説明

スタンド装置

【課題】吸盤を被吸着面に密着させた状態で吸盤中央部分を引き上げて強制的に真空状態を作り出す際に、吸盤と被吸着面との密着度を向上させると共に、非吸着面が凸状に湾曲している場合でも確実に吸着できるスタンド装置を提供する。
【解決手段】吸盤201は、弾性材で形成されており、上面中央に吸盤用支持軸202が垂立され、スタンドカバー301には中央に吸盤用支持軸202が弾性体401を介して連結する連結用柱302を設け、吸盤用支持軸202には支軸403が遊嵌して移動可能な長穴状貫通孔204を形成し、支軸403にはこれを上方に移動させてロックする吸引ロック機構404を連結させ、吸盤用支持軸202でもって吸盤201の中央部分を被吸着面に押し付けた後に引き上げてロックするように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置箇所に吸着される吸盤からなる吸着部と、吸着部と一体に連結され電子機器などの装着体を装着するスタンドと、吸着部の設置箇所への吸着状態を着脱自在に制御する操作部とからなるスタンド装置に関し、特に、装着体を車両などに設置して使用する場合に適用されるスタンド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用電子機器として音響・映像再生装置機能やデジタル放送受信機能を内蔵したナビゲーション装置が普及している。これらの車載用電子機器は、装着体として車内のダッシュボードなどに着脱自在に取付けて設置したスタンド装置に装着されている。このスタンド装置は車載用電子機器の使用に適した箇所に設置でき、しかも車載用電子機器をスタンド装置から取外した携帯型として使用できるなどと極めて好都合なものである。
【0003】
この種のスタンド装置としては、例えば、下記の特許文献1(特開2008−232259号公報)に示す従来技術が提案されている。この従来のスタンド装置は、車内のダッシュボードなどの設置箇所に吸盤を用いて着脱自在に固定するものである。吸盤は平らな円盤状であって、吸盤中央に中心軸が突出して設けられている。また吸盤は円形の取付け台の下側に配置され、中心軸は取付け台の上方に突出している。そして、中心軸は取付け台の上部に設けた変位機構によって上下動されるように構成されている。
【0004】
スタンド装置を設置箇所に設置する場合は、スタンド装置を押し下げて吸盤下面の吸着面と設置箇所の被吸着面との間を密着させる。このとき、吸盤の背面外周には取付け台の外周部分が当接している。その後の操作としては変位機構によって中心軸を上方に変位させる。この操作によって吸盤の中央部分は披吸着面から離れる方向に引き離される。その結果、吸着面と披吸着面との間は真空状態となり、披吸着面に対する吸盤の密着度が高められて安定した固定状態が得られる。
【0005】
変位機構は、中心軸の上端寄りに設けた軸と、この軸を中心として回動するハンドルと、ハンドルと一体に設けたカムとから構成されている。そして、変位機構は、ハンドルを垂立させているときには、カムによって中心軸を下方に位置させ吸盤を平面状態としている。一方、変位機構は、ハンドルを回動させて水平にするとカムによって中心軸を上方に変位させ吸盤の中央部を吸引してその状態をロックするようになっている。
【0006】
このような構成の従来のスタンド装置は、吸盤によって任意の箇所に着脱自在に固定される。そして、吸盤の吸着面と設置箇所の被吸着面との間に強制的に真空状態が作られて固定状態が確実に維持できる。一方、スタンド装置を設置箇所から離脱する場合は、ハンドルを元に戻すことにより比較的容易に吸着状態を解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−232259号公報(段落0012〜0014、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のスタンド装置においては、取付け台を押し下げて吸盤の周縁を設置箇所にある被吸着面に強く密着させているが、吸盤の中央部分は積極的に被吸着面に押し付けていない。そのため、吸盤の中央部分を引き上げる前にその部分の空気が確実に排除されず十分な真空状態が得られず確実に吸着できないという問題点があった。
【0009】
また、従来のスタンド装置においては、平らな状態の吸盤の中央部分を上方に変位させて強制的に真空状態を形成しているため、設置箇所が凸状に湾曲している場合には、吸盤の吸着面を湾曲した被吸着面に沿わせて確実に密着させることが不可能であった。
【0010】
また、吸盤は上方に引き上げられるときの変位量を十分にとることが不可能であった。そのため、吸盤と被吸着面との間には十分な真空状態が得られず設置箇所に吸盤を強固に吸着することができない。特に、車両のダッシュボードなどのように、湾曲した面が多い場合には、平面部分が少ないので電子機器の配置箇所が大きく制限されてしまうという問題点があった。
【0011】
したがって、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、スタンド装置の設置箇所の制限を少なくすると共に確実に固定して、装着体である電子機器を多くの箇所に配置して使用できるスタンド装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係るスタンド装置の発明は、
設置箇所に吸着される吸着部と、該吸着部と一体に連結されたスタンドと、該吸着部の設置箇所への吸着状態を着脱自在に制御する操作部とからなり、装着体を装着するスタンド装置であって、
前記吸着部は、弾性材で形成された吸着面を有する吸盤(例えば下記実施例では、吸盤201)と、該吸盤の上面中央に垂立された支持軸(例えば下記実施例では、吸盤用支軸202)と、該支持軸の中心軸と直行する方向に貫通した貫通孔(例えば下記実施例では、長穴状貫通孔204)とからなり、
前記スタンドは、前記吸着部を収納し外周の下縁を該吸盤の最外周面に対抗させて形成したスタンドカバー(例えば下記実施例では、スタンドカバー301)と、該スタンドカバーの中央頂部に設けられた連結用柱(例えば下記実施例では、連結用柱302)と、該連結用柱内に形成された前記支持軸を遊嵌する凹部(例えば下記実施例では、凹部303)とからなり、
前記操作部は、前記支持軸の頂面と前記凹部の底部との間に介挿された弾性体(例えば下記実施例では、弾性体401)と、前記連結用柱の該貫通孔に対応する側壁に該貫通孔よりも大きく切り欠かれて形成された切り欠き部(例えば下記実施例では、切り欠き部402)と、前記貫通孔に嵌通しその両端が該切り欠き部を介して該連結用柱の側面上に突出して設けられた支軸(例えば下記実施例では、支軸403)と、該支軸に回動自在に軸支され該支軸を上下方向に移動させて上端でロックするカムを有する吸引ロック機構(例えば下記実施例では、吸引ロック機構404)と、
からなり、前記貫通孔は、前記支持軸の中心軸方向を長手方向とする長穴状に形成され、前記支軸が該長手方向に移動可能なように該貫通孔に遊嵌されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスタンド装置は、次に示すような優れた効果を奏する。
【0014】
すなわち、請求項1に係る発明においては、吸盤の上面中央に吸盤用支持軸が垂立され、支持軸には該支持軸の中心軸と直行する方向に貫通し長手方向を該中心軸方向とする長穴状貫通孔が設けられている。スタンドは、外周の下縁を吸盤の最外周面に対抗させて形成したスタンドカバーと、スタンドカバーの中央頂部に設けられた連結用柱と、連結用柱内に形成された支持軸を遊嵌する凹部とからなる。そして、操作部は、支持軸の頂面と凹部の底部との間に介挿された弾性体と、連結用柱の長穴状貫通孔に対応する側壁に長穴状貫通孔よりも大きく切り欠かれて形成された切り欠き部と、長穴状貫通孔に遊嵌しその両端が切り欠き部を介して連結用柱の側面上に突出して設けられた支軸と、支軸に回動自在に軸支され該支軸を上下方向に移動させて上端でロックするカムを有する吸引ロック機構とからなる。
【0015】
このような構成によれば、吸盤を被吸着面に密着させるために、スタンド装置が設置箇所に置かれた状態で連結用柱を押し下げ、弾性体を介して吸盤用支持軸を押し下げて吸盤の中央部分を押圧すると支軸が長穴状貫通孔の上端から下端まで移動する。そのため、連結用柱の押し下げの移動距離が増大する。その結果、弾性体の圧縮量は大きくなり吸盤の中央部分が被吸着面に強く押し付けられて密着の度合いを高める。同時に、スタンドカバーも下降するのでスタンドカバーの外周の下縁が吸盤の最外周縁を直接に押圧する。
【0016】
従って、吸盤全体が被吸着面に強力に密着し空気の排除を確実に行うことができる。その後、操作部の吸引ロック機構でもってカムを回動させて支軸を上動させ、吸盤用支持軸をスタンドカバーと独立に上方に変位させ、吸盤中央部分を被吸着面から離すように引き上げてその状態をロックすることができる。すなわち、吸盤は中央部分も含めて全体的に被吸着面に確実に押し付けた状態で、中央部分が引き離されて真空状態が形成されるので、吸盤を被吸着面に強力に密着するスタンド装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係るスタンド装置の斜視図であり、図1(a)はスタンド装置に携帯型ナビゲーション装置を取り付けた状態を前面から見た斜視図であり、図1(b)はスタンド装置から操作部カバーを外した状態を背面から見た斜視図である。
【図2】図1におけるスタンド装置から連結アーム、被装着部、固定レバーなどを省き、吸引ロック機構を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図1におけるスタンド装置から吸着部のみを取り出した状態を示す側面図である。
【図4】図1におけるスタンド装置から連結アームなどを省き、使用する前の状態を示す側面図である。
【図5】図4におけるスタンド装置をA−A線で切断した断面図である。
【図6】図4におけるスタンド装置が設置箇所上で結合用柱を押し込んだ状態を示す側面図である。
【図7】図6におけるスタンド装置をB−B線で切断した断面図である。
【図8】図6におけるスタンド装置がレバーを回動して吸着を始めた状態を示す側面図である。
【図9】図8におけるスタンド装置をC−C線で切断した断面図である。
【図10】図8おけるスタンド装置がレバーをさらに回動して吸着ロックされた状態を示す側面図である。
【図11】図10におけるスタンド装置をD−D線で切断した断面図である。
【図12】図4におけるスタンド装置が凸状に湾曲している設置箇所上で結合用柱を押込んだ場合のA―A線で切断した断面図である。
【図13】本発明の一実施例における長穴状貫通孔204に代えて丸孔とした場合の比較例の説明図であり、図13(a)は丸孔である場合の連結用柱302の頂面を押し込む前の状態を示し、図13(b)は押し込み後の状態を示している。
【図14】本発明の一実施例に係るスタンド装置の動作を説明するための説明図であり、図14(a)は本発明の一実施例に適用された長穴状貫通孔である場合の押し込む前の状態を示し、図14(b)は押し込み途中の状態を示し、図14(c)は押し込み後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体例を実施例および図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するためのスタンド装置を例示するものであって、本発明をこのスタンド装置に特定することを意図するものでなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のスタンド装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係るスタンド装置の斜視図であり、図1(a)はスタンド装置に携帯型ナビゲーション装置を取り付けた状態を前面から見た斜視図であり、図1(b)はスタンド装置から操作部カバーを外した状態を背面から見た斜視図である。
【0020】
本実施例に係るスタンド装置10は、図1で示すように、装着体である電子機器の携帯型ナビゲーション装置50を車両に搭載するために用いられるものであり、設置箇所に吸盤によって吸着される吸着部20と、吸着部20と一体に連結されるスタンド30と、吸着部20の設置箇所への吸着を着脱自在に制御する操作部40とで構成されている。
【0021】
携帯型ナビゲーション装置50は、扁平で矩形の筐体501と、筐体501の前面にタッチパネル式の表示操作面502と、筐体501の背面中央部に設けられたスタンド装置10を装着するための装着部(図示せず)とを備え、筐体501内には、ナビゲーション機能、音響・映像再生機能、デジタル放送受信機能、電池などが内蔵されている。携帯型ナビゲーション装置50は、車両に搭載されたときには車両から電力供給を受けて使用され、車両外で携帯されたときには内蔵する電池から電力の供給を受けて使用される。
【0022】
図2は、図1におけるスタンド装置から連結アーム、被装着部、固定レバーなどを省き、吸引ロック機構を取り外した状態を示す斜視図であり、図3は、図1におけるスタンド装置から吸着部のみを取り出した状態を示す側面図である。
【0023】
吸着部20は、図2、図3で示すように、円形の弾性材からなる吸盤201と、下端が吸盤201の上面の中央に固着され吸盤201の上方に向かって垂立して配された吸盤用支持軸202と、吸盤201の縁に取付けられた突出片203から構成されている。吸盤用支持軸202には、吸盤用支持軸202の中心軸と直行する方向に該中心軸方向を長手方向とする長穴状貫通孔204が穿設されている。この長穴状貫通孔204は後述する支軸403(図3の斜線部分)が長手方向に距離αだけ移動可能なように略長穴形状に形成されている。
【0024】
スタンド30は、図1〜図5で示すように、吸着部20を収納する凸球面状のスタンドカバー301と、スタンドカバー301の中央頂部上面に設けられた連結用柱302と、連結用柱302に吸盤用支持軸202の上部分が遊嵌し吸着部20とスタンド30とを一体に連結するように形成された凹部303(図5参照)と、スタンドカバー301上面に設けられた取付け部304と、基部分が取付け部304に上下に回動可能に取付けられた連結アーム305と、連結アーム305の先端に設けられた携帯型ナビゲーション装置50を着脱自在に装着する被装着部306と、取付け部304の一側面に設けられた連結アーム305の上下回動を固定するための固定レバー307と、から構成されている。そして、スタンドカバー301は、吸盤201と同様に円形状になっておりその外周の下縁308が吸盤201上面の最外周面205に対抗するよう形成されている。
【0025】
操作部40は、図2、図5で示すように、吸盤用支持軸202の頂面と凹部303の底部との間に介挿されたコイルバネからなる弾性体401と、吸盤用支持軸202に穿設された長穴状貫通孔204に対応する連結用柱302の側壁に上下方向に大きく切り欠かれて形成された切り欠き部402と、長穴状貫通孔204に遊嵌してその両端を切り欠き部402を介して連結用柱302の側面上に突出して設けられた支軸403と、支軸403に結合された吸引ロック機構404とから構成されている。なお、操作部40は、図1(a)で示すように、着脱可能な操作部カバー409によって覆われている。
【0026】
吸引ロック機構404は、支軸403に回動自在に軸支して結合されたカム405と、カム405を回動するためのレバー406とから構成されている。図8、図10で示すように、図6で示すレバー406が垂立した状態から矢印Xで示す方向に回動させると、図10、図11で示すように、カム405がスタンドカバー301の上面309に当って支軸403を上方に変位させるようになっている。そして、カム405は最も突出した頂部407が上面309に当たった状態で平坦周辺部408が上面309に当接する位置まで回動されてその位置でロックするようになっている。
【0027】
ロック状態にある吸引ロック機構404は、図10及び図11で示すように、支軸403が長穴状貫通孔204の上端に当って吸盤用支持軸202を上方に大きく変位させ、吸盤201の中央部分を大きく吸引するようになっている。この状態において、カム405は頂部407が上面309を通過し、平坦周辺部408が上面309に当接した回動位置にあり、弾性体401の弾発力によってロック機能を達成するようになっている。
【0028】
次に、上述した本実施例のスタンド装置10の設置方法について説明する。この設置に際しては、操作部40によって行われる2つの操作手順を踏む。
【0029】
最初の操作手順は、図4、図5で示すスタンド装置10を設置すべき箇所に置き、連結用柱302の頂面を矢印Yで示す方向に押してスタンドカバー301を被吸着面(設置面)方向に変位させる。その結果、図6で示すように、スタンドカバー301周縁の下縁308が吸盤201上面の最外周面205に当接する。同時に、図7で示すように、弾性体401を形成するスプリングは、連結用柱302を押し下げることにより圧縮されてその弾発力でもって吸盤用支持軸202を押し下げる。そのため、吸盤201の中央部分が被吸着面に密着してその部分の空気を排除すると共に、吸盤201の周縁の下面が被吸着面に強く密着される。
【0030】
なお、図4、図5では、連結用柱302を押し下げる動作、及び、吸盤201の中央部分が被吸着面に密着してその部分の空気を排除する動作について、説明を分かり易くするためにスタンドカバー301周縁の下縁308と吸盤201上面の最外周面205とが大きく開いた状態で図示しているが、実際のスタンド装置10では見た目上、ここまでスタンドカバー301周縁の下縁308と吸盤201上面の最外周面205とが大きく開いたものではない。
【0031】
次の操作手順は、図8、図10で示すように、連結用柱302を押し下げた状態で、レバー406を矢印Xで示す方向に押し下げてカム405を回動させ、カム405の最も突出した頂部407をスタンドカバー301の上面309を通過させる。その結果、図9、図11で示すように、カム405の回動中心の支軸403が長穴状貫通孔204内を上方に変位して上端に当たって吸盤用支持軸202を上方に大きく変位させる。従って、吸盤201の中央部分が被装着面から離れる方向に強制的に変位される。そして、図10で示すように、ロック機構404はレバー406を最大に回動させ、平坦周辺部408を上面309に当接させた位置においてロックされる。
【0032】
このとき、支軸403は大きく切り欠かれた切り欠き部402を通して連結用柱302の側面に突出し、吸引ロック機構404を構成するカム405によって軸支されているので、支軸403の上下の動作がカム405の回動に応じて長穴状貫通孔204内において連結用柱302の上下する位置に制限されることなく独立に行われる。
【0033】
このような操作手順を経過した状態では、吸盤201の中央部分と設置箇所の被吸着面との間が真空状態とされ、吸盤201の被吸着面に対する密着度が高められる。そして、この状態は吸盤201の周縁がスタンドカバー301によって被吸着面に強く押し付けられているので、真空状態が永久的に維持される。その結果、スタンド装置10は所望の設置箇所に固定して設置され携帯型ナビゲーション50を装着することができる。
【0034】
スタンド装置10を設置箇所から離脱させる場合は、レバー406を矢印Xと反対方向に回動させ、カム405の頂部407が上面309を通過して元の位置に戻るように操作する。その結果、ロック状態が解除されるので、吸盤用支持軸202は上方への変位状態が解除される。そして、吸盤201の中央部分は吸引されている状態から解除される。ロック解除と同時に、連結用柱302は弾性体401の弾発力によって上昇する。そして、スタンドカバーも上昇して下縁308は吸盤201の最外周面205から離れる。その後は、突出片203を持って吸盤201を被吸着面から引き剥がすことにより、スタンド装置10を設置箇所から取外すことができる。
【0035】
図示されていないが設置箇所の被吸着面が凸状に湾曲いている場合でも、図12で示すように、最初の操作手順による連結用柱302の頂面を矢印Yで示す方向に押してスタンドカバー301を設置面方向に変位させると、この押し込み操作により発生する弾性体401の弾発力が吸盤用支持軸202に伝達される。同時に、スタンドカバー301の下縁308が吸盤201上面の最外周面205に当接する。
【0036】
従って、吸盤201は凸状に湾曲している被吸着面に密着してその部分の空気を排除すると共に、吸盤201の周縁の下面が設置面に強く密着される。
【0037】
次は、連結用柱302を押し込んだ状態で、レバー406を押し下げてカム405を回動させる操作を行う。その結果、カム405の回動中心の支軸403が長穴状貫通孔204内を上方に変位し上端に当たって吸盤用支持軸202を上方に変位させる。従って、吸盤201の中央部分が被装着面から離れる方向に強制的に変位され吸引状態となる。そして、吸引ロック機構404はレバー406を最大に回動させることによりロック状態となる。
【0038】
このような操作部40による操作手順を経過した状態では、図11で示すように、吸盤201の中央部分と被装着面との間が真空状態とされ、吸盤201の被装着面に対する密着度が高められる。そして、この状態は吸盤201の周縁がスタンドカバー301によって装着面に強く押し付けられているので、真空状態が永久的に維持される。その結果、スタンド装置10は凸状に湾曲する設置箇所に設置される。
【0039】
次に、図13、図14に基づいて、支軸403が長穴状貫通孔204に遊嵌していることにより吸盤201の被吸着面への押し付け力が増大することを説明する。
【0040】
図13は、本発明の一実施例における長穴状貫通孔204に代えて丸孔とした場合の比較例の説明図であり、図13(a)は丸孔である場合の連結用柱302の頂面を押し込む前の状態を示し、図13(b)は押し込み後の状態を示している。
【0041】
図13(a)で示す押し込む前の状態から図13(b)で示すように連結用柱302を例えば4mmだけ押し込むと、吸盤用支持軸202は弾性体401が圧縮されることにより発生する弾発力によって下降する。ここで、説明の便宜上、上記4mmの変位量は、連結用柱302の押し込みによって一体的に降下するスタンドカバー301の下縁308と最外周面205との間の間隙をなくすことによって発生するものとし、吸盤201の底面に生じた凹んだ空隙部分が平面になるように変形したことによる影響は少ないものとして省略する。
【0042】
図13(b)で示す押し込んだ状態においては、吸盤用支持軸202が押圧されることによって吸盤201の中央部分に発生する最大荷重P1は下式(1)のように表わされる。
【0043】
P1=P0+4k ・・・(1)
ここで、P0は吸引量がゼロのときの弾性体401から発生する荷重である。kは弾性体401を構成するコイルバネのバネ定数である。
【0044】
一方、図14で示す本発明の一実施例の構成によれば、支軸403は長穴状貫通孔204を吸盤用支持軸202の軸に沿って距離αだけ移動可能になっている。図14(a)は押し込む前の状態を示し、図14(b)は押し込み途中の状態を示し、図14(c)は押し込み完了後の状態を示している。
【0045】
図14(a)はスタンド装置10が図4の状態にあるときであり、丸孔における図13(a)の状態に対応する。このときは、支軸403は長穴状貫通孔204の上端に当接して位置している。この状態から押し込み操作を開始すると、図14(b)の状態を経由して図14(c)の状態に至る。
【0046】
図14(b)は、丸孔における図13(b)の状態に対応する。このとき、支軸403はまだ長穴状貫通孔204の上端に位置している。そのため、更に連結用柱302を押し込むことが可能である。更に押し込み動作が進むと、支軸403は距離αだけ長穴状貫通孔204内を移動する。
【0047】
その結果、図14(c)で示すように、支軸403は長穴状貫通孔204の下端に当接して停止する。そのため、弾性体401であるコイルバネは図14(b)の状態から更に圧縮され、より強く吸盤201の中央部分を押圧することになる。図14(c)で示す押し込み完了後の吸盤201の中央部分に対して発生する最大荷重P2は下式(2)のように表わされる。
【0048】
P2=P0+(4+α)k ・・・(2)
また、本発明の一実施例における吸引ロック機構404は支軸403が長穴状貫通孔204に遊嵌した構成としているが、この吸引ロック機構に着目してその動作を説明する。
【0049】
スタンドカバー301は押し込みの操作によって連結用柱302と共に降下するので、カム405に当接する上面309も同様に降下する。図13の丸孔の場合は、上面309が降下したとき、カム405はその支軸403が実質的に降下しない吸盤用支持軸202と一体になっているので変位しない。そのため、上面309の方だけが降下してカム405から離れてしまう。
【0050】
その結果、カム405は回動自在になりレバー406がその自重によって図8などで示す矢印Xで示す方向に傾いてしまう。そのため、次の吸引のための操作においては、レバー406は既に回動が進んだ途中から回動されるので吸引量が少なくなってしまう。
【0051】
これに対し、図14で示す長穴状貫通孔204を用いた本発明の一実施例の構成によれば、支軸403は長穴状貫通孔204内を下降可能になっているので、上面309が降下してもこれに追従して降下する。すなわち、図14(c)で示すように、連結用柱302が大きく押し下げられて上面309を大きく降下させても支軸403は長穴状貫通孔204を降下するので上面309がカム405から離れない。
【0052】
その結果、レバー406はカム405が初期の位置に止められているので不用に回動しない。そして、吸引ロックの際にはレバー406が初期の位置から操作して吸盤用支持軸202を変位して吸盤201を十分に吸引することができる。すなわち、吸引ロック機構404は安定した動作でもって確実な吸引動作を行いロックすることができる。
【0053】
従って、上述した本発明の一実施例のスタンド装置10によれば、吸盤201は、従来技術と異なり連結用柱302を押し下げることによって積極的に押圧されるので、設置箇所の被吸着面に強く密着して空気を確実に排除する。そのため、次の吸引操作により得られる真空状態が確実になり、吸盤201が被吸着面に強固に吸着される。
【0054】
また、連結用柱302による矢印Yで示す方向への吸盤201の押し付けは、連結柱302の押し下げの変位量が長穴状貫通孔204によって距離αだけ増加する。そのため、コイルバネ401は丸穴の場合より距離α分だけ圧縮され、吸盤201に与える被吸着面への圧縮力が増大する。
【0055】
この圧縮力の増大によって、吸盤201の被吸着面に対する密着力が増大する。一方、スタンドカバー301の下縁308の最外周面205に対する押圧力が増大する。そのため、吸盤201の外周部分の被吸着面に対する密着度が増大する。このような吸盤201の被吸着面に対する密着度の増大は、被吸着面との間の空隙を確実になくする。そして、次に操作部40を操作して吸盤用支持軸202を上方に変位させると、密着度の増大によって吸着面と被吸着面との間に真空状態が確実に発生させることができる。
【0056】
一方、設置箇所の被吸着面が凸状に湾曲いている場合でも、吸盤201が被吸着面に沿うように緩やかに凹状に変位するので、両者が密接に接して高い密着状態が維持され確実に真空状態を発生させることができる。
【0057】
また、スタンド装置10を長年使用することにより吸盤201の中央部分が凹んでしまった場合でも、この中央部分は積極的に押圧され大きく押し込まれるので、最終的には被吸着面との間に生じた間隙を吸収して被吸着面に密着させることができる。そのため、空気の排除は確実にできる。
【0058】
また、吸引ロック機構404は、カム405が常にスタンドカバー301の上面309に当っているのでレバー406を初期の位置から不用に回動させてしまうことがない。そのため、レバー406の回動操作による吸盤201の吸引動作は確実に行われる。
【0059】
なお、上記実施例においては、装着体としては携帯型ナビゲーション装置50としたが、本発明はこれに限定されることなく携帯通信機器や携帯音楽再生装置、その他の各種電子機器などにも適用できる。
【0060】
また、上記実施例においては、コイルスプリングからなる弾性体401を用いたが、本発明はこれに限定されることなく他の各種弾性部材を適用してもよい。
【0061】
また、上記実施例においては、設置箇所は車両内としたが、本発明はこれに限定されることなくテーブルなどに設置する場合にも適当できる。
【符号の説明】
【0062】
10・・・・スタンド装置
20・・・・吸着部
30・・・・スタンド
40・・・・操作部
50・・・・携帯型ナビゲーション装置
201・・・吸盤
202・・・吸盤用支持軸
203・・・突出片
204・・・長穴状貫通孔
205・・・最外周面
301・・・スタンドカバー
302・・・連結用柱
303・・・凹部
304・・・取付け部
305・・・連結アーム
306・・・被装着部
307・・・固定レバー
308・・・下縁
309・・・上面
401・・・弾性体
402・・・切り欠き部
403・・・支軸
404・・・吸引ロック機構
405・・・カム
406・・・レバー
407・・・頂部
408・・・平坦周辺部
409・・・操作部カバー
501・・・筐体
502・・・表示操作面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置箇所に吸着される吸着部と、該吸着部と一体に連結されたスタンドと、該吸着部の設置箇所への吸着状態を着脱自在に制御する操作部とからなる、装着体を装着するスタンド装置であって、
前記吸着部は、弾性材で形成された吸着面を有する吸盤と、該吸盤の上面中央に垂立された支持軸と、該支持軸の中心軸と直行する方向に貫通した貫通孔とからなり、
前記スタンドは、前記吸着部を収納し外周の下縁を前記吸盤の最外周面に対抗させて形成したスタンドカバーと、該スタンドカバーの中央頂部に設けられた連結用柱と、該連結用柱内に形成された前記支持軸を遊嵌する凹部とからなり、
前記操作部は、前記支持軸の頂面と前記凹部の底部との間に介挿された弾性体と、前記連結用柱の前記貫通孔に対応する側壁に該貫通孔よりも大きく切り欠かれて形成された切り欠き部と、前記貫通孔に嵌通しその両端が前記切り欠き部を介して前記連結用柱の側面上に突出して設けられた支軸と、該支軸に回動自在に軸支され該支軸を上下方向に移動させて上端でロックするカムを有する吸引ロック機構と、からなり、
前記貫通孔は、前記支持軸の中心軸方向を長手方向とする長穴状に形成され、前記支軸が該長手方向に移動可能なように該貫通孔に遊嵌されていることを特徴とするスタンド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−47445(P2011−47445A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195195(P2009−195195)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】