説明

スチルベン誘導体を製造する方法

Heck型反応を包含する、レスベラトロールおよびピセアタンノールならびにそのエステルの、新規な製造方法を開示する。また、その方法における新規な中間体も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチリル誘導体の製造のための新規な方法に関するものである。更に詳細には、本発明は、レスベラトロールおよびピセアタンノール、ならびにそのエステルの製造のための新規な方法に関するものである。
【0002】
天然に存在するレスベラトロール、系統名:3,4’,5−トリヒドロキシスチルベンは、その生物学的特性のために、興味を得ている既知の化合物である。例えば、国際公開公報第01/60774号を参照。た既知の化合物であるピセアタンノールは、3,3’,4,5’−テトラヒドロキシスチルベンである。
【0003】
レスベラトロールを製造する方法は、特に、国際公開公報第WO01/60774号およびTetrahedron Letters 43(2002)597-598に開示されている。後者の参考文献は、3,5−ジヒドロキシベンズアルデヒドで出発して、収率70%の3,5−ジヒドロキシスチレンと4−アセトキシ−ヨードベンゼンとのHeck反応を包含する、多ステップ反応順序によって、レスベラトロールが製造される方法を記載している。本発明の方法は、より容易に入手できる出発物質を利用し、より少ないステップおよび優れた収率で進行し、それにより、レスベラトロールおよびピセアタンノールならびに、例えば、エステルなどのその誘導体への、技術的により魅力的なアプローチを提供する。
【0004】
1つの態様において、本発明は、レスベラトロールおよびピセアタンノールならびにそのエステルを製造する方法に関し、この方法は、式I
【0005】
【化8】

【0006】
の化合物を式II
【0007】
【化9】

【0008】
(式中、ZおよびZは、独立して、保護されるヒドロキシ基であり;Zは、水素またはZであり;AおよびBの1つは、ビニルであり、他は、クロロまたはブロモである)
の化合物と反応させて、式III
【0009】
【化10】

【0010】
(式中、ZおよびZは、上のとおりであり、Rは、水素またはZである)
の化合物を得ること;
ヒドロキシ保護基を、式IIIの化合物から切り離し、レスベラトロールまたはピセアタンノールを得ること、所望により、そのように得られるレスベラトロールまたはピセアタンノールをエステルに変換すること、更に所望により、(E)−レスベラトロールもしくはそのエステルまたは(E)−ピセアタンノールもしくはそのエステルを異性化して、対応する(Z)−異性体を得ることを含む。
【0011】
「レスベラトロール」および「ピセアタンノール」という用語は、本明細書で使用されるように、(E)異性体、その他に(Z)の異性体およびその混合物を示す。好ましい態様において、本発明は、(E)異性体の製造に関する。更に好ましくは、本発明は、(E)−レスベラトロールの製造に関する。
【0012】
ヒドロキシ基ZおよびZにおける保護基は、切り離し可能な保護基のいずれでもよい。そのような保護基の例は、電子求引基、例えば、直鎖もしくは分岐アルカノイル基、特に、アセチルなどのアシル基、またはアロイル基、例えば、ベンゾイル;カーボネート基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニル;その外に、カーバメート基、例えば、メチルカルバモイル;ならびにスルホナート、例えば、トルエンスルホナートまたはメタンスルホナートである。保護基ZおよびZの更なる例は、非電子求引基、例えば、アセタール基、例えば、メトキシメチレン、エトキシエチレン、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、テトラヒドロピラニル、1−エトキシエチルおよび1−メトキシ−1−メチルエチル、またはシリルエステル、例えば、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリルおよびt−ブチルジメチルシリルである。そのような保護基の導入および切り離しは、当技術分野において周知である。例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts(eds.)Protective groups in organic synthesis.3rd edition, John Wiley 1999. 246-287およびその中の引用を参照。
【0013】
式Iの化合物と式IIの化合物との反応は、Heck反応のための、それ自体既知である条件下で実施できる。適切には、式IおよびIIの化合物のほぼ等モル量が使用される。反応の溶媒として、不活性有機溶媒のいずれもが使用可能であり、そのような溶媒の例は、有機溶媒、例えば、トルエンのような炭化水素、ジオキサンのようなエーテル、アセトニトリルのようなニトリル、アセトンのようなケトン、およびジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリドンのようなアミドである。更に、反応は、無機塩基、例えば、炭酸もしくは炭酸水素ナトリウムのような炭酸塩もしくは炭酸水素塩、KPOのようなtert−リン酸塩、または有機塩基、例えば、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンのようなアミン;あるいは酢酸ナトリウムのような酢酸アルカリであり得る塩基の存在下で適切に実施される。塩基は、反応物質IおよびIIに、それぞれ、基づいて、少なくとも等モル量で使用される。更に、Heck反応のための一般的条件に従って、酢酸パラジウムまたはPd(dba)のようなPd源および安定化リガンド、例えば、トリ−o−トリルホスフィンのようなホスフィンを含む触媒、または塩化テトラブチルアンモニウムのようなアンモニウム塩が添加される。その上、パラジウム触媒およびパラダサイクル、例えば、オキシム由来パラジウム錯体またはトランス−ジ(μ−アセタート)−ビス[o−トリルホスフィノ]]ベンジル]パラジウムII(例えば、Advanced synthesis and catalysis 344(2002),172-183およびJournal of Organometallic chemistry 576(1999),23-41を参照)は、好都合なPd源であることが判明した。
【0014】
反応は、常圧または高圧にて、そして高温、例えば、使用される溶媒の適切な圧力下での沸点までの温度にて、不活性雰囲気下で、例えば、アルゴン下で適切に実施される。
【0015】
そのように得られる式IIIの化合物は、保護基を切り離すことおよび、所望により、ヒドロキシ基のエステル化によって、レスベラトロールまたはそのエステルに変換できる。保護されるヒドロキシ基ZおよびZの切り離しは、上に引用されるような、それ自体既知である方法によって達成される。保護されるヒドロキシ基、例えば、アセトキシ基の切り離しは、例えば、高温でのアルコール性水酸化アルカリとの処理のような塩基性加水分解によって実施される。本発明の好ましい態様において、保護されるヒドロキシ基は、アセトキシ基であり、実質的に中性条件下で加水分解される。ZおよびZまたはZ、ZおよびRがアセトキシである、式IIIの化合物のそのような加水分解は、例えば、酢酸アンモニウムの水溶液(60%まで)を、ほぼ室温下または沸点までの高温下で、適切な溶媒、例えばメタノールまたはエタノール中の、式IIIの化合物の溶液に添加することによる、酢酸アンモニウムとの処理によって実施可能である。Tetrahedron 59(2003)1049-1054も参照。保護基の切り離し後、レスベラトロールおよびピセアタンノールは、それぞれ、酸性化(塩基性加水分解後)および有機溶媒、例えば、酢酸エチルを用いる抽出によって、反応混合物から単離できる。所望なら、レスベラトロールおよびピセアタンノールは、それ自体既知である方法によって、適切な酸もしくはその反応性誘導体とのエステル化によって、エステルに変換できるか、または異性体化を受けさせることができる。
【0016】
レスベラトロールおよびピセアタンノールのエステルは、それぞれ、1〜26個の炭素原子を有する非置換または置換、直鎖または分岐鎖のアルキル基から、あるいは1〜26個の炭素原子を有する非置換または置換、直鎖または分岐鎖の脂肪族、アラリファチック(araliphatic)または芳香族カルボン酸から誘導される。
【0017】
本発明の方法によって、(E)−レスベラトロールまたは(E)−ピセアタンノールは、単独のまたは実質的に単独の反応生成物として得られるが、(E)−異性体は、所望により、既知の方法によって(Z)−異性体に異性体化できる。例えば、Agric.Food Chem.43;1995;1820-1823を参照。
【0018】
本発明の別の態様において、上の反応で使用されるような、式Iの化合物は、式IV
【0019】
【化11】

【0020】
(式中、Zは、上のとおりである)
の化合物から製造される。
更に詳細には、本発明の態様に従って、式Iの化合物は、式IVの化合物を還元し、式V
【0021】
【化12】

【0022】
(式中、Zは、上のとおりである)
の化合物を得、式Vの化合物を脱水することによって製造される。
【0023】
式IVの化合物は、式Vの化合物を形成するために、触媒的水素化、例えば、アルコール性、例えば、メタノール性溶液中で、活性炭上のPdまたはPtのような貴金属触媒、またはRaney Niのような活性化Ni触媒を使用することにより、還元され得る。水素化の反応条件は、厳密に重要ではなく、水素化は、大気圧下または高圧下にて実施される。適切には、貴金属触媒の存在下で、Hを使用する水素化は、高水素圧、例えば、200バールまで、特に、約10バール〜約30バールHにて、そして約20℃〜約50℃の温度にて、実施される。式Vの化合物は、新規な化合物であり、それ自体は、本発明の目的でもある。それらは、反応溶液の、シリカゲルによるクロマトグラフィーのような慣用の手順によって単離できる。式IVの化合物は、既知であるか、それ自体既知である方法で、ヒドロキシ基を保護することによって、既知のジヒドロキシアセトフェノンから製造できる、上を参照。式Vの化合物は、アルコールのオレフィンへの変換のための、それ自体既知である手順によって、式Iの化合物に変換できる。適切には、式Vの化合物のヒドロキシ基は、最初に離脱基に変換されて、式VI
【0024】
【化13】

【0025】
(式中、Yは、離脱基であり、Zは、上のとおりである)
の化合物を得、離脱基の除去が続く。この反応ステップにおける離脱基の例は、ハロゲン、例えば、塩素または臭素;あるいはエステル基、特に、p−トシルオキシまたはメシルオキシのようなスルホニルオキシ基、またはアセトキシのようなカルボン酸エステル基;あるいは炭酸塩、またはキサントゲン酸エステルである。離脱基の導入および切り離しは、慣用の方法を使用して実施できる。それゆえ、式Vの化合物をハロゲン化剤と、例えば、三臭化リンと反応させて、Yがブロモである、式VIの化合物を得ることができる。LiBr/LiCOのような脱ハロゲン化水素剤との、式VIの化合物の処理は、式Iの化合物を製造する。式Iの化合物を生成するための、式Vの化合物の脱水は、ヒドロキシ基を、メシルまたはトシルハロゲン化物または無水物のような反応性スルホン酸誘導体とエステル化することによっても実施され、Yが、化合物IVのヒドロキシ基をエステル化するために使用されるスルホン酸誘導体のスルホニルオキシ部分である、式VIの化合物が得られる。更に、式Vの化合物に、アルキルクロロホルメート、例えば、エチルクロロホルメートを反応させて、Yがアルキル−O−CO−O−である、式VIの化合物を得ることができる。
【0026】
Yがエステル基である、式VIの化合物の、式Iの化合物への変換は、非極性溶媒、例えば。トルエンのような炭化水素、または塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素、あるいは極性溶媒、例えば、エステル、例えば酢酸エチル;あるいは、アミド、例えば、DMFまたはNMP、またはジメチルスルホキシドである、適切な、不活性で、酸安定性有機溶媒中で、使用される溶媒の沸点までの温度にて、適切に実施される。前記変換は、気相において、例えば、800℃までの温度にて、所望なら、連続法においても、実施できる。化合物VIからの離脱基Yの熱分解除去は、Yがアルキル−OCOO−を表す場合に、特に適している。特定の離脱基の切り離しのための適切な条件が当業者によって容易に決定できることは、理解される。
【0027】
式VIの化合物は、新規な化合物であり、それ自体も本発明の目的である。
【0028】
更に、式Vの化合物の、式Iの化合物への変換は、触媒量で、または等モル量までの量で使用される、無機酸、例えば、硫酸もしくは硫酸水素塩、またはリン酸;あるいは有機酸、例えば、ギ酸、またはp−トルエンスルホン酸;あるいは酸性イオン交換樹脂との式Vの化合物の処理によって、直接に実施され得る。
【0029】
以下の実施例は、発明を更に説明する。
実施例1
【0030】
500mlオートクレーブに、3,5−ジアセトキシアセトフェノン20g(85mmol)、活性炭上のパラジウム2g(触媒E101 CA/W5%、Degussa、ドイツ)およびメタノール350mlを注入した。オートクレーブを水素(3バール)で3回フラッシュし、混合物を攪拌して、水素化を水素圧30バールにて2時間に渡って実施した。
【0031】
溶液を3バールの窒素によって2回フラッシュした後、触媒をHyflo SuperCel(登録商標)での濾過によって除去した。溶媒の蒸発により、僅かに褐色の油19.2gが残り、これを、n−ヘキサン/酢酸エチル(5:2)を溶出混合物として使用して、シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィーによって、更に精製し、1−(1−ヒドロキシエチル)−3,5−ジアセトキシベンゼン18.4gを無色油として得た(81mmol、GC98%)。
実施例2
【0032】
DMF80ml中の1−(1−ヒドロキシエチル)−3,5−ジアセトキシベンゼン10g(42mmol)を、磁気スターラーを装備する、250ml2口フラスコに入れた。フラスコをアルゴンで完全にフラッシュし、混合物を0℃まで冷却した。CHCl30ml中の三臭化リン4.06ml(42mmol)溶液をゆっくり添加し、反応を、0℃で3時間以内にて、完了させた。CHClを蒸発させて、臭化リチウム21.38g(0.24mol)および炭酸リチウム20.74g(0.28mol)を使用して、中間体1−(1−ブロモエチル)−3,5−ジアセトキシベンゼンからの臭化水素の除去を実施した。混合物を、僅かなアルゴン流の下で、120℃にて18時間攪拌して、次に、酢酸エチル150mlに注入して、氷水300mlで2回に分けて抽出した。有機層を塩水および飽和NHCl溶液で洗浄して、MgSO上で乾燥させて、所望の生成物である、3,5−ジアセトキシスチレン5.18g(56%)、およびモノアセトキシスチレン3.14g(42%)を得た。
【0033】
生成物の混合物を、ピリジン10mlに溶解させ、更なる精製は行わずに、無水酢酸2.33ml(21.2mmol)と、室温にて、15時間処理した。生じた溶液を酢酸エチル100mlに注入して、1N HCl 100mlで3回抽出した。有機層を塩水50mlで2回洗浄して、MgSO上で乾燥させた。溶媒の蒸発後、n−ヘキサンおよび酢酸エチルの7:2(v/v)混合物を使用する、シリカゲルによるクロマトグラフィー精製により、3,5−ジアセトキシスチレン8.04gを無色油として得た(36.5mmol、87%)。
実施例3
【0034】
a)1−(1−ヒドロキシエチル)−3,5−ジアセトキシベンゼン0.5g(2.1mmol)を25mlフラスコに入れて、ピリジン0.31ml(3.78mmol、1.8当量)に溶解させた。反応混合物を攪拌しながら、無水酢酸2.52mmol(1.2当量)を滴下した。変換を、60℃にて3時間実施した。混合物を酢酸エチル5mlで希釈して、1N HCl 5mlによって1回抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム溶液で2回洗浄して、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒の蒸発後、1−(1−アセトキシエチル)−3,5−ジアセトキシベンゼン419mg(1.49mmol、71%)を純度99%(CGによって決定)で得た。
【0035】
b)1−(1−アセトキシエチル)−3,5−ジアセトキシ−ベンゼン20g(71mmol)をトルエン20mlに溶解させて、Raschigリングを充填した熱分解管に接続した供給容器に入れた。管を500℃まで加熱して、そのままの混合物を直ちに添加した。アルコールの変換が、2分以内に実施された。カラムをトルエンですすいだ。ワークアップは、トルエン中の粗物質を水200mlによって2回抽出することによって実施した。水溶液をトルエンで再抽出して、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥させて、減圧下で溶媒を除去して、3,5−ジアセトキシスチレン6.6g(42%)を得た。
実施例4
【0036】
(a)100ml平底フラスコに、1−(1−ヒドロキシ)−エチル−3,5−ジアセトキシ−ベンゼン12.7g(53mmol)をトルエン38mlおよびピリジン5.6g(71mmol)に溶解させる。アルゴン下で、エチルクロロホルメート6.7g(62mmol)を50℃以下の温度でゆっくりと添加する。混合物を追加的に30分間攪拌する。室温まで冷却し、その後、水13mlを反応混合物に添加して、激しく混合する。相分離の後、有機層を1N HCl 13mlで洗浄する。有機層を、中性になるまで水で洗浄し、溶媒を真空中で蒸発させて、酢酸の3−アセトキシ−5−(1−エトキシカルボニルオキシ−エチル)−フェニルエステル16.27g(99%)を得る。
【0037】
(b)酢酸の3−アセトキシ−5−(1−エトキシカルボニルオキシ−エチル)−フェニルエステル20.0gをトルエン92.5mlに溶解させ、セラミックパッキングを充填するガラス管を通じて、475℃にて、混合を連続的に処理される。反応混合物を室温まで冷却し、その後、溶媒を真空中で蒸発させ、純粋な3,5−ジアセトキシスチレン12.8g(90%)を単離する。
実施例5
【0038】
冷却器および磁気スターラーを装備し、アルゴンパイプラインに接続された3口フラスコを油浴に入れ、DMF 20ml中の、3,5−ジアセトキシ−スチレン1g(4.5mmol)、4−アセトキシブロムフェノール0.98g(4.54mmol)および重炭酸ナトリウム0.58g(5.5mmol)を注入した。アルゴンによるパージとフラスコの排気を交互に行って、混合物を脱気した。反応容器中に、脱気DMF中の、トリ−o−トリルホスフィン62.8mg(0.2mmol)および酢酸パラジウム15.3mg(0.07mmol)を添加した。生じた溶液を100℃まで加熱し、アルゴン下で、18時間還流する。精製を、反応混合物を氷冷水50mlに注入し、酢酸エチルで抽出することによって実施した。水相を塩化ナトリウムで飽和させ、酢酸エチル20mlで再抽出した。有機層を合わせ、飽和NHCl溶液50mlおよび塩水50mlで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、真空中で溶媒を蒸発させて、黄色固体1.76gを得た。酢酸エチル20ml中の、ピリジン0.8ml(10mmol)および無水酢酸1.1g(10mmol)を使用して、未処理生成物をアセチル化した。混合物を80℃にて1時間還流した。室温まで冷却した後、粗物質を酢酸エチル30mlで希釈して、1N HClで4回抽出した。有機層を、MgSO上で乾燥させ、溶媒を除去した。溶出剤として、n−ヘキサンおよび酢酸エチルの5:2(v/v)混合物を利用したシリカゲルでのクロマトグラフィー精製によって、(E)−3,4’,5−トリアセトキシスチルベン1.2gを得た(3.4mmol、75%)。
実施例6
【0039】
磁気スターラーを装備したフラスコに、3,5−ジアセトキシスチレン50mg(0.23mmol、1当量)、4−アセトキシブロモフェノール49mg(0.23mmol)、NaHCO3 46mg(0.27mmol)およびテトラブチルアンモニウムクロライド78mg(0.54mmol、2.4当量)を注入した。反応物質をDMF 2mlに懸濁させ、混合物をアルゴンでフラッシュし、次に排気した。アルゴンフラッシュおよび排気手順を3回実施した。脱気DMF 50μl(3μmol、1.5mol%)中の酢酸パラジウム0.76mgを添加することによって反応を始め、100℃にて3時間に渡って攪拌した。実施例5の手順に従った反応混合物のワークアップにより、(E)−3,4’,5−トリアセトキシスチルベンを得た。
実施例7
【0040】
磁気スターラーを装備した10ml Schlenk管に、4−アセトキシクロロフェノール119mg(0.7mmol)、3,5−ジアセトキシスチレン200mg(0.84mmol、1.2当量)、三リン酸カリウム177mg(0.84mmol、1.2当量)、ジアダマンチル−n−ブチルホスフィン5mg(0.014mmol、2mol%)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)−ジパラジウムクロロホルム錯体3.7mg(0.003mmol、0.5mol%)を注入した。管を排気し、アルゴンで3回フラッシュし、不活性条件下で、脱気DMAc 2mlを添加した。反応を、120℃にて、15.5時間に渡って攪拌しながら実施した。実施例5の手順に従った反応混合物のワークアップにより、(E)−3,4’,5−トリアセトキシスチルベンを得た。
実施例8
【0041】
磁気スターラーを装備した10ml Schlenk管に、4−アセトキシクロロフェノール59mg(0.7mmol)、3,5−ジアセトキシスチレン100mg(0.84mmol、1.2当量)、炭酸セシウム125mg(0.38mmol、1.1当量)、P(t−Bu) 5μl(0.02mmol、6mol%)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)−ジパラジウム・クロロホルム錯体5.57mg(0.01mmol、1.5mol%)を注入した。管を排気し、アルゴンで3回フラッシュして、不活性条件下で、脱気ジオキサン1mlを添加した。反応を、120℃にて、19時間に渡って攪拌しながら実施した。ワークアップを実施例5の手順に従って実施し、(E)−3,4’,5−トリアセトキシスチルベンを得た。
実施例9
【0042】
100ml平底フラスコに、4−アセトキシブロモベンゼン10.8g(50mmol)、3,5−ジアセトキシスチレン11.7g(50mmol)および炭酸カリウム8.3g(60mmol、1.2当量)を注入した。成分をNMP 35mlに溶解させ、フラスコをアルゴンでパージした。Heck反応を、不活性条件下で、NMP 5mlに溶解させた、アセトフェノン−オキシム由来パラジウム触媒(CAS No.32679-19-9、Adv. Synth. Catal. 2002, 344, No2., p.173に開示されているパラダサイクル16aも参照)6.9mg(0.05mol%)を添加することによって始めた。反応混合物を、150℃にて、3時間攪拌し、その後室温まで冷却した。酢酸エチル50mlを粗物質に添加して、得られた溶液を1N HCl 50mlで4回抽出した。水溶液を酢酸エチル50mlで2回再抽出し、有機層を合せ、MgSO上で乾燥させて、溶媒を除去した。その後のワークアップを、実施例5の手順に従って実施した。3,4’,5−トリアセトキシスチルベンの単離収量は、17.7g(94%)であった。
実施例10
【0043】
(E)−3,4’,5−トリアセトキシスチルベン50mg(0.14mmol)をメタノール3mlに溶解させて、アルゴンによって脱気した。メタノール0.5ml中の水酸化カリウム8mg(0.14mmol)を、僅かなアルゴン流下で滴下し、混合物を65℃まで30分間加熱した。得られた溶液を1N塩酸で中和し、酢酸エチル10mlに注入して、塩水5mlで3回抽出した。有機相をMgSO上で乾燥させ、溶媒を真空中で除去して、レスベラトロール30mg(0.13mmol、92%)を得た。
実施例11
【0044】
3,5−ジアセトキシ−1−(1−ヒドロキシ)−エチルベンゼン40g(0.168mol)を250ml平底フラスコに入れ、アルゴン下で、無水酢酸19.6ml(0.2mol、1.2当量)およびピリジン18.9ml(0.2mol、1.2当量)をゆっくり添加した。そのままの混合物を80℃まで1時間加熱した。室温への冷却後、酢酸エチル200mlを原(raw)物質に注入し、混合物を1N HCl 100mlで4回抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を真空中で蒸発させ、3,5−ジアセトキシ−1−(1−アセトキシ)−エチルベンゼン42.4g(97%)を得た。
実施例12
【0045】
3,5−ジアセトキシ−1−(1−ヒドロキシ)−エチルベンゼン6.32g(23mmol)およびトリエチルアミン12.3ml(87.73mmol、3.81当量)をトルエン50mlに溶解させ、0℃まで冷却した。メタンスルホニルクロライド6.26ml(79.76mmol、3.46当量)をトルエン5mlで希釈し、試薬をアルコールの溶液に滴下した。混合物を0℃にて2.5時間攪拌した。ワークアップは、飽和塩化アンモニウム溶液40mlを原反応溶液に注入して実施した。有機層を分離して、飽和塩化アンモニウム溶液40mlで1回および炭酸水素ナトリウム30mlで1回抽出して、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を真空中で蒸発させて、3,5−ジアセトキシ−1−(1−メチルスルホニル)−エチルベンゼン8.27gを純度80.7%(GC)で得た。
実施例13
【0046】
3,5−ジアセトキシ−1−(1−メチルスルホニル)−エチルベンゼン5g(13.06mmol)をトルエン20mlに溶解させて、ジイソプロピルアミン1.75ml(12.41mmol、0.95当量)を、室温にて攪拌しながらゆっくり添加した。混合物を180℃まで3.5時間加熱し、室温まで冷却した後、溶液を飽和塩化アンモニウム溶液60mlで2回抽出した。その後、有機層を水50mlで洗浄して、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。減圧下での溶媒の蒸発し、3,5−ジアセトキシスチレン2.9g(86%)を純度85%(GCによって決定)で得た。
実施例14
【0047】
3,4−ジヒドロキシ−ブロモベンゼン(Journal of Material Chemistry 10(7), 2000, 1519-1526に従って、市販の3,4−ジメトキシ−ブロモベンゼンから合成した)0.57g(3mmol)をピリジン0.31ml(3.78mmol)に溶解させた。無水酢酸6.6mmolを、反応混合物に攪拌しながら滴下した。反応を60℃にて3時間実施した。混合物を酢酸エチル5mlで希釈して、1N HClで1回抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒の蒸発後、3,4−ジアセトキシブロモベンゼン0.79g(2.9mmol、97%)を純度99%で得た。
実施例15
【0048】
磁気スターラーを装備する10ml Schlenk管に、3,4−ジアセトキシブロモベンゼン218mg(0.8mmol)、3,5−ジアセトキシスチレン176mg(0.84mmol)、炭酸カリウム187mg(0.9mmol)および実施例9で使用したような、アセトフェノン−オキシム由来パラジウム触媒、CAS No.32679−19−9 0.22mg(0.1mol%)を注入する。管を排気し、アルゴンで3回洗浄フラッシュして、脱気DMF 1mlを、不活性条件下で添加した。反応を、攪拌しながら150℃にて19時間実施した。実施例5の手順に従ってワークアップを実施して、(E)−3,3’,4’,5テトラアセトキシスチルベンを得た。
実施例16
【0049】
2−メルカプトピリジン−1−オキシド 2.6g(17.5mmol)をブロモトリクロロメタン30.0mlに溶解させて、還流まで加熱した。ブロモトリクロロメタン30.0mlに溶解させた、3,5−ジアセトキシベンゾイルクロライド4.04g(15mmol)および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル433mg(2.5mmol)の混合物を、同じ温度で滴下した。追加の2時間還流の後、反応混合物を室温まで冷却して、真空中で濃縮した。n−ヘキサンおよび酢酸エチルの9:1(v/v)混合物を溶出剤として利用した、シリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、3,5−ジアセトキシブロモベンゼン2.4g(8.7mmol、58%)を得た。
実施例17
【0050】
磁気スターラーを装備する10ml Schlenk管に、3,5−ジアセトキシブロモベンゼン218mg(0.8mmol)、4−アセトキシスチレン136mg(0.84mmol)、炭酸カリウム187mg(0.9mmol)および実施例9で使用するような、アセトフェノン−オキシム由来パラジウム触媒、CAS No.32679−19−9 0.22mg(0.1mol%)を注入する。管を排気し、アルゴンで3回フラッシュして、脱気DMF 1mlを、不活性条件下で添加した。反応を、攪拌しながら150℃にて15時間実施した。実施例4の手順に従って、ワークアップを実施し、(E)−3,4’,5−トリアセトキシスチルベンを得た。
実施例18
【0051】
トリアセトキシスチルベン2.10g(6.0mmol)を、還流下で、メタノール19.3mlに溶解させ、酢酸アンモニウム溶液(25%)39mlを、溶液に添加した。反応混合物を同じ温度で3時間攪拌して、その後、メタノールを蒸発により除去した。5℃まで冷却することによって、生成物が結晶化し、濾過することができた。レスベラトロール1.33g(5.82mmol、97%)を純粋な化合物として得た。母液をメチル−ブチル−エーテルによる抽出によって精製し、アンモニアで中和した。減圧下で濃縮した後、前述の反応に、溶液を再度使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レスベラトロールおよびピセアタンノール、ならびにそれらのエステルを製造する方法であって、式I
【化1】


の化合物を、式II
【化2】


(式中、ZおよびZは、独立して、保護されるヒドロキシ基であり;Zは、水素またはZであり;AおよびBの1つは、ビニルであり、他は、クロロまたはブロモである)
の化合物と反応させて、式III
【化3】


(式中、ZおよびZは、上のとおりであり、Rは、水素またはZである)
の化合物を得ること;
ヒドロキシ保護基を、式IIIの化合物から切り離し、レスベラトロールまたはピセアタンノールを得、所望により、そのように得られるレスベラトロールまたはピセアタンノールをエステルに変換し、更に所望により、(E)−レスベラトロールもしくはそのエステルまたは(E)−ピセアタンノールもしくはそのエステルを異性化して、対応する(Z)−異性体を得ることを含む方法。
【請求項2】
レスベラトロールを得るために、RおよびZが、水素である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Aが、ビニルであり、Bが、クロロまたはブロモである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
保護されるヒドロキシ基が、アセトキシ基である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
式IIIの化合物におけるアセトキシ基が、実質的に中性条件下で加水分解される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
加水分解が、酢酸アンモニウムを使用して実施される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
Aがビニルである、式Iの化合物が、式IV
【化4】


(式中、Zは、保護されるヒドロキシ基である)
の化合物から製造される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
Aがビニルである、式Iの化合物が、式IVの化合物を還元し、式V
【化5】


(式中、Zは、保護されるヒドロキシ基である)
の化合物を得ること及び式Vの化合物を脱水することによって製造される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式V
【化6】


(式中、Zは、保護されるヒドロキシ基である)
の化合物。
【請求項10】
1−(1−ヒドロキシエチル)−3,5−ジアセトキシベンゼンである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
式VI
【化7】


(式中、Yは、離脱基であり、Zは、保護されるヒドロキシ基である)
の化合物。
【請求項12】
1−(1−ブロモエチル)−3,5−ジアセトキシベンゼンである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
1−(1−アセトキシエチル)−3,5−ジアセトキシベンゼンである、請求項11記載の化合物。

【公表番号】特表2007−504191(P2007−504191A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525088(P2006−525088)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009669
【国際公開番号】WO2005/023740
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】