説明

スチレン系樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びにその成形品

【課題】 成形性に優れ、脆性が少なく強度に優れバラツキのない優れた吸水性能を有する成形品を得ることのできる積層発泡シート及びその製造方法並びにその成形品を提供する。
【解決手段】 スチレン系樹脂にスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物およびポリオレフィン系樹脂を加えた混合樹脂100重量部に対し、界面活性剤を0.5〜5重量部含有する樹脂組成物を発泡させて得られた吸水性を有する第一発泡体と、スチレン系樹脂からなる主として独立気泡で構成された第二発泡体とが積層されてなり、
密度が0.05g/cm以上〜0.2g/cm以下、連続気泡率が40%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びにその成形品に関し、とくに生魚や生肉等の包装容器や断熱蓋の熱成形等に使用されるスチレン系樹脂積層発泡シート、及び該積層発泡シートから得られるトレーや持ち帰り用弁当容器の蓋のような成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡シートは、容器に加工し易く、得られた容器は軽量で適度の剛性を持っているので、食品用容器として広く使用されている。しかし、ポリスチレン系樹脂発泡シート製の容器は撥水性があって水を吸収しないために、この容器の中に生肉や生魚などを入れておくと、生肉や生魚から出る肉汁が容器の底に溜まって見栄えを悪くするという欠点があった。
【0003】
従来、多層ポリスチレン系樹脂発泡体及び容器が提供されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−212914号公報
【0005】
上記公報記載の技術は、連続気泡率が40%以下のポリスチレン系樹脂発泡体と吸水性を有するポリスチレン系樹脂発泡体を積層した多層ポリスチレン系樹脂発泡体であって、容器の底に溜まる血や肉汁を吸収するという作用・効果を有する。
【0006】
しかしながら、この多層ポリスチレン系樹脂発泡体は、吸水性を有する発泡体部分(第一発泡体)については、熱成形での成形伸びが悪く、表面にクラックが入るなど成形性が充分でなかった。また、高い樹脂温度で押出されていることもあり、脆性が大きく、成形品が割れやすく強度が充分とはいえなかった。さらに、独立気泡発泡体となり易いポリスチレン樹脂で形成されているため、吸水率のバラツキが発生しやすく、連続気泡率を高めるために発泡剤に無機ガスを使用した場合には、発泡体の外観が悪化したり、また、製造条件の幅が狭くなり、安定した製造が困難になった。吸水性においても、水蒸気など気体状の水分の吸水性能が充分ではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、成形性に優れ、脆性が少なく強度に優れバラツキのない優れた吸水性能を有する成形品を得ることのできる積層発泡シート及びその製造方法並びにその成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の積層発泡シートは、スチレン系樹脂にスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物およびポリオレフィン系樹脂を加えた混合樹脂100重量部に対し、界面活性剤を0.5〜5重量部含有する樹脂組成物から得られた吸水性を有する第一発泡体と、スチレン系樹脂からなる主として独立気泡で構成された第二発泡体とが積層されてなり、密度0.05〜0.2g/cm、連続気泡率が40%以上である積層発泡シートとした。
【発明の効果】
【0009】
これによって、第一発泡体は優れた吸水性を有するとともに成形性に優れたものとなり、本発明の積層発泡シートは、脆性が少なく強度に優れ、バラツキのない優れた吸水性を有する外観に優れた成形品を得ることのできる積層発泡シートとなっている。
【0010】
また、この第一発泡体の樹脂組成物であれば、樹脂温度を抑えて共押出可能であるため、脆性を防ぎ、成形品の割れを防止し強度の向上を図ることができる。さらに、独立気泡発泡体となり易いポリスチレン樹脂主体で形成されていても、安定した連続気泡率が得られ、吸水率のバラツキが発生しにくく、発泡剤に無機ガスを使用しなくても連続気泡率を高くすることができる。従って、発泡体の外観に優れ、成形性に優れた積層発泡シートとなり、安定した製造を確保することができる。また、吸水性能も優れた強度のある成形品とすることができる。特に、水蒸気など気体状の水分の吸水性能も得られるため、前記食品用トレーのみならず、特に持ち帰り用弁当容器の蓋のような、調理された食品による水蒸気が付着しやすい成形品に対して好適に用いられる。
【0011】
すなわち、スチレン系樹脂単独で積層発泡シートとした場合には、独立気泡の発泡体となりやすいことから、連続気泡率の高い発泡体とするために、押出樹脂温度を高温度にしたり、発泡剤にスチレン系樹脂との相溶性の悪い無機系の発泡剤を使用したり、多量の無機物粉末を使用したりされる。しかし、押出樹脂温度を高温度にすると、発泡体が脆性の強いものになりやすく、また、生産性に優れる共押出で積層発泡シートを製造する場合には、金型中で高温度の第一発泡体の樹脂が第二発泡体の樹脂温度を上昇させる結果、第二発泡体の独立気泡性を低下させ、二次発泡性や強度を低下させてしまう。その結果、得られた積層発泡シートは、成形性が悪く、その成形品は強度の低いものになる。無機系の発泡剤を使用すると、押出が不安定になりやすく、押出条件幅が狭くなり、生産性を低下させる恐れがある。多量の無機物粉末を使用すると、気泡が細かくなりすぎて、発泡体の強度が低下したり、サーマルリサイクルされる場合には残灰が多くなる。
【0012】
本発明の積層発泡シートは、スチレン系樹脂にスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物およびポリオレフィン系樹脂を加えた混合樹脂100重量部に対し、界面活性剤を0.5〜5重量部含有する樹脂組成物から得られた吸水性を有する第一発泡体とスチレン系樹脂からなる主として独立気泡で構成された第二発泡体とが積層されてなり、密度0.05〜0.2g/cm、連続気泡率が40%以上である積層発泡シートとすることにより、発泡剤に樹脂との相溶性に優れた炭化水素のみを使用することができ、また第二発泡体の独立気泡性を低下させることの少ない樹脂温度に設定して、第一発泡体を高い吸水性を有する発泡体として押出すことができ、共押出で生産性よく、本願発明の積層発泡シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第一発泡体用の樹脂)
吸水性を有する第一発泡体に使用される前記樹脂としては、スチレン系樹脂、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物およびポリオレフィン系樹脂が含まれる。
【0014】
本発明の第一発泡体に使用する前記スチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体のほか、スチレンと他の単量体との共重合体およびゴム変性ポリスチレンなども挙げられる。これらのポリスチレン系樹脂はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を混合しても良い。
【0015】
スチレンと共重合すべき他の単量体としては、例えばα−メチルスチレン、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、無水マレイン酸などが挙げられる。
ゴム変性ポリスチレンは、ポリスチレンマトリックス中にゴムが粒子状に分散し、そのゴム粒子中にポリスチレンが更に分散した構造を有している。このゴム粒子は、サラミ状やコアシェル状など種々の形態をなしており、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上のゴム粒子を混合して用いてもよい。
なお、このゴム変性ポリスチレンは、発泡体の耐候性を確保するため、ゴム変性ポリスチレン以外のポリスチレン系樹脂その他の合成樹脂とあわせて使用するのが望ましい。
【0016】
また、発泡体を製造するための好ましい樹脂選択の目安は、ポリスチレン系樹脂のメルトマスフローレイトが1〜7g/10分である。ポリスチレン系樹脂のメルトマスフローレートが1g/10分より低いものは、押出発泡の際に押出機負荷が高くなったり生産性が低下したりするために好ましくない。7g/10分を超えるものは、発泡シートにした場合に低密度のものが得られにくかったり、連続気泡発泡体を得るための最適な発泡温度とポリオレフィン系樹脂の結晶化温度が近くなり、押出の制御範囲が狭くなるため好ましくない。
なお、本発明におけるメルトマスフローレイトの測定方法は下記の通りである。
JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の方法により測定した。
測定装置(セミオートメルトインデクサー((株)東洋精機製作所製)のシリンダーに樹脂サンプル3〜8gを充てんし、充てん棒を用いて材料を圧縮する。ポリエチレン系樹脂は、試験温度190℃、試験荷重21.18N、ポリスチレン系樹脂は、試験温度200℃、試験荷重49.03N、ポリプロピレン系樹脂は、試験温度230℃、試験荷重21.18Nでそれぞれ測定した。各測定の予熱時間は4分。試験回数は3回で、その平均値をその樹脂のメルトマスフローレイトとした。
【0017】
本発明ではスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物が使用される。水素添加されていないスチレンと共役ジエンとの共重合体は、分子内部に持つ二重結合の影響で発泡体及びその成形品に劣化が起こり易く、長期保存に問題が出るため好ましくない。この点で、本発明では、上記スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物は可能な限り飽和されていることが好ましいが、完全飽和型構造に限定されるものではない。但し、完全飽和型構造又はこれに実質的に近いスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物が好適である。
【0018】
スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物としては、スチレンと共役ジエンとのブロックもしくはランダム共重合体の水素添加物が好ましい。特に、JIS K 7215記載のデュロメータタイプA硬度(HDA)の値が30〜90のものが好ましい。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−エチルブタジエンなどの炭素数4〜10の共役ジエンがあげられる。好ましいスチレン−共役ジエン共重合体の水素添加物としては、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物である。これら共重合体の完全飽和型構造は、例えばスチレン−エチレン・ブチレン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体などである。これらの共重合体はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を混合してもよい。
【0019】
また本発明では、上記スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物を添加することにより、ポリオレフィン系樹脂をポリスチレン系樹脂に混合した場合でも、広範な押出条件下で均質な発泡体でかつ高い連続気泡率を有するものを容易に得ることができ、しかも得られた発泡体は、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物による、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との相溶化効果により耐衝撃性が向上し、脆性が改善される。また、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物を添加することにより、経時による劣化のために生じる発泡体の脆性も抑えられる。
【0020】
更に、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物による脆性改善効果を高めるためには、既述の通り、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物におけるJIS K 7215記載のデュロメータタイプA硬度(HDA)の値が90以下のものを使用することが好ましい。より好ましくは、HDAの値が30〜80のもので、特にHDAの値が50〜80のものが、強度保持と脆性改善効果において好ましい。脆性改善効果を高めることにより、より発泡体の脆性が抑えられるため、耐衝撃性の向上につながる。なお、HDAの値が30未満のスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物では、強度が低下する。HDAの値が90を超えると脆性改善効果が少なくなって発泡体の耐衝撃性が不充分となる。
【0021】
なお、本発明においてデュロメータタイプA硬度(HDA)の値は、高分子計器株式会社製デュロメータASKER A型と10Nの荷重がかけられる定圧荷重器を用いて、JIS K 7215:1986「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」記載の方法に準拠し測定した。その際測定サンプルは、30mm×50mm×4mmのピースを12枚作製し、これを2枚重ねることで厚み8mmの測定サンプルとして6回測定した平均をその樹脂のデュロメータタイプA硬度(HDA)の値とした。
【0022】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を挙げることができる。また、上記ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレンコポリマーなどが挙げられ、前記ポリプロピレン系樹脂としてはポリプロピレン(PP)、ポリプロピレンコポリマー(PPc)などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂は、単独で、または2種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0023】
上記ポリオレフィン系樹脂の中で、発泡体の連続気泡率を上げやすくするためには、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂を選択するのが好ましい。これは、樹脂の結晶化温度が混合組成物の発泡温度に近いためと考えられる。また、混合組成物中のポリオレフィン系樹脂が結晶化すると、発泡体表面に結晶化によるブツが出て、発泡体の表面状態が悪くなる。そのため、発泡温度はポリオレフィン系樹脂の結晶化温度以上に設定することが望ましい。しかしながら、ポリスチレン系樹脂については、一部のエンジニアリングプラスチックを除き、脆性が少なく、低密度の発泡体を得ようとすると一般的なポリプロピレン系樹脂の持つ結晶化温度付近まで発泡温度を下げる必要があり、ブツの発生しやすい状況での発泡となるため、本発明においては発泡温度を結晶化温度より高く設定しやすい点から、使用するポリオレフィン系樹脂としては高密度ポリエチレンが特に好ましい。ここで、高密度ポリエチレンとは、エチレン系樹脂のうち、密度が0.942g/cc以上のものをいう。なお、エチレン系樹脂の密度は、JIS K7112:1999「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」にて規定されたA法(水中置換法)を用いて測定されたものをいう。
ポリオレフィン系樹脂は、発泡体の連続気泡率を増加させる作用効果を有していると考えられるが、混練時にポリスチレン系樹脂との混ざりがよすぎると連続気泡率が増加し難くなる傾向が見られ、一方で混ざりが悪すぎると発泡体の外観が悪化する傾向となる。本発明でのポリオレフィン系樹脂の好ましいメルトマスフローレイトは、ポリエチレン系樹脂では2〜10g/10分であり、ポリプロピレン系樹脂では3〜15g/10分である。
なお、本発明におけるメルトマスフローレイトの測定方法は、既述した通りである。
【0024】
ポリスチレン系樹脂とスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物、更にポリオレフィン系樹脂との混合樹脂組成物の組成割合は、その全量を100重量%として、ポリスチレン系樹脂が50〜94重量%、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物が5〜49重量%、ポリオレフィン系樹脂が1〜10重量%の重量比であることが好ましい。
【0025】
ポリスチレン系樹脂の割合が94重量%より多いと、連続気泡が形成され難くなり、水の吸収性が低下するので好ましくない。押出樹脂温度をさらに高くして連続気泡を形成すると、発泡体の脆性が大きくなってしまう。逆に、ポリスチレン系樹脂の割合が50重量%より少ないと、得られる成形品の強度が低下する。スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物が49重量%を超えると、樹脂粘度が低下しすぎて、押出発泡の安定性が低下したり、またコストアップになるので、好ましくない。逆に、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物が5重量%より少ないと、連続気泡が形成され難くなり、ポリオレフィン系樹脂とスチレン系樹脂の相溶性の改善効果が低下し、発泡シートの外観が悪化したりする。またポリオレフィン系樹脂が10重量%を超えると、発泡体の剛性が低下し、強度が低下する。1重量%より少ないと、連続気泡が形成され難くなる。
特に好ましい混合樹脂組成物の混合割合は、ポリスチレン系樹脂が52〜88重量%、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物が10〜40重量%、ポリオレフィン系樹脂が2〜8重量%である。
【0026】
上記の組成からなる混合樹脂組成物に界面活性剤を添加すると、連続気泡率の高い発泡体が水を吸収しやすくなる。界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホこはく酸エステル塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤または1〜3級アルキルアミン塩、4級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤が使用できる。上記の組成からなる混合樹脂に対する親水性付与効果が大きいことから前記アニオン系界面活性剤がより好ましく、アルキルスルホン酸塩、スルホこはく酸エステル塩が特に好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0027】
界面活性剤の添加量は、前記混合樹脂組成物100重量部に対して0.5〜5重量部が適当であり、界面活性剤の添加量が0.5重量部より少ないと、発泡体の水を吸収する能力が低下し、また5重量部より多いと添加した界面活性剤の影響で押出が不安定になったり、得られた発泡体の表面に界面活性剤がブリードアウトして、発泡体や成形品の表面にぬめり感が出たり、被包装物へ界面活性剤が転移したりする問題が生じ、好ましくない。界面活性剤の特に好ましい添加量は、混合樹脂100重量部に対して1〜3重量部である。
【0028】
本発明に用いることができる発泡剤としては、公知の化学発泡剤、物理発泡剤のいずれも使用できる。化学発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミドなどの分解型のもの、重曹−クエン酸などの反応型のものが挙げられる。物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの炭化水素、窒素、二酸化炭素などの不活性ガス、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの発泡剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。しかし、不活性ガスは押出安定性を低下させて、押出条件幅を狭くして、生産性を低下させる場合があるので、有機系の物理発泡剤のみを使用することが好ましく、環境上の問題が少なくかつ熱成形時の二次発泡性の維持効果の大きいイソブタンを主体とするブタンが特に好ましい。
【0029】
本発明に用いることができる気泡調整剤としては、タルク、雲母、マイカ、モンモリロナイトなどの無機フィラー、フッ素樹脂などの有機微粒子、またはアゾジカルボンアミドなどの分解型化学発泡剤、重曹−クエン酸などの反応型化学発泡剤などが使用できる。これらの気泡調整剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。気泡調整剤の添加量は、混合樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である。
【0030】
なお、本発明の発泡体には、その他、着色剤、安定剤、充填剤、滑剤、添着剤、分散剤など、公知の添加剤を適宜加えることができる。
【0031】
(第二発泡体用の樹脂)
第二発泡体に使用するスチレン系樹脂も、第一発泡体で使用するものと同じものが使用できる。
【0032】
(積層発泡シートの密度)
積層発泡シートの密度は、0.05〜0.2g/cmであることが好ましい。密度が小さいと、強度が不足する。密度が大きいと、軽量性、断熱性が不足する。
【0033】
各発泡体の密度については特に制限はないが、同様の理由で上記範囲であることが好ましい。すなわち、前記第一発泡体の密度が0.05g/cm以上〜0.2g/cm以下であり、前記第二発泡体の密度が0.05g/cm以上〜0.2g/cm以下である積層発泡シートである。
【0034】
積層発泡シートの密度は、そのサンプルの体積V(cm)を測定し、そのサンプルの重量W(g)から下記式を用いて計算した。
発泡シート密度(単位:g/cm)=W/V
第1発泡体及び第2発泡体の各密度は、積層シートの単位面積当たりの質量を測定し、各発泡体の押出量の比率より各発泡体の質量を計算し、後述する各発泡体の厚みで乗じて密度を算出する。
【0035】
(積層発泡シートの連続気泡率)
積層発泡シートの連続気泡率は、40%以上であり、40〜80%であることが好ましい。40%未満では吸水性能が不足する。80%を超えると強度が不足する。50〜80%がより好ましく、50〜70%が特に好ましい。
【0036】
なお、本発明における連続気泡率は、ASTM D2856‐87記載の測定方法に準じて測定した。
発泡シートより、押出方向に25mm×幅方向に25mmの試験片を切りだし、試験片を厚みが25mmに最も近くなる枚数を重ね合わせ、ノギスを用いて正確に見掛け体積を測定する。次に重ね合わせた試験片を空気比較式比重計1000型(東京サイエンス(株)製)を用いて1−1/2−1気圧法により体積を測定する。各測定値から次式を用いて計算する。
連続気泡率(容量%)=(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積×100
【0037】
なお、本発明における第一発泡体は、少なくとも60%の連続気泡率を有していることが好ましい。第一発泡体の連続気泡率が60%より低いと、発泡体内部の気泡と気泡のつながりが少なく、閉じた気泡の壁が数多く存在して水様物などを吸収する時の妨げとなり、水様物などの吸収性が低下する。第一発泡体の特に好ましい連続気泡率は70%以上である。第一発泡体の連続気泡率が70%以上であれば、水様物などを容易に吸収でき吸水率も向上する。但し、連続気泡率の上限は90%以下であることが好ましい。90%を超えると、シートおよび成形品の強度低下が大きくなり好ましくない。
【0038】
なお、第一発泡体の連続気泡率の測定は、積層シートより第二発泡体部分をやすりあるいは剃刀刃で削り取り、測定用サンプルを切り出して上記方法で測定する。
【0039】
本発明の第二発泡体は、主として独立気泡で構成されている。主として独立気泡で構成されたとは、独立気泡率が50%以上であるものをいう。独立気泡率が高いほど発泡体の強度が強く、二次発泡性に優れるので、できるだけ独立気泡率が高い方が好ましい。独立気泡率は、前記連続気泡率の測定と同様の方法で測定することができる。
これを連続気泡率で言いかえるならば、連続気泡率は30%未満が好ましく、20%未満がより好ましく、15%未満が特に好ましい。連続気泡率が小さいほど発泡体の強度があり、成形時の二次発泡率も大きくなり、強度のある成形品が得られるので好ましい。
【0040】
なお、第二発泡体の連続気泡率の測定は、積層シートより第一発泡体部分をやすりあるいは剃刀刃で削り取り、測定用サンプルを切り出して上記方法で測定する。
【0041】
なお、上記積層発泡シート、上記第一発泡体、上記第二発泡体のそれぞれの独立気泡率(%)及び連続気泡率(%)は下記の通り算出される。
独立気泡率=100×{空気比較式比重計での発泡体の測定体積−(発泡体の質量/樹脂の密度)}/発泡体の見掛け体積
連続気泡率=100×(発泡体の見掛け体積−空気比較式比重計での発泡体の測定体積)/発泡体の見掛け体積
なお、独立気泡率=100−(連続気泡率+樹脂分の占める比率)である。
【0042】
(積層発泡シートの吸水量)
積層発泡シートの吸水量は、0.03g/cm以上であることが好ましい。0.03g/cm未満では吸水性能が不足する。
【0043】
積層発泡シートの吸水量の測定方法は、以下の通りである。積層発泡シートよりたて4cm、横4cm、厚み全厚みのサンプルを切り出し、その重さWoを測定する。次いで、サンプルを水中に浸漬してサンプルが浮き上がらない様に固定し、その状態にて1時間放置した後水中より取りだし、サンプル表面の付着水を拭き取り、サンプルの重さWを測定する。そして、次ぎの式により求められる値をサンプルの吸水量とする。
吸水量(g/cm)=(W−Wo)/16
これを任意の個所から切り出した10個のサンプルについて行い、その相加平均値を積層発泡シートの吸水量とする。
【0044】
(積層発泡シートの厚み)
積層発泡シートの厚みが、0.5〜4.0mmであり、吸水性を有する第一発泡体の厚みと、第二発泡体の厚みの比が、第一発泡体の厚み:第二発泡体の厚み=4.0:1〜1:1であることが好ましい。0.5mm未満では、断熱性、強度が不足する。4.0mmを超えると成形性が悪くなる。0.8〜3.5mmがより好ましい。
【0045】
また、前記第一発泡体の厚み:第二発泡体の厚みが4.0:1より大きいと、第二発泡体が薄くなり二次発泡性が低下し成形品の強度が不足する恐れがある。1:1より小さいと吸水性能が不足する。3.5:1〜1:1がより好ましく、3.0:1〜1:が特に好ましい。
【0046】
積層発泡シート、第一発泡体及び第二発泡体の厚みは、それぞれ幅方向10個所を厚みゲージ((株)ミツトヨ社製 シックネスゲージ ID−TYPE )で厚み(mm)を測定し、その平均値をその発泡シートの厚みとした。
【0047】
なお、厚み比率の測定は、積層発泡シートの垂直断面写真を撮り、厚み方向に直線を引き、直線上での各発泡体の厚み比率を測定する。これを幅方向任意の5ヶ所で行い、その相加平均を各発泡体の厚み比率とした。この厚み比率を積層シートの厚みに乗じて、各発泡体の厚みとした。共押出で製造した積層発泡シートは、製造時に一方の発泡体に着色剤を入れて着色させると測定しやすい。押出条件が確立すれば、着色剤を抜くことで無色の積層発泡シートが得られる。なお、前記垂直断面写真及び前記着色された積層発泡シートの吸水前後の厚みの拡大写真は、例えばKEYENCE社のマイクロスコープVH−5000を用いて撮影できる。
【0048】
積層発泡シートの二次発泡率は1.2倍以上であることが好ましい。1.2倍未満では、成形性が悪く、成形品の強度も不十分になりやすい。このためには、第二発泡体の連続気泡率を低くして、その二次発泡率が1.8倍以上となるようにすることが好ましい。
【0049】
二次発泡率の測定方法は、下記の通りである。
製造後14日後の積層発泡シートの厚みT1(一次厚み)を測定した後、積層発泡シートを成形機の加熱槽で加熱し二次発泡させて加熱後の厚みT2を測定する。加熱量を変化させ、積層発泡シート表面に過加熱による溶融が認められない状態でのT2/T1が最大となる二次発泡率(最大二次発泡率)を求めて、これを二次発泡率とした。
具体的には、製造後14日後の積層発泡シートの厚み(T1)を測定した後、積層発泡シートを東成産業(株)社製:型式FM−3A(単発)成形機にて、雰囲気温度を上側175±5℃、下側165±5℃に設定して、加熱秒数を1秒間隔で変化させて、積層発泡シート表面に過加熱による溶融が認められない状態でのT2/T1が最大となる二次発泡率を求めた。
第二発泡体の二次発泡率は、最大二次発泡率が得られた測定サンプルの垂直断面写真をとり、前記と同様にして厚み、厚み比率を測定し、加熱前の厚みで除じて算出した。
【0050】
本発明の積層発泡シートは、真空成形、圧空成形など、従来公知の熱成形方法によってシート成形することにより、食品用トレー、青果用トレー、持ち帰り弁当の蓋などの成形品とすることができる。成形品の被包装物収納部側壁の肉厚と、被包装物収納部の底部肉厚が不均一になると、成形品の強度が十分確保できない場合があるため、本発明の発泡体はマッチモールド真空成形で成形するのが好ましい。
【0051】
また、本発明では、押出発泡直後または成形と同時もしくは成形前に、本発明の第一発泡体の表面にその内部へ通じる開口部を設ければ、発泡体表面からその内部へ水を効率良く吸収することができる。開口部は、例えばピンの着いたロール間に発泡シートを通してシートに穴を穿つ方法、ピンを備えた成形型を用いて発泡体の熱成形と同時に開口部を設ける方法、成形品のトリミングと同時に穴を開ける方法など、種々の方法を採ることができる。なお、開口部は例えば、第一発泡体を貫通した穴、第一発泡体を貫通しない穴のほか、第一発泡体の表面層を削り取ってできるものでもよい。
なお、本発明における前記開口部の穴としては、穴径0.1〜1mm、1〜10個/cmが好ましい。穴径が0.1mm未満或いは1個/cmより少ないと水の吸収効率が低くなり、穴径が1mmを超えるか或いは10個/cmより多すぎると発泡体や成形品の強度が低下する。
【0052】
(製造方法)
本発明の積層発泡シートの製造には、公知の共押出発泡設備を用いることができる。この様な設備としては、特開平9−141773号公報、特開平6−238788号公報等に記載のものがある。
【0053】
図1は本発明に係る積層発泡シートの製造装置の一例を示す概略図である。図2は図1の合流金型の概略拡大断面図である。
【0054】
1、5は第一発泡体用のタンデム押出機を構成する押出機、2は第一発泡体用樹脂混合物を投入するホッパー、3は発泡剤の供給口、4は接続管である。6は第二発泡体用の単軸押出機、7は第二発泡体用樹脂混合物を投入するホッパー、8は発泡剤の供給口、9は合流金型、10は環状金型である。それぞれの押出機で発泡適正温度に調整された溶融状態の第一発泡体用樹脂混合物21と第二発泡体用樹脂混合物22は、合流金型9で積層され、環状金型10から押出され、エアーリング11及び冷却マンドレル12で冷却され筒状の積層発泡体となる。この発泡体は、マンドレル後部に取り付けられたカッター15、16でシートの引き取り方向に切断されて、積層発泡シートが得られる。なお、13は引き取リロール、14は巻き取りロールである。
【0055】
第一発泡体は、連続気泡率が高く、柔らかく潰れやすいので、第二発泡体の層を内側(マンドレル12側)にして押出すことが好ましい。また、金型10からの押出にあたりシート表面にエアーを吹付けて冷却することが好ましい。なお、合流金型9に注入する第一発泡体の樹脂温度と第二発泡体の樹脂温度の差を10℃未満にして押出すことが好ましい。第一発泡体を前記樹脂混合物とすることで、第一発泡体の連続気泡率を高めるために、樹脂温度を過剰に高くすることなく、発泡剤に無機系発泡剤を使用することなく、比較的低い樹脂温度設定で、高い連続気泡率で安定して生産できる。これにより、第二発泡体の樹脂温度への影響が少なく、独立気泡性の高い第二発泡体とすることができる。
第二発泡体の押出樹脂温度は、その樹脂がポリスチレン樹脂の場合は、樹脂の重合度や発泡させる倍率などによって異なるが、145〜165℃の範囲とすることで独立気泡性の高いものが得られる。
【実施例1】
【0056】
吸水性第一発泡体用に、ポリスチレン樹脂(大日本インキ化学工業社製 「XC−515」メルトマスフローレイト1.3g/10分)78.9重量%、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物(旭化成社製「SS9000」)15.8重量%、高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製 HJ565W 密度 0.968g/cm、メルトマスフローレイト 5.0g/10分)5.3重量%を含む混合樹脂組成物100重量部に対し、界面活性剤として商品名エレストマスターS−520(花王社製 アルキルスルホン酸系界面活性剤20重量%含有ポリスチレン樹脂マスターバッチ)を10重量部、気泡調整剤としてタルク0.6重量部を混合した混合原料を、内径115mmの第一押出機と、内径150mmの第二押出機が連結されたタンデム押出機の第一押出機のホッパーに供給した。押出機のシリンダー温度は最高220℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)3.5重量部を圧入、混練して、第二押出機にて発泡性溶融混合物を冷却し、樹脂温度を161℃に調整して、150kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0057】
一方、第二発泡体用として、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製 「HRM−12」メルトマスフローレイト 5.5g/10分)100重量部に対し、気泡調整剤としてタルク 0.7重量部を混合した混合物を、内径115mmの単軸押出機のホッパーに供給し、押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)4.0重量部を圧入、混練、冷却して、発泡性溶融混合物の樹脂温度を154℃に調整して、100kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
合流金型で合流された樹脂は、口径175mmの環状金型に注入され、厚み0.45mmのスリットより円筒形状に押出され、口径670mmの冷却用マンドレルに沿わせて引き取り、マンドレル後部に取り付けた2枚のカッターで円筒状の発泡体を切開して上下2枚の積層発泡シートを得た。スリットから出た直後の発泡体の内および外にエアーを吹付けて発泡体表面を冷却した。表1及び図3に示す実施例1の積層発泡シートを得た。
【0058】
図3は実施例1の断面拡大電子顕微鏡写真に係る図(倍率25倍)である。図4は、この実施例1について、吸水され状態を着色状態で示した実施例1のマイクロスコープに係る図(倍率50倍)である。前記断面拡大電子顕微鏡写真は走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−3000N)によるものであり、前記マイクロスコープはKEYENCE社のマイクロスコープVH−5000を使用した。
【実施例2】
【0059】
引取り速度を1.33倍にしたこと以外は、実施例1と同様にして積層発泡シートを製造した。
【実施例3】
【0060】
吸水性第一発泡体用に、ポリスチレン樹脂(大日本インキ化学工業社製 「XC−515」メルトマスフローレイト 1.3g/10分)80重量%、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物(旭化成社製 「SS9000」)15重量%、高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製 HJ565W 密度 0.968g/cm、メルトマスフローレイト 5.0g/10分)5重量%を含む混合樹脂組成物100重量部に対し、界面活性剤として商品名「デノン3200」(丸菱油化社製 ステアリン酸金属塩含有アルキルスルホン酸ナトリウム界面活性剤)を2重量部、気泡調整剤としてタルク0.6重量部を混合した混合原料を、内径115mmの第一押出機と、内径150mmの第二押出機が連絡されたタンデム押出機の第一押出機のホッパーに供給した。押出機のシリンダー温度は最高220℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)3.5重量部を圧入、混練して、第二押出機にて発泡性溶融混合物を冷却し、樹脂温度を165℃に調整して、200kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0061】
一方、第二発泡体用として、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製 「HRM−12」メルトマスフローレイト 5.5g/10分)100重量部に対し、気泡調整剤としてタルク0.7重量部を混合した混合物を、内径115mmの単軸押出機のホッパーに供給し、押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)3.2重量部を圧入、混練、冷却して、発泡性溶融混合物の樹脂温度を158℃に調整して、100kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
合流金型で合流された樹脂は、口径175mmの環状金型に注入され、厚み0.45mmのスリットより円筒形状に押出され、口径670mmの冷却用マンドレルに沿わせて引き取り、マンドレル後部に取り付けた2枚のカッターで円筒状の発泡体を切開して上下2枚の積層発泡シートを得た。スリットから出た直後の発泡体の内および外にエアーを吹付けて発泡体表画を冷却した。
【0062】
(比較例1)
吸水性第一発泡体用に、ポリスチレン樹脂(大日本インキ化学工業社製 「XC−515」メルトマスフローレイト 1.3g/10分)95重量%、高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製 HJ565W密度 0.968g/cm、メルトマスフローレイト 5.0g/10分)5重量%を含む混合樹脂組成物100重量部に対し、界面活性剤として商品名「デノン3200」(丸菱油化社製 ステアリン酸金属塩含有アルキルスルホン酸ナトリウム界面活性剤)を2重量部、気泡調整剤としてタルク 0.6重量部を混合した混合原料を、内径115mmの第一押出機と、内径150mmの第二押出機が連結されたタンデム押出機の第一押出機のホッパーに供給した。押出機のシリンダー温度は最高220℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)3.5重量部を圧入、混練して、第二押出機にて発泡性溶融混合物を冷却し、樹脂温度を168℃に調整して、150kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0063】
一方、第二発泡体用として、ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製 「HRM−12」メルトマスフローレイト 5.5g/10分)100重量部に対し、気泡調整剤としてタルク0.7重量部を混合した混合物を、内径115mmの単軸押出機のホッパーに供給し、押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)4.0重量部を圧入、混練、冷却して、発泡性溶融混合物の樹脂温度を154℃に調整して、100kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
合流金型で合流された樹脂は、口径175mmの環状金型に注入され、厚み0.45mmのスリットより円筒形状に押出され、口径670mmの冷却用マンドレルに沿わせて引き取り、マンドレル後部に取り付けた2枚のカッターで円筒状の発泡体を切開して上下2枚の積層発泡シートを得た。スリットから出た直後の発泡体の内および外にエアーを吹付けて発泡体表面を冷却した。
【0064】
(比較例2)
ポリスチレン樹脂(大日本インキ化学工業社製 「XC−515」メルトマスフローレイト 1.3g/10分)80重量%、スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物(旭化成社製 「SS9000」)15重量%、高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製 HJ565W 密度 0.968g/cm、メルトマスフローレイト
5.0g/10分)5重量%を含む混合樹脂組成物100重量部に対し、気泡調整剤としてタルク0.6重量部を混合した混合原料を、内径115mmの第一押出機と、内径150mmの第二押出機が運結されたタンデム押出機の第一押出機のホッパーに供給した。押出機のシリンダー温度は最高220℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)3.5重量部を圧入、混練して、第二押出機にて発泡性溶融混合物を冷却し、樹脂温度を161℃に調整して、150kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0065】
一方、第二発泡体用としてポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製 「HRM−12」メルトマスフローレイト 5.5g/10分)100重量部に対し、気泡調整剤としてタルク 0.7重量部を混合した混合物を、内径115mmの単軸押出機のホッパーに供給し、押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)4.0重量部を圧入、混練、冷却して、発泡性溶融混合物の樹脂温度を158℃に調整して、100kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
合流金型で合流された樹脂は、口径175mmの環状金型に注入され、厚み0.45mmのスリットより円筒形状に押出され、口径670mmの冷却用マンドレルに沿わせて引き取り、マンドレル後部に取り付けた2枚のカッターで円筒状の発泡体を切開して上下2枚の積層発泡シートを得た。スリットから出た直後の発泡体の内および外にエアーを吹付けて発泡体表面を冷却した。
【0066】
【表1】



【0067】
表1及び図3、図4に示す様に、実施例の積層発泡シートは、成形性に優れ、脆性が少なく強度に優れバラツキのない優れた吸水性能を有する成形品を得ることができる。特に、第一発泡体を所定の混合樹脂組成物で構成しているため、押出温度をおさえることができるため、第2発泡体のスチレン系樹脂発泡体を低密度におさえて、成形時に2次発泡倍率を大きくすることができることから、大きな吸水性能を保持しながら、脆性破壊を防止することができ、強度の大きな積層発泡体シート及びその成形品を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、生魚や生肉等の包装容器や断熱蓋の熱成形等に使用されるスチレン系樹脂積層発泡シート、及び該積層発泡シートから得られるトレーや持ち帰り用弁当容器の蓋のような成形品として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の積層発泡シートの製造装置の一例の概略図である。
【図2】図1の合流金型と環状金型の概略断面図である。
【図3】実施例1の断面拡大電子顕微鏡写真に係る図(倍率25倍)である。
【図4】実施例1について、吸水され状態を着色状態で示す実施例1のマイクロスコープに係る図(倍率50倍)である。
【符号の説明】
【0070】
1,5, 押出機
2,7 ホッパー
3,8 供給口
4 接続管
6 単軸押出機
9 合流金型
10 環状金型
11 エアーリング
12 冷却マンドレル
13 引き取りロール
14 巻き取りロール
15、16 カッター
21 第一発泡体用樹脂混合物
22 第二発泡体用樹脂混合物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂にスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物およびポリオレフィン系樹脂を加えた混合樹脂100重量部に対し、界面活性剤を0.5〜5重量部含有する樹脂組成物を発泡させて得られた吸水性を有する第一発泡体と、スチレン系樹脂からなる主として独立気泡で構成された第二発泡体とが積層されてなり、
密度が0.05g/cm以上〜0.2g/cm以下、連続気泡率が40%以上であることを特徴とする積層発泡シート。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、およびポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との混合樹脂のいずれかである請求項1に記載の積層発泡体シート。
【請求項3】
前記界面活性剤が、アルキルスルホン酸塩、スルホこはく酸エステル塩、硫酸エステル、リン酸エステル塩、1〜3級アルキルアミン及び4級アンモニウム塩の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の積層発泡体シート。
【請求項4】
前記混合樹脂組成物は、前記ポリスチレン系樹脂が50〜94重量%、前記スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物が5〜49重量%、前記ポリオレフィン系樹脂が1〜10重量%の重量比で構成される請求項1〜3のいずれかの項に記載の積層発泡体シート。
【請求項5】
前記第一発泡体が少なくとも60%の連続気泡率を有し、前記積層発泡シートの吸水量が0.03g/cm以上である請求項1〜4のいずれかの項に記載の積層発泡シート。
【請求項6】
前記積層発泡シートの二次発泡率が、1.2倍以上である請求項1〜5のいずれかの項に記載の積層発泡シート。
【請求項7】
前記積層発泡シートの厚みが0.5mm〜3.5mmであり、吸水性を有する第一発泡体の厚みと、主として独立気泡で構成された第二発泡体の厚みの比率が4.0:1〜1:1であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の積層発泡シート。
【請求項8】
前記第一発泡体の密度が0.05g/cm以上〜0.2g/cm以下、連続気泡率が60%以上であり、前記第二発泡体の密度が0.05g/cm以上〜0.2g/cm以下、連続気泡率が30%以下である請求項1〜7のいずれかの項に記載の積層発泡シート。
【請求項9】
共押出によって積層されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の積層発泡シート。
【請求項10】
前記第一発泡体の表面に、その内部に通じる開口部が形成されている請求項1〜9のいずれかの項に記載の積層発泡シート。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかの項に記載の積層発泡シートで成形された容器の成形品であって、前記容器の内側が吸水性を有する第一発泡体となるように成形され、この第一発泡体の表面にその内部に通じる開口部が形成された成形品。
【請求項12】
第一発泡体用樹脂混合物と第二発泡体用樹脂混合物とを合流金型に注入して共押出により積層発泡した積層発泡シートの製造方法において、
前記第一発泡体用樹脂混合物が、スチレン系樹脂にスチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物およびポリオレフィン系樹脂を加えた混合樹脂100重量部に対し、界面活性剤を0.5〜5重量部含有する樹脂組成物であって、前記スチレン系樹脂が50〜94重量%、前記スチレンと共役ジエンとの共重合体の水素添加物が5〜49重量%、前記ポリオレフィン系樹脂が1〜10重量%である樹脂組成物であり、
前記合流金型に注入する第一発泡体用樹脂混合物の樹脂温度と第二発泡体用樹脂混合物の樹脂温度の差を10℃未満に設定して共押出することを特徴とする積層発泡シートの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−150830(P2006−150830A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346773(P2004−346773)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】