説明

ステアリングメンバ取付構造

【課題】コックピットモジュールの車体への組み付けが容易であるとともに、ステアリングメンバの剛性を十分に確保でき、さらには車両前突時にその衝撃力を十分に吸収することのできるステアリングメンバ取付構造を提供する。
【解決手段】コックピットモジュール内のステアリングメンバ5がポストブラケット12を介してダッシュパネルに取り付けられたステアリングメンバ取付構造であって、ポストブラケット12をポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14とに2分割するとともに、ポストブラケットアッパ13に長穴18Bを、ポストブラケットロア14に切欠き穴25Bをそれぞれ形成する。そして、長穴18B及び切欠き穴25Bをボルトを通し、そのボルトをナットで締め付けることにより、ポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14を互いに車体前後方向にスライド可能に締結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コックピットモジュールに組み込まれたステアリングメンバを、ポストブラケットを介してダッシュパネルに取り付けたステアリングメンバ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、車室内前部にはインストルメントパネルが設置されている。このインストルメントパネルには、外側に計器類等が取り付けられるとともに、内側にエアコンやエアコンダクト等が収容される。このような計器類、エアコン及びエアコンダクト等を予めインストルメントパネルに取り付けてユニット化した場合、そのユニットはコックピットモジュールと呼ばれている。
【0003】
近年、コックピットモジュールは、サプライヤで組み立てられた後に自動車メーカに納入されている。コックピットモジュールの内部には、車幅方向に1本のステアリングメンバが組み込まれており、自動車メーカでは、ステアリングメンバの車幅方向両端部をフロントピラー付近の車体パネルに、ステアリングメンバの車幅方向中間部をポストブラケットを介して車体のダッシュパネルにそれぞれ取り付けることにより、コップピットモジュールを車室内前部に組み付けている。
【0004】
ところで、コックピットモジュールにはステアリングシャフトも組み込まれており、このステアリングシャフトはステアリングメンバに固定されている。車両前突時、二次衝突によってステアリングシャフトには車両前方への衝撃力が作用するが、このとき、ステアリングメンバの車両前方への変位量が少ないと、二次衝突による前記衝撃力を十分に吸収できない。
【0005】
そこで、ステアリングメンバをブラケットを介してインストルメントパネルに取り付け、車両前突時には前記ブラケットの途中が外れて、ステアリングメンバが車両前方へ容易に変位できるようにし、二次衝突による衝撃力の吸収効果増大を図ったステアリングメンバ取付構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−203364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術のうち特許文献1に示された技術では、ステアリングメンバがブラケットを介してインストルメントパネルに取り付けられ、インストルメントパネルで支持された構成であるので、ステアリングメンバの剛性を十分に確保できないという問題がある。
【0007】
また、ステアリングメンバをポストブラケットを介してダッシュパネルに取り付けたものでは、ステアリングメンバの剛性を十分に確保できるが、車両前突時の衝撃力を十分に吸収できないという問題がある。すなわち、車両前突時には、ダッシュパネルが車両後方へ移動することにより、衝突による衝撃が吸収される訳であるが、ステアリングメンバをポストブラケットを介してダッシュパネルに取り付けた構成では、ダッシュパネルの車両後方への移動が阻止されてしまう。
【0008】
さらに、ステアリングメンバをポストブラケットを介してダッシュパネルに取り付けたものでは、コックピットモジュールを車体に組み付ける際に、ポストブラケットの製造上の誤差やポストブラケットのステアリングメンバへの取り付け誤差があると、ポストブラケットの前端とダッシュパネルとの間に隙間が生じたり、ポストブラケットの前端とダッシュパネル間がきつすぎたりして、コックピットモジュールの車体への組み付けが難しくなるという問題もある。
【0009】
本発明の課題は、コックピットモジュールの車体への組み付けが容易であるとともに、ステアリングメンバの剛性を十分に確保でき、さらには車両前突時にその衝撃力を十分に吸収することのできるステアリングメンバ取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、ステアリングメンバをダッシュパネルの取り付けるためのポストブラケットに改良を加えた点に特徴がある。すなわち、本発明は、コックピットモジュールに組み込まれたステアリングメンバがポストブラケットを介してダッシュパネルに取り付けられたステアリングメンバ取付構造であって、前記ポストブラケットを2分割して、一方のポストブラケットを前記ダッシュパネルに、他方のポストブラケットを前記ステアリングメンバにそれぞれ取り付けるとともに、前記両ポストブラケットを互いに車体前後方向にスライド可能に締結したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポストブラケットが2分割されているので、ポストブラケットの全長をステアリングメンバとダッシュパネル間の距離に合わせることが容易となり、コックピットモジュールの車体への組み付けを極めて簡単に行うことができる。
【0012】
また、ステアリングメンバがポストブラケットを介してダッシュパネルに取り付けられているので、ステアリングメンバの剛性を十分に確保することができる。
【0013】
さらに、両ポストブラケットが互いに車体前後方向にスライド可能に締結されているので、車両前突時には、両ポストブラケットが車体前後方向に相対的にスライドし、衝突による衝撃力を十分に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係るステアリングメンバ取付構造の概略構成を示している。自動車の車室1の前部には、インストルメントパネル2が設置されている。インストルメントパネル2は、その上部が、車室1とエンジンルーム3とを仕切るダッシュパネル4に接して配置され、インストルメントパネル2の内側には、車幅方向(図の紙面垂直方向)にステアリングメンバ5が設けられている。
【0016】
図には示してないが、インストルメントパネル2には、外側に計器類等が取り付けられるとともに、内側にエアコンやエアコンダクト等が収容されている。このような計器類、エアコン及びエアコンダクト等並びにステアリングメンバ5を予めインストルメントパネル2に取り付けてユニット化した場合、そのユニットはコックピットモジュール6と呼ばれている。
【0017】
ステアリングメンバ5の左右両端部(車幅方向両端部)は車体のフロントピラー付近の車体パネル(図示省略)に取り付けられている。また、コックピットモジュール6には、ステアリングシャフト7が車室1側を上に、エンジンルーム3側を下にして、コックピットモジュール6を斜めに貫通して設けられている。ステアリングシャフト7の端部(車室1側の端部)にはステアリングホイール8が取り付けられている。
【0018】
コックピットモジュール6の内部において、ステアリングシャフト7の中間部は、ブラケット9を介してステアリングメンバ5の中間部(車幅方向中間部)に固定されている。ブラケット9は、ステアリングシャフト側のブラケット9Aとステアリングメンバ側のブラケット9Bとからなり、両ブラケット9A,9Bはボルト10及びナット11によって互いに締結されている。なお、図1において、4Bはフロントウインドウである。
【0019】
また、コックピットモジュール6の内部において、ステアリングメンバ5の中間部(車幅方向中間部)は、ポストブラケット12を介してダッシュパネル4に固定されている。ポストブラケット12は、図2に示すように、ポストブラケットアッパ13と、ポストブラケットロア14とを有し、両ポストブラケット13,14はボルト15及びナット16(図4参照)によって互いに連結される。
【0020】
ポストブラケットアッパ13は、L字型に折り曲げられ縦壁17及び横壁(底壁)18を有するアッパ本体部19と、アッパ本体部19の下方に設けられ横壁18に平行に配置された平板部20と、U字型に曲げられ横壁18と平板部20とを繋ぐ連結部21とを備えている。なお、アッパ本体部19、平板部20及び連結部21は一体的に形成されている。
【0021】
アッパ本体部19の縦壁17は、車幅方向両側部が後方に向かってL字状に折り曲げられ、その縦壁17の両側に側壁17Aがそれぞれ設けられている。これら側壁17Aを設けることにより、縦壁17の曲げ強度が高められている。また、アッパ本体部19の横壁18は、車幅方向両側部が上方に向かってL字状に折り曲げられ、その横壁18の両側に側壁18Aがそれぞれ設けられている。これら側壁18Aを設けることにより、横壁18の曲げ強度が高められている。そして、ポストブラケットアッパ13は、横壁18の部分において、その両側端に側壁18Aが設けられているので、車体前後方向に垂直な面で切った断面形状が開放部を上に向けたコ字状を成している。
【0022】
アッパ本体部19の縦壁17には、その中央部にボルト穴17Bが形成されている。また、アッパ本体部19の横壁18には、その中央部に、車体前後方向に長い長穴18Bが形成されている。長穴18Bはバーリング加工によって成型され、長穴18Bの内周縁部に立ち下がり部18Cが形成されている(図4及び図5参照)。
【0023】
図2には示してないが、アッパ本体部19下方の平板部20には、その中央部に長穴20Aが設けられている(図4及び図5参照)。長穴20Aは、長穴18Bと略同形状に形成されている。
【0024】
連結部21は、その車幅方向の幅W1がアッパ本体部19の幅W2や平板部20の幅W3よりも小さく形成されており、U字型に曲げ加工しやすくなっている。
【0025】
一方、ポストブラケットロア14は、ロア本体部22と、ロア本体部22の先端(車体前部側先端)が側面視(つまり、車幅方向に見た場合)でコ字状に折り曲げられた折り曲げ部23とを備えている。なお、ロア本体部22及び折り曲げ部23は一体的に形成されている。
【0026】
ロア本体部22は横壁(底壁)24を有し、その横壁24の両側部は上方に向かってL字状に折り曲げられ、横壁24の両側に側壁24Aがそれぞれ設けられている。これら側壁24Aを設けることにより、横壁24の曲げ強度が高められている。そして、ポストブラケットロア14は、横壁24の両側端に側壁24Aが設けられているので、車体前後方向に垂直な面で切った断面形状が開放部を上に向けたコ字状を成している。また、各側壁24Aの後部(車体後部側)24Bは円弧状にカットされ、これら後部24Bがステアリングメンバ5の外周面に溶接等によって固定されている。
【0027】
折り曲げ部23は、上部の平板状部分25が車体後方に向かって折り返され、その平板状部分25には、その後縁25Aから車体前部側に向かって切欠き穴25Bが形成されている。
【0028】
図3は、ポストブラケットアッパ13の平面図である。図3において、破線はポストブラケットロア14の折り曲げ部23の平板状部分25を示している。図3に示すように、アッパ本体部19の横壁18には、長穴18Bの左右両側(車幅方向に沿って左右両側)にスリット26がそれぞれ形成されている。これらスリット26は車両前後方向に形成されている。また、スリット26の前端及び後端には、応力集中を防ぐため小穴27が設けられている。
【0029】
図4は、ボルト15及びナット16によってダッシュパネル4に取り付けられたポストブラケット12を示しており、図3のSA−SA線に沿った断面図である。また、図5は、図3のSB−SB線に沿った断面図である。なお、図3においては、ダッシュパネル4は省略されている。
【0030】
図4及び図5に示すように、ポストブラケットアッパ13の平板部20には、その中央に長穴20Aが形成されている。この長穴20Aは、アッパ本体部19に形成された長穴18Bと大きさが同じで且つ同形状をしており、前記長穴18Bに対向配置されている。ただし、長穴20Aの内周縁部には、長穴18Bにある立ち下がり部18Cは設けられていない。
【0031】
また、ポストブラケットアッパ13のアッパ本体部19の横壁18底面には、車幅方向に沿って2箇所に下方に向かってピン28が設けられている。これらのピン28は、長穴18Bの後方(車体前後方向に沿って後方)に配置され、ピン18とピン18の間隔はポストブラケットロアの切欠き穴の幅よりも僅かに小さく設定されている。
【0032】
アッパ本体部19と平板部20との間には、ポストブラケットロア14の折り曲げ部23の平板状部分25が挿入されている。このとき、アッパ本体部19の立ち下がり部18Cは、平板状部分25の切欠き穴25B内に入り込んでいる。アッパ本体部19の長穴18B、立ち下がり部18C、及び平板部20の長穴20Aにはボルト15が挿通され、このボルト15にはナット16が螺合している。そして、ボルト15及びナット16が締め付けられて、ポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14は互いに連結されている。なお、15A,16Aはワッシャである。
【0033】
また、図4に示すように、ダッシュパネル4には取付穴4Aが設けられ、この取付穴4Aに合わせてポストブラケットアッパ13が取り付けられている。すなわち、ポストブラケットアッパ13のアッパ本体部19に形成されたボルト穴17B、及びダッシュパネル4の取付穴4Aには、ボルト29が挿通され、このボルト29にはナット30が螺合しており、ボルト29及びナット30が締め付けられて、ポストブラケットアッパ13はダッシュパネル4に固定されている。なお、29A,30Aはワッシャである。
【0034】
図6は、図3のSC−SC線に沿った断面図である。図6に示すように、ポストブラケットアッパ13のアッパ本体部19の横壁18には、スリット26(図3参照)の車幅方向外側に下に向かって突出した凸部31が形成され、この凸部31はポストブラケットロア14の平板状部分25上面を押圧している。これにより、通常走行時に、ポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14とが、車体の振動で車体前後方向にずれてしまうのが阻止されている。
【0035】
図7及び図8も図3のSC−SC線に沿った断面図であり、図6の変形例である。図7においては、アッパ本体部19の横壁18には、上面視でL字型の切り込み18Cが入れられ、その切り込み18Cが入れられた部分32が車体後部側を基点にして斜め下方に折り曲げられ、その折り曲げ部先端部がポストブラケットロア14の平板状部分25上面に接触し、平板状部分25を押圧している。この場合も、図6の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
図8においては、アッパ本体部19の横壁18には、下に向かって突出した凸部33が車体前後方向に沿って2箇所に形成され、これら凸部33はポストブラケットロア14の平板状部分25上面を押圧している。この場合も、図6の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
次に、コックピットモジュール6(図1参照)をダッシュパネル4に取り付ける手順について、図9を用いて説明する。サプライヤーにおいて、コックピットモジュール6内のステアリングメンバ5にポストブラケットロア14が取り付けられ、また、ポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14とがボルト15及びナット16(図4又は図5参照)で仮締めされる。さらに、ポストブラケットアッパ13のボルト穴17B(図4参照)にはボルト29が通され、その端部にナット30(図4参照)が螺合される。この状態で、コックピットモジュール6は自動車メーカに供給される。
【0038】
自動車メーカにおいては、コックピットモジュール6をダッシュパネル4に取り付ける際に、図9に示すように、ステアリングメンバ5とダッシュパネルとの距離Lに応じて、ポストブラケットアッパ13を矢印A方向(車体前後方向)に移動させ、ポストブラケットアッパ13の縦壁17がダッシュパネル4に密着するよう調整する。このとき、図3に示すように、ポストブラケットロア14の平板状部分25に形成された切欠き穴25B内に長穴18B内周縁部の立ち下がり部18C及びピン28が位置するように、ポストブラケットロア14の平板状部分25をポストブラケットアッパ13の横壁18と平板部20との間に押し込む。
【0039】
ポストブラケットアッパ13の縦壁17がダッシュパネル4に密着したら、ボルト15及びナット16を締め付けて、ポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14を互いに連結する。さらに、ボルト29及びナット30を締め付けて、ポストブラケットアッパ13をダッシュパネル4に取り付ける。その結果、図10に示すように、ステアリングメンバ5、つまりコックピットモジュール6がダッシュパネル4に取り付けられる。
【0040】
図11は、車両前突時におけるポストブラケットアッパ13及びポストブラケットロア14の様子を示している。ポストブラケットアッパ13には長穴18B及び長穴20A(図4参照)が、ポストブラケットロア14には切欠き穴25B(図2参照)がそれぞれ形成され、ボルト15は、これら長穴18B、長穴20A及び切欠き穴25Bに挿通された状態でポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14とを連結しているので、ポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14とは車体前後に互いにスライド可能となっている。
【0041】
このため、車両前突時に、衝突による衝撃力によってダッシュパネル4が矢印B方向に押されると、ポストブラケットアッパ13は矢印C方向(車体後部方向)へ容易に移動する。その結果、衝突による衝撃力を十分に吸収することができる。衝撃力が大きいときは、ボルト15が外れて、図11に示すように、ポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14との連結が解かれる。この場合は、衝突による衝撃力をより十分に吸収することができる。
【0042】
また、本実施例によれば、ポストブラケット12がポストブラケットアッパ13とポストブラケットロア14とに2分割されているので、ポストブラケット12の全長をステアリングメンバ5とダッシュパネル4間の距離Lに合わせることが容易となり、コックピットモジュール6の車体への組み付けを極めて簡単に行うことができる。
【0043】
さらに、ステアリングメンバ5がポストブラケット12を介してダッシュパネル4に取り付けられているので、ステアリングメンバ5の剛性を十分に確保することができる。
【実施例2】
【0044】
図12は実施例2を示している。本実施例においては、ポストブラケットアッパ40とポストブラケットロア41とを有し、ポストブラケットアッパ40はダッシュパネル4(図1参照)に取り付けられ、ポストブラケットロア41はステアリングメンバ5に固定されている。
【0045】
ポストブラケットアッパ40は、L字型に折り曲げられ縦壁42及び横壁(底壁)43とを有する。縦壁42は、車幅方向両側部が後方に向かってL字状に折り曲げられ、その縦壁42の両側に側壁42Aがそれぞれ設けられている。また、横壁43は、車幅方向両側部が上方に向かってL字状に折り曲げられ、その横壁43の両側に側壁43Aがそれぞれ設けられている。そして、ポストブラケットアッパ40は、横壁43の部分において、その両側端に側壁43Aが設けられているので、車体前後方向に垂直な面で切った断面形状が開放部を上に向けたコ字状を成している。
【0046】
縦壁42には、その中央部にボルト穴42Bが形成されている。また、横壁43には、その中央部に、車体前後方向に長い長穴43Bが形成されている。
【0047】
本実施例では、横壁43両側の側壁43Aに、車体上下方向に沿ってビード44が形成されている。これらビード44は車幅方向外側に向かって形成されている。
【0048】
一方、ポストブラケットロア41は横壁(底壁)45を有し、その横壁45の両側部は上方に向かってL字状に折り曲げられ、横壁45の両側に側壁45Aがそれぞれ設けられている。そして、ポストブラケットロア41は、横壁45の両側端に側壁45Aが設けられているので、車体前後方向に垂直な面で切った断面形状が開放部を上に向けたコ字状を成している。
【0049】
また、横壁45には、その中央に、車体前後方向に長い長穴45Bが形成されている。さらに、各側壁45Aの後部(車体後部側)45Cは円弧状にカットされ、これら後部45Cがステアリングメンバ5の外周面に溶接等によって固定されている。
【0050】
ポストブラケットアッパ40とポストブラケットロア41は、それぞれに形成された長穴43B,45Bにボルト(図示省略)が挿通される。そして、当該ボルトの端部にはナット(図示省略)が螺合しており、これらボルト及びナットを締め付けることにより、ポストブラケットアッパ40とポストブラケットロア41は互いに連結される。
【0051】
本実施例によれば、ポストブラケットアッパ40とポストブラケットロア41とが、各長穴43B,45Bに挿通されたボルトによって互いに連結された構造であるから、ポストブラケットアッパ40はポストブラケットロア41に対して車体前後方向にスライド可能である。そのため、車両前突時にダッシュパネル4に衝撃力が加わったときに、ポストブラケットアッパ40は車体後部側へ容易に移動し、前記衝撃力を十分に吸収する。
【0052】
また、本実施例によれば、ポストブラケットアッパ40の横壁43両側の側壁43Aにビード44が形成されているので、ダッシュパネル4により大きな衝撃力が加わったときは、ポストブラケットアッパ40がビード44の所で矢印D方向に折れ曲がり、これにより、衝突による衝撃力をより一層十分に吸収することができる。
【実施例3】
【0053】
図13は実施例3を示している。本実施例においては、実施例2のように側壁43Aにビード44を形成する代わりに、横壁43に2つの貫通穴43Cが設けられている。
【0054】
このような貫通穴43Cが形成されていると、この貫通穴43Cの部分が脆弱部となり、車両前突時に衝撃が加わると、ポストブラケットアッパ40は貫通穴43Cの所で矢印E方向に折れ曲がり、これにより、衝突による衝撃力をより一層十分に吸収することができる。
【0055】
なお、貫通穴43Cは1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、貫通穴43Cの代わりに、横壁43に薄肉の部分を形成しても良い。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記各実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るステアリングメンバ取付構造の概略構成図である。
【図2】実施例1によるステアリングメンバ取付構造の要部斜視図である。
【図3】ポストブラケットアッパの平面図である。
【図4】図3のSA−SA線に沿った断面図である。
【図5】図3のSB−SB線に沿った断面図である。
【図6】図3のSC−SC線に沿った断面図である。
【図7】図6の変形例を示す断面図である。
【図8】図6の他の変形例を示す断面図である。
【図9】コックピットモジュールをダッシュパネルに取り付ける際の手順を説明する図である。
【図10】コックピットモジュールをダッシュパネルに取り付けた状態を示す図である。
【図11】車両前突時に、コックピットモジュール内部が変形する様子を示す図である。
【図12】実施例2によるステアリングメンバ取付構造の要部斜視図である。
【図13】実施例3によるステアリングメンバ取付構造の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
4 ダッシュパネル
5 ステアリングメンバ
6 コックピットモジュール
9 ブラケット
12 ポストブラケット
13 ポストブラケットアッパ
14 ポストブラケットロア
15 ボルト
16 ナット
17 縦壁
17B ボルト穴
18 横壁(底壁)
18A 側壁
18B,20A 長穴
24 横壁(底壁)
24A 側壁
25B 切欠き穴
40 ポストブラケットアッパ
41 ポストブラケットロア
43 横壁(底壁)
43A 側壁
43B 長穴
43C 貫通穴
44 ビード
45 横壁(底壁)
45A 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コックピットモジュールに組み込まれたステアリングメンバがポストブラケットを介してダッシュパネルに取り付けられたステアリングメンバ取付構造であって、
前記ポストブラケットを2分割して、一方のポストブラケットを前記ダッシュパネルに、他方のポストブラケットを前記ステアリングメンバにそれぞれ取り付けるとともに、前記両ポストブラケットを互いに車体前後方向にスライド可能に締結したことを特徴とするステアリングメンバ取付構造。
【請求項2】
前記両ポストブラケットには車体前後方向に沿って長穴及び切欠き穴がそれぞれ形成され、
前記長穴及び切欠き穴に、ナットが螺合したボルトを挿通し、前記ボルト及び前記ナットを締め付けることにより、前記両ポストブラケットが互いにスライド可能に締結されることを特徴とする請求項1に記載のステアリングメンバ取付構造。
【請求項3】
前記両ポストブラケットは、車体前後方向に垂直な面で切った断面形状が開放部を上に向けたコ字状を成し、
前記一方のポストブラケットの断面コ字状部分の底壁に前記長穴が形成され、かつ前記他方のポストブラケットの底壁は側面視でコ字状に折り曲げられて、その折り曲げ部端部に前記切欠き穴が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のステアリングメンバ取付構造。
【請求項4】
前記両ポストブラケットには車体前後方向に沿って長穴がそれぞれ形成され、
前記各長穴に、ナットが螺合したボルトを挿通し、前記ボルト及び前記ナットを締め付けることにより、前記両ポストブラケットが互いにスライド可能に締結されることを特徴とする請求項1に記載のステアリングメンバ取付構造。
【請求項5】
前記両ポストブラケットは、車体前後方向に垂直な面で切った断面形状が開放部を上に向けたコ字状を成し、
前記両ポストブラケットの断面コ字状部分の底壁に前記長穴がそれぞれ形成され、かつ前記一方のポストブラケットには断面コ字状部分の側壁に車幅方向外側へ突出したビードが車体上下方向に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のステアリングメンバ取付構造。
【請求項6】
前記両ポストブラケットは、車体前後方向に垂直な面で切った断面形状が開放部を上に向けたコ字状を成し、
前記両ポストブラケットの断面コ字状部分の底壁に前記長穴がそれぞれ形成され、かつ前記一方のポストブラケットには断面コ字状部分の底壁に貫通穴又は薄肉部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のステアリングメンバ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−208590(P2009−208590A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53176(P2008−53176)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】