スタンパ及びそれを用いる光学シートの製造方法
【課題】凹凸パターンを有する光学シートの製造工程において、生産性の良好な光学シートの製造方法を提供する。
【解決手段】電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂からなる被成型樹脂層を、特定のスタンパを用いて成形してなる凹凸成型層を有する光学用シートの製造方法であって、スタンパ4によって、被成型樹脂層5に凹凸転写型部41の凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、加圧転写成形された被成型樹脂層を硬化させて、凹凸転写型部41の凹凸転写面の形状が転写された凹凸成型層を有する光学シートが形成される第二工程と、光学用シートを、凹凸転写型部41から剥離する第三工程と、からなり、かつ、第三工程の光学用シートが凹凸転写型部41から剥離する際に、凹凸転写型部41の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離する。
【解決手段】電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂からなる被成型樹脂層を、特定のスタンパを用いて成形してなる凹凸成型層を有する光学用シートの製造方法であって、スタンパ4によって、被成型樹脂層5に凹凸転写型部41の凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、加圧転写成形された被成型樹脂層を硬化させて、凹凸転写型部41の凹凸転写面の形状が転写された凹凸成型層を有する光学シートが形成される第二工程と、光学用シートを、凹凸転写型部41から剥離する第三工程と、からなり、かつ、第三工程の光学用シートが凹凸転写型部41から剥離する際に、凹凸転写型部41の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンパ(または曲面状成形型ともいう)及びそれを用いる光学シートの製造方法に関し、詳しくは、凹凸成型層(A)を少なくとも有する光学シートの製造方法及びそれに用いるスタンパなどに関する。特に、スタンパを用いて、光学シートを空気の混入無く成形するとともに、成形型から剥離する方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
光学製品の部品として、フレネルレンズや回折格子、ホログラム、LEDエッジライト型照明ユニットの導光板など、表面に微細な凹凸を形成した光学部品が広く使用されている。これらの光学部品の凹凸表面の形成は、様々な方法で加工されており、例えば、フレネルレンズの場合には、従来から、加熱された金型により熱可塑性樹脂を押圧してフレネルレンズ面を形成する所謂「熱プレス法」、或いは溶融軟化された熱可塑性樹脂組成物を金型内に注入し固化させてフレネルレンズ面を形成する「キャスティング法」等が採用されており、本出願人も、半硬化の熱硬化性シリコーン樹脂を熱プレスする方法や、液状の熱硬化性シリコーン樹脂を樹脂型に充填して固化させる方法を提案している(特許文献1、2参照。)。
しかしながら、これらの製法の共通課題として、(1)型で被転写材料を押圧もしくは充填する際に気泡の混入を防止すること、(2)フレネルレンズは、剥離し難い凹凸形状であることが多く、成形後に成形型に密着して剥離し難いため、レンズ部を損傷することなくスムーズに剥離すること、が生産性向上のため重要となる。
しかし、従来の方法は、必ずしも生産性に優れたものとはいえなかった。また、押圧する製法においては、シート全体を面押しするので、比較的プレス圧が大きく、特に、ガラス基板一体型のフレネルレンズの場合には、ガラスが破損し易くなるなど、フレネルレンズの構造ごとに製法を変える必要があり、依然として生産性向上のために改善すべき余地が多々あるのが現状であった。
【0003】
そこで、上記課題(1)の気泡混入を改善する方法としては、ロール型による転写方法の応用技術として、円柱の側面の凸面形状を有するスタンパで、紫外線硬化性の材料表面を転回するように押圧しながら紫外線硬化させるとともに、硬化した部分は、前記凸面形状と転回の協働によって、順次剥離させる方法が提案されている(特許文献3参照。)。
この方法によれば、上記課題の(1)と(2)が同時に行われるので、生産性に優れた方法であるが、転写後に速やかに硬化させる必要があり、被転写材料が高価な紫外線硬化材料に限定されるものであり、安価な熱硬化性材料に対しては、適用できるものではなく、コスト面で課題があった。
【0004】
また、課題(2)の成形型からの成形品の剥離方法としては、例えば、上記特許文献3には、成形型上に付着したレンズシートの相対向する二箇所を同時に又は順に成形型上に持ち上げ、この上昇と並行し又はこの上昇の終了後に他の相対向する二箇所を同時に又は順に成形型上に持ち上げ、しかる後レンズシ−トの全体を成形型上に持ち上げることを特徴とするレンズシ−トの剥離方法が開示されている。同様の原理で、フレネルレンズを撓ませながら、中心部を残して周辺から中心部に向かって剥離して、最後にフレネルレンズの中心部を含めて一斉に剥離する手順を採用する剥離方法が提案されており(例えば、特許文献4、5参照。)、複雑なフレネルレンズ形状であっても、微細凹凸を損傷することなく剥離できる点で有効である。
【0005】
しかしながら、上記のような方法では、フレネルレンズシートを成形型から剥離する際に、レンズシートに撓みが生じるおそれがあり、撓みが大きいと、レンズシートにかかる負荷が過剰となり、場合によっては、レンズシートが塑性変形あるいは破壊(割れる)するに到ってしまうおそれがある。また、ガラス基板一体型フレネルレンズのように剛性が高く撓み難い製品には、適用できなかった。
このように、フレネルレンズを一例に述べたが、これらの技法は、他の光学部材の凹凸表面の形成にも応用でき、成型時の気泡混入防止や剥離の課題も、共通している。
そのため、凹凸パターンや光学部品の構造、素材によらず、生産性や品質に優れた光学シートの製造方法が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−212771公報
【特許文献2】特開2007−271857公報
【特許文献3】特開2002−172626号(特許第4515625号)公報
【特許文献4】特開2003−181855号公報
【特許文献5】特開2007−090545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、光学シートの製造工程において、凹凸パターン転写時における気泡の混入がなく、かつ成形型からの剥離に際し、光学シートの塑性変形あるいは破壊を招くことなく、安定した剥離を実現することを可能とし、さらに、光学シートの素材や構造に拠らないで広く適用でき、以って生産性の良好な光学シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、光学シートの凹凸パターン(例えば、フレネルレンズのノコギリ状(または凹凸状)の微細パターン)を転写形成させるための成形型について、従来の平板状成形型(スタンパ)でなく、押圧、除圧に応じて、撓み変形可能なスタンパを用いることにより、凹凸パターン転写時の気泡の混入を防止することができるとともに、成形型から剥離する際には、スタンパの復元力により、剥離性が良好であることを、見出し、結果として、優れた品質の光学シートが、素材や構造に拠らず高い生産性で得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、表面に凹凸を有する光学用シートの作製に用いられ、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるスタンパであって、該凹凸転写型部の凹凸転写面には、光学用シートの表面凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成され、凹凸転写面が円柱の側面様の凸状曲面を形成した状態であって、被転写面に接触して押圧される際には、該凸状曲面の頂部から被転写面に初期接触し、次いで、押圧により、該初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して凹凸転写面が該反転凹凸パターン形状と成り得る状態で接触でき、また、被転写面から除圧される際には、凹凸転写型部の自己復元力により、接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴とするスタンパが提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、表面に凹凸を有する光学用シートの作製に用いられ、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部と、該凹凸転写型部の撓み変形に連動して加圧力を伝達する押圧伝達部とを具備してなるスタンパであって、該凹凸転写型部の凹凸転写面には、光学用シートの表面凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成され、凹凸転写面が円柱の側面様の凸状曲面を形成した状態で、該凸状曲面の裏面部と該押圧伝達部とが連結され、被転写面に接触して押圧される際には、該凸状曲面の頂部から被転写面に初期接触し、次いで、押圧により、該押圧伝達部と連動しながら、該初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して凹凸転写面が該反転凹凸パターン形状と成り得る状態で接触でき、また、被転写面から除圧される際には、該押圧伝達部と連動しながら、接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴とするスタンパが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記押圧伝達部が軟質弾性体からなることを特徴とするスタンパが提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、電離放射線硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂からなる被成型樹脂層を、第1〜3のいずれかの発明に係るスタンパ(C)を用いて成形してなる凹凸成型層(A)を少なくとも有する光学用シートの製造方法であって、
光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンが形成された凹凸転写面を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるスタンパ(C)によって、被成型樹脂層に該凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、
加圧転写成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写面の形状が転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される第二工程と、
光学用シートを、スタンパ(C)から剥離する第三工程と、からなり、かつ、
第一工程の加圧転写成形する際には、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸転写面は、加圧転写完了の状態において、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンとなるものであって、押圧により、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触して、または、前記押圧伝達部と連動して、凹凸パターン形状となる状態まで、凹凸転写型部の初期接触部から端部側に順次変形しながら被成型樹脂層に接触して、押圧転写成形され、
また、第三工程の光学用シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、前記第一工程において、前記被成型樹脂層は、支持基板(B)に積層されて、スタンパ(C)で加圧転写成形され、及び前記第二工程において、硬化時の加圧状態におけるスタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)が形成されると共に、支持基板(B)と凹凸成型層(A)とを接着させて、支持基板(B)と凹凸成形層(A)との積層体を形成することを特徴とする光学シートの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、支持基板(B)の材質は、光学ガラスであることを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第4〜6のいずれかの発明において、第一工程の加圧転写成形する際に、スタンパ(C)の中央部から被成型樹脂層に接触して加圧転写成形されることを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第4〜7のいずれかの発明において、凹凸成型層(A)は、付加硬化型シリコーン樹脂からなることを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第9の発明によれば、第4〜8のいずれかの発明において、凹凸成型層(A)の凹凸パターン形状は、フレネルレンズパターンであることを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第9の発明に係る光学用シートの製造方法で作製されたフレネルレンズシートを用いてなることを特徴とする集光式太陽電池装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学シートの製造方法では、スタンパを用いることにより、「成形型による凹凸パターンの転写形成工程」では、中央部から加圧成形されて、空気または気泡が排除されることにより、微細な凹凸パターンの転写形成が良好に行えるという効果を奏し、また、「成形型からの剥離工程」では、剥離ムラによる不良を飛躍的に低減でき、効率的な剥離が行なえるため、結果として、優れた品質と量産性を確保した、生産性の高い光学シートの製造方法を提供できる。さらに、光学シートの素材や構造に拠らず対応できるため、フレネルレンズをはじめとして様々な光学シートの製造に広く適用でき、コスト削減にも貢献できる。
また、本発明の光学シートの製造方法で得られた光学シートは、凹凸成型層(A)と透明な支持基板(B)とを有した積層体の場合には、その凹凸成型層(A)は、光学シートの微細な凹凸パターン条が形成されているので、耐熱性、耐久性と、光学性能に優れるという作用効果を発揮する。
さらに、凹凸成型層(A)をフレネルレンズパターンとして、本発明から得られたフレネルレンズを用いることにより、耐久性を具え性能のよい、集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光学シートの製造方法の概要を説明する図である。
【図2】本発明の第1の構成形態からなるスタンパ(C)の構成例を説明する図である。
【図3】本発明の第2の構成形態からなるスタンパ(C)の構成例を説明する図である。
【図4】本発明の第2の構成形態からなるスタンパ(C)の別の構成例を説明する図である。
【図5】本発明の第2の構成形態からなるスタンパ(C)の転写時の挙動の概要を説明する図である。
【図6】本発明の第1の構成形態からなるスタンパ(C)の転写時の挙動の概要を説明する図である。
【図7】本発明の第1の構成形態からなるスタンパ(C)の別の転写方法の概要を説明する図である。
【図8】本発明の光学シートの製造方法の別の実施形態の概要を説明する図である。
【図9】本発明の光学シートの製造方法で得られるフレネルレンズシートの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施例1のスタンパ(C)の構成を説明する図である。
【図11】本発明の実施例6のスタンパ(C)の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の光学シートの製造方法で得られる光学シートは、電離放射線硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂からなる被成型樹脂層をスタンパ(C)で成形して形成してなる凹凸成型層(A)を少なくとも有する光学用シートであり、その製造方法は、
光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンが形成された凹凸転写面を有する凹凸転写型部が、円柱の側面のような凸状面に湾曲変形された状態で押圧伝達部に連結されたスタンパ(C)によって、被成型樹脂層に凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、
前記加圧成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される第二工程と、
前記光学用シートを、スタンパ(C)から剥離する第三工程と、からなり、かつ、
第一工程の加圧転写成形する際には、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸転写面は、加圧転写完了の状態において、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンとなるものであって、押圧により、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触して、または、前記押圧伝達部と連動して、凹凸パターン形状となる状態まで、凹凸転写型部の初期接触部から端部側に順次変形しながら被成型樹脂層に接触して、押圧転写成形され、
また、第三工程の光学用シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とするものである。
以下に、光学シートの構成成分とスタンパと、その製造方法、及び用途などについて詳細に説明する。
【0018】
1.光学シートの構成成分とスタンパ
(1)凹凸成型層(A)
本発明で用いる凹凸成型層(A)は、上記のように、プレスの加圧台に直接、もしくは剥離フィルム、または凹凸成形層(A)と一体化される支持基板(B)に、未硬化の液状または半硬化状の電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を塗布または積層してなる被成型樹脂層を、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である微細な凹凸パターンが形成されたスタンパ(C)で加圧転写成形し、転写成形された被成型樹脂層を硬化して、光学シートの微細な前記表面凹凸パターンを表面に形成されたものである。
【0019】
上記電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂としては、微細な凹凸パターンが形成されるものであれば、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂としては、耐候性、耐熱性が要求される用途においては、シリコーン樹脂が好ましく、熱硬化により、光学シートに対して、通常要求される剛性及び耐久性を付与できる程度のシリコーン樹脂である。また、これらの凹凸成型層(A)を構成する樹脂材料中に、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、スチレン系重合粒子、アクリル系重合粒子、シロキサン系重合粒子などの公知の拡散剤や、その他蛍光剤、特定の波長吸収するフィルター剤などを添加してもよい。
また、上記熱硬化性樹脂としては、スタンパ(C)に形成された光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である微細な凹凸パターンが転写形成される必要があるので、転写成形される時点では、未硬化の液状もしくは半硬化状であって、ある範囲の粘度、たとえば、25℃において、300〜150000mPa・sの範囲程度(回転粘度計:ロータータイプB、回転数40rpm、試料温度25℃±1℃)を有することが好ましい。
なお、ここでいう半硬化状とは、流動しない程度に硬化されている状態に硬化しており、かつ、完全硬化時の硬度に対して、95%以下の硬度を示すものをいう。
【0020】
また、シリコーン樹脂としては、硬化性の液状シリコーン樹脂が好ましく、特に硬化性シリコーンゴムオリゴマー(熱硬化型、室温硬化型)が、剥離性、機械強度・寸法安定性の観点から好ましく用いられる。また、前記樹脂であって低分子量の液体樹脂は、十分な浸透性が望め好ましく用いられる。前記樹脂の粘度は、300〜150000mPa・sの範囲、さらには、500〜100000mPa・s(回転粘度計:ロータータイプB、回転数40rpm、試料温度25℃±1℃)の範囲程度のものが好ましい。
また、上記液状シリコーン樹脂としては、例えば、加硫反応を完結させずに、途中で加硫反応を停止させて得られ、作業性に支障を来たさない程度の保形性を有し、圧力を加えることにより、容易に変形できるような性質を有する部分加硫されたシリコーンゴムでもよく、具体的には、例えば、商品名「TSE260−7U」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社)、商品名「KE565K−U」(JIS A硬度60;信越化学工業社)等を用いることができる。なお、ここで示したJIS A硬度は、加硫完了後の硬度である。
【0021】
また、上記電離放射線硬化性樹脂としては、シリコーン系、アクリル系樹脂などの公知の透明材料が適用できる。
さらに、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを配合したものとしてもよい。
【0022】
さらに、スタンパ(C)の凹凸転写型部が加熱可能な構造の場合には、熱可塑性樹脂板やシートを適用することもできる。熱可塑性樹脂としては、フレネルレンズとして必要な透明性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが適用できる。
【0023】
(2)支持基板(B)
光学シートが、凹凸成型層(A)と支持基板(B)とが積層一体化された形態の場合には、支持基板(B)としては、光を透過させる用途の場合には透明とするが、実質的に透明であれば良く、半透明をも含むものであり、波長が380〜780nm領域の可視光の全光線透過率(JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」準拠)は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。また、支持基板(B)の材質としては、通常、フレネルレンズの材質としてよく用いられる光学ガラスやプラスチックが挙げられる。耐傷付き性の点から、光学ガラスが好ましい。光学ガラスを用いることにより、従来のレンズと全く同等の、擦過傷等を心配することのない裏側表面が得られる。
また、プラスチックの材質としては、光学レンズに用いられるポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタアクレート、PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−アクリル共重合体などを挙げることができる。
また、光を反射させる場合には、凹凸成型層(A)と積層される面が光反射性を有していれば、透明である必要はなく、上記の樹脂材料の表面に金属蒸着や金属メッキしたものや、鏡面加工された金属板などが適用できる。
また、支持基板に、拡散剤や蛍光剤、蓄光剤、特定波長の光を吸収するフィルター作用剤などの機能性材料を添加してもよい。
【0024】
支持基板(B)の厚さは、適宜選択することができるが、機械的強度を得るためには、1〜10mm、好ましくは2〜4mm程度の厚さであることが好ましい。また、可撓性(フレキシブル性)が求められる場合には、1mm未満のフィルム状ものと、すればよく、プラスチックフィルムやガラスフィルム等が適用できる。
【0025】
(3)スタンパ(C)
本発明で用いられるスタンパ(C)は、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるものであって、好ましくは、厚み方向に可撓性を有した凹凸転写型部と、前記凹凸転写型部の撓み変形に連動して加圧力を伝達する押圧伝達部とから構成される。
本発明の第1の発明の技術思想を原理として含むスタンパ(C)の第1の構成形態として、前記凹凸転写型部の凹凸転写面は、光学シートの表面凹凸パターンの反転した凹凸パターンが形成され、前記凹凸転写型部は、前記凹凸転写面の対向する1対の辺を前記凹凸転写面の裏面側で近付ける方向に湾曲した、円柱の側面のような凸状面を形成した形状であり、かつ前記凸面の曲率半径が大きくなるような形状変形に対して、板バネ様の反発復元性を有しており、被転写面に押圧されるにおいては、前記凸状曲面の頂部から初期接触し、次いで、押圧により前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触し、一方、除圧時には、前記凹凸転写部の自己復元力によって接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴としている。
また、本発明の第2の発明の技術思想を原理として含むスタンパ(C)の第2の構成形態として、前記凹凸転写型部の凹凸転写面は、光学シートの表面凹凸パターンの反転した凹凸パターンが形成され、前記凹凸転写面の対向する1対の辺を前記凹凸転写面の裏面側で近付ける方向に湾曲させて、円柱の側面のような凸状面を形成させた状態で、前記押圧伝達部に連結されており、被転写面に押圧されるにおいては、前記凸状曲面の頂部から初期接触し、次いで、押圧により前記押圧伝達部と連動しながら、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触し、除圧時には、前記押圧伝達部と連動しながら接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴としている。
さらに、第1の構成形態と第2の構成形態とを複合した構成とすることもできる。
そして、第1の構成形態および/または第2の構成形態とすることによって、押圧時の前記凹凸転写型部の撓み変形挙動により、転写時の気泡が排除され易くなり、さらに除圧時の前記凹凸転写型部の撓み復元挙動により、良好な剥離操作を実現するのである。
【0026】
第1の構成形態および第2の構成形態において、前記凹凸転写型部の凹凸転写面が有する凹凸パターンは、被転写体全面に押し当てられた状態において、規定の凹凸転写パターン(光学シートの表面凹凸パターンの逆形状)となるものであり、押圧されていない状態では、前記凹凸転写型部が前記凸状面の湾曲されることによって、規定の凹凸転写パターンに比べて広角となっており、未硬化で流動性または半硬化の被転写体が凹凸パターン内に進入しやすくなるとともに、微細な気泡を排出しやすくなる効果がある。このような凹凸転写面の挙動から、本発明のスタンパで成形する際においては、規定の凹凸パターンになる位置まで凹凸転写面を被転写面に押し当てて行う。前記光学シートの表面凹凸パターンとしては、フレネルレンズパターンや回折格子パターン、ホログラムパターンなどが適用できる。
【0027】
前記凹凸転写型部の材質は、第1の構成形態では、板バネ様の反発復元性を有するものであれば、特に限定はなく、金属や硬質樹脂などが適用できる。また、第2の構成形態では、押圧伝達部が凹凸転写型部の形状復元を制御または補助するので、凹凸転写型部の自己反発復元性は必ずしも必須ではないため、凹凸転写が可能であれば、耐熱性や凹凸パターンの耐久性などを考慮して、適宜選択できる。
【0028】
スタンパ(C)の第2の構成形態において、前記押圧伝達部は、前記凹凸転写型部の撓み変形に連動して、応力変形する応力変形体または機械的に駆動する手段を有する機械構成体であり、かつ押圧力を伝達できるものである。応力変形体の例としては、ゴムやゲルなどの弾性(または粘弾性)材料からなる軟質弾性体や、柔軟な袋状体に流動体を充填した液嚢などが適用できる。また、機械構成体としては、空圧または油圧で作動するシリンダー式アクチュエーターなどが適用できる。さらに、弾性部材や液嚢などの応力変形体と機械駆動構造とを組み合わせてもよく、その場合には、前記凹凸転写型部への追従性の観点から、応力変形体を介して前記凹凸転写型部と機械駆動構造が連結されることが好ましい。
【0029】
前記応力変形体のより具体的な例としては、天然ゴム、合成ゴムなどのゴム弾性体、シリコーンゲルやオレフィンゲル、ウレタンゲル、アクリルゲル等の粘弾性体が挙げられる。また、液嚢とする場合には、形状復元しやすいように、流動体を封入する袋状体は、ゴム弾性素材とするが、ゴム弾性体と組み合わせる場合などでは、単に柔軟性を有する袋状体とすることもできる。
前記応力変形体の圧縮反発力と硬度は、押圧時に被転写体の被転写面全体に前記凹凸転写型部を押し当てるだけの変形追従性及び押圧伝達性と、除圧時に被転写体(転写品)から撓み変形によって前記凹凸転写型部を剥離できる反発力(復元力)のバランスを考慮して適宜調整される。また、前記応力変形体は、前記凹凸転写型部の中央部と端部で硬度や反発力を異ならせてもよい。例えば、中央部を低硬度、低反発とし、端部側を中央部よりも高硬度、高反発とすることにより、被転写体への押圧ダメージを軽減しつつ、除圧時に前記凹凸転写型部を撓ませて剥離を容易とすることができる。
さらに、前記応力変形体は、押圧によって、押圧方向の略垂直方向に膨出変形するので、押圧プロセスにおいて前記膨出変形によって押圧力が緩和される作用があるので、過大な押圧力による光学シート(特にガラス基板を有する場合)の破損を防止することができる。
【0030】
前記機械構成体として、空圧または油圧で作動するシリンダー式アクチュエーターや電動式アクチュエーターを適用する場合には、これらアクチュエーター自体が押圧力を発生できるため、例えば、プレスの上加圧子に機械構成体を押圧伝達部とするスタンパ(C)を組み付けて成型する場合には、プレスの上加圧子による押圧をしないか、もしくは凹凸転写部の接触時の押圧とし、主に前記機械構成体であるアクチュエーターで順次凹凸転写部を被転写面に追従変形させながら、押圧し、一方、剥離の際には、アクチュエーターのロッドの戻りによって、端部から剥離して、最後に上加圧子を上昇させて完全に剥離させるようにして使用する。
【0031】
前記連結部分は、前記凹凸転写型部の裏面(凹凸パターン面を表面として)全体とする場合や、裏面の特定位置(例えば、両端面や中央部)のみ連結させる場合など、凹凸転写型部と押圧伝達部の構成に応じて選択できる。
具体的には、例えば、凹凸転写型部が樹脂製の薄いシート状の形態の場合のように、凹凸転写型部自体が容易に撓み変形しやすく全体に押圧力が均一に伝達しにくい場合には、裏面全体が密接するように押圧伝達部と連結し、第1の構成形態のように、凹凸転写型部が金属板のように可撓性を有しつつ、ある程度の剛性を有する場合には、両端面(必要に応じて中央部も)を押圧伝達部と連結させればよい。
【0032】
また、本発明で用いられるスタンパ(C)としては、第1の構成形態においては、例えば図2(a)、(b)のように、凹凸転写型部のみからなる場合や、図2(c)(d)のようにゴム弾性体や液嚢などからなる押圧伝達部を組み合わせた構成とすることができる。なお、図2(b)は、凹凸転写面を有する非自己復元性部と板バネ様の自己復元性部を積層した構造としたものである。また、図2(a)(b)の場合には、図6のように凹凸転写型部(610)は、加圧子(P1)に固定されず、加圧時には、加圧子の押圧面に接する凹凸転写型部の端部が前記加圧子の押圧面に接触しながら加圧子の外側に向かって移動しながら変形し、被転写面に追従して接触させて転写、硬化する(図6(a)〜(e))。次いで、図6(f)〜(h)のように加圧子の後退に伴って凹凸転写型部410が自己復元しながら光学シートから剥離される。
【0033】
また、第2の構成形態においては、例えば、図3(a)に示すように、基本的には、応力変形体からなる押圧伝達部と、凹凸転写型部とからなる。
また、上記押圧伝達部の応力変形体には、図3(b)〜(d)に示すように、第2の応力変形体を用いてもよい。さらに、押圧伝達部の応力変形体として、図3(e)(f)に示すように、柔軟な袋状体に流動体を充填した液嚢を用いてもよい。また、押圧伝達部には、図4に示すように、機械的駆動機構(メカ式)を用いてもよく、また、図4(b)(c)のようにメカ式と応力変形体を組み合わせてもよい。
なお、図3において、押圧伝達部を受圧板に接続した構造のスタンパを提示しているが、この受圧板は、スタンパ(C)をプレスの上加圧子に取付けるアダプタの役割や、押圧伝達部が柔軟な応力変形体の場合において応力変形体の形状を保持する役割、さらに、押圧伝達部が機械構造体の場合には、機械構造体を組み付けるベースの役割を持たせる場合に設置することができる。押圧伝達部がプレスの上加圧子に直接取付けられる場合には、受圧板を省略してもよい。
【0034】
また、スタンパ(C)には、電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂の硬化促進手段、例えば加熱手段またはUV照射手段などを有してもよい。
加熱手段としては、例えば、前記応力変形体に熱伝導性ゴムなどを適用したうえで、前記熱伝導性の応力変形体を介して、公知のヒーターを配置したり、前記液嚢に加熱流動媒体を充填または循環させるなどの構成としてもよい。なお、加熱する場合には、前記凹凸転写型部は、硬化温度で熱変形しない材質とし、特に、熱可塑性樹脂に転写する場合や、熱伝導性を高くする必要がある場合には、金属製とすることが好ましい。
他方、UV照射手段としては、前記凹凸転写型部または前記押圧伝達部の背面に、UV照射装置を配置する構成とする。この場合には、前記凹凸転写型部および前記押圧伝達部は、UV透過性を有する透明材料とする。また、UV照射は、前記凹凸転写型部が凸状曲面状態であるので、転写成型される被成型樹脂層に接触しない部分から照射紫外線が漏れ出るので、作業安全上の観点から、前記凹凸転写型部が被成型樹脂層全面に接触した状態以降に行うことが好ましい。
【0035】
2.光学シートの製造方法
本発明の光学シートの製造方法では、図1の光学シートの製造方法の概要1は、支持基板(B)と凹凸成型層(A)が積層させた実施形態の例であり、30がガラスなどの透明な支持基板(B)であり、5が凹凸成型層(A)であり、41がスタンパ(C)の凹凸転写型部である。
【0036】
本発明の光学シートの製造方法は、前記したように、光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンが形成された凹凸転写面を有する凹凸転写型部が、円柱の側面のような凸状面に湾曲変形された状態で前記押圧伝達部に連結されたスタンパ(C)によって、前記被成型樹脂層に前記凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、
前記第一工程の加圧転写状態を維持したまま前記加圧成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される第二工程と、
前記光学用シートを、スタンパ(C)から剥離する第三工程と、からなり、かつ、
第一工程の加圧転写成形する際には、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸転写面は、加圧転写完了の状態において、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンとなるものであって、押圧により、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触して、または、前記押圧伝達部と連動して、凹凸パターン形状となる状態まで、凹凸転写型部の初期接触部から端部側に順次変形しながら被成型樹脂層に接触して、押圧転写成形され、
また、第三工程の光学用シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とするものである。
以下、各工程について、図5を例に説明する。なお、図5は、実施形態の一例であって、この形態に限定されるものではない。
【0037】
(1)第一工程
上記の加圧成形する第一工程では、図5(a)に示すように、プレスの加圧台に直接、もしくは剥離フィルム、または凹凸成形層(A)と一体化される支持基板(B)に、未硬化の液状または半硬化状の電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を塗布又は積層してなる被成型樹脂層に、スタンパ(C)の凹凸転写面を、加圧成形によって転写する工程であって、先ず、凸曲面状の凹凸転写型部の凹凸転写面中央部の頂部を被成型樹脂層に初期接触させて(図5(b))、所定の凹凸パターン形状となる状態まで、順次凹凸転写面の端部側に撓み変形しながら被成型樹脂層に接触して加圧成形されることによって、空気または気泡が排除されながら、前記凹凸パターンが凹凸成型層(A)に押し当てられて転写形成される(図5(c)〜(d))。
なお、被成型樹脂層と接初期接触させる凹凸転写面の頂部の位置としては、単純に一方向に押圧する場合には、凹凸転写面の中央部が好ましいが、転写に支障がなければ特に限定されず、凹凸転写面の端部側を初期接触させてもよい。また、頂部が線接触で開始されることが理想であるが、転写に支障が無ければ点接触で開始されてもよい。点接触としては、凹凸転写面の辺状の頂部を、被成型樹脂面に対して、傾けて接触させる場合が想定される。
【0038】
ここで、スタンパ(C)の凹凸転写面に形成された光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンは、凹凸転写面が凸状に湾曲変形に連動して変形しているので、前記凹凸パターンとなる位置で加圧転写を完了することが重要である。
なお、被成型樹脂層は、プレスの加圧台に直接、もしくは剥離フィルム、または凹凸成形層(A)と一体化される支持基板(B)の表面に形成するが、被成型樹脂層が液状の場合には、公知の方法で所望の範囲と厚みで塗布し、被成型樹脂層が形状保持可能な程度のものであれば、基材の上に気泡または空気を巻き込まないように重ねればよく、それらの作業は、プレスの加圧台上でも行ってもよいし、予め積層したものをプレスの加圧台にセットしてもよい。
【0039】
被成型樹脂層の厚みは、スタンパ(C)の前記凹凸パターンが転写可能であれば、特に限定されず、用途に応じて適宜設定される。被成型樹脂層が液状の場合には、スタンパの初期接触部分から徐々に被転写材料を外側に押し流しながら成形されるので、塗布厚みの厳密な設定までしなくてもよい。
なお、スタンパ(C)の凹凸転写部の被転写体への初期接触は、通常、凹凸転写部の略中央部から開始させるが、これに限定されず、端部寄りの部分もしくは端部から接触させてもよい。
また、押圧力は、加圧転写完了状態において、少なくともスタンパ(C)の凹凸転写面が目的の凹凸パターンとなる状態で凹凸転写面を被成型樹脂層に転写でき、凹凸転写面の凹凸パターンや支持基板(B)が損傷しない範囲で設定される。
【0040】
さらに、上記の凹凸パターンとしては、フレネルレンズパターンや回折格子パターン、ホログラムパターンなど所望の光学特性となるパターンの逆形状パターンとすることができる。
【0041】
(2)第二工程
また、上記の第二工程は、前記第一工程の加圧転写状態を維持したまま、前記加圧成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される工程(図5(e))である。
なお、支持基板(B)に被成型樹脂層が積層されて、凹凸成型層(A)が形成される場合には、凹凸成型層(A)の形成と同時に支持基板(B)との接合がなされて、支持基板(B)と凹凸成型層(A)とが積層一体化した光学シートとなる。
【0042】
被成型樹脂層の硬化は、被成型樹脂層を構成する樹脂に応じて、電離放射線照射および/または加熱処理によって行われる。電離放射線を照射する方法または加熱処理する方法については、公知の方法により可能であり、特に限定されない。また、加熱または紫外線硬化手段は、スタンパ側および/またはプレスの加圧台側に設けてもよいし、加熱する場合には、スタンパとプレスの加圧台を含む全体を加熱してもよい。
【0043】
また、上記の支持基板(B)と前記凹凸成型層(A)との接合については、支持基板(B)と、例えば、シリコーン樹脂の硬化物である凹凸成型層(A)との接合には、プライマーを用いてもよく、第一工程において、プライマー処理した支持基板(B)面に、被成型樹脂層を積層しておけばよい。
【0044】
(3)第三工程
さらに、上記の第三工程は、図5(f)〜(h)に示すように、第二工程で形成された凹凸成型層(A)を有する光学シートもしくは支持基板(B)と凹凸成型層(A)とが積層一体化された光学シートを、該スタンパ(C)から剥離する工程であって、光学シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とするものである。
これにより、第二工程で得られた光学シートの凹凸成型層(A)の凹凸パターン形状を損傷することなく、かつ容易にスタンパ(C)を剥離することが可能となり、特に従来は剥離が困難であった剛性の大きい支持基板(B)と凹凸成型層(A)とが積層一体化された場合や、凹凸成型層(A)自体が剛性体である低可撓性の光学シートの剥離が劇的に向上させることが可能となる。
【0045】
さらに、剥離をより良好にするために、スタンパ(C)を振動させたり、剥離開始部分にエアーブローするなどの補助手段を講じてもよい。
なお、剥離する本工程においては、上記の剥離作用を発揮させるためには、成形された光学シートがプレスの加圧台に固定されている必要があるので、プレスの加圧台側から光学シートをエアーチャック等で固定するなどの固定手段が設けられる。当然ではあるが、前記固定手段は、スタンパ(C)から剥離した後に、光学シートを脱離可能とできる構造ものとする。固定手段としては、公知のエアーチャックやメカニカルな固定具が適用できるが、光学シートが変形しない程度の範囲で固定することが重要である。
さらに、少なくとも第一工程において、図1(b)のように、減圧機構VHを併用して、気泡の除去を促進させてもよい。
【0046】
さらに、本発明の実施の態様として、光学シートの凹凸成型層(A)の凹凸パターン転写形成面に、透明な保護層や機能性層を形成することもできる。前記保護層としては、表面の傷付きなどの損傷を防止したり、前記凹凸パターン転写形成面に粘着性(タック性)がある場合に、粘着性を低減させることができ、凹凸パターン転写形成面よりも、硬化後に硬質となるものが好ましい。保護層として、例えば、ガラス質コーティング層を形成することにより、擦過傷等の心配がなく、例えば、前記凹凸パターン転写形成面がフレネルレンズ形状の場合、従来の硬質材料からなるフレネルレンズと同等の耐久性等あるフレネルレンズ成型層とすることができる。
【0047】
このガラス質コーティング層として、好適なものにホーマーテクノロジー株式会社販売の「ヒートレスガラス」(HEATLESS GLASS−商品名−)がある。また、このヒートレスガラスを用いることにより、良好な作業性と比較的低温でガラス化した表面を得ることができる。
また、例えば、ペルヒドロポリシラザン(PHPS、パーヒロドポリシラザン)等の無機ポリマーも、使用することもできる。
さらに、前記凹凸パターン転写形成面が付加反応型のシリコーン材の場合には、表面の粘着性を減じる別の方法として、ハイドロジェンポリシロキサン(SiHオイル)を塗布する方法も効果的である。
【0048】
また、機能性層として、拡散層や特定の波長吸収層(フィルター層)、蛍光層などとすることができ、例えば、微細パターン条転写面に沿って積層して一体化する。前記機能性層は、ベースとなる未硬化原料に拡散材や光吸収材量、蛍光剤などを分散させた機能性組成物を、微細パターン条転写層に積層させて、硬化させて一体化する。前記の未硬化原料は、積層される微細パターン層と同じ硬化原理の材料が好ましいが、異なる硬化原理の材料を適用してもよく、機能性層に保護層の機能を付加させたい場合には、微細パターン条転写される材料よりも、硬化後に硬質となるものを適用すればよい。
【0049】
これらの保護層や機能性層を形成するにあたっては、予め、硬化もしくは半硬化の状態で形成された前記凹凸パターン転写形成面に常法のスピンコート等の均一塗布手段で塗布した後、硬化させて形成することができる。また、予め、ともに未硬化な状態で、ロールコーター等で積層したのちに、本発明のスタンパで押圧し、硬化させて多層構造の凹凸パターン転写形成面としてもよい。
【0050】
このようにして、本発明に係る光学シートは、製造される。このシンプルな生産工程は、大量生産を可能とし、コストパフォーマンスに優れている。
特に、凹凸パターンがフレネルレンズのように、微細でノコギリ状のパターンの場合であっても、成形時の気泡混入がなく、また、光学シートが低可撓性の場合には、従来の方法では、剥離が困難であったが、本発明の製造法によれば、フレネルレンズ形状であっても、そのパターンを損傷させること無く、容易にかつ安定した剥離が可能となる。
【0051】
また、図2(a)または(b)のような自己反発復元性を有する凹凸転写型部のみからなるスタンパ(C)を適用する場合には、図7に例示したように、第二工程完了後に、凹凸転写型部と光学シート(もしくは光学シートとプレスの加圧台の間に脱着可能な受圧板などがある場合には前記受圧板)とを、クランプCJ1、CJ2などの固定器具で密着させた状態(図7(d))で加圧子を後退させて、凹凸転写型部と光学シート(もしくは受圧板と共に)を積層状態でプレスから取り出し、必要に応じて追硬化処理(図7(e))した後、クランプを除去(図7(f))して、凹凸転写型部を自己反発復元させて光学シートと凹凸転写型部とを剥離させて光学シートを得る(図7(g)〜(h))ようにしてもよい。
なお、図7は、クランプを取付けやすいように受圧板44a及び44bを介して成形しているが、受圧板44a、44bを用いずに、直接凹凸転写型部410と支持基板30を固定する手段を適用してもよい。
【0052】
さらに、連続生産性を向上させるために、スタンパ(C)が円周上に複数配置された複合型のロール状スタンパとしてもよい(図8参照。)。この場合、スタンパ(C)の凹凸転写面と被成型樹脂層との押圧転写は、各スタンパ(C)の凹凸転写面の端部から中央部を経て他方の端部へと、凹凸転写面と被成型樹脂層との接触を維持しながら、順次凹凸転写面が被成型樹脂層全面に接触するよう凹凸転写型部を変形させながらロール状スタンパを回転させて凹凸転写面の形状を被成型樹脂層に転写し、この状態でロール状スタンパの回転を一旦止めた状態で硬化し、次いで、ロール状スタンパをさらに回転をさせると同時に、スタンパ(C)が復元しながら剥離するという一連の工程を、円周上に配置された複数のスタンパ(C)で順番に行わせることによって、より生産性を向上させることができる。
この方法は、前記特許文献3の原理に似ているが、特許文献3は、スタンパが変形しないため、成形部分が線状に限られており、UV硬化させる場合の調整が困難であるが、本方法では、面で成形するため、UV等で硬化させる際の調整が容易である。従来から行われているロール型での成形の場合も、ロールが変形しないので、被転写物をシートやフィルムといった基材に保持させて、ロールに追従させて面で転写成形することが行われているところ、基板がガラス板等の撓みにくい剛体の場合には、適用できないが、本方法であれば、低可撓性の光学シートの場合においても、ロール型のスタンパ方式で連続生産できる。
【0053】
3.光学シート及びその用途
本発明の光学シートは、耐熱性、耐久性を有し、光学性能に優れるという作用効果を発揮するので、例えば、凹凸パターンをフレネルレンズパターンとしたフレネルレンズシートにおいては、特に、使用環境が厳しく耐久性が要求される集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置に適用できる。
また、集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置に適用することにより、集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置は、長期間にわたり発電効率や照明効率を維持させるという作用効果を発揮する。
【0054】
本発明に係る光学シートであるフレネルレンズシートは、上記の作用効果を奏するために、集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置ばかりでなく、白熱灯などを光源とする照明装置、光学素子又は光学素子を用いた画像表示装置、透過型スクリ−ン用レンズ、背面投射型スクリーン、背面投写型画像ディスプレイ装置などに利用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
(スタンパの作製:スタンパA)
受圧板として、市販の縦200mm×横200mm×厚さ5mmのアルミ板と、凹凸転写型部として、市販のアクリル樹脂製のフレネルレンズシート(縦200mm×横200mm×厚み0.7mmで幅0.5mmピッチ、中心から外周にかけて高さ10〜300μmのノコギリ状の同心円状フレネルレンズ形状(凹タイプ))と、押圧伝達部として、シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製、二液付加反応性加熱硬化型CF5055)とを、図10のように型成形によって、プライマーを介して連結してスタンパを得た。なお、凹凸転写部は、曲率80mmで湾曲させた。
【0057】
(第一工程および第二工程:凹凸成型層(A)の形成と支持基板(B)との接合)
凹凸成型層(A)の元となる被成型樹脂層の材料として、液状シリコーン樹脂;信越シリコーン(株)製「KE1935」(粘度:8000mPa・s JIS A硬度:55)を、さらに、透明な支持基板(B)として、強化ガラス板(無色透明:日本板硝子社製):200×200×4mm厚のものを用いた。
【0058】
先ず、ヒートプレスの上加圧子にスタンパAを取付け、一方、ヒートプレスの加圧台には、上記の支持基板である強化ガラス板を置き、真空チャックして固定し、次に、その強化ガラス板に、液状シリコーン樹脂を0.3mm厚で塗布し、ヒートプレスの下準備を行った。
次に、ヒートプレスとして、ヒートプレス機の上加圧子と加圧台の温度をそれぞれ70℃にし、プレス速度1m/min、プレス圧力100kgfで20分プレスを行った。
このようにして、熱硬化することにより、フレネルレンズパターンを有する凹凸成型層(A)を形成させ、同時に、凹凸成型層(A)に支持基板(B)を接合させる第二工程を行った。
【0059】
(第三工程:樹脂成形型を取り除く工程)
続いて、上加圧子を1m/minの速度で退行させて、スタンパの形状を復元させながら、形成した凹凸成型層からスタンパAを剥離させたのち、真空チャックを解除して加圧台から支持基板と一体化した光学シートを取り外し、次いで、オーブンで100℃、3時間アフターキュアして凹凸成型層(A)を完全硬化して、フレネルレンズパターンを有したガラス基板一体型のフレネルレンズシート(a)を得た。
【0060】
[実施例2]
実施例1において、支持基板を、強化ガラスに代えてPETフィルム(ユニチカ社製 200×200×0.1mm)とした以外は、実施例1と同様にして、PETフィルム一体型のフレネルレンズシート(b)を得た。
【0061】
[実施例3]
実施例1において、スタンパAの凹凸転写型部をフレネルレンズシートに代えて、市販のレンチキュラーレンズシート(日本特殊光学樹脂社製 LL0.3(200×200×2mm厚))の凹凸パターンを有する金型で透明な塩化ビニル樹脂シート(タキロン(株)製「プレスプレート TS−608A」(厚さ1mm品))に型転写して、形成した反転レンチキュラーレンズシートとしたスタンパBを用いた以外は、実施例1と同様にして、ガラス一体型のレンチキュラーレンズシートを得た。
【0062】
[実施例4]
実施例1において、スタンパの凹凸転写型部をフレネルレンズシートに代えて、市販のプリズムシート(日本特殊光学樹脂社製 LP40−0.3)の凹凸パターンを有する金型で透明な塩化ビニル樹脂シート(タキロン(株)製「プレスプレート TS−608A」(厚さ1mm品))に型転写して、形成した反転プリズムシートとしたスタンパCを用いた以外は、実施例1と同様にして、ガラス一体型のプリズムシートを得た。
【0063】
[実施例5]
実施例1において、スタンパの凹凸転写型部をアクリル製のフレネルレンズシートに代えて、実施例1のフレネルレンズシートと押圧伝達部であるシリコーンゲルの間にステンレス製ばね材(SUS304−CSP)からなる曲率80mm、厚み0.5mmの板バネシート配置したスタンパDとし、押圧伝達部として、シリコーンゲル(東レ・ダウ社製 二液付加反応性加熱硬化型CF5055)と12重量%と、アルミナ(マイクロン社製AH50−5)88重量%を分散させた熱伝導性ゲルとし、さらに、プレス時間を15minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、PETフィルム一体型のフレネルレンズシート(c)を得た。
【0064】
[実施例6]
実施例1のスタンパAにおいて、図11のように押圧伝達部として、エアシリンダー71、72(コガネイ社製 TBDA10×50)を、回動可能な連結構造を有するアクリル製の接続部品AP2を介して凹凸転写部41となる100×100×0.7mm厚のフレネルレンズシートに取付けた構造としたスタンパDを用い、凹凸転写型部の凹凸転写面の頂部が被転写樹脂層に接触したところで加圧子を止め、加圧子の位置を維持した状態で、エアシリンダー71,72を作動させて凹凸転写部の凹凸転写面全面を被転写樹脂層に接触させて転写させた。
次いで、実施例1と同じ硬化条件で硬化させて凹凸成型層を形成した後、エアシリンダー71、72を元の位置に退行させて、凹凸成型層の端部から中央部に向かって凹凸転写型部を剥離して、ガラス基板一体型のフレネルレンズシート(d)を得た。なお、エアシリンダー71、72は、回動可能な連結構造を有するステンレス製の取付け部品を介して受圧板430に接続されている。
【0065】
[実施例7]
実施例1で得られたフレネルレンズシート(a)の凹凸成型層に、さらに、「ポリシラザン」を用いてガラス質コーティングを施して、厚み約1μmのガラスコーティング層を形成させて、フレネルレンズシート(f)を得た。
【0066】
上記実施例1〜7で得られたフレネルレンズシート(a)〜(f)、レンチキュラーレンズシート及びプリズムシートの凹凸成型層は、何れも凹凸成型層に破損や気泡の混入がない良好な凹凸表面であった。
【0067】
また、上記のフレネルレンズシート(f)を用いて、太陽電池装置に適用したところ、集光し良好な発電効率が得られた。また、LED光源照明装置に適用したところ、平行光線を発し良好な照明効率が得られた。この結果から、本発明のフレネルレンズは、太陽電池装置やLED光源照明装置に好適に用いることができることが判った。
また、実施例3及び4で得られたレンチキュラーレンズシート及びプリズムシートも、基型である市販のレンチキュラーレンズシート及びプリズムシートの凹凸形状を忠実に再現していた。
また、実施例5のように、凹凸転写部に金属製の板バネと押圧伝達部に熱伝導性の弾性体とで構成したスタンパを用いることにより、上加圧子からの熱伝達効率が向上し、熱プレス時間を短縮することが可能であった。
さらに、実施例1〜6のように、押圧伝達部は、弾性変形体のみならず機械構成体としても、本発明の作用が実現できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光学シートの製造方法から得られた光学シートは、耐熱性、耐久性を有しかつ優れた光学性能を有するという作用効果を奏するので、例えば、凹凸パターンをフレネルレンズパターンとした場合、各種フレネルレンズの用途はもとより、使用環境が厳しく耐久性が要求される集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置ばかりでなく、白熱灯などを光源とする照明装置、光学素子又は光学素子を用いた画像表示装置、透過型スクリ−ン用レンズ、背面投射型スクリーン、背面投写型画像ディスプレイ装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 光学シート(フレネルレンズシート)
2 凹凸成型層(A)
2a 凹凸パターン転写成形面(フレネルレンズ形状)
3、30 支持基板(B)
4 スタンパ(C)
4a、4b、4c 押圧伝達部が機械式のスタンパ(C)
41 凹凸転写型部
410 自己復元性を有する凹凸転写型部
42 押圧伝達部(軟質弾性体)
42a、420a 第一の軟質弾性体
42b、420b 第一の軟質弾性体とは異なる第二の軟質弾性体
43、430、44a、44b 受圧板
5 被成型樹脂層
60、61 液嚢
71、72 機械式の押圧伝達部
80、81、82 硬化手段
AP1、AP2 取付け部品
CJ1、CJ2 クランプ治具
J1、J2、J3、J4 回動連結部
P1 上側加圧子
P2 下側加圧子(加圧台)
R ロール型スタンパ芯部品
SP 移動式加圧台
VH 減圧ユニット
VP 真空ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンパ(または曲面状成形型ともいう)及びそれを用いる光学シートの製造方法に関し、詳しくは、凹凸成型層(A)を少なくとも有する光学シートの製造方法及びそれに用いるスタンパなどに関する。特に、スタンパを用いて、光学シートを空気の混入無く成形するとともに、成形型から剥離する方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
光学製品の部品として、フレネルレンズや回折格子、ホログラム、LEDエッジライト型照明ユニットの導光板など、表面に微細な凹凸を形成した光学部品が広く使用されている。これらの光学部品の凹凸表面の形成は、様々な方法で加工されており、例えば、フレネルレンズの場合には、従来から、加熱された金型により熱可塑性樹脂を押圧してフレネルレンズ面を形成する所謂「熱プレス法」、或いは溶融軟化された熱可塑性樹脂組成物を金型内に注入し固化させてフレネルレンズ面を形成する「キャスティング法」等が採用されており、本出願人も、半硬化の熱硬化性シリコーン樹脂を熱プレスする方法や、液状の熱硬化性シリコーン樹脂を樹脂型に充填して固化させる方法を提案している(特許文献1、2参照。)。
しかしながら、これらの製法の共通課題として、(1)型で被転写材料を押圧もしくは充填する際に気泡の混入を防止すること、(2)フレネルレンズは、剥離し難い凹凸形状であることが多く、成形後に成形型に密着して剥離し難いため、レンズ部を損傷することなくスムーズに剥離すること、が生産性向上のため重要となる。
しかし、従来の方法は、必ずしも生産性に優れたものとはいえなかった。また、押圧する製法においては、シート全体を面押しするので、比較的プレス圧が大きく、特に、ガラス基板一体型のフレネルレンズの場合には、ガラスが破損し易くなるなど、フレネルレンズの構造ごとに製法を変える必要があり、依然として生産性向上のために改善すべき余地が多々あるのが現状であった。
【0003】
そこで、上記課題(1)の気泡混入を改善する方法としては、ロール型による転写方法の応用技術として、円柱の側面の凸面形状を有するスタンパで、紫外線硬化性の材料表面を転回するように押圧しながら紫外線硬化させるとともに、硬化した部分は、前記凸面形状と転回の協働によって、順次剥離させる方法が提案されている(特許文献3参照。)。
この方法によれば、上記課題の(1)と(2)が同時に行われるので、生産性に優れた方法であるが、転写後に速やかに硬化させる必要があり、被転写材料が高価な紫外線硬化材料に限定されるものであり、安価な熱硬化性材料に対しては、適用できるものではなく、コスト面で課題があった。
【0004】
また、課題(2)の成形型からの成形品の剥離方法としては、例えば、上記特許文献3には、成形型上に付着したレンズシートの相対向する二箇所を同時に又は順に成形型上に持ち上げ、この上昇と並行し又はこの上昇の終了後に他の相対向する二箇所を同時に又は順に成形型上に持ち上げ、しかる後レンズシ−トの全体を成形型上に持ち上げることを特徴とするレンズシ−トの剥離方法が開示されている。同様の原理で、フレネルレンズを撓ませながら、中心部を残して周辺から中心部に向かって剥離して、最後にフレネルレンズの中心部を含めて一斉に剥離する手順を採用する剥離方法が提案されており(例えば、特許文献4、5参照。)、複雑なフレネルレンズ形状であっても、微細凹凸を損傷することなく剥離できる点で有効である。
【0005】
しかしながら、上記のような方法では、フレネルレンズシートを成形型から剥離する際に、レンズシートに撓みが生じるおそれがあり、撓みが大きいと、レンズシートにかかる負荷が過剰となり、場合によっては、レンズシートが塑性変形あるいは破壊(割れる)するに到ってしまうおそれがある。また、ガラス基板一体型フレネルレンズのように剛性が高く撓み難い製品には、適用できなかった。
このように、フレネルレンズを一例に述べたが、これらの技法は、他の光学部材の凹凸表面の形成にも応用でき、成型時の気泡混入防止や剥離の課題も、共通している。
そのため、凹凸パターンや光学部品の構造、素材によらず、生産性や品質に優れた光学シートの製造方法が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−212771公報
【特許文献2】特開2007−271857公報
【特許文献3】特開2002−172626号(特許第4515625号)公報
【特許文献4】特開2003−181855号公報
【特許文献5】特開2007−090545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、光学シートの製造工程において、凹凸パターン転写時における気泡の混入がなく、かつ成形型からの剥離に際し、光学シートの塑性変形あるいは破壊を招くことなく、安定した剥離を実現することを可能とし、さらに、光学シートの素材や構造に拠らないで広く適用でき、以って生産性の良好な光学シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、光学シートの凹凸パターン(例えば、フレネルレンズのノコギリ状(または凹凸状)の微細パターン)を転写形成させるための成形型について、従来の平板状成形型(スタンパ)でなく、押圧、除圧に応じて、撓み変形可能なスタンパを用いることにより、凹凸パターン転写時の気泡の混入を防止することができるとともに、成形型から剥離する際には、スタンパの復元力により、剥離性が良好であることを、見出し、結果として、優れた品質の光学シートが、素材や構造に拠らず高い生産性で得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、表面に凹凸を有する光学用シートの作製に用いられ、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるスタンパであって、該凹凸転写型部の凹凸転写面には、光学用シートの表面凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成され、凹凸転写面が円柱の側面様の凸状曲面を形成した状態であって、被転写面に接触して押圧される際には、該凸状曲面の頂部から被転写面に初期接触し、次いで、押圧により、該初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して凹凸転写面が該反転凹凸パターン形状と成り得る状態で接触でき、また、被転写面から除圧される際には、凹凸転写型部の自己復元力により、接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴とするスタンパが提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、表面に凹凸を有する光学用シートの作製に用いられ、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部と、該凹凸転写型部の撓み変形に連動して加圧力を伝達する押圧伝達部とを具備してなるスタンパであって、該凹凸転写型部の凹凸転写面には、光学用シートの表面凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成され、凹凸転写面が円柱の側面様の凸状曲面を形成した状態で、該凸状曲面の裏面部と該押圧伝達部とが連結され、被転写面に接触して押圧される際には、該凸状曲面の頂部から被転写面に初期接触し、次いで、押圧により、該押圧伝達部と連動しながら、該初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して凹凸転写面が該反転凹凸パターン形状と成り得る状態で接触でき、また、被転写面から除圧される際には、該押圧伝達部と連動しながら、接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴とするスタンパが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記押圧伝達部が軟質弾性体からなることを特徴とするスタンパが提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、電離放射線硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂からなる被成型樹脂層を、第1〜3のいずれかの発明に係るスタンパ(C)を用いて成形してなる凹凸成型層(A)を少なくとも有する光学用シートの製造方法であって、
光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンが形成された凹凸転写面を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるスタンパ(C)によって、被成型樹脂層に該凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、
加圧転写成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写面の形状が転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される第二工程と、
光学用シートを、スタンパ(C)から剥離する第三工程と、からなり、かつ、
第一工程の加圧転写成形する際には、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸転写面は、加圧転写完了の状態において、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンとなるものであって、押圧により、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触して、または、前記押圧伝達部と連動して、凹凸パターン形状となる状態まで、凹凸転写型部の初期接触部から端部側に順次変形しながら被成型樹脂層に接触して、押圧転写成形され、
また、第三工程の光学用シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、前記第一工程において、前記被成型樹脂層は、支持基板(B)に積層されて、スタンパ(C)で加圧転写成形され、及び前記第二工程において、硬化時の加圧状態におけるスタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)が形成されると共に、支持基板(B)と凹凸成型層(A)とを接着させて、支持基板(B)と凹凸成形層(A)との積層体を形成することを特徴とする光学シートの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、支持基板(B)の材質は、光学ガラスであることを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第4〜6のいずれかの発明において、第一工程の加圧転写成形する際に、スタンパ(C)の中央部から被成型樹脂層に接触して加圧転写成形されることを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第4〜7のいずれかの発明において、凹凸成型層(A)は、付加硬化型シリコーン樹脂からなることを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第9の発明によれば、第4〜8のいずれかの発明において、凹凸成型層(A)の凹凸パターン形状は、フレネルレンズパターンであることを特徴とする光学用シートの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第9の発明に係る光学用シートの製造方法で作製されたフレネルレンズシートを用いてなることを特徴とする集光式太陽電池装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学シートの製造方法では、スタンパを用いることにより、「成形型による凹凸パターンの転写形成工程」では、中央部から加圧成形されて、空気または気泡が排除されることにより、微細な凹凸パターンの転写形成が良好に行えるという効果を奏し、また、「成形型からの剥離工程」では、剥離ムラによる不良を飛躍的に低減でき、効率的な剥離が行なえるため、結果として、優れた品質と量産性を確保した、生産性の高い光学シートの製造方法を提供できる。さらに、光学シートの素材や構造に拠らず対応できるため、フレネルレンズをはじめとして様々な光学シートの製造に広く適用でき、コスト削減にも貢献できる。
また、本発明の光学シートの製造方法で得られた光学シートは、凹凸成型層(A)と透明な支持基板(B)とを有した積層体の場合には、その凹凸成型層(A)は、光学シートの微細な凹凸パターン条が形成されているので、耐熱性、耐久性と、光学性能に優れるという作用効果を発揮する。
さらに、凹凸成型層(A)をフレネルレンズパターンとして、本発明から得られたフレネルレンズを用いることにより、耐久性を具え性能のよい、集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光学シートの製造方法の概要を説明する図である。
【図2】本発明の第1の構成形態からなるスタンパ(C)の構成例を説明する図である。
【図3】本発明の第2の構成形態からなるスタンパ(C)の構成例を説明する図である。
【図4】本発明の第2の構成形態からなるスタンパ(C)の別の構成例を説明する図である。
【図5】本発明の第2の構成形態からなるスタンパ(C)の転写時の挙動の概要を説明する図である。
【図6】本発明の第1の構成形態からなるスタンパ(C)の転写時の挙動の概要を説明する図である。
【図7】本発明の第1の構成形態からなるスタンパ(C)の別の転写方法の概要を説明する図である。
【図8】本発明の光学シートの製造方法の別の実施形態の概要を説明する図である。
【図9】本発明の光学シートの製造方法で得られるフレネルレンズシートの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施例1のスタンパ(C)の構成を説明する図である。
【図11】本発明の実施例6のスタンパ(C)の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の光学シートの製造方法で得られる光学シートは、電離放射線硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂からなる被成型樹脂層をスタンパ(C)で成形して形成してなる凹凸成型層(A)を少なくとも有する光学用シートであり、その製造方法は、
光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンが形成された凹凸転写面を有する凹凸転写型部が、円柱の側面のような凸状面に湾曲変形された状態で押圧伝達部に連結されたスタンパ(C)によって、被成型樹脂層に凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、
前記加圧成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される第二工程と、
前記光学用シートを、スタンパ(C)から剥離する第三工程と、からなり、かつ、
第一工程の加圧転写成形する際には、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸転写面は、加圧転写完了の状態において、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンとなるものであって、押圧により、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触して、または、前記押圧伝達部と連動して、凹凸パターン形状となる状態まで、凹凸転写型部の初期接触部から端部側に順次変形しながら被成型樹脂層に接触して、押圧転写成形され、
また、第三工程の光学用シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とするものである。
以下に、光学シートの構成成分とスタンパと、その製造方法、及び用途などについて詳細に説明する。
【0018】
1.光学シートの構成成分とスタンパ
(1)凹凸成型層(A)
本発明で用いる凹凸成型層(A)は、上記のように、プレスの加圧台に直接、もしくは剥離フィルム、または凹凸成形層(A)と一体化される支持基板(B)に、未硬化の液状または半硬化状の電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を塗布または積層してなる被成型樹脂層を、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である微細な凹凸パターンが形成されたスタンパ(C)で加圧転写成形し、転写成形された被成型樹脂層を硬化して、光学シートの微細な前記表面凹凸パターンを表面に形成されたものである。
【0019】
上記電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂としては、微細な凹凸パターンが形成されるものであれば、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂としては、耐候性、耐熱性が要求される用途においては、シリコーン樹脂が好ましく、熱硬化により、光学シートに対して、通常要求される剛性及び耐久性を付与できる程度のシリコーン樹脂である。また、これらの凹凸成型層(A)を構成する樹脂材料中に、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、スチレン系重合粒子、アクリル系重合粒子、シロキサン系重合粒子などの公知の拡散剤や、その他蛍光剤、特定の波長吸収するフィルター剤などを添加してもよい。
また、上記熱硬化性樹脂としては、スタンパ(C)に形成された光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である微細な凹凸パターンが転写形成される必要があるので、転写成形される時点では、未硬化の液状もしくは半硬化状であって、ある範囲の粘度、たとえば、25℃において、300〜150000mPa・sの範囲程度(回転粘度計:ロータータイプB、回転数40rpm、試料温度25℃±1℃)を有することが好ましい。
なお、ここでいう半硬化状とは、流動しない程度に硬化されている状態に硬化しており、かつ、完全硬化時の硬度に対して、95%以下の硬度を示すものをいう。
【0020】
また、シリコーン樹脂としては、硬化性の液状シリコーン樹脂が好ましく、特に硬化性シリコーンゴムオリゴマー(熱硬化型、室温硬化型)が、剥離性、機械強度・寸法安定性の観点から好ましく用いられる。また、前記樹脂であって低分子量の液体樹脂は、十分な浸透性が望め好ましく用いられる。前記樹脂の粘度は、300〜150000mPa・sの範囲、さらには、500〜100000mPa・s(回転粘度計:ロータータイプB、回転数40rpm、試料温度25℃±1℃)の範囲程度のものが好ましい。
また、上記液状シリコーン樹脂としては、例えば、加硫反応を完結させずに、途中で加硫反応を停止させて得られ、作業性に支障を来たさない程度の保形性を有し、圧力を加えることにより、容易に変形できるような性質を有する部分加硫されたシリコーンゴムでもよく、具体的には、例えば、商品名「TSE260−7U」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社)、商品名「KE565K−U」(JIS A硬度60;信越化学工業社)等を用いることができる。なお、ここで示したJIS A硬度は、加硫完了後の硬度である。
【0021】
また、上記電離放射線硬化性樹脂としては、シリコーン系、アクリル系樹脂などの公知の透明材料が適用できる。
さらに、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを配合したものとしてもよい。
【0022】
さらに、スタンパ(C)の凹凸転写型部が加熱可能な構造の場合には、熱可塑性樹脂板やシートを適用することもできる。熱可塑性樹脂としては、フレネルレンズとして必要な透明性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが適用できる。
【0023】
(2)支持基板(B)
光学シートが、凹凸成型層(A)と支持基板(B)とが積層一体化された形態の場合には、支持基板(B)としては、光を透過させる用途の場合には透明とするが、実質的に透明であれば良く、半透明をも含むものであり、波長が380〜780nm領域の可視光の全光線透過率(JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」準拠)は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。また、支持基板(B)の材質としては、通常、フレネルレンズの材質としてよく用いられる光学ガラスやプラスチックが挙げられる。耐傷付き性の点から、光学ガラスが好ましい。光学ガラスを用いることにより、従来のレンズと全く同等の、擦過傷等を心配することのない裏側表面が得られる。
また、プラスチックの材質としては、光学レンズに用いられるポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタアクレート、PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−アクリル共重合体などを挙げることができる。
また、光を反射させる場合には、凹凸成型層(A)と積層される面が光反射性を有していれば、透明である必要はなく、上記の樹脂材料の表面に金属蒸着や金属メッキしたものや、鏡面加工された金属板などが適用できる。
また、支持基板に、拡散剤や蛍光剤、蓄光剤、特定波長の光を吸収するフィルター作用剤などの機能性材料を添加してもよい。
【0024】
支持基板(B)の厚さは、適宜選択することができるが、機械的強度を得るためには、1〜10mm、好ましくは2〜4mm程度の厚さであることが好ましい。また、可撓性(フレキシブル性)が求められる場合には、1mm未満のフィルム状ものと、すればよく、プラスチックフィルムやガラスフィルム等が適用できる。
【0025】
(3)スタンパ(C)
本発明で用いられるスタンパ(C)は、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるものであって、好ましくは、厚み方向に可撓性を有した凹凸転写型部と、前記凹凸転写型部の撓み変形に連動して加圧力を伝達する押圧伝達部とから構成される。
本発明の第1の発明の技術思想を原理として含むスタンパ(C)の第1の構成形態として、前記凹凸転写型部の凹凸転写面は、光学シートの表面凹凸パターンの反転した凹凸パターンが形成され、前記凹凸転写型部は、前記凹凸転写面の対向する1対の辺を前記凹凸転写面の裏面側で近付ける方向に湾曲した、円柱の側面のような凸状面を形成した形状であり、かつ前記凸面の曲率半径が大きくなるような形状変形に対して、板バネ様の反発復元性を有しており、被転写面に押圧されるにおいては、前記凸状曲面の頂部から初期接触し、次いで、押圧により前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触し、一方、除圧時には、前記凹凸転写部の自己復元力によって接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴としている。
また、本発明の第2の発明の技術思想を原理として含むスタンパ(C)の第2の構成形態として、前記凹凸転写型部の凹凸転写面は、光学シートの表面凹凸パターンの反転した凹凸パターンが形成され、前記凹凸転写面の対向する1対の辺を前記凹凸転写面の裏面側で近付ける方向に湾曲させて、円柱の側面のような凸状面を形成させた状態で、前記押圧伝達部に連結されており、被転写面に押圧されるにおいては、前記凸状曲面の頂部から初期接触し、次いで、押圧により前記押圧伝達部と連動しながら、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触し、除圧時には、前記押圧伝達部と連動しながら接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴としている。
さらに、第1の構成形態と第2の構成形態とを複合した構成とすることもできる。
そして、第1の構成形態および/または第2の構成形態とすることによって、押圧時の前記凹凸転写型部の撓み変形挙動により、転写時の気泡が排除され易くなり、さらに除圧時の前記凹凸転写型部の撓み復元挙動により、良好な剥離操作を実現するのである。
【0026】
第1の構成形態および第2の構成形態において、前記凹凸転写型部の凹凸転写面が有する凹凸パターンは、被転写体全面に押し当てられた状態において、規定の凹凸転写パターン(光学シートの表面凹凸パターンの逆形状)となるものであり、押圧されていない状態では、前記凹凸転写型部が前記凸状面の湾曲されることによって、規定の凹凸転写パターンに比べて広角となっており、未硬化で流動性または半硬化の被転写体が凹凸パターン内に進入しやすくなるとともに、微細な気泡を排出しやすくなる効果がある。このような凹凸転写面の挙動から、本発明のスタンパで成形する際においては、規定の凹凸パターンになる位置まで凹凸転写面を被転写面に押し当てて行う。前記光学シートの表面凹凸パターンとしては、フレネルレンズパターンや回折格子パターン、ホログラムパターンなどが適用できる。
【0027】
前記凹凸転写型部の材質は、第1の構成形態では、板バネ様の反発復元性を有するものであれば、特に限定はなく、金属や硬質樹脂などが適用できる。また、第2の構成形態では、押圧伝達部が凹凸転写型部の形状復元を制御または補助するので、凹凸転写型部の自己反発復元性は必ずしも必須ではないため、凹凸転写が可能であれば、耐熱性や凹凸パターンの耐久性などを考慮して、適宜選択できる。
【0028】
スタンパ(C)の第2の構成形態において、前記押圧伝達部は、前記凹凸転写型部の撓み変形に連動して、応力変形する応力変形体または機械的に駆動する手段を有する機械構成体であり、かつ押圧力を伝達できるものである。応力変形体の例としては、ゴムやゲルなどの弾性(または粘弾性)材料からなる軟質弾性体や、柔軟な袋状体に流動体を充填した液嚢などが適用できる。また、機械構成体としては、空圧または油圧で作動するシリンダー式アクチュエーターなどが適用できる。さらに、弾性部材や液嚢などの応力変形体と機械駆動構造とを組み合わせてもよく、その場合には、前記凹凸転写型部への追従性の観点から、応力変形体を介して前記凹凸転写型部と機械駆動構造が連結されることが好ましい。
【0029】
前記応力変形体のより具体的な例としては、天然ゴム、合成ゴムなどのゴム弾性体、シリコーンゲルやオレフィンゲル、ウレタンゲル、アクリルゲル等の粘弾性体が挙げられる。また、液嚢とする場合には、形状復元しやすいように、流動体を封入する袋状体は、ゴム弾性素材とするが、ゴム弾性体と組み合わせる場合などでは、単に柔軟性を有する袋状体とすることもできる。
前記応力変形体の圧縮反発力と硬度は、押圧時に被転写体の被転写面全体に前記凹凸転写型部を押し当てるだけの変形追従性及び押圧伝達性と、除圧時に被転写体(転写品)から撓み変形によって前記凹凸転写型部を剥離できる反発力(復元力)のバランスを考慮して適宜調整される。また、前記応力変形体は、前記凹凸転写型部の中央部と端部で硬度や反発力を異ならせてもよい。例えば、中央部を低硬度、低反発とし、端部側を中央部よりも高硬度、高反発とすることにより、被転写体への押圧ダメージを軽減しつつ、除圧時に前記凹凸転写型部を撓ませて剥離を容易とすることができる。
さらに、前記応力変形体は、押圧によって、押圧方向の略垂直方向に膨出変形するので、押圧プロセスにおいて前記膨出変形によって押圧力が緩和される作用があるので、過大な押圧力による光学シート(特にガラス基板を有する場合)の破損を防止することができる。
【0030】
前記機械構成体として、空圧または油圧で作動するシリンダー式アクチュエーターや電動式アクチュエーターを適用する場合には、これらアクチュエーター自体が押圧力を発生できるため、例えば、プレスの上加圧子に機械構成体を押圧伝達部とするスタンパ(C)を組み付けて成型する場合には、プレスの上加圧子による押圧をしないか、もしくは凹凸転写部の接触時の押圧とし、主に前記機械構成体であるアクチュエーターで順次凹凸転写部を被転写面に追従変形させながら、押圧し、一方、剥離の際には、アクチュエーターのロッドの戻りによって、端部から剥離して、最後に上加圧子を上昇させて完全に剥離させるようにして使用する。
【0031】
前記連結部分は、前記凹凸転写型部の裏面(凹凸パターン面を表面として)全体とする場合や、裏面の特定位置(例えば、両端面や中央部)のみ連結させる場合など、凹凸転写型部と押圧伝達部の構成に応じて選択できる。
具体的には、例えば、凹凸転写型部が樹脂製の薄いシート状の形態の場合のように、凹凸転写型部自体が容易に撓み変形しやすく全体に押圧力が均一に伝達しにくい場合には、裏面全体が密接するように押圧伝達部と連結し、第1の構成形態のように、凹凸転写型部が金属板のように可撓性を有しつつ、ある程度の剛性を有する場合には、両端面(必要に応じて中央部も)を押圧伝達部と連結させればよい。
【0032】
また、本発明で用いられるスタンパ(C)としては、第1の構成形態においては、例えば図2(a)、(b)のように、凹凸転写型部のみからなる場合や、図2(c)(d)のようにゴム弾性体や液嚢などからなる押圧伝達部を組み合わせた構成とすることができる。なお、図2(b)は、凹凸転写面を有する非自己復元性部と板バネ様の自己復元性部を積層した構造としたものである。また、図2(a)(b)の場合には、図6のように凹凸転写型部(610)は、加圧子(P1)に固定されず、加圧時には、加圧子の押圧面に接する凹凸転写型部の端部が前記加圧子の押圧面に接触しながら加圧子の外側に向かって移動しながら変形し、被転写面に追従して接触させて転写、硬化する(図6(a)〜(e))。次いで、図6(f)〜(h)のように加圧子の後退に伴って凹凸転写型部410が自己復元しながら光学シートから剥離される。
【0033】
また、第2の構成形態においては、例えば、図3(a)に示すように、基本的には、応力変形体からなる押圧伝達部と、凹凸転写型部とからなる。
また、上記押圧伝達部の応力変形体には、図3(b)〜(d)に示すように、第2の応力変形体を用いてもよい。さらに、押圧伝達部の応力変形体として、図3(e)(f)に示すように、柔軟な袋状体に流動体を充填した液嚢を用いてもよい。また、押圧伝達部には、図4に示すように、機械的駆動機構(メカ式)を用いてもよく、また、図4(b)(c)のようにメカ式と応力変形体を組み合わせてもよい。
なお、図3において、押圧伝達部を受圧板に接続した構造のスタンパを提示しているが、この受圧板は、スタンパ(C)をプレスの上加圧子に取付けるアダプタの役割や、押圧伝達部が柔軟な応力変形体の場合において応力変形体の形状を保持する役割、さらに、押圧伝達部が機械構造体の場合には、機械構造体を組み付けるベースの役割を持たせる場合に設置することができる。押圧伝達部がプレスの上加圧子に直接取付けられる場合には、受圧板を省略してもよい。
【0034】
また、スタンパ(C)には、電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂の硬化促進手段、例えば加熱手段またはUV照射手段などを有してもよい。
加熱手段としては、例えば、前記応力変形体に熱伝導性ゴムなどを適用したうえで、前記熱伝導性の応力変形体を介して、公知のヒーターを配置したり、前記液嚢に加熱流動媒体を充填または循環させるなどの構成としてもよい。なお、加熱する場合には、前記凹凸転写型部は、硬化温度で熱変形しない材質とし、特に、熱可塑性樹脂に転写する場合や、熱伝導性を高くする必要がある場合には、金属製とすることが好ましい。
他方、UV照射手段としては、前記凹凸転写型部または前記押圧伝達部の背面に、UV照射装置を配置する構成とする。この場合には、前記凹凸転写型部および前記押圧伝達部は、UV透過性を有する透明材料とする。また、UV照射は、前記凹凸転写型部が凸状曲面状態であるので、転写成型される被成型樹脂層に接触しない部分から照射紫外線が漏れ出るので、作業安全上の観点から、前記凹凸転写型部が被成型樹脂層全面に接触した状態以降に行うことが好ましい。
【0035】
2.光学シートの製造方法
本発明の光学シートの製造方法では、図1の光学シートの製造方法の概要1は、支持基板(B)と凹凸成型層(A)が積層させた実施形態の例であり、30がガラスなどの透明な支持基板(B)であり、5が凹凸成型層(A)であり、41がスタンパ(C)の凹凸転写型部である。
【0036】
本発明の光学シートの製造方法は、前記したように、光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンが形成された凹凸転写面を有する凹凸転写型部が、円柱の側面のような凸状面に湾曲変形された状態で前記押圧伝達部に連結されたスタンパ(C)によって、前記被成型樹脂層に前記凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、
前記第一工程の加圧転写状態を維持したまま前記加圧成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される第二工程と、
前記光学用シートを、スタンパ(C)から剥離する第三工程と、からなり、かつ、
第一工程の加圧転写成形する際には、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸転写面は、加圧転写完了の状態において、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンとなるものであって、押圧により、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触して、または、前記押圧伝達部と連動して、凹凸パターン形状となる状態まで、凹凸転写型部の初期接触部から端部側に順次変形しながら被成型樹脂層に接触して、押圧転写成形され、
また、第三工程の光学用シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とするものである。
以下、各工程について、図5を例に説明する。なお、図5は、実施形態の一例であって、この形態に限定されるものではない。
【0037】
(1)第一工程
上記の加圧成形する第一工程では、図5(a)に示すように、プレスの加圧台に直接、もしくは剥離フィルム、または凹凸成形層(A)と一体化される支持基板(B)に、未硬化の液状または半硬化状の電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を塗布又は積層してなる被成型樹脂層に、スタンパ(C)の凹凸転写面を、加圧成形によって転写する工程であって、先ず、凸曲面状の凹凸転写型部の凹凸転写面中央部の頂部を被成型樹脂層に初期接触させて(図5(b))、所定の凹凸パターン形状となる状態まで、順次凹凸転写面の端部側に撓み変形しながら被成型樹脂層に接触して加圧成形されることによって、空気または気泡が排除されながら、前記凹凸パターンが凹凸成型層(A)に押し当てられて転写形成される(図5(c)〜(d))。
なお、被成型樹脂層と接初期接触させる凹凸転写面の頂部の位置としては、単純に一方向に押圧する場合には、凹凸転写面の中央部が好ましいが、転写に支障がなければ特に限定されず、凹凸転写面の端部側を初期接触させてもよい。また、頂部が線接触で開始されることが理想であるが、転写に支障が無ければ点接触で開始されてもよい。点接触としては、凹凸転写面の辺状の頂部を、被成型樹脂面に対して、傾けて接触させる場合が想定される。
【0038】
ここで、スタンパ(C)の凹凸転写面に形成された光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンは、凹凸転写面が凸状に湾曲変形に連動して変形しているので、前記凹凸パターンとなる位置で加圧転写を完了することが重要である。
なお、被成型樹脂層は、プレスの加圧台に直接、もしくは剥離フィルム、または凹凸成形層(A)と一体化される支持基板(B)の表面に形成するが、被成型樹脂層が液状の場合には、公知の方法で所望の範囲と厚みで塗布し、被成型樹脂層が形状保持可能な程度のものであれば、基材の上に気泡または空気を巻き込まないように重ねればよく、それらの作業は、プレスの加圧台上でも行ってもよいし、予め積層したものをプレスの加圧台にセットしてもよい。
【0039】
被成型樹脂層の厚みは、スタンパ(C)の前記凹凸パターンが転写可能であれば、特に限定されず、用途に応じて適宜設定される。被成型樹脂層が液状の場合には、スタンパの初期接触部分から徐々に被転写材料を外側に押し流しながら成形されるので、塗布厚みの厳密な設定までしなくてもよい。
なお、スタンパ(C)の凹凸転写部の被転写体への初期接触は、通常、凹凸転写部の略中央部から開始させるが、これに限定されず、端部寄りの部分もしくは端部から接触させてもよい。
また、押圧力は、加圧転写完了状態において、少なくともスタンパ(C)の凹凸転写面が目的の凹凸パターンとなる状態で凹凸転写面を被成型樹脂層に転写でき、凹凸転写面の凹凸パターンや支持基板(B)が損傷しない範囲で設定される。
【0040】
さらに、上記の凹凸パターンとしては、フレネルレンズパターンや回折格子パターン、ホログラムパターンなど所望の光学特性となるパターンの逆形状パターンとすることができる。
【0041】
(2)第二工程
また、上記の第二工程は、前記第一工程の加圧転写状態を維持したまま、前記加圧成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される工程(図5(e))である。
なお、支持基板(B)に被成型樹脂層が積層されて、凹凸成型層(A)が形成される場合には、凹凸成型層(A)の形成と同時に支持基板(B)との接合がなされて、支持基板(B)と凹凸成型層(A)とが積層一体化した光学シートとなる。
【0042】
被成型樹脂層の硬化は、被成型樹脂層を構成する樹脂に応じて、電離放射線照射および/または加熱処理によって行われる。電離放射線を照射する方法または加熱処理する方法については、公知の方法により可能であり、特に限定されない。また、加熱または紫外線硬化手段は、スタンパ側および/またはプレスの加圧台側に設けてもよいし、加熱する場合には、スタンパとプレスの加圧台を含む全体を加熱してもよい。
【0043】
また、上記の支持基板(B)と前記凹凸成型層(A)との接合については、支持基板(B)と、例えば、シリコーン樹脂の硬化物である凹凸成型層(A)との接合には、プライマーを用いてもよく、第一工程において、プライマー処理した支持基板(B)面に、被成型樹脂層を積層しておけばよい。
【0044】
(3)第三工程
さらに、上記の第三工程は、図5(f)〜(h)に示すように、第二工程で形成された凹凸成型層(A)を有する光学シートもしくは支持基板(B)と凹凸成型層(A)とが積層一体化された光学シートを、該スタンパ(C)から剥離する工程であって、光学シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とするものである。
これにより、第二工程で得られた光学シートの凹凸成型層(A)の凹凸パターン形状を損傷することなく、かつ容易にスタンパ(C)を剥離することが可能となり、特に従来は剥離が困難であった剛性の大きい支持基板(B)と凹凸成型層(A)とが積層一体化された場合や、凹凸成型層(A)自体が剛性体である低可撓性の光学シートの剥離が劇的に向上させることが可能となる。
【0045】
さらに、剥離をより良好にするために、スタンパ(C)を振動させたり、剥離開始部分にエアーブローするなどの補助手段を講じてもよい。
なお、剥離する本工程においては、上記の剥離作用を発揮させるためには、成形された光学シートがプレスの加圧台に固定されている必要があるので、プレスの加圧台側から光学シートをエアーチャック等で固定するなどの固定手段が設けられる。当然ではあるが、前記固定手段は、スタンパ(C)から剥離した後に、光学シートを脱離可能とできる構造ものとする。固定手段としては、公知のエアーチャックやメカニカルな固定具が適用できるが、光学シートが変形しない程度の範囲で固定することが重要である。
さらに、少なくとも第一工程において、図1(b)のように、減圧機構VHを併用して、気泡の除去を促進させてもよい。
【0046】
さらに、本発明の実施の態様として、光学シートの凹凸成型層(A)の凹凸パターン転写形成面に、透明な保護層や機能性層を形成することもできる。前記保護層としては、表面の傷付きなどの損傷を防止したり、前記凹凸パターン転写形成面に粘着性(タック性)がある場合に、粘着性を低減させることができ、凹凸パターン転写形成面よりも、硬化後に硬質となるものが好ましい。保護層として、例えば、ガラス質コーティング層を形成することにより、擦過傷等の心配がなく、例えば、前記凹凸パターン転写形成面がフレネルレンズ形状の場合、従来の硬質材料からなるフレネルレンズと同等の耐久性等あるフレネルレンズ成型層とすることができる。
【0047】
このガラス質コーティング層として、好適なものにホーマーテクノロジー株式会社販売の「ヒートレスガラス」(HEATLESS GLASS−商品名−)がある。また、このヒートレスガラスを用いることにより、良好な作業性と比較的低温でガラス化した表面を得ることができる。
また、例えば、ペルヒドロポリシラザン(PHPS、パーヒロドポリシラザン)等の無機ポリマーも、使用することもできる。
さらに、前記凹凸パターン転写形成面が付加反応型のシリコーン材の場合には、表面の粘着性を減じる別の方法として、ハイドロジェンポリシロキサン(SiHオイル)を塗布する方法も効果的である。
【0048】
また、機能性層として、拡散層や特定の波長吸収層(フィルター層)、蛍光層などとすることができ、例えば、微細パターン条転写面に沿って積層して一体化する。前記機能性層は、ベースとなる未硬化原料に拡散材や光吸収材量、蛍光剤などを分散させた機能性組成物を、微細パターン条転写層に積層させて、硬化させて一体化する。前記の未硬化原料は、積層される微細パターン層と同じ硬化原理の材料が好ましいが、異なる硬化原理の材料を適用してもよく、機能性層に保護層の機能を付加させたい場合には、微細パターン条転写される材料よりも、硬化後に硬質となるものを適用すればよい。
【0049】
これらの保護層や機能性層を形成するにあたっては、予め、硬化もしくは半硬化の状態で形成された前記凹凸パターン転写形成面に常法のスピンコート等の均一塗布手段で塗布した後、硬化させて形成することができる。また、予め、ともに未硬化な状態で、ロールコーター等で積層したのちに、本発明のスタンパで押圧し、硬化させて多層構造の凹凸パターン転写形成面としてもよい。
【0050】
このようにして、本発明に係る光学シートは、製造される。このシンプルな生産工程は、大量生産を可能とし、コストパフォーマンスに優れている。
特に、凹凸パターンがフレネルレンズのように、微細でノコギリ状のパターンの場合であっても、成形時の気泡混入がなく、また、光学シートが低可撓性の場合には、従来の方法では、剥離が困難であったが、本発明の製造法によれば、フレネルレンズ形状であっても、そのパターンを損傷させること無く、容易にかつ安定した剥離が可能となる。
【0051】
また、図2(a)または(b)のような自己反発復元性を有する凹凸転写型部のみからなるスタンパ(C)を適用する場合には、図7に例示したように、第二工程完了後に、凹凸転写型部と光学シート(もしくは光学シートとプレスの加圧台の間に脱着可能な受圧板などがある場合には前記受圧板)とを、クランプCJ1、CJ2などの固定器具で密着させた状態(図7(d))で加圧子を後退させて、凹凸転写型部と光学シート(もしくは受圧板と共に)を積層状態でプレスから取り出し、必要に応じて追硬化処理(図7(e))した後、クランプを除去(図7(f))して、凹凸転写型部を自己反発復元させて光学シートと凹凸転写型部とを剥離させて光学シートを得る(図7(g)〜(h))ようにしてもよい。
なお、図7は、クランプを取付けやすいように受圧板44a及び44bを介して成形しているが、受圧板44a、44bを用いずに、直接凹凸転写型部410と支持基板30を固定する手段を適用してもよい。
【0052】
さらに、連続生産性を向上させるために、スタンパ(C)が円周上に複数配置された複合型のロール状スタンパとしてもよい(図8参照。)。この場合、スタンパ(C)の凹凸転写面と被成型樹脂層との押圧転写は、各スタンパ(C)の凹凸転写面の端部から中央部を経て他方の端部へと、凹凸転写面と被成型樹脂層との接触を維持しながら、順次凹凸転写面が被成型樹脂層全面に接触するよう凹凸転写型部を変形させながらロール状スタンパを回転させて凹凸転写面の形状を被成型樹脂層に転写し、この状態でロール状スタンパの回転を一旦止めた状態で硬化し、次いで、ロール状スタンパをさらに回転をさせると同時に、スタンパ(C)が復元しながら剥離するという一連の工程を、円周上に配置された複数のスタンパ(C)で順番に行わせることによって、より生産性を向上させることができる。
この方法は、前記特許文献3の原理に似ているが、特許文献3は、スタンパが変形しないため、成形部分が線状に限られており、UV硬化させる場合の調整が困難であるが、本方法では、面で成形するため、UV等で硬化させる際の調整が容易である。従来から行われているロール型での成形の場合も、ロールが変形しないので、被転写物をシートやフィルムといった基材に保持させて、ロールに追従させて面で転写成形することが行われているところ、基板がガラス板等の撓みにくい剛体の場合には、適用できないが、本方法であれば、低可撓性の光学シートの場合においても、ロール型のスタンパ方式で連続生産できる。
【0053】
3.光学シート及びその用途
本発明の光学シートは、耐熱性、耐久性を有し、光学性能に優れるという作用効果を発揮するので、例えば、凹凸パターンをフレネルレンズパターンとしたフレネルレンズシートにおいては、特に、使用環境が厳しく耐久性が要求される集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置に適用できる。
また、集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置に適用することにより、集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置は、長期間にわたり発電効率や照明効率を維持させるという作用効果を発揮する。
【0054】
本発明に係る光学シートであるフレネルレンズシートは、上記の作用効果を奏するために、集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置ばかりでなく、白熱灯などを光源とする照明装置、光学素子又は光学素子を用いた画像表示装置、透過型スクリ−ン用レンズ、背面投射型スクリーン、背面投写型画像ディスプレイ装置などに利用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
(スタンパの作製:スタンパA)
受圧板として、市販の縦200mm×横200mm×厚さ5mmのアルミ板と、凹凸転写型部として、市販のアクリル樹脂製のフレネルレンズシート(縦200mm×横200mm×厚み0.7mmで幅0.5mmピッチ、中心から外周にかけて高さ10〜300μmのノコギリ状の同心円状フレネルレンズ形状(凹タイプ))と、押圧伝達部として、シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製、二液付加反応性加熱硬化型CF5055)とを、図10のように型成形によって、プライマーを介して連結してスタンパを得た。なお、凹凸転写部は、曲率80mmで湾曲させた。
【0057】
(第一工程および第二工程:凹凸成型層(A)の形成と支持基板(B)との接合)
凹凸成型層(A)の元となる被成型樹脂層の材料として、液状シリコーン樹脂;信越シリコーン(株)製「KE1935」(粘度:8000mPa・s JIS A硬度:55)を、さらに、透明な支持基板(B)として、強化ガラス板(無色透明:日本板硝子社製):200×200×4mm厚のものを用いた。
【0058】
先ず、ヒートプレスの上加圧子にスタンパAを取付け、一方、ヒートプレスの加圧台には、上記の支持基板である強化ガラス板を置き、真空チャックして固定し、次に、その強化ガラス板に、液状シリコーン樹脂を0.3mm厚で塗布し、ヒートプレスの下準備を行った。
次に、ヒートプレスとして、ヒートプレス機の上加圧子と加圧台の温度をそれぞれ70℃にし、プレス速度1m/min、プレス圧力100kgfで20分プレスを行った。
このようにして、熱硬化することにより、フレネルレンズパターンを有する凹凸成型層(A)を形成させ、同時に、凹凸成型層(A)に支持基板(B)を接合させる第二工程を行った。
【0059】
(第三工程:樹脂成形型を取り除く工程)
続いて、上加圧子を1m/minの速度で退行させて、スタンパの形状を復元させながら、形成した凹凸成型層からスタンパAを剥離させたのち、真空チャックを解除して加圧台から支持基板と一体化した光学シートを取り外し、次いで、オーブンで100℃、3時間アフターキュアして凹凸成型層(A)を完全硬化して、フレネルレンズパターンを有したガラス基板一体型のフレネルレンズシート(a)を得た。
【0060】
[実施例2]
実施例1において、支持基板を、強化ガラスに代えてPETフィルム(ユニチカ社製 200×200×0.1mm)とした以外は、実施例1と同様にして、PETフィルム一体型のフレネルレンズシート(b)を得た。
【0061】
[実施例3]
実施例1において、スタンパAの凹凸転写型部をフレネルレンズシートに代えて、市販のレンチキュラーレンズシート(日本特殊光学樹脂社製 LL0.3(200×200×2mm厚))の凹凸パターンを有する金型で透明な塩化ビニル樹脂シート(タキロン(株)製「プレスプレート TS−608A」(厚さ1mm品))に型転写して、形成した反転レンチキュラーレンズシートとしたスタンパBを用いた以外は、実施例1と同様にして、ガラス一体型のレンチキュラーレンズシートを得た。
【0062】
[実施例4]
実施例1において、スタンパの凹凸転写型部をフレネルレンズシートに代えて、市販のプリズムシート(日本特殊光学樹脂社製 LP40−0.3)の凹凸パターンを有する金型で透明な塩化ビニル樹脂シート(タキロン(株)製「プレスプレート TS−608A」(厚さ1mm品))に型転写して、形成した反転プリズムシートとしたスタンパCを用いた以外は、実施例1と同様にして、ガラス一体型のプリズムシートを得た。
【0063】
[実施例5]
実施例1において、スタンパの凹凸転写型部をアクリル製のフレネルレンズシートに代えて、実施例1のフレネルレンズシートと押圧伝達部であるシリコーンゲルの間にステンレス製ばね材(SUS304−CSP)からなる曲率80mm、厚み0.5mmの板バネシート配置したスタンパDとし、押圧伝達部として、シリコーンゲル(東レ・ダウ社製 二液付加反応性加熱硬化型CF5055)と12重量%と、アルミナ(マイクロン社製AH50−5)88重量%を分散させた熱伝導性ゲルとし、さらに、プレス時間を15minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、PETフィルム一体型のフレネルレンズシート(c)を得た。
【0064】
[実施例6]
実施例1のスタンパAにおいて、図11のように押圧伝達部として、エアシリンダー71、72(コガネイ社製 TBDA10×50)を、回動可能な連結構造を有するアクリル製の接続部品AP2を介して凹凸転写部41となる100×100×0.7mm厚のフレネルレンズシートに取付けた構造としたスタンパDを用い、凹凸転写型部の凹凸転写面の頂部が被転写樹脂層に接触したところで加圧子を止め、加圧子の位置を維持した状態で、エアシリンダー71,72を作動させて凹凸転写部の凹凸転写面全面を被転写樹脂層に接触させて転写させた。
次いで、実施例1と同じ硬化条件で硬化させて凹凸成型層を形成した後、エアシリンダー71、72を元の位置に退行させて、凹凸成型層の端部から中央部に向かって凹凸転写型部を剥離して、ガラス基板一体型のフレネルレンズシート(d)を得た。なお、エアシリンダー71、72は、回動可能な連結構造を有するステンレス製の取付け部品を介して受圧板430に接続されている。
【0065】
[実施例7]
実施例1で得られたフレネルレンズシート(a)の凹凸成型層に、さらに、「ポリシラザン」を用いてガラス質コーティングを施して、厚み約1μmのガラスコーティング層を形成させて、フレネルレンズシート(f)を得た。
【0066】
上記実施例1〜7で得られたフレネルレンズシート(a)〜(f)、レンチキュラーレンズシート及びプリズムシートの凹凸成型層は、何れも凹凸成型層に破損や気泡の混入がない良好な凹凸表面であった。
【0067】
また、上記のフレネルレンズシート(f)を用いて、太陽電池装置に適用したところ、集光し良好な発電効率が得られた。また、LED光源照明装置に適用したところ、平行光線を発し良好な照明効率が得られた。この結果から、本発明のフレネルレンズは、太陽電池装置やLED光源照明装置に好適に用いることができることが判った。
また、実施例3及び4で得られたレンチキュラーレンズシート及びプリズムシートも、基型である市販のレンチキュラーレンズシート及びプリズムシートの凹凸形状を忠実に再現していた。
また、実施例5のように、凹凸転写部に金属製の板バネと押圧伝達部に熱伝導性の弾性体とで構成したスタンパを用いることにより、上加圧子からの熱伝達効率が向上し、熱プレス時間を短縮することが可能であった。
さらに、実施例1〜6のように、押圧伝達部は、弾性変形体のみならず機械構成体としても、本発明の作用が実現できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光学シートの製造方法から得られた光学シートは、耐熱性、耐久性を有しかつ優れた光学性能を有するという作用効果を奏するので、例えば、凹凸パターンをフレネルレンズパターンとした場合、各種フレネルレンズの用途はもとより、使用環境が厳しく耐久性が要求される集光式太陽電池装置や発光ダイオード(LED)光源照明装置ばかりでなく、白熱灯などを光源とする照明装置、光学素子又は光学素子を用いた画像表示装置、透過型スクリ−ン用レンズ、背面投射型スクリーン、背面投写型画像ディスプレイ装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 光学シート(フレネルレンズシート)
2 凹凸成型層(A)
2a 凹凸パターン転写成形面(フレネルレンズ形状)
3、30 支持基板(B)
4 スタンパ(C)
4a、4b、4c 押圧伝達部が機械式のスタンパ(C)
41 凹凸転写型部
410 自己復元性を有する凹凸転写型部
42 押圧伝達部(軟質弾性体)
42a、420a 第一の軟質弾性体
42b、420b 第一の軟質弾性体とは異なる第二の軟質弾性体
43、430、44a、44b 受圧板
5 被成型樹脂層
60、61 液嚢
71、72 機械式の押圧伝達部
80、81、82 硬化手段
AP1、AP2 取付け部品
CJ1、CJ2 クランプ治具
J1、J2、J3、J4 回動連結部
P1 上側加圧子
P2 下側加圧子(加圧台)
R ロール型スタンパ芯部品
SP 移動式加圧台
VH 減圧ユニット
VP 真空ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸を有する光学用シートの作製に用いられ、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるスタンパであって、
該凹凸転写型部の凹凸転写面には、光学用シートの表面凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成され、凹凸転写面が円柱の側面様の凸状曲面を形成した状態であって、被転写面に接触して押圧される際には、該凸状曲面の頂部から被転写面に初期接触し、次いで、押圧により、該初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して凹凸転写面が該反転凹凸パターン形状と成り得る状態で接触でき、また、被転写面から除圧される際には、凹凸転写型部の自己復元力により、接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴とするスタンパ。
【請求項2】
表面に凹凸を有する光学用シートの作製に用いられ、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部と、該凹凸転写型部の撓み変形に連動して加圧力を伝達する押圧伝達部とを具備してなるスタンパであって、
該凹凸転写型部の凹凸転写面には、光学用シートの表面凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成され、凹凸転写面が円柱の側面様の凸状曲面を形成した状態で、該凸状曲面の裏面部と該押圧伝達部とが連結され、被転写面に接触して押圧される際には、該凸状曲面の頂部から被転写面に初期接触し、次いで、押圧により、該押圧伝達部と連動しながら、該初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して凹凸転写面が該反転凹凸パターン形状と成り得る状態で接触でき、また、被転写面から除圧される際には、該押圧伝達部と連動しながら、接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴とするスタンパ。
【請求項3】
前記押圧伝達部が軟質弾性体からなることを特徴とする請求項2に記載のスタンパ。
【請求項4】
電離放射線硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂からなる被成型樹脂層を、請求項1〜3のいずれか記載のスタンパ(C)を用いて成形してなる凹凸成型層(A)を少なくとも有する光学用シートの製造方法であって、
光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンが形成された凹凸転写面を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるスタンパ(C)によって、被成型樹脂層に該凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、
加圧転写成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写面の形状が転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される第二工程と、
光学用シートを、スタンパ(C)から剥離する第三工程と、からなり、かつ、
第一工程の加圧転写成形する際には、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸転写面は、加圧転写完了の状態において、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンとなるものであって、押圧により、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触して、または、前記押圧伝達部と連動して、凹凸パターン形状となる状態まで、凹凸転写型部の初期接触部から端部側に順次変形しながら被成型樹脂層に接触して、押圧転写成形され、
また、第三工程の光学用シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とする光学用シートの製造方法。
【請求項5】
前記第一工程において、前記被成型樹脂層は、支持基板(B)に積層されて、スタンパ(C)で加圧転写成形され、及び
前記第二工程において、硬化時の加圧状態におけるスタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)が形成されると共に、支持基板(B)と凹凸成型層(A)とを接着させて、支持基板(B)と凹凸成形層(A)との積層体を形成することを特徴とする請求項4に記載の光学シートの製造方法。
【請求項6】
支持基板(B)の材質は、光学ガラスであることを特徴とする請求項5に記載の光学用シートの製造方法。
【請求項7】
第一工程の加圧転写成形する際に、スタンパ(C)の中央部から被成型樹脂層に接触して加圧転写成形されることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の光学用シートの製造方法。
【請求項8】
凹凸成型層(A)は、付加硬化型シリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の光学用シートの製造方法。
【請求項9】
凹凸成型層(A)の凹凸パターン形状は、フレネルレンズパターンであることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の光学用シートの製造方法。
【請求項10】
請求項9の光学用シートの製造方法で作製されたフレネルレンズシートを用いてなることを特徴とする集光式太陽電池装置。
【請求項1】
表面に凹凸を有する光学用シートの作製に用いられ、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるスタンパであって、
該凹凸転写型部の凹凸転写面には、光学用シートの表面凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成され、凹凸転写面が円柱の側面様の凸状曲面を形成した状態であって、被転写面に接触して押圧される際には、該凸状曲面の頂部から被転写面に初期接触し、次いで、押圧により、該初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して凹凸転写面が該反転凹凸パターン形状と成り得る状態で接触でき、また、被転写面から除圧される際には、凹凸転写型部の自己復元力により、接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴とするスタンパ。
【請求項2】
表面に凹凸を有する光学用シートの作製に用いられ、厚み方向に可撓性を有する凹凸転写型部と、該凹凸転写型部の撓み変形に連動して加圧力を伝達する押圧伝達部とを具備してなるスタンパであって、
該凹凸転写型部の凹凸転写面には、光学用シートの表面凹凸パターンの反転凹凸パターンが形成され、凹凸転写面が円柱の側面様の凸状曲面を形成した状態で、該凸状曲面の裏面部と該押圧伝達部とが連結され、被転写面に接触して押圧される際には、該凸状曲面の頂部から被転写面に初期接触し、次いで、押圧により、該押圧伝達部と連動しながら、該初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して凹凸転写面が該反転凹凸パターン形状と成り得る状態で接触でき、また、被転写面から除圧される際には、該押圧伝達部と連動しながら、接触端部側から徐々に加圧前の凸状態に凹凸転写型部が復元することを特徴とするスタンパ。
【請求項3】
前記押圧伝達部が軟質弾性体からなることを特徴とする請求項2に記載のスタンパ。
【請求項4】
電離放射線硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂からなる被成型樹脂層を、請求項1〜3のいずれか記載のスタンパ(C)を用いて成形してなる凹凸成型層(A)を少なくとも有する光学用シートの製造方法であって、
光学用シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンが形成された凹凸転写面を有する凹凸転写型部を少なくとも具備してなるスタンパ(C)によって、被成型樹脂層に該凹凸転写面の形状を、加圧転写成形する第一工程と、
加圧転写成形された被成型樹脂層を硬化させて、スタンパ(C)の凹凸転写面の形状が転写された凹凸成型層(A)を有する光学シートが形成される第二工程と、
光学用シートを、スタンパ(C)から剥離する第三工程と、からなり、かつ、
第一工程の加圧転写成形する際には、スタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸転写面は、加圧転写完了の状態において、光学シートの表面凹凸パターンの逆形状である凹凸パターンとなるものであって、押圧により、前記初期接触部から順次端部側に撓み変形しながら被転写面に追従して接触して、または、前記押圧伝達部と連動して、凹凸パターン形状となる状態まで、凹凸転写型部の初期接触部から端部側に順次変形しながら被成型樹脂層に接触して、押圧転写成形され、
また、第三工程の光学用シートがスタンパ(C)から剥離する際に、スタンパ(C)の凹凸転写型部の自己復元力により、または、スタンパ(C)の押圧伝達部と連動しながら凹凸転写型部の形状を加圧前の凸状態に復元させながら、光学用シートの両端部から剥離が開始し、中央部側に向けて剥離することを特徴とする光学用シートの製造方法。
【請求項5】
前記第一工程において、前記被成型樹脂層は、支持基板(B)に積層されて、スタンパ(C)で加圧転写成形され、及び
前記第二工程において、硬化時の加圧状態におけるスタンパ(C)の凹凸転写型部の凹凸パターンが転写された凹凸成型層(A)が形成されると共に、支持基板(B)と凹凸成型層(A)とを接着させて、支持基板(B)と凹凸成形層(A)との積層体を形成することを特徴とする請求項4に記載の光学シートの製造方法。
【請求項6】
支持基板(B)の材質は、光学ガラスであることを特徴とする請求項5に記載の光学用シートの製造方法。
【請求項7】
第一工程の加圧転写成形する際に、スタンパ(C)の中央部から被成型樹脂層に接触して加圧転写成形されることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の光学用シートの製造方法。
【請求項8】
凹凸成型層(A)は、付加硬化型シリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の光学用シートの製造方法。
【請求項9】
凹凸成型層(A)の凹凸パターン形状は、フレネルレンズパターンであることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の光学用シートの製造方法。
【請求項10】
請求項9の光学用シートの製造方法で作製されたフレネルレンズシートを用いてなることを特徴とする集光式太陽電池装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−230272(P2012−230272A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98893(P2011−98893)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】
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