説明

ステアリング装置

【課題】ステアリングコラムに付着した水滴がハウジング内部へ浸入することをコスト安価に防止できるステアリング装置を提供する。
【解決手段】本ステアリング装置1は、ステアリングコラム4の長手方向F1の下部4bに設けられ回路基板9を収容するハウジング12を備える。ハウジング12は、下向きに開放する開口19を有する本体15と、本体15の開口19を閉じる蓋16とを含む。本体15に、ステアリングコラム4の長手方向F1に沿って斜め下方へ移動する水滴を、開口19の縁部23と蓋16との合わせ面としての下面20から離隔した位置で受け止めて斜め下側へ流すための傾斜状の受け部24が形成される。水滴は、合わせ面から離れた受け部24によって受け止められて、斜め下側へ流され、水滴の浸入が防止される。受け部24はもともとあるハウジング12に形成され、安価で済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置には、ステアリングコラムに回路基板を取り付けたコラム式の電動パワーステアリング装置がある(例えば、特許文献1参照。)。例えば、回路基板は、ステアリングコラムの一部を構成するハウジングに収容される。このハウジングは、開口を有する本体と、この本体の開口を閉じて塞ぐ蓋とを有している。
【特許文献1】特開平8−142885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ステアリング装置のステアリングコラムに水滴が付着することがある。付着した水滴が、ステアリングコラムを伝って移動し、万一、ステアリングコラムに取り付けられた回路基板に達すると、この回路基板に影響を及ぼす虞がある。
また、回路基板がステアリングコラムの下側に位置してハウジングに収容されるステアリング装置が考えられている。このステアリング装置では、ハウジングの開口は下方に向けて開放され、この開口を塞ぐ蓋は、本体の下側に取り付けられる。
【0004】
しかし、このようなステアリング装置では、上述のように水滴がステアリングコラムを伝って下方へ流れると、ハウジングの本体と蓋との合わせ面に到達し、ハウジング内部に浸入する虞がある。
ハウジング内部への水滴の浸入を防止するためには、例えば、本体と蓋との合わせ面にパッキンを取り付けることや、上述の合わせ面を高精度に加工して本体と蓋との間の隙間を小さくすることが考えられる。しかし、これらの場合、製造コストが高くなる。
【0005】
そこで、この発明の目的は、ハウジング内部への水滴の浸入をコスト安価に防止できるステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長手方向を斜めに配置されるステアリングコラムと、ステアリングコラムの長手方向の下部に設けられ回路基板を収容するハウジングとを備え、上記ハウジングは、下向きに開放する開口を有する本体と、本体の開口を閉じる蓋とを含み、上記本体に、ステアリングコラムの長手方向に沿って斜め下方へ移動する水滴を、上記ハウジングの本体の開口の縁部と蓋との合わせ面から離隔した位置で受け止めて斜め下側へ流すための傾斜状の受け部が形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、仮に、水滴がステアリングコラムに付着し、ステアリングコラムを伝って下方へ移動するとしても、本体と蓋との合わせ面から離れた受け部によって受け止められて、受け部に沿って斜め下側へ流される。その結果、水滴が合わせ面に達することが防止され、ハウジング内部への水滴の浸入が防止される。受け部はもともとあるハウジングに形成されるので、受け部の形成は、ハウジングの簡単な形状変更で対応でき、ステアリング装置の製造コストは抑制される。
【0008】
また、本発明において、上記受け部は、ハウジングの本体の開口の縁部に形成されたフランジの上面からなる場合がある。この場合、受け部は、フランジを挟んで開口とは反対側に位置するので、水滴がハウジング内部に浸入することをより一層確実に防止できて好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態のステアリング装置の側面図である。
ステアリング装置1は、車輪(図示せず)を操舵するためにステアリングホイール2に加えられる操舵トルクを伝達するステアリングシャフト3と、このステアリングシャフト3を内部に通して回転自在に支持するステアリングコラム4とを有する。ステアリングシャフト3の一方の端部3aにステアリングホイール2が連結され、他方の端部3bに、自在継手5、中間軸6等を介して車輪を操舵するためのラックアンドピニオン機構等の操舵機構(図示せず)が連結される。ステアリングホイール2が操舵されると、その操舵トルクがステアリングシャフト3等を介して操舵機構に伝達され、これにより車輪を操舵することができる。
【0010】
ステアリング装置1は、ステアリングコラム4に設けられている電動モータ7により、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3に関連して設けられて操舵トルクを検出するためのトルクセンサ8と、トルクセンサ8からの出力信号を信号処理するためにトルクセンサ8と接続される回路基板9と、トルクセンサ8からの出力信号等に基づいて操舵補助力を発生させる電動モータ7と、この電動モータ7の出力回転を減速して伝達するための減速機10とを有している。
【0011】
ステアリングホイール2が操作されると、操舵トルクがトルクセンサ8により検出され、このトルク検出結果および車速検出結果等に応じて電動モータ7が操舵補助力を発生させる。操舵補助力は、減速機10を介してステアリングシャフト3に伝達され、ステアリングホイール2の動きとともに操舵機構に伝わり、車輪が操舵される。
ステアリングコラム4は、一方向に長い筒形状をなしている。ステアリングコラム4の長手方向F1を車両の前後方向Xに対して斜めにし、ステアリングホイール2を上側となるようにして、ステアリングコラム4は車体(図示せず)に取り付けられている。
【0012】
ステアリングコラム4は、ステアリングコラム4の長手方向F1の上部4aに設けられたコラムチューブ11と、ステアリングコラム4の長手方向F1の下部4bに設けられたハウジング12とを有している。
図2は、図1に示すII−II断面の一部断面図である。図1および図2を参照する。
ハウジング12は、例えば、アルミニウム合金により形成されている。ハウジング12は、互いに嵌め合わされるギヤハウジング13およびセンサハウジング14により構成されている。
【0013】
ギヤハウジング13は、減速機10を収容し、電動モータ7を支持している。
センサハウジング14は、ステアリングコラム4の長手方向F1についてギヤハウジング13よりも上方に位置し、ギヤハウジング13とコラムチューブ11との間に配置されている。センサハウジング14は、トルクセンサ8および回路基板9を支持して収容している。
【0014】
センサハウジング14は、本体15と、この本体15に取り付けられた平板形状の蓋16とを含んでいる。
本体15は、コラムチューブ11と嵌合により接続されていてトルクセンサ8を収容するための筒状をなす第1の部分17と、回路基板9を収容するための直方体の容器状をなす第2の部分18とを有している。
【0015】
図3は、図2に示す III− III断面のセンサハウジング等の断面図である。図2と図3とを参照する。
第2の部分18は、ステアリングコラム4の長手方向F1を切る断面において、第1の部分17の外周17aの下端から車両の左右方向Yの両側に延びている。第2の部分18では、左右方向Yの一方の側としての右側端部18aが、他方の側としての左側端部18bよりも上方に位置するように、第2の部分18は左右方向Yに対して傾斜して配置されている。
【0016】
第2の部分18は、下向きZ2に開放する開口19を下面20に有する。開口19の奥に凹部21が形成されていて、凹部21内に回路基板9が配置されている。また、下面20は、合わせ面としての蓋16の裏面22と当接していて、合わせ面とされている。
蓋16は、第2の部分18の開口19の縁部23に固定されて開口19を閉じ、これにより第2の部分18の下面20全体を覆い、開口19を塞ぐようにされている。蓋16は、ボルトによりねじ止めされて固定される。
【0017】
本実施形態では、本体15に、ステアリングコラム4の長手方向F1に沿って斜め下方へ移動する水滴を、センサハウジング14の本体15の開口19の縁部23と蓋16との合わせ面としての下面20から離隔した位置で受け止めて斜め下側M1へ流すための傾斜状の受け部24が形成されている。
受け部24は、ハウジング12の本体15の開口19の縁部23に形成されたフランジ25の上面からなる。一方、フランジ25の下面20は、蓋16と接触して、合わせ面の一部をなす。受け部24は下面20から下面20の法線方向に所定距離離れている。
【0018】
フランジ25は、センサハウジング14の第2の部分18の開口19の縁部23の一部であって、ステアリングコラム4の長手方向F1の上方部分に形成され、この部分からステアリングコラム4の長手方向F1の上方に向けて所定長さで突出している。また、フランジ25は、左右方向Yに延びていて、左右方向Yの一方の端部としての右側端部25aが、他方の端部としての左側端部25bよりも、上方に位置している。上側にある端部としての右側端部25aは、本体15の第1の部分17の右側端部17bの真下に位置するか、真下の位置よりも右側に位置するようにされている。下側にある端部としての左側端部25bは、本体15のなかでもっとも下側に位置する部分である第2の部分18の左側端部18bに位置している。
【0019】
フランジ25は、右側端部25aから左側端部25bに向けて徐々に厚さ寸法Lが少なくされていて、水平方向に対してのフランジ25の上面である受け部24の傾斜角度が、下面20の傾斜角度よりも大きくされている。また、フランジ25の右側端部25aは、、上方に開放されている。また、左側端部25bおよびその近傍部分は、上方に開放されている。
【0020】
図1と図2を参照して、例えば、水滴ST0がステアリングコラム4に付着すると、ステアリングコラム4のコラムチューブ11を伝って下方へ移動する。水滴ST0は、センサハウジング14の第1の部分17をへて、第2の部分18に達する。水滴ST0の移動経路M2の一例を一点鎖線で図示した。第2の部分18に達した水滴ST1は、受け部24により受け止められ、受け部24に沿って斜め下側M1へ流される。
【0021】
このように本発明の実施形態によれば、ステアリングコラム4のセンサハウジング14に受け部24を設けているので、仮に、水滴がセンサハウジング14の本体15に達するとしても、本体15と蓋16との合わせ面としての下面20から離れた受け部24によって受け止められて、受け部24に沿って斜め下側M1へ流される。その結果、水滴が合わせ面としての下面20に達することが防止され、ハウジング12の内部への水滴の浸入が防止される。受け部24はもともとあるハウジング12に形成されるので、受け部24の形成は、ハウジング12の簡単な形状変更で対応でき、ステアリング装置1の製造コストは抑制される。
【0022】
また、受け部24は、ハウジング12の本体15の開口19の縁部23に形成されたフランジ25の上面からなる。この場合、受け部24は、フランジ25を挟んで開口19とは反対側に位置するので、水滴がハウジング12の内部に浸入することをより一層確実に防止できて好ましい。
また、合わせ面としての下面20および裏面22を高精度に加工して下面20と裏面22との間の隙間を小さくして、水滴の浸入をより一層確実に防止してもよい。また、下面20および裏面22との間にパッキン(図示せず)を介在させて設けて、水滴の浸入をより一層確実に防止してもよい。逆に、これらの対策を廃止して、製造コストをより一層安価にすることも可能である。
【0023】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
例えば、第2の部分18の側面であって、ステアリングコラム4の長手方向F1の上方にある側面に、凹条(図示せず)が形成され、この凹条により受け部24が形成されてもよい。
【0024】
また、受け部24を設けたハウジング12に収容される回路基板としては、トルクセンサ8の出力信号を信号処理するための回路基板9の他、電動モータ7の制御用の回路基板であってもよく、回路基板の用途は特に限定されない。
また、ステアリングコラム4としては、コラムチューブ11とハウジング12とが別体で形成されたものの他、一体に形成されたものも考えられる。
【0025】
また、ステアリングシャフト3の端部3bと自在継手5とを、以下のようにして連結してもよい。
図4は、ステアリングシャフトの端部の拡大した一部断面図である。図1と図4とを参照する。
ステアリングシャフト3は、操舵トルクに応じて一端3aと他端3bとの間にねじれを生じさせるためのトーションバー30と、ステアリングシャフト3の他端3bを形成する筒状の軸部31とを有している。トーションバー30の一端(図示せず)は、ステアリングシャフト3の一端3aと一体回転可能に連結されている。また、トーションバー30の他端30bは、軸部31の端部まで延びていて、トーションバー30の外周30cは、軸部31の内周31aに嵌合されている。軸部31の外周31bには、セレーション31cが形成されていて、セレーション31cを介して自在継手5が接続される。
【0026】
自在継手5は、ステアリングシャフト3の端部3bに固定される第1のヨーク32と、中間軸6の一端に固定される第2のヨーク33と、第1および第2のヨーク32,33を一体的に連結する十字軸34とを有する。第1のヨーク32は、互いに対向する一対のアーム35と、一対のアーム35の端部同士を互いに接続する筒状の接続部36とを有する。接続部36の内周36aには、セレーション36cが形成されている。このセレーション36cは、軸部31の外周31bのセレーション31cと噛み合っている。
【0027】
接続部36のセレーション36cに軸部31のセレーション31cが噛み合い、且つ、軸部31にトーションバー30が嵌合した状態で、接続部36、軸部31、トーションバー30を共通の連結ピン37が貫通し、これらを一体回動できるように連結している。
これにより、自在継手5の第1のヨーク32の接続部36の形状を簡素化できる。すなわち、従来の自在継手のヨークの接続部は、軸方向に延びるスリットと、このスリット巾を狭めてステアリングシャフトを締め付けて固定するためのねじ構造とが設けられていて、製造コストが高価であった。これに対して、本実施形態では、接続部とステアリングシャフトとの連結のために設けられていた従来のボルト、スリット等を廃止できるので、コストの低減を図ることができる。また、接続部36と、軸部31と、トーションバー30との連結が、共通の連結ピン37を用いて、一括して同時に単一工程で実現でき、コストの低減に寄与する。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態のステアリング装置の側面図である。
【図2】図1に示すII−II断面の一部断面図である。
【図3】図2に示す III− III断面のセンサハウジング等の断面図である。
【図4】ステアリングシャフトの端部の拡大した一部断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ステアリング装置
4 ステアリングコラム
4b 下部
9 回路基板
12 ハウジング
15 本体
16 蓋
19 開口
20 下面(合わせ面)
23 縁部
24 受け部(フランジ25の上面)
25 フランジ
F1 長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を斜めに配置されるステアリングコラムと、
ステアリングコラムの長手方向の下部に設けられ回路基板を収容するハウジングとを備え、
上記ハウジングは、下向きに開放する開口を有する本体と、本体の開口を閉じる蓋とを含み、
上記本体に、ステアリングコラムの長手方向に沿って斜め下方へ移動する水滴を、上記ハウジングの本体の開口の縁部と蓋との合わせ面から離隔した位置で受け止めて斜め下側へ流すための傾斜状の受け部が形成されることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置において、
上記受け部は、ハウジングの本体の開口の縁部に形成されたフランジの上面からなることを特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−103567(P2006−103567A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294549(P2004−294549)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】