説明

ステアリン酸金属塩を含むはんだ材料およびはんだ材料におけるステアリン酸金属塩の使用

本発明は、はんだペースト(11)などのはんだ材料、はんだ接合のための接触面に関し、本発明によれば、ステアリン酸金属塩は融剤として使用され、前記ステアリン酸金属塩は、はんだ粒子(12)上の固体層(14、15)または接触面(図示せず)のいずれかとして付与されるか、あるいは結合剤中に分散または溶液として存在する。有利には、これにより、古典的な融剤の使用を回避でき、特に樹脂を含まないはんだ材料が提供され得る。これは、はんだ材料の簡素化された保存および処理可能性を与えると同時に、比較的質の良いはんだ接合を生成する。融剤としてステアリン酸金属塩を使用する能力は、使用される金属の第1の酸化物が、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量(a)で純金属から形成される場合、およびステアリン酸金属塩が十分な量で存在する場合に達成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々のはんだ材料に関し、それらのはんだ材料はまた、ステアリン酸金属塩を含む。特に、本発明は、表面に固体ステアリン酸金属塩の層を有し、それによって、はんだペーストがはんだ粒子の周囲に結合剤をさらに含む、はんだ材料の粒子を含む、はんだ粉末またははんだペーストに関する。さらに、本発明は、通常、はんだ材料の粒子、およびその粒子の周囲に結合剤を含む、はんだペーストに関する。さらに、本発明は、はんだワイヤおよびはんだプリフォームなどの半仕上げのはんだ製品の形態のはんだ材料に関する。さらに、本発明は、電気部品のための接触面を有する構造的支持部に関し、その接触面上にはんだ被覆物が提供され得る。
【背景技術】
【0002】
上記の種類によるはんだ粉末は例えば特許文献1で知られている。はんだ粉末は、Sn−Znベースのはんだ材料のはんだ粒子からなり、そのはんだ材料は、はんだ粒子の表面の少なくとも一部に固体ステアリン酸金属塩を有し、それによって、金属は好ましくはCu、Zn、AgまたはBiである。このために、ステアリン酸金属塩は、はんだ粒子の表面に付与され、その結果、はんだ粉末の改良された保存が可能となる。はんだ粉末の粒子は、特に、はんだ粉末の保存可能期間を向上させるために対応するはんだ材料に同様に提供される、融剤の活性化成分と接触することを防止されなければならない。特許文献1によれば、全ての従来の融剤は、いかなる特別の制限もないはんだ材料における融剤として使用され得る。これらの中に含まれるものは、松脂などの天然樹脂、活性剤および溶剤である。さらに、チキソトロピーに影響を及ぼす物質および界面活性剤が典型的に、融剤に含まれる。使用される融剤についてのより詳細な情報は、特許文献1の0046〜0049段落に与えられる。
【0003】
非特許文献1から、融剤に加えられるステアリン酸銅がさらに知られており、このステアリン酸銅は、生成されるはんだ接合の安定性を向上させることに関するといわれている。これは融剤とともに作用するステアリン酸銅による。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1099507 B1号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Seishi Kumamotoら,「Joint strength and microstructure for Sn−Ag−(Cu) Soldering on an Electroless Ni−Au Surface Finish by Using a Flux Containing a Cu Compound」,Journal of Electronic Materials,Vol.37,No.6,2008年,806〜814ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、はんだ粉末、はんだペーストなどのはんだ材料、半仕上げのはんだ製品またははんだ材料を含むか、含まない、はんだ付けに準備される構造的支持部/部品を提供することであり、このはんだ材料は、融剤が使用され、比較的低い質の変動であり、比較的問題のない方法で保存され、処理され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は以下のように種々の上記のはんだ材料を用いて達成される。ステアリン酸金属塩が、層を形成するステアリン酸金属塩の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%の量で、はんだ材料(はんだ粒子、半仕上げのはんだ製品)上の層または接触面のいずれかに融剤として提供され、ステアリン酸金属塩は少なくとも1種の金属から構成され、その少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量で純金属から形成する。あるいは、この目的は、結合剤に含まれるステアリン酸金属塩を用いて達成され、その結合剤は、はんだペーストにおけるはんだ材料の粒子を取り囲み、ステアリン酸金属塩は、結合剤の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%の量で融剤として含まれ、少なくとも1種の金属から構成され、その少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量で純金属から形成する。さらに、本発明のこの代替の実施形態において、ステアリン酸金属塩についての分散剤が、50重量%までの量で結合剤に含まれる。結合剤の残りは、他の金属塩および/または10重量%までのカルボン酸および/または活性剤から構成される。他の金属塩、すなわち、ステアリン酸金属塩でない金属塩が結合剤に加えられて、生成されるはんだ接合の構造またはその境界面の生成に作用する。例えば、ジエチルアミン塩酸塩が活性剤に加えられてもよい。
【0008】
分散剤として、グリコールエーテル、多価アルコールおよびエステルが例として考えられる。この場合、それらは、比較的強い極性のため、ステアリン酸金属塩がそれらに不溶性である物質である。ステアリン酸金属塩が溶解しない場合、固体ステアリン酸金属塩が本発明に従って使用されてもよい。本発明による融剤としてのステアリン酸金属塩の使用は、融剤の機能とみなされるべき金属イオンが、固体ステアリン酸金属塩を融解することによって放出されるのみであり、残留物、不純物および特に酸化物を、それらの反応性に起因するはんだ接合を生成する前に、はんだ粒子の表面および結合パートナーの接触面から簡単に取り除くという利点を有する。この場合、ステアリン酸塩の融点が、使用されるはんだ合金の融点以下であるという事実が利用されるので、はんだ材料を融解することによるはんだ接合の生成時に、融剤として使用される金属イオンが短時間のみで提供される。一方で、金属イオンは、有利には、本発明による融剤が提供される製品の保存の間に存在しないので、はんだ製品の長期間の安定性を確保する。このように、問題のない保存を可能にし、同時に、仕上がったはんだ接合についての質をほとんど変動させないことを確保する目的が達成される。
【0009】
本発明によれば、ステアリン酸金属塩は固体として存在する。これはイオンの形態で溶解しないことを意味する。従って、ステアリン酸金属塩についての分散剤が、本発明による融剤とともに製品を製造するために使用される。ステアリン酸金属塩は、それらの製品に恒久的に溶解せずに存在してもよい。分子サイズに起因して、ステアリン酸金属塩は、分子的に、または大きな結晶形態で、または分子の非晶質の塊で処理されてもよい。同様に、ステアリン酸金属塩は、それらが層として使用される場合、基板に固体を形成し、非晶質であっても、結晶であってもよい。
【0010】
ステアリン酸金属塩自体とは別に、特定の量の補助材料、例えばチキソトロピック剤または分散剤の残留物もまた、層に存在してもよく、それらの支援を受けて、ステアリン酸金属塩は、以前の製造工程において本発明による製品(例えばはんだボール)の表面に付与された。これは完全に蒸発しない可能性があるため、非晶質のステアリン酸金属塩の層が既に形成されている。
【0011】
結合剤における樹脂の使用はまた、有利には、全くなくてもよい。通常、はんだペーストにおけるはんだ粒子表面を酸化から保護するべき融剤であり、接着性および粘性に影響を与え、それにより、はんだペーストの流動作用に影響を与える、樹脂(松脂)は、市場および製造領域の両方に応じて激しい質の変動を受けやすい。このため、使用されるはんだペーストの一定の流動性が達成され得ない。質の変動を制御するために、特性が、さらなる化学材料を用いてバッチ式で調節されなければならない。この試みは、有利には、結合剤に天然樹脂が使用されない場合、必要とされないので、製造されたはんだペーストの使用を簡単にし、さらに有利には、質的水準を向上させる。さらなる利点は、はんだペーストが長期間にわたってより容易に保存され得ることである。
【0012】
はんだ材料またははんだ接合のための接触面上の固体層としてステアリン酸金属塩を使用する場合、固体ステアリン酸金属塩は、公知(例えば欧州特許第1099507 B1号)のようにはんだ材料を酸化から保護するという利点がある。しかしながら、さらに、層が、使用されるステアリン酸金属塩の全量の20重量%以上、好ましくは40重量%以上を占める、本発明によって使用されるステアリン酸金属塩は、融剤のさらなる画分とみなされ得るので、従来の融剤を完全に省くことができるという有利な効果が達成される。特に、はんだ付けプロセスの間の反応成分としてはんだ粒子の表面および接触面の浄化を生じる、融剤の主要な役割は本発明によって使用されるステアリン酸金属塩によって適用され得る。
【0013】
しかしながら、この目的のために、本発明によって使用されるステアリン酸金属塩が、少なくとも1種の金属から構成されることが必要であり、その少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量で純金属から形成する。つまり、ステアリン酸金属塩は、少なくとも1種の金属から構成されなければならず、その少なくとも1種の金属に対して、酸素は熱力学的活量を有し、その熱力学的活量は、最大でクロムに対するものに相当し、好ましくは最大でチタンに対するものに相当する。融剤としてそれらの反応性を発生させるために使用されるステアリン酸金属塩について、使用される金属に対する酸素の熱力学的活量は、この文脈において、決定的な基準であるとみなされる。このことは、はんだ付けプロセスの間にステアリン酸金属塩の融解によって形成される金属イオンが、融剤として必要とされる還元活性を発生するという事実により説明できる。
【0014】
異なる金属に対する酸素の熱力学的活量(酸素活量aとしても公知である)は算出でき、このための理論的基礎は、例えば、O.Kubaschewskiら,「Materials Thermochemistry」,第6版,Oxford 1993年に記載されている。この場合、関与する金属とその第1の金属酸化物との間の平衡反応により基準が生成される。第1の金属酸化物は、酸素分圧上昇時の平衡反応において第1の金属酸化物として生成される金属酸化物である。関係する平衡反応に関して、いわゆるギブスエネルギーが文献に見出され得る。Kubaschewskiに従うギブスエネルギーの計算式から、次いで、温度依存性酸素活量が算出され得、反応条件が想定される場合、その反応条件に関して、金属と金属酸化物との活量は合計すると正確に基準値1になる。このように、本発明によるステアリン酸金属塩に使用され得るかどうかに関わらず、活量は各金属について決定され得る。つまり、金属の第1の金属酸化物との平衡反応に関して、酸素は、最大でクロムのものに相当し、好ましくは最大でチタンのものに相当する熱力学的活量を有する。
【0015】
固体ステアリン酸金属塩の場合、それらが、はんだ付けプロセスの間に広がる温度に起因して融解状態において既に存在している、すなわち、金属イオンが利用できることもまた言及される。
【0016】
ステアリン酸金属塩、例えばステアリン酸アルミニウムをはんだ材料に加えることによって、信頼できるはんだ接合が、古典的な融剤を加えなくても全てのはんだ付けプロセスにおいて生成され得る。従って、金属塩を加えることは、はんだ材料を多くする、すなわち、固体ステアリン酸金属塩をはんだ材料に付与すること、ステアリン酸金属塩をはんだ材料の結合剤に加えること、または製造プロセスにおいてはんだ接合を製造する前にはんだ付けされる接合パートナーを作製することのいずれかによって行われる。こうすることで、固体ステアリン酸金属塩が、例えば部品または構造的支持部の接触面に付与され得るか、あるいは構造的支持部は、既に、接触面上に、固体ステアリン酸金属塩でコーティングされる、はんだ材料からなるはんだ被覆物を有する。さらに、例えばはんだワイヤまたははんだボールなどのボールグリッドアレイについてのはんだ成形体などの、はんだ材料からなる半仕上げの製品を、固体ステアリン酸金属塩でコーティングすることも可能である。そのようなコーティングが実施され得る1つのプロセスは、欧州特許第1099507 B1号に記載されている。これは、例えば、はんだ材料または接触面を、関係するステアリン酸金属塩の過飽和溶液に挿入することによって行われ、次いで関係する表面上に被覆される。別の可能性としては、融解状態でステアリン酸金属塩を噴霧することを含む。
【0017】
ステアリン酸金属塩およびこの物質による古典的な融剤系の代替物を使用することによって、融剤の製造ならびに製造されたはんだペーストの輸送および保存における多くの問題が取り除かれる。さらに、融剤の適用、処理および残留物の除去に関する制限が取り除かれ得る。さらに、ステアリン酸金属塩は、毒性物質を含まない(少なくとも、ステアリン酸金属塩の金属も非毒性である場合)ため、低い費用で製造され得、容易に廃棄できる環境に優しい方法で扱われ得る。さらに、ステアリン酸金属塩は、生成されるはんだ接合に対して腐食作用を示さず、従って、はんだ付けが行われた後に除去する必要がない。さらに、はんだ接合は質的に高いので、より信頼性があり、信頼できる電気製品の製造を容易にする。
【0018】
さらに、本発明は、はんだ付けのための融剤としてのステアリン酸金属塩の使用に関する。
【0019】
最初に既に記載したように、はんだ材料におけるステアリン酸金属塩の使用は、欧州特許第1099507 B1号において既に公知であり、Seishi Kumamotoによって科学文献に記載されている。しかしながら、これらの文献に関するステアリン酸金属塩は、融剤として一般に公知の物質に加えられて使用される。ステアリン酸金属塩の使用の目的は、生成されるはんだ接合の長期間の安定性における改良および生成されるはんだペーストの保存安定性の改良である。融剤の主な目的が保証され、はんだ接合生成の間のはんだ材料からなる還元粒子である、融剤としてのステアリン酸金属塩の使用は、使用されるステアリン酸金属塩の金属の適切な選択において、ステアリン酸金属塩によって解放される金属イオンの還元作用が、融剤のこの主な目的を示し得るという驚くべき発見に基づく。このため、そのようなステアリン酸金属塩は、今まで使用されている融剤の代わりに使用され得、それによって、市販の融剤の使用に関する上記の問題を回避する。
【0020】
本発明による使用の実施形態において、ステアリン酸金属塩が、はんだ付けの間に単一の活性化合物として使用されることを目的とする。本発明の目的のための活性化合物は、はんだ材料の表面およびはんだ付けの間の接触面に還元作用を生じ、従って、はんだ接合の信頼できる生成を妨げる可能性のある酸化被膜を破壊する化合物を意味すると理解される。
【0021】
さらに、本発明はまた、はんだ付けのための融剤としてのステアリン酸金属塩の使用に関し、ステアリン酸金属塩は、はんだ材料のはんだ粒子を一緒に保持する結合剤に導入され、少なくとも脂肪酸がこの結合剤にさらに含まれる。この場合、結合剤を密集させるステアリン酸金属塩の特性が有利に使用される。さらに、結合剤中で分散状態で使用される場合、ステアリン酸金属塩は、はんだ付けの間に本発明による融剤としてのステアリン酸金属塩の使用に必要とされる作用を生じることができ、はんだ粒子および接触面の表面において還元様式で作用する。
【0022】
本発明のさらなる詳細は、図面を参照して以下に記載する。同じまたは対応する図の要素は、各々、同じ符号を与え、個々の図の間で相違がある場合のみ繰り返して示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明によるはんだ材料の実施形態として、はんだペーストの断面を概略的に示す。
【図2】図2は、ステアリン酸金属塩をコーティングされた、はんだワイヤの形態の本発明によるはんだ材料のさらなる実施形態を示す。
【図3】図3は、本発明による構造的支持部の実施形態を示す。
【図4】図4は、本発明による構造的支持部の実施形態を示す。
【図5】図5は、温度の関数として対数的に種々の金属に対する酸素の熱力学的活量a(aO)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1によるはんだペースト11は、はんだ材料の粒子12および結合剤13から構成される。本発明の異なる実施形態のはんだ粒子12を図1に示すため、はんだペーストの変形例がまた、一般性を喪失しないとみなされ、各場合において、以下に記載する異なる種類の粒子の1種類のみが含まれる。第1の種類の粒子は、ステアリン酸金属塩の層14で完全にコーティングされる。この変形例は、ステアリン酸金属塩が粒子の酸化を防止できるため、長期間でさえも問題のないはんだ材料の保存を容易にするという利点を有する。
【0025】
粒子のさらなる変形例は、ステアリン酸金属塩で部分的にのみコーティングすることである。この方法で島15が表面に生成され、その表面は層とみなされ得、コーティングされていない粒子部分と交互になっている。はんだ付けプロセスの間、ステアリン酸金属塩はまた、粒子のこの変形例でその還元剤の作用を生じ得る。
【0026】
はんだ材料の粒子12の第3の変形例はコーティングされていない。従って、これらの粒子のはんだ付け性を保証するために、他の粒子がステアリン酸でコーティングされる(図1に示す)か、またはステアリン酸金属塩が結合剤に存在する(詳細に記載していない)かのいずれかを必要とする。ステアリン酸金属塩は、ステアリン酸金属塩の分散または溶液のいずれかを生成する結合剤中のさらなる材料の使用に応じて、分散して、または溶解状態において結合剤に存在してもよい。もちろん、ステアリン酸金属塩はまた、コーティングされた粒子12を使用する場合に、結合剤にさらに提供されてもよい。このように、はんだペーストが提供され、一方で、表面に位置する層14に起因して粒子の酸化が効果的に防止され、他方で、還元剤としてのステアリン酸金属塩の意図した主な作用に関する特別な効果を生成するために使用されるステアリン酸金属塩によって結合剤の粘性が調節され得る。
【0027】
図2にはんだワイヤ16を示し、ステアリン酸金属塩からなる層14を同様に有する。これははんだワイヤを完全に取り囲んで、酸化からの防御を与えるので、はんだワイヤの保存安定性を向上させる。さらに、はんだワイヤは、さらなる融剤を使用せずに使用され、はんだ付けの間の操作を簡単にすることができる。はんだワイヤの代わりに、他の半仕上げのはんだ製品が同じ方法でコーティングされてもよい。
【0028】
図3において、回路基板の形態の構造的支持部17を側面図として概略的に示す。これは、ステアリン酸金属塩の層14でコーティングされる接触面18が提供される。これによって、接触面についての酸化からの防御が一方で達成され、他方で、はんだ付けプロセスの間に融解するステアリン酸金属塩が融剤として利用できる。図4によれば、ステアリン酸金属塩の層14に後で提供されるはんだ被覆物19がまた、接触面18をコーティングする前に付与されてもよい。回路基板の代わりに、部品の接触面もまた、図3および4に記載する方法ではんだ被覆物および/またはステアリン酸金属塩でコーティングされてもよい(図示せず)。
【0029】
本発明によるステアリン酸金属塩の選択についての理論的背景を、図5を用いて再び記載する。融剤の最も重要な特性のうちの1つは、はんだ材料の金属粒子に存在する酸化物を還元し、はんだ付けプロセスにおいて解放される金属表面を新たな酸化から防止する能力である。
【0030】
一般規則として、金属酸化物の生成は以下の化学反応によって記載できる:
【数1】

式中、Mは関与する金属を意味する。平衡状態において、以下を適用する(O.Kubaschewskiら,「Materials Thermochemistry」,第6版,Oxford,1993年もまた参照のこと):
【数2】

ΔGはこの反応の自由標準反応エンタルピー(温度依存自由標準反応エンタルピーは、手動で、またはThermoCalc、FactSageなどの熱力学プログラムおよびデータベースの支援のいずれかによって算出される既知の熱力学的データに基づき得るため、公知である)であり、aMxOy、a、aは、対応する金属酸化物、金属および酸素の化学的活量であり、Rは一般気体定数であり、Tはケルビンでの温度である。使用される熱力学的データに依存する標準状態の正確な選択を用いることによって、金属および金属酸化物の活量は1に等しくなる。従って、酸化物との平衡状態において、酸素の活量は以下のように算出され得る:
【数3】

【0031】
図5において、最初に生成された金属酸化物との平衡状態における酸素の活量を、温度の関数として種々の金属について示す。同時に、酸素活量を増加させる純金属から生成される第1の金属酸化物が選択される。一般的規則として、これはまた、はんだ付けプロセスの間の金属酸化物の生成を抑制する。図は、ThermoCalcプログラムおよびScientific Group Thermodata Europe(SGTE)のSSUBデータ(純物質のデータベース)を用いて描いた。
【0032】
上記の方法によって算出される酸素活量(図5のaおよびaO)は、ステアリン酸金属塩の金属イオンの還元作用のいくらかの指標を与える。還元作用はaの減少とともに増加する。研究により、金属と第1の金属酸化物との上記の平衡反応におけるaは、最大でクロムと同じほど高い(520Kでのlogaは−30より小さい)場合、融剤として使用するのに技術的に少なくとも必要な作用が、ステアリン酸金属塩を用いて得られ得ることが明らかにされた。ステアリン酸金属塩は、最大でチタンの値に対応するaに関して、特にステアリン酸アルミニウムおよびステアリン酸マンガンの値(520Kでのlogaが−48より小さい)に関して、特に効果的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ材料の粒子(12)を含み、表面に固体ステアリン酸金属塩の層(14、15)を有するはんだ粉末であって、ステアリン酸金属塩が、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%の量で前記層に融剤として提供され、前記ステアリン酸金属塩は、少なくとも1種の金属から構成され、前記少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量(a)で純金属から生成することを特徴とする、はんだ粉末。
【請求項2】
はんだ材料の粒子(12)を含み、表面に固体ステアリン酸金属塩の層(14、15)、およびはんだ粒子を取り囲む結合剤(13)を有するはんだペーストであって、ステアリン酸金属塩が、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%の量で前記層(14、15)に融剤として提供され、前記ステアリン酸金属塩は、少なくとも1種の金属から構成され、前記少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量(a)で純金属から生成されることを特徴とする、はんだペースト。
【請求項3】
はんだ材料の粒子(12)および前記粒子を取り囲む結合剤(13)を含むはんだペーストであって、
固体ステアリン酸金属塩が、前記結合剤(13)に融剤として含まれ、前記固体ステアリン酸金属塩は、前記結合剤の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%の量を構成し、かつ少なくとも1種の金属から構成され、前記少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量(a)で純金属から形成され、
前記ステアリン酸金属塩についての分散剤は前記結合剤(13)に含まれ、50重量%までの量を構成し、
前記結合剤(13)の残りは、他の金属塩および/または10重量%までのカルボン酸および/または活性剤から構成されることを特徴とする、はんだペースト。
【請求項4】
前記結合剤(13)は樹脂を含まないことを特徴とする、請求項2または3に記載のはんだペースト。
【請求項5】
半仕上げのはんだ製品の形態のはんだ材料であって、前記半仕上げのはんだ製品は、固体ステアリン酸金属塩の層(14)が提供され、前記ステアリン酸金属塩は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%の量で前記層に融剤として提供され、前記ステアリン酸金属塩は少なくとも1種の金属から構成され、前記少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量(a)で純金属から形成されることを特徴とする、はんだ材料。
【請求項6】
前記半仕上げのはんだ製品は、はんだワイヤ(16)であることを特徴とする、請求項5に記載のはんだ材料。
【請求項7】
前記半仕上げのはんだ製品は、はんだ成形体であることを特徴とする、請求項5に記載のはんだ材料。
【請求項8】
電気部品のための接触面(18)を有する構造的支持部(17)または接触面を有する電気部品であって、前記接触面(18)は、固体ステアリン酸金属塩の層(14)が提供され、前記ステアリン酸金属塩は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%の量で前記層に融剤として提供され、前記ステアリン酸金属塩は少なくとも1種の金属から構成され、前記少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量(a)で純金属から形成されることを特徴とする、構造的支持部(17)または電気部品。
【請求項9】
はんだ接合のための接触面(18)を有する構造的支持部または電気部品であって、前記接触面上に、はんだ被覆物(19)が提供され、前記はんだ被覆物(19)の表面は固体ステアリン酸金属塩の層(14)が提供され、前記ステアリン酸金属塩は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも40重量%の量で前記層に融剤として提供され、前記ステアリン酸金属塩は少なくとも1種の金属から構成され、前記少なくとも1種の金属の第1の酸化物は、クロムの第1のクロム酸化物、好ましくはチタンの第1のチタン酸化物より低い酸素活量(a)で純金属から形成されることを特徴とする、構造的支持部または電気部品。
【請求項10】
前記ステアリン酸金属塩は、以下の1つ以上の金属:アルミニウム、マグネシウム、マンガンのみから構成されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製品。
【請求項11】
はんだ付けのための融剤としてのステアリン酸金属塩の使用であって、前記ステアリン酸金属塩は、はんだ粒子(12)または半仕上げのはんだ製品(16)または構造的支持部/部品に位置するはんだ被覆物またははんだ接合のための構造的支持部/部品に位置する接触面(18)に付与されて、固体層(14)を形成することを特徴とする、ステアリン酸金属塩の使用。
【請求項12】
前記ステアリン酸金属塩は、はんだ付けの間に単一の活性化合物として使用されることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
はんだ付けのための融剤としての固体ステアリン酸金属塩の使用であって、はんだ材料は、はんだ粒子(12)および結合剤(13)から構成され、少なくとも脂肪酸および前記ステアリン酸金属塩が前記結合剤(13)に加えられ、前記結合剤(13)は前記ステアリン酸金属塩についての分散剤を含む、固体ステアリン酸金属塩の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−526542(P2011−526542A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515404(P2011−515404)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058066
【国際公開番号】WO2010/000679
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(592153805)ヴェー・ツェー・ヘレウス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】W.C. Heraeus GmbH & Co. KG.
【Fターム(参考)】