説明

スチレン系重合体粒子、その製造方法、発泡性スチレン系重合体粒子及び発泡成形体

【課題】ニクロムカット後のカット面が平滑な発泡成形体、並びに該発泡成形体を製造し得るスチレン系重合体粒子の製造方法、スチレン系重合体粒子、発泡性スチレン系重合体粒子等の提供することを課題とする。
【解決手段】水性媒体に予め分子量調整剤を存在させ、その系にスチレン系単量体を連続的又は段階的に添加して重合を行うに当り、重合開始時の温度A℃と所定量の前記スチレン系単量体を添加し終わったときの温度B℃を、A≦B≦A+15を満たす温度とし、全重合時間の内50%以上の時間をA℃で保持することを特徴とするスチレン系重合体粒子の製造方法により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系重合体粒子、その製造方法、発泡性スチレン系重合体粒子及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、ニクロムカット後のカット面が平滑な発泡成形体を得るためのスチレン系重合体粒子、その製造方法及び発泡性スチレン系重合体粒子、ニクロムカット後のカット面が平滑な発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系重合体粒子にプロパン、ブタン、ペンタン等の揮発性発泡剤を含浸することにより、発泡性能が付与された発泡性スチレン系重合体粒子を型内発泡成形したブロック状のスチレン系樹脂発泡成形体(発泡成形体とも称する)が、その成形性の観点から、建材用のパネル、包装材等として幅広く使用されている。
一般に、ニクロム線でカット(ニクロムカットとも称する)する方法は、発泡成形体を所望の大きさ、形状に、極めて容易に加工できるため、発泡成形体の加工方法として多用されている。しかし、この加工方法では、発泡成形体がニクロム線による高熱下にさらされるため、発泡成形体のカット面(加工面)に大きな凹凸が確認されることがある。この場合、凹凸が確認されたカット面を有する発泡成形体は美麗でなく、また、カット面において接着不良等を引き起こすこともある。
従って、カット面が平滑な発泡成形体の加工品の提供が求められている。
【0003】
カット面が平滑な加工品を提供する技術が、特開平7−188453号公報(特許文献1)や特開2007−246606号公報(特許文献2)で報告されている。
特開平7−188453号公報には、スチレン系単量体の重合開始時の反応温度をA℃、重合終了時の反応温度をB℃としたときに、B℃≧A℃+15℃となるように昇温しながらスチレン系単量体を供給する発泡性スチレン系重合体粒子の製造方法が記載されている。得られた発泡性スチレン系重合体粒子に由来する発泡成形体は、発泡粒子相互の融着がよく、粒子間の間隙がよく埋められ、外観が良好であるとされている。
【0004】
また、特開2007−246606号公報では、スチレン系重合体粒子全体の重量平均分子量が33万〜50万の範囲にあり、かつスチレン系重合体粒子表層部の重量平均分子量を(X)とし、粒子全体の重量平均分子量を(Y)とした時、次式(1)で求められる分子量低下率(%):
分子量低下率(%)=(Y−X)/Y×100 (1)
が0.5〜5%の範囲内である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が記載されている。この公報では、上記分子量低下率を有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を使用することで、凹凸が少なく平滑なカット面を有する加工品を得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−188453号公報
【特許文献2】特開2007−246606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開平7−188453号公報の技術により得られた発泡成形体は、カット面の凹凸が確認されることがある。
また、特開2007−246606号公報では、カット面の平滑性を示す指標として、亀甲高さを挙げている。この公報の実施例3では、18μmと最も小さい亀甲高さが得られている。しかし、更に亀甲高さが小さい、言い換えると平滑性の更に高いカット面を与えうる発泡成形体が求められている
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして本発明によれば、水性媒体に予め分子量調整剤を存在させ、その系にスチレン系単量体を連続的又は段階的に添加して重合を行うに当り、重合開始時の温度A℃と所定量の前記スチレン系単量体を添加し終わったときの温度B℃を、A≦B≦A+15を満たす温度とし、全重合時間の内50%以上の時間をA℃で保持することを特徴とするスチレン系重合体粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記方法により得られるスチレン系重合体粒子が提供される。
更に、上記スチレン系重合体粒子から得られる発泡性スチレン系重合体粒子が提供される。
また、上記発泡性スチレン系重合体粒子を型内発泡成形して得られる発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、ニクロムカット後のカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。また、平滑なカット面を与えうる発泡性スチレン系重合体粒子及び発泡成形体を提供できる。更に、平滑なカット面を有する発泡成形体を提供できる。
また、温度A℃が、分子量調整剤の10時間半減期温度の±15℃の範囲内である場合、よりカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。
【0009】
更に、懸濁重合が、全重合時間の内、50〜80%の時間、A℃で保持される場合、よりカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。
また、スチレン系単量体が、1〜10時間以内に水性媒体にその全量添加される場合、よりカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。
更に、発泡性スチレン系重合体粒子が、600〜1500μmの平均粒子径を有する場合、よりカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。
【0010】
また、懸濁重合が、スチレン系重合体からなる種粒子を使用するシード重合法である場合、スチレン系重合体粒子の粒子径を均一にできるので、よりカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。
更に、種粒子が、難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩及び水溶性過硫酸塩から選択される塩の存在下、水性媒体中での種粒子用スチレン系単量体の懸濁重合により得られる場合、よりカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。
また、本発明によれば、カット面が平滑な発泡成形体を製造可能なスチレン系重合体粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】発泡成形体の亀甲高さの測定法の概略説明図である。
【図2】実施例1及び比較例2の亀甲高さを測定した発泡成形体の一部分の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスチレン系重合体粒子の製造方法は、水性媒体に予め分子量調整剤を存在させ、その系にスチレン系単量体を連続的又は段階的に添加して重合を行うに当り、重合開始時の温度A℃と所定量の前記スチレン系単量体を添加し終わったときの温度B℃を、A≦B≦A+15を満たす温度とし、全重合時間の内50%以上の時間をA℃で保持する方法である。
【0013】
(スチレン系単量体)
スチレン系単量体は、スチレン及び置換スチレン(置換基には、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等が含まれる)のいずれも使用できる。置換スチレンとしては、例えば、クロロスチレン類、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。この内、スチレンが一般に好ましい。また、スチレン系単量体は、スチレンと共重合可能な他の単量体との混合物が使用できる。他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数1〜8程度)、マレイン酸モノないしジアルキル(アルキル部分の炭素数1〜4程度)、無水マレイン酸、N−フェニルマレイド、(メタ)アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート(アルキレンは炭素数2〜4の範囲が好ましい)が挙げられる。これら混合物中、スチレン系単量体が優位量(例えば、50重量%以上)を占めることが好ましい。
【0014】
(分子量調整剤)
分子量調整剤としては、スチレン系樹脂粒子を構成するスチレン系樹脂の分子量を調整できさえすれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド(73.6℃)、ラウリルパーオキサイド(61.6℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(72.1℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(104.3℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(99℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(54.6℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(98.7℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(101.9℃)、2,2−t−ブチルパーオキシブタン(103.1℃)、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート(97.1℃)等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル(65℃)、アゾビスジメチルバレロニトリル(51℃)等のアゾ化合物が挙げられる。上記例示中( )内の温度は、分子量調整剤の10時間半減期を得るための分解温度(以下、10時間半減期温度とする)を意味する。
【0015】
上記分子量調整剤は、単独で又は2種以上併用して使用できる。2種以上併用する場合は、最も低い10時間半減期温度を基準とする。分子量調整剤は、水性媒体に予め添加されるが、分子量調整剤を直接水性懸濁液中に添加すると、スチレン系単量体からなる液滴に均一に吸収されにくくなることがあるので、分子量調整剤は別の水性媒体に懸濁又は乳化させた状態で添加するか、あるいは少量のスチレン系単量体に溶解し添加するか、少量のスチレン系単量体に溶解し、かつ無機系懸濁安定剤及び/又はアニオン界面活性剤とを加えた水性懸濁液として添加してもよい。
【0016】
(スチレン系重合体粒子の製造)
分子量調整剤を含む水性媒体に、スチレン系単量体を連続的又は段階的に添加して、スチレン系単量体の重合を行う。水性媒体は、水、水と水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。ここで、連続的とは、スチレン系単量体を切れ目なく水性媒体に添加することを意味し、段階的とは、添加されるスチレン系単量体を複数の区分に分け、区分と区分の間に、スチレン系単量体を添加しない時間を設けて添加することを意味する。
【0017】
ここで、本発明では、重合開始時の温度A℃と所定量のスチレン系単量体を添加し終わったときの温度B℃を、A≦B≦A+15を満たす温度とする。
温度B℃が温度A℃より低い場合、反応器を冷却や加温することが必要となるため重合時間が延長したり、分子量の調整が困難となることがある。温度B℃が温度(A+15)℃より高い場合、ニクロムカット後の凹凸が大きくなることがある。より好ましくは、温度A℃とB℃が、A≦B≦A+10を満たす温度である。
【0018】
更に、温度A℃は、10時間半減期温度の±15℃の範囲内であることが好ましい。温度A℃が(10時間半減期温度−15℃)を超えて低い場合、スチレン系単量体の重合が不十分となることで、分子量の調整が困難となることがある。温度A℃が(10時間半減期温度+15℃)を超えて高い場合、重合速度が速いため得られるスチレン系重合体粒子の分子量の再現性が悪くなることがある。
【0019】
更に、本発明では、全重合時間の内50%以上の時間がA℃で保持される。保持することで、効率よく所望の分子量に調整できる。また、懸濁重合が、全重合時間の内、50〜80%の時間、A℃で保持されることが好ましい。このように一定時間A℃で保持することで、より効率よく所望の分子量に調整できる。一定時間A℃で保持した後、A℃から0〜15℃程度高い温度に通常加温される。
【0020】
また、スチレン系単量体は、1〜10時間内に水性媒体にその全量添加されることが好ましい。この時間内に添加されることで、安定した発泡性が得られる効果がある。より好ましい添加時間は、1〜3時間である。
ところで、重合の終点は、スチレン系単量体の添加終了時とすることもできるが、通常、添加終了時から1〜8時間程度後になる。
【0021】
(シード重合法)
上記のように本発明の方法は、通常の懸濁重合法に適用できる。しかし、粒度分布のシャープなスチレン系重合体粒子を得ることを望む場合には、シード重合法に本発明の方法を適用できる。粒度分布をシャープにすることで、よりカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。シード重合法は、水性媒体中の種粒子にスチレン系単量体を吸収させ、吸収させつつ又は吸収後、スチレン系単量体を重合させることによりスチレン系重合体粒子を得る方法である。
【0022】
(1)種粒子
種粒子としては、スチレンの単独重合体、スチレンと他の共重合可能な単量体との共重合体等が用いられる。上記共重合可能な単量体としては、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル又はメタクリル酸と1〜8個の炭素数を有するアルコールとのエステル、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。共重合体の場合、ポリスチレン成分を50重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましい。
【0023】
シード重合法において、種粒子の粒子径が、ある狭い範囲内にあれば得られるスチレン系重合体粒子の粒子径もよく揃ったものとなる。すなわち、予め粒子径の揃った種粒子を用いてシード重合を行うことにより、用途に応じた所望とする粒子径のスチレン系重合体粒子を、例えば300〜500μm、500〜700μm、700〜1200μm、1200〜1500μm、1500〜2500μmのように狭い範囲に区分して、しかも各区分毎にほぼ100%の収率で得ることができる。そこで、種粒子としては、懸濁重合法によって得られた重合体粒子を一旦ふるい分級し、粒子径が平均粒子径の±20%の範囲になるように調整した重合体粒子が使用できる。塊状重合法により得る場合には、所望の粒子径にペレット化したものを使用できる。
【0024】
懸濁重合法によって種粒子を得る場合は、水性媒体中で、界面活性剤を使用せずに、難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩及び/又は水溶性過硫酸塩との存在下、スチレン系単量体を重合させる方法(いわゆるソープフリー重合法)が好ましい。
難水溶性リン酸塩としては、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム等がある。この内、リン酸三カルシウムが好ましい。また、難水溶性リン酸塩は、粉末又は水性スラリーの状態で使用できる。難水溶性リン酸塩の使用量は、種粒子形成用のスチレン系単量体に対して、固形分換算で0.03重量%以上であることが好ましい。0.03重量%より少ない場合、スチレン系単量体からなる液滴の分散状態を維持できないことがある。また、使用量が1重量%より多い場合でも懸濁重合は可能であるが、使用量を増やしたことによる効果がなく、加えて経済的ではないため、使用量の上限は1重量%であることが好ましい。
【0025】
水溶性亜硫酸塩としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム等が挙げられる。これら塩以外に、水に溶解し及び重合反応系内で反応して亜硫酸塩となる前駆物質も使用できる。このような前駆物質としては、水溶性のピロ亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜二チオン酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシル酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これら水溶性亜硫酸塩及び前駆物質の中で、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラートが好ましい。
水溶性過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。これら塩の中で、過硫酸カリウムが特に好ましい。
また、種粒子の重量平均分子量は、200000〜350000が好ましく、より好ましくは220000〜300000の範囲である。
【0026】
(シード重合条件)
種粒子を水性媒体中に懸濁させるために懸濁安定剤をもちいてもよい。懸濁安定剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、リン酸三カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。難溶性無機化合物を用いる場合には、通常ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン界面活性剤を併用してもよい。
シード重合法におけるスチレン系単量体の重合開始時の温度、所定量の前記スチレン系単量体を添加し終わったときの温度等の各種条件は、上記「スチレン系重合体粒子の製造」の欄に記載した条件を採用できる。
【0027】
ところで、種粒子を使用する場合、分子量調整剤は、予めスチレン系単量体に溶解又は分散させて得られた混合液を、水系媒体に添加することで、種粒子に吸収させておいてもよい。吸収させることで、分子量調整剤によるスチレン系重合体粒子の分子量を効率よく調整できる。なお、この場合、重合の始点は、分子量調整剤を溶解又は分散するスチレン系単量体を添加し始めた時点を意味する。
【0028】
このシード重合法に用いる種粒子の使用割合は、重合終了時のスチレン系重合体全量に対して、10〜75重量%が好ましく、より好ましくは15〜50重量%である。種粒子の使用量が10重量%未満ではスチレン系単量体を添加する際に、スチレン系重合体粒子の重合率を適正範囲に制御することが困難となり、得られる重合体が高分子量化すること、微粉末状重合体が多量に発生することで製造効率が低下すること等、工業的に不利となることがある。逆に75重量%を越えると優れた発泡成形性が得難くなる。
【0029】
(スチレン系重合体粒子)
上記方法により得られたスチレン系重合体粒子は、600〜1500μmの平均粒子径を有していることが好ましい。この範囲内の平均粒子径を有することで、よりカット面が平滑な発泡成形体を与えうるスチレン系重合体粒子を提供できる。
更に、本発明をシード重合法に適用すれば、スチレン系重合体粒子の粒子径の範囲を、メジアン径に対して、例えば±20%以下とすることができる。
【0030】
(発泡性スチレン系重合体粒子)
発泡性スチレン系重合体粒子は、上記スチレン系重合体粒子に発泡剤を含浸させることにより得られる。スチレン系重合体粒子には、スチレン系重合体粒子を水性媒体から取り出した後に発泡剤を含浸してもよく、取り出さずに水性媒体に発泡剤を圧入することで発泡剤を含浸してもよい。
【0031】
発泡剤としては、沸点が重合体の軟化点以下である易揮発性を有する、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、HCFC−141b、HCFC−142b、HCFC−124、HFC−134a、HFC−152a等が挙げられ、これらの発泡剤は、単独もしくは2種以上を併用してもよい。発泡剤の使用量は、得られる重合体粒子に対して、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜7重量%である。また、上記発泡剤の添加は、重合前、重合中、重合後のいずれの時点でもよいが、通常重合後期あるいは重合後に圧入して添加し、スチレン系重合体粒子に含浸できる。
【0032】
発泡剤と共に、発泡助剤を用いることができる。この発泡助剤としては、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等の1気圧下における沸点が200℃以下の溶剤が挙げられる。
【0033】
更に、発泡性スチレン系重合体粒子には、加熱発泡時に用いられる水蒸気の圧力が低くても良好な発泡成形性を維持させるために、1気圧下における沸点が200℃を超える可塑剤、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペート等のアジピン酸エステル、ヤシ油等の可塑剤が2.0重量%未満含有されていてもよい。
【0034】
本発明において、溶剤、可塑剤以外に発泡セル造核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤、架橋剤等の発泡性スチレン系重合体粒子を製造する際に用いられる添加剤を、必要に応じて適宜使用してもよい。
なお、本発明における発泡性スチレン系重合体粒子には、物性を損なわない範囲内において、表面被覆されていてもよい。被覆剤としては、例えば、ジンクステアレート等の粉末状金属石鹸類、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ひまし硬化油、アミド化合物、シリコン類、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
(発泡成形体)
発泡成形体は、発泡性スチレン系重合体粒子を水蒸気のような加熱媒体を用いて加熱することにより予備発泡させて予備発泡粒子を得、予備発泡粒子を成形機の型内に充填し、加熱して2次発泡させ、予備発泡粒子同士を融着一体化させることにより、所望の形状で得ることができる。成形機としては、予備発泡粒子から発泡成形体を製造する際に用いられるEPS成形機等を用いることができる。
【0036】
本発明で得られる発泡成形体をニクロムカットにより加工した場合、そのカット面の平滑性は極めて優れたものである。ここで、前記の平滑性は亀甲高さにより評価でき、本発明で得られる発泡成形体は、亀甲高さを好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下にすることができる。本発明で得られる発泡成形体は平滑なカット面を有するため、表面の平滑性が求められる建材用のパネル等の分野で好適に使用し得る。なお、加工は、ニクロム線による加工に限定されず、公知の電気抵抗加熱線を用いる加工であればよい。
【実施例】
【0037】
以下実施例を挙げて更に説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。各種製造条件及び測定方法について以下に説明する。
<スチレン系重合体粒子及び発泡性スチレン系重合体粒子の平均粒子径>
平均粒子径は次の方法で測定する。すなわち、JIS標準ふるい目開き2360μm(7.5メッシュ)、目開き2000μm(8.6メッシュ)、目開き1700μm(10メッシュ)、目開き1400μm(12メッシュ)、目開き1180μm(14メッシュ)、目開き1000μm(16メッシュ)、目開き850μm(18メッシュ)、目開き710μm(22メッシュ)、目開き600μm(26メッシュ)、目開き500μm(30メッシュ)、目開き425μm(36メッシュ)、目開き355μm(42メッシュ)、目開き300μm(50メッシュ)、目開き250μm(60メッシュ)、目開き212μm(70メッシュ)、目開き180μm(83メッシュ)のふるいで分級し、累積重量分布曲線を基にして、累積重量が50%となる粒径(メジアン系)を平均粒子径とする。
【0038】
<予備発泡粒子の嵩倍数>
予備発泡粒子の嵩密度は下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子を500cm3、メスシリンダ内に500cm3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了する。
次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。
そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3)=W/500
嵩発泡倍数は嵩密度の逆数である。
【0039】
<発泡成形体の亀甲高さ>
得られた発泡成形体のニクロムカット面の亀甲高さを以下の方法で測定し、評価する。
走査型電子顕微鏡(日本電子社製JEOL JSM−6360LV)にて、ニクロムカット面を垂直方向に20〜30倍に拡大し、図1に示すように、粒子のくぼみ深さを10粒子について測定し、その平均値を亀甲高さとする。
評価:
○:亀甲高さが30μm以下であり、凹凸がなく表面が平滑で良好である。
×:亀甲高さが30μmを超えており、凹凸がやや見られ表面の平滑がやや劣る。
【0040】
<スチレン系重合体粒子及び発泡性スチレン系重合体粒子の重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という)により、スチレン系重合体粒子及び発泡性スチレン系重合体粒子の重量平均分子量の測定を行う。
GPCの測定条件
機種:HLC−8320GPC(東ソー社製)
ガードカラム:TSK guardcolum Super HZ−H 4.6mml.D.×2cmL 1本(東ソー社製)
カラム:TSK gel Super HZM−H 4.6mml.D.×15cmL 2本(東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:試薬1級テトラヒドロフラン
流速:0.175ml/min.
試料濃度:0.03重量%
注入量:50μl
【0041】
実施例1
<スチレン系重合体種粒子の作製>
内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブ(以下、反応器という)にリン酸三カルシウム(大平化学社製)120gと亜硫酸水素ナトリウム0.2g及び過硫酸カリウム0.2gを加え、更に過酸化ベンゾイル(純度75%)140g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート30g、イオン交換水40kg及びスチレン単量体40kgを投入した後、撹拌下で溶解及び分散させ懸濁液を形成した。
【0042】
次に、200rpmの撹拌下でスチレン単量体を90℃で6時間、更に120℃で2時間重合反応させた。反応終了後、25℃まで冷却し、オートクレーブから内容物を取り出し、脱水・乾燥・分級して平均粒子径が550μm(425〜600μmの分布)、660μm(500〜710μmの分布)であるスチレン系重合体種粒子を得た。それぞれの重量平均分子量は30万であった。
【0043】
<スチレン系重合体粒子の作製>
次いで、内容積100リットルの攪拌機付オートクレーブに上記平均粒子径550μmのスチレン系重合体種粒子11kg、蒸留水32kg、ピロリン酸マグネシウム128g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.3g(純度25%、以下同じ)を入れ、撹拌し懸濁させた後、反応器内温を80℃まで昇温した。
【0044】
次いで予め用意した蒸留水3000g、ピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3g及びスチレン1540gをホモミキサーで攪拌して懸濁液を調製し、この懸濁液を80℃に保持した反応器に添加し、次いでスチレン1140gを228g/分で反応器へ供給し、供給終了時点から15分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンを吸収させた。
【0045】
続いて、分子量調整剤として純度75%のベンゾイルパーオキサイド220g(10時間半減期温度は73.6℃)をスチレン1890gに溶解し、蒸留水2000g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gと共にホモミキサーで攪拌して調製した懸濁液を80℃に保持した反応器に供給した。
【0046】
分子量調整剤を含む懸濁液の反応器への供給終了時点から10分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンと分子量調整剤を吸収させた後、スチレン28.43kgを反応器内に9.48kg/hrの速度で連続的に3時間供給するとともに、スチレン供給開始時点から2時間後に反応器内温度を5℃/hrのスピードで1時間、連続的に昇温し、反応器内温度を85℃とした。
引き続き85℃で1時間保持することでスチレン系重合体粒子を得た。
【0047】
<発泡性スチレン系重合体粒子の作製>
上記スチレン系重合体粒子を含む反応器内に、蒸留水2000gにピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベゼンスルホン酸ナトリウム3g、エチレンビスステアロアマイド13.2gを加えてホモミキサーで攪拌して分散液を調製し、この分散液を加えた。その後、発泡剤であるノルマルブタン(小池化学社製商品名ノルマルブタン)880g、ペンタン1088gを圧入し、100℃まで昇温した。100℃で3時間保持した後、20℃まで冷却して、反応器から発泡性スチレン系重合体粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥して発泡性スチレン系重合体粒子を得た。この発泡性スチレン系重合体粒子の平均粒子径は850μmであり、600〜1000μmの分布があった。また、重量平均分子量は21万であった。
【0048】
<予備発泡粒子の作製>
発泡性スチレン系重合体粒子40kgをタンブラーミキサーに投入し、続けて重量平均分子量が300であるポリエチレングリコール20g、平均分子量378の流動パラフィン12g、100csであるジメチルポリシロキサン8gを投入し、15分間タンブラーミキサーを回転させた。次にステアリン酸亜鉛32g、ステアリン酸トリグリセライド12g、ステアリン酸モノグリセライド20g、12ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド28gをタンブラーミキサーに投入し、15分間回転させ、発泡性スチレン系重合体粒子の表面を被覆した。
【0049】
この表面被覆された発泡性スチレン系重合体粒子を15℃で3日間熟成させた後、特許庁公報57(1982)−133〔3347〕周知・慣用技術集(発泡成形)P.39記載の発泡層上面検出器までの容積量が350リットルである円筒型バッチ式加圧予備発泡機に投入し、蒸気により加熱することにより予備発泡粒子を得た。この予備発泡粒子の嵩発泡倍数は60倍であった。
【0050】
<発泡成形体の作製>
予備発泡粒子を室温雰囲気下で24時間放置後、キャビティのサイズ:高さ1840mm、幅930mm、奥行530mmの成形型を有するブロック成形機(笠原工業社製PEONY‐205DS)を用い、成形型のキャビティ内に前記予備発泡粒子を充填し、0.06MPa(ゲージ圧)の蒸気圧で20秒間加熱し、次いで成形型内圧力が−0.01MPaになるまで冷却し、成形型から離型し、ブロック状の発泡成形体を製造し、60℃乾燥室に3日間保管した。
【0051】
この発泡成形体の長さ1840mm×幅930mmの平面を下にしてニクロムカット機の台に置き、0.4mm径のニクロム線を50mm間隔で平行に10本張設し、発泡成形体の送り速度600mm/分、電流3A/本の条件にてニクロムカットを行い、平板形状のスライス品を得た。
【0052】
実施例2
反応器に実施例1で得た平均粒子径660μmのスチレン系重合体種粒子11kg、蒸留水32kg、ピロリン酸マグネシウム128g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.3gを入れ、撹拌し懸濁させた後、反応器内温を82℃まで昇温した。
【0053】
次いで予め用意した蒸留水3000g、ピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3g及びスチレン1540gをホモミキサーで攪拌して懸濁液を調製し、この懸濁液を82℃に保持した反応器に添加し、次いでスチレン1140gを228g/分で反応器へ供給し、供給終了時点から15分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンを吸収させた。
【0054】
続いて、分子量調整剤として純度75%のベンゾイルパーオキサイド220gをスチレン1890gに溶解し、蒸留水2000g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gと共にホモミキサーで攪拌して調製した懸濁液を82℃に保持した反応器に供給した。
【0055】
分子量調整剤を含む懸濁液の反応器への供給終了時点から10分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンと分子量調整剤を吸収させた後、スチレン28.43kgを反応器内に9.48kg/hrの速度で連続的に3時間供給するとともに、スチレン供給開始時点から2時間後に反応器内温度を5℃/hrのスピードで1時間、連続的に昇温し、反応器内温度を87℃とした。
引き続き87℃で1時間保持することでスチレン系重合体粒子を得た。
【0056】
上記スチレン系重合体粒子を含む反応器内に、蒸留水2000gにピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベゼンスルホン酸ナトリウム3g、エチレンビスステアロアマイド6.6g、トルエン13.2g、シクロヘキサン6.6gを加えてホモミキサーで攪拌して分散液を調製し、この分散液を反応器内に加えた。その後、発泡剤であるノルマルブタン(小池化学社製、商品名ノルマルブタン)3696g、ペンタン1320gを圧入し、100℃まで昇温した。100℃で3時間保持した後、20℃まで冷却して、反応器から発泡性スチレン系重合体粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。この発泡性スチレン系重合体粒子の平均粒子径は1100μmであり、710〜1180μmの分布があった。また、重量平均分子量は24万であった。
以降の工程は実施例1と同様に実施することで平板状のスライス品を得た。
【0057】
実施例3
反応器に実施例1で得た平均粒子径660μmのスチレン系重合体種粒子22kg、蒸留水32kg、ピロリン酸マグネシウム128g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.3gを入れ、撹拌し懸濁させた後、反応器内温を80℃まで昇温した。
【0058】
次いで予め用意した蒸留水3000g、ピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3g及びスチレン858gをホモミキサーで攪拌して懸濁液を調製し、この懸濁液を80℃に保持した反応器に添加し、次いでスチレン5500gを275g/分で反応器へ供給し、供給終了時点から15分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンを吸収させた。
【0059】
続いて、分子量調整剤として純度75%のベンゾイルパーオキサイド77gをスチレン2000gに溶解し、蒸留水2000g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gと共にホモミキサーで攪拌して調製した懸濁液を80℃に保持した反応器に供給した。
【0060】
分子量調整剤を含む懸濁液の反応器への供給開始時点から55分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンと分子量調整剤を吸収させた後、スチレン13.64kgを反応器内へ連続的に1時間で供給した。
引き続き80℃で40分間保持することでスチレン系重合体粒子を得た。
【0061】
上記スチレン系重合体粒子を含む反応器内に、蒸留水2000gにピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベゼンスルホン酸ナトリウム3g、エチレンビスステアロアマイド13.2g、トルエン176gを加えてホモミキサーで攪拌して分散液を調製し、この分散液を反応器内に加えた。その後、発泡剤であるノルマルブタン(小池化学社製、商品名ノルマルブタン)1276g、ペンタン2948gを圧入し、100℃まで昇温した。100℃で3時間保持した後、20℃まで冷却して、反応器から発泡性スチレン系重合体粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。この発泡性スチレン系重合体粒子の平均粒子径は850μmであり、600〜1000μmの分布があった。重量平均分子量は29万であった。
以降の工程は実施例1と同様に実施することで平板状のスライス品を得た。
【0062】
実施例4
反応器に実施例1で得た平均粒子径550μmのスチレン系重合体種粒子11kg、蒸留水32kg、ピロリン酸マグネシウム128g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.3gを入れ、撹拌し懸濁させた後、反応器内温を75℃まで昇温した。
【0063】
次いで予め用意した蒸留水3000g、ピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3g及びスチレン1540gをホモミキサーで攪拌して懸濁液を調製し、この懸濁液を75℃に保持した反応器に添加し、次いでスチレン1140gを228g/分で反応器へ供給し、供給終了時点から15分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンを吸収させた。
【0064】
続いて、分子量調整剤として純度75%のベンゾイルパーオキサイド220g及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート40gをスチレン1890gに溶解し、蒸留水2000g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gと共にホモミキサーで攪拌して調製した懸濁液を75℃に保持した反応器に供給した。
【0065】
分子量調整剤を含む懸濁液の反応器への供給終了時点から10分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンと分子量調整剤を吸収させた後、スチレン28.43kgを反応器内に9.48kg/hrの速度で連続的に3時間供給するとともに、スチレン供給開始時点から2時間後に反応器内温度を13℃/hrのスピードで1時間、連続的に昇温し、反応器内温度を88℃とした。
引き続き88℃で1時間保持することでスチレン系重合体粒子を得た。
【0066】
上記スチレン系重合体粒子を含む反応器内に、蒸留水2000gにピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベゼンスルホン酸ナトリウム3g、エチレンビスステアロアマイド13.2g、トルエン13.2g、シクロヘキサン6.6gを加えてホモミキサーで攪拌して分散液を調製し、この分散液を反応器内に加えた。その後、発泡剤であるノルマルブタン(小池化学社製、商品名ノルマルブタン)880g、ペンタン1088gを圧入し、100℃まで昇温した。100℃で3時間保持した後、20℃まで冷却して、反応器から発泡性スチレン系重合体粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。この発泡性スチレン系重合体粒子の平均粒子径は850μmであり、600〜1000μmの分布があった。また、重量平均分子量は28万であった。
以降の工程は実施例1と同様に実施することで平板状のスライス品を得た。
【0067】
比較例1
反応器に実施例1で得た平均粒子径550μmのスチレン系重合体種粒子11kg、蒸留水32kg、ピロリン酸マグネシウム128g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.3gを入れ、撹拌し懸濁させた後、反応器内温を75℃まで昇温した。
【0068】
次いで予め用意した蒸留水3000g、ピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3g及びスチレン1540gをホモミキサーで攪拌して懸濁液を調製し、この懸濁液を75℃に保持した反応器に添加し、次いでスチレン1140gを228g/分で反応器へ供給し、供給終了時点から15分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンを吸収させた。
【0069】
続いて、分子量調整剤として純度75%のベンゾイルパーオキサイド220gをスチレン1890gに溶解し、蒸留水2000g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gと共にホモミキサーで攪拌して調製した懸濁液を75℃に保持した反応器に供給した。
【0070】
分子量調整剤を含む懸濁液の反応器への供給終了時点から10分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンと分子量調整剤を吸収させた後、スチレン28.43kgを反応器内に9.48kg/hrの速度で連続的に3時間供給するとともに、スチレン供給開始時点から2時間後に反応器内温度を17℃/hrのスピードで1時間、連続的に昇温し、反応器内温度を92℃とした。
引き続き92℃で1時間保持することでスチレン系重合体粒子を得た。
【0071】
上記スチレン系重合体粒子を含む反応器内に、蒸留水2000gにピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベゼンスルホン酸ナトリウム3g、エチレンビスステアロアマイド13.2g、トルエン13.2g、シクロヘキサン6.6gを加えてホモミキサーで攪拌して分散液を調製し、この分散液を反応器内に加えた。その後、発泡剤であるノルマルブタン(小池化学社製、商品名ノルマルブタン)880g、ペンタン1088gを圧入し、100℃まで昇温した。100℃で3時間保持した後、20℃まで冷却して、反応器から発泡性スチレン系重合体粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。この発泡性スチレン系重合体粒子の平均粒子径は850μmであり、600〜1000μmの分布があった。また、重量平均分子量は29万であった。
以降の工程は実施例1と同様に実施することで平板状のスライス品を得た。
【0072】
比較例2
反応器に実施例1で得た平均粒子径550μmのスチレン系重合体種粒子11kg、蒸留水32kg、ピロリン酸マグネシウム128g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.3gを入れ、撹拌し懸濁させた後、反応器内温を75℃まで昇温した。
【0073】
次いで予め用意した蒸留水3000g、ピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3g及びスチレン220gをホモミキサーで攪拌して懸濁液を調製し、この懸濁液を75℃に保持した反応器に添加し、15分間スチレン系重合体種粒子にスチレンを吸収させた。
【0074】
続いて、分子量調整剤として純度75%のベンゾイルパーオキサイド160gをスチレン1860gに溶解し、蒸留水2000g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3gと共にホモミキサーで攪拌して調製した懸濁液を75℃に保持した反応器に供給した。
【0075】
分子量調整剤を含む懸濁液の反応器への供給終了時点から10分間、スチレン系重合体種粒子にスチレンと分子量調整剤を吸収させた後、スチレン31.42kgを反応器内に11.8kg/hrの速度で連続的に2時間40分で供給するとともに、スチレン供給開始時点から17℃/hrのスピードで連続的に昇温し、スチレン供給終了時点の反応器内温度を108℃とした。
引き続き108℃で1時間保持することでスチレン系重合体粒子を得た。
【0076】
上記スチレン系重合体粒子を含む反応器内に、反応器内温度を100℃まで冷却し、蒸留水2000gにピロリン酸マグネシウム13g、ドデシルベゼンスルホン酸ナトリウム3g、エチレンビスステアロアマイド13.2g、トルエン13.2g、シクロヘキサン6.6gを加えてホモミキサーで攪拌して分散液を調製し、この分散液を反応器内に圧入した。その後、発泡剤であるノルマルブタン(小池化学社製商品名ノルマルブタン)880g、ペンタン1088gを圧入した。100℃で3時間保持した後、20℃まで冷却して、反応器から発泡性スチレン系重合体粒子を取り出し、洗浄、脱水、乾燥した。この発泡性スチレン系重合体粒子の平均粒子径は850μmであり、600〜1000μmの分布があった。また、重量平均分子量は31万であった。
以降の工程は実施例1と同様に実施することで平板状のスライス品を得た。
【0077】
表1に、実施例及び比較例で得られた発泡成形体のスライス品の評価結果を示す。また、実施例1及び比較例2の発泡成形体の亀甲高さを測定した一部分の拡大写真を図2に示す。図2(a)が実施例1の、図2(b)が実施例2の拡大写真である。図2(a)では18μmの亀甲高さの部分が、図2(b)では76μmの亀甲高さの部分が、それぞれ写されている。
【0078】
【表1】

【0079】
表1より、実施例と比較例とから、スチレンの添加終了時の温度B℃を重合開始時の温度A℃〜(A+15)℃の範囲とすることで、カット面の平滑性が極めて高い発泡成形体を得ることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体に予め分子量調整剤を存在させ、その系にスチレン系単量体を連続的又は段階的に添加して重合を行うに当り、重合開始時の温度A℃と所定量の前記スチレン系単量体を添加し終わったときの温度B℃を、A≦B≦A+15を満たす温度とし、全重合時間の内50%以上の時間をA℃で保持することを特徴とするスチレン系重合体粒子の製造方法。
【請求項2】
前記重合開始時の温度A℃が、前記分子量調整剤の10時間半減期を得るための分解温度の±15℃の範囲内である請求項1に記載のスチレン系重合体粒子の製造方法。
【請求項3】
前記懸濁重合が、全重合時間の内、50〜80%の時間、A℃で保持される請求項1又は2に記載のスチレン系重合体粒子の製造方法。
【請求項4】
前記スチレン系単量体が、1〜10時間内に前記水性媒体にその全量添加される請求項1〜3のいずれか1つに記載のスチレン系重合体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記スチレン系重合体粒子が、600〜1500μmの平均粒子径を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載のスチレン系重合体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記懸濁重合が、スチレン系重合体からなる種粒子を使用するシード重合法である請求項1〜5のいずれか1つに記載のスチレン系重合体粒子の製造方法。
【請求項7】
前記種粒子が、難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩及び水溶性過硫酸塩から選択される塩の存在下、水性媒体中での種粒子用スチレン系単量体の懸濁重合により得られる請求項6に記載にスチレン系重合体粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法により得られたスチレン系重合体粒子。
【請求項9】
請求項8に記載のスチレン系重合体粒子に発泡剤を含浸することにより得られた発泡性スチレン系重合体粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の発泡性スチレン系重合体粒子を型内発泡成形して得られる発泡成形体。
【請求項11】
前記発泡成形体が、電気抵抗加熱線でカットされた断面を有する請求項10に記載の発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−74144(P2011−74144A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224980(P2009−224980)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】