説明

ステム保護具及びエアゾール装置

【課題】押しボタンの押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによる損傷からステムを保護し、なお且つエアゾール缶から容易に取り外すことができるステム保護具を提供する。
【解決手段】エアゾール缶2の押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによる損傷からステム6を保護するためのステム保護具1であって、耐圧容器3の突起部4に着脱自在に装着される装着筒21と、装着筒21の一端から延長される延長筒22とを備え、延長筒22が押しボタン9の下面に設けられた凹部9dの内側に進入可能とされると共に、延長筒22の内側に設けられた間隔Tが延長筒22の外側に設けられた間隔Tよりも広く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール缶のステムを保護するステム保護具、並びにそのようなステム保護具をエアゾール缶に取り付けたエアゾール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、耐圧容器に収容された内容物をガスの圧力を利用して霧状や泡状に噴射するエアゾール缶(スプレー缶ともいう。)がある。このエアゾール缶は、耐圧容器の上部に設けられた突起部の先端から突出されると共にバネにより上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたステムをバネの付勢に抗して押し下げることにより開放されるバルブ機構と、ステムの先端部に取り付けられると共に噴射ノズルが設けられた押しボタンとを備えている。そして、このエアゾール缶を使用する際は、押しボタンを下方に向かって押圧操作する。これにより、バルブ機構を開放し、押しボタンと一体に押し下げられたステムを通じて噴出された耐圧容器内の内容物を押しボタンの噴射ノズルから噴射させることが可能となっている。
【0003】
ところで、このようなエアゾール缶では、例えば転倒や落下などにより外部からの衝撃が押しボタンに加わると、この押しボタンの押圧方向とは異なる方向の外力がステムに加わることによって、最悪の場合、ステムが使用不能な状態にまで折れ曲がってしまうことがあった。
【0004】
そこで、このような損傷からステムを保護するためのステム保護具が提案されている(例えば特許文献1,2を参照)。具体的に、特許文献1の図2(a)には、内容物を貯留したスプレー缶4のマウンティングカップ3の中央突起部6に取り付けられて、内容物を噴射させるスプレーノズル2を外部衝撃から保護するスプレーノズル保護具1が記載されている。このスプレーノズル保護具1は、その形状が二つの異径の中空円筒を、その大径部分11がスプレー缶4のマウンティングカップ3の中央突起部6を被覆するように挿嵌されるとともに、その小径部分12がスプレー缶4からスプレーノズル2に内容物を導入するノズルステム5を囲繞するように、重ね合わせた構造を有している。
【0005】
しかしながら、このような構造を有するスプレーノズル保護具では、スプレーノズル2に外部から強い衝撃が加えられた場合に、このスプレーノズル2と一緒に倒れ込んだノズルステム5が小径部分(衝撃吸収部)12の先端に接触しながら折れ曲がってしまうために、この接触部分での変形や破損などが生じやすくなる。また、特許文献1に記載されるスプレーノズル保護具1は、スプレー缶4を使用した後の分別廃棄については特に考慮されていないため、このような先端部が小径となる形状の場合、中央突起部6に被せられた状態から取り外しづらいといった欠点もある。
【0006】
一方、特許文献2の第1図には、噴射容器のマウンテンカップ1の中央部に不動に突起しているタレット部2に上下可動に遊挿されているバルブステム3に噴射ノズル41つき押ボタン4を冠挿してなる噴射頭が記載されている。この噴射頭は、タレット部2の周壁1の外周面の断面形を非円形に形成するとともに、少なくとも内周面の断面形が前記周壁21の外周面の断面形に相似する裾筒42を押ボタン4に垂設し、この裾筒42を前記周壁21に緊密に外嵌遊挿してなる構造を有している。
【0007】
しかしながら、このような構造を有する噴射頭では、押ボタン4に外部から強い衝撃が加えられた場合に、この押ボタン4と一緒に倒れ込んだバルブステム3が折れ曲がってしまうために、特に押ボタン4が外れたときにバルブステム3の変形や破損などが生じやすくなる。
【特許文献1】特開平10−258884号公報
【特許文献2】実開平2−104860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、押しボタンの押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによる損傷からステムを保護し、なお且つエアゾール缶から容易に取り外すことができるステム保護具、並びにそのようなステム保護具をエアゾール缶に取り付けたエアゾール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内容物が収容された耐圧容器と、前記耐圧容器の上部に設けられた突起部の先端から突出されると共にバネにより上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたステムを前記バネの付勢に抗して押し下げることにより開放されるバルブ機構と、前記ステムの先端部に取り付けられると共に噴射口が設けられた押しボタンとを備え、前記押しボタンを押圧操作することにより前記バルブ機構を開放し、前記押しボタンと一体に押し下げられた前記ステムを通じて噴出される前記耐圧容器内の内容物を前記押しボタンの噴射口から噴射させるエアゾール缶の、前記押しボタンの押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによる損傷から前記ステムを保護するためのステム保護具であって、前記耐圧容器の突起部に着脱自在に装着される装着部と、前記装着部の一端から延長される延長部とを備え、前記延長部が前記押しボタンの下面に設けられた凹部の内側に進入可能とされると共に、前記延長部の内側に設けられた間隔が前記延長部の外側に設けられた間隔よりも広く設定されていることを特徴とするステム保護具である。
また、請求項2に係る発明は、前記延長部の外周面が前記押しボタンの凹部内面に接することを特徴とする請求項1に記載のステム保護具である。
また、請求項3に係る発明は、前記装着部及び前記延長部を一体に成形した筒体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のステム保護具である。
また、請求項4に係る発明は、内容物が収容された耐圧容器と、前記耐圧容器の上部に設けられた突起部の先端から突出されると共にバネにより上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたステムを前記バネの付勢に抗して押し下げることにより開放されるバルブ機構と、前記ステムの先端部に取り付けられると共に噴射口が設けられた押しボタンとを備え、前記押しボタンを押圧操作することにより前記バルブ機構を開放し、前記押しボタンと一体に押し下げられた前記ステムを通じて噴出される前記耐圧容器内の内容物を前記押しボタンの噴射口から噴射させるエアゾール缶に、請求項1〜3の何れか一項に記載のステム保護具が取り付けられていることを特徴とするエアゾール装置である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、ステム保護具の装着部をエアゾール缶の突起部に装着した状態において、このステム保護具の延長部が押しボタンの下面に設けられた凹部の内側に進入可能とされると共に、延長部の内側に設けられた間隔が延長部の外側に設けられた間隔よりも広く設定されているため、押しボタンの押圧方向とは異なる方向の外力が押しボタンに加わった場合でも、倒れ込む押しボタンに対して延長部の外周面が押しボタンの凹部内面に当接することになる。これにより、押しボタンの押圧方向とは異なる方向の外力をステム保護具が受けることになるため、このような外力が加わることによる損傷からステムを保護することが可能である。また、本発明によれば、ステム保護具を突起部から容易に取り外すことも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を適用したステム保護具及びエアゾール装置について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態として図1に示すエアゾール装置は、本発明を適用したステム保護具1をエアゾール缶(スプレー缶ともいう。)2に取り付けた構造を有している。
【0012】
具体的に、エアゾール缶2は、内容物が収容された耐圧容器3と、耐圧容器3の上部に設けられた突起部4の先端から突出されると共にコイルバネ5により上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたステム6をコイルバネ5の付勢に抗して押し下げることにより開放されるバルブ機構7と、ステム6の先端部に取り付けられると共に噴射ノズル(噴射口)8が設けられた押しボタン9とを備えている。
【0013】
このうち、耐圧容器3は、例えばスチールやアルミニウム等からなる金属製の容器であり、その上部中央にバルブ機構7を保持するマウンティングカップ10が設けられている。このマウンティングカップ10の底面中央からは、平面視略円形状の突起部4が上方に向かって突出している。この突起部4は、バルブ機構7のステム6を上下方向に移動可能に支持する部分であり、この突起部4の先端部からは、円筒状のステム6が上方に向かって突出している。
【0014】
この耐圧容器3に収容される内容物としては、特に限定されるものではなく、例えば、殺虫剤、忌避剤、殺菌剤、芳香剤、室内消臭剤、整髪剤、ヘアケア剤、育毛トニック剤、シェービングフォーム、制汗消臭剤、ガラスクリーナー、エアコン洗浄剤、防水剤、塗料、工業用スプレーなどを挙げることができる。そして、耐圧容器3には、このような各種目的に応じた有効成分の他に必要に応じて溶剤や補助剤などを含む原液と、液体ガスや圧縮ガスなどの噴射剤とが内容物として充填されている。
【0015】
バルブ機構7は、マウンティングカップ10の突起部4の内側から耐圧容器3内に垂下されたシリンダ11を有している。ステム6は、その下端部に設けられた弁体6aをシリンダ11内に挿入している。コイルバネ5は、シリンダ11内の弁体6aの下方に圧縮された状態で配置されている。これにより、ステム6は、上方に付勢された状態で上下方向に移動可能となっている。なお、ステム6が上端部に位置するとき、このバルブ機構7は閉塞された状態となっている。また、シリンダ11の下端部からは、耐圧容器3に収容された内容物を吸い込むチューブ12が耐圧容器3のほぼ底面部まで垂下されている。
【0016】
押しボタン9は、プラスチック製のボタン本体9aと、このボタン本体9aの下面中央から垂下された内筒部9bと、この内筒部9bの周囲を囲むようにボタン本体9aの外周部から垂下された外筒部9cとを有し、これら内筒部9bと外筒部9cとの間には、環状の凹部9dが形成されている。そして、この押しボタン9は、ステム6を内筒部9bの内側に嵌合させることによって、ステム6の先端部に取り付けられている。また、ボタン本体9aには、ステム6から噴出された内容物を内筒部9bから噴射ノズル8へと導く流路9eが設けられている。噴射ノズル8は、ボタン本体9aの側面部に設けられ、流路9eを通じて圧送された内容物を霧状又は泡状にして噴射する。
【0017】
以上のような構造を有するエアゾール缶2を使用する際は、ステム6の先端に取り付けられた押しボタン9を下方に向かって押圧操作する。これにより、バルブ機構7を開放し、押しボタン9と一体に押し下げられたステム6を通じて噴出された耐圧容器3内の内容物を押しボタン9の噴射ノズル8から噴射させることが可能となっている。
【0018】
このようなエアゾール缶2に取り付けられるステム保護具1は、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによる損傷からステム6を保護するためのものであり、例えば図2に示すような中空円形の断面形状を有する筒体20からなる。
【0019】
この筒体20は、耐圧容器3の突起部4に着脱自在に装着される装着筒(装着部)21と、この装着筒21の一端から延長される延長筒(延長部)22とを備え、これら装着筒21及び延長筒22を金属又は樹脂により一体に成形することによって、全体として円筒形を為している。また、筒体20は、装着筒21に突起部4を嵌合させるために、耐圧容器3の突起部4の外径に対応した内径を有している。
【0020】
本発明を適用したステム保護具1では、図1に示すように、筒体20の装着筒21を突起部4に嵌合させた状態において、筒体20の延長筒22が押しボタン9の下面に設けられた凹部9dの内側に進入可能となっている。また、このような装着状態において、延長筒22の内側に設けられた間隔、すなわち延長筒22と内筒部9bとの間の間隔Tが、延長筒22の外側に設けられた間隔、すなわち延長筒22と外筒部9cとの間の間隔Tよりも広く設定されている(T>T)。
【0021】
これにより、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力が押しボタン9に加わった場合でも、倒れ込む押しボタン9に対して延長筒22の外周面が凹部9dの内面、すなわち外筒部9cの内面に当接することになる。したがって、このエアゾール装置では、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力をステム保護具1が受けることになる。一方、押しボタン9と一緒に倒れ込むステム6は、押しボタン9が先にステム保護具1に当接することによって、それ以上倒れ込むことはなく、また、ステム保護具1の延長筒22に対しては非接触状態を維持している。したがって、このような外力が押しボタン9に加わることによる損傷からステム6を確実に保護することが可能である。
【0022】
なお、本発明を適用したステム保護具1は、上述した図1に示す筒体20の構成に必ずしも限定されるものではなく、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記ステム保護具1は、図3に示すような筒体20を軸線方向に切り欠く切欠き部23を設けた構成としてもよい。このような構成の場合、装着筒21に突起部4を嵌合させる際に発生する応力を切欠き部23の間で適度に緩和することができる。
したがって、上記ステム保護具1では、このような切欠き部23を筒体20に設けることによって、突起部4に対する装着筒21の嵌合力を容易に調整することができる。また、このような嵌合力の調整を行うことによって、筒体20の突起部4に対する着脱を容易にすることができる。
【0023】
なお、このような切欠き部24は、筒体20を装着筒21の端部から軸線方向に切り欠くことによって、少なくとも装着筒21に対応する部分に形成すればよく、必ずしも延長筒22側の端部まで切り欠く必要はない。また、このような切欠き部24は、筒体20の周囲に複数設けることもでき、その数や幅、長さ、間隔等を調整することによって、突起部4に対する装着筒21の嵌合力を任意に調整することが可能である。
【0024】
また、上記ステム保護具1では、筒体20の外周面に、図4Aに示すようなリング状の凸部24を設けたり、図4Bに示すようなリング状の凹部25を設けたりすることも可能である。これら凸部24及び凹部25は、突起部4に装着された筒体20を取り外す際の滑り止めとなる部分であり、軸線方向に複数並んで設けられている。
上記ステム保護具1では、このような凸部24や凹部25を設けることによって、例えばエアゾール缶2を使用した後の分別廃棄等の際に、エアゾール缶2の突起部4から筒体20を容易に取り外すことが可能である。
【0025】
なお、このようなリング状の凸部24及び凹部25は、筒体20の外周面に少なくとも1つ以上設けられていればよい。また、上記ステム保護具1をエアゾール缶2の突起部4から取り外し易くするため、上述したリング状の凸部24や凹部25以外にも、例えば図5Aに示すように、筒体20の外周面に複数の突起部26を設けたり、図5Bに示すように、筒体20の外周部27の形状を部分的に変化させたりすることも可能である。
【0026】
さらに、上記ステム保護具1では、エアゾール缶2の突起部4に対する筒体20の嵌合力を高めるため、装着筒21の内周面に、図6Aに示すようなリング状の凸部28を設けたり、図6Bに示すような複数の突起部29を設けたりすることも可能である。
【0027】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態として図7に示すエアゾール装置は、本発明を適用した別のステム保護具30を上記エアゾール缶2に取り付けた構造を有している。
【0028】
このステム保護具30は、図8A,8Bに示すように、耐圧容器3の突起部4に着脱自在に装着される装着筒(装着部)31と、この装着筒31の一端から延長される延長筒(延長部)32とを備え、これら装着筒31及び延長筒32を金属又は樹脂により一体に成形することによって、全体として中空円形の断面形状を有する筒体33を構成している。また、筒体33は、装着筒31に突起部4を嵌合させるために、耐圧容器3の突起部4の外径に対応した内径を有している。
【0029】
また、筒体33は、延長筒32側の端部を外側に折り返したリング状の折返し部34を有している。この折返し部34は、突起部4に装着された筒体33を取り外す際の滑り止めとなる部分である。また、折返し部34は、装着筒31を突起部4に嵌合させた状態において、凹部9dの内面、すなわち外筒部9cの内面に接するように、その折返し幅Tが設定されている。
【0030】
このステム保護具30では、筒体33の装着筒31を突起部4に嵌合させた状態において、筒体33の延長筒32が押しボタン9の下面に設けられた凹部9dの内側に進入可能となっている。また、このような装着状態において、折返し部34が凹部9dの内面、すなわち外筒部9cの内面に接することになる。
【0031】
したがって、このようなステム保護具30をエアゾール缶2の突起部4に取り付けたエアゾール装置では、図7に示すように、延長筒32の内側に設けられた間隔、すなわち延長筒32と内筒部9bとの間の間隔Tが、延長筒32の外側に設けられた間隔、すなわち折返し部34と外筒部9cとの間の間隔T(この場合、接触するためT=0)よりも広くなる。
【0032】
これにより、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力が押しボタン9に加わった場合でも、倒れ込もうとする押しボタン9を突起部4に取り付けられたステム保護具30が支持することになる。一方、ステム6は、押しボタン9をステム保護具30が支持することによって、外力が加わることがなく、ステム保護具30の延長筒32に対しては非接触状態を維持している。したがって、このような外力が押しボタン9に加わることによる損傷からステム6を確実に保護することが可能である。
【0033】
また、このステム保護具30では、上述した折返し部34を設けることによって、例えばエアゾール缶2を使用した後の分別廃棄等の際に、エアゾール缶2の突起部4から筒体33を容易に取り外すことが可能となっている。
【0034】
なお、上記ステム保護具30では、エアゾール缶2の突起部4に対する筒体33の嵌合力を高めるため、装着筒31の内周面に、例えば図8Cに示すようなリング状の凸部35を設けたりすることも可能である。
また、上記ステム保護具30では、折返し部34が外筒部9cの内面に接触した構成(T=0)となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、折返し部34が外筒部9cの内面に非接触となる構成(T≠0)、すなわち折返し部34と外筒部9cとの間に間隔Tを設けた構成(但し、T>T)とすることも可能である。
【0035】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態として図9に示すエアゾール装置は、本発明を適用した別のステム保護具40を上記エアゾール缶2に取り付けた構造を有している。
【0036】
このステム保護具40は、図10A,10Bに示すように、耐圧容器3の突起部4に着脱自在に装着される装着筒(装着部)41と、この装着筒41の一端から延長される延長筒(延長部)42とを備え、これら装着筒41及び延長筒42を金属又は樹脂により一体に成形することによって筒体43を構成している。また、この筒体43は、装着筒41よりも延長筒42が大径とされた異径形状を有している。このうち、装着筒41は、突起部4を嵌合させるために、その内径が突起部4の外径に対応した中空円形の断面形状を有している。一方、延長筒42は、その外径が装着筒41の外径よりも拡径された中空円形の断面形状を有している。また、延長筒42は、装着筒41を突起部4に嵌合させた状態において、凹部9dの内面、すなわち外筒部9cの内面に接するように、その拡径幅Tが設定されている。そして、この装着筒41と延長筒42との間に設けられた段差部44が、突起部4に装着された筒体43を取り外す際の滑り止め部分となっている。
【0037】
このステム保護具40では、筒体43の装着筒41を突起部4に嵌合させた状態において、筒体43の延長筒42が押しボタン9の下面に設けられた凹部9dの内側に進入可能となっている。また、このような装着状態において、延長筒42が凹部9dの内面、すなわち外筒部9cの内面に接することになる。
【0038】
したがって、このようなステム保護具40をエアゾール缶2の突起部4に取り付けたエアゾール装置では、図9に示すように、延長筒42の内側に設けられた間隔、すなわち延長筒42と内筒部9bとの間の間隔Tが、延長筒42の外側に設けられた間隔、すなわち延長筒42と外筒部9cとの間の間隔T(この場合、接触するためT=0)よりも広くなる。
【0039】
これにより、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力が押しボタン9に加わった場合でも、倒れ込もうとする押しボタン9を突起部4に取り付けられたステム保護具40が支持することになる。一方、ステム6は、押しボタン9をステム保護具40が支持することによって、外力が加わることがなく、ステム保護具40の延長筒42に対しては非接触状態を維持している。したがって、このような外力が押しボタン9に加わることによる損傷からステム6を確実に保護することが可能である。
【0040】
また、このステム保護具40では、上述した段差部44を設けることによって、例えばエアゾール缶2を使用した後の分別廃棄等の際に、エアゾール缶2の突起部4から筒体43を容易に取り外すことが可能となっている。
【0041】
なお、上記ステム保護具40では、延長筒42が外筒部9cの内面に接触した構成(T=0)となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、延長筒42が外筒部9cの内面に非接触となる構成(T≠0)、すなわち延長筒42と外筒部9cとの間に間隔Tを設けた構成(但し、T>T)とすることも可能である。
【0042】
また、本発明を適用したエアゾール装置は、上記ステム保護具1,30,40以外にも、例えば図11A,11Bに示すようなステム保護具50を上記エアゾール缶2に取り付けた構造とすることもできる。
【0043】
このステム保護具50は、耐圧容器3の突起部4に着脱自在に装着される装着筒(装着部)51と、この装着筒51の一端から延長される延長筒(延長部)52とを備え、これら装着筒51及び延長筒52を金属又は樹脂により一体に成形することによって、全体として中空多角形(ここでは正六角形)の断面形状を有する筒体53を構成している。また、筒体53は、装着筒51に突起部4を嵌合させるために、耐圧容器3の突起部4の外径に対応した内径を有している。
【0044】
このステム保護具50では、筒体53の装着筒51を突起部4に嵌合させた状態において、筒体53の延長筒52が押しボタン9の下面に設けられた凹部9dの内側に進入可能となっている。また、このような装着状態において、延長筒52の内側に設けられた間隔、すなわち延長筒52と内筒部9bとの間の間隔Tが、延長筒52の外側に設けられた間隔、すなわち延長筒52と外筒部9cとの間の間隔Tよりも広く設定されている(T>T)。
【0045】
これにより、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力が押しボタン9に加わった場合でも、倒れ込む押しボタン9に対して延長筒52の外周面が凹部9dの内面、すなわち外筒部9cの内面に当接することになる。したがって、このようなステム保護具50をエアゾール缶2の突起部4に取り付けたエアゾール装置では、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力をステム保護具50が受けることになる。一方、押しボタン9と一緒に倒れ込むステム6は、押しボタン9が先にステム保護具50に当接することによって、それ以上倒れ込むことはなく、また、ステム保護具50の延長筒52に対しては非接触状態を維持している。したがって、このような外力が押しボタン9に加わることによる損傷からステム6を確実に保護することが可能である。
【0046】
また、このステム保護具50では、上述した筒体53を多角形状とすることで、突起部4に対する着脱を容易にすることが可能であり、例えばエアゾール缶2を使用した後の分別廃棄等の際に、エアゾール缶2の突起部4から筒体53を容易に取り外すことが可能となっている。
【0047】
なお、上記ステム保護具50では、例えば図11Cに示すように、突起部4に装着された筒体53を取り外す際の滑り止め部分となる段差部54を装着筒51と、この装着筒51よりも大径とされた延長筒52との間に設けた異径形状とすることも可能である。
【0048】
以上のように、本発明を適用したエアゾール装置では、上述したステム保護具1,30,40,50をエアゾール缶2の突起部4に取り付けることによって、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによる損傷からステム6を確実に保護することが可能である。
また、このエアゾール装置では、例えばエアゾール缶2を使用した後の分別廃棄等の際に、上述したステム保護具1,30,40,50をエアゾール缶2の突起部4から容易に取り外すことも可能である。
【0049】
なお、上記ステム6の材質については特に限定されないものの、一般にジュラコン(POMやナイロンなどが用いられている。このうち、ジュラコンは、ナイロンに比べて衝撃強度が劣るため、上述したステム保護具1,30,40,50は、押しボタン9の押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによるステム6の損傷を防ぐ上で大変有効である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、第1の実施の形態として示すエアゾール装置の断面図である。
【図2】図2は、図1に示す本発明を適用したステム保護具の斜視図である。
【図3】図3は、本発明を適用したステム保護具の変形例を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明を適用したステム保護具の別の変形例を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明を適用したステム保護具の別の変形例を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明を適用したステム保護具の別の変形例を示す斜視図である。
【図7】図7は、第2の実施の形態として示すエアゾール装置の断面図である。
【図8】図8は、図7に示す本発明を適用した別のステム保護具であり、Aはその斜視図であり、Bはその縦断面図であり、Cはその変形例を示す縦断面図である。
【図9】図9は、第3の実施の形態として示すエアゾール装置の断面図である。
【図10】図10は、図9に示す本発明を適用した別のステム保護具であり、Aはその斜視図であり、Bはその縦断面図である。
【図11】図11は、本発明を適用した別のステム保護具であり、Aはその斜視図であり、Bはその突起部に対する取付け状態を示す横断面図であり、Cはその変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1…ステム保護具 2…エアゾール缶 3…耐圧容器 4…突起部 5…コイルバネ 6…ステム 7…バルブ機構 8…噴射ノズル 9…押しボタン 9a…ボタン本体 9b…内筒部 9c…外筒部 9d…凹部 9e…流路 11…シリンダ 12…チューブ 20…筒体 21…装着筒 22…延長筒 23…切欠き部 24…凸部 25…凹部 30…ステム保護具 31…装着筒 32…延長筒 33…筒体 34…折返し部 40…ステム保護具 41…装着筒 42…延長筒 43…筒体 44…段差部 50…ステム保護具 51…装着筒 52…延長筒 53…筒体 54…段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容された耐圧容器と、前記耐圧容器の上部に設けられた突起部の先端から突出されると共にバネにより上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたステムを前記バネの付勢に抗して押し下げることにより開放されるバルブ機構と、前記ステムの先端部に取り付けられると共に噴射口が設けられた押しボタンとを備え、前記押しボタンを押圧操作することにより前記バルブ機構を開放し、前記押しボタンと一体に押し下げられた前記ステムを通じて噴出される前記耐圧容器内の内容物を前記押しボタンの噴射口から噴射させるエアゾール缶の、前記押しボタンの押圧方向とは異なる方向の外力が加わることによる損傷から前記ステムを保護するためのステム保護具であって、
前記耐圧容器の突起部に着脱自在に装着される装着部と、前記装着部の一端から延長される延長部とを備え、前記延長部が前記押しボタンの下面に設けられた凹部の内側に進入可能とされると共に、前記延長部の内側に設けられた間隔が前記延長部の外側に設けられた間隔よりも広く設定されていることを特徴とするステム保護具。
【請求項2】
前記延長部の外周面が前記押しボタンの凹部内面に接することを特徴とする請求項1に記載のステム保護具。
【請求項3】
前記装着部及び前記延長部を一体に成形した筒体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のステム保護具。
【請求項4】
内容物が収容された耐圧容器と、前記耐圧容器の上部に設けられた突起部の先端から突出されると共にバネにより上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されたステムを前記バネの付勢に抗して押し下げることにより開放されるバルブ機構と、前記ステムの先端部に取り付けられると共に噴射口が設けられた押しボタンとを備え、前記押しボタンを押圧操作することにより前記バルブ機構を開放し、前記押しボタンと一体に押し下げられた前記ステムを通じて噴出される前記耐圧容器内の内容物を前記押しボタンの噴射口から噴射させるエアゾール缶に、請求項1〜3の何れか一項に記載のステム保護具が取り付けられていることを特徴とするエアゾール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−284074(P2007−284074A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110834(P2006−110834)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】