディング型バッグの底部W1が形成される。肉薄の第2の帯状領域は中間で分割され、それぞれがスタンディング型バッグの開口部となり、輸液バックとした場合は排出口90が装着される。内容物を収容後の滅菌等熱処理による硬化があっても肉薄化によりバッグ底部の適宜の柔軟性を確保し、排液に伴うバッグのスムースな潰れを確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気針による穿孔を不要とする軟弱医療用輸液バッグ用に適したスタンディング型バッグに関し、特に、かかるスタンディング型バッグをインフレーションシートからガゼット形状に成形して製造する方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱シートより成るスタンディング型バッグは直立姿勢での取扱いが可能であり、輸液バッグに利用した場合、混注操作等が行いやすくまた嵩張らないので輸送も効率的である。通常はシートからの貼り合わせによりスタンディング型バッグに成形するが、インフレーションシートからガゼット形状に成形して製造する方法も提案されている(特許文献1及び2)。この方法によると、インフレーション成形された筒状シートは幅方向で2個取りするため両側においてガゼット形状(内向きの断面V形状)に折り込みつつ扁平化されたシート対向面をバッグ外形線に沿って所定幅で溶着(シール)し、長手方向及び幅方向でカットすることによりスタンディング型バッグに切り出している(特許文献1及び2参照)。ガゼット形状部においては溶着部の内側が襠(まち)となり、この部分をスタンディング型バッグの底面とすることができる。溶融樹脂を環状押出口から内部の気体圧力下で筒状に成形するというインフレーションによる製法原理上、筒状シートの内部は外気に直接晒されることがないため、筒状シートの内部は完全な塵埃フリーの環境となり、医療用輸液バッグ等の用途には特に適している。即ち、輸液バッグは、菌に対し後工程で滅菌処理があるため完璧な無菌は求められていないが、直接内容液が入るため無塵埃は必須条件であり、上記特許による方法はこの条件を満たしている。
【特許文献1】特開平9−174719号公報
【特許文献2】特開平11−130091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
軟弱シートよりなるスタンディング型バッグは輸液用バッグとした場合に通気針を使用せずに排出(輸液)が可能であり、衛生上の観点から最近の主流となっている。軟弱タイプの輸液バッグの場合、内部には一定量の空気(気体)が封入されており、排液の進行とともに輸液バック全体がスムースに潰れて行くことが残液量の目視判断の的確のために望ましい。即ち、封入空気との境界面が残液レベルであり、排液の進行とともにバックが潰れることにより、排液の進行に伴い境界面を比例的に下降させることができる。通常のスタンディング型バッグにあっては、その底部はシート貼り合わせ(溶着)によって製袋している。そして、内容物(輸液バックの場合は輸液)を充填し、レトルト釜にて適宜な高温で熱処理(滅菌)をするが、この際の熱により結晶化が進み、硬化を起こし、バックの形状のセットに繋がるが特に底面おいては形状がシート張り合わせ構造ということも相俟って強くセット(形状固定)される傾向となる。底面部分の硬化は排液進行時にこの部分突っ張るように作用しスムースな潰れの支障となる。そこで、通常のスタンディング型バッグでは各部を構成するシート肉厚を変化させることにより、各部の適当が字軟弱度を得るようにしている。即ち、バッグ底部にあっては、その部位を構成するシート片を肉薄とし、滅菌等の熱による結晶化に関らず、底面部分の所望の軟弱状態に維持することができる。しかしながら、インフレーションシートよりガゼット成形により底部を形成するスタンディング型バッグの場合はシート肉厚はインフレーションダイの吐出口(リップ)の隙間の幅が決まると自動的に決まってしまい、後にバッグとする各部位の要求に応じて異なってくるシート肉厚に設定することは困難であった。尚、輸液バッグにはシール形成のための溶着熱も加わるが、溶着直後の急冷操作により高結晶化は抑制されるため、溶着の熱がスタンディング型バッグの底部の硬化に影響することはない。
【0004】
この発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、インフレーションよりガゼット成形により底部を形成するスタンディング型バッグにおいて各部の肉厚を個別的に最適に構成し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のスタンディング型バッグ製造方法は、筒状シートをインフレーション成形する工程と、インフレーション成形後の筒状シートの長手方向両側端をガゼット形状に折り込みつつシート状に形成し、ロールに巻き取る工程と、筒状シートの両側のガゼット形状部の折り込み縁部から所定幅における対向シート面を溶着することにより個々のスタンディング型バッグの底面シールとなるシート長手方向に沿った第1の溶着部を形成する工程と、筒状シートの長手方向における所定間隔にて所定幅にて筒状シートの上下対向シート面を溶着することにより個々のスタンディング型バッグのサイドシールとなるシート幅方向に沿った第2の溶着部を形成する工程と、シート幅方向における中間部において長手方向に沿って筒状シートの上下対向シート面をカットする工程と、前記第2の溶着部における中間においてシート幅方向に沿ってシートをカットし個々のスタンディング型バッグの開口部となる切断部を形成する工程とを備え、筒状シートの上記インフレーション成形に際して、スタンディング型バッグの底部となるバッグの部位、好ましくは、バッグ底部におけるガゼット部上下折込縁部の内側部分を肉薄になるように成形することを特徴とする。従って、この発明の方法により成形されたスタンディング型バッグにあっては、張り合わせ方式のスタンディング型バッグ底帯に相当する部位を肉薄とすることができる。更に、この発明ではスタンディング型バッグの底部となるインフレーションシートの部位での肉薄化に加え、スタンディング型バッグの開口部となるインフレーションシートの部位も肉薄化することができる。この部位の肉薄化の程度はバッグ底部となるインフレーションシートの部位より適当に弱い。そして、肉薄部の形成のため、インフレーション成形のためのダイにおけるリング状吐出口は部分的に狭隘部を形成している。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、スタンディング型バッグの所定部位、特に底部となるインフレーションシートの部位は少なくとも部分的に肉薄となるように形成されている。シートからスタンディング型バッグへの製袋後に、内容物(輸液)を充填し、レトルト釜にて滅菌を行うが、この際、滅菌の熱の影響によりバッグを構成するシート全体が結晶化し、硬くなり形状セットされるが、特にバッグ底部においては積層構造もあって形状が強くセットされ、他部分と同様な肉厚のままでは底帯部分が突っ張りのように機能して排液進行に伴う潰れが起こり難い。これに対し、本発明ではバッグの底部を構成するシート部位を肉薄とすることにより、熱処理による結晶化・硬化があっても最終的に硬くなり過ぎることは防止される。そのため、排出量の増大に対してバッグ底部をスムースに潰すことができるため、排液量の増大に対して比例的に液面降下を惹起させることができる。そのため、残液量の目視判断の正確・容易を確保することができる。
【0007】
また、スタンディング型バッグの開口部(輸液バッグにおいては排出ポートとの接続部)となるインフレーションシートの部位を肉薄化することにより輸液バッグとして輸液台にセットした状態で輸液バッグの下部を適当に膨らませ、この部位に残液が集中することで、残液の目視性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はこの発明の筒状シートのインフレーション成形のための装置の全体概略図である。
【図2】図2は図1のインフレーション成形装置におけるダイの概略縦断面図である。
【図3】図3はダイにおける吐出口(リップ)の概略横断面図である(図2のIII−III線の沿った断面図である)。
【図4】図4はインフレーション装置における溢流式の水冷装置の概略図である。
【図5】図5は図1におけるガゼット形状成形装置の概略縦断面図(図1のV−V線に沿った断面図)である。
【図6】図6は図1のガゼット形状成形装置による筒状シートからのガゼット形状の成形段階(a)(b)(c)を示す断面図である。
【図7】図7はガゼット折りされたシートの断面形状を模式的に示し、(a)はガゼット部の非密着状態、(b)はガゼット部は密着しているが、ガゼット部位以外にはまだ非密着状態、(c)はガゼット部を含めた全体を密着させた状態を示す。
【図8】図8は図1の筒状シートのシート状物のロールからのスタンディング型バッグ製造装置の概略側面図である。
【図9】図9は図8のスタンディング型バッグ製造装置の概略平面図である。
【図10】図10は図9のX−X線に沿った矢視断面図である。
【図11】図11は図10のシール装置による溶着後の筒状シートのみの断面図である。
【図12】図12は図9の部分拡大図であり、ボトムシール及びサイドシール完了後のシート長手方向片側におけるスタンディング型バッグの1リピートに対応したシート部分を示す。
【図13】図13はスタンディング型バッグのボトム部分となるシートの模式的断面図であり、(A),(B),(C)は図12の夫々A−A線、B−B線、C−C線に沿って表し、(A´)は(A)と同様であるが表裏面でシート高さを変えた別実施形態を示す。
【図14】図14は図8及び図9のスタンディング型バッグ製造装置によりシート中心線に沿って切り分けられた一対のスタンディング型バッグを模式的に示す斜視図である。
【図15】図15はこの発明のスタンディング型バッグよりその開口部に排出ポートを装着することにより構成された輸液バッグを輸液のため排出ポートを下にて配置した模式的平面図である。
【図16】図16は排液が進んだ状態での図15の輸液バッグの模式的側面図であり、(a)はスタンディング型バッグの底部(ガゼット部)とポート接続部との双方を肉薄にした場合、(b)はスタンディング型バッグの底部のみ肉薄にした場合、(c)に肉薄部を設けない従来のインフレーション方式のスタンディング型バッグを夫々示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1はこの発明の樹脂シート製造のための装置の全体概略図であり、押出ダイ10は後述のように、3層の筒状シートを成形可能に構成される。3層の筒状シートを形成するべく3個の押出機(3層のうち中間層は厚めの設定とすることがあり、この場合は吐出量の関係で中間層のため押出機を2台使用する場合もある)が設けられるが、図1には2個の押出機11, 12のみが図示され、押出機11, 12のホッパ11-1, 12-1には夫々の樹脂ペレットが挿入され、内部の押出機構を介してダイ10の内部に導入され、樹脂ペレット内部のヒータにより溶融され後述のリング状吐出口より吐出され、筒状シートFを形成する。ダイ10からの筒状シートの引き出し方向はニップローラに至るまで垂直下向きである。
【0010】
図2は本発明の筒状シートの押出装置の溶融樹脂出口に当たる、環状ダイにおける樹脂の通過部分であるダイ10の構造を示す。周知のようにダイ10は各種のダイ構成パーツを適宜組み合わせることで所望の樹脂通路構造を形成するべく構成される。即ち、ダイ10はリング状吐出口(リップ)14と、リング状吐出口14のダイ内部への延長としての筒状の溶融樹脂の案内路16と、各案内路16に夫々接続される3本の環状溶融樹脂導入路18-1, 18-2, 18-3とを備える。内側の第1の溶融樹脂導入路18-1は環状案内路16の直線的延長に位置し、3層の筒状シートFにおける内層を形成するのに役立つ。第2の溶融樹脂導入路18-2は、溶融樹脂の流れ方向における第1の溶融樹脂導入路18-1の下流において、環状案内路16に外周側より開口し、3層の筒状シートFにおける中間層を形成するのに役立つ。そして、第3の溶融樹脂導入路18-3は、溶融樹脂の流れ方向における第2の溶融樹脂導入路18-2の下流において、環状案内路16に外周側より開口し、3層の筒状シートFにおける外層を形成するのに役立つ。
【0011】
ダイ10及びその上方部位であるブロック20は各押出機からの樹脂ペレットを溶融するヒータ(図示しない)を備えており、また、溶融樹脂を3層の筒状シート形成のための
溶融樹脂導入路18-1, 18-2, 18-3にそれぞれ供給するための樹脂供給通路を備えている。図2では簡明のため押出機11からの樹脂供給通路22及び押出機12からの樹脂供給通路24のみが図示され、押出機11からの樹脂ペレットは第1の溶融樹脂導入路18-1に流入され、その間に溶融されつつ環状案内路16に流入され、筒状シートFにおける内層の形成に与る。また、押出機12からの樹脂ペレットは第3の溶融樹脂導入路18-3に流入され、その間に溶融されつつ環状案内路16に流入され、筒状シートFにおける外層の形成に与る。同様に、筒状シートFの中間層の形成のため、第2の溶融樹脂導入路18-2についても、押出機及び対応の押出機からの樹脂供給通路が設けられていることは言うまでもない。もとよりであるが、多層間の樹脂の接着性はダイ内での積層時間が長いほど良好であるので、必要な接着性が得られるように溶融通路等の長さを設計する必要がある。
【0012】
図2において、ダイ10はインフレーション成形のため空気圧力導入通路26を備え、下端において、リング状吐出口14の内側においてダイ10の下面に開口する。空気圧力導入通路26の上端はブロック20の上側に延出しており、それぞれ空気圧力源に接続され、ブロー圧が矢印aのように空気圧力導入通路26に導入され、筒状シートFのインフレーション成形が行われるようになっている。
【0013】
以下の説明のように、この発明はインフレーション成形後の円形断面の筒状シートをその両側において内向きV字状に折り込むことでガゼット袋形状になした後に平坦化しロールに巻き取るようにしている。
【0014】
図1において、ダイ10の下方におけるインフレーションシートの引き取り経路に同心にダイ10の直下において空冷リング36が配置される。その下流側に散水装置38が配置される。水冷装置38の具体的構造の一例は図4に示され、筒状シートの両側に冷却水槽38-1が配置され、冷却水槽38-1からの冷却水は筒状シートの全周より図1の破線hのように掛け流されるようになっている。この発明ではインフレーション成形された筒状シートFは下向きに引き出されており、冷却水の上からの掛け流し方式と相俟って冷却時間を長くとることができ冷却効率の点で好ましい。
【0015】
下段の水冷装置38の下流側に筒状シートをガゼット形状に成形のためのガゼット成形装置40(フォーマー)が配置される。ガゼット成形装置40は、成形後のインフレーションシート外周において、直径対向位置にその平面が直径と平行となるように設けられる一対の成形板41と、成形板41の平面を挟むようにインフレーションシートの両側に設けた押さえ板39(図5)と、その下流の上下のニップローラ対42, 42'と、ニップローラ対42, 42'の間におけるシート両側の補助成形板41´とから構成される。補助成形板41´は必須ではなく省略可能である。成形板41は半径方向に前後移動可能(図1の矢印d方向)に設けられ、ガゼット形状の成形動作時には成形板41は図1に示す前進位置にあり、他方、押さえ板42は成形板41を挟んで両側に先細テーパ面を形成するように配置される(図5)。そのため、インフレーション成形後の筒状シートの円周上の対向部位は直径対立位置した成形板41の先細のテーパ面41aに当接することで折り込まれつつ、成形板41を挟んだ両側ではインフレーションシートは押さえ板39により先細に案内される。そのため、最初は図6(a)のようにシートFは断面円形であるが、インフレーションシートにおけるする成形板41は(b)に示すように第1の肉薄領域rにその中央部において当接し、成形板41に当接する部位は半径内方に徐々に折り込まれ、他方、押さえ板39に当接するインフレーションシートの部位は平坦に押さえ込まれて行き、最終的には(c)に示すように中央部f1が中まで突き出され、両端部f2で折り返されたガゼット形状部Gに成形されるに至る。最終的なガゼット成形後における中央部f1を挟んで両端部f2までの領域が第1の肉薄領域43に対応する。また、図6(c)には第2の肉薄領域45も図示されている。成形板41や押さえ板39や補助成形板41´はその表面は滑りを考慮したテフロンコーティング(テフロンは登録商標)又は耐磨耗性と滑りの良いフッ素樹脂コーティング処理を施すのが好ましいが、アルバックテクノ株式会社製のタフラム加工やニダックス加工を用いても良い。
【0016】
図6(a) において、ダイ10から押し出されるときのインフレーションシート横断面における直径対立した第1の円弧状領域(弧長=r)を43にて示し、この部位43は図6(c)のガゼット形状部G(折込部f1, f2)の形成が行われる部位であり、後述のように、スタンディング型バッグに製袋した場合にスタンディング型バッグ底端からまち(ガゼット)内側端縁(折込部f1)までの高さの領域に相当する。また、第1の円弧状領域43から90°離間した第2の円弧状領域(弧長=s)を45にて示し、この領域45はスタンディング型バッグに製袋した場合に開口部から所定高さの領域に相当する。 残余の領域(43, 45を除いた領域)はスタンディング型バッグの胴部に相当する。この発明によれば、これらの部位43, 45においては、スタンディング型スタンディング型バッグより輸液バッグに構成したときの滅菌工程における加熱に関らず、所期の柔軟を維持するため、ダイ10におけるリング状吐出口(リップ)14の構造の工夫によって、インフレーションシートの肉厚は残余の円周方向部位より薄くされている。即ち、図3はガゼット部の肉薄化のため突起部を形成したリップ14の形状を示す。即ち、リップ14はリング状をなしているが、直径対立部位のそれぞれにおいて円周方向に所定長さの円弧状部位においてリップ14を形成する内周部位が第1の突起部14-1に形成されており、また、第1の突起部14-1から90°円周方向に離間した部位における直径対立部位のそれぞれにおいて円周方向に所定長さの円弧状部位においてリップ14を形成する内周部位が第2の突起部14-2に形成されておりそのため、これらの部位においてリング状吐出口は残余の部位より狭隘となっている。そのため、このリップ14からの溶融樹脂の吐出により形成される筒状シートにおける突起14-1, 14-2の部位は、これらの突起14-1, 14-2の分だけ薄肉となり筒状シートFの横断面における直径対立した円弧状部位r,s(図6(a))、シート長手方向には第1の帯状部位43、第2の帯状部位45は肉薄となる。後述実施例のように、樹脂としてポリエチレンを使用した場合は、突起14-1の高さの設定は、インフレーション成形後の筒状シートが断面における直径対立部位43(スタンディング型バッグに製袋後底面からガゼット内側に所定高さの領域)において肉厚が200ミクロンとなり、突起14-2の高さの設定は、インフレーション成形後の筒状シートが断面における直径対立部位45(スタンディング型バッグに製袋後開口部から下に所定高さの領域)において肉厚が250ミクロンとなり、部位43, 45以外の残余の部位(スタンディング型バッグに製袋後胴部となる領域)で300ミクロンとなるように設定することができる。これらの肉薄部位43, 45はインフレーションフィルムの長さ方向に帯状に延びており、図5ではこられの領域の境界線を破線にて示す。後述のように製袋時に図6における直径線47にて筒状シートは上下に2分割され夫々がスタンディング型バッグを構成する。
【0017】
前述のように第1の帯状肉薄部位43は、スタンディング型バッグに製袋したとした場合、スタンディング型バッグ底面からガゼット内側端縁までの高さ領域をカバーし、この部位においてガゼット形成され(図6(b)(c))、そして、スタンディング型バッグの底帯部分形成のための熱溶着はガゼット形状における両端曲折部f2のそれぞれにおけるシート対向面間において行われる(後述の図10及び図11の説明参照)。このように、スタンディング型バッグの底帯となるシート部分全体を肉薄とすることは、スタンディング型バッグに製袋した状態でスタンディング型バッグの底部が固くなり過ぎことがない点で好ましい。しかしながら、肉薄領域を狭く(図6(a)の周長rを短縮)することもまたはそれより広くすることも可能であり、要は、この後者の場合にあっても、スタンディング型バッグにおける底部を輸液時における排液進行に伴うスムースな潰れを確保しうる適当な軟弱性を確保し得るようになっていることが肝要である。また、第2の肉薄部位45は、スタンディング型バッグに製袋したとした場合(即ち、図6の直径線47で2分割後)、スタンディング型バッグ開口部から下に所定高さの領域(図16(a)のh2)をカバーし、この部位においても肉薄となっている(肉薄の程度は第1の部位43より弱い)。輸液バッグへの利用の場合はこの部位は出口ポート(図15で部番90にて示す)への装着部位であり、輸液時は一番下に位置するが、この部分を幾分肉薄とすることで、輸液バッグのこの部位が軟弱となり、残液により幾分膨らみ、残液量を強調しその目視を容易する点で有利である。
【0018】
図1において、ダイ10から直下のニップローラ対42, 42'に至るまでの筒状シートFの引き取り経路は真直ぐ下向きであり、冷却はダイ10の下方に配置された水冷装置38からの冷却水により行われるため、冷却水の流れhは筒状シートFの外周に沿って形成され、ガゼット成形装置40の成形板41及び押さえ板39との接触部にも流入される。そのため、冷却水の流れは成形部の潤滑(摩擦削減)に寄与しスムースなガゼット成形を実現することができる。
【0019】
ガゼット形状に折り込まれた筒状シートFは図1の上下のニップローラ対42, 42'間で圧潰され、ニップローラ対42, 42'間ではガゼット形状における両側のV形状部分に補助成形板41´が深く入り込むことで(図5も参照)、V形状部分は深く折り畳まれシート状を呈する。
【0020】
図1ではニップローラ対は42, 42'のように2対設けられているが、成形装置によりガゼット形状に折られた直後の(ダイからインフレーションした後の最初の)ニップローラ対42のみ設けることでも十分なガゼット折りを実現することが可能である。サイドプレート41´及び下流側のニップローラ対42´は任意的な補助手段である。また、図1ではニップローラ対44より下流側は作図の便宜上水平面において90°転じて図示しているが、実際は紙面に直交する配置となっていることは言うまでも無い。
【0021】
図1において、ニップローラ対42, 42'でのシートFの圧潰はシートの対向層を密着せしめブローエアーを下流側に対して遮断するように行う。そして本発明が応用される医療用輸液バッグではシートの厚みはこの実施形態ではPEの場合基本的には250μm−300μmであり、このような厚いシートの場合は、シートを構成する樹脂等の要因によっては、単にニップローラを通すのみではガゼット折りされたシートの密着が得られ難いことがあり得、図7はこれを模式的に表したものであり、ガゼット折りされたシートは(a)に示すように幅方向の両端部では4層、中央部では2層によって構成され、これをニップローラを通過させた場合を(b)に示し、シートが厚いため4層の両端部と2層の中央部とでトータルの厚みが大きく違うため、両端部では密着が得られても両端部の大きな厚みに影響されてしまうため中央部で隙間が残り、ブローエアーが下流側に漏洩し、シート対向面の密着が得られず、シートは膨らんでしまうため、ロールへの巻取が困難となってしまう懸念がある。この発明者のテストによるとブロッキング性に関してはシートを構成する樹脂依存性がある。シートを構成する素材によるブロッキング性の相違に関らず、厚みのあるシートにおいてもガゼット折りシートの対向面での確実な密着を行わせるため、ニップローラ42, 42'として表面にゴム層を形成し、ニップローラ42, 42'間でのニップ時に表面ゴム層は弾性によりシート幅方向における両端部と中央部とでの厚み差に応じて変形し、(c)に示すように両端部でも中央部でもシート対向面を密着させることができる。ゴム層における硬度としてはデュロメータ硬さでA90〜A50のものを採用し得る。シートの密着の観点からすると水冷装置38からの冷却水の温度は20℃といった常温より30℃〜60℃に加温されていることが好ましい。冷却水が加温されていることによりニップローラでのシートが柔軟化され、密着性を高めることができる。シートの密着性の指標としては実際のシートの剥離強度が0.5〜30g/15mm、好ましくは1.0〜15g/15mmであることによって安定なロール巻き取りを実現することができる。また、シートが密着していることにより、後述のシートからのスタンディング型バッグの切り出しの際に切断面からのエアー混入及びエアー混入による汚染の恐れを排除することができる点で好都合である。
【0022】
本発明のシートにおける両端のガゼット形状はロール巻きにした場合にそのままでは極端な耳高となる懸念がある。この解消の手段として巻き取りローラ52の手前にニップローラを設け、これを所定幅で往復させることで両端位置を適当にずらせつつ巻き取ることができ、耳高を解消することができる。また、後述のようにスタンディング型バッグ成形時にボトムシールとなるシート両側のシール部の形成をボトムローラ44からロールRまでのシート巻取経路で行うことによりシート幅方向の両端がシールされていことで厚みを抑え、耳高が目立たなくなる。
【0023】
図1において、ガゼット成形装置40の下方にはボトムローラ44が位置され、ボトムローラ44は受水槽46内に配置される。ガゼット形状のシートのシートはボトムローラ44を介し一対のニップローラ47により引き出され、ニップローラ47の下流側に夫々のニップローラ47に近接するように水切りジェットエアノズル48が配置され、余剰の水分が吹き飛ばされる。その後巻取ローラ52によりシートはロールRに巻回される。
【0024】
本発明による筒状シートのインフレーション成形おいて、ダイからの多層シートは空冷リング36により第1段階として冷却される。空気冷却には室温により周波数を変えて風量を制御するインバータモータを使用したブロアでもよいが、超低温空気発生装置、例えば株式会社日立製作所製PUROFRIOを使用して−10〜−20℃の冷気を使用しても良い。空気冷却後、冷却装置38からの冷却水により急冷され外層は結晶化温度以下に急冷され固化が急速に進み、歪み応力が有効に抑制されていて、多層化樹脂の特性が生かされ、カールとヘイズが少なく透明性に優れる多層膜シートが得られる。水冷方式としては図4で説明したオーバフロー方式でも又は環状の冷却散水リングからの冷却水により冷却する。水冷機構は、冷却水を供給する冷却水供給管と、冷却水供給管に介設され冷却水の冷却水流量を調整する冷却水流量調整器と、冷却水供給管に介設され冷却水を冷却する冷却水用熱交換器とから形成されている。また冷却リングの槽循環による温度制御もされている。層状に流下する冷却水の流量は、冷却水流量調整器により容易に制御され、冷却水の温度は冷媒の流量調整を受ける熱交換器により容易に制御される。そして冷却水は、熱交換器により適正温度に冷却され、その流量は、流量調整弁により調整されている。冷却水の水量、その温度、オーバーフロー堰のオーバーフロー高さの検出とフィードバック制御とにより、冷却効率と冷却性能を制御的に最適化することができる。
【0025】
インフレーションシート成形の過程におけるブローアップ比(BUR:環状ダイの出口直径とブローアップ終了後のバブル直径の比)は好ましくは0.7〜1.4の範囲であり、より好ましくは0.8〜1.2である。この本発明のブローアップ比は通常より低く抑えられているが、ブローアップ比を低く抑えることにより内圧が低くなり、ガゼット形状への折り込みが容易となる。シートの厚みはベース値としてポリエチレンの場合300μm、ガゼット部で200μmである旨説明したが、特に限定的されないが、ベース値としては、好ましくは120〜400μmであり、より好ましく4は160〜300μmである。図6に関連して説明したように、ガゼット部における周長r及びsの部位43, 45については特殊口金(図3)使用により初期の軟弱度が得られるように残余の部位より薄くされる。また、材質構成にて製袋時に相対する面がシールしやすい樹脂配合比率を考慮する。
【0026】
ブローアップ比の上記範囲の下限はガゼット成形時の内圧により決まる。即ち、ガゼット成形はガゼット成形装置の成形板41を外部から筒状シートに係合させて行うため、筒状シートの内部にはこれに対抗しうる圧力が必要である。ブローアップ比の上限については、ガセット成形後のシート対向面の密着性(ブロッキング性)が支配要因の一つであり、内圧が高すぎるとニップローラ42によるニップによっても対向面の完全な密着状態が得られない懸念がある。後述のように同じボリオレフィン系でもポリプロピレンを素材としたシートと比較してポリエチレンを素材とするシートのブロッキング性は幾分劣っており、この場合にブローアップ比を下げることが必要なブロッキング性の確保のために好適である。
【0027】
多層膜成形リングダイ10に空気導入管26より投入される空気量は、図示しない空気量調整弁の開閉により制御される。多層膜成形ダイの内側に空気供給路26を介して導入される空気量の制御は、多層膜成形ダイの拡径度であるインフレーションアップ比とガゼット成形装置40内にて形成される合成樹脂シートを制御する。扁平化シートの折幅は、巻き取りまでの間に設置した折幅センサで検出される。また、ニップローラ47で挟み潰して最内層同士をブロッキングして巻き取られる。無菌エアーは、無菌エアーノズルに空気を供給する空気供給管に介設され空気の空気流量を調整する空気流量調整器とから成る。
【0028】
本発明のスタンディング型バッグの製造方法にあってはロールRから引き出されたガゼット形状シート状筒状シートの両側のV字状の凹部に中間シールプレートを挿入位置させつつ上側シールプレート及び下シールプレートの各々を中間シールプレートに向け移動させることで折込部の上下縁部における所定幅の部位の対向シート面を溶着し、次いで、移送方向に沿って間隔をおいて全幅に亘って上下のシートの対向面を所定幅で溶着し、その後幅方向に置ける中間において側筒状シートを二つ割に切断すると共に、前記所定幅の部位を中間で幅方向に沿って切断することで個々の容器に形成したスタンディング型バッグとしている。以下、この方法について詳細に説明する。
【0029】
図8及び図9において、筒状シートのロールRは図1の装置により製造されるものであり、両側にガゼット形状部Gが形成されている。ロールから引き出されるシート側縁から破線で示すガゼット形状部Gにおける中央折込部(図6のf1にて示す)までが第1の肉薄領域43に相当し、第2の肉薄領域45はロールから引き出されるシートにおける上面及び下面の破線間の領域により表される。破線筒状シートのロールRは軸54に装着され、ロール支持軸54はその回転駆動のため図示しないベクトルモータに連結され、またロールRから繰り出される筒状シートSの張力制御のためのパウダブレーキが具備せしめられる。その下方に夫々が上下のローラからなるニップローラ56, 58がロールRから切り出される筒状シートのシートSの移送方向の上流及び下流に設置される。ニップローラ56, 58間におけるシートSの移送方向(矢印m)に沿って上流から下流に順々にシートSの両側に夫々設けられ容器のボトムシール形成用の上下のシールプレート64A, 64B:上下のシールプレート間に設けられ、シートのガゼット形状部に外側より挿入されるよう片持に延びている受けプレート65:シートSの両側に夫々設けられ、ボトムシール形成後のシート冷却用の上下の冷却バー66A, 66B:容器の2倍幅のサイドシール形成用の上下の2段のシールプレート68A, 68B; 70A, 70B:サイドシール形成後のシート冷却用の上下の冷却バー72A, 72B:シートを幅方向における中間で二つ割りとするためのレザー装置74:並びに、2倍幅のサイドシール部分を中間で切断することで個々の容器に切断するための裁断機76(上下の刃76-1, 76-2から構成される):が配置される。
【0030】
以上の筒状シートからの個々の容器への成形装置の作動について説明すると、支持軸54上のロールRから引き出された筒状シートのシートSはニップローラ56, 58により引き出される。ニップローラ56, 58間の筒状シートの張力は低いため、ニップローラ56, 58間ではシートは幾分拡開した状態で矢印mの方向に移送される。そのため、ガゼット形状における両側のV形状の凹部も幾分開口した状態で移送され、その結果、受けプレート65の自由端部は図10に示すようにシートのガゼット形状部Gにおける両側のV形状の凹部に幾分導入される。他方、上下のシールプレート64A, 64Bのシール用突端部64A-1, 64B-1はガゼット形状におけるV形状部位f1からの折り返し縁部f2を挟んでシール受け板65と対向している。シールプレート64A, 64Bの突端部64A-1, 64B-1はガゼット形状におけるV形状部位からの上下の折り返し縁部から所定幅の領域において対向している。上下のシールプレート64A, 64Bはそのシール用突端部64A-1, 64B-1が受け板65に当接するように移動され、その結果、ガゼット形状におけるV形状部位からの上下の折り返し縁部から所定幅の領域において対向シート面同士が溶着される。図11はガゼット形状のシートがV形状部位からの上下の折り返し縁部から所定幅の部位yで対向面同士で溶着された状態を示す。溶着部位y(この発明の第1の溶着部)は図9においても示され、上下の折り返し縁部から所定幅の部位yでの対向面の溶着はシート移送方向mにおいて途切れることなく続くように上下のシールプレート64A, 64B及びシール受け板65による溶着作業は行われる。受けプレート65は上下のシールプレート64A, 64Bを受けるだけでシール機能はなく、上面側及び下面側に形成された内外層の所定幅の溶着部位y同士が溶着してしまうようなことはない。
【0031】
図11において、シールyを形成した状態でのインフレーションシートにおける第1の肉薄領域43が示され、この領域43は図10の上下の折り返し縁部f2の内側の領域であり、この領域は通常の張り合わせにより構成したスタンディング型バッグにおける底帯(別体の胴部に溶着される)に相当する部位である。即ち、本発明では局部的肉薄のインフレーション成形により通常の張り合わせ構造のスタンディング型バッグと同様に底帯部分のみ肉薄にする構造を実現することができる。また、肉薄部分を幾分延長し、上下の折り返し縁部f2を外側(スタンディング型バッグ表面側)に少し超えるようにしてもよく、これはインフレーションシートからの巻取時のシートロールR(図1)の耳の部分を肉薄化し、巻き姿を良好にできる点で有利である。また、図11にはスタンディング型バッグの開口部となるインフレーションシートにおける第2の帯状領域45も示される。
【0032】
シール部yの形成後のシートは上下の冷却バー66A, 66Bとの直接接触(図8では簡明のため離間するように図示されているがシートSは基本的には冷却バー66A, 66Bとの面接触により冷却を受ける)により急冷却を受け余熱の放出が行われる。冷却バー66A, 66Bは図示しないが、内部に20℃程度の冷却水を循環させており、また、冷却水の温度調節のためのチラーを備えている。冷却バー66A, 66Bによる冷却後、シート幅方向の中央部に設置そして、上下の2段のシールプレート68A, 68B; 70A, 70BによりシートSは上下対向面間でシールされる。即ち、シールプレート68A, 68B; 70A, 70BはシートSの全幅を幾分超えて延びるシール用突端部68A-1, 68B-1; 70A-1, 70B-1を備えており、上下のシール用突端部68A-1及び68B-1並びに上下のシール用突端部70A-1, 70B-1が当接することによりシール用突端部68A-1, 68B-1; 70A-1, 70B-1の幅に応じた上下のシートの部位、即ち、シートSの対向部位が溶着される。この幅方向に延びる溶着部位をzにて表す。溶着部位z(この発明の第2の溶着部)は後述の通りスタンディング型バッグのサイドシールとなり、スタンディング型バッグのサイドシールに対して2倍の幅を持つ。
【0033】
図12はシート片側におけるシール部y,zの詳細形状(図9においてシール部y,zを形成後のシートの部分拡大図)を示しており、長さ方向における1リピート(スタンディング型バッグ一個分)をpにて示す。溶着部zはスタンディング型バッグのサイドシールとなり、中央部をラインnに沿って切り離すことでスタンディング型バッグ一個一個に切り出すことができ、シール部yはスタンディング型バッグの底部となる。シール部yはガゼット形状におけるV形状部位からの折り返し縁部を対向面同士で溶着するものであるが(図10及び11及びその説明参照)、溶着部はスタンディング型バッグの中央部はt1(図13(A))のように狭く(低く)、側部に向けて長く(高く)なって行き(中間をt2(図13(B))にて示す)、側部(図13(C))ではサイドシールzと合体し、ガゼット形状部を含めたシート全幅で上下層は密着している。ガゼット形状における折返し縁部から内側のシート部分は残余のシート部分より肉薄であり、図13ではこれを誇張して描いている。ガゼット部における肉薄部分は図5の筒状シートでは帯状領域43(図6の円弧状領域r)に形成されるものであることは以上説明の通りであり、図12で破線43は肉薄となるガゼット部の内側縁部を現す。ガゼット形状部における溶着されていないシート部分(襠の部分)を80, 80'にて示し、これらの部分80, 80'はスタンディング型バッグにおける底帯となる。従って、バッグ内側空洞部は中間部では底が低く、底帯は80のように広くなり(図13(A)では底帯は折られた状態に示されるが、輸液収容時は実質的に真直ぐに伸展した状態にある)。また、バッグは側部に向ってゆくに従って底は高くなっている(底帯は80´のように狭くなってゆく)。このような構造はスタンディング型バッグの座りを良くするとともに、輸送における底シールyと側シールzとの接合部に掛かる負荷を軽減するため有利である。
【0034】
また、溶着z高さをシート上下(スタンディング型バッグ上下)で代えることも可能である。これを図13(A´)に示す。このようにすることで、スタンディング型性を確保しつつバッグ底部の硬さを調整することができる。
【0035】
再び図8及び図9において、溶着部zを形成後のシートSは上下の冷却バー72A, 72Bとの直接接触により急冷却を受け余熱の放出が行われる。冷却バー72A, 72Bは冷却バー66A, 66Bと同様に内部に20℃程度の冷却水を循環させており、冷却水の温度調節はチラーにより行われる。その後、シート幅方向の中央部に設置されたレザー刃74によりシート幅方向の中央部に沿って真っ二つに切断され、図9において切断線をu(切断線uは図11にも示される)にて示し、これがスタンディング型バッグの開口となる。そして、ニップローラ58の直後において、裁断機76により2倍幅の溶着部位zが中間において2個のスタンディング型バッグWに切断される。即ち、図14は裁断機76により2個のスタンディング型バッグWに切断した状態を模式的に示し、各バッグWはガゼット形状シートの両側のV断面形状からの各折り返し部分において対向シート面を所定幅にて溶着(溶着部y)することでボトムシールW1が構成され、ガゼット形状部における非溶着部(図13の80, 80')が伸展可能な底帯W2となる。スタンディング型バッグの底泰容器側面は長手方向の所定間隔において2倍幅で溶着(溶着部z)された筒状シートの対向部を中間で切断することでサイドシールW3とし、スタンディング型バッグWの開口部W4はシートを幅方向の中間に沿って切除して構成される。
【0036】
図15はこの発明のスタンディング型バッグを輸液バックに構成したものを示し、開口部(図14のスタンディング型バッグ開口端W4の側)はプラスチック製のポート90をつけてシールされ、内部に輸液が収容されている。輸液作業時はボトムシールW1(ガゼット部)が上になるようにスタンドに懸架され、排出ポート90は下向きとなる。周知のようにポートの端部にゴム栓92が設けられ、このゴム栓を輸液セットの穿刺針94により穿刺することにより輸液作業が行われる。輸液バッグは通気針を使用せず、バッグを潰してゆくことにより排液が進められるタイプである。即ち、内部には所定量の空気(気体)が収容されるが、排液の進行とともにバッグが潰れてゆく。ガゼット部Gよりなるスタンディング型バッグ底帯はそのままの肉厚では滅菌等の熱処理時の熱によりシートを構成するプラスチックが硬化するため硬くなりやすいが、この発明では図16(a)に示すようにガゼット部端縁からガゼット内側に下に所定高さh1の部位(図6(a)の周長rの領域43(図16(a)には境界線として表示)に相当)はインフレーション成形時にシートを肉薄(ポリエチレンの場合200μm)となるようにしている。従って、滅菌等の熱処理の影響によるスタンディング型熱硬化があってもそれを見込んで適当な軟弱性が得られるため、排液の終了付近にあっては図16(a)に示すように上端ガゼット部Gは平坦に潰れることができる。また、排出ポート側のh2の高さの部位(上下に分割後の図6(a)の周長sの領域45)については中間の肉厚(ポリエチレンの場合250μm)となっている。そのため、滅菌時の加熱の影響があってもここも十分軟弱であり、残液はこの部位に溜まることができ(液面をl1にて示す)輸液バッグは膨れ傾向となり、残液の目視性を高めることができる。
【0037】
図16(b)はガゼット部(ガゼット部内側にh1の高さ領域)のみ肉薄(ポリエチレンの場合200μm)としたときの排液が進んだ時点を示し、ガゼット部は潰れるが排出ポートとの接続部を含めた残余の高さ領域hはポリエチレンの場合300μmと厚いままの場合であり、この場合も本発明の範囲に包含され、排液が進行した場合にガゼット部は潰れるため封入空気が上端に溜まる程度は多いに緩和され、残液の視認性は大いに改善される。しかしながら、排出ポート90との接続部は滅菌時の加熱の影響で硬くなるため、同一残液量でも液面l2は図16(a)より幾分高くなるため、残液量の表示機能の点では3段階に肉厚を変化させた図16(a)の場合が好ましい。、
【0038】
これに対して、従来のインフレーションシートからなるスタンディング型バッグの場合は図16(c)のように高さh全体で肉厚が均等であるため溶着時の熱でガゼット部(底帯部)は硬化するため排液の進行によっても底部は潰れ難く、排液が進んでも、ガゼット部は潰れず開いたままであるためここに空気が溜まり、排液が進行しても液面はl3のように高く留まるため、残液量の視認性が良くなかったが、図16(a)(b)の本発明はこの問題点を解決するものである。
【0039】
このようにして得られたスタンディング型バッグWはインフレーションによる製法原理上、筒状シートの内部は外気に直接晒されることがないため、筒状シートの内部は完全な塵埃フリーの環境となり、医療用輸液バッグ用に適している。医療用輸液バッグとする場合、スタンディング型バッグWに開口部から輸液を充填後に開口部にゴム栓混注口が装着されシールされる。この場合に輸液バッグは自立させた状態で混注操作混注操作が可能となる点で便利である。
【0040】
本発明の変形実施例としてスタンディング型バッグWのボトムシールW1となるガゼット折りシートの溶着部yの形成を図1から図7に関連して説明した筒状シートのインフレーション成形時に行うことができる。この場合、溶着部yの形成のためのヒートシール装置(シールプレート64A, 64B等)は図1のボトムローラ44の下流側におけるシート移送経路の適当な部位に設置することになる。このように構成した場合、ヒートシールによってシート両端の肉厚が小さくなるため前述の耳高抑制手段を設けなくてもロールRに巻き取った場合の両端の耳高を幾分緩和することができる。耳高をより抑えるためヒートシール部の折返端縁部を切断除去してしまうことも可能である。また、後工程の印刷や製袋工程でガゼット部の反りによる反転を防ぐ方法として仮シール(ブロッキングを含む)を行うことは有効である。
【0041】
〔PE素材による実施例〕
使用したPE(ポリエチレン)素材(L-LDPE)は表1にリストしており、各データはメーカーにより公表もののみ示している。表1のPP素材を表層、中間層、内層毎に表2の試作材質構成1〜4のように各厚み比率をもってブレンドした。ブレンド状態での各層における素材の重量%は表記の通りであった。住友重機械モダン株式会社製・下向きインフレ装置65mmφ押出機3台を使用して、175mmφの丸ダイスにてリップ(図2の14にて示す)の巾4mmにてブローアップ比1.24にて3層でかつ円周方向に300μm,250μm,200μmの3段階が出現するようにインフレーション成形を行った。樹脂押出温度230℃にて冷却水として20℃の水道水を使用して、冷却・ガゼット折してニップロールにてニップして巻き取った結果、適度にブロッキングが発生して、ガゼット状態が崩れず綺麗に巻き取れた。得られた原反シートをテンシロン型引張試験機にて引張速度50mm/min・把握長50mmにてブロッキングした剥離強度を測定した結果、3〜6g/15mmであった。インフレーションの過程において3段階の肉厚差を得るため、まず、丸ダイスリップ巾4mmに対し、図6のrで示す角度範囲(シート長手方向には43を境界線とする帯状領域に相当し、輸液バッグに構成したとき図16(a)で示すガゼット部端縁からガゼット内側に下方にh1の高さ範囲に相当する)で内側リングに1.33mmの突起(図2の突起部14-1に相当)を付けることによりほぼ、200μm付近の厚みが得られた。また、丸ダイスリップ巾4mmに対し、図6のsで示す角度範囲(シート長手方向には45を境界線とする帯状領域に相当し、輸液バッグに構成したとき図16(a)で示す排出ポート90の接続部から上方にh2の高さ範囲に相当する)で内側リングに0.67mmの突起(図2の突起部14-2に相当)を付けることによりリップ巾3.33mmにした結果、ほぼ250μmが得られた。得られた原反を使用して巾150mm×高さ210mm×底40mmのスタンディング型バッグを作製した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
点滴適性を確認するため、ゴム栓(図15の92)を取り付け後、スタンディング型バッグに、水500mlと空気60ccを充填して、日阪製作所のレトルト殺菌釜を使用して、トレーに横置きし、滅菌温度110℃×10分間の蒸気式滅菌を行い、22℃の冷却水にて急冷しサンプルを得た。滅菌後の曲げ弾性率は表記の通りであった。室温23℃にて24時間放置し、同温度にて点滴適性を確認するため、スタンディング型バッグ底の中央に懸架穴を開け逆さまに吊るし、ゴム栓92にニードル94を穿刺し30分間にて内容物の水を抜いた結果、改良品は、点滴開始まもなくスタンディング型バッグの内圧が下がり、底が徐々に潰れると同時に、液面が徐々に下がり目安となる目盛り印刷に従い、残液の状態が明確に分かった。また、残量100mlにおいて、内容液の自重により胴部の薄くして柔らかくした部分(図16(a)の高さh2の部位)が膨らみ、液面がはっきり見え残液が明確であった。
【0044】
結果は表2に示すように試作材質構成2,3及び4が特に良好であった、ポリエチレンの場合は素材自体が低弾性率であるため、試作材質構成1のように素材として弾性率が低くなりすぎると、底部の潰れについては問題はないが、輸液バッグが全体的に柔らかくなり過ぎ、形態維持性からすると、曲げ弾性率はなるべくは100Mpaが下限で、150Mpaを超えた硬さが好ましい。
【0045】
〔PP素材による実施例〕
使用したPP素材は表3にリストしている。表3のPP素材を表層、中間層、内層毎に表4の試作材質構成1〜5のように各厚み比率をもってブレンドした。ブレンド状態での各層における素材の重量%は表記の通りであった。PP素材による実施例に記載と同様にインフレーション成形し、3層でかつ円周方向に3段階の肉厚差(試作材質構成1のみ300μm,250μm,200μmの3段階、試作材質構成2−5については、250μm,200μm,150μmの3段階)が出現するようにインフレーション成形を行い原反を得た。得られた原反を使用して巾150mm×高さ210mm×底40mmのスタンディング型バッグの改良品を作成した。点滴適性を確認するため、ゴム栓を取り付け後、スタンディング型バッグに、水500mlと空気60ccを充填して、日阪製作所のレトルト殺菌釜を使用して、トレーに横置きし、滅菌温度110℃×10分間の蒸気式滅菌を行い、冷却水にて急冷しサンプルを得た。室温23℃にて24時間放置し、同温度にて点滴適性を確認するため、スタンディング型バッグ底の中央に懸架穴を開け逆さまに吊るし、ゴム栓に針を刺し30分間にて内容物の水を抜く試験を行った。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
試作材質構成1〜5を通じてスタンディング型バッグ底部は肉薄化により潰れやすく、残液の視認性は良かった。ただ視認性の改良程度は官能評価ではあるが、素材構成1及び2及び4が最も良かった。素材構成3及び5の場合は若干劣っていた。これは、輸液バッグとした後(シールによる加熱及び滅菌による加熱を受けた後)素材の曲げ弾性に基因すると考えられ、高弾性のポリプロピレンの場合は素材の選択によっては素材バッグの各部の厚みを変化させることの柔軟性への寄与が少なくなってしまうからと考えられる。
【0048】
表2及び4から、曲げ弾性率の適正範囲としては、100Mpaから450Mpa、より好ましくは150Mpaから380Mpaであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスタンディング型バッグWは医療用輸液用途以外にも、薬剤、電子基板などに用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
10…ダイ
11, 12…押出機
14…リング状吐出口(リップ)
14-1, 14-2…吐出口内周の突起
20…ブロック
26…空気圧力導入通路
36…空冷リング
38…水冷・冷却リング装置
39…押さえ板
40…ガゼット成形装置
41…成形板
42…ニップローラ
43…第1の帯状肉薄領域
45…第2の帯状肉薄領域
52…巻取ローラ
56, 58…ニップローラ
64A, 64B …ボトム用シールプレート
65…受けプレート
66A, 66B…冷却バー
68A, 68B; 70A, 70B…サイド用シールプレート
72A, 72B…冷却バー
74…レザー刃
76…裁断機
80, 80'…底帯
F…筒状シート
G…ガゼット形状部
R…筒状シートのシートのロール
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気針による穿孔を不要とする軟弱医療用輸液バッグ用に適したスタンディング型バッグに関し、特に、かかるスタンディング型バッグをインフレーションシートからガゼット形状に成形して製造する方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱シートより成るスタンディング型バッグは直立姿勢での取扱いが可能であり、輸液バッグに利用した場合、混注操作等が行いやすくまた嵩張らないので輸送も効率的である。通常はシートからの貼り合わせによりスタンディング型バッグに成形するが、インフレーションシートからガゼット形状に成形して製造する方法も提案されている(特許文献1及び2)。この方法によると、インフレーション成形された筒状シートは幅方向で2個取りするため両側においてガゼット形状(内向きの断面V形状)に折り込みつつ扁平化されたシート対向面をバッグ外形線に沿って所定幅で溶着(シール)し、長手方向及び幅方向でカットすることによりスタンディング型バッグに切り出している(特許文献1及び2参照)。ガゼット形状部においては溶着部の内側が襠(まち)となり、この部分をスタンディング型バッグの底面とすることができる。溶融樹脂を環状押出口から内部の気体圧力下で筒状に成形するというインフレーションによる製法原理上、筒状シートの内部は外気に直接晒されることがないため、筒状シートの内部は完全な塵埃フリーの環境となり、医療用輸液バッグ等の用途には特に適している。即ち、輸液バッグは、菌に対し後工程で滅菌処理があるため完璧な無菌は求められていないが、直接内容液が入るため無塵埃は必須条件であり、上記特許による方法はこの条件を満たしている。
【特許文献1】特開平9−174719号公報
【特許文献2】特開平11−130091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
軟弱シートよりなるスタンディング型バッグは輸液用バッグとした場合に通気針を使用せずに排出(輸液)が可能であり、衛生上の観点から最近の主流となっている。軟弱タイプの輸液バッグの場合、内部には一定量の空気(気体)が封入されており、排液の進行とともに輸液バック全体がスムースに潰れて行くことが残液量の目視判断の的確のために望ましい。即ち、封入空気との境界面が残液レベルであり、排液の進行とともにバックが潰れることにより、排液の進行に伴い境界面を比例的に下降させることができる。通常のスタンディング型バッグにあっては、その底部はシート貼り合わせ(溶着)によって製袋している。そして、内容物(輸液バックの場合は輸液)を充填し、レトルト釜にて適宜な高温で熱処理(滅菌)をするが、この際の熱により結晶化が進み、硬化を起こし、バックの形状のセットに繋がるが特に底面おいては形状がシート張り合わせ構造ということも相俟って強くセット(形状固定)される傾向となる。底面部分の硬化は排液進行時にこの部分突っ張るように作用しスムースな潰れの支障となる。そこで、通常のスタンディング型バッグでは各部を構成するシート肉厚を変化させることにより、各部の適当が字軟弱度を得るようにしている。即ち、バッグ底部にあっては、その部位を構成するシート片を肉薄とし、滅菌等の熱による結晶化に関らず、底面部分の所望の軟弱状態に維持することができる。しかしながら、インフレーションシートよりガゼット成形により底部を形成するスタンディング型バッグの場合はシート肉厚はインフレーションダイの吐出口(リップ)の隙間の幅が決まると自動的に決まってしまい、後にバッグとする各部位の要求に応じて異なってくるシート肉厚に設定することは困難であった。尚、輸液バッグにはシール形成のための溶着熱も加わるが、溶着直後の急冷操作により高結晶化は抑制されるため、溶着の熱がスタンディング型バッグの底部の硬化に影響することはない。
【0004】
この発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、インフレーションよりガゼット成形により底部を形成するスタンディング型バッグにおいて各部の肉厚を個別的に最適に構成し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のスタンディング型バッグ製造方法は、筒状シートをインフレーション成形する工程と、インフレーション成形後の筒状シートの長手方向両側端をガゼット形状に折り込みつつシート状に形成し、ロールに巻き取る工程と、筒状シートの両側のガゼット形状部の折り込み縁部から所定幅における対向シート面を溶着することにより個々のスタンディング型バッグの底面シールとなるシート長手方向に沿った第1の溶着部を形成する工程と、筒状シートの長手方向における所定間隔にて所定幅にて筒状シートの上下対向シート面を溶着することにより個々のスタンディング型バッグのサイドシールとなるシート幅方向に沿った第2の溶着部を形成する工程と、シート幅方向における中間部において長手方向に沿って筒状シートの上下対向シート面をカットする工程と、前記第2の溶着部における中間においてシート幅方向に沿ってシートをカットし個々のスタンディング型バッグの開口部となる切断部を形成する工程とを備え、筒状シートの上記インフレーション成形に際して、スタンディング型バッグの底部となるバッグの部位、好ましくは、バッグ底部におけるガゼット部上下折込縁部の内側部分を肉薄になるように成形することを特徴とする。従って、この発明の方法により成形されたスタンディング型バッグにあっては、張り合わせ方式のスタンディング型バッグ底帯に相当する部位を肉薄とすることができる。更に、この発明ではスタンディング型バッグの底部となるインフレーションシートの部位での肉薄化に加え、スタンディング型バッグの開口部となるインフレーションシートの部位も肉薄化することができる。この部位の肉薄化の程度はバッグ底部となるインフレーションシートの部位より適当に弱い。そして、肉薄部の形成のため、インフレーション成形のためのダイにおけるリング状吐出口は部分的に狭隘部を形成している。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、スタンディング型バッグの所定部位、特に底部となるインフレーションシートの部位は少なくとも部分的に肉薄となるように形成されている。シートからスタンディング型バッグへの製袋後に、内容物(輸液)を充填し、レトルト釜にて滅菌を行うが、この際、滅菌の熱の影響によりバッグを構成するシート全体が結晶化し、硬くなり形状セットされるが、特にバッグ底部においては積層構造もあって形状が強くセットされ、他部分と同様な肉厚のままでは底帯部分が突っ張りのように機能して排液進行に伴う潰れが起こり難い。これに対し、本発明ではバッグの底部を構成するシート部位を肉薄とすることにより、熱処理による結晶化・硬化があっても最終的に硬くなり過ぎることは防止される。そのため、排出量の増大に対してバッグ底部をスムースに潰すことができるため、排液量の増大に対して比例的に液面降下を惹起させることができる。そのため、残液量の目視判断の正確・容易を確保することができる。
【0007】
また、スタンディング型バッグの開口部(輸液バッグにおいては排出ポートとの接続部)となるインフレーションシートの部位を肉薄化することにより輸液バッグとして輸液台にセットした状態で輸液バッグの下部を適当に膨らませ、この部位に残液が集中することで、残液の目視性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はこの発明の筒状シートのインフレーション成形のための装置の全体概略図である。
【図2】図2は図1のインフレーション成形装置におけるダイの概略縦断面図である。
【図3】図3はダイにおける吐出口(リップ)の概略横断面図である(図2のIII−III線の沿った断面図である)。
【図4】図4はインフレーション装置における溢流式の水冷装置の概略図である。
【図5】図5は図1におけるガゼット形状成形装置の概略縦断面図(図1のV−V線に沿った断面図)である。
【図6】図6は図1のガゼット形状成形装置による筒状シートからのガゼット形状の成形段階(a)(b)(c)を示す断面図である。
【図7】図7はガゼット折りされたシートの断面形状を模式的に示し、(a)はガゼット部の非密着状態、(b)はガゼット部は密着しているが、ガゼット部位以外にはまだ非密着状態、(c)はガゼット部を含めた全体を密着させた状態を示す。
【図8】図8は図1の筒状シートのシート状物のロールからのスタンディング型バッグ製造装置の概略側面図である。
【図9】図9は図8のスタンディング型バッグ製造装置の概略平面図である。
【図10】図10は図9のX−X線に沿った矢視断面図である。
【図11】図11は図10のシール装置による溶着後の筒状シートのみの断面図である。
【図12】図12は図9の部分拡大図であり、ボトムシール及びサイドシール完了後のシート長手方向片側におけるスタンディング型バッグの1リピートに対応したシート部分を示す。
【図13】図13はスタンディング型バッグのボトム部分となるシートの模式的断面図であり、(A),(B),(C)は図12の夫々A−A線、B−B線、C−C線に沿って表し、(A´)は(A)と同様であるが表裏面でシート高さを変えた別実施形態を示す。
【図14】図14は図8及び図9のスタンディング型バッグ製造装置によりシート中心線に沿って切り分けられた一対のスタンディング型バッグを模式的に示す斜視図である。
【図15】図15はこの発明のスタンディング型バッグよりその開口部に排出ポートを装着することにより構成された輸液バッグを輸液のため排出ポートを下にて配置した模式的平面図である。
【図16】図16は排液が進んだ状態での図15の輸液バッグの模式的側面図であり、(a)はスタンディング型バッグの底部(ガゼット部)とポート接続部との双方を肉薄にした場合、(b)はスタンディング型バッグの底部のみ肉薄にした場合、(c)に肉薄部を設けない従来のインフレーション方式のスタンディング型バッグを夫々示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1はこの発明の樹脂シート製造のための装置の全体概略図であり、押出ダイ10は後述のように、3層の筒状シートを成形可能に構成される。3層の筒状シートを形成するべく3個の押出機(3層のうち中間層は厚めの設定とすることがあり、この場合は吐出量の関係で中間層のため押出機を2台使用する場合もある)が設けられるが、図1には2個の押出機11, 12のみが図示され、押出機11, 12のホッパ11-1, 12-1には夫々の樹脂ペレットが挿入され、内部の押出機構を介してダイ10の内部に導入され、樹脂ペレット内部のヒータにより溶融され後述のリング状吐出口より吐出され、筒状シートFを形成する。ダイ10からの筒状シートの引き出し方向はニップローラに至るまで垂直下向きである。
【0010】
図2は本発明の筒状シートの押出装置の溶融樹脂出口に当たる、環状ダイにおける樹脂の通過部分であるダイ10の構造を示す。周知のようにダイ10は各種のダイ構成パーツを適宜組み合わせることで所望の樹脂通路構造を形成するべく構成される。即ち、ダイ10はリング状吐出口(リップ)14と、リング状吐出口14のダイ内部への延長としての筒状の溶融樹脂の案内路16と、各案内路16に夫々接続される3本の環状溶融樹脂導入路18-1, 18-2, 18-3とを備える。内側の第1の溶融樹脂導入路18-1は環状案内路16の直線的延長に位置し、3層の筒状シートFにおける内層を形成するのに役立つ。第2の溶融樹脂導入路18-2は、溶融樹脂の流れ方向における第1の溶融樹脂導入路18-1の下流において、環状案内路16に外周側より開口し、3層の筒状シートFにおける中間層を形成するのに役立つ。そして、第3の溶融樹脂導入路18-3は、溶融樹脂の流れ方向における第2の溶融樹脂導入路18-2の下流において、環状案内路16に外周側より開口し、3層の筒状シートFにおける外層を形成するのに役立つ。
【0011】
ダイ10及びその上方部位であるブロック20は各押出機からの樹脂ペレットを溶融するヒータ(図示しない)を備えており、また、溶融樹脂を3層の筒状シート形成のための
溶融樹脂導入路18-1, 18-2, 18-3にそれぞれ供給するための樹脂供給通路を備えている。図2では簡明のため押出機11からの樹脂供給通路22及び押出機12からの樹脂供給通路24のみが図示され、押出機11からの樹脂ペレットは第1の溶融樹脂導入路18-1に流入され、その間に溶融されつつ環状案内路16に流入され、筒状シートFにおける内層の形成に与る。また、押出機12からの樹脂ペレットは第3の溶融樹脂導入路18-3に流入され、その間に溶融されつつ環状案内路16に流入され、筒状シートFにおける外層の形成に与る。同様に、筒状シートFの中間層の形成のため、第2の溶融樹脂導入路18-2についても、押出機及び対応の押出機からの樹脂供給通路が設けられていることは言うまでもない。もとよりであるが、多層間の樹脂の接着性はダイ内での積層時間が長いほど良好であるので、必要な接着性が得られるように溶融通路等の長さを設計する必要がある。
【0012】
図2において、ダイ10はインフレーション成形のため空気圧力導入通路26を備え、下端において、リング状吐出口14の内側においてダイ10の下面に開口する。空気圧力導入通路26の上端はブロック20の上側に延出しており、それぞれ空気圧力源に接続され、ブロー圧が矢印aのように空気圧力導入通路26に導入され、筒状シートFのインフレーション成形が行われるようになっている。
【0013】
以下の説明のように、この発明はインフレーション成形後の円形断面の筒状シートをその両側において内向きV字状に折り込むことでガゼット袋形状になした後に平坦化しロールに巻き取るようにしている。
【0014】
図1において、ダイ10の下方におけるインフレーションシートの引き取り経路に同心にダイ10の直下において空冷リング36が配置される。その下流側に散水装置38が配置される。水冷装置38の具体的構造の一例は図4に示され、筒状シートの両側に冷却水槽38-1が配置され、冷却水槽38-1からの冷却水は筒状シートの全周より図1の破線hのように掛け流されるようになっている。この発明ではインフレーション成形された筒状シートFは下向きに引き出されており、冷却水の上からの掛け流し方式と相俟って冷却時間を長くとることができ冷却効率の点で好ましい。
【0015】
下段の水冷装置38の下流側に筒状シートをガゼット形状に成形のためのガゼット成形装置40(フォーマー)が配置される。ガゼット成形装置40は、成形後のインフレーションシート外周において、直径対向位置にその平面が直径と平行となるように設けられる一対の成形板41と、成形板41の平面を挟むようにインフレーションシートの両側に設けた押さえ板39(図5)と、その下流の上下のニップローラ対42, 42'と、ニップローラ対42, 42'の間におけるシート両側の補助成形板41´とから構成される。補助成形板41´は必須ではなく省略可能である。成形板41は半径方向に前後移動可能(図1の矢印d方向)に設けられ、ガゼット形状の成形動作時には成形板41は図1に示す前進位置にあり、他方、押さえ板42は成形板41を挟んで両側に先細テーパ面を形成するように配置される(図5)。そのため、インフレーション成形後の筒状シートの円周上の対向部位は直径対立位置した成形板41の先細のテーパ面41aに当接することで折り込まれつつ、成形板41を挟んだ両側ではインフレーションシートは押さえ板39により先細に案内される。そのため、最初は図6(a)のようにシートFは断面円形であるが、インフレーションシートにおけるする成形板41は(b)に示すように第1の肉薄領域rにその中央部において当接し、成形板41に当接する部位は半径内方に徐々に折り込まれ、他方、押さえ板39に当接するインフレーションシートの部位は平坦に押さえ込まれて行き、最終的には(c)に示すように中央部f1が中まで突き出され、両端部f2で折り返されたガゼット形状部Gに成形されるに至る。最終的なガゼット成形後における中央部f1を挟んで両端部f2までの領域が第1の肉薄領域43に対応する。また、図6(c)には第2の肉薄領域45も図示されている。成形板41や押さえ板39や補助成形板41´はその表面は滑りを考慮したテフロンコーティング(テフロンは登録商標)又は耐磨耗性と滑りの良いフッ素樹脂コーティング処理を施すのが好ましいが、アルバックテクノ株式会社製のタフラム加工やニダックス加工を用いても良い。
【0016】
図6(a) において、ダイ10から押し出されるときのインフレーションシート横断面における直径対立した第1の円弧状領域(弧長=r)を43にて示し、この部位43は図6(c)のガゼット形状部G(折込部f1, f2)の形成が行われる部位であり、後述のように、スタンディング型バッグに製袋した場合にスタンディング型バッグ底端からまち(ガゼット)内側端縁(折込部f1)までの高さの領域に相当する。また、第1の円弧状領域43から90°離間した第2の円弧状領域(弧長=s)を45にて示し、この領域45はスタンディング型バッグに製袋した場合に開口部から所定高さの領域に相当する。 残余の領域(43, 45を除いた領域)はスタンディング型バッグの胴部に相当する。この発明によれば、これらの部位43, 45においては、スタンディング型スタンディング型バッグより輸液バッグに構成したときの滅菌工程における加熱に関らず、所期の柔軟を維持するため、ダイ10におけるリング状吐出口(リップ)14の構造の工夫によって、インフレーションシートの肉厚は残余の円周方向部位より薄くされている。即ち、図3はガゼット部の肉薄化のため突起部を形成したリップ14の形状を示す。即ち、リップ14はリング状をなしているが、直径対立部位のそれぞれにおいて円周方向に所定長さの円弧状部位においてリップ14を形成する内周部位が第1の突起部14-1に形成されており、また、第1の突起部14-1から90°円周方向に離間した部位における直径対立部位のそれぞれにおいて円周方向に所定長さの円弧状部位においてリップ14を形成する内周部位が第2の突起部14-2に形成されておりそのため、これらの部位においてリング状吐出口は残余の部位より狭隘となっている。そのため、このリップ14からの溶融樹脂の吐出により形成される筒状シートにおける突起14-1, 14-2の部位は、これらの突起14-1, 14-2の分だけ薄肉となり筒状シートFの横断面における直径対立した円弧状部位r,s(図6(a))、シート長手方向には第1の帯状部位43、第2の帯状部位45は肉薄となる。後述実施例のように、樹脂としてポリエチレンを使用した場合は、突起14-1の高さの設定は、インフレーション成形後の筒状シートが断面における直径対立部位43(スタンディング型バッグに製袋後底面からガゼット内側に所定高さの領域)において肉厚が200ミクロンとなり、突起14-2の高さの設定は、インフレーション成形後の筒状シートが断面における直径対立部位45(スタンディング型バッグに製袋後開口部から下に所定高さの領域)において肉厚が250ミクロンとなり、部位43, 45以外の残余の部位(スタンディング型バッグに製袋後胴部となる領域)で300ミクロンとなるように設定することができる。これらの肉薄部位43, 45はインフレーションフィルムの長さ方向に帯状に延びており、図5ではこられの領域の境界線を破線にて示す。後述のように製袋時に図6における直径線47にて筒状シートは上下に2分割され夫々がスタンディング型バッグを構成する。
【0017】
前述のように第1の帯状肉薄部位43は、スタンディング型バッグに製袋したとした場合、スタンディング型バッグ底面からガゼット内側端縁までの高さ領域をカバーし、この部位においてガゼット形成され(図6(b)(c))、そして、スタンディング型バッグの底帯部分形成のための熱溶着はガゼット形状における両端曲折部f2のそれぞれにおけるシート対向面間において行われる(後述の図10及び図11の説明参照)。このように、スタンディング型バッグの底帯となるシート部分全体を肉薄とすることは、スタンディング型バッグに製袋した状態でスタンディング型バッグの底部が固くなり過ぎことがない点で好ましい。しかしながら、肉薄領域を狭く(図6(a)の周長rを短縮)することもまたはそれより広くすることも可能であり、要は、この後者の場合にあっても、スタンディング型バッグにおける底部を輸液時における排液進行に伴うスムースな潰れを確保しうる適当な軟弱性を確保し得るようになっていることが肝要である。また、第2の肉薄部位45は、スタンディング型バッグに製袋したとした場合(即ち、図6の直径線47で2分割後)、スタンディング型バッグ開口部から下に所定高さの領域(図16(a)のh2)をカバーし、この部位においても肉薄となっている(肉薄の程度は第1の部位43より弱い)。輸液バッグへの利用の場合はこの部位は出口ポート(図15で部番90にて示す)への装着部位であり、輸液時は一番下に位置するが、この部分を幾分肉薄とすることで、輸液バッグのこの部位が軟弱となり、残液により幾分膨らみ、残液量を強調しその目視を容易する点で有利である。
【0018】
図1において、ダイ10から直下のニップローラ対42, 42'に至るまでの筒状シートFの引き取り経路は真直ぐ下向きであり、冷却はダイ10の下方に配置された水冷装置38からの冷却水により行われるため、冷却水の流れhは筒状シートFの外周に沿って形成され、ガゼット成形装置40の成形板41及び押さえ板39との接触部にも流入される。そのため、冷却水の流れは成形部の潤滑(摩擦削減)に寄与しスムースなガゼット成形を実現することができる。
【0019】
ガゼット形状に折り込まれた筒状シートFは図1の上下のニップローラ対42, 42'間で圧潰され、ニップローラ対42, 42'間ではガゼット形状における両側のV形状部分に補助成形板41´が深く入り込むことで(図5も参照)、V形状部分は深く折り畳まれシート状を呈する。
【0020】
図1ではニップローラ対は42, 42'のように2対設けられているが、成形装置によりガゼット形状に折られた直後の(ダイからインフレーションした後の最初の)ニップローラ対42のみ設けることでも十分なガゼット折りを実現することが可能である。サイドプレート41´及び下流側のニップローラ対42´は任意的な補助手段である。また、図1ではニップローラ対44より下流側は作図の便宜上水平面において90°転じて図示しているが、実際は紙面に直交する配置となっていることは言うまでも無い。
【0021】
図1において、ニップローラ対42, 42'でのシートFの圧潰はシートの対向層を密着せしめブローエアーを下流側に対して遮断するように行う。そして本発明が応用される医療用輸液バッグではシートの厚みはこの実施形態ではPEの場合基本的には250μm−300μmであり、このような厚いシートの場合は、シートを構成する樹脂等の要因によっては、単にニップローラを通すのみではガゼット折りされたシートの密着が得られ難いことがあり得、図7はこれを模式的に表したものであり、ガゼット折りされたシートは(a)に示すように幅方向の両端部では4層、中央部では2層によって構成され、これをニップローラを通過させた場合を(b)に示し、シートが厚いため4層の両端部と2層の中央部とでトータルの厚みが大きく違うため、両端部では密着が得られても両端部の大きな厚みに影響されてしまうため中央部で隙間が残り、ブローエアーが下流側に漏洩し、シート対向面の密着が得られず、シートは膨らんでしまうため、ロールへの巻取が困難となってしまう懸念がある。この発明者のテストによるとブロッキング性に関してはシートを構成する樹脂依存性がある。シートを構成する素材によるブロッキング性の相違に関らず、厚みのあるシートにおいてもガゼット折りシートの対向面での確実な密着を行わせるため、ニップローラ42, 42'として表面にゴム層を形成し、ニップローラ42, 42'間でのニップ時に表面ゴム層は弾性によりシート幅方向における両端部と中央部とでの厚み差に応じて変形し、(c)に示すように両端部でも中央部でもシート対向面を密着させることができる。ゴム層における硬度としてはデュロメータ硬さでA90〜A50のものを採用し得る。シートの密着の観点からすると水冷装置38からの冷却水の温度は20℃といった常温より30℃〜60℃に加温されていることが好ましい。冷却水が加温されていることによりニップローラでのシートが柔軟化され、密着性を高めることができる。シートの密着性の指標としては実際のシートの剥離強度が0.5〜30g/15mm、好ましくは1.0〜15g/15mmであることによって安定なロール巻き取りを実現することができる。また、シートが密着していることにより、後述のシートからのスタンディング型バッグの切り出しの際に切断面からのエアー混入及びエアー混入による汚染の恐れを排除することができる点で好都合である。
【0022】
本発明のシートにおける両端のガゼット形状はロール巻きにした場合にそのままでは極端な耳高となる懸念がある。この解消の手段として巻き取りローラ52の手前にニップローラを設け、これを所定幅で往復させることで両端位置を適当にずらせつつ巻き取ることができ、耳高を解消することができる。また、後述のようにスタンディング型バッグ成形時にボトムシールとなるシート両側のシール部の形成をボトムローラ44からロールRまでのシート巻取経路で行うことによりシート幅方向の両端がシールされていことで厚みを抑え、耳高が目立たなくなる。
【0023】
図1において、ガゼット成形装置40の下方にはボトムローラ44が位置され、ボトムローラ44は受水槽46内に配置される。ガゼット形状のシートのシートはボトムローラ44を介し一対のニップローラ47により引き出され、ニップローラ47の下流側に夫々のニップローラ47に近接するように水切りジェットエアノズル48が配置され、余剰の水分が吹き飛ばされる。その後巻取ローラ52によりシートはロールRに巻回される。
【0024】
本発明による筒状シートのインフレーション成形おいて、ダイからの多層シートは空冷リング36により第1段階として冷却される。空気冷却には室温により周波数を変えて風量を制御するインバータモータを使用したブロアでもよいが、超低温空気発生装置、例えば株式会社日立製作所製PUROFRIOを使用して−10〜−20℃の冷気を使用しても良い。空気冷却後、冷却装置38からの冷却水により急冷され外層は結晶化温度以下に急冷され固化が急速に進み、歪み応力が有効に抑制されていて、多層化樹脂の特性が生かされ、カールとヘイズが少なく透明性に優れる多層膜シートが得られる。水冷方式としては図4で説明したオーバフロー方式でも又は環状の冷却散水リングからの冷却水により冷却する。水冷機構は、冷却水を供給する冷却水供給管と、冷却水供給管に介設され冷却水の冷却水流量を調整する冷却水流量調整器と、冷却水供給管に介設され冷却水を冷却する冷却水用熱交換器とから形成されている。また冷却リングの槽循環による温度制御もされている。層状に流下する冷却水の流量は、冷却水流量調整器により容易に制御され、冷却水の温度は冷媒の流量調整を受ける熱交換器により容易に制御される。そして冷却水は、熱交換器により適正温度に冷却され、その流量は、流量調整弁により調整されている。冷却水の水量、その温度、オーバーフロー堰のオーバーフロー高さの検出とフィードバック制御とにより、冷却効率と冷却性能を制御的に最適化することができる。
【0025】
インフレーションシート成形の過程におけるブローアップ比(BUR:環状ダイの出口直径とブローアップ終了後のバブル直径の比)は好ましくは0.7〜1.4の範囲であり、より好ましくは0.8〜1.2である。この本発明のブローアップ比は通常より低く抑えられているが、ブローアップ比を低く抑えることにより内圧が低くなり、ガゼット形状への折り込みが容易となる。シートの厚みはベース値としてポリエチレンの場合300μm、ガゼット部で200μmである旨説明したが、特に限定的されないが、ベース値としては、好ましくは120〜400μmであり、より好ましく4は160〜300μmである。図6に関連して説明したように、ガゼット部における周長r及びsの部位43, 45については特殊口金(図3)使用により初期の軟弱度が得られるように残余の部位より薄くされる。また、材質構成にて製袋時に相対する面がシールしやすい樹脂配合比率を考慮する。
【0026】
ブローアップ比の上記範囲の下限はガゼット成形時の内圧により決まる。即ち、ガゼット成形はガゼット成形装置の成形板41を外部から筒状シートに係合させて行うため、筒状シートの内部にはこれに対抗しうる圧力が必要である。ブローアップ比の上限については、ガセット成形後のシート対向面の密着性(ブロッキング性)が支配要因の一つであり、内圧が高すぎるとニップローラ42によるニップによっても対向面の完全な密着状態が得られない懸念がある。後述のように同じボリオレフィン系でもポリプロピレンを素材としたシートと比較してポリエチレンを素材とするシートのブロッキング性は幾分劣っており、この場合にブローアップ比を下げることが必要なブロッキング性の確保のために好適である。
【0027】
多層膜成形リングダイ10に空気導入管26より投入される空気量は、図示しない空気量調整弁の開閉により制御される。多層膜成形ダイの内側に空気供給路26を介して導入される空気量の制御は、多層膜成形ダイの拡径度であるインフレーションアップ比とガゼット成形装置40内にて形成される合成樹脂シートを制御する。扁平化シートの折幅は、巻き取りまでの間に設置した折幅センサで検出される。また、ニップローラ47で挟み潰して最内層同士をブロッキングして巻き取られる。無菌エアーは、無菌エアーノズルに空気を供給する空気供給管に介設され空気の空気流量を調整する空気流量調整器とから成る。
【0028】
本発明のスタンディング型バッグの製造方法にあってはロールRから引き出されたガゼット形状シート状筒状シートの両側のV字状の凹部に中間シールプレートを挿入位置させつつ上側シールプレート及び下シールプレートの各々を中間シールプレートに向け移動させることで折込部の上下縁部における所定幅の部位の対向シート面を溶着し、次いで、移送方向に沿って間隔をおいて全幅に亘って上下のシートの対向面を所定幅で溶着し、その後幅方向に置ける中間において側筒状シートを二つ割に切断すると共に、前記所定幅の部位を中間で幅方向に沿って切断することで個々の容器に形成したスタンディング型バッグとしている。以下、この方法について詳細に説明する。
【0029】
図8及び図9において、筒状シートのロールRは図1の装置により製造されるものであり、両側にガゼット形状部Gが形成されている。ロールから引き出されるシート側縁から破線で示すガゼット形状部Gにおける中央折込部(図6のf1にて示す)までが第1の肉薄領域43に相当し、第2の肉薄領域45はロールから引き出されるシートにおける上面及び下面の破線間の領域により表される。破線筒状シートのロールRは軸54に装着され、ロール支持軸54はその回転駆動のため図示しないベクトルモータに連結され、またロールRから繰り出される筒状シートSの張力制御のためのパウダブレーキが具備せしめられる。その下方に夫々が上下のローラからなるニップローラ56, 58がロールRから切り出される筒状シートのシートSの移送方向の上流及び下流に設置される。ニップローラ56, 58間におけるシートSの移送方向(矢印m)に沿って上流から下流に順々にシートSの両側に夫々設けられ容器のボトムシール形成用の上下のシールプレート64A, 64B:上下のシールプレート間に設けられ、シートのガゼット形状部に外側より挿入されるよう片持に延びている受けプレート65:シートSの両側に夫々設けられ、ボトムシール形成後のシート冷却用の上下の冷却バー66A, 66B:容器の2倍幅のサイドシール形成用の上下の2段のシールプレート68A, 68B; 70A, 70B:サイドシール形成後のシート冷却用の上下の冷却バー72A, 72B:シートを幅方向における中間で二つ割りとするためのレザー装置74:並びに、2倍幅のサイドシール部分を中間で切断することで個々の容器に切断するための裁断機76(上下の刃76-1, 76-2から構成される):が配置される。
【0030】
以上の筒状シートからの個々の容器への成形装置の作動について説明すると、支持軸54上のロールRから引き出された筒状シートのシートSはニップローラ56, 58により引き出される。ニップローラ56, 58間の筒状シートの張力は低いため、ニップローラ56, 58間ではシートは幾分拡開した状態で矢印mの方向に移送される。そのため、ガゼット形状における両側のV形状の凹部も幾分開口した状態で移送され、その結果、受けプレート65の自由端部は図10に示すようにシートのガゼット形状部Gにおける両側のV形状の凹部に幾分導入される。他方、上下のシールプレート64A, 64Bのシール用突端部64A-1, 64B-1はガゼット形状におけるV形状部位f1からの折り返し縁部f2を挟んでシール受け板65と対向している。シールプレート64A, 64Bの突端部64A-1, 64B-1はガゼット形状におけるV形状部位からの上下の折り返し縁部から所定幅の領域において対向している。上下のシールプレート64A, 64Bはそのシール用突端部64A-1, 64B-1が受け板65に当接するように移動され、その結果、ガゼット形状におけるV形状部位からの上下の折り返し縁部から所定幅の領域において対向シート面同士が溶着される。図11はガゼット形状のシートがV形状部位からの上下の折り返し縁部から所定幅の部位yで対向面同士で溶着された状態を示す。溶着部位y(この発明の第1の溶着部)は図9においても示され、上下の折り返し縁部から所定幅の部位yでの対向面の溶着はシート移送方向mにおいて途切れることなく続くように上下のシールプレート64A, 64B及びシール受け板65による溶着作業は行われる。受けプレート65は上下のシールプレート64A, 64Bを受けるだけでシール機能はなく、上面側及び下面側に形成された内外層の所定幅の溶着部位y同士が溶着してしまうようなことはない。
【0031】
図11において、シールyを形成した状態でのインフレーションシートにおける第1の肉薄領域43が示され、この領域43は図10の上下の折り返し縁部f2の内側の領域であり、この領域は通常の張り合わせにより構成したスタンディング型バッグにおける底帯(別体の胴部に溶着される)に相当する部位である。即ち、本発明では局部的肉薄のインフレーション成形により通常の張り合わせ構造のスタンディング型バッグと同様に底帯部分のみ肉薄にする構造を実現することができる。また、肉薄部分を幾分延長し、上下の折り返し縁部f2を外側(スタンディング型バッグ表面側)に少し超えるようにしてもよく、これはインフレーションシートからの巻取時のシートロールR(図1)の耳の部分を肉薄化し、巻き姿を良好にできる点で有利である。また、図11にはスタンディング型バッグの開口部となるインフレーションシートにおける第2の帯状領域45も示される。
【0032】
シール部yの形成後のシートは上下の冷却バー66A, 66Bとの直接接触(図8では簡明のため離間するように図示されているがシートSは基本的には冷却バー66A, 66Bとの面接触により冷却を受ける)により急冷却を受け余熱の放出が行われる。冷却バー66A, 66Bは図示しないが、内部に20℃程度の冷却水を循環させており、また、冷却水の温度調節のためのチラーを備えている。冷却バー66A, 66Bによる冷却後、シート幅方向の中央部に設置そして、上下の2段のシールプレート68A, 68B; 70A, 70BによりシートSは上下対向面間でシールされる。即ち、シールプレート68A, 68B; 70A, 70BはシートSの全幅を幾分超えて延びるシール用突端部68A-1, 68B-1; 70A-1, 70B-1を備えており、上下のシール用突端部68A-1及び68B-1並びに上下のシール用突端部70A-1, 70B-1が当接することによりシール用突端部68A-1, 68B-1; 70A-1, 70B-1の幅に応じた上下のシートの部位、即ち、シートSの対向部位が溶着される。この幅方向に延びる溶着部位をzにて表す。溶着部位z(この発明の第2の溶着部)は後述の通りスタンディング型バッグのサイドシールとなり、スタンディング型バッグのサイドシールに対して2倍の幅を持つ。
【0033】
図12はシート片側におけるシール部y,zの詳細形状(図9においてシール部y,zを形成後のシートの部分拡大図)を示しており、長さ方向における1リピート(スタンディング型バッグ一個分)をpにて示す。溶着部zはスタンディング型バッグのサイドシールとなり、中央部をラインnに沿って切り離すことでスタンディング型バッグ一個一個に切り出すことができ、シール部yはスタンディング型バッグの底部となる。シール部yはガゼット形状におけるV形状部位からの折り返し縁部を対向面同士で溶着するものであるが(図10及び11及びその説明参照)、溶着部はスタンディング型バッグの中央部はt1(図13(A))のように狭く(低く)、側部に向けて長く(高く)なって行き(中間をt2(図13(B))にて示す)、側部(図13(C))ではサイドシールzと合体し、ガゼット形状部を含めたシート全幅で上下層は密着している。ガゼット形状における折返し縁部から内側のシート部分は残余のシート部分より肉薄であり、図13ではこれを誇張して描いている。ガゼット部における肉薄部分は図5の筒状シートでは帯状領域43(図6の円弧状領域r)に形成されるものであることは以上説明の通りであり、図12で破線43は肉薄となるガゼット部の内側縁部を現す。ガゼット形状部における溶着されていないシート部分(襠の部分)を80, 80'にて示し、これらの部分80, 80'はスタンディング型バッグにおける底帯となる。従って、バッグ内側空洞部は中間部では底が低く、底帯は80のように広くなり(図13(A)では底帯は折られた状態に示されるが、輸液収容時は実質的に真直ぐに伸展した状態にある)。また、バッグは側部に向ってゆくに従って底は高くなっている(底帯は80´のように狭くなってゆく)。このような構造はスタンディング型バッグの座りを良くするとともに、輸送における底シールyと側シールzとの接合部に掛かる負荷を軽減するため有利である。
【0034】
また、溶着z高さをシート上下(スタンディング型バッグ上下)で代えることも可能である。これを図13(A´)に示す。このようにすることで、スタンディング型性を確保しつつバッグ底部の硬さを調整することができる。
【0035】
再び図8及び図9において、溶着部zを形成後のシートSは上下の冷却バー72A, 72Bとの直接接触により急冷却を受け余熱の放出が行われる。冷却バー72A, 72Bは冷却バー66A, 66Bと同様に内部に20℃程度の冷却水を循環させており、冷却水の温度調節はチラーにより行われる。その後、シート幅方向の中央部に設置されたレザー刃74によりシート幅方向の中央部に沿って真っ二つに切断され、図9において切断線をu(切断線uは図11にも示される)にて示し、これがスタンディング型バッグの開口となる。そして、ニップローラ58の直後において、裁断機76により2倍幅の溶着部位zが中間において2個のスタンディング型バッグWに切断される。即ち、図14は裁断機76により2個のスタンディング型バッグWに切断した状態を模式的に示し、各バッグWはガゼット形状シートの両側のV断面形状からの各折り返し部分において対向シート面を所定幅にて溶着(溶着部y)することでボトムシールW1が構成され、ガゼット形状部における非溶着部(図13の80, 80')が伸展可能な底帯W2となる。スタンディング型バッグの底泰容器側面は長手方向の所定間隔において2倍幅で溶着(溶着部z)された筒状シートの対向部を中間で切断することでサイドシールW3とし、スタンディング型バッグWの開口部W4はシートを幅方向の中間に沿って切除して構成される。
【0036】
図15はこの発明のスタンディング型バッグを輸液バックに構成したものを示し、開口部(図14のスタンディング型バッグ開口端W4の側)はプラスチック製のポート90をつけてシールされ、内部に輸液が収容されている。輸液作業時はボトムシールW1(ガゼット部)が上になるようにスタンドに懸架され、排出ポート90は下向きとなる。周知のようにポートの端部にゴム栓92が設けられ、このゴム栓を輸液セットの穿刺針94により穿刺することにより輸液作業が行われる。輸液バッグは通気針を使用せず、バッグを潰してゆくことにより排液が進められるタイプである。即ち、内部には所定量の空気(気体)が収容されるが、排液の進行とともにバッグが潰れてゆく。ガゼット部Gよりなるスタンディング型バッグ底帯はそのままの肉厚では滅菌等の熱処理時の熱によりシートを構成するプラスチックが硬化するため硬くなりやすいが、この発明では図16(a)に示すようにガゼット部端縁からガゼット内側に下に所定高さh1の部位(図6(a)の周長rの領域43(図16(a)には境界線として表示)に相当)はインフレーション成形時にシートを肉薄(ポリエチレンの場合200μm)となるようにしている。従って、滅菌等の熱処理の影響によるスタンディング型熱硬化があってもそれを見込んで適当な軟弱性が得られるため、排液の終了付近にあっては図16(a)に示すように上端ガゼット部Gは平坦に潰れることができる。また、排出ポート側のh2の高さの部位(上下に分割後の図6(a)の周長sの領域45)については中間の肉厚(ポリエチレンの場合250μm)となっている。そのため、滅菌時の加熱の影響があってもここも十分軟弱であり、残液はこの部位に溜まることができ(液面をl1にて示す)輸液バッグは膨れ傾向となり、残液の目視性を高めることができる。
【0037】
図16(b)はガゼット部(ガゼット部内側にh1の高さ領域)のみ肉薄(ポリエチレンの場合200μm)としたときの排液が進んだ時点を示し、ガゼット部は潰れるが排出ポートとの接続部を含めた残余の高さ領域hはポリエチレンの場合300μmと厚いままの場合であり、この場合も本発明の範囲に包含され、排液が進行した場合にガゼット部は潰れるため封入空気が上端に溜まる程度は多いに緩和され、残液の視認性は大いに改善される。しかしながら、排出ポート90との接続部は滅菌時の加熱の影響で硬くなるため、同一残液量でも液面l2は図16(a)より幾分高くなるため、残液量の表示機能の点では3段階に肉厚を変化させた図16(a)の場合が好ましい。、
【0038】
これに対して、従来のインフレーションシートからなるスタンディング型バッグの場合は図16(c)のように高さh全体で肉厚が均等であるため溶着時の熱でガゼット部(底帯部)は硬化するため排液の進行によっても底部は潰れ難く、排液が進んでも、ガゼット部は潰れず開いたままであるためここに空気が溜まり、排液が進行しても液面はl3のように高く留まるため、残液量の視認性が良くなかったが、図16(a)(b)の本発明はこの問題点を解決するものである。
【0039】
このようにして得られたスタンディング型バッグWはインフレーションによる製法原理上、筒状シートの内部は外気に直接晒されることがないため、筒状シートの内部は完全な塵埃フリーの環境となり、医療用輸液バッグ用に適している。医療用輸液バッグとする場合、スタンディング型バッグWに開口部から輸液を充填後に開口部にゴム栓混注口が装着されシールされる。この場合に輸液バッグは自立させた状態で混注操作混注操作が可能となる点で便利である。
【0040】
本発明の変形実施例としてスタンディング型バッグWのボトムシールW1となるガゼット折りシートの溶着部yの形成を図1から図7に関連して説明した筒状シートのインフレーション成形時に行うことができる。この場合、溶着部yの形成のためのヒートシール装置(シールプレート64A, 64B等)は図1のボトムローラ44の下流側におけるシート移送経路の適当な部位に設置することになる。このように構成した場合、ヒートシールによってシート両端の肉厚が小さくなるため前述の耳高抑制手段を設けなくてもロールRに巻き取った場合の両端の耳高を幾分緩和することができる。耳高をより抑えるためヒートシール部の折返端縁部を切断除去してしまうことも可能である。また、後工程の印刷や製袋工程でガゼット部の反りによる反転を防ぐ方法として仮シール(ブロッキングを含む)を行うことは有効である。
【0041】
〔PE素材による実施例〕
使用したPE(ポリエチレン)素材(L-LDPE)は表1にリストしており、各データはメーカーにより公表もののみ示している。表1のPP素材を表層、中間層、内層毎に表2の試作材質構成1〜4のように各厚み比率をもってブレンドした。ブレンド状態での各層における素材の重量%は表記の通りであった。住友重機械モダン株式会社製・下向きインフレ装置65mmφ押出機3台を使用して、175mmφの丸ダイスにてリップ(図2の14にて示す)の巾4mmにてブローアップ比1.24にて3層でかつ円周方向に300μm,250μm,200μmの3段階が出現するようにインフレーション成形を行った。樹脂押出温度230℃にて冷却水として20℃の水道水を使用して、冷却・ガゼット折してニップロールにてニップして巻き取った結果、適度にブロッキングが発生して、ガゼット状態が崩れず綺麗に巻き取れた。得られた原反シートをテンシロン型引張試験機にて引張速度50mm/min・把握長50mmにてブロッキングした剥離強度を測定した結果、3〜6g/15mmであった。インフレーションの過程において3段階の肉厚差を得るため、まず、丸ダイスリップ巾4mmに対し、図6のrで示す角度範囲(シート長手方向には43を境界線とする帯状領域に相当し、輸液バッグに構成したとき図16(a)で示すガゼット部端縁からガゼット内側に下方にh1の高さ範囲に相当する)で内側リングに1.33mmの突起(図2の突起部14-1に相当)を付けることによりほぼ、200μm付近の厚みが得られた。また、丸ダイスリップ巾4mmに対し、図6のsで示す角度範囲(シート長手方向には45を境界線とする帯状領域に相当し、輸液バッグに構成したとき図16(a)で示す排出ポート90の接続部から上方にh2の高さ範囲に相当する)で内側リングに0.67mmの突起(図2の突起部14-2に相当)を付けることによりリップ巾3.33mmにした結果、ほぼ250μmが得られた。得られた原反を使用して巾150mm×高さ210mm×底40mmのスタンディング型バッグを作製した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
点滴適性を確認するため、ゴム栓(図15の92)を取り付け後、スタンディング型バッグに、水500mlと空気60ccを充填して、日阪製作所のレトルト殺菌釜を使用して、トレーに横置きし、滅菌温度110℃×10分間の蒸気式滅菌を行い、22℃の冷却水にて急冷しサンプルを得た。滅菌後の曲げ弾性率は表記の通りであった。室温23℃にて24時間放置し、同温度にて点滴適性を確認するため、スタンディング型バッグ底の中央に懸架穴を開け逆さまに吊るし、ゴム栓92にニードル94を穿刺し30分間にて内容物の水を抜いた結果、改良品は、点滴開始まもなくスタンディング型バッグの内圧が下がり、底が徐々に潰れると同時に、液面が徐々に下がり目安となる目盛り印刷に従い、残液の状態が明確に分かった。また、残量100mlにおいて、内容液の自重により胴部の薄くして柔らかくした部分(図16(a)の高さh2の部位)が膨らみ、液面がはっきり見え残液が明確であった。
【0044】
結果は表2に示すように試作材質構成2,3及び4が特に良好であった、ポリエチレンの場合は素材自体が低弾性率であるため、試作材質構成1のように素材として弾性率が低くなりすぎると、底部の潰れについては問題はないが、輸液バッグが全体的に柔らかくなり過ぎ、形態維持性からすると、曲げ弾性率はなるべくは100Mpaが下限で、150Mpaを超えた硬さが好ましい。
【0045】
〔PP素材による実施例〕
使用したPP素材は表3にリストしている。表3のPP素材を表層、中間層、内層毎に表4の試作材質構成1〜5のように各厚み比率をもってブレンドした。ブレンド状態での各層における素材の重量%は表記の通りであった。PP素材による実施例に記載と同様にインフレーション成形し、3層でかつ円周方向に3段階の肉厚差(試作材質構成1のみ300μm,250μm,200μmの3段階、試作材質構成2−5については、250μm,200μm,150μmの3段階)が出現するようにインフレーション成形を行い原反を得た。得られた原反を使用して巾150mm×高さ210mm×底40mmのスタンディング型バッグの改良品を作成した。点滴適性を確認するため、ゴム栓を取り付け後、スタンディング型バッグに、水500mlと空気60ccを充填して、日阪製作所のレトルト殺菌釜を使用して、トレーに横置きし、滅菌温度110℃×10分間の蒸気式滅菌を行い、冷却水にて急冷しサンプルを得た。室温23℃にて24時間放置し、同温度にて点滴適性を確認するため、スタンディング型バッグ底の中央に懸架穴を開け逆さまに吊るし、ゴム栓に針を刺し30分間にて内容物の水を抜く試験を行った。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
試作材質構成1〜5を通じてスタンディング型バッグ底部は肉薄化により潰れやすく、残液の視認性は良かった。ただ視認性の改良程度は官能評価ではあるが、素材構成1及び2及び4が最も良かった。素材構成3及び5の場合は若干劣っていた。これは、輸液バッグとした後(シールによる加熱及び滅菌による加熱を受けた後)素材の曲げ弾性に基因すると考えられ、高弾性のポリプロピレンの場合は素材の選択によっては素材バッグの各部の厚みを変化させることの柔軟性への寄与が少なくなってしまうからと考えられる。
【0048】
表2及び4から、曲げ弾性率の適正範囲としては、100Mpaから450Mpa、より好ましくは150Mpaから380Mpaであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスタンディング型バッグWは医療用輸液用途以外にも、薬剤、電子基板などに用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
10…ダイ
11, 12…押出機
14…リング状吐出口(リップ)
14-1, 14-2…吐出口内周の突起
20…ブロック
26…空気圧力導入通路
36…空冷リング
38…水冷・冷却リング装置
39…押さえ板
40…ガゼット成形装置
41…成形板
42…ニップローラ
43…第1の帯状肉薄領域
45…第2の帯状肉薄領域
52…巻取ローラ
56, 58…ニップローラ
64A, 64B …ボトム用シールプレート
65…受けプレート
66A, 66B…冷却バー
68A, 68B; 70A, 70B…サイド用シールプレート
72A, 72B…冷却バー
74…レザー刃
76…裁断機
80, 80'…底帯
F…筒状シート
G…ガゼット形状部
R…筒状シートのシートのロール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状シートをインフレーション成形し、インフレーション成形後の筒状シートの長手方向両側端をガゼット形状に折り込みつつシート状に形成し、ロールに巻き取る工程と、筒状シートの両側のガゼット形状部の上下の折り込み縁部から所定幅における対向シート面を溶着することにより個々のスタンディング型バッグの底部シールとなるシート長手方向に沿った第1の溶着部を形成する工程と、筒状シートの長手方向における所定間隔にて所定幅にて筒状シートの上下対向シート面を溶着することにより個々のスタンディング型バッグのサイドシールとなるシート幅方向に沿った第2の溶着部を形成する工程と、シート幅方向における中間部において長手方向に沿って筒状シートの上下対向シート面をカットする工程と、前記第2の溶着部における中間においてシート幅方向に沿ってシートをカットし個々のスタンディング型バッグの開口部となる切断部を形成する工程とを備え、筒状シートの上記インフレーション成形に際して、スタンディング型バッグの底部を含むようにシート長手方向に沿った第1の帯状領域にて肉薄に成形することを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、スタンディング型バッグの底部とはシートのガゼット形状部における上下の折り込み縁部の実質的内側のシート領域であることを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の発明において、筒状シートの上記インフレーション成形に際して、前記第1の帯状領域に加えて、スタンディング型バッグの開口部となる部位を含むようにシート長手方向に沿った第2の帯状領域にて肉薄に成形することを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の発明において、第1の帯状領域の肉薄度合が第2の帯状領域のそれより大きいことを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、インフレーション成形のためのダイにおけるリング状吐出口は部分的に狭隘部を形成し、筒状シートの帯状肉薄部を形成することを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、第1の溶着部の高さはガゼット形状部の上下の折り込み縁部間で相違することを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項7】
筒状シートをインフレーション成形し、インフレーション成形後の筒状シート両側をガゼット形状に成形しつつ扁平化されたシート対向面をバッグ外形線に沿って溶着しカットすることにより、ガゼット形状部が底面となり、カットされた幅方向中間部が開口部となるスタンディング型バッグであって、スタンディング型バッグ底部となるインフレーション成形筒状シートの部位は肉薄であることを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項8】
請求項7に記載の発明において、スタンディング型バッグの底部とはシートのガゼット形状部における上下の折り込み縁部の実質的内側のシート領域であることを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項9】
請求項7若しくは8に記載の発明において、スタンディング型バッグ開口部となるインフレーション成形筒状シートの部位も肉薄であることを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項10】
請求項9に記載の発明において、スタンディング型バッグ底部となるインフレーション成形筒状シートの部位の肉薄の程度がスタンディング型バッグ開口部となるインフレーション成形筒状シートの部位の肉薄の程度より大きいことを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項に記載の発明において、スタンディング型型バッグは開口部に出口ボートを装着することで輸液バッグとして使用され、輸液バッグの滅菌時の温度処理に相当の温度処理状態においてシートの曲げ弾性率は100Mpa〜450Mpa、好ましくは150Mpa〜380Mpaであることを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか一項に記載の発明において、ガゼット形状部の底面における溶着部の高さをスタンディング型バッグの正面と背面との間で違えたことを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項1】
筒状シートをインフレーション成形し、インフレーション成形後の筒状シートの長手方向両側端をガゼット形状に折り込みつつシート状に形成し、ロールに巻き取る工程と、筒状シートの両側のガゼット形状部の上下の折り込み縁部から所定幅における対向シート面を溶着することにより個々のスタンディング型バッグの底部シールとなるシート長手方向に沿った第1の溶着部を形成する工程と、筒状シートの長手方向における所定間隔にて所定幅にて筒状シートの上下対向シート面を溶着することにより個々のスタンディング型バッグのサイドシールとなるシート幅方向に沿った第2の溶着部を形成する工程と、シート幅方向における中間部において長手方向に沿って筒状シートの上下対向シート面をカットする工程と、前記第2の溶着部における中間においてシート幅方向に沿ってシートをカットし個々のスタンディング型バッグの開口部となる切断部を形成する工程とを備え、筒状シートの上記インフレーション成形に際して、スタンディング型バッグの底部を含むようにシート長手方向に沿った第1の帯状領域にて肉薄に成形することを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、スタンディング型バッグの底部とはシートのガゼット形状部における上下の折り込み縁部の実質的内側のシート領域であることを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の発明において、筒状シートの上記インフレーション成形に際して、前記第1の帯状領域に加えて、スタンディング型バッグの開口部となる部位を含むようにシート長手方向に沿った第2の帯状領域にて肉薄に成形することを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の発明において、第1の帯状領域の肉薄度合が第2の帯状領域のそれより大きいことを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、インフレーション成形のためのダイにおけるリング状吐出口は部分的に狭隘部を形成し、筒状シートの帯状肉薄部を形成することを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、第1の溶着部の高さはガゼット形状部の上下の折り込み縁部間で相違することを特徴とするスタンディング型バッグ製造方法。
【請求項7】
筒状シートをインフレーション成形し、インフレーション成形後の筒状シート両側をガゼット形状に成形しつつ扁平化されたシート対向面をバッグ外形線に沿って溶着しカットすることにより、ガゼット形状部が底面となり、カットされた幅方向中間部が開口部となるスタンディング型バッグであって、スタンディング型バッグ底部となるインフレーション成形筒状シートの部位は肉薄であることを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項8】
請求項7に記載の発明において、スタンディング型バッグの底部とはシートのガゼット形状部における上下の折り込み縁部の実質的内側のシート領域であることを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項9】
請求項7若しくは8に記載の発明において、スタンディング型バッグ開口部となるインフレーション成形筒状シートの部位も肉薄であることを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項10】
請求項9に記載の発明において、スタンディング型バッグ底部となるインフレーション成形筒状シートの部位の肉薄の程度がスタンディング型バッグ開口部となるインフレーション成形筒状シートの部位の肉薄の程度より大きいことを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項に記載の発明において、スタンディング型型バッグは開口部に出口ボートを装着することで輸液バッグとして使用され、輸液バッグの滅菌時の温度処理に相当の温度処理状態においてシートの曲げ弾性率は100Mpa〜450Mpa、好ましくは150Mpa〜380Mpaであることを特徴とするスタンディング型バッグ。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか一項に記載の発明において、ガゼット形状部の底面における溶着部の高さをスタンディング型バッグの正面と背面との間で違えたことを特徴とするスタンディング型バッグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−24951(P2012−24951A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163257(P2010−163257)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】
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