説明

スチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法

【課題】 本発明は、極めて優れた断熱性能を有し、かつ、建築資材、産業資材に適正な強度を有するスチレン系樹脂押出発泡体を提供する。
【解決手段】 特定のハイドロフルオロカーボンおよび炭素数3〜5の飽和炭化水素を含む発泡剤を用いて、特定の3方向平均気泡径および厚み方向気泡異方化率を有する気泡構造とすることにより、極めて優れた断熱性能を有し、かつ、建築資材、産業資材に適正な強度を有するスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂を押出機などにより加熱溶融し、次いで、発泡剤を添加し、冷却させ、これを低圧域に押し出すことにより発泡体を連続的に製造する方法は既に知られている。スチレン系樹脂押出発泡体は、良好な施工性や断熱特性から例えば、構造物の断熱材として用いられている。
【0003】
スチレン系樹脂押出発泡体の最も重要な特性である断熱性能を改良する為、これまで使用する発泡剤と発泡体の気泡構造に着目し検討がなされてきた。
【0004】
プロパン、ブタンといった炭化水素を使用する場合、気泡径を可能な限り微細化するといった手法により断熱性を向上させてきた。例えば、発泡剤として水を用いて、添加剤の種類、押出発泡成形条件などを調整することにより、小気泡と大気泡が海島状に混在する特徴的な気泡構造を有する発泡体を得る手法が開示されている(特許文献1〜3)。これらにより、発泡剤として炭化水素を使用して、優れた断熱性を有し、かつ軽量で、押出発泡成形性も良好である発泡体が得られる方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、気泡径を微細化した場合、表皮(スキン)付発泡体製品を得ようとする際にスキンが付きにくい、その為、生産性が低くなるといった品質上、生産上の課題があり、更なる改良が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−854630号公報
【特許文献2】特開2002−851918号公報
【特許文献3】特開2004−175862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況の下、本発明が解決しようとする課題は、極めて優れた断熱性能を有し、かつ、建築資材、産業資材に適正な強度を有するスチレン系樹脂押出発泡体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、発泡剤として、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236ea)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)のハイドロフルオロカーボン(HFC)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を使用すること、中でも、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)を使用することが、該発泡剤のガスの熱伝導率が小さく、しかも、発泡体気泡内に残存しやすいため、押出発泡体の断熱性能を改良できること、更に、気泡径、気泡形状を適正なものに調整しやすいため、特に表皮付押出発泡体を得やすく、極めて優れた断熱性能を得るためには総合的に優位であること、また、建築資材、産業資材に採用可能な圧縮強度も発現しやすいことを見出した。
【0008】
さらに、発泡剤として、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236ea)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)よりなる軍から選ばれる少なくとも1種のHFCを必須成分とし、更に炭素数が3〜5の飽和炭化水素を含むことが好ましく、併せて、優れた断熱性能を発現しつつ、安定的に押出発泡成形するには、塩化メチル、塩化エチルの塩化アルキルを含むことが望ましいことを見出した。これらを適正に組み合わせる事が発泡剤として最適である事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、次のスチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法を提供する。
[1]発泡剤が添加されたスチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られるスチレン系樹脂押出発泡体であって、発泡剤が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、発泡体をJIS A9511規程の方法で測定した熱伝導率が0.024W/mK以下、圧縮強度が15N/cm以上であることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体。
[2]スチレン系樹脂発泡体を構成する気泡の下記式(1)で求められる3方向平均気泡径が0.1〜1.0mm、下記式(2)で求められる厚み方向気泡異方化率が0.5〜1.1である[1]項記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
式(1):3方向平均気泡径=((厚み方向の平均気泡径)×(幅方向の平均気泡径)×(長さ方向の平均気泡径))(1/3)
式(2):厚み方向気泡異方化率=厚み方向の平均気泡径/3方向平均気泡径
[3]上記発泡剤が、炭素数が3〜5の飽和炭化水素の少なくとも1種を含むものである、[1]または[2]項記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
[4]上記発泡剤が、さらに、塩化メチル、塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである、[1]〜[3]項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
[5]発泡剤に二酸化炭素を含むものである[1]〜[4]項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
[6]上記スチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が30〜65kg/mである、[1]〜[5]項いずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
[7]上記スチレン系樹脂押出発泡体の厚みが10〜150mmである、[1]〜[6]項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
[8]上記スチレン系樹脂押出発泡体が表皮を有する、[1]〜[7]項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
[9]スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に添加し、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、発泡剤が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1種、および炭素数3〜5の飽和炭化水素の少なくとも1種を含む発泡剤を用いることを特徴とする[1]〜[8]項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた断熱性を有したスチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法が提供される。本発明のスチレン系樹脂発泡体は、その優れた断熱性および圧縮強度の点から、種々の用途、特に建築用断熱材、保冷庫・保冷車用断熱材の用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、特に限定はなく、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等のスチレン系単量体の単独重合体、または、これらの2種以上の単量体の組み合わせからなる共重合体;前記スチレン系単量体と、ジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの単量体の少なくとも1種を共重合させた共重合体などが挙げられる。スチレン系単量体と共重合させるアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの単量体は、製造されるスチレン系樹脂押出発泡体の圧縮強度等の物性を低下させない程度の量を用いることができる。
【0012】
また、本発明に用いるスチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体の単独重合体または共重合体に限られず、前記スチレン系単量体の単独重合体または共重合体と、前記他の単量体の単独重合体または共重合体とのブレンド物であってもよく、ジエン系ゴム強化ポリスチレンやアクリル系ゴム強化ポリスチレンをブレンドすることもできる。
【0013】
さらに、本発明に用いるスチレン系樹脂としては、メルトフローレート(以下、「MFR」と略す)、成形加工時の溶融粘度、溶融張力などを調整する目的で、分岐構造を有するスチレン系樹脂であってもよい。
【0014】
本発明のスチレン系樹脂としては、MFRが0.1〜50g/10分のものを用いることが、以下の点から好ましい。すなわち、押出発泡成形する際の成形加工性に優れ、成形加工時の吐出量、得られた熱可塑性樹脂発泡体の厚みや幅、密度または独立気泡率を所望の値に調整しやすく(すなわち、押出発泡成形性に優れ)、外観などに優れた熱可塑性樹脂発泡体が得られると共に、圧縮強度、曲げ強度または曲げたわみ量といった機械的強度や、靱性などの特性のバランスがとれた、熱可塑性樹脂発泡体が得られる点から、上記範囲のMFRを有するものが好ましい。さらに、スチレン系樹脂のMFRとしては、成形加工性および発泡性に対する機械的強度、靱性などのバランスの点から、0.3〜30g/10分がより好ましく、0.5〜20g/10分がさらに好ましい。なお、本発明におけるスチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210(1999年)のA法、試験条件Hにより測定される。
【0015】
本発明においては、前述されたスチレン系樹脂のなかでは、経済性・加工性の面から、ポリスチレン樹脂が特に好適に使用することができる。また、押出発泡体により高い耐熱性が要求される場合には、スチレン‐アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレンを用いることが好ましい。また、押出発泡体により高い耐衝撃性が求められる場合には、ゴム強化ポリスチレンを用いることが好ましい。
【0016】
これらスチレン系樹脂は、単独で使用してもよく、また、共重合成分、分子量や分子量分布、分岐構造、MFRなどの異なるスチレン系樹脂を、2種以上混合して使用してもよい。
【0017】
本発明における発泡剤としては、(イ)1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)のハイドロフルオロカーボン(HFC)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、(ロ)炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれる少なくとも1種の飽和炭化水素、必要に応じて、(ハ)塩化メチル、塩化エチルより選ばれる少なくとも1種の塩化アルキル、(ニ)二酸化炭素を含有してなるものが使用される。
【0018】
本発明においては、上記(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の発泡剤を組み合わせて用いることにより、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の厚み、幅、密度、または独立気泡率、熱伝導率、気泡径、表面性を所望の値に調整しやすくなる。つまり、押出発泡体の成形性に優れる。
【0019】
ハイドロフルオロカーボン(HFC)しては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)があげられ、中でも、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)が、該物質のガスの熱伝導率が小さく、しかも発泡体気泡内に残存しやすいため、押出発泡体の断熱性能を改良でき、また、気泡径、気泡形状を適正なものに調整しやすいため、特に好ましい。
【0020】
発泡剤としての上記HFCの含有量は、発泡剤全量100重量%に対して0〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%である。上記HFCの含有量を前記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と適正強度を両立させることができ、発泡体表面に表皮を付与させやすくする。上記HFCの含有量が前記範囲より少ないと、得られる発泡体の断熱性が劣る場合がある。
【0021】
炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタンなどが挙げられるが、発泡性が良好であることから、プロパン、n−ブタン、i−ブタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、押出発泡体の断熱性が良好となることから、n−ブタンおよびi−ブタンより選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
【0022】
発泡剤としての炭素数3〜5の飽和炭化水素の含有量は、発泡剤全量100重量%に対して0〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%である。炭素数3〜5の飽和炭化水素の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と適正強度と併用させることができる。炭素数3〜5の飽和炭化水素の量が前記範囲より少ないと、得られる発泡体の断熱性が劣る場合がある。
【0023】
発泡剤としての塩化アルキル化合物の含有量は、発泡剤全量100重量%に対して0〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。塩化アルキル化合物の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と難燃性、成形性を併用させることができる。塩化アルキルの含有量が前記範囲を超える場合、可塑性が高すぎ、押出機内のスチレン系樹脂と発泡剤との混練状態が不均一となり、押出機の圧力制御が難しくなる傾向がある。また、塩化メチルまたは塩化エチルの塩化アルキルの量が前記範囲よりも少ないと可塑性が不足し、押出成形が不安定になる傾向にある。
【0024】
本発明においては、さらなる発泡剤として、二酸化炭素を用いることにより、微細気泡の発泡体を得やすくなる。
【0025】
この場合、二酸化炭素の含有量は、発泡剤全量100重量%に対して0〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。二酸化炭素の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体の断熱性および成形性が良好となるので好ましい。
【0026】
本発明においては、発泡剤として、更に、他の発泡剤を併用してもよい。他の発泡剤としては、具体的には、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールに例示されるアルコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンに例示されるケトン類、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの無機発泡剤、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤が挙げられる。
【0027】
スチレン系樹脂押出発泡体における他の発泡剤の添加量は、断熱性、発泡成形性、発泡体密度を考慮して適宜決めればよいが、スチレン系樹脂100重量部に対して0〜4重量部が好ましく、0〜3重量部がより好ましい。
【0028】
スチレン系樹脂に対する発泡剤の全量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、4.5〜15重量部とすることが好ましい。
【0029】
本発明において、例えば、建築用断熱材のようなスチレン系樹脂押出発泡体の用途における要求に応えるために、スチレン系樹脂に難燃剤が添加されてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系化合物、窒素含有化合物などが挙げられる。 ハロゲン系難燃剤としては、具体的には、例えば、(a)テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、などの臭素化脂肪族化合物あるいはその誘導体、あるいは臭素化脂環式化合物あるいはその誘導体;(b)ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体;(c)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、などの臭素化ビスフェノール類およびその誘導体、;(d)テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー;(e)ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどの臭素化アクリル樹脂;(f)エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素および窒素原子含有化合物;(g)トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどの臭素および燐原子含有化合物;(h)塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環式化合物、などの塩素含有化合物;(i)臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物、などが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらには、本発明におけるスチレン系樹脂の1種である臭素化ポリスチレン樹脂も、難燃剤として用いることができる。
これらの中でも、難燃性の観点から、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのいずれかを含むことが、より好ましい。
【0030】
ハロゲン系難燃剤のスチレン系樹脂発泡体中における含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対し、0.1〜20重量部が好ましい。但し、JIS A9511測定方法Aに規定される難燃性が得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、難燃相乗効果を有する添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されることがより好ましく、スチレン系樹脂100重量部に対して、1〜20重量部がより好ましく、1〜15重量部がさらに好ましく、2〜8重量部が特に好ましい。ハロゲン系難燃剤の含有量が0.1重量部未満では、発泡体として、目的とする難燃性などの良好な諸特性が得られがたい傾向があり、一方、20重量部を超えると、得られる発泡体の耐熱性や表面性、発泡体製造時の安定性などをかえって損なう場合がある。
【0031】
本発明において、スチレン系樹脂発泡体の難燃性を向上させる目的で、上述したハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤を添加しても良い。
【0032】
ハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤としては、例えば、含鉄化合物、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物などが挙げられ、具体的には難燃性の観点から、含鉄化合物として酸化鉄、含燐化合物としてトリフェニルホスフェートやトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、含窒素化合物としてシアヌル酸やイソシアヌル酸およびこれらの誘導体、含ホウ素化合物として酸化ホウ素、含硫黄化合物としてスルファニル酸およびこの誘導体が、最も好ましい。
【0033】
ハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤のスチレン系樹脂発泡体中における含有量は、ハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤の種類にもよるが、スチレン系樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜8重量部がより好ましく、0.1〜5重量部がさらに好ましい。これらの範囲外ではハロゲン難燃剤との相乗効果が乏しい。
【0034】
本発明においては、さらに、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、種々のシリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有されてもよい。
【0035】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、均一な径の気泡構造、または、気泡径が小さい気泡(小気泡)と大きな気泡(大気泡)が海島状に混在する特徴的な気泡構造のどちらでもよい。
【0036】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、下記式(1)で求められる3方向平均気泡系が0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.15〜0.8mmがより好ましく、0.2〜0.7mmがさらに好ましい。3方向平均気泡径が上記範囲とされることにより、断熱性を極めて向上させることができる。また、特に発泡体表面にスキン(表皮)を付与させやすい。
式(1):3方向平均気泡径=((厚み方向の平均気泡径)×(幅方向の平均気泡径)×(長さ方向の平均気泡径))(1/3)
【0037】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、下記式(2)で求められる厚み方向での気泡異方化率が0.5〜1.1であることが好ましく、0.6〜1.1がより好ましく、0.7〜1.1がさらに好ましい。気泡異方化率が上記範囲とされることにより、圧縮強度を低下させずに断熱性とバランスよく両立される。
式(2):厚み方向気泡異方化率=厚み方向の平均気泡径/3方向平均気泡径
【0038】
本発明におけるスチレン系樹脂押出発泡体は、スチレン系樹脂を溶融混練手段に供給すると共に、核剤を含む添加剤および発泡剤を該溶融混練手段に供給してスチレン系樹脂と混練することによりスチレン系樹脂組成物とし、該スチレン系樹脂組成物を高圧領域からダイリップを通して低圧領域に押出発泡することにより得られる。
【0039】
スチレン系樹脂に各種添加剤を添加する手順として、例えば、スチレン系樹脂に対して各種添加剤を添加して混合した後、押出機に供給して加熱溶融し、更に発泡剤を添加して混合する手順が挙げられるが、各種添加剤をスチレン系樹脂に添加するタイミングや混練時間は特に限定されない。
【0040】
スチレン系樹脂の加熱温度は、使用されるスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、添加剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜260℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間当たりのスチレン系樹脂の押出量や溶融混練手段として用いる押出機の種類により異なるので一義的に規定することはできず、スチレン系樹脂と発泡剤や添加剤とが均一に分散混合されるに要する時間として適宜設定される。
【0041】
溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられるものであれば特に制限されない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるためには、押出機のスクリュー形状を低せん断タイプのものとすることが好ましい。
【0042】
発泡成形方法は、例えば、押出成形用に使用される開口部が直線のスリット形状を有するスリットダイを通じて、高圧領域から低圧領域へ開放して得られた押出発泡体を、スリットダイと密着又は接して設置された成形金型、及び該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する方法が用いられる。成形金型の流動面形状調整および金型温度調整によって、所望の発泡体の断面形状、発泡体の表面性、発泡体品質が得られる。
【0043】
スチレン系樹脂押出発泡体の気泡径を調整する手法としては、発泡剤として、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236ea)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のハイドロフルオロカーボン(HFC)および炭素数が3〜5の飽和炭化水素、必要の応じて、塩化メチル、塩化エチルの塩化アルキル、更には、二酸化炭素を使用し、各々の発泡剤の使用量、押出発泡条件(例えば、発泡時の圧力条件など)などにより調整できる。
【0044】
気泡異方化率を制御する方法としては、例えば、押出発泡成形時に溶融樹脂を大気中へ発泡させる際の厚み拡大率を調整する方法、すなわち、スリット厚みと、矩形化させるための成形金型のクリアランスを調整する方法が挙げられる。あるいは、押出発泡体を加熱しながら延伸する方法が挙げられる。詳細には、押出発泡体を加熱空気で加温しながら、ロールにより延伸処理を行う加熱延伸装置を用いて、得られた押出発泡体を加熱しながら、引き取り機の回転速度より速くロールを回転させて延伸処理を施す。これにより、押出発泡体が押出方向に延伸され、上記気泡異方化率が小さくなる。
【0045】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば、建築用断熱材や保冷庫用または保冷車用の断熱材として機能することを考慮すると、製造後7日目のJIS A9511に準じて測定される熱伝導率が、0.028W/mK以下であることが好ましく、0.026W/mK以下であることがより好ましく、0.024W/mK以下であることがさらに好ましい。
【0046】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体の密度は、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として機能することを考慮した場合、断熱性および軽量性の観点から、発泡体の密度が30〜65kg/mであることが好ましく、35〜55kg/mであることがより好ましい。
【0047】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体における厚みは、例えば、建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として機能することを考慮した場合、断熱性、曲げ強度および圧縮強度の観点から、10〜150mmであることが好ましく、15〜120mmであることがより好ましく、20〜100mmであることが特に好ましい。
【0048】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材や保冷庫用または保冷車用の断熱材として機能することを考慮した断熱性の観点から、表面に表皮を有するものであることが好ましい。押出発泡体の表面とは、スチレン系樹脂押出発泡体の厚み方向に直交する表面のことをいう。押出発泡体の厚み方向は、断熱材として使用される際に熱が流れる方向である。つまり、本発明において、表面とは、熱が流れる方向に対して垂直な面である。押出発泡体の表面に表皮を有することにより、熱伝導が一層抑制されると共に、ブタンなどの発泡剤が押出発泡体から放散されること、および押出発泡体中へ空気が侵入することが抑制され、経時的な押出発泡体の熱伝導率の変化が抑制され、経時変化のない安定した断熱性が発揮される。なお、表皮は、押出発泡体の一方の表面のみに形成されていてもよいが、上下両面となる両方の表面に表皮を有することが好ましい。
【0049】
本発明における発泡体表面に表皮を付ける方法としては、スリットダイと密着または接して設置された成形金型、及び該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロールなどを用いて、板状発泡体を成形する際に、成形金型流動面に発泡体と成形金型との間に生じる摩擦抵抗を極力低減するため表面処理を施したり、成形金型温度を発泡樹脂温度と同様温度に適切に設定することにより、発泡体表面部分の樹脂の伸びをスムーズにさせながら、発泡体表層樹脂部分を冷却、固化させることにより、発泡体表面に付与することができる。
【0050】
かくして、本発明により、優れた断熱性を有し、スチレン系樹脂押出発泡体を容易に得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは勿論である。
【0052】
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例2について、以下の方法に従って、発泡体密度、熱伝導率、圧縮強度、3方向平均気泡径、厚み方向気泡異方化率、発泡体スキン状態を評価した。
【0053】
(1)発泡体密度(kg/m
スチレン系樹脂押出発泡体を約200mm(押出方向)×100mm(幅方向)×押出厚み(厚み方向)の直方体形状に切り出して重量を測定すると共に、ノギスを用いて、縦寸法、横寸法、高さ寸法を測定した。測定された重量及び各寸法から以下の式に基づいて発泡体密度を求め、単位をkg/mに換算した。
発泡体全体密度(g/cm)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm
(2)熱伝導率(W/mK)
製造後7日経過したスチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率を、JIS A9511に準じて測定した。
【0054】
(3)圧縮強度
製造後7日経過したスチレン系樹脂押出発泡体の圧縮強度を、JIS A9511に準じて測定した。
【0055】
(4)3方向平均気泡径
発泡体を幅方向に沿って垂直(厚さ方向)に切断した断面(以下、横断面という)および長さ方向に沿って垂直(厚さ方向)に切断した断面(以下、縦断面という)の、適宜な部位をサンプリングし、この部位を走査型電子顕微鏡(SEM)にて30倍に拡大して写真撮影し、この写真から厚さ方向の平均気泡径(mm)、幅方向の平均気泡径(mm)、長さ方向平均気泡径(mm)をASTM D−3576に準じて測定した。写真撮影した部位の実寸法は約5mm×5mmであった。厚さ方向の平均気泡(mm)は横断面および縦断面の両方から求めた。サンプリングの位置は、発泡体の端部の特殊な気泡構造の部分を除けば、発泡体の何処でサンプリングしてもよい。その数値より、式(1)に基づいて、3方向平均気泡系(mm)を求めた。
式(1):3方向平均気泡径=((厚み方向の平均気泡径)×(幅方向の平均気泡径)×(長さ方向の平均気泡径))(1/3)
【0056】
(5)厚み方向での気泡異方化率
前述により求めた、発泡体気泡の厚み方向の平均気泡径(mm)、3方向平均気泡径(mm)の数値を用い、式(2)に基づいて、厚み方向気泡異方化率を求めた。
式(2):厚み方向気泡異方化率=厚み方向の平均気泡径/3方向平均気泡径
【0057】
(6)発泡体のスキン状態
得られた発泡体表面のスキン(表皮)状態を目視にて評価。判定基準は次のとおり。
○:発泡体表面のスキン状態が良好。
△:発泡体表面にワレ、クラックがところどころ見られる。
×:発泡体表面全体にワレ、クラックがみられ、スキン状態が粗悪。
【0058】
(実施例1)
ポリスチレン(大日本インキ化学工業株式会社、商品名:XC−515、MFR=1.5g/10分)100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてのヘキサブロムシクロドデカン(アルベマール・コーポレーション、商品名:SAYTEX HP−900)4重量部、タルク(林化成株式会社、商品名:タルカンパウダー)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社、商品名:SC−P)0.3重量部およびエポキシ樹脂(旭電化工業株式会社、商品名:EP−13)0.2重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの単軸押出機である第1押出機と口径90mmの単軸押出機である第2押出機とを直列に連結した二段式押出機へ、50kg/Hrで供給した。第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、約200℃にて加熱して混練し、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)3重量部、イソブタン2重量部および塩化エチル2重量部を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は8〜20MPaであり、発泡剤の圧入圧力は該樹指圧+0.5〜3MPaに設定した。第1押出機に連結された第2押出機、更にその後に連結された冷却機において、発泡剤を含む溶融スチレン系樹脂組成物の樹脂温度を約110〜130℃に冷却し、冷却機の先端に設けたダイより、スチレン系樹脂組成物を大気中へ押し出し、ダイと密着して設置された成形金型および、該成形金型の下流側に設置された成形ロールを用いて、厚み約30mm、幅約150mmの断面形状の表皮(スキン)を有する押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の評価結果を、表1に示す。
表1に示されるように、得られた押出発泡体の発泡体密度は45kg/mであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.023W/mK、圧縮強度は21N/cmであった。また、厚さ方向の平均気泡径が0.25mm、幅方向の平均気泡径が0.38mm、長さ方向の平均気泡径が0.41mmの測定結果より、3方向平均気泡径は0.38mm、厚み方向の気泡異方化率が0.92であった。また発泡体表面のスキン状態は良好(○)であった。
【0059】
(実施例2)
樹脂組成物の組成を、ポリスチレン100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてのヘキサブロムシクロドデカン4重量部、タルク0.5重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部およびエポキシ樹脂0.2重量部からなる混合物とし、発泡剤組成を、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)4重量部、イソブタン1重量部、塩化エチル3重量部および二酸化炭素2重量部とした以外は、実施例1と同様の操作により、押出発泡体(スキン付発泡体)を得た。その評価結果を、表1に示す。
表1に示されるように、得られた押出発泡体の発泡体密度は41kg/mであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.024W/mK、圧縮強度は24N/cmであった。また、厚さ方向の平均気泡径が0.25mm、幅方向の平均気泡径が0.26mm、長さ方向の平均気泡径が0.21mmの測定結果より、3方向平均気泡径は0.24mm、厚み方向気泡異方化率が1.05であった。また発泡体表面のスキン状態は良好(○)であった。
【0060】
(実施例3)
樹脂組成物の組成を、ポリスチレン100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてのヘキサブロムシクロドデカン4重量部、タルク1重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部およびエポキシ樹脂0.2重量部からなる混合物とし、また、発泡剤組成を、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)3重量部、イソブタン2重量部、塩化メチル2重量部とした以外は、実施例1と同様の操作により押出発泡体を得た。その評価結果を、表1に示す。
表1に示されるように、得られた押出発泡体の発泡体密度は43kg/mであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.023W/mK、圧縮強度は22N/cmであった。また、厚さ方向の平均気泡径が0.36mm、幅方向の平均気泡径が0.38mm、長さ方向の平均気泡径が0.39mmの測定結果より、3方向平均気泡径は0.38mm、厚み方向の気泡異方化率が0.96であった。また発泡体表面のスキン状態は良好(○)であった。
【0061】
(実施例4)
樹脂組成物の組成を、ポリスチレン100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてのヘキサブロムシクロドデカン4重量部、タルク1重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部およびエポキシ樹脂0.2重量部からなる混合物とし、また、発泡剤組成を、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)4重量部、イソブタン1重量部、塩化メチル3重量部、二酸化炭素2重量部とした以外は、実施例1と同様の操作により押出発泡体を得た。その評価結果を、表1に示す。
表1に示されるように、得られた押出発泡体の発泡体密度は51kg/mであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.023W/mK、圧縮強度は26N/cmであった。また、厚さ方向の平均気泡径が0.28mm、幅方向の平均気泡径が0.24mm、長さ方向の平均気泡径が0.27mmの測定結果より、3方向平均気泡径は0.26mm、厚み方向気泡異方化率が1.07であった。また発泡体表面のスキン状態は良好(○)であった。
【0062】
(比較例1)
樹脂組成物の組成を、ポリスチレン100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロムシクロドデカン4重量部、タルク0.5重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部およびエポキシ樹脂0.2重量部からなる混合物とし、また、発泡剤組成を、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、イソブタン3.5重量部、塩化エチル3重量部、二酸化炭素2重量部とした以外は、実施例1と同様の操作により押出発泡体を得た。その評価結果を、表1に示す。
表1に示されるように、得られた押出発泡体の発泡体密度は40kg/mであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.026W/mK、圧縮強度は25N/cmであった。また、厚さ方向の平均気泡径が0.35mm、幅方向平均の気泡径が0.36mm、長さ方向平均気泡径が0.37mmの測定結果より、3方向平均気泡径は0.36mm、厚み方向気泡異方化率が0.97であった。但し、発泡体表面のスキン状態はワレ、クラックがところどころ見られる状況(△)であった。
【0063】
(比較例2)
樹脂組成物の組成を、ポリスチレン100重量部に対して、ヘキサブロムシクロドデカン4重量部、タルク0.5重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部およびエポキシ樹脂0.2重量部からなる混合物とし、また、発泡剤組成を、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、イソブタン5重量部、塩化エチル1重量部、二酸化炭素2重量部とした以外は実施例1と同様の操作により押出発泡体を得た。その評価結果を、表1に示す。
表1に示されるように、得られた押出発泡体の発泡体密度は40kg/mであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.027W/mK、圧縮強度は26N/cmであった。また、厚さ方向の平均気泡径が0.29mm、幅方向の平均気泡径が0.26mm、長さ方向の平均気泡径が0.25mmの測定結果より、3方向平均気泡径は0.27mm、厚み方向気泡異方化率が1.09であった。但し、発泡体表面のスキン状態は発泡体表面全体にワレ、クラックがみられ、スキン状態は粗悪(×)であった。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤が添加されたスチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られるスチレン系樹脂押出発泡体であって、
発泡剤が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、発泡体をJIS A9511規程の方法で測定した熱伝導率が0.024W/mK以下、圧縮強度が15N/cm以上であることを特徴とする、スチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項2】
スチレン系樹脂発泡体を構成する気泡の下記式(1)で求められる3方向平均気泡径が0.1〜1.0mm、下記式(2)で求められる厚み方向気泡異方化率が0.5〜1.1である、請求項1に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
式(1):3方向平均気泡径=((厚み方向の平均気泡径)×(幅方向の平均気泡径)×(長さ方向の平均気泡径))(1/3)
式(2):厚み方向気泡異方化率=厚み方向の平均気泡径/3方向平均気泡径
【請求項3】
上記発泡剤が、さらに、炭素数が3〜5の飽和炭化水素の少なくとも1種を含むものである、請求項1または2に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項4】
上記発泡剤が、さらに、塩化メチル、塩化エチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項5】
上記発泡剤が、さらに、二酸化炭素を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項6】
上記スチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が30〜65kg/mである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項7】
上記スチレン系樹脂押出発泡体の厚みが10〜150mmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項8】
上記スチレン系樹脂押出発泡体が表皮を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項9】
スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に添加し、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、発泡剤が、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンよりなる群から選ばれる少なくとも1種、および炭素数3〜5の飽和炭化水素の少なくとも1種を含む発泡剤を用いることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2008−280388(P2008−280388A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123877(P2007−123877)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】