スタンドパウチ殺菌用電子線照射装置
【課題】Σ状に折り曲げた構造のスタンドパウチを、一つの電子線発生源を用いて効果的に滅菌処理でき、経済的に製作できる装置を提供する。
【解決手段】
照射室１０内の一方側から他方側にスタンドパウチ半製品１を、直線的に搬送中に照射室１０に取り付けた電子線発生手段２０から照射した電子線により滅菌処理する。電子線発生手段２０は、スタンドパウチ半製品１の搬送方向の水平面に対して略直交する照射室１０の一方の側面のみに、一つ取り付けている。照射室１０内に反射板１３、１４をそれぞれ傾斜させて配置し、これら反射板１３、１４により電子線発生手段２０から照射室１０内に照射する電子線を、スタンドパウチ半製品１の各平面に対して反射させる。
【解決手段】
照射室１０内の一方側から他方側にスタンドパウチ半製品１を、直線的に搬送中に照射室１０に取り付けた電子線発生手段２０から照射した電子線により滅菌処理する。電子線発生手段２０は、スタンドパウチ半製品１の搬送方向の水平面に対して略直交する照射室１０の一方の側面のみに、一つ取り付けている。照射室１０内に反射板１３、１４をそれぞれ傾斜させて配置し、これら反射板１３、１４により電子線発生手段２０から照射室１０内に照射する電子線を、スタンドパウチ半製品１の各平面に対して反射させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、スタンドパウチ（自立型フィルム袋）を滅菌するスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置に係り、特に一つの電子線発生源を用いてスタンドパウチを殺菌処理するスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
飲料や流体状食品等の充填用として使用されるスタンドパウチは、プラスチックフィルムを用いて底部となる端面等が、Σ状となるように折り曲げられて充填容量を多くした形状であって、飲み口（スパウト）を取り付けるものもある。
【０００３】
スタンドパウチは、飲料や流体状食品等を充填することが多いことから、対象物を充填する前にスタンドパウチを滅菌処理して無菌状態にし、次の充填工程に移行させることが行われている。
【０００４】
スタンドパウチの滅菌処理は、高温水による加熱処理や、過酸化水素水等の薬品を使用する薬剤処理が従来から行われていたが、前者滅菌では充填物の品質維持に工夫を要し、また後者の滅菌では薬剤除去工程を必要とする。
【０００５】
上記の欠点を解消するため、スタンドパウチの滅菌処理用として、スタンドパウチを連続して搬送する充填ライン中に電子線の照射室を設け、この照射室に電子線発生源を備えて、移動するスタンドパウチ面に対して電子線発生源から電子線を照射するスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置が提案されている（例えば特許文献１参照）。
【０００６】
特許文献１記載のスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置は、無端構成の搬送用チェーンを使用して、スパウト付パウチを照射室内へ連続搬送させ、加速電圧の低い電子線発生源からの電子線で、スパウト付パウチの各平面や側面の滅菌処理を行っている。
【０００７】
より詳しくは、搬送用チェーンにより直線的に搬送されるスパウト付パウチは、照射室内で電子線発生源から電子線を一方の平面と側面に照射し、その後照射室外の反転部でスパウト付パウチの左右側面を反転させてから、再度照射室内に移動させ、同じ電子線発生源から電子線で同様に他方の平面と他の側面に対して電子線を照射し、全ての面の滅菌処理を行うものである。
【０００８】
ところで、殺菌や物理的或いは化学的物性の改質等に使用する電子線照射装置では、特許文献２に記載の如く、真空容器中に配置される電子線源からの電子線を、取り出し窓から取り出して処理対象物を処理するとき、メッキ層を施した電子線反射構造体上に処理対象物を配置し、電子線を反射させることで自由な放出を防止するものが提案されている。
【０００９】
更に、飲用液体を封入する容器を搬送中に殺菌処理する電子線殺菌装置では、特許文献３に記載の如く、ペットボトル等の容器を搬送するパイプスクリューを用いた搬送路面に、電子線が照射される照射領域を設け、照射領域の一方の片側と他方の方側にずらして電子線を反射する反射板を配置することにより、上方に配置した電子線照射器から電子線が容器に対して直接照射、及び反射板で反射された電子線の照射により、容器に対する電子線の照射量を均一にすることも提案されている。
【００１０】
【特許文献１】特開２００３−７２７１７号公報
【特許文献２】特開２００５−２４１５８８号公報
【特許文献３】特開２００６−２０４６４０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１１】
しかしながら、特許文献１記載の電子線照射装置は、充填ライン中に組み込める利点があるが、搬送用チェーンで連続搬送するスパウト付パウチを、照射室外で反転させる反転部を設ける必要がある構造のため、装置全体が大きくなる。
【００１２】
このため、本発明者らは、スタンドパウチを直線的に連続搬送する際に、Σ状に折り曲げて厚くなった端面を含めて効果的に滅菌処理できるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を提案（特願２００８−６３４９号）している。
【００１３】
上記の装置は、電子線発生手段を設けた照射室内を、一方側から他方側にスタンドパウチを移送するときに、電子線を照射してスタンドパウチを効果的に滅菌処理するため、電子線発生手段としてスタンドパウチの全面に対して電子線を照射する主照射手段、及びスタンドパウチの折り曲げ端面に対して電子線を照射する補助照射手段を設けて構成したものである。
【００１４】
上記したスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置では、端面等がΣ状に折り曲げて厚くなった形状のスタンドパウチを、直線的に連続搬送するときに効果的に滅菌処理でき、簡単な構成で経済的に製作できる利点がある。
【００１５】
しかし、主照射及び補助照射手段の２組の電子線発生手段が必要であり、当然のことながら直流高圧電源も２組必要となるため、装置を経済的に製作できない欠点がある。また、滅菌処理する対象のスタンドパウチの寸法が変わると、照射室内で電子線を照射する照射範囲の調整が難しくなってくる問題がある。
【００１６】
本発明の目的は、Σ状に折り曲げた構造のスタンドパウチを、一つの電子線発生源を用いて効果的に滅菌処理できて、経済的に製作できるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１７】
本発明のスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置は、照射室に電子線発生手段を取り付け、前記照射室内の一方側から他方側にスタンドパウチを搬送中に、前記電子線発生手段から照射した電子線にて滅菌処理する際に、前記電子線発生手段は前記スタンドパウチの搬送方向の水平面に対して略直交する前記照射室の一方の側面のみに一つを取り付け、前記照射室内に前記スタンドパウチの各平面に対する反射板をそれぞれ傾斜させて配置し、前記各反射板によって、前記電子線発生手段から前記照射室内に照射した電子線を前記スタンドパウチの各平面に反射するように構成したことを特徴としている。
【００１８】
好ましくは、前記各反射板はその一方を前記スタンドパウチの全面に対する電子線の反射用とし、他方を前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する電子線の反射用としたことを特徴としている。
【００１９】
また好ましくは、前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する反射板は、基材の両側に電子線の反射面を設けて構成したことを特徴としている。
【００２０】
更にまた好ましくは、前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する反射板は、所定の間隔を置いて配置した小さな二つの二つの反射板から構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【００２１】
本発明のようにスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を構成すれば、照射室の一方の側面のみに取り付ける電子線発生手段からの電子線を、スタンドパウチの各平面に対して各反射板によってそれぞれ反射するようにしたので、電子線発生手段更には直流電源が一つであっても効果的に滅菌処理できるし、装置全体を経済的に製作することができる。
【００２２】
また、各反射板の一方をスタンドパウチの全面の反射用とし、他方を前記スタンドパウチの折り曲げ端面用とすれば、電子線発生手段の電子線の加速電圧を上げる必要もなく、スタンドパウチの各部を滅菌処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２３】
本発明のスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置は、照射室内の一方側から他方側にスタンドパウチを搬送中に、照射室に取り付けた電子線発生手段から照射した電子線にて滅菌処理する。電子線発生手段は、スタンドパウチの搬送方向の水平面に対して略直交する照射室の一方の側面のみに一つを取り付けている。そして、照射室内にスタンドパウチの各平面に対する反射板をそれぞれ傾斜させて配置し、これら各反射板によって、電子線発生手段から照射室内に照射した電子線をスタンドパウチの各平面に反射するように構成している。
【実施例１】
【００２４】
以下、本発明のスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を、図１から図３に示す例で説明する。図１及び図２は、本発明を適用したスタンドパウチの製造ライン中の一部を示している。
【００２５】
スタンドパウチは、プラスチックフィルム材を用いて前工程（図示せず）で、底部となる両側の端面等がΣ状に折り曲げて作成され、二つが連なった状態のスタンドパウチ半製品１が作られる。このスタンドパウチ半製品１を、次工程で左右の二つに分離切断されて完成品にし、流体状食品を充填する充填工程側に移送が行われる。
【００２６】
製造ラインの途中に、中空箱状に製作して外部と遮断可能にした電子線の照射室１０を配置している。この照射室１０の内部を、矢印で示すようにスタンドパウチ半製品１がローラー２等の搬送手段によって、一方側から他方側へ直線的に搬送される。
【００２７】
スタンドパウチ半製品１は、本発明により照射室１０の側面に取り付ける一つの電子線発生手段２０から電子線を照射し、照射室１０内をスタンドパウチ半製品１が搬送中に滅菌処理を行うようにしている。
【００２８】
照射室１０は、外部と遮断する内部を望ましくは乾燥空気の雰囲気にし、又は図１に示す如く排気ポンプＰ等の減圧手段を接続し、照射室１０内を大気圧以下の一定の減圧状態とし、電子線の照射での滅菌効率をより向上させ、或いは低い加速電圧の電子線発生手段２０を使用可能にすることもできる。
【００２９】
照射室１０内を排気ポンプＰで減圧状態にする場合、照射室１０の前後にそれぞれ排気ポンプＰで減圧する少なくとも一つの減圧区画１１を設けるようにする。更に、減圧区画１１の外側にある搬送用のローラー２も隔壁１２にて包囲して、照射室１０内が減圧状態を維持し、電子線によってより良好に滅菌処理が行える構成にして使用する。
【００３０】
また、本発明により電子線発生手段２０は、スタンドパウチ半製品１の搬送方向の水平面に対して、略直交する照射室１０の一方の側面のみに、一つだけ取り付けている。電子線発生手段２０は、高真空状態にする電子線発生室２１内に電子線発生管２２を配置し、この電子線発生管２２に対して直流高圧電源２３を接続する一般的な構造である。
【００３１】
電子線発生管２２で発生した電子線は、照射室内１０と電子線発生手段２０間の壁面に設けた照射窓２４から破線矢印に示す如く照射される。そして本発明では、照射室１０の一方の側面のみに取り付けた一つの電子線発生手段２０からの電子線で、スタンドパウチ半製品１の両平面を滅菌処理するため、照射室内１０に特別の工夫を施している。
【００３２】
即ち、図２に示すように照射室内１０内には、直線的に搬送されてくるスタンドパウチ半製品１の各平面側に、それぞれ反射板１３、１４を配置すると共に、平面に対して所定の角度を傾斜させて配置している。これら反射板１３、１４は、例えばタングステン等の重金属板や、金を蒸着した鉛板を使用する。
【００３３】
上記のように配置した各反射板１３、１４により、一つの電子線発生手段２０からの電子線を、破線矢印で示す如く照射室１０内でスタンドパウチ半製品１の各平面側に反射させ、この電子線の照射によりスタンドパウチ半製品１の各平面、及びΣ状の折り曲げ端面を含めて、滅菌処理を効果的に行えるようにしている。
【００３４】
図２の例の各反射板１３、１４のそれぞれは、電子線発生手段２０に近い側の端部付近を、回転支持部１５、１６によって回転可能に支持し、また遠い側の端部付近をリンク機構等の高さ調整支持部１７、１８により支持させて配置している。
【００３５】
このように、回転支持部１５、１６及び高さ調整支持部１７、１８を用いて配置すれば、スタンドパウチ半製品１の各平面に対する電子線の照射状況の検査結果を適切に反映させ、各反射板１３、１４の傾斜角度の調整が容易に行うことができ、或いは照射対象のスタンドパウチ半製品１の寸法が変更になった場合でも調整して使用することができる。
【００３６】
なお、反射板１３、１４のそれぞれは、スタンドパウチ半製品１の各平面に対して、予め定めた角度となるように照射室１０内に設けた支持部に固定して配置し、電子線発生手段２０からの電子線をスタンドパウチ半製品１の各平面に向けて反射できるようにすることもできる。
【実施例２】
【００３７】
次に、本発明の他の実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を、図３を用いて説明する。この例では、照射室１０内を搬送するスタンドパウチ半製品１を中心にして、一方に全部を反射面とした反射板１３を配置し、他方に両端部のみを反射面とした反射板１４を配置したものである。
【００３８】
そして、反射板１３をスタンドパウチ半製品１の平面の滅菌処理用に用い、また反射板１４をスタンドパウチ半製品１のΣ状の折り曲げ端面の滅菌処理用に用いたもので、他の点は図２の例と同様な構造である。
【００３９】
このため、反射板１４に向けて照射する電子線は、電子線発生手段２０における電子線発生管２２のフィラメントの数を減少させ、反射板１３に向けて照射する電子線に比べて少なくした電子線量に調整する。
【００４０】
このようにすれば、反射板１３で反射した電子線でパウチ半製品１の全面を、更に反射板１３で反射した電線でΣ状の折り曲げ端面を照射可能にできるから、滅菌の必要な全ての部分を照射室１０内で効果的に処理することができる。
【実施例３】
【００４１】
更に、本発明の別の実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を、図４を用いて説明する。この例は、上記と同様に反射板１３をスタンドパウチ半製品１の平面の滅菌処理用とし、また分割して所定の間隔を置いて配置した小さな二つの反射板１４Ａ、１４Ｂをスタンドパウチ半製品１のΣ状の折り曲げ端面の滅菌処理用に使用したものである。
【００４２】
この構造の装置にしても、図３の例と同様にスタンドパウチ半製品１を、照射室１０内で効果的に滅菌処理することができる。
【００４３】
上記した各実施例では、スタンドパウチ半製品１の搬送中に、反射板１３、１４で反射させた電子線の照射で滅菌処理するもので説明したが、左右の二つに分離切断して完成品としたスタンドパウチを滅菌処理する場合にも、当然本発明の装置を適用でき、同様な効果を達成できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【００４４】
【図１】本発明の一実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を示す概略縦断面図である。
【図２】図１のＡ−Ａ線の概略断面図である。
【図３】本発明の他の実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を示す概略断面図である。
【図４】本発明の他の実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【００４５】
１…スタンドパウチ半製品、１０…照射室、１３、１４、１４Ａ、１４Ｂ…反射板、１５、１６…回転支持部、１７、１８…高さ調整支持部、２０…電子線発生手段、２１…電子線発生室、２２…電子線発生管、２４…照射窓。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、スタンドパウチ（自立型フィルム袋）を滅菌するスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置に係り、特に一つの電子線発生源を用いてスタンドパウチを殺菌処理するスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
飲料や流体状食品等の充填用として使用されるスタンドパウチは、プラスチックフィルムを用いて底部となる端面等が、Σ状となるように折り曲げられて充填容量を多くした形状であって、飲み口（スパウト）を取り付けるものもある。
【０００３】
スタンドパウチは、飲料や流体状食品等を充填することが多いことから、対象物を充填する前にスタンドパウチを滅菌処理して無菌状態にし、次の充填工程に移行させることが行われている。
【０００４】
スタンドパウチの滅菌処理は、高温水による加熱処理や、過酸化水素水等の薬品を使用する薬剤処理が従来から行われていたが、前者滅菌では充填物の品質維持に工夫を要し、また後者の滅菌では薬剤除去工程を必要とする。
【０００５】
上記の欠点を解消するため、スタンドパウチの滅菌処理用として、スタンドパウチを連続して搬送する充填ライン中に電子線の照射室を設け、この照射室に電子線発生源を備えて、移動するスタンドパウチ面に対して電子線発生源から電子線を照射するスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置が提案されている（例えば特許文献１参照）。
【０００６】
特許文献１記載のスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置は、無端構成の搬送用チェーンを使用して、スパウト付パウチを照射室内へ連続搬送させ、加速電圧の低い電子線発生源からの電子線で、スパウト付パウチの各平面や側面の滅菌処理を行っている。
【０００７】
より詳しくは、搬送用チェーンにより直線的に搬送されるスパウト付パウチは、照射室内で電子線発生源から電子線を一方の平面と側面に照射し、その後照射室外の反転部でスパウト付パウチの左右側面を反転させてから、再度照射室内に移動させ、同じ電子線発生源から電子線で同様に他方の平面と他の側面に対して電子線を照射し、全ての面の滅菌処理を行うものである。
【０００８】
ところで、殺菌や物理的或いは化学的物性の改質等に使用する電子線照射装置では、特許文献２に記載の如く、真空容器中に配置される電子線源からの電子線を、取り出し窓から取り出して処理対象物を処理するとき、メッキ層を施した電子線反射構造体上に処理対象物を配置し、電子線を反射させることで自由な放出を防止するものが提案されている。
【０００９】
更に、飲用液体を封入する容器を搬送中に殺菌処理する電子線殺菌装置では、特許文献３に記載の如く、ペットボトル等の容器を搬送するパイプスクリューを用いた搬送路面に、電子線が照射される照射領域を設け、照射領域の一方の片側と他方の方側にずらして電子線を反射する反射板を配置することにより、上方に配置した電子線照射器から電子線が容器に対して直接照射、及び反射板で反射された電子線の照射により、容器に対する電子線の照射量を均一にすることも提案されている。
【００１０】
【特許文献１】特開２００３−７２７１７号公報
【特許文献２】特開２００５−２４１５８８号公報
【特許文献３】特開２００６−２０４６４０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１１】
しかしながら、特許文献１記載の電子線照射装置は、充填ライン中に組み込める利点があるが、搬送用チェーンで連続搬送するスパウト付パウチを、照射室外で反転させる反転部を設ける必要がある構造のため、装置全体が大きくなる。
【００１２】
このため、本発明者らは、スタンドパウチを直線的に連続搬送する際に、Σ状に折り曲げて厚くなった端面を含めて効果的に滅菌処理できるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を提案（特願２００８−６３４９号）している。
【００１３】
上記の装置は、電子線発生手段を設けた照射室内を、一方側から他方側にスタンドパウチを移送するときに、電子線を照射してスタンドパウチを効果的に滅菌処理するため、電子線発生手段としてスタンドパウチの全面に対して電子線を照射する主照射手段、及びスタンドパウチの折り曲げ端面に対して電子線を照射する補助照射手段を設けて構成したものである。
【００１４】
上記したスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置では、端面等がΣ状に折り曲げて厚くなった形状のスタンドパウチを、直線的に連続搬送するときに効果的に滅菌処理でき、簡単な構成で経済的に製作できる利点がある。
【００１５】
しかし、主照射及び補助照射手段の２組の電子線発生手段が必要であり、当然のことながら直流高圧電源も２組必要となるため、装置を経済的に製作できない欠点がある。また、滅菌処理する対象のスタンドパウチの寸法が変わると、照射室内で電子線を照射する照射範囲の調整が難しくなってくる問題がある。
【００１６】
本発明の目的は、Σ状に折り曲げた構造のスタンドパウチを、一つの電子線発生源を用いて効果的に滅菌処理できて、経済的に製作できるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１７】
本発明のスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置は、照射室に電子線発生手段を取り付け、前記照射室内の一方側から他方側にスタンドパウチを搬送中に、前記電子線発生手段から照射した電子線にて滅菌処理する際に、前記電子線発生手段は前記スタンドパウチの搬送方向の水平面に対して略直交する前記照射室の一方の側面のみに一つを取り付け、前記照射室内に前記スタンドパウチの各平面に対する反射板をそれぞれ傾斜させて配置し、前記各反射板によって、前記電子線発生手段から前記照射室内に照射した電子線を前記スタンドパウチの各平面に反射するように構成したことを特徴としている。
【００１８】
好ましくは、前記各反射板はその一方を前記スタンドパウチの全面に対する電子線の反射用とし、他方を前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する電子線の反射用としたことを特徴としている。
【００１９】
また好ましくは、前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する反射板は、基材の両側に電子線の反射面を設けて構成したことを特徴としている。
【００２０】
更にまた好ましくは、前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する反射板は、所定の間隔を置いて配置した小さな二つの二つの反射板から構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【００２１】
本発明のようにスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を構成すれば、照射室の一方の側面のみに取り付ける電子線発生手段からの電子線を、スタンドパウチの各平面に対して各反射板によってそれぞれ反射するようにしたので、電子線発生手段更には直流電源が一つであっても効果的に滅菌処理できるし、装置全体を経済的に製作することができる。
【００２２】
また、各反射板の一方をスタンドパウチの全面の反射用とし、他方を前記スタンドパウチの折り曲げ端面用とすれば、電子線発生手段の電子線の加速電圧を上げる必要もなく、スタンドパウチの各部を滅菌処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２３】
本発明のスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置は、照射室内の一方側から他方側にスタンドパウチを搬送中に、照射室に取り付けた電子線発生手段から照射した電子線にて滅菌処理する。電子線発生手段は、スタンドパウチの搬送方向の水平面に対して略直交する照射室の一方の側面のみに一つを取り付けている。そして、照射室内にスタンドパウチの各平面に対する反射板をそれぞれ傾斜させて配置し、これら各反射板によって、電子線発生手段から照射室内に照射した電子線をスタンドパウチの各平面に反射するように構成している。
【実施例１】
【００２４】
以下、本発明のスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を、図１から図３に示す例で説明する。図１及び図２は、本発明を適用したスタンドパウチの製造ライン中の一部を示している。
【００２５】
スタンドパウチは、プラスチックフィルム材を用いて前工程（図示せず）で、底部となる両側の端面等がΣ状に折り曲げて作成され、二つが連なった状態のスタンドパウチ半製品１が作られる。このスタンドパウチ半製品１を、次工程で左右の二つに分離切断されて完成品にし、流体状食品を充填する充填工程側に移送が行われる。
【００２６】
製造ラインの途中に、中空箱状に製作して外部と遮断可能にした電子線の照射室１０を配置している。この照射室１０の内部を、矢印で示すようにスタンドパウチ半製品１がローラー２等の搬送手段によって、一方側から他方側へ直線的に搬送される。
【００２７】
スタンドパウチ半製品１は、本発明により照射室１０の側面に取り付ける一つの電子線発生手段２０から電子線を照射し、照射室１０内をスタンドパウチ半製品１が搬送中に滅菌処理を行うようにしている。
【００２８】
照射室１０は、外部と遮断する内部を望ましくは乾燥空気の雰囲気にし、又は図１に示す如く排気ポンプＰ等の減圧手段を接続し、照射室１０内を大気圧以下の一定の減圧状態とし、電子線の照射での滅菌効率をより向上させ、或いは低い加速電圧の電子線発生手段２０を使用可能にすることもできる。
【００２９】
照射室１０内を排気ポンプＰで減圧状態にする場合、照射室１０の前後にそれぞれ排気ポンプＰで減圧する少なくとも一つの減圧区画１１を設けるようにする。更に、減圧区画１１の外側にある搬送用のローラー２も隔壁１２にて包囲して、照射室１０内が減圧状態を維持し、電子線によってより良好に滅菌処理が行える構成にして使用する。
【００３０】
また、本発明により電子線発生手段２０は、スタンドパウチ半製品１の搬送方向の水平面に対して、略直交する照射室１０の一方の側面のみに、一つだけ取り付けている。電子線発生手段２０は、高真空状態にする電子線発生室２１内に電子線発生管２２を配置し、この電子線発生管２２に対して直流高圧電源２３を接続する一般的な構造である。
【００３１】
電子線発生管２２で発生した電子線は、照射室内１０と電子線発生手段２０間の壁面に設けた照射窓２４から破線矢印に示す如く照射される。そして本発明では、照射室１０の一方の側面のみに取り付けた一つの電子線発生手段２０からの電子線で、スタンドパウチ半製品１の両平面を滅菌処理するため、照射室内１０に特別の工夫を施している。
【００３２】
即ち、図２に示すように照射室内１０内には、直線的に搬送されてくるスタンドパウチ半製品１の各平面側に、それぞれ反射板１３、１４を配置すると共に、平面に対して所定の角度を傾斜させて配置している。これら反射板１３、１４は、例えばタングステン等の重金属板や、金を蒸着した鉛板を使用する。
【００３３】
上記のように配置した各反射板１３、１４により、一つの電子線発生手段２０からの電子線を、破線矢印で示す如く照射室１０内でスタンドパウチ半製品１の各平面側に反射させ、この電子線の照射によりスタンドパウチ半製品１の各平面、及びΣ状の折り曲げ端面を含めて、滅菌処理を効果的に行えるようにしている。
【００３４】
図２の例の各反射板１３、１４のそれぞれは、電子線発生手段２０に近い側の端部付近を、回転支持部１５、１６によって回転可能に支持し、また遠い側の端部付近をリンク機構等の高さ調整支持部１７、１８により支持させて配置している。
【００３５】
このように、回転支持部１５、１６及び高さ調整支持部１７、１８を用いて配置すれば、スタンドパウチ半製品１の各平面に対する電子線の照射状況の検査結果を適切に反映させ、各反射板１３、１４の傾斜角度の調整が容易に行うことができ、或いは照射対象のスタンドパウチ半製品１の寸法が変更になった場合でも調整して使用することができる。
【００３６】
なお、反射板１３、１４のそれぞれは、スタンドパウチ半製品１の各平面に対して、予め定めた角度となるように照射室１０内に設けた支持部に固定して配置し、電子線発生手段２０からの電子線をスタンドパウチ半製品１の各平面に向けて反射できるようにすることもできる。
【実施例２】
【００３７】
次に、本発明の他の実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を、図３を用いて説明する。この例では、照射室１０内を搬送するスタンドパウチ半製品１を中心にして、一方に全部を反射面とした反射板１３を配置し、他方に両端部のみを反射面とした反射板１４を配置したものである。
【００３８】
そして、反射板１３をスタンドパウチ半製品１の平面の滅菌処理用に用い、また反射板１４をスタンドパウチ半製品１のΣ状の折り曲げ端面の滅菌処理用に用いたもので、他の点は図２の例と同様な構造である。
【００３９】
このため、反射板１４に向けて照射する電子線は、電子線発生手段２０における電子線発生管２２のフィラメントの数を減少させ、反射板１３に向けて照射する電子線に比べて少なくした電子線量に調整する。
【００４０】
このようにすれば、反射板１３で反射した電子線でパウチ半製品１の全面を、更に反射板１３で反射した電線でΣ状の折り曲げ端面を照射可能にできるから、滅菌の必要な全ての部分を照射室１０内で効果的に処理することができる。
【実施例３】
【００４１】
更に、本発明の別の実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を、図４を用いて説明する。この例は、上記と同様に反射板１３をスタンドパウチ半製品１の平面の滅菌処理用とし、また分割して所定の間隔を置いて配置した小さな二つの反射板１４Ａ、１４Ｂをスタンドパウチ半製品１のΣ状の折り曲げ端面の滅菌処理用に使用したものである。
【００４２】
この構造の装置にしても、図３の例と同様にスタンドパウチ半製品１を、照射室１０内で効果的に滅菌処理することができる。
【００４３】
上記した各実施例では、スタンドパウチ半製品１の搬送中に、反射板１３、１４で反射させた電子線の照射で滅菌処理するもので説明したが、左右の二つに分離切断して完成品としたスタンドパウチを滅菌処理する場合にも、当然本発明の装置を適用でき、同様な効果を達成できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【００４４】
【図１】本発明の一実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を示す概略縦断面図である。
【図２】図１のＡ−Ａ線の概略断面図である。
【図３】本発明の他の実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を示す概略断面図である。
【図４】本発明の他の実施例であるスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【００４５】
１…スタンドパウチ半製品、１０…照射室、１３、１４、１４Ａ、１４Ｂ…反射板、１５、１６…回転支持部、１７、１８…高さ調整支持部、２０…電子線発生手段、２１…電子線発生室、２２…電子線発生管、２４…照射窓。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
照射室に電子線発生手段を取り付け、前記照射室内の一方側から他方側にスタンドパウチを搬送中に、前記電子線発生手段から照射した電子線にて滅菌処理するスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置において、前記電子線発生手段は前記スタンドパウチの搬送方向の水平面に対して略直交する前記照射室の一方の側面のみに一つを取り付け、前記照射室内に前記スタンドパウチの各平面に対する反射板をそれぞれ傾斜させて配置し、前記各反射板によって、前記電子線発生手段から前記照射室内に照射した電子線を前記スタンドパウチの各平面に反射するように構成したことを特徴とするスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置。
【請求項２】
請求項１において、前記各反射板はその一方を前記スタンドパウチの全面に対する電子線の反射用とし、他方を前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する電子線の反射用としたことを特徴とするスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置。
【請求項３】
請求項２において、前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する反射板は、基材の両側に電子線の反射面を設けて構成したことを特徴とするスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置。
【請求項４】
請求項２において、前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する反射板は、所定の間隔を置いて配置した小さな二つの反射板から構成したことを特徴とするスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置。
【請求項１】
照射室に電子線発生手段を取り付け、前記照射室内の一方側から他方側にスタンドパウチを搬送中に、前記電子線発生手段から照射した電子線にて滅菌処理するスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置において、前記電子線発生手段は前記スタンドパウチの搬送方向の水平面に対して略直交する前記照射室の一方の側面のみに一つを取り付け、前記照射室内に前記スタンドパウチの各平面に対する反射板をそれぞれ傾斜させて配置し、前記各反射板によって、前記電子線発生手段から前記照射室内に照射した電子線を前記スタンドパウチの各平面に反射するように構成したことを特徴とするスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置。
【請求項２】
請求項１において、前記各反射板はその一方を前記スタンドパウチの全面に対する電子線の反射用とし、他方を前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する電子線の反射用としたことを特徴とするスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置。
【請求項３】
請求項２において、前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する反射板は、基材の両側に電子線の反射面を設けて構成したことを特徴とするスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置。
【請求項４】
請求項２において、前記スタンドパウチのΣ状の折り曲げ端面に対する反射板は、所定の間隔を置いて配置した小さな二つの反射板から構成したことを特徴とするスタンドパウチ殺菌用電子線照射装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１０−２３９１７（Ｐ２０１０−２３９１７Ａ）
【公開日】平成２２年２月４日（２０１０．２．４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−１９１１５８（Ｐ２００８−１９１１５８）
【出願日】平成２０年７月２４日（２００８．７．２４）
【出願人】（５０１３８３６３５）株式会社日本ＡＥパワーシステムズ (168)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年２月４日（２０１０．２．４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年７月２４日（２００８．７．２４）
【出願人】（５０１３８３６３５）株式会社日本ＡＥパワーシステムズ (168)
【Ｆターム（参考）】
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