説明

スタンド装置

【課題】 マルチディスプレイ装置のメンテナンス性を向上させることができるスタンド装置を提供する。
【解決手段】 スタンド装置1は、支柱11aと、画像表示装置3を取付可能に構成されるとともに、支柱11aの軸線方向に沿って昇降移動可能に、支柱11aに装着される複数の保持部材12であって、軸線方向のうち少なくとも降下する方向への移動が制限された状態で、支柱11aに支持される基準保持部材12aと、支柱11aの軸線方向に沿って昇降移動自在に、支柱11aに支持される可動用保持部材12bとを含む複数の保持部材12と、1または複数の可動用保持部材12bを、支柱11aの軸線方向に沿って昇降移動させる昇降手段13とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチディスプレイ装置を、公共の場所に設置するために用いられるスタンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフォメーションディスプレイおよび業務用ディスプレイとして、画像を表示可能な表示パネルを備える画像表示装置を、複数台縦横に平面的に並べて配置することによって、全体として1つの大きな画像を表示可能なマルチディスプレイ装置が用いられるようになっている。
【0003】
これに応じて、マルチディスプレイ装置を設置するために用いられる装置についても種々提案されている。たとえば特許文献1には、マルチディスプレイ装置を壁面に設置するための装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−202031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチディスプレイ装置は、複数の画像表示装置を殆ど隙間なく平面的に並べて配置することによって構成され、壁面などの設置対象物に設置する場合、各画像表示装置は、特許文献1に示されるように、その背面に連結された逆J字状の掛止部を、設置対象物に予め固定された被掛止部に掛合することによって、被掛止部に取付けられている。
【0006】
ところで、このような状態で画像表示装置が取付けられている場合、画像表示装置を被掛止部から取外すためには、画像表示装置に連結されている掛止部を、被掛止部から離脱させるために、画像表示装置を被掛止部に対して上方に変位させる必要が生ずる。
【0007】
しかしながら、マルチディスプレイ装置では、前記のように画像表示装置が隙間なく並べられているので、メンテナンスを行うためにたとえば最下段に配置される画像表示装置を取外そうとしても、その上段に配置される画像表示装置によって、上方への変位が阻止され、取外し対象の画像表示装置だけを取外すことができない。
【0008】
このようにマルチディスプレイ装置のメンテナンスを実行する際、取外し対象の画像表示装置を取外すために、それ以外の画像表示装置を取外さなければならない場合があり、そのような場合には、労力および時間を余分に要してしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、マルチディスプレイ装置のメンテナンス性を向上させることができるスタンド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の画像表示装置を平面的に並べて配置することによって構成されるマルチディスプレイ装置を設置するためのスタンド装置であって、
支柱と、
画像表示装置を取付可能に構成されるとともに、前記支柱の軸線方向に沿って昇降移動可能に、該支柱に装着される複数の保持部材であって、
前記軸線方向のうち少なくとも降下する方向への移動が阻止された状態で、前記支柱に支持される基準保持部材と、
前記支柱の軸線方向に沿って昇降移動自在に、前記支柱に支持される可動用保持部材と、を含む複数の保持部材と、
前記可動用保持部材を、前記支柱の軸線方向に沿って昇降移動させる昇降手段とを含むことを特徴とするスタンド装置である。
【0011】
また本発明は、前記保持部材は、前記支柱に取り付けられる可動部材と、画像表示装置に取付可能に構成されるとともに、前記可動部材に掛止可能な掛止部材とを含み、
前記掛止部材は、前記支柱に取り付けられた状態の可動部材に対し、支柱の軸線方向への変位を伴って掛合されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記複数の保持部材は、基準保持部材と該基準保持部材より下方に配置される複数の可動用保持部材とを含み、
前記支柱には、可動用保持部材ごとに、該可動用保持部材の降下する方向への移動を制限する移動制限部材が設けられ、
各移動制限部材は、下段に配置される可動用保持部材ほど、降下する方向への移動可能な距離が長くなるように、前記支柱に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記複数の保持部材は、基準保持部材と該基準保持部材より上方に配置される複数の可動用保持部材とを含み、
前記昇降手段は、最上段に配置される保持部材を除く残余の保持部材に個別に設置されていることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記昇降手段は、油圧ジャッキ、スクリュージャッキ、空気圧シリンダ、油圧シリンダ、および、ウインチのうちのいずれか1つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マルチディスプレイ装置から画像表示装置を取外してメンテナンスを実行する際、取外し対象以外の画像表示装置を取外す必要がなく、取外し対象の画像表示装置だけを取外すことができる。したがって、取外し対象以外の画像表示装置を取外すのに要する労力および時間が削減され、メンテナンス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るスタンド装置1が、マルチディスプレイ装置2を支持している状態を正面側から見た斜視図である。
【図2】スタンド装置1が、マルチディスプレイ装置2を支持している状態を背面側から見た斜視図である。
【図3】画像表示装置3が取り付けられた状態の保持部材12を背面側から見た斜視図である。
【図4】保持部材12を示す分解斜視図である。
【図5】最上段に配置される保持部材12を背面側から見た拡大斜視図である。
【図6】一対の支柱11aに設けられる昇降手段13を拡大して示す斜視図である。
【図7】図6に示すマルチディスプレイ装置2の構築状態から可動板64を下降させた状態を示す斜視図である。
【図8】マルチディスプレイ装置2における中段に配置される画像表示装置3が取り外された状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るスタンド装置1Aが、マルチディスプレイ装置2を支持している状態を背面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るスタンド装置1が、マルチディスプレイ装置2を支持している状態を正面側から見た斜視図である。図2は、スタンド装置1が、マルチディスプレイ装置2を支持している状態を背面側から見た斜視図である。
【0018】
本実施形態に係るスタンド装置1は、インフォメーションディスプレイおよび業務用ディスプレイなどとして用いられるマルチディスプレイ装置2を、公共の場所に設置するために用いられる装置である。
【0019】
設置対象のマルチディスプレイ装置2は、同一の画面サイズを有する複数の画像表示装置3を、画像表示装置3間に隙間が形成されないように、平面的に並べて配置することによって構築される。本実施形態では、図1および図2に示すように、9台の画像表示装置3を、縦横3×3のマトリクス状に隙間なく並ぶように配置することによって構築される。
【0020】
また、各画像表示装置3は、その短辺方向B1がマルチディスプレイ装置2における縦方向A1に一致するような姿勢で並べられている。以下、各画像表示装置3において、短辺方向B1の両端部のうち、マルチディスプレイ装置2の上端側に配置される端部を「上端部」と称して参照符7aを付し、マルチディスプレイ装置2の下端側に配置される端部を「下端部」と称して参照符7bを付す。
【0021】
各画像表示装置3は、画像を表示可能な矩形状の表示パネル4と、画像表示装置3の前面3a側に設けられ、表示パネル4における画像の表示領域を外囲する矩形枠状のベゼル5と、画像表示装置3の背面3b側に設けられ、図示しない制御装置などを収容する筐体6とを含んで構成される。画像表示装置3は、たとえば液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、および有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ装置などのフラットパネルディスプレイ装置によって実現される。
【0022】
スタンド装置1は、図1および図2に示すように、支柱11aによって構成される支持部材11と、画像表示装置3を取付可能に構成されるとともに、支柱11aの軸線方向に沿って昇降移動可能に、支柱11aに装着される複数の保持部材12と、複数の保持部材12における後述する可動用保持部材12bを、支柱11aの軸線方向に沿って昇降移動させる昇降手段13とを含んで構成される。
【0023】
支持部材11は、設置対象のマルチディスプレイ装置2において、縦方向A1に並ぶ複数の画像表示装置3を支持する部材であり、たとえば鉛直方向に沿って延設される。支持部材11は、本実施形態では、平行に延設される一対の支柱11aによって構成され、この一対の支柱11aによって、設置対象のマルチディスプレイ装置2において縦方向A1に並ぶ3台の画像表示装置3が支持される。したがって、本実施形態では、6本の支柱11aが設けられている。
【0024】
各支柱11aは、設置対象のマルチディスプレイ装置2の縦方向A1の寸法よりも長尺となるように形成され、また、縦方向A1に並ぶ複数の画像表示装置3を支持するのに十分な強度および剛性を有するように、材料、形状および寸法が選択されて形成される。本実施形態では、各支柱11aは、円筒状の鋼管によって実現されているが、他の実施形態では、円柱状あるいは角柱状などの鋼材によって実現されてもよい。
【0025】
図3は、画像表示装置3が取り付けられた状態の保持部材12を背面側から見た斜視図であり、図4は、保持部材12を示す分解斜視図である。保持部材12は、その外形寸法が画像表示装置3の外形寸法よりも小さくなるように形成され、画像表示装置3の背面3bの略中央に取り付けられる。
【0026】
保持部材12は、図4に示すように、画像表示装置3よりも一回り小さな大略的に四角筒形状の可動部材21と、画像表示装置3の背面3bに固定される一対の掛止部材22とによって構成される。
【0027】
掛止部材22は、画像表示装置3の短辺方向B1の寸法よりも短尺に形成された棒状部材であり、その長手方向の両端部に、第1および第2掛止部41,42がそれぞれ設けられている。第1および第2掛止部41,42はいずれも、掛止部材22の長手方向に垂直な一方向に突出するとともに、先端部41a,42aが前記長手方向の一方側に向かって直角に屈曲するように、大略的にL字状に形成されている。掛止部材22において、第1掛止部41は、その先端部41aが第2掛止部42に向かって屈曲するように配置されている。
【0028】
同一形状に形成された一対の掛止部材22は、その長手方向が画像表示装置3の短辺方向B1に一致し、かつ、第1掛止部41が画像表示装置3の上端部7a側に位置するとともに、第2掛止部42が画像表示装置3の下端部7b側に位置するような姿勢で、画像表示装置3の背面3bにおける長辺方向B2の両端部近傍に、ボルトなどの締結具を用いてそれぞれ締結固定される。
【0029】
一方、可動部材21は、4つの周壁部31〜34から成り、詳細には、正面視における画像表示装置3の外形寸法よりも小さな外形寸法を有し、画像表示装置3が取付けられた状態において、画像表示装置3の背面3bに対向する矩形板状の前壁部31と、前壁部31における平行な一対の縁辺にそれぞれ連なり、前壁部31の厚み方向一方側の表面から垂直に立設する矩形板状の上壁部32および下壁部33と、前壁部31に対向し、かつ平行に設けられ、上壁部32および下壁部33に連なる後壁部34とから成る。
【0030】
以下、可動部材21において、上壁部32および下壁部33に垂直な方向を「高さ方向」と称して参照符C1を付し、前壁部31および後壁部34に平行で、高さ方向C1に垂直な方向を「幅方向」と称して参照符C2を付す。
【0031】
上壁部32には、画像表示装置3の背面3bに固定される一対の掛止部材22の長辺方向B2の間隔に対応するように、幅方向C2に間隔を空けて一対の第1被掛止部35が設けられている。各第1被掛止部35には、上壁部32の厚み方向に貫通し、掛止部材22の第1掛止部41の先端部41aを挿通可能な矩形状の掛止孔35aが形成されている。
【0032】
また、前壁部31には、一対の第1被掛止部35が設けられている位置に対応するように、幅方向C2に間隔を空けて一対の第2被掛止部36が設けられている。各第2被掛止部36には、前壁部31の厚み方向に貫通し、掛止部材22の第2掛止部42を挿入可能な、高さ方向C1に延びるスリット36aが形成されている。
【0033】
このような構成により、画像表示装置3に取り付けられた一対の掛止部材22の各第2掛止部42を、可動部材21の前壁部31に形成された一対のスリット36aにそれぞれ挿入し、さらに一対の掛止部材22を、第2掛止部42の先端部42aが下壁部33に近接する方向にスリット36aに沿って変位させることで、第1掛止部41の先端部41aが第1被掛止部35の掛止孔35aに挿通されて、第1掛止部41と第1被掛止部35とが掛合されると同時に、スリット36aの下方へ挿し込まれた第2掛止部42の先端部42aと第2被掛止部36とが掛合される。つまり、掛止部材22は、可動部材21に対し、高さ方向C1への相対的な変位を伴って掛合される。
【0034】
第1掛止部41および第1被掛止部35、ならびに、第2掛止部42および第2被掛止部36は、前記のように掛合したときに、可動部材21と掛止部材22とが、がたつきなく連結されるように形成されている。このように、可動部材21と掛止部材22とを連結することによって、画像表示装置3は、保持部材12に保持される。
【0035】
このとき、画像表示装置3は、その短辺方向B1と可動部材21の高さ方向C1とが一致し、その長辺方向B2と可動部材21の幅方向C2とが一致するような姿勢で、保持部材12に保持される。
【0036】
また、可動部材21には、その上壁部32に、厚み方向に貫通し、支柱11aの外径よりも僅かに大きな内径を有する円形の2つの貫通孔37が、幅方向C2に間隔を空けて形成され、下壁部33においても同様に、厚み方向に貫通し、支柱11aの外径よりも僅かに大きな内径を有する円形の2つの貫通孔38が、幅方向C2に間隔を空けて、上壁部32に形成される各貫通孔37とそれぞれ同軸となるように形成されている。
【0037】
このような構成により、可動部材21は、幅方向C2の一方側に形成される一対の貫通孔37,38と、幅方向C2の他方側に形成される一対の貫通孔37,38とに、2本の支柱11aをそれぞれ挿通することによって、支柱11aの軸線方向に沿って昇降移動自在に装着される。
【0038】
さらに、可動部材21には、その上壁部32に、厚み方向に貫通する円形の2つの挿通孔39が、幅方向C2に間隔を空けて形成され、下壁部33においても同様に、厚み方向に貫通する円形の2つの挿通孔40が、幅方向C2に間隔を空けて、上壁部32に形成される各挿通孔39とそれぞれ同軸となるように形成されている。
【0039】
上壁部32に形成される挿通孔39は、後述する昇降手段13におけるロッド65およびロッド65に締結固定されるダブルナット66のいずれも挿通可能な内径を有するように形成される。また、下壁部33に形成される各挿通孔40は、昇降手段13におけるロッド65を挿通可能であるとともに、ロッド65に締結固定されるダブルナット66を挿通させることができないような内径を有するように形成される。
【0040】
保持部材12は、マルチディスプレイ装置2を構成する画像表示装置3の数だけ設けられ、本実施形態では、9つの保持部材12が設けられている。また、図2に示すように、本実施形態では、一対の支柱11aに対し、3つの保持部材12が、支柱11aに沿って並ぶように装着されている。
【0041】
図5は、最上段に配置される保持部材12を背面側から見た拡大斜視図であり、画像表示装置3が装着された状態を示している。一対の支柱11aに装着される3つの保持部材12のうち、本実施形態では、最上段に配置される保持部材12が、支柱11aに設けられる変位阻止手段51によって、下方への移動が阻止された状態で支持される。
【0042】
変位阻止手段51は、図5に示すように、支柱11aの外径よりも僅かに大きな内径を有するとともに、可動部材21の下壁部33に形成される貫通孔38の内径よりも大きな外径を有する円筒状のスリーブ52と、所定の高さ位置で支柱11aの一半径方向に貫通して設けられる係止ピン53とを含み、スリーブ52を係止ピン53によって下方への変位を阻止した状態で支持することによって構成される。最上段に配置される保持部材12は、この変位阻止手段51よりも上方に配置されることにより、スリーブ52と当接した位置よりも下方への変位が阻止される。
【0043】
以下、変位阻止手段51によって変位が阻止されている保持部材12を、「基準保持部材」と称し、参照符12aを付して示す。一方、最上段に配置される基準保持部材12aを除く残余の保持部材12を、「可動用保持部材」と称し、参照符12bを付して示す。
【0044】
図6は、一対の支柱11aに設けられる昇降手段13を拡大して示す斜視図であり、マルチディスプレイ装置2が構築された状態、すなわち縦方向A1に並ぶ各画像表示装置3が、互いに隙間なく隣接している状態を示している。
【0045】
昇降手段13は、可動軸61aをそれぞれ有する一対の油圧ジャッキ61と、油圧ジャッキ61を駆動するためのハンドル62と、一対の油圧ジャッキ61を支持する支持板63と、油圧ジャッキ61の可動軸61aの先端に固定される可動板64と、可動板64に固定され、支柱11aに沿って延びる一対のロッド65と、各ロッド65において、所定の位置に締結固定される複数のダブルナット66とを含んで構成される。
【0046】
一対の油圧ジャッキ61は、最下段に配置される可動用保持部材12bよりも下方に設けられた支持板63上に、可動軸61aの先端が上方に臨むように設置されている。支持板63は、支柱11aの軸線方向に垂直な仮想一平面に平行となる姿勢で、一対の支柱11aに固定して設けられている。
【0047】
一対の油圧ジャッキ61は、その近傍に設けられる単一のハンドル62に連結されており、このハンドル62が手動で回転駆動されると、その回転を可動軸61aの直線運動に変換するように構成されている。つまり、ハンドル62を手動で一方側に回転駆動すると、各油圧ジャッキ61の可動軸61aが上方に向かって連動して移動し、また、ハンドル62を手動で他方側に回転駆動すると、各油圧ジャッキ61の可動軸61aが下方に向かって連動して移動するように構成されている。一対の油圧ジャッキ61は、各可動軸61aの先端が等しい高さ位置を維持した状態で移動するように、予め調整されている。
【0048】
可動板64は、支柱11aの軸線方向に垂直な仮想一平面に平行となる姿勢で、支柱11aに沿って昇降移動可能に、支柱11aに装着され、さらに、一対の油圧ジャッキ61の各可動軸61aの先端が固定されている。また、可動板64には、一対のロッド65が、可動板64から上方に延びるように締結固定されている。各ロッド65は、各可動用保持部材12bの挿通孔39,40をそれぞれ挿通し、さらに基準保持部材12aの下壁部33の挿通孔40を挿通し、支柱11aに平行に設けられている。
【0049】
ダブルナット66は、各ロッド65において、可動用保持部材12bの数だけ設けられ、本実施形態では、1本のロッド65に対し、2つのダブルナット66が設けられている。各ダブルナット66は、図6に示すようなマルチディスプレイ装置2の構築状態において、各可動用保持部材12bの下壁部33に下方から当接するように位置決めされて、ロッド65に締結固定される。つまり、マルチディスプレイ装置2の構築状態では、各可動用保持部材12bは、ロッド65に締結固定されたダブルナット66に係止されて、下方への移動が阻止されている。
【0050】
また、図6に示すように、各支柱11aには、前述の変位阻止手段51と同様に構成される、すなわちスリーブ52と係止ピン53とによって構成される移動制限手段71が、可動用保持部材12bごとに設けられている。移動制限手段71は、可動用保持部材12bの上壁部32と下壁部33との間に設置され、詳細には、マルチディスプレイ装置2の構築状態において、可動用保持部材12bの上壁部32とスリーブ52の上端面とが所定の距離だけ離間するように設置される。
【0051】
より詳細には、上下に隣接する可動用保持部材12bにおいて、下段に配置される可動用保持部材12bの上壁部32とスリーブ52の上端面との距離D2が、上段に配置される可動用保持部材12bの上壁部32とスリーブ52の上端面との距離D1よりも大きくなるように設置される。
【0052】
図7は、図6に示すマルチディスプレイ装置2の構築状態から可動板64を下降させた状態を示す斜視図である。図7に示すように、ハンドル62を操作することによって可動板64を下降させると、それに応じて、ロッド65およびロッド65に締結固定されているダブルナット66も下降し、したがって、ダブルナット66に係止されている可動用保持部材12bも連動して下降する。
【0053】
ここで、マルチディスプレイ装置2の構築状態において、中段に配置される可動用保持部材12bの上壁部32とスリーブ52の上端面との距離がD1であり、最下段に配置される可動用保持部材12bの上壁部32とスリーブ52の上端面との距離がD2(ただし、D1<D2)であるとすると、可動板64の下降距離dがD1未満の状態では、2つの可動用保持部材12bは、可動板64に連動して下降し、これにより、最上段の画像表示装置3と、中段の画像表示装置3との間に距離dの隙間が形成される。
【0054】
可動板64をさらに下降させて下降距離dがD1に等しくなると、中段に配置される可動用保持部材12bの上壁部32と移動制限手段71のスリーブ52の上端面とが当接し、以降、中段に配置される可動用保持部材12bの下方への移動が制限される。このとき、最上段の画像表示装置3と、中段の画像表示装置3との間に間隔D1の隙間が形成される。
【0055】
可動板64をさらに下降させて下降距離dがD1より大きくD2未満の状態になると、最下段の可動用保持部材12bのみが、可動板64に連動して下降し、これにより、中段の画像表示装置3と、最下段の画像表示装置3との間に間隔d−D1の隙間が形成される。
【0056】
可動板64をさらに下降させて下降距離dがD2に等しくなると、最下段に配置される可動用保持部材12bの上壁部32と移動制限手段71のスリーブ52の上端面とが当接し、最下段に配置される可動用保持部材12bの下方への移動が制限される。このとき、中段の画像表示装置3と、最下段の画像表示装置3との間に間隔D2−D1の隙間が形成される。
【0057】
したがって、画像表示装置3に固定された掛止部材22を可動部材21から離脱させるために必要な上方への移動距離よりも大きくなるように、可動用保持部材12bの上壁部32とスリーブ52の上端面との距離D1,D2を選定することにより、中段あるいは最下段に配置される画像表示装置3だけを取外すことができる。
【0058】
可動用保持部材12bの上壁部32とスリーブ52の上端面との距離D1,D2は、たとえば、最上段の画像表示装置3と中段の画像表示装置3との間に形成される隙間の間隔D1と、中段の画像表示装置3と最下段の画像表示装置3との間に形成される隙間の間隔D2−D1とが等しくなるように選定される。
【0059】
図8は、マルチディスプレイ装置2における中段に配置される画像表示装置3が取り外された状態を示す斜視図である。上記のように、本実施形態によれば、マルチディスプレイ装置2から画像表示装置3を取外してメンテナンスを実行する際、取外し対象の画像表示装置3が、中段あるいは最下段に配置されている場合であっても、取外し対象の画像表示装置3とその上段に配置される画像表示装置3との間に隙間を形成することができるので、取外し対象の画像表示装置3だけを取外すことができる。したがって、取外し対象以外の画像表示装置3を取外すのに要していた労力および時間を削減することができ、マルチディスプレイ装置2のメンテナンス性を向上することができる。
【0060】
上記の実施形態では、昇降手段13が手動で操作されるように構成されているが、手動に限定されることなく、電動で動作するように構成してもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、油圧ジャッキ61および可動板64を、可動用保持部材12bよりも下方に配置することによって構成されているが、これに限らず、油圧ジャッキ61および可動板64を、基準保持部材12aの上方に配置することによって構成してもよい。この場合、ロッド65を上方へ延ばして可動板64に固定することによって実現することができる。
【0062】
また、上記の実施形態では、可動板64を移動させるための装置として油圧ジャッキ61が用いられているが、他の実施形態では、油圧ジャッキ61に代えて、たとえばスクリュージャッキ、油圧シリンダ、空気圧シリンダおよびウインチなどを用いてもよい。ウインチを用いる場合には、ロッド65に代えて、巻取り可能なワイヤロープを用いることによって実現することができる。また、ウインチを可動用保持部材12bよりも下方に設置する場合には、基準保持部材12aよりも上方に、滑車を取り付けることによって実現することができる。
【0063】
また、上記の実施形態では、9台の画像表示装置3を縦横3×3のマトリクス状に並べて構築されるマルチディスプレイ装置2を設置対象としているが、これに限らず、縦方向A1に並ぶ画像表示装置3の数が複数であるようなマルチディスプレイ装置であれば、本発明に係るスタンド装置1を用いることによりメンテナンス性を向上させることができる。
【0064】
図9は、本発明の他の実施形態に係るスタンド装置1Aが、マルチディスプレイ装置2を支持している状態を背面側から見た斜視図である。本実施形態に係るスタンド装置1Aは、前述の実施形態に係るスタンド装置1と重複する構成を有するので、同一の構成については、同一の参照符を付して説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、前述の実施形態と異なり、一対の支柱11aに装着される3つの保持部材12のうち、最下段に配置される保持部材12が、支柱11aに設けられる変位阻止手段51によって、下方への移動が阻止された状態で支持されている。すなわち、最下段に基準保持部材12aが設けられ、その上方に可動用保持部材12bが設けられている。
【0066】
本実施形態では、最上段に配置される保持部材12を除く残余の保持部材12に、昇降手段13Aが個別に設けられている。各昇降手段13Aは、可動軸61aをそれぞれ有する一対の油圧ジャッキ61を含み、一対の油圧ジャッキ61は、保持部材12における可動部材21の上壁部32上に、可動軸61aの先端が上方に臨むように設置されている。したがって、一対の油圧ジャッキ61を、可動軸61aを上方へ移動させるように駆動することで、可動軸61aが上方に配置される1または複数の可動用保持部材12bを押し上げ、上方へ移動させることができる。
【0067】
このように、本実施形態によれば、マルチディスプレイ装置2から画像表示装置3を取外してメンテナンスを実行する際、取外し対象の画像表示装置3が、中段あるいは最下段に配置されている場合であっても、取外し対象の画像表示装置3が取り付けられている保持部材12の昇降手段13を作動させることにより、その上段に配置される画像表示装置3との間に隙間を形成することができる。これにより、取外し対象の画像表示装置3だけを取外すことができる。したがって、取外し対象以外の画像表示装置3を取外すのに要していた労力および時間を削減することができ、マルチディスプレイ装置2のメンテナンス性を向上することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 スタンド装置
2 マルチディスプレイ装置
3 画像表示装置
11a 支柱
12 保持部材
12a 基準保持部材
12b 可動用保持部材
13 昇降手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像表示装置を平面的に並べて配置することによって構成されるマルチディスプレイ装置を設置するためのスタンド装置であって、
支柱と、
画像表示装置を取付可能に構成されるとともに、前記支柱の軸線方向に沿って昇降移動可能に、該支柱に装着される複数の保持部材であって、
前記軸線方向のうち少なくとも降下する方向への移動が阻止された状態で、前記支柱に支持される基準保持部材と、
前記支柱の軸線方向に沿って昇降移動自在に、前記支柱に支持される可動用保持部材と、を含む複数の保持部材と、
前記可動用保持部材を、前記支柱の軸線方向に沿って昇降移動させる昇降手段とを含むことを特徴とするスタンド装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記支柱に取り付けられる可動部材と、画像表示装置に取付可能に構成されるとともに、前記可動部材に掛止可能な掛止部材とを含み、
前記掛止部材は、前記支柱に取り付けられた状態の可動部材に対し、支柱の軸線方向への変位を伴って掛合されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のスタンド装置。
【請求項3】
前記複数の保持部材は、基準保持部材と該基準保持部材より下方に配置される複数の可動用保持部材とを含み、
前記支柱には、可動用保持部材ごとに、該可動用保持部材の降下する方向への移動を制限する移動制限部材が設けられ、
各移動制限部材は、下段に配置される可動用保持部材ほど、降下する方向への移動可能な距離が長くなるように、前記支柱に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のスタンド装置。
【請求項4】
前記複数の保持部材は、基準保持部材と該基準保持部材より上方に配置される複数の可動用保持部材とを含み、
前記昇降手段は、最上段に配置される保持部材を除く残余の保持部材に個別に設置されていることを特徴とする請求項1または2記載のスタンド装置。
【請求項5】
前記昇降手段は、油圧ジャッキ、スクリュージャッキ、空気圧シリンダ、油圧シリンダ、および、ウインチのうちのいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1または2記載のスタンド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−189830(P2012−189830A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53638(P2011−53638)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】