説明

スタンプ基体

【課題】簡易な構造で、印面となる光硬化樹脂を適正に硬化させるための露光状態が判別できるスタンプ基体を提供する。
【解決手段】本発明のスタンプ基体1は、紫外線により硬化する紫外線硬化樹脂11から成る印面形成部2と、印面形成部2を保持する印面保持部3と、を備え、印面保持部3に、光の強度を測定する光強度測定部5と、光強度測定部5の測定結果および光硬化樹脂の硬化状況を整合させる露光指標部6と、を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印面形成部が光硬化樹脂から成るスタンプ基体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスタンプ作成キット(スタンプ基体)として、印面となる光硬化樹脂シート(光硬化樹脂)を、自然光に含まれる紫外線により、マスクを介して部分的に硬化させ、スタンプを作成するものが知られている(特許文献1参照)。
このスタンプ作成キットは、透過性素材で構成されたベースフィルムと、ベースフィルム上の一方の半部に設けられ、紫外線硬化性の光硬化樹脂シートと、ベースフィルム上の他方の半部に設けられ、印影画像が形成されたマスクパターンと、を備えている。
この場合、ベースフィルムを折り曲げて、光硬化樹脂シートおよびマスクパターンを積層させ、マスクパターン側から活性光としての自然光に含まれる紫外線を所定時間露光することで、光硬化樹脂シートにおけるマスクパターンの印影画像に対応する部分を硬化させる。そして、未硬化部分の光硬化樹脂シートを洗い流すことで、印影画像に対応する印面を形成したスタンプを作成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−174804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなスタンプ作成キットでは、スタンプを作成する場所や天候により、紫外線の強度が変動するため、光硬化樹脂シートが適正に硬化されている露光状態を把握することができないという問題があった。一方、光硬化樹脂シートを適正に硬化させるために、一定の紫外線を照射する専用の露光装置を用いても良いが、キットが複雑、且つ高価になってしまう。
【0005】
本発明は、このような課題の少なくとも一部を解決するために、簡易な構造で、印面となる光硬化樹脂を適正に硬化させるための露光状態を判別できるスタンプ基体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスタンプ基体は、光により硬化する光硬化樹脂から成る印面形成部と、印面形成部を保持する印面保持部と、を備え、印面保持部に、光の強度を測定する光強度測定部と、光強度測定部の測定結果および光硬化樹脂の硬化状況を整合させる露光指標部と、を設けたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、光強度測定部によって、光硬化樹脂を硬化させる光の強度を測定し、その測定結果を露光指標部により整合させることで、紫外線硬化樹脂の硬化状況(例えば、硬化状況とは、紫外線硬化樹脂を硬化させるための露光時間である。)を認識することができる。すなわち、スタンプ基体が、光に応じ、印面となる光硬化樹脂を適正に硬化させるための露光時間を示すことにより、ユーザーは、印面形成部を光強度に応じた時間だけ露光させることで、印面を適正に作成することができる。また、特別な装置を必要としないため、簡単に、且つ安価にスタンプを作成することができる。なお、光としては、自然光を用いることが好ましい。
【0008】
この場合、光強度測定部は、光の強度に応じて変色する光感応材を有し、露光指標部は、光感応材の変色状態を表した色彩表示部を有していることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、光強度測定部を光感応材で構成することにより、光強度測定部を極めて簡単な構成とすることができ、且つ光の強度を色彩の変化で認識することができる。
【0010】
この場合、露光指標部は、色彩表示に対応させた露光時間を表示した時間表示部をさらに有していることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、時間表示部において、光感応材の色彩に対応する色彩から露光時間を簡単に読み取ることができ、光強度に応じた露光時間を簡単に知ることができる。
【0012】
この場合、光感応材は、印面保持部に塗着されていることが、好ましい。
同様に、光感応材はシート状に形成され、印面保持部に接着されていることが、好ましい。
【0013】
これらの構成によれば、印面保持部の材質や表面状態に応じて、光感応材を簡単、且つ適切に設けることができる。
【0014】
この場合、光強度測定部の受光面および印面形成部の露光面が、同一方向に向くように配設されていることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、光強度測定部および印面形成部は、等しく光(紫外線)を受光するため、光強度測定部により、印面形成部が受光する光(紫外線)の強度を正確に測定することができ、スタンプの完成精度を向上させることができる。
【0016】
この場合、印影画像が形成されたマスクを印面形成部に押し付けると共に、光を透過可能な押え部材を、更に備え、押え部材が、印面形成部を保護する保護キャップを兼ねていることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、マスクが、光硬化樹脂に対して浮いたり位置ズレしたりすることがないため、印面形成部の印影画像に対応する部分を精度よく硬化させることができ、スタンプの完成精度を向上させることができる。また、部品点数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】スタンプ基体の外観斜視図である。
【図2】スタンプの作成方法を説明するための説明図(1)である。
【図3】スタンプの作成方法を説明するための説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係るスタンプ基体について説明する。このスタンプ基体は、自然光などに含まれる紫外線(光)により、印面となる紫外線硬化樹脂(光硬化性樹脂)を適正に硬化させ、所望のスタンプを作成するものである。
【0020】
図1に示すように、スタンプ基体1は、紫外線硬化樹脂11を有する印面形成部2と、印面形成部2を保持する印面保持部3と、印影画像25が形成された後述するマスク7を印面形成部2に押し付ける押え部材4と、を備えている。スタンプ基体1は、印面保持部3に保持された印面形成部2に対して、押え部材4によりマスク7を押し付けて紫外線(自然光)を受けることにより露光し、紫外線硬化樹脂11の印影画像25に相当する部分を硬化させ、未硬化の紫外線硬化樹脂11を洗い流すことで、所望の印面15を有するスタンプ8(図3参照)が作成される。
【0021】
印面形成部2は、紫外線により硬化する紫外線硬化樹脂11と、紫外線の影響を受けない硬質の樹脂板12と、薄手のスポンジ(発泡ウレタン)13と、を順に積層接着して構成されている。露光面14を構成する紫外線硬化樹脂11は、マスク7を介して紫外線を受けることにより硬化し、最終的に印面15となる(図3参照)。なお、図1の印面形成部2は、長方形に形成されているが、正方形や、円形等のいずれの形状であってもよい。また、印面形成部2は、印面保持部3に対し着脱自在に構成されていてもよい(共に図示省略)。
【0022】
印面保持部3は、スタンプ台木に相当する部分であり、角部を面取りした直方体形状に形成されている。印面保持部3の一方の端面には、印面形成部2と同形の突出部16が形成され、この突出部16に印面形成部2が接着されている。また、突出部16との間で段部を構成する印面保持部3の端面周縁部17には、紫外線の強度を測定する光強度測定部5が設けられている。さらに、把持面となる印面保持部3の一方の周側面には、光強度測定部5の測定結果(紫外線強度)と印面形成部2の硬化状況(露光時間)とを整合させるための露光指標部6が設けられている。
【0023】
光強度測定部5は、紫外線の強度に応じて変色するフォトクロミック化合物等の光感応材で構成され、端面周縁部17の一方の長辺部位に塗着するようにして設けられている。したがって、紫外線硬化樹脂11の露光面14と光強度測定部5の受光面18とは、同じ方向を向くように、すなわち平行に配設されている。これにより、光強度測定部5および紫外線硬化樹脂11には、同一条件で紫外線が受光され、紫外線硬化樹脂11に露光する紫外線強度を正確に測定可能となっている。
【0024】
フォトクロミック化合物は、紫外線を受光することにより、可視領域における吸収スペクトルが変化することを利用し、例えば色彩の濃淡等により紫外線強度を可視的に測定(概算)する。すなわち、光強度測定部5は、フォトクロミック化合物が受光した紫外線の強度の強弱により、その色彩が可逆的に変化することを利用して紫外線強度を測定する。また、光感応材は、端面周縁部17に貼着されるシート状のものであってもよい(図示省略)。
【0025】
露光指標部6は、光強度測定部5により測定した紫外線強度で、印面形成部2を露光した場合、紫外線硬化樹脂11の適正な硬化状況を知るためのものであり、光強度測定部5に対応する印面保持部3の一方の周側面に設けられている。露光指標部6は、光感応材の変色状態を表した色彩表示部21および色彩表示に対応させた露光時間を表示する時間表示部23と、から構成されている。なお、露光指標部6は、色彩表示部21および時間表示部23の組み合わせではなく、適正な硬化状況を判別することができれば色彩表示部21のみでも良い。
【0026】
色彩表示部21は、光感応材の色彩(以下、単に「対象色彩」と言う。)と同系色の色彩を複数段階に変化させて、且つ色彩領域を区切って表示している。時間表示部23は、色彩表示部21に対応する露光時間を、それぞれ数字で、且つ色彩領域内に表示している。この場合、対象色彩および複数の色彩を比較して、対象色彩と略同一の色彩に対応して表示された時間が、測定した紫外線強度に対する露光時間となる。ユーザーは、色彩表示部21および時間表示部23を確認し、紫外線硬化樹脂11に露光時間分、紫外線を当てることにより、紫外線硬化樹脂11を適正に硬化させ得るようになっている。なお、本実施形態の色彩表示部21および時間表示部23では、色彩の変化状態を3段階に分け、時間表示も1分、5分および10分の3段階を表示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、複数段階の色彩をグラデーション表示し、そのグラデーション表示に合わせて露光時間を目盛り表示するようにしてもよい(図示省略)。
【0027】
マスク7は、紫外線透過性の素材で、紫外線硬化樹脂11と同様の外形に形成されたフィルム状のマスクシート24に、印影画像25を残すように紫外線非透過性塗料を塗布して、構成されている。マスク7を押え付けた状態で印面形成部2に紫外線を当てて露光すると、印影画像25の画線部分から紫外線が透過する。これにより、紫外線硬化樹脂11は、印影画像25に対応する部分が硬化する。この場合、印面15は、凸型となるが印影画像25を紫外線非透過性塗料で描くことで、凹型とすることも可能である(図示省略)。
【0028】
なお、マスク7としてインクリボンを用いるようにしてもよい。この場合、マスク7は、粘着シールに対して印影画像25を、インクリボンを介して熱転写により印刷し、ネガ画像が形成されたインクリボンを用いる。一方、陽画像が形成された粘着シールを、印面保持部3の端面(突出部16とは逆側の端面)に貼着してラベルとする。また、マスク7は、カッティングプロッタにより、シート(テープ)から印影画像25を切抜いて作成することも可能である(共に図示省略)。
【0029】
押え部材4は、印面形成部2の保護キャップを兼ねており、印面保持部3に対して着脱自在に、厳密には印面保持部3の突出部16に対して着脱自在に構成されている。押え部材4は、紫外線透過性の素材、例えば透明な樹脂で構成され、突出部16に装着した状態で印面形成部2を覆うように箱形に形成されている。押え部材4の内壁は、突出部16に嵌合する大きさを有し、且つ突出部16に装着したときに、天壁がマスク7を印面形成部2に押し付けるように形成されている。マスク7を紫外線硬化樹脂11に載せ、押え部材4を装着すると、マスク7が紫外線硬化樹脂11に密着し且つ位置決め状態となる。
【0030】
さらに、押え部材4の光強度測定部5に面する側壁部分には、光強度測定部5を露出させる切欠き部26が形成されている。これにより、光強度測定部5は、紫外線を直接受光し、紫外線強度を正確に測定する。なお、押え部材4の内側に紫外線非透過性のフィルムを引き剥がし可能に設け、マスク7がセットされるまで、紫外線硬化樹脂11を紫外線から保護することが好ましい(図示省略)。
【0031】
次に、図2および図3を参照して、スタンプ8の作成方法について説明する。まず、作成したマスク7を紫外線硬化樹脂11に位置決めした後(図2(a)および(b))、押え部材4を印面保持部3に装着する。これにより、マスク7を印面形成部2(紫外線硬化樹脂11)に押し付け、密着させた状態とする(図2(c))。次に、このスタンプ基体1を自然光(太陽光)に当てて、露光を開始する。スタンプ基体1の露光を開始したら、光強度測定部5(光感応材)の変色状態をチェックし、変色状態が安定したところで、露光指標部6から適正な露光時間を読み取る。そして、スタンプ基体1の姿勢を維持したまま印面形成部2の露光を継続して硬化状況を判別する(図2(c))。これにより、マスク7を介して、紫外線硬化樹脂11におけるマスク7の印影画像25が露光され適正に硬化する。その後、保護キャップを外してマスク7を取り除き(図3(a))、別途、洗浄パン27に張った洗浄液(水道水等)に、印面形成部2をさらし、未硬化の紫外線硬化樹脂11部分を、ブラシ等を用いて洗い流す(図3(b))。これより、所望の印影画像25を有するスタンプ8が作成される(図3(c))。
【0032】
以上の構成によれば、スタンプ基体1に設けた光強度測定部5および露光指標部6により、ユーザーは、印面形成部2の硬化状況(露光時間)を容易に知ることができる。特に、硬化状況を左右する紫外線量は、天候や季節により大きく変化するため、光強度測定部5および露光指標部6は、極めて有用に機能することになる。
【符号の説明】
【0033】
1…スタンプ基体 2…印面形成部 3…印面保持部 4…押え部材 5…光強度測定部 6…露光指標部 11…紫外線硬化樹脂 14…露光面 18…受光面 21…色彩表示部位 23…時間表示部 25…印影画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光により硬化する光硬化樹脂から成る印面形成部と、
前記印面形成部を保持する印面保持部と、を備え、
前記印面保持部に、前記光の強度を測定する光強度測定部と、
前記光強度測定部の測定結果および前記光硬化樹脂の硬化状況を整合させる露光指標部と、を設けたことを特徴とするスタンプ基体。
【請求項2】
前記光強度測定部は、前記光の強度に応じて変色する光感応材を有し、
前記露光指標部は、前記光感応材の変色状態を表した色彩表示部を有していることを特徴とする請求項1に記載のスタンプ基体。
【請求項3】
前記露光指標部は、前記色彩表示に対応させた露光時間を表示した時間表示部を、さらに有していることを特徴とする請求項2に記載のスタンプ基体。
【請求項4】
前記光感応材は、前記印面保持部に塗着されていることを特徴とする請求項2または3に記載のスタンプ基体。
【請求項5】
前記光感応材はシート状に形成され、前記印面保持部に接着されていることを特徴とする請求項2または3に記載のスタンプ基体。
【請求項6】
前記光強度測定部の受光面および前記印面形成部の露光面が、同一方向に向くように配設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のスタンプ基体。
【請求項7】
印影画像が形成されたマスクを前記印面形成部に押し付けると共に、光を透過可能な押え部材を、更に備え、
前記押え部材が、前記印面形成部を保護する保護キャップを兼ねていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のスタンプ基体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−37090(P2011−37090A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185454(P2009−185454)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】