説明

ステップインディクス型プラスチック光ファイバ原料用の光架橋可能な組成物

【課題】ステップインディクス型プラスチック光ファイバ用の材料を製造する光架橋可能な組成物を提供。
【解決手段】光架橋可能な組成物がビスフェノールに基づく化合物の、アクリレート、メタアクリレート、および、αーフルオロアクリレートから選択されたアクリレート誘導体と光開始剤および架橋剤とを含む光架橋可能な組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア材および/またはクラッド材等のステップインディクス型プラスチック光ファイバに使用可能な材料を製作する光架橋可能な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はそうした材料を製造する方法にも関すると共に、より広範にはそうした光架橋可能な組成物から誘導された少なくとも1つの材料から作製されたステップインディック型光ファイバに関する。
【0003】
本発明の包括的な適用は、光通信の分野において特に有益である。
【0004】
今日、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に基づく熱可塑性ファイバは、最も広範な用途におけるステップインディクス型プラスチック光ファイバを構成する。これは、製造方法は複雑であるが、現在工業的観点から完全に習得される唯一の方法であるという事実によって本質的に説明される。
【0005】
PMMAに基づく熱可塑性ファイバは全体的に満足のゆく光学的特性を提供し、そして特に1000デシベル/キロメートル(dB/km)未満である光減衰レベルを提供するが、それにもかかわらずそれらは比較的低い高温度限界を有する短所を示している。いずれにしても、利用温度が100℃を超えるとしてもそれは実用上使用できなくするに充分な低さである。その結果、実際上、このタイプのプラスチック光ファイバの使用は、困難ではない熱的環境、即ち、利用温度が略80℃未満である熱的環境に制限される。
【0006】
当然、この限界はPMMA系熱可塑性ファイバが適用される分野を相当に制限し、よってそれら長所をより全般的に制限している。自動車や航空機等の高速通信手段が必要とされている分野では、エンジン室等の配置がそれらを受け入れるに適合していなければ、そのようなファイバを適応するには困難さを伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明の主題によって解決されるべき技術的問題は、ステップインディクス型プラスチック光ファイバに対する材料を製造するための光架橋可能な組成物を提案することであり、その組成物は、それにもかかわらず、典型的には約10メートルの短距離にわたる光信号の伝送に互換性がある光性能を提示する一方で、いったん架橋されると、高温度に耐える著しく改善された能力を提示することによって先行技術の問題を回避することを可能としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、提示された技術的問題への解決策は、光架橋可能な組成物がビスフェノールに基づく化合物のアクリレート誘導体を光開始剤と一緒に含むことにある。
【0009】
注視すべきことは、光架橋可能な組成物が、ステップインディクス型プラスチック光ファイバ用の材料を製造するためであるという事実は、コア材料またはクラッド材料の作製に充分同等に使用され得ることを意味していることである。結果としてこれが暗示することは、本発明に従ったプラスチック光ファイバが、先に記載されたように光架橋可能な組成物を用いて製作されたそのコアのみか、そうした組成物から成るそのクラッドのみか、または、その組成物を用いて作製されたそのコアおよびクラッドの双方かの何れかでも充分同等に有し得ることである。
【0010】
ここに規定された発明は、架橋可能な材料を得られる長所を提供し、それは、第1として120℃近くまでの高温度で良好な機械的特性を示すと共に、第2として僅か500dB/kmであり得る下方限界を伴う1000dB/km未満である光減衰のレベルを示す。
【0011】
本発明に従った光架橋可能な組成物の別の長所は、その極端に低い原価にあり、それはステップインディクス型プラスチック光ファイバのコストに有利であると共に直に影響する。現在、8倍の規模でキロメートル当たりの価格を低減することを予見することが全体的に可能である。
【0012】
本発明の1つの特徴によれば、アクリレート誘導体は、アクリレート、メタクリレート、および、α-フルオロアクリレートから選択される。この点に関して、ラジカル重合におけるアクリレート官能基がメタクリレート基のものよりも大きな反応性を提示することが知られている。よってアクリレート誘導体は、好ましくはアクリレートのタイプであり、これは必然的に検討中のビスフェノール系化合物の正確な性質とは独立している。
【0013】
本発明の別の特徴によれば、アクリレート誘導体が由来する化合物はビスフェノールのアルコキシ誘導体である。
【0014】
特に有益な方式で、アルコキシ誘導体はビスフェノールのエトキシ誘導体とビスフェノールのプロポキシ誘導体とから選択される。
【0015】
好ましくは、アクリレート化合物に基づくビスフェノールは、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールAP、および、ビスフェノールSから選択される。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、光架橋可能な組成物は重合反応を最適化するために適合する架橋剤を更に含み得る。この架橋剤は、先験的な任意の既知種類であることが可能である。
【0017】
特に有益な方式で、光架橋可能な組成物内の架橋剤の濃度は、重量で0.5%から5%の範囲内である。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、アクリレート誘導体の粘度は0.5パスカル秒(Pa.s)から20Pa.sの範囲内、そしてより好ましくは1Pa.sから5Pa.sの範囲内にある。
【0019】
本発明は、ステップインディクス型プラスチック光ファイバの製造に用いる材料を製造する方法をも提供する。理解して頂きたいことは、この材料が充分同等にコア材料またはクラッド材料になり得ることである。何れにしても、そうした方法は:
光架橋可能な組成物を得るために、ビスフェノールに基づく化合物のアクリレート誘導体と光開始剤とを混合する段階と、
その混合から生じる組成物を成形する段階と、
先行して成形された組成物を紫外線によって架橋する段階と、
から成る諸段階を含むことに特徴がある。
【0020】
注視すべきことは、ビスフェノール系化合物のアクリレート誘導体がオリゴマーであるとして考慮されることである。ひとたびオリゴマーがその光開始剤と混合されたならば、重合反応が始まって、その組成物が多かれ少なかれ迅速に本方法の第2段階において成形させることが充分である一貫性を帯びる。引き続いて実行される架橋は、材料をその最終利用形状に凍結させる。
【0021】
本方法の1つの特徴によれば、アクリレート誘導体を濾過する段階が前記混合段階に先行して具現化され得る。
【0022】
本方法の別の特徴によれば、架橋剤が混合段階中に組成物に添加され得る。
【0023】
本発明の別の特徴によれば、紫外線架橋段階が連続して具現化される。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、本方法は架橋段階後に具現化されるアニーリング段階をも含み得る。
【0025】
必然的に本発明は、コア材料によって構成されたコアと、クラッド材料によって構成されたクラッドとを含む任意のステップインディクス型プラスチック光ファイバをも提供し、コアおよびクラッドの材料の内の少なくとも一方が先に規定された光架橋可能な組成物を用いて作製されている。
【0026】
本発明の他の特性および長所等は以下の記載から明らかとなる。以下の記載は非限定的な例によって示され、本発明の本質やそれがどのようにして具現化され得るかについてのより良好な理解を提供することを目的とするものである。以下の記載は添付図面を参照して付与されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
7つのステップインディクス型プラスチック光ファイバが準備されて、高温度での機械的特性や、本発明に従った組成物を用いて作製されたコア材料の光学的性能を決定した。別の目的は、商業的に入手可能な従来のプラスチック光ファイバ、特にPMMA系ファイバの機械的特性との比較を為した。
【0028】
注視すべきことは、本発明の7つのプラスチック光ファイバはそれらのコア材料の組成物の点で相互に異なっていたことである。結果としてこれが暗示することは、使用された製造方法のように、クラッド材料がそれらファイバの全てに対して同一であることである。
【0029】
この点に関して注視すべきことは、問題とされているプラスチック光ファイバの製造がコア材料とクラッド材料とに対して異なる組成物を別々に準備し、次いで、紫外線に露出することによる架橋を含む連続的な製造プロセスを具現化することによってそれら組成物を混合することに本質的に存している。
【0030】
コア材料の準備
コア材料に対する7つの組成物は、こうして、比率を変動しての、即ち、オリゴマー、光開始剤、および、適切であれば架橋剤の比率を変動しての使用に適合した3つの別個の原料から準備された。理解して頂くべきとは、オリゴマーおよび光開始剤の同時存在が本発明に従って本質的であることである。
【0031】
表1は、7つのプラスチック光ファイバの製造に使用された様々なコア材料の各種組成物を付与している。
【0032】
【表1】

【0033】
コア・オリゴマーは本発明に従って必然的である。この例において、それは供給者クレイ・バレー(Cray Valley)によって商標SR349の下で販売されているエトキシ化ビスフェノールA(3)ジアクリレートであった。その展開された化学式(1)は以下の通りである。
【0034】
【化1】

【0035】
架橋剤は、供給者クレイ・バレーによって商標SR368の下で販売されているトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート・トリアクリレートであった。
【0036】
光開始剤は、供給者チバ(CIBA)によって商標IRGACURE 819の下で販売されているビスフェノール(2,4,6-トリメチル・ベンゾイル)ホスフィン・オキシドであった。
【0037】
クラッド材料の準備
先に述べたようにクラッド材料は、組成物と様々な原料の比率との双方の意味で、本発明に従った7つのプラスチック光ファイバに共通していた。それは、80重量%のオリゴマー、クラッド材料の粘度を低下すると共に屈折率を調整する10重量%の反応性希釈剤、および、その名が示すように、クラッド材料を硬化する10重量%の硬化剤を含んでいた。
【0038】
この例において、クラッド・オリゴマーは、供給者クレイ・バレーによってCN133の名前の下で販売されている三官能性脂肪族エポキシ・アクリレート・オリゴマーであった。
【0039】
反応性希釈剤は、供給者コーワ(KOWA)によって商標VISCOAT 3FTMの下で販売されているトリフルオロエチル・アクリレートであった。
【0040】
硬化剤は、供給者ピー・アンド・エム(P & M)によって商標FAHFIPの下で販売されているヘキサフルオロイソプロピルα-フルオロアクリレートであった。
【0041】
ステップインディクス型プラスチック光ファイバの製造
図1はプラスチック光ファイバの各々を作製するために使用された装置1の線図である。こうして、先行して準備されたコアおよびクラッドの各組成物は濾過され、温度調節された2つのフィーダ・タンク2および3内にそれぞれ配置された。加圧下の窒素を用いて、それら樹脂を、ステップインディクス・タイプのプロファイルに応ずるべく、それらを組織化するに適合する混合器4内に個々別々に続いて送られた。そのようにして生成された流れは、紫外線処理を付与し始める前に、所定値まで径を低減するに役立つ金型(簡略化のために不図示)を通過した。こうして架橋操作がその金型からのアウトレットで直ちに実行された。詳細には、その流れはチェスト5を通過するように指向され、そのチェストは、その流れが当該チェストを通過しながらその流れに対して連続的に照射するに適合する水銀ランプを含む。ひとたびコアおよびクラッド材料が架橋されたならば、そのようなものとしてプラスチック光ファイバが製作された。次いでそれは可動ホィール6,7のシステムによって収集され得て、スプール8に巻回されるように為す。
【0042】
上記の製造装置1の長所は、該装置が架橋段階を含んでプロセスを全体的に連続して実行させることである。よって、それは、PMMAに基づく引き下ろし予備成形物に基づくプラスチック光ファイバの製造のために、通常、具現化される種類の従来の押し出し方法で通常的に得られうるものよりも、相当大きな100メートル/分(m/分)を超える製造速度を達成することが可能である。
【0043】
別の長所はコア材料の体積とクラッド材料の体積との間の比率を、単に、金型の径、窒素の圧力、および、フィーダ・タンク2,3の温度の全てまたはそれらの何れかを変動することによって調整する能力に存する。
【0044】
何れにしても、それによって得られるステップインディクス型プラスチック光ファイバは、コアおよびクラッドの間において、それら2つの構成要素間の良好な同心度によって達成される非常に微細な境界を有益には提供する。
【0045】
本発明に従った高温度機械的特性と材料の光学的性能とを決定すると共に、比較するために選択された例について更に具体的に言うと、製造されたプラスチック光ファイバは、全て600マイクロメートル(μm)から950μmの範囲内に存する外径を、500μmから750μmの範囲内に存する様々なコアの径を伴って提示したことを注視すべきである。
【0046】
コア材料の高温度機械的特性
様々なコア材料が架橋剤および光開始剤の含有量を変動することによって準備される一方で、対応する組成物のフィルタ閾値をも変更する。次いで、それら変数各々の効果をコア材料の高温度機械的特性に対して試験することが適切である。
【0047】
それは、各組成物に存在する架橋剤の量、保存率G’、損失率G”、および、対応する架橋材料のガラス転移温度Tgの間の関係を検討することによって調査が始まるという理由である。関係するコア材料はファイバ3乃至7(表1)のものである。それらの結果は図2のグラフに概略的に要約される。トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート・トリアクリレートのガラス転移温度は272℃であるので、組成物中の少量の架橋剤が、架橋の密度における増大のため、対応する架橋材料のTgにおける増大に至る。
【0048】
図2で見ることができるように、純粋オリゴマーに基づく材料のガラス転移温度は96℃として測定され、5重量%の架橋剤を含有する架橋材料が112℃まで上昇するそのTgを読んだ。同時に、保存率および損失率が周囲温度から100℃まである程度維持され、それはガラス転移温度が超越されなければ論理的に見えることに注視すべきである。
【0049】
更に注視すべきことは、ガラス転移温度が架橋剤の増大する量に伴って増大しないことである。逆に、ひとたび含有量が5重量%を超えると減少し始める。これは、架橋剤のアクリレート基が、架橋剤の非常に稠密な化学構造のためにアクセスが難しいという事実によって説明され、それら全てが、架橋剤が光架橋可能な組成物内での高濃度である際に同時に反応できないように為される。次いで架橋剤は可塑剤とは反対の機能を実行する。
【0050】
プラスチック光ファイバ1,3,5の機械的特性は表2に要約されており、PMMAに基づく従来のプラスチック光ファイバのものと比較されている。詳細には、そのファイバは供給者三菱レイヨン株式会社によってESKA10の名前の下で販売されているファイバである。そのファイバは特に250μmの外径によって特徴付けられる。
【0051】
【表2】

【0052】
それらの架橋構造のため、本発明に従ったプラスチック光ファイバはPMMAプラスチック光ファイバ、即ち、熱可塑性材料に基づくファイバのものよりも低い破壊応力を提示する。
【0053】
それにもかかわらず、塑性変形値での応力は比肩し得るものであり、それが意味することは、架橋材料に基づくプラスチック光ファイバがPMMAプラスチック光ファイバと同程度に取り扱い易いことである。更には、ヤング率に対するより低い値を有するにもかかわらず、架橋材料に基づくプラスチック光ファイバは、機械的に言えば、破壊することなく、巻き戻し段階に耐えるべく充分に強力である。
【0054】
更に注視されるべきことは、架橋剤がコア材料組成物内に使用されている(ファイバ5)際にヤング率が僅かにより大きいとしても、光開始剤の含有量または架橋剤の存在が機械的特性を基本的には変更しないことである。
【0055】
ファイバ1の機械的特性は、ファイバ3のものと比較した場合、実質的に同位であり、それが意味することは、光開始剤の含有量が5倍だけ異なっていたとしても、光架橋が材料の変換率に対して、そしてそれ故に材料の架橋密度に対して同一効果を有することである。
【0056】
分析のこの段階で判明され得ることは、純粋オリゴマーと少量の光開始剤との組み合わせ使用が満足のゆくレベルの機械的特性、特に自動車分野における適用に対しての機械的特性を有するプラスチック光ファイバを製作できることである。
【0057】
ステップインディクス型プラスチック光ファイバの光学的特性に対する製造プロセスの主要パラメータの影響
プラスチック光ファイバの全体的な減衰レベルに対するフィルタ閾値の影響は初期的に調査された。この点に関して、図3はファイバ2および3の光損失スペクトルを比較させることができる。
【0058】
判明され得ることは、10μmフィルタで先行して濾過された組成物を用いて作製されたコア材料を有するファイバ2が、コア材料が0.2μmフィルタで先行して濾過された組成物から誘導されたファイバ3のものよりも高い減衰のレベルを提示することである。500ナノメートル(nm)から700nmの範囲内でのより高い拡散損失は、ひとたび濾過がより微細に実行されたならば、コア組成物から効果的に除去された塵粒の存在を明らかにしている。
【0059】
よって、明らかに判明され得ることは、λが光信号の波長とした場合、λ/10よりも大きなサイズの塵粒による汚染が全体にわたる減衰レベルに対して全体的に有害な効果を有し、この効果は拡散損失における増大によって明らかとなる。
【0060】
コア材料のステップインディクス型ファイバの光学的特性に対する均一性の効果は次いで試験された。この目的のため、図4は様々なコア材料組成物を用いて準備された3つのプラスチック・ファイバの光損失スペクトルを示す。
【0061】
ファイバ1およびファイバ3のコア材料は双方ともに、それらが任意の架橋剤を含有しないという意味で、純粋オリゴマーを用いて作製された。それにもかかわらず、ファイバ3のコア材料に対して光開始剤含有量がほんの0.2重量%である一方で、ファイバ1のものに対しては1重量%であったという点でそれは相互に異なっていた。ファイバ3および5のコア材料はそのファイバ5のコア材料内における架橋剤の存在によってだけ相互に異なり、光開始剤含有量は双方の場合において同一であった。
【0062】
図4のスペクトルの比較は、光開始剤が光性能を劣化する汚染物質としての作用を為すことを明らかに示す。ファイバ1の減衰の全体レベルはファイバ3のものより相当に大きい。これが意味することは、光開始剤含有量を5倍だけ低減することによって、650nmから700nmの領域内での最小減衰値が1000dB/km以上だけ低減されることである。
【0063】
もしプラスチック光ファイバの機械的特性が低光開始剤含有量によって大きくは影響されなければ(表2参照)、結論付けられ得ることは、光開始剤の最小量の使用で改善された光学的特性を有するコア材料の獲得を有益には可能とすることである。
【0064】
図4のスペクトルの比較は、コア材料組成物(ファイバ5)における架橋剤の存在が対応するプラスチック光ファイバの光学的性能の著しい低減に至ることをも示す。
【0065】
この結果は、ファイバ5の架橋がオリゴマーおよび架橋剤の無視できない量で作製された真性の混合物において生じたという事実から生ずる、より大きな構造的非均一性を提示する材料によって説明され得る。結果として、拡散による光損失のより大きなレベルに至る増大されるべきコア材料内の欠陥の数に対して非論理的ではない。
【0066】
よって、材料のガラス転移温度の約20%までの上昇にもかかわらず、架橋剤の使用はステップインディクス型プラスチック光ファイバの高温度特性の改善の点で無効である。
【0067】
高温度反応の調査
高温度でのファイバ3の反応は、何れの場合にも100時間(h)および300hの決定期間に対するものであり、100℃および120℃の別個の温度まで加熱する前後における、その光学的性能と機械的特性とを比較することによって調査された。
【0068】
より詳細には、図5は、加熱前、100hにわたる100℃での加熱後、そして300hにわたる100℃での加熱後のそれぞれでの、ファイバ3における光損失のスペクトルを重畳している。
【0069】
注視すべき主要点は、100hの期間に対する熱劣化がファイバの全体にわたる光学的性能に対してほんの少しの影響を有することである。確かに、600nmから700nmの領域内の損失は加熱後に僅かにより小さくなることを判明している。これは、残留アクリル基に作用し得る結果としての引き続く熱処理の効果や、問題になっている熱処理がガラス転移温度以下で実行されるので生じ得る材料弛緩によって充分同等に説明され得る。
【0070】
説明が何であろうとこの注視は、特に材料の内部構造応力を削除するためや、対応するプラスチック光ファイバの光学的性能を改善するために、初期の光架橋に加えて引き続く熱処理が提供し得る利益を確証する。
【0071】
熱劣化前後のファイバ3の機械的特性が表3に提示されている。
【0072】
【表3】

【0073】
ヤング率および破断応力のより高い値は残留アクリル基に対する引き続く熱処理の効果を確証している。
【0074】
更に判明され得ることは、ファイバ3の機械的特性が、プラスチック光ファイバが120℃、即ちコア材料のガラス転移温度以上の約30℃で処理された際にも熱劣化によって影響されなかったことである。
【0075】
しかしながら、ひとたび100℃での熱劣化が300hにわたって実行されたならば、その結果は光学的性能の点で全く異なる。ファイバの光損失における極度に著しい増大、1000dB/km台の増大が観察され得る。
【0076】
その説明は、材料における構造的欠陥による分散での損失は加熱後に、多分、増大されるという事実に先験的に由来する。材料はそのガラス転移温度以上で長時間にわたって処理されたので、その構造がそれによって局所的に損傷され得るとの推定は非論理的ではない。
【0077】
同様の観察はファイバ3が120℃で処理された際に為された。熱劣化は同じように光損失の増大に至ったが、ファイバの機械的特性に影響することがない。波長に依存しない全体にわたる光学的減衰における増大は、熱劣化が光学的信号伝送特性に影響することを示している。
【0078】
図6は、加熱前、100hにわたる120℃での加熱後、そして300hにわたる120℃での加熱後のそれぞれでの、ファイバ3における光損失のスペクトルを重畳している。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明に従ったステップインディクス型プラスチック光ファイバを製造する装置の図である。
【図2】図2は、本発明に従った材料の高温度での機械的特性に対する架橋剤の増大する量の影響を示す図である。
【図3】図3は、本発明に従った組成物から作製されたファイバの光学的性能に対する、該組成物の濾過の効果を明らかにする光損失のスペクトルを示す。
【図4】図4は、様々な組成物のコア材料によって提供されるファイバの光学的性能を図示する減衰スペクトルを示す。
【図5】図5は、様々な期間で100℃の高温度での外部的な経年劣化を受けたファイバの光学的性能を明らかにする減衰スペクトルを示す。
【図6】図6は、120℃での温度経年劣化を実施したことを除き、図5と同様の条件でおこなった図である。
【符号の説明】
【0080】
1 製造装置
2,3 フィーダ・タンク
4 混合器
5 チェスト
6,7 可動ホィール
8 スプール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップインディクス型プラスチック光ファイバ材料を製造する光架橋可能な組成物であって、当該光架橋可能な組成物がビスフェノールに基づく化合物のアクリレート誘導体を光開始剤と共に含むことを特徴とする光架橋可能な組成物。
【請求項2】
前記アクリレート誘導体が、アクリレート、メタアクリレート、および、α-フルオロアクリレートから選択されことを特徴とする、請求項1に記載の光架橋可能な組成物。
【請求項3】
前記アクリレート誘導体が由来する前記化合物が、ビスフェノールのアルコキシ誘導体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光架橋可能な組成物。
【請求項4】
前記アルコキシ誘導体が、ビスフェノールのエトキシ誘導体とビスフェノールのプロポキシ誘導体とから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の光架橋可能な組成物。
【請求項5】
前記アクリレート化合物に基づく前記ビスフェノールが、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールAP、および、ビスフェノールSから選択されることを特徴とする、請求項1乃至4の内の何れか一項に記載の光架橋可能な組成物。
【請求項6】
架橋剤を更に含むことを特徴とする、請求項1乃至5の内の何れか一項に記載の光架橋可能な組成物。
【請求項7】
前記架橋剤の含有量が、0.5重量%から5重量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項6に記載の光架橋可能な組成物。
【請求項8】
前記アクリレート誘導体の粘度が、0.5パスカル秒(Pa.s)から20Pa.sの範囲内、そしてより好ましくは1Pa.sから5Pa.sの範囲内であることを特徴とする、請求項1乃至7の内の何れか一項に記載の光架橋可能な組成物。
【請求項9】
ステップインディクス型プラスチック光ファイバを製造する方法であって、
光架橋可能な組成物を得るために、ビスフェノールに基づく化合物のアクリレート誘導体と光開始剤とを混合する段階と、
その混合から生じる組成物を成形する段階と、
先行して成形された組成物を紫外線によって架橋する段階と、
の諸段階を含むこと特徴とする製造方法。
【請求項10】
前記混合段階に先行して、前記アクリレート誘導体を濾過する段階を含むことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
架橋剤が前記混合段階中に前記化合物に添加されることを特徴とする、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記架橋段階が連続的に具現化されることを特徴とする、請求項9乃至11の内の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記架橋段階に続いて、アニーリング段階を含むことを特徴とする、請求項9乃至12の内の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
コア材料で構成されたコアとクラッド材料で構成されたクラッドとを有するステップインディクス型プラスチック光ファイバであって、前記コア材料および前記クラッド材料の内の少なくとも一方が請求項1乃至8の内の何れか一項に記載の光架橋可能な組成物から作製されることを特徴とするステップインディクス型プラスチック光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−161039(P2006−161039A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−329726(P2005−329726)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】