説明

スターリングエンジンの熱交換器

【課題】複数の配管からなる高密度な配管群を備えることを可能にし、以って熱交換性能を高めることが可能な、また配管同士の接触による騒音や摩耗の発生を防止或いは抑制可能なスターリングエンジンの熱交換器を提供する。
【解決手段】加熱器は、2気筒α型のスターリングエンジンが備える直列平行に配置された2つの気筒間で、スターリングエンジンの作動流体を流通させる複数の伝熱管71Aからなる伝熱管群70Aを備えている。伝熱管群70Aは、立ち上がり部G1と、立ち下がり部G2と、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを裏返すようにして結ぶ折り返し部G3とを備えている。加熱器47Aは、折り返し部G3において複数の伝熱管71Aを固定する固定板72を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスターリングエンジンの熱交換器に関し、特に2気筒α型のスターリングエンジンが備える2つの気筒間で該スターリングエンジンの動作流体を流通させる複数の配管からなる配管群を備えたスターリングエンジンの熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車やバス、トラック等の車両に搭載される内燃機関の排熱や工場排熱を回収するために、理論熱効率に優れたスターリングエンジンが注目されてきている。スターリングエンジンは高い熱効率が期待できる上に、作動流体を外から加熱する外燃機関であるために、熱源を問わず、ソーラー、地熱、排熱といった各種の低温度差代替エネルギーを活用でき、省エネルギーに役立つという利点がある。スターリングエンジンの熱交換器に関し、複数の配管を備えた熱交換器に関する技術である点で、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1で開示されている。またこのほか、熱交換性能に関する技術として本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−108358号公報
【特許文献2】特開2009−7778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2つの気筒が直列平行に配置された2気筒α型のスターリングエンジンにおいて、多管式熱交換器(shell and tube exchanger, tubular exchanger)を用いて2つの気筒間で作動流体を流通させるにあたっては、例えば熱交換器の形状を概ねU字形の形状とすることが考えられる。この点、かかる形状は2つの気筒が直列平行に配置された2気筒α型のスターリングエンジンの構成に照らしても構造上、合理的であると考えられる。しかしながら、概ねU字形の形状を有する熱交換器の場合には、内側に位置する配管のほうが外側に位置する配管よりも配管長が短くなり、流通抵抗が小さくなる。このためこの場合には、内側に位置する配管のほうが外側に位置する配管よりも作動流体の流量が大きくなる。またこの場合には、内側に位置する配管を流通する作動流体のほうが、外側に位置する配管を流通する作動流体よりも熱交換時間が短くなる。すなわちこの場合には、このようにして内側に位置する配管を流通する作動流体の作用が相対的に大きくなることで、スターリングエンジンの熱効率が低下するという問題がある。
【0005】
これに対して、例えば特許文献1が開示する技術は、かかる問題を解決できると考えられる。しかしながら、特許文献1の開示技術では、例えば当該特許文献1の実施例1で具体的に開示されている構造など、適用する構造次第では、管同士の干渉が問題となることから熱交換器により多くの管を設けることが困難となり、この結果、より高い熱交換性能を得ることが困難になる場合があると考えられる。このため、2つの気筒が直列平行に配置された2気筒α型のスターリングエンジンについては、上述した熱効率の低下を招くことなく、複数の配管からなる配管群を高密度に備えることが可能な熱交換器が望まれる。また、この場合には例えばスターリングエンジンを車両に搭載した場合に、配管同士が振動により接触する結果、騒音や摩耗の発生が懸念されることから、かかる騒音や摩耗の発生を防止或いは抑制できることが望まれる。
【0006】
そこで本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の配管からなる高密度な配管群を備えることを可能にし、以って熱交換性能を高めることが可能な、また配管同士の接触による騒音や摩耗の発生を防止或いは抑制可能なスターリングエンジンの熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は2気筒α型のスターリングエンジンが備える直列平行に配置された2つの気筒間で、前記スターリングエンジンの作動流体を流通させる複数の配管からなる配管群を備え、前記配管群が、該配管群の一端を始点として延伸していると見た場合に、立ち上がるように延伸する立ち上がり部と、立ち下がるように延伸する立ち下がり部と、前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とを裏返すようにして結ぶ接続部とを備え、前記接続部において、前記複数の配管を固定する固定部材を備えたスターリングエンジンの熱交換器である。
【0008】
また本発明は前記配管群が、前記接続部を複数備え、前記接続部のうち、一端を始点として延伸していると見た場合に、前記立ち上がり部に対して前記立ち下がり部を裏返すようにして、前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とを結ぶ接続部、または前記接続部のうち、一端を始点として延伸していると見た場合に、前記立ち下がり部に対して前記立ち上がり部を裏返すようにして、前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とを結ぶ接続部の少なくともいずれかの接続部において、前記固定部材が前記複数の配管を固定する構成であることが好ましい。
【0009】
また本発明は前記配管群が、前記接続部を複数備え、前記接続部のうち、一端を始点として延伸していると見た場合に、前記立ち下がり部に対して前記立ち上がり部を裏返すようにして、前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とを結ぶ接続部において、前記固定部材が前記複数の配管を固定しており、前記立ち上がり部、前記立ち下がり部および前記接続部からなるコア部よりも、該コア部と前記スターリングエンジンの本体との間に形成される空間のほうが、流量が小さくなるように高温熱源を構成する流体を整流する整流部材を前記固定部材にさらに設けた構成であることが好ましい。
【0010】
また本発明は前記固定部材が、高温熱源を構成する流体を流通させる通路部材との位置決めを兼ねる構成であることが好ましい。
【0011】
また本発明は前記複数の配管がクランク軸線の延伸方向に沿って直線状に並ぶように設けられた配管接続口に対して設けられるとともに、前記伝熱管群が上面視で前記2つの気筒のボアそれぞれから張り出すように設けられており、前記2つの気筒をクランク軸線の延伸方向に沿って直列に並べるようにして4気筒以上に多気筒化されたスターリングエンジンに設けられる構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の配管からなる高密度な配管群を備えることを可能にし、以って熱交換性能を高めることができる。また本発明によれば、配管同士の接触による騒音や摩耗の発生を防止或いは抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1にかかる加熱器を備えたスターリングエンジンを示す図である。
【図2】実施例1にかかるスターリングエンジンのピストン・クランク部の概略構成図である。
【図3】実施例1にかかる伝熱管および伝熱管群を示す図である。なお、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図となっている。
【図4】実施例1にかかる加熱器を具体的に示す図である。なお、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図となっている。
【図5】実施例2にかかる伝熱管および伝熱管群を示す図である。なお、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図となっている。
【図6】実施例2にかかる加熱器を具体的に示す図である。なお、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図となっている。
【図7】実施例3にかかる伝熱管および伝熱管群を示す図である。なお、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図となっている。
【図8】実施例3にかかる加熱器を具体的に示す図である。なお、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図となっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本実施例にかかるスターリングエンジンの熱交換器である加熱器47Aを備えたスターリングエンジン10Aを模式的に示す図である。スターリングエンジン10Aは、2気筒α型のスターリングエンジンである。スターリングエンジン10Aは、クランク軸線CLの延伸方向と気筒配列方向Xとが互いに平行になるように直列平行に配置された2つの気筒である高温側気筒20および低温側気筒30を有している。高温側気筒20は膨張ピストン21と高温側シリンダ22とを、低温側気筒30は圧縮ピストン31と低温側シリンダ32とをそれぞれ備えている。圧縮ピストン31は、膨張ピストン21に対して、クランク角で90°程度遅れて動くように位相差が設けられている。
【0016】
高温側シリンダ22の上部空間は膨張空間となっている。膨張空間には加熱器47Aで加熱された作動流体が流入する。加熱器47Aは本実施例では具体的には車両に搭載されたガソリンエンジンの排気管100の内部に配置されている。この点、スターリングエンジン10Aは、排気ガスの流通方向V1に対して、クランク軸線CLの延伸方向(換言すれば気筒配列方向X)が平行になるように配置されている。加熱器47Aにおいて、作動流体は高温熱源を構成する流体である排気ガスから回収した熱エネルギーにより加熱される。
低温側シリンダ32の上部空間は圧縮空間となっている。圧縮空間には冷却器45で冷却された作動流体が流入する。
再生器46は、膨張空間、圧縮空間の間を往復する作動流体との間で熱の授受を行う。再生器46は具体的には、作動流体が膨張空間から圧縮空間へと流れる時には作動流体から熱を受け取り、作動流体が圧縮空間から膨張空間へと流れる時には蓄えられた熱を作動流体に放出する。
作動流体には空気が適用されている。但しこれに限られず、作動流体には例えばHe、H、N等の気体を適用することができる。
【0017】
次にスターリングエンジン10Aの動作について説明する。加熱器47Aで作動流体が加熱されると、膨張して膨張ピストン21が圧下され、これにより駆動軸(クランクシャフト)113の回動が行われる。次に膨張ピストン21が上昇行程に移ると、作動流体は加熱器47Aを通過して再生器46に移送され、そこで熱を放出して冷却器45へと流れる。冷却器45で冷却された作動流体は圧縮空間に流入し、さらに圧縮ピストン31の上昇行程に伴って圧縮される。このようにして圧縮された作動流体は、今度は再生器46から熱を奪いながら温度を上昇して加熱器47Aへ流れ込み、そこで再び加熱膨張せしめられる。すなわち、かかる作動流体の往復流動を通じてスターリングエンジン10Aが動作する。
【0018】
ところで、本実施例ではスターリングエンジン10Aの熱源が車両の内燃機関の排気ガスとなっていることから、得られる熱量に制約があり、その得られる熱量の範囲でスターリングエンジン10Aを作動させる必要がある。そこで本実施例では、スターリングエンジン10Aの内部フリクションを可能な限り低減させることとしている。具体的にはスターリングエンジン10Aの内部フリクションのうち、最も摩擦損失が大きいピストンリングによる摩擦損失を無くすため、シリンダ22、32とピストン21、31との間で気体潤滑を行っている。
【0019】
気体潤滑ではシリンダ22、32とピストン21、31の間の微小なクリアランスで発生する空気の圧力(分布)を利用して,ピストン21、31を空中に浮いた形にする。気体潤滑は摺動抵抗が極めて小さいため、スターリングエンジン10Aの内部フリクションを大幅に低減させることができる。空中に物体を浮上させる気体潤滑には、具体的には例えば加圧流体を噴出させ、発生した静圧によって物体を浮上させる静圧気体潤滑を適用することができる。但しこれに限られず、気体潤滑は例えば動圧気体潤滑であってもよい。
【0020】
気体潤滑が行われるシリンダ22、32とピストン21、31との間のクリアランスは数十μmとなっている。そして、このクリアランスにはスターリングエンジン10Aの作動流体が介在している。ピストン21、31それぞれは、気体潤滑によりシリンダ22、32と非接触の状態、または許容できる接触状態で支持されている。したがってピストン21、31の周囲には、ピストンリングは設けられておらず、また一般にピストンリングと共に使用される潤滑油も使用されていない。気体潤滑では、微小クリアランスにより膨張空間、圧縮空間それぞれの気密が保たれ、リングレスかつオイルレスでクリアランスシールが行われる。
【0021】
さらにピストン21、31とシリンダ22、32とはともに金属製であり、本実施例では具体的には対応するピストン21、31およびシリンダ22、32同士で線膨張率が同じ金属(ここではSUS)が適用されている。これにより、熱膨張があっても適正なクリアランスを維持して気体潤滑を行うことができる。
【0022】
ところで気体潤滑の場合、負荷能力が小さいことから、ピストン21、31のサイドフォースを実質的にゼロにしなくてはならない。すなわち、気体潤滑を行う場合にはシリンダ22、32の直径方向(横方向,スラスト方向)の力に耐える能力(耐圧能力)が低くなるため、シリンダ22、32の軸線に対するピストン21、31の直線運動精度が高い必要がある。
【0023】
このため、本実施例ではピストン・クランク部にグラスホッパの機構50を採用している。直線運動を実現する機構にはグラスホッパの機構50のほか例えばワットの機構があるが、グラスホッパの機構50は他の機構に比べて、同じ直線運動精度を得るために必要な機構のサイズが小さくて済むため、装置全体がコンパクトになるという効果が得られる。特に本実施例のスターリングエンジン10Aは、自動車の床下といった限られたスペースに設置されることになるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増す。またグラスホッパの機構50は、同じ直線運動精度を得るために必要な機構の重量が他の機構よりも軽量で済むため、燃費の点で有利である。さらにグラスホッパの機構50は機構の構成が比較的簡単であるため、構成(製造・組み立て)し易いという利点も有する。
【0024】
図2はスターリングエンジン10Aのピストン・クランク部の概略構成を模式的に示す図である。なお、ピストン・クランク部には高温側気筒20側と低温側気筒30側とで共通の構成を採用しているため、以下では、高温側気筒20側についてのみ説明し、低温側気筒30側についての説明は省略する。近似直線機構は、グラスホッパの機構50と、コネクティングロッド110と、エクステンションロッド111と、ピストンピン112とを備えている。膨張ピストン21は、コネクティングロッド110、エクステンションロッド111およびピストンピン112を介して駆動軸113に接続されている。具体的には、膨張ピストン21はピストンピン112を介してエクステンションロッド111の一端側に接続されている。そして、エクステンションロッド111の他端側にはコネクティングロッド110の小端部110aが接続されている。そして、コネクティングロッド110の大端部110bが駆動軸113に接続されている。
【0025】
膨張ピストン21の往復運動は、コネクティングロッド110によって駆動軸113に伝達され、ここで回転運動に変換される。コネクティングロッド110はグラスホッパの機構50によって支持されており、膨張ピストン21を直線状に往復運動させる。このように、コネクティングロッド110をグラスホッパの機構50によって支持することにより、膨張ピストン21のサイドフォースFがほとんどゼロになる。このため、負荷能力の小さい気体潤滑を行う場合でも十分に膨張ピストン21を支持することができる。
【0026】
次に、加熱器47Aについて図3を用いてさらに具体的に説明する。ここで、加熱器47Aは多管式熱交換器となっており、作動流体を流通させる複数の配管に相当する複数の伝熱管71Aを備える。伝熱管71Aは、その中心軸に対して軸対称となる形状を有しており、具体的には概ねV字状の形状を有している。伝熱管71Aの一端には第1の作動流体出入口P1が、他端には第2の作動流体出入口P2が設けられている。伝熱管71Aには具体的にはSUSチューブが用いられている。
【0027】
そして、複数の伝熱管71Aは伝熱管群70Aを構成する。なお、図3では説明の便宜上、伝熱管群70Aを構成する複数の伝熱管71Aとして5本の伝熱管71Aを示すとともに、2つの伝熱管群70Aを示している。伝熱管群70Aは具体的には1列状の集合をなすように配置される複数の伝熱管71Aで構成される。さらに具体的には伝熱管群70Aは、互いに直列平行に、且つ等間隔で配置される複数の伝熱管71Aで構成される。この点、伝熱管群70Aを構成する複数の伝熱管71Aは、具体的には気筒配列方向Xに沿って互いに直列に配置されるようになっている。したがって、複数の伝熱管71Aそれぞれは、図3(a)に示すように気筒配列方向Xを水平方向に合わせて気筒配列方向Xおよび気筒延伸方向Yに直交する方向Zに沿って見た場合に、左右対称な形状になっている。伝熱管群70Aを構成する複数の伝熱管71Aそれぞれは互いに等長で、且つ同形状となっている。伝熱管群70Aは、立ち上がり部G1と、立ち下がり部G2と、折り返し部G3と、一端部G4と、他端部G5とを備えている。
【0028】
立ち上がり部G1は、伝熱管群70Aが一端を始点として延伸していると見た場合に、立ち上がるように延伸した中間の部分となっている。立ち上がり部G1は、具体的には伝熱管71Aのうち、気筒延伸方向Yにおいて一端から離れるように延伸していると見た場合に、気筒配列方向Xにおいて他端に近づくように延伸することで、立ち上がるように延伸した中間の部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。このように構成された立ち上がり部G1は、第1の平面S1に沿って配置されている。第1の平面S1は気筒配列方向Xおよび気筒延伸方向Yに平行な平面となっている。
【0029】
立ち下がり部G2は、伝熱管群70Aが一端を始点として延伸していると見た場合に、立ち下がるように延伸した中間の部分となっている。立ち下がり部G2は、具体的には伝熱管71Aのうち、気筒延伸方向Yにおいて他端に近づくように延伸していると見た場合に、気筒配列方向Xにおいて一端から離れるように延伸することで、立ち下がるように延伸した中間の部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。立ち下がり部G2は第2の平面S2に沿って配置されている。第2の平面S2は気筒配列方向Xおよび気筒延伸方向Yに平行な、すなわち第1の平面S1と平行な平面となっている。
【0030】
折り返し部G3は、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを折り返すようにして結ぶ部分となっている。この点、折り返し部G3は、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを裏返すようにして結ぶ接続部に相当している。折り返し部G3は具体的には、伝熱管71Aのうち、立ち上がり部G1を形成する部分と、立ち下がり部G2を形成する部分とを結ぶ部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。この点、折り返し部G3は、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを気筒延伸方向Yにおいて同じ高さで結ぶようになっている。また折り返し部G3は、折り返しによって伝熱管群70Aに形成される凸状の形状と同方向に凸になるとともに、方向Z中央の位置に頂部が形成されるようになっている。
【0031】
折り返し部G3は、立ち上がり部G1および立ち下がり部G2が連なる一対の折り曲げ端部Eを備えている。一対の折り曲げ端部Eは互いにオフセットしており、具体的には方向Zをオフセット方向として互いに均等にオフセットしている。また一対の折り曲げ端部Eのオフセット間隔は、オフセット方向において立ち上がり部G1および立ち下がり部G2の間に隙間を形成可能な間隔Wに設定されている。このため、第1および第2の平面S1、S2も間隔Wのオフセット間隔を有し、第1の平面S1に沿って配置された立ち上がり部G1と、第1の平面S1と平行な第2の平面S2に沿って配置された立ち下がり部G2とは間隔Wのオフセット間隔を有することで、図3(b)に示すように気筒配列方向Xに沿って見た場合にオフセット方向において間に隙間が形成されるように設けられている。
【0032】
一端部G4は高温側気筒20側に設けられる端部となっている。一端部G4は具体的には、伝熱管71Aのうち、第1および第2の平面S1、S2の中間に位置する一端から気筒延伸方向Yに沿って立ち上がるようにして延伸した部位と、当該部位から第1の平面S1側へ向かって、気筒配列方向Xに直交しつつ気筒延伸方向Yに対して斜めに立ち上がるようにして延伸し、立ち上がり部G1を形成する部分に接続される部位とからなる部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。
他端部G5は低温側気筒30側に設けられる端部となっている。他端部G5は具体的には、伝熱管71Aのうち、第1および第2の平面S1、S2の中間に位置する他端から気筒延伸方向Yに沿って立ち上がるようにして延伸した部位と、当該部位から第2の平面S2側へ向かって、気筒配列方向Xに直交しつつ気筒延伸方向Yに対して斜めに立ち上がるようにして延伸し、立ち下がり部G2を形成する部分に接続される部位とからなる部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。
一端部G4と他端部G5とは、高温側気筒20および再生器46の上部それぞれの気筒延伸方向Yに沿った位置が異なる場合に、伝熱管群70Aの一端および他端それぞれの気筒延伸方向Yに沿った位置を調整可能な部分となっている。
【0033】
伝熱管群70Aにおいて、一端部G4に設けられた第1の作動流体出入口P1それぞれは同一直線上に配置される。また他端部G5に設けられた第2の作動流体出入口P2それぞれは同一直線上に配置される。さらに、第1および第2の作動流体出入口P1、P2それぞれは、気筒配列方向Xおよび気筒延伸方向Yに平行な(すなわち第1および第2の平面S1、S2に平行な)第3の平面S3に含まれている。この点、第3の平面S3は第1および第2の平面S1、S2の間、中央に位置している。したがって、第1および第2の平面S1、S2は、第1および第2の作動流体出入口P1、P2を含む第3の平面S3を挟んで互いに平行な平面となっている。
【0034】
折り返し部G3には固定部材である固定板72が設けられる。なお、図示の都合上、図3(c)においては固定板72を図示省略している。固定板72は折り返し部G3において複数の伝熱管71Aを固定する。具体的には固定板72は折り返し部G3において表面側に設けられており、折り返し部G3の頂部を固定することで、複数の伝熱管71Aを固定する。さらに固定板72は、複数の伝熱管群70Aの間で共通のものとなっており、複数の伝熱管群70Aの折り返し部G3それぞれにおいて、複数の伝熱管71Aを固定する。各伝熱管71Aは例えば溶接によって固定板72に固定することができる。
【0035】
かかる伝熱管群70Aは、具体的には図4に示すように加熱器47Aを構成する。なお、図示の都合上、図4(c)においては固定板72を図示省略している。この点、固定板72は例えば上面視で長方形状の形状になるように、或いはさらに必要な部分のみを残した形状になるように形成することができる。加熱器47Aには、図4(c)に示すように第1の作動流体出入口P1を接続するための第1の伝熱管接続口B1それぞれが高温側気筒20側に設けられている。第1の伝熱管接続口B1それぞれは、気筒配列方向Xに沿って等間隔に設けられており、また方向Zに沿って等間隔に設けられている。したがって、気筒配列方向Xに沿って隣り合う第1の伝熱管接続口B1同士は、気筒配列方向Xに沿って同一直線上に設けられている。
また加熱器47Aには、図4(c)に示すように第2の作動流体出入口P2を接続するための第2の伝熱管接続口B2それぞれが低温側気筒30側に設けられている。第2の伝熱管接続口B2それぞれは気筒配列方向Xに沿って等間隔に設けられるとともに、方向Zに沿って等間隔に設けられている。このため、気筒配列方向Xに沿って隣り合う第2の伝熱管接続口B2同士も、気筒配列方向Xに沿って同一直線上に設けられている。
【0036】
第1および第2の伝熱管接続口B1、B2の数は互いに等しくなっている。また第1の伝熱管接続口B1同士の気筒配列方向Xに沿った間隔と、第2の伝熱管接続口B2同士の気筒配列方向Xに沿った間隔とは互いに等しくなっており、第1の伝熱管接続口B1同士の方向Zに沿った間隔と、第2の伝熱管接続口B2同士の方向Zに沿った間隔も互いに等しくなっている。さらに第1および第2の伝熱管接続口B1、B2は、方向Zに沿った位置が同じである場合に、気筒配列方向Xに沿って設けられた第1の伝熱管接続口B1の数と、気筒配列方向Xに沿って設けられた第2の伝熱管接続口B2の数とが互いに等しくなるように設けられている。したがって、第1および第2の伝熱管接続口B1、B2は、方向Zに沿った各位置において、気筒配列方向Xに沿って同一直線上に同じ数だけ等間隔に設けられている。また、同一の配置で設けられている第1および第2の伝熱管接続口B1、B2の間隔と、伝熱管71Aの第1および第2の作動流体出入口P1、P2の間隔とは互いに等しくなっている。
【0037】
そして加熱器47Aでは、同一の配置で設けられている第1および第2の伝熱管接続口B1、B2のセットそれぞれに対して、伝熱管71Aが設けられている。この点、方向Zに沿った各位置において、気筒配列方向Xに沿って同一直線上に設けられた第1および第2の伝熱管接続口B1、B2に対し、伝熱管71Aは気筒配列方向Xに沿って互いに直列平行に、且つ等間隔で配置され、複数の伝熱管群70Aを構成している。
一方、固定板72は各伝熱管群70Aの折り返し部G3それぞれにおいて、複数の伝熱管71Aを固定している。また固定板72は排気ガスを流通させる通路部材である排気管100との位置決めを兼ねている。この点、固定板72を位置決めとして機能させるにあたっては、例えば固定板72、或いはその一部として設けられた凹凸部などが正規の位置において、固定板72の移動を防止可能なように係合する係合部を排気管100に設けることができる。また固定板72は例えば正規の位置で排気管100に固定されることで、位置決めとして機能してもよい。
【0038】
次に加熱器47Aの作用効果について説明する。加熱器47Aでは、伝熱管群70Aが、立ち上がり部G1に対して立ち下がり部G2を折り返すようにして、これらを結ぶ折り返し部G3を備えている。そしてかかる構造によれば、伝熱管群70Aを構成する複数の伝熱管71Aを1列状の集合をなすように密に並べて配置することが可能になる。このため加熱器47Aは、これにより伝熱管群70Aの高密度化を図ることができ、以って高い熱交換性能を実現することができる。
一方、複数の伝熱管71Aを高密度に備えた場合には、振動によって複数の伝熱管71A同士が互いに接触し、この結果、騒音や摩耗が発生することが懸念される。これに対して加熱器47Aは、折り返し部G3において複数の伝熱管71Aを固定する固定板72を備えている。このため加熱器47Aは、伝熱管71A同士の接触による騒音や摩耗が発生することを防止或いは抑制できる。
また加熱器47Aでは、固定板72が各伝熱管群70Aの折り返し部G3それぞれにおいて、複数の伝熱管71Aを固定している。このため加熱器47Aは、振動によって隣り合う伝熱管群70Aの伝熱管71A同士が接触し、この結果、騒音や摩耗が発生することも防止或いは抑制できる。
【0039】
また加熱器47Aは、固定板72が折り返し部G3において複数の伝熱管71Aを固定することで、立ち上がり部G1や立ち下がり部G2において、気筒配列方向Xに沿った各伝熱管71Aの熱変形を許容しつつ、伝熱管71A同士の接触による騒音や摩耗が発生することも防止或いは抑制できる。
また加熱器47Aでは、固定板72が折り返し部G3において複数の伝熱管71Aを固定することで、立ち上がり部G1や立ち上がり部G2において方向Zに沿って発生する各伝熱管71Aの熱変形の方向を揃えることができ、これにより方向Zに沿った各伝熱管71Aの熱変形を許容しつつ、伝熱管71A同士の接触による騒音や摩耗が発生することも防止或いは抑制できる。この点、各伝熱管71Aの熱変形の方向を揃えるにあたっては、例えば各伝熱管71Aの立ち上がり部G1それぞれの間、および各伝熱管71Aの立ち下がり部G2それぞれの間で、機関冷間時に方向Zに沿って同一方向のたわみを有するように複数の伝熱管71Aを固定板72で固定することができる。
この点、加熱器47Aでは、複数の伝熱管71Aを固定するにあたり、固定板72が折り返し部G3の頂部を固定している。このため加熱器47Aは、例えば各伝熱管71Aのうち、折り返し部G3を形成する部分を全体的に固定しようとする場合と比較して、各伝熱管71Aに発生する熱変形の自由度をより確保でき、この結果、各伝熱管71Aに発生する熱変形を好適に許容できる。
【0040】
また加熱器47Aでは、固定板72が排気管100との位置決めを兼ねている。このため加熱器47Aでは、排気管100内において、各伝熱管71Aが振動や熱変形により移動することも規制でき、これにより、伝熱管71A同士の接触による騒音や摩耗が発生し易くなることも防止できる。
また加熱器47Aは、複数の伝熱管71Aを固定するとともに、位置決めとして機能する固定板72を備えることで、各伝熱管71Aに対して接触による騒音や摩耗の発生を招かないようにフィンを設けることも容易となり、これにより更なる熱交換性能の向上を図ることもできる。
【実施例2】
【0041】
本実施例にかかる加熱器47Bは、多管式熱交換器として図5に示す伝熱管71Bを複数備える。伝熱管71Bは、その中心軸に対して軸対称となる形状を有しており、具体的には概ねM字状の形状を有している。伝熱管71Bの一端には第1の作動流体出入口P1が、他端には第2の作動流体出入口P2がそれぞれ設けられている。
そして、複数の伝熱管71Bは伝熱管群70Bを構成する。なお、図5では説明の便宜上、伝熱管群70Bを構成する複数の伝熱管71Bとして2つの伝熱管71Bを示すとともに、2つの伝熱管群70Bを示している。複数の伝熱管71Bは互いに等長で、且つ同形状となっており、複数の伝熱管71Aが伝熱管群70Aを構成するのと同様にして伝熱管群70Bを構成する。
【0042】
伝熱管群70Bは、2つの立ち上がり部G1と、2つの立ち下がり部G2と、3つの折り返し部G3と、一端部G4と、他端部G5とを備えている。この点、伝熱管群70Bは、複数の折り返し部G3を設けることで、伝熱管群70Aに対して、構造上、新たな立ち上がり部G1および新たな立ち下がり部G2をさらに設けるようにした伝熱管群となっている。なお、複数の折り返し部G3の数は具体的には奇数となる。
【0043】
2つの立ち上がり部G1は、具体的には伝熱管群70Bが一端を始点として延伸していると見た場合に、一端側に位置する立ち上がり部G11と、他端側に位置する立ち上がり部G12とによって構成されている。これら2つの立ち上がり部G1それぞれは互いに平行に延伸しており、且つ第1の平面S1に沿って配置されている。
2つの立ち下がり部G2は、具体的には伝熱管群70Bが一端を始点として延伸していると見た場合に、一端側に位置する立ち下がり部G21と、他端側に位置する立ち下がり部G22とによって構成されている。これら2つの立ち下がり部G2それぞれは互いに平行に延伸しており、且つ第2の平面S2に沿って配置されている。
【0044】
3つの折り返し部G3は、具体的には伝熱管群70Bが一端を始点として延伸していると見た場合に、立ち上がり部G1に対して立ち下がり部G2を折り返すようにして、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを結ぶ2つの折り返し部G31と、立ち下がり部G2に対して立ち上がり部G1を折り返すようにして、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを結ぶ1つの折り返し部G32とによって構成されている。2つの折り返し部G31は伝熱管群70Bにおいて両端に位置しており、折り返し部G32は伝熱管群70Bにおいて中央に位置している。
【0045】
これら3つの折り返し部G3は、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを気筒延伸方向Yにおいて同じ高さで結ぶようになっている。またこれら3つの折り返し部G3は、折り返しによって伝熱管群70Bに形成される凸状の形状と同方向に凸になるとともに、方向Z中央の位置に頂部が形成されるようになっている。
またこれら3つの折り返し部G3それぞれにおいて、一対の折り曲げ端部Eは、伝熱管群70Aの場合と同様に設けられており、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とは間隔Wのオフセット間隔を有することで、図5(b)に示すように気筒配列方向Xに沿って見た場合にオフセット方向において間に隙間が形成されるように設けられている。
【0046】
一端部G4は高温側気筒20側に設けられる端部となっており、具体的には伝熱管71Bのうち、第1および第2の平面S1、S2の中間に位置する一端から気筒延伸方向Yに沿って立ち上がるようにして延伸した部位と、当該部位から第1の平面S1側へ向かって、気筒配列方向Xに直交しつつ気筒延伸方向Yに対して斜めに立ち上がるようにして延伸し、一端側に位置する立ち上がり部G11を形成する部分に接続される部位とからなる部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。
他端部G5は低温側気筒30側に設けられる端部となっており、具体的には伝熱管71Bのうち、第1および第2の平面S1、S2の中間に位置する他端から気筒延伸方向Yに沿って立ち上がるようにして延伸した部位と、当該部位から第2の平面S2側へ向かって、気筒配列方向Xに直交しつつ気筒延伸方向Yに対して斜めに立ち上がるようにして延伸し、他端側に位置する立ち下がり部G22を形成する部分に接続される部位とからなる部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。
【0047】
折り返し部G3には固定板72が設けられる。なお、図示の都合上、図5(c)においては固定板72を図示省略している。具体的には固定板72は3つの折り返し部G3それぞれに対して設けられ、これら折り返し部G3それぞれにおいて複数の伝熱管71Bを固定する。各固定板72は折り返し部G3それぞれにおいて、折り返し部G3の頂部を固定することで、複数の伝熱管71Bを固定する。さらに各固定板72は複数の伝熱管群70Bそれぞれについて共通のものとなっており、複数の伝熱管群70Bの折り返し部G3それぞれにおいて、複数の伝熱管71Bを固定する。
【0048】
かかる伝熱管群70Bは、具体的には図6に示すように加熱器47Bを構成する。なお、図示の都合上、図6(c)においては固定板72を図示省略している。この点、固定板72の具体的な形状は実施例1の場合と異なっていてよく、また各固定板72の具体的な形状も互いに異なっていてよい。またスターリングエンジン10Bは、加熱器47Aの代わりに加熱器47Bを備えている点以外、スターリングエンジン10Aと実質的に同一のものとなっている。
加熱器47Bでは、第1および第2の伝熱管接続口B1、B2が、加熱器47Aの場合と同様に設けられている。また加熱器47Bでは、加熱器47Aの場合と同様にして同一の配置で設けられている第1および第2の伝熱管接続口B1,B2のセットそれぞれに対して伝熱管71Bが設けられ、これにより方向Zに沿って複数の伝熱管群70Bが構成されている。
一方、各固定板72は各伝熱管群70Bの折り返し部G3それぞれにおいて、複数の伝熱管71Bを固定している。また各固定板72は排気管100との位置決めを兼ねている。この点、折り返し部G32に設けられた固定板72では、気筒配列方向Xの中央、且つ方向Zの両端に位置する部分が、排気管100との位置決めを兼ねている。
【0049】
さらに加熱器47Bでは、折り返し部G32に設けられた固定板72に整流板73が設けられている。整流板73は具体的には気筒配列方向Xに直交する面を有し、折り返し部G32に設けられた固定板72のうち、表面側の部分から気筒延伸方向Yに沿って延伸するように設けられている。整流板73は立ち上がり部G1、立ち下がり部G2および折り返し部G3からなるコア部Cを流通する排気ガスの流量よりも、スターリングエンジン10Bのうち、加熱器47Bを除く部分であるスターリングエンジン10B本体とコア部Cとの間に形成される空間Tを流通する排気ガスの流量が小さくなるように排気管100を流通する排気ガスを整流する整流部材となっている。この点、整流板73には、例えば空間Tを流通する排気ガスをせき止めることが可能な板状の部材を適用できる。また整流板73には、例えば空間Tを流通する排気ガスの圧力損失を高めることで、空間Tを流通する排気ガスの流量を小さくすることが可能なメッシュや穴が設けられた板状の部材などを適用できる。
【0050】
次に加熱器47Bの作用効果について説明する。加熱器47Bでは、複数の折り返し部G3を設けることで、加熱器47Aに対して新たな立ち上がり部G1および新たな立ち下がり部G2をさらに設けることができる。すなわち、加熱器47Bでは、複数の折り返し部G3を設けることで、伝熱管群70Bを構成する複数の伝熱管71Bそれぞれの全長を、伝熱管群70Aを構成する複数の伝熱管71Aそれぞれの全長よりも長くすることができ、これにより加熱器47Aと比較してより大きな伝熱面積を確保できる。
また加熱器47Bでは、概ねM字状の形状を有する複数の伝熱管71Bで伝熱管群70Bを構成することで、複数の伝熱管71Bの配列方向である気筒配列方向Xにおいて、折り返し部G32が隣り合う折り返し部G31同士の間に位置するように折り返し部G3それぞれを設け、これによりコンパクトな形態を確保している。このため加熱器47Bは、加熱器47Aと比較してコンパクトな形態を確保しつつ、更なる熱交換性能の向上を図ることができる点で、さらに好適に高い熱交換性能を実現できる。
【0051】
一方、加熱器47Bでも、複数の伝熱管71Bを高密度に備えた結果、振動により複数の伝熱管71B同士が互いに接触し、この結果、騒音や摩耗が発生することが懸念される。これに対して加熱器47Bでは、折り返し部G3において複数の伝熱管71Bを固定する固定板72を備えるとともに、固定板72が位置決めを兼ねることで、加熱器47Aと同様の作用効果を奏することができる。
さらに加熱器47Bでは、折り返し部G32に設けられた固定板72に、整流板73を設けている。このため加熱器47Bは、コア部Cを流通する排気ガスの流量を高めることで、熱交換性能をさらに向上させることもできる。
【実施例3】
【0052】
本実施例にかかる加熱器47Cは、多管式熱交換器として図7に示す伝熱管71Cを複数備える。伝熱管71Cは、その中心軸に対して軸対称となる形状を有しており、具体的には概ねM字状の形状を有している。伝熱管71Cの一端には第1の作動流体出入口P1が、他端には第2の作動流体出入口P2がそれぞれ設けられている。
複数の伝熱管71Cは伝熱管群70Cを構成する。なお、図7では説明の便宜上、伝熱管群70Cを構成する複数の伝熱管71Cとして2つの伝熱管71Cを示すとともに、2つの伝熱管群70Cを示している。複数の伝熱管71Cは互いに等長で、且つ同形状となっており、複数の伝熱管71Aが伝熱管群70Aを構成するのと同様にして伝熱管群70Cを構成する。
【0053】
伝熱管群70Cは一端部G4と他端部G5とが異なるように形成される点以外、伝熱管群70Bと実質的に同一のものとなっている。
すなわち伝熱管群70Cでは、一端部G4が、伝熱管71Cのうち、第1および第2の平面S1、S2の中間に位置する一端から気筒延伸方向Yに沿って立ち上がるようにして延伸した部位と、当該部位から第1の平面S1側、且つ外側に向かって気筒配列方向Xおよび気筒延伸方向Yに対して斜めに立ち上がるようにして延伸し、一端側に位置する立ち上がり部G11を形成する部分に接続される部位とからなる部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。
また伝熱管群70Cでは、他端部G5が、伝熱管71Cのうち、第1および第2の平面S1、S2の中間に位置する他端から気筒延伸方向Yに沿って立ち上がるようにして延伸した部位と、当該部位から第2の平面S2側、且つ外側に向かって気筒配列方向Xおよび気筒延伸方向Yに対して斜めに立ち上がるようにして延伸し、他端側に位置する立ち下がり部G22を形成する部分に接続される部位とからなる部分が、気筒配列方向Xに沿って互いに1列状の集合をなすように配置されることで形成されている。
折り返し部G3には伝熱管群70Bの場合と同様に固定板72が設けられる。なお、図示の都合上、図7(c)においては固定板72を図示省略している。
【0054】
かかる伝熱管群70Cは、具体的には図8に示すように加熱器47Cを構成する。なお、図示の都合上、図8(c)においては固定板72を図示省略している。この点、固定板72の具体的な形状は実施例1や2の場合と異なっていてよく、また各固定板72の具体的な形状も互いに異なっていてよい。またスターリングエンジン10Cは、スターリングエンジン10Aの一対の気筒20、30をクランク軸線CLの延伸方向(換言すれば気筒配列方向X)に沿って複数(ここでは2つ)並べるようにして4気筒に多気筒化されたものとなっている点と、加熱器47Aの代わりに一対の気筒20、30それぞれに対応させて設けられた複数(ここでは2つ)の加熱器47Cを備えている点以外、スターリングエンジン10Aと実質的に同一のものとなっている。
【0055】
加熱器47Cでは、第1および第2の伝熱管接続口B1、B2が、一対の気筒20、30それぞれに対応させるようにして加熱器47Aの場合と同様に設けられている。この点、第1および第2の伝熱管接続口B1、B2は、加熱器47Cそれぞれにおいてのみでなく、各加熱器47C間でもクランク軸線CLの延伸方向に沿って直線状に並ぶようになっている。加熱器47Cでは、加熱器47Aの場合と同様にして同一の配置で設けられている第1および第2の伝熱管接続口B1,B2のセットそれぞれに対して伝熱管71Cが設けられ、これにより方向Zに沿って複数の伝熱管群70Cが構成されている。
【0056】
各加熱器47Cでは、図8(c)に示すように伝熱管群70Cが上面視で対応する一対の気筒20、30のボアそれぞれから張り出すように設けられている。この点、高温側気筒20側では主に立ち上がり部G11が、低温側気筒30側では主に立ち下がり部G22がそれぞれボアから張り出している。そして、立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを裏返すようにして結ぶ伝熱管群70Cの構造上、立ち上がり部G11と立ち下がり部G22とは同一の伝熱管群70Cにおいて、方向Zに沿って互いに逆向きにオフセットしている。
各固定板72は各伝熱管群70Cの折り返し部G3それぞれにおいて、加熱器47Bの場合と同様に複数の伝熱管71Cを固定するとともに、排気管100との位置決めを兼ねている。また折り返し部G32に設けられた固定板72には、加熱器47Bの場合と同様に整流板73が設けられている。
【0057】
次に加熱器47Cの作用効果について説明する。加熱器47Cは加熱器47Bと同様に固定板72および整流板73を備えている。このため、加熱器47Cは加熱器47Bと同様の作用効果を奏することができる。
また加熱器47Cでは、伝熱管群70Cをボアから張り出すように設けることで、加熱器47Bと比較して全長をさらに長くすることや、一対の気筒20、30のボアピッチを短縮することができ、これにより更なる熱交換性能の向上を図ることや、スターリングエンジン10Cのコンパクト化を図ることができる。
【0058】
一方、伝熱管群70Cをボアから張り出すように設けた加熱器47Cを多気筒化したスターリングエンジン10Cに設けるにあたっては、各加熱器47C間で伝熱管群70C同士の干渉が生じないようにする必要がある。
この点、一対の気筒20、30をクランク軸線CLの延伸方向に沿って複数並べるようにして多気筒化されたスターリングエンジン10Cにおいては、第1および第2の伝熱管接続口B1、B2が、各加熱器47Cそれぞれにおいてのみでなく、各加熱器47C間でもクランク軸線CLの延伸方向に沿って直線状に並ぶようになっている。このためスターリングエンジン10Cでは、各加熱器47C間において、伝熱管群70C同士の対向する部分それぞれが方向Zに沿って互いに逆向きにオフセットすることになり、これにより各加熱器47C間で気筒配列方向Xにおける位置の重なり合いを有しつつ、干渉を回避することができる。
このため加熱器47Cは、伝熱管群70Cをボアから張り出すように設けた場合であっても、多気筒化されたスターリングエンジン10Cにおいて互いに近接して設けることができ、これによりスターリングエンジン10Cのコンパクト化に寄与することもできる。
【0059】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
例えば上述した実施例2,3では、複数の接続部である折り返し部G31、G32のいずれにも固定板72を設けた場合について説明した。しかしながら、本発明においては必ずしもこれに限られず、複数の接続部のうち、少なくともいずれか一方に固定部材を設けることでも、接触による騒音や摩耗の発生を防止或いは抑制できる。
また例えば上述した実施例では、各伝熱管がSUSチューブである場合について説明した。しかしながら本発明においては必ずしもこれに限られず、複数の配管は例えば断面が楕円状となる配管やその他の形状になる配管であってもよい。
また例えば上述した実施例では、各伝熱管群が立ち上がり部G1と立ち下がり部G2とを折り返すようにして結ぶ折り返し部G3を備える場合について説明した。しかしながら本発明においては必ずしもこれに限られず、配管群は折り返し部の代わりに、例えば立ち上がり部と立ち下がり部とを裏返すようにして滑らかに結ぶ接続部を備えてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10A、10B、10C スターリングエンジン
20 高温側気筒
21 膨張ピストン
22 高温側シリンダ
30 低温側気筒
31 圧縮ピストン
32 低温側シリンダ
47A、47B、47C 加熱器
50 グラスホッパの機構
70A、70B、70C 伝熱管群
71A、71B、71C 伝熱管
72 固定板
73 整流板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2気筒α型のスターリングエンジンが備える直列平行に配置された2つの気筒間で、前記スターリングエンジンの作動流体を流通させる複数の配管からなる配管群を備え、
前記配管群が、該配管群の一端を始点として延伸していると見た場合に、立ち上がるように延伸する立ち上がり部と、立ち下がるように延伸する立ち下がり部と、前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とを裏返すようにして結ぶ接続部とを備え、
前記接続部において、前記複数の配管を固定する固定部材を備えたスターリングエンジンの熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載のスターリングエンジンの熱交換器であって、
前記配管群が、前記接続部を複数備え、
前記接続部のうち、一端を始点として延伸していると見た場合に、前記立ち上がり部に対して前記立ち下がり部を裏返すようにして、前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とを結ぶ接続部、または前記接続部のうち、一端を始点として延伸していると見た場合に、前記立ち下がり部に対して前記立ち上がり部を裏返すようにして、前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とを結ぶ接続部の少なくともいずれかの接続部において、前記固定部材が前記複数の配管を固定するスターリングエンジンの熱交換器。
【請求項3】
請求項1記載のスターリングエンジンの熱交換器であって、
前記配管群が、前記接続部を複数備え、
前記接続部のうち、一端を始点として延伸していると見た場合に、前記立ち下がり部に対して前記立ち上がり部を裏返すようにして、前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とを結ぶ接続部において、前記固定部材が前記複数の配管を固定しており、
前記立ち上がり部、前記立ち下がり部および前記接続部からなるコア部よりも、該コア部と前記スターリングエンジンの本体との間に形成される空間のほうが、流量が小さくなるように高温熱源を構成する流体を整流する整流部材を前記固定部材にさらに設けたスターリングエンジンの熱交換器。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載のスターリングエンジンの熱交換器であって、
前記固定部材が、高温熱源を構成する流体を流通させる通路部材との位置決めを兼ねるスターリングエンジンの熱交換器。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項記載のスターリングエンジンの熱交換器であって、
前記複数の配管が、クランク軸線の延伸方向に沿って直線状に並ぶように設けられた配管接続口に対して設けられるとともに、前記伝熱管群が上面視で前記2つの気筒のボアそれぞれから張り出すように設けられており、
前記2つの気筒をクランク軸線の延伸方向に沿って直列に並べるようにして4気筒以上に多気筒化されたスターリングエンジンに設けられるスターリングエンジンの熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−202640(P2011−202640A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73182(P2010−73182)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】