説明

ステレオ透視装置およびそれを用いたステレオ観察方法

【課題】X線等の被検体を透過する放射線を用いることにより被検体の寸法や形状によらず内部構造の観察や内部欠陥等を検出することができ、被検体を回転させる簡素な構造で装置を小型化することができる汎用性、取扱い性に優れるステレオ透視装置の提供。
【解決手段】X線源5と、被検体20を移動自在に保持する位置設定機構6と、前記被検体20を挟んで前記X線源5に対向配置され前記被検体の透過画像を検出する平面状のイメージセンサ10と、前記位置設定機構6により少なくとも二種類の回動角度で保持されたときに前記イメージセンサ10で得られる前記被検体20の透過画像に基づいて、当該被検体20の三次元構造を表す三次元座標データを生成する座標データ生成部(制御部3)とを備えたことを特徴とするステレオ透視装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等の被検体を透過する放射線を用いて、非破壊検査などで被検体を立体視するためのステレオ透視装置及びそれを用いたステレオ観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非破壊検査において、被検体の内部構造の観察や内部欠陥等を検出する方法としては、コーンビーム型X線コンピュータ断層撮影(XCT)が用いられている。これにより、例えば基板等に実装された各種電子部品の半田部の電気接続不良等を検出し、不良品の投入を未然に防いでいた。
【0003】
しかし、このXCTによる画像処理には様々な角度から撮影した画像が必要で撮影に時間を要すると共に、三次元画像の情報処理に多大な時間と労力を要し、工場等で大量生産されるものを検査する方法としては適していなかった。例えば、XCT装置で高精度の撮影を行うためには、数百回の撮像が必要であった。通常、1サンプルの撮影には、数十秒から数百秒かかるため、撮影に非常に長時間を要する。このため、XCTは限られた分野でしか使用されておらず、汎用化には至っていない。
【0004】
そこで、これらの課題を解決すべく種々研究がなされている。例えば、X線画像を用いてステレオ表示を行うものとして、(特許文献1)には「観察者距離測定部がステレオ表示を行うモニタとX線画像の観察者との距離を測定するとともに、観察者距離測定部による検出距離に基づき、画像距離制御部がモニタの画面上にステレオ表示する2つのX線画像の中心間距離をステレオ表示に対する観察視差と撮影視差とが略等しくなるよう自動調節することにより、ステレオ表示を適切な立体視のできるものにするディジタルX線撮影装置」が開示されている。
【0005】
また、透過型電子顕微鏡によりステレオ観察する方法として(特許文献2)には「非晶質体に対する電子線の入射角度を変えて複数の観察を行い、それら複数の観察の結果を合成することにより、欠陥の三次元的な観察を行うことを特徴とする透過型電子顕微鏡による観察方法」が開示されている。
【特許文献1】特開平10−5206号公報
【特許文献2】特開2004−111839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の技術では、以下のような課題を有していた。
【0007】
(1)(特許文献1)のディジタルX線撮影装置は、主に医療分野で用いられ、イメージインテンシファイアを用いたステレオ撮影により、手術現場等で被検体の患部における三次元的な情報を得ようとするものであり、被検体を挟んで対向支持されたX線管とイメージインテンシファイアとを被検体の周りで回転させて撮影を行わなければならず、機構が複雑で装置が大型化するという課題を有していた。また、入力面が球面上であるため画像に歪が発生し易く、歪を改善するためにはX線管とイメージインテンシファイアとの距離を1m以上にしなければならず、装置が大型化し観察対象が微小な工業用途には不向きであるという課題を有していた。
【0008】
(2)(特許文献2)の透過型電子顕微鏡による観察方法では、電子線を透過させるために被検体を200nm以下の厚さまで薄膜化する必要があり、観察対象が限定され汎用性に欠けるという課題を有していた。また、平行な電子線を照射して得られる画像を用いたステレオ観察は擬似的なものであり、実際のステレオ画像とは異なり、深さ方向の情報を得ることができず、三次元的な観察が困難で実用性に欠けるという課題を有していた。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、X線等の被検体を透過する放射線を用いることにより、被検体の寸法や形状によらず内部構造の観察や内部欠陥等を検出することができ、被検体を回転させる簡素な構造で装置を小型化することができる汎用性、取扱い性に優れるステレオ透視装置の提供、及びそれを用いた短時間で正確な画像処理を行うことができ、立体認識が容易で簡便に三次元情報を得ることができ実用性に優れるステレオ観察方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明のステレオ透視装置及びそれを用いたステレオ観察方法は、以下の構成を有している。
【0011】
本実施形態にかかるステレオ透視装置は、放射線源と、被検体を移動自在に保持する位置設定機構と、前記被検体を挟んで前記放射線源に対向配置され前記被検体の透過画像を検出する平面状のイメージセンサと、前記位置設定機構により少なくとも二種類の回動角度および/または位置で保持されたときに前記イメージセンサで得られる前記被検体の透過画像に基づいて、当該被検体の三次元構造を表す三次元座標データを生成する座標データ生成部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成により、以下のような作用を有する。
【0013】
(1)被検体を移動自在に保持する位置設定機構を有するので、位置設定機構により被検体を回動させることができ、被検体の表面とイメージセンサの表面とのなす角を容易に設定することができ、放射線源からX線やγ線等の放射線を照射して被検体の任意の角度における透過画像を簡便に撮影することができる。
【0014】
(2)放射線源と平面状のイメージセンサが被検体を挟んで対向配置されているので、被検体の透過画像を精度よく検出することができる。
【0015】
(3)被検体を透過する放射線(X線、γ線など)を用いることにより、被検体の寸法や形状によらず確実に被検体の内部構造の観察や内部欠陥等を検出することができ実用性、汎用性に優れる。
【0016】
(4)少なくとも二種類の回動角度および/または位置で被検体が保持されたときに前記イメージセンサで得られる当該被検体の透過画像に基づいて、当該被検体の三次元構造を表す三次元座標データを生成することにより、短時間で正確な画像処理を行うことができ、立体認識が容易で簡便に三次元情報を得ることができ実用性に優れる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のステレオ透視装置及びそれを用いたステレオ観察方法によれば、X線等の被検体を透過する放射線を用いることにより被検体の寸法や形状によらず内部構造の観察や内部欠陥等を検出することができ、被検体を回転させる簡素な構造で装置を小型化することができる汎用性、取扱い性に優れるステレオ透視装置の提供、及びそれを用いた短時間で正確な画像処理を行うことができ、立体認識が容易で簡便に三次元情報を得ることができ実用性に優れるステレオ観察方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態にかかるステレオ透視装置は、被検体を透過する放射線を発生する放射線源と、被検体を移動自在に保持する位置設定機構と、前記被検体を挟んで前記放射線源に対向配置され前記被検体の透過画像を検出する平面状のイメージセンサと、前記位置設定機構により少なくとも二種類の回動角度および/または位置で保持されたときに前記イメージセンサで得られる前記被検体の透過画像に基づいて、当該被検体の三次元構造を表す三次元座標データを生成する座標データ生成部とを備えた構成である。なお、位置設定機構は、被検体の回動角度および/または平面上の位置等を設定することが可能である。
【0019】
位置設定機構としては被検体を少なくとも1つの軸周りに回動自在に保持できるものであればよい。例えば、回動軸を有するアームやテーブル等に被検体を固定し、回動軸を手動或いはパルスモータやサーボモータ等のモータで回動させるものやアームやテーブル等の一端をピストンシリンダ等で牽引或いは押圧し回動軸周りに回動させるもの等が好適に用いられる。また、被検体を左右方向及び前後方向に回動させる互いに直交した2つの回動軸を有する多関節のアーム等を用いて被検体を保持してもよい。これにより、被検体を奥行き(前後)方向に傾斜(回動)させることができ、厚さ方向を強調して表示することができる。特に薄板状の被検体の観察を容易に行うことができ汎用性、実用性に優れる。
【0020】
位置設定機構は、初期状態で被検体の表面とイメージセンサの表面が略平行になるように被検体を固定することが好ましい。これにより、位置設定機構で被検体を回動させる際に、角度を容易に設定でき、正確な角度で被検体の透過画像を検出することができる。被検体の固定方法としては、直接、被検体を挟持するもの、両面テープ等により貼着するもの、エアにより吸引して吸着するもの等を用いることができる。
【0021】
イメージセンサとしては、CCD型やCMOS型のものが好適に用いられる。イメージセンサが平面状に形成されていることにより、画像に歪が発生し難く、装置の小型化が容易で微小物を対象とした観察に好適に用いることができる。イメージインテンシファイアなどによる画像補正を行うことも可能である。
【0022】
また、上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記三次元座標データに基づいて、前記透過画像をステレオ表示する表示器をさらに備え、前記表示器の表示画面上で前記透過画像の少なくとも一点を指定したときに、前記三次元座標データに基づいて、当該点における前記被検体の厚さを出力することが好ましい。また、複数の点の相互間の情報より、特定位置の空間的な位置を数値的に表現することにより、特定位置の相対的な位置情報を高精度に出力することが可能となる。
【0023】
ステレオ表示は、撮影角度の異なる二つの画像を表示することにより、撮影角度の差(撮影視差)に基づいて被検体を立体として認識させることができる。被検体の回動中心となる回動軸が被検体よりもイメージセンサ側に位置する場合、被検体全体を回動軸より放射線源側で回動させることができる。これにより、ステレオ表示した際に、被検体全体を表示器の画面より手前側、即ち相対的に観察者の近傍に存在する立体として表示でき、被検体を立体として認識し易い。特に、内部欠陥の発生位置等を容易に把握でき、被検体の任意の位置を画面上で簡便に指し示すことができるので実用性に優れる。
【0024】
表示器としては、平面画像をステレオ表示できるものであればよい。赤青メガネを利用したアナグリフ立体表示を行うもの、裸眼立体視による交差法立体表示や平行法立体表示を行うもの、単独で立体表示可能な液晶ディスプレイや立体視メガネ、或いは画面切替えが可能なディスプレイと液晶シャッターメガネを組合せたもの、ディスプレイの前面にレンズを配置しめがね無しで立体を表示するもの等を用いることができる。
【0025】
特に立体視メガネは、大型のディスプレイが不要なため装置全体を小型化することができ、安価で省スペース性に優れる。
【0026】
また、上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記三次元座標データに基づいて、前記被検体の三次元構造を表現する形状モデルデータを生成する形状モデル生成部をさらに備えたことが好ましい。被検体の三次元構造を形状モデルデータとして表現することにより、被検体がどのような構造を有しているのかを容易に把握できるようになるからである。また、形状モデルデータを生成することにより、CADデータ等との互換性が向上する。
【0027】
また、上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記形状モデルデータに基づいて、前記被検体の三次元構造をCADシステムで利用可能なCADデータを生成するCADデータ生成部をさらに備えたことが好ましい。これにより、被検体の三次元構造を表すCADデータをCADシステムに蓄積したり、CADシステムで編集加工することが可能となる。
【0028】
また、上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記形状モデルデータと、所定の対象物の三次元構造をCADシステムで利用可能なCADデータで表した対象物モデルとを照合するCADデータ照合部をさらに備えたことが好ましい。これにより、被検体に当該対象物が含まれているか否かを判断できると共に、含まれている場合は、被検体内の当該対象物の個数、位置、および向き(姿勢)等についても判断することが可能となる。また、被検体に当該対象物が含まれていると判断された場合、さらに、当該対象物の設計データ(CADデータ)と実際の対象物との誤差を計測することもできる。これにより、例えば、内部構造が分からない装置を被検体とし、その内部構造を解析することが可能となる。また、例えば、各種装置の完成検査において、設計データどおりに装置が組み立てられているかを容易に確認することも可能となる。
【0029】
上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記放射線源と前記イメージセンサとによって構成される撮像系のカメラパラメータを校正するカメラ校正部をさらに備え、前記カメラ校正部は、前記位置設定機構において前記被検体が載置される載置台に、放射線の透過率が部分的に異なるパターンを有するキャリブレーションパターンが載置された状態で、前記位置設定機構により少なくとも二種類の回動角度で保持されたときに前記イメージセンサで得られる前記キャリブレーションパターンの透過画像に基づいて、カメラパラメータの校正を行うことが好ましい。これにより、被検体の三次元構造を精度よく求めることができる。
【0030】
上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記放射線源と前記被検体との間に配設され前記被検体の表面から反射された反射光を反射させる反射ミラーと、前記被検体までの距離が前記放射線源と光学的に等距離の位置に焦点を有し前記反射ミラーで反射された前記被検体の表面画像を撮影する光学カメラとをさらに備え、前記座標データ生成部が、前記透過画像と前記光学カメラで撮影された表面画像とに基づいて当該被検体の三次元構造を表す三次元座標データを生成することが好ましい。
【0031】
この構成により、以下のような作用を有する。
【0032】
(1)放射線源と被検体との間に配設され被検体の表面から反射された反射光を反射させる反射ミラーを有するので、放射線による透過画像に加え、反射ミラーで反射された被検体の表面画像を光学カメラにより撮影することができ、被検体の表面観察を行うことができる。
【0033】
(2)被検体までの距離が放射線源と光学的に等距離の位置に焦点を有する光学カメラを備えることにより、放射線による透過画像とほぼ同等の画角で被検体の表面画像を撮影することができるので、透過画像又は表面画像に拡大や縮小等の特別な画像処理等を施す必要がなく、透過画像と表面画像との比較が容易で画像データの取扱性に優れる。
【0034】
ここで、放射線源と被検体との間に反射ミラーを配設しても、放射線源から照射されるX線等の放射線は反射ミラーを透過するので、反射ミラーが放射線による透過画像の撮影に影響を与えることはない。これにより、透過画像の撮影と表面画像の撮影を同時に行うことができ、作業時間を大幅に短縮することができる。また、透過画像と表面画像を同時に撮影することにより、透過画像と表面画像を重ねて表示した際に位置ずれが発生することがなく、被検体の構造や配置を正確に把握することができ信頼性に優れる。
【0035】
光学カメラのレンズには単焦点レンズやズームレンズ等を使用することができる。単焦点レンズは焦点距離が一定で撮影画角が固定されているので、使用時に光学系の調整が不要で取扱性に優れる。また、ズームレンズに比べレンズ収差が少なく、高画質の画像を撮影することができ信頼性に優れる。
【0036】
また、上記の光学カメラを備えた構成においてさらに、前記三次元座標データに基づいて、前記透過画像をステレオ表示する表示器を備え、前記表示器が前記透過画像と前記表面画像とを重ねて表示することが好ましい。このように、透過画像と表面画像を重ねて表示することにより、実物の内部を透視したような状態を表現することができ、三次元的な距離感が掴み易く、被検体の構造や配置が分かり易く位置合わせ等を容易に行うことができる。ここで、透過画像及び表面画像は必要に応じて画像処理ソフトウェア等により加工を行うことができる。画像の大きさや表面画像の透過率等を変更することにより、作業者にとって観察し易い状態で表示を行うことができ、より正確な情報を得ることができる。
【0037】
また、上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記被検体の部分を撮影した透過画像を複数組み合わせて、当該被検体の全体画像を合成する画像合成部をさらに備えたことが好ましい。これにより、比較的大きな被検体についても全体の構造を分かりやすく表示することが可能となる。
【0038】
また、上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記透過画像の透過率に基づいて、前記被検体に含まれる所定の物体の個数を計数する計数部をさらに備えたことが好ましい。これにより、被検体の内部構造を容易に検査することが可能となる。
【0039】
また、上記の構成にかかるステレオ透視装置において、前記位置設定機構が、前記被検体が固定される傾斜テーブルと、前記傾斜テーブルを互いに直交する2つの軸周りに回動自在に保持する回動保持部とを有することが好ましい。この構成では、位置設定機構が、被検体が固定される傾斜テーブルを互いに直交する2つの軸周りに回動自在に保持する回動保持部を有することにより、回動保持部により被検体を三次元的に傾斜させることができるので、透過画像の撮影角度や観察角度を任意に設定することができ、汎用性、実用性に優れる。
【0040】
ここで、回動保持部としては傾斜テーブルを互いに直交する2つの軸周りに回動自在に保持できるものであればよい。例えば、傾斜テーブルを左右方向に回動させる左右方向回動軸を回動自在に保持するアーム部と、左右方向回動軸と直交してアーム部に配設された前後方向回動軸を備えたものが好適に用いられる。また、傾斜テーブルの四隅或いは傾斜テーブルの略中心で互いに直交する2つの軸線上(傾斜テーブルの左右及び前後両端)に1つずつフレキシブルジョイントを対向配置し、パルスモータやサーボモータ等のモータで選択的に上下動させてもよい。フレキシブルジョイントとしては、回転2自由度に加え伸縮機構を有するものが好適に用いられる。例えばユニバーサルジョイント等の端部にバネやゴム等の弾性体を配設してもよいし、回転2自由度を有する球状のジョイント部を長孔に摺動自在に保持してもよい。傾斜テーブルにXYステージを備えた場合、被検体をイメージセンサと平行な面内で前後及び左右に移動させることができ、被検体の任意の箇所を選択して観察することができる。
【0041】
また、本発明の一実施形態にかかるステレオ観察方法は、被検体が移動自在に保持された位置設定機構により前記被検体を回動させ前記被検体の表面と前記イメージセンサとの表面とのなす角を設定する検出角度設定工程と、前記検出角度設定工程で設定された少なくとも二種類の回動角度および/または位置で保持された被検体に、当該被検体を透過する放射線を放射線源から照射し、前記被検体を挟んで前記放射線源に対向配置された平面上のイメージセンサで前記被検体の少なくとも二種類の透過画像を検出する透過画像検出工程と、前記少なくとも二種類の透過画像に基づいて、当該被検体の三次元構造を表す三次元座標データを生成する座標データ生成工程とを含むことを特徴とする。
【0042】
以下、本発明にかかるステレオ透視装置及びそれを用いたステレオ観察方法の具体的実施形態について、以下図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、X線を用いたステレオ透視装置を例示するが、被検体を透過する放射線であれば、X線以外の放射線(例えばγ線)等を利用することも可能である。
【0043】
図1は本発明の一実施形態におけるX線ステレオ透視装置を示す全体斜視図である。
【0044】
図1中、1は本実施形態におけるX線ステレオ透視装置、2はX線透視装置1の装置本体を覆う遮蔽箱、2aは遮蔽箱2に配設され被検体の出し入れを行う開閉扉、2bは遮蔽箱2に配設されたX線遮蔽ガラス付の窓、3はX線透視装置1の制御ならびにX線透視装置1で得られた被検体の透過画像および表面画像の画像処理を行うパーソナルコンピュータ等の制御部、4は制御部3に接続され被検体の透過画像及び表面画像をステレオ表示する液晶ディスプレイ等の表示器である。
【0045】
次に、本実施形態におけるX線ステレオ透視装置の構成について詳細に説明する。図2は本実施形態におけるX線ステレオ透視装置の構成を示す要部正面模式図であり、図3は本実施形態におけるX線ステレオ透視装置の構成を示す要部側面模式図である。
【0046】
図2及び図3中、5はX線を照射するX線源、6は被検体20を移動自在に保持するX線透視装置1の位置設定機構、7はXYステージ8を備え被検体20が固定される位置設定機構6の傾斜テーブル、8aは傾斜テーブル7の水平面内に連設された位置設定機構6の回動軸、9は回動軸8に連結され傾斜テーブル7を左右方向の任意の角度に回動固定させるパルスモータやサーボモータ等の位置設定機構6の回動駆動部、10は傾斜テーブル7を挟んでX線源5に対向配置されX線が照射された被検体20の透過画像を検出するCCD型やCMOS型の平面状のイメージセンサ、11はX線源5と被検体20との間に配設され被検体20の表面から反射された反射光を反射させる反射ミラー、12は被検体20までの距離がX線源5と光学的に等距離の位置に単焦点レンズ12aの焦点を有し反射ミラー11で反射された被検体20の表面画像を撮影する光学カメラである。
【0047】
制御部3,表示器4以外を遮蔽箱2で覆うことにより、外部へのX線の漏れが防止される。また、遮蔽箱2には被検体の出し入れを行う開閉扉が配設されている(図1)。これにより、傾斜テーブル7への被検体20の固定や傾斜テーブル7からの被検体20の回収を容易に行うことができる。また、遮蔽箱2の開閉扉2a及び窓2bにはX線遮蔽ガラスが配設されている。これにより、外部から傾斜テーブル7の動きなどを直視して動作を確認することができ誤動作を防止できる。本実施の形態では、遮蔽箱2の正面に開閉扉2aを設けたが、遮蔽箱の左右両側に開閉扉を設けてもよい。これにより、左右の開閉扉から被検体20の出し入れを行うことができるので、X線透視装置1を検査ライン等に容易に組込んで作業を自動化することができ効率性に優れる。
【0048】
被検体20は、両面テープで貼着することにより傾斜テーブル7のXYステージ8上に固定される。被検体20が比較的大きな場合などは、エアにより吸着したり、被検体20の外形を挟持したりして固定するようにしてもよい。傾斜テーブル7がXYステージ8を備えることにより、被検体20を傾斜テーブル7と平行な面内で前後及び左右に移動させることができ、被検体20の任意の箇所を選択して詳細に観察することができる。また、被検体20が比較的大きい物体である場合は、その被検体の一部の箇所を撮影し、XYステージ8で撮影箇所を平行移動させて前回の撮影箇所と一部重なりを持つように次の箇所を撮影し、この撮影作業をXY方向に繰り返して得られた複数箇所の撮影画像を制御部3において合成することにより、被検体20の全体画像を生成することも可能である。
【0049】
傾斜テーブル7は、回動軸8aが配設され、初期状態で平面状のイメージセンサ10と平行に配置される。これにより、回動駆動部9で傾斜テーブル7を回動させた際に正確な角度で被検体20の透過画像を検出することができる。また、被検体20全体を回動軸8aよりX線源5側で回動させることができるので、ステレオ表示した際に、被検体20全体を表示器4の画面より手前側、即ち相対的に観察者の近傍に存在する立体として表示できる。これにより、被検体20を立体として認識し易く視認性に優れるので、内部欠陥の発生位置等を容易に把握できると共に、被検体20の任意の位置を画面上で簡便に指し示すことができ実用性に優れる。
【0050】
イメージセンサ10としては、平面状に形成されたCCD型やCMOS型のものを使用できる。これにより、画像に歪が発生し難く、X線透視装置1全体を小型化することができ、微小物を対象とした観察に好適に用いることができる。また、X線源5と被検体20との間には反射ミラー11を配設した。これにより、被検体20の表面から反射された反射光を反射させることができ、被検体20の表面画像を撮影することができる。尚、X線源5から照射されるX線は反射ミラー11を透過するので、反射ミラー11がX線による透過画像の撮影に影響を与えることはない。
【0051】
光学カメラ12のレンズには単焦点レンズ12aを使用し、X線源5から被検体20までの距離と、単焦点レンズ12aの焦点から被検体20までの距離が光学的に等距離の位置となるようにする。単焦点レンズ12aは焦点距離が一定で撮影画角が固定されているので、撮影時に光学系の調整が不要で、X線による透過画像とほぼ同等の画角で被検体20の表面画像を撮影することができる。また、レンズ収差が小さく、高画質の画像を得ることができる。尚、単焦点レンズ12aの代りにズームレンズを使用してもよいが、その際には焦点距離の調整が必要となると共に、単焦点レンズ12aに比べレンズ収差が大きく、画質が低下し易くなる。
【0052】
制御部3は、位置設定機構6のXYステージ8及び回動駆動部9を制御して被検体20の観察位置や撮影角度を任意に設定できる。また、透過画像,表面画像,観察条件等のデータは、制御部3に配設したハードディスクやMO,CD,DVD等の各種記憶媒体に保存することができる。これにより、保存したデータの管理を容易に行うことができ、適宜、データを取出して表示器4でのステレオ表示を行うことができる。
【0053】
また、制御部3は、画像処理ソフトウェアによる画像処理を行う。制御部3による画像処理は、(a)表示器4において被検体20の立体表示を可能とするための表示用データ生成処理、(b)撮影画像からの立体形状データの抽出処理、(c)被検体20の各部の位置や距離等の計測処理、(d)被検体20の三次元CADデータの生成処理、(e)被検体20の既存の三次元CADデータとの対照比較処理、(f)複数の撮影画像の合成処理、(g)被検体20に含まれる所定の形状物の計数処理、等を含む。なお、制御部3は、必ずしも、これらの画像処理機能の全てを実行可能である必要はない。これらの画像処理の内容については後述する。
【0054】
表示器4は撮影角度の異なる二つの画像を表示することにより、撮影角度の差(撮影視差)に基づいて被検体20を立体として認識させることができる。尚、表示器4は平面画像をステレオ表示できるものであればよく、赤青メガネを利用したアナグリフ立体表示を行うもの、裸眼立体視による交差法立体表示や平行法立体表示を行うもの、或いは画面切替えが可能なディスプレイと液晶シャッターメガネを組合せたもの等を用いてもよい。特に立体視メガネは、大型のディスプレイが不要なためX線透視装置1を小型化することができ、安価で省スペース性に優れる。
【0055】
ここで、制御部3の機能ブロックを示した図4を参照しながら、制御部3の動作のうち、主として画像処理動作について説明する。なお、図4に示した機能ブロックは、制御部3を構成するパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータのプロセッサが画像処理ソフトウェアを実行することによって機能的に実現可能であればよく、必ずしも、これらの機能に個々に対応する別個のハードウェアが存在しなくてもよい。ただし、図4に示した機能ブロックの少なくとも一部あるいは制御部3の全体を、いわゆる組み込みシステムによって実現することも可能である。
【0056】
図4に示すように、制御部3は、光学カメラ12、位置設定機構6のXYステージ8及び回動駆動部9、ならびにイメージセンサ10等の動作を制御する動作制御部31と、イメージセンサ10から出力された透過画像および光学カメラ12から出力された表面画像の画像処理を行う画像処理制御部32とを有している。動作制御部31は、位置設定機構6およびイメージセンサ10等の撮影機構の動作を制御する制御信号を出力すると共に、撮影機構の動作と画像処理制御部32の動作との同期をとることが必要な場合等は、画像処理制御部32に対しても制御信号を送出する。
【0057】
画像処理制御部32は、透過画像入力部321、表面画像入力部322、座標データ生成部323、形状データ抽出部324、形状モデル生成部325、表示データ生成部326、CADデータ生成部327、CADデータ照合部328、カメラ校正部329、および、形状モデルデータベース330を備えている。なお、これらの各部は、前述の画像処理機能の全てを実現するための必要な機能ブロックであり、必要とされる画像処理機能に応じていずれかが省略されていても良い。
【0058】
透過画像入力部321は、被検体20をX線撮影して得られた透過画像をイメージセンサ10から取得し、少なくとも一時的にメモリ(図示せず)に記憶する。表面画像入力部322は、被検体20を光学カメラ12で撮影して得られた表面画像を取得し、少なくとも一時的にメモリ(図示せず)に記憶する。座標データ生成部323は、透過画像から座標データを生成する。形状データ抽出部324は、例えばセグメントベーストステレオ法や相関法等を用いて、座標データから形状データを抽出する。形状データとは、被検体20の各部の立体形状を表現するデータである。形状データの具体例としては、これらにのみ限定されないが、被検体20に含まれる輪郭線の三次元情報や、被検体20に含まれるテクスチャ領域やシェイジング領域の三次元情報等が含まれる。
【0059】
形状モデル生成部325は、形状データ抽出部324によって生成された形状データと、形状モデルデータベース330とを照合し、三次元形状モデルを生成する。このとき、形状モデル生成部325は、被検体20について少なくとも二方向からの透過画像のそれぞれから生成された形状データに基づいて、三次元形状モデルを生成する。一方向からの透過画像の形状データからだけでは、三次元形状モデルを生成できないからである。なお、二方向からの透過画像を用いることにより最低限の三次元形状モデルを生成可能であるが、原理的に、二方向からの透過画像のみを用いた場合、エピポーラ面(前記二方向からの撮影時のカメラの投影中心を通る直線を含む平面)上に存在する境界線の距離を計測できないので、三方向以上からの透過画像を用いることがより好ましい。また、三方向以上からの透過画像を用いることにより、例えば、処理対象の輪郭線が実在する三次元形状の輪郭線なのか、あるいは当該方向から見た場合に曲面上等に発生する見かけの輪郭線なのかを区別し、見かけの輪郭線に起因する処理誤りや誤差等を補正できるという利点もある。
【0060】
表示データ生成部326は、形状モデル生成部325で生成された三次元形状モデルに基づいて、表示器4でステレオ表示を行うための表示用データを生成する。
【0061】
CADデータ生成部327は、形状モデル生成部325で生成された三次元形状モデルに基づいて、被検体20の三次元形状をCADシステムで処理可能なCADデータで表現する。これにより、被検体20の三次元形状データをCADシステムに蓄積したり、編集加工したりすることが可能となる。
【0062】
CADデータ照合部328は、既存のCADデータを入力し、この既存のCADデータと形状モデル生成部325で生成された三次元形状モデルとを照合することにより、この三次元形状が被検体20に含まれているかを判断する。これにより、被検体20に、所定の三次元形状を有する物体が含まれているか否かを判断すること等が可能となる。例えば、被検体20が配線基板である場合に、所定の配線パターンを有する回路素子が含まれているか否かを判断できる。
【0063】
カメラ校正部329は、所定のキャリブレーションパターンを用いて、カメラパラメータの校正を行う。X線源5とイメージセンサ10とによって構成される本実施形態のX線撮像系は、ピンホールカメラモデルと見なすことができる。ピンホールカメラでは、三次元空間内の1点からの光線は、焦点を通って、撮像面(イメージセンサ10)に投影される。撮像面上の像は、光電変換とAD変換とを経て、フレームバッファに記録される。この系には、カメラ座標系の原点(すなわち焦点)の位置(3自由度)、カメラ座標系の方向(3自由度)、焦点距離(1自由度)、および、撮像面からフレームバッファへの変換に関して、画像中心の平行移動(2自由度)、スケール・回転・サンプリング間隔・アスペクト比等に依存する一次変換(4自由度)の合計13自由度のパラメータが含まれる。ただし、撮像面からフレームバッファへの一次変換のうち、回転成分がカメラ座標系の光軸まわりの回転と区別できないことと、スケール成分がカメラの焦点距離と区別できないこととによって、全部の自由度は11となる。従って、カメラ校正部329は、11個のカメラパラメータの校正を行えばよい。
【0064】
カメラパラメータの校正を行うためには、三次元空間中の点と撮影画像(フレームバッファ内の画像)内の点との対応を求める必要がある。このため、三次元空間中の位置が既知であるパターンとして、例えば図5(a)〜(c)に示すようなキャリブレーションパターンを傾斜テーブル7のXYステージ8に載置し、XYステージ8の回動角度を異ならせて複数回の撮影を行い、それらの撮影で得られた透過画像を用いて、カメラパラメータの校正を行う。なお、図5(a)〜(c)に示したキャリブレーションパターンは、図5(a)〜(c)において黒く着色されている部分に金属薄膜が存在するように、エッチング等によって形成されている。
【0065】
図5(a)に示したキャリブレーションパターンでは、二つの三角形の接点が基準点として用いられる。図5(b)に示したキャリブレーションパターンでは、円の重心が基準点として用いられる。図5(c)に示したキャリブレーションパターンでは、中央に位置する円環の重心が基準点として用いられる。なお、本発明において適用可能なキャリブレーションパターンは、図5(a)〜(c)に示した具体例のみに限定されない。X線の透過量が部分的に異なるパターンであって、かつ、パターン内の一点が容易に特定できるようなパターンであれば、任意のパターンを用いることができる。また、平面上のパターンに限定されず、立方体や円板等の三次元形状をキャリブレーションパターンとして用いることもできる。
【0066】
なお、図1に示した構成ではX線撮像系と光学カメラ12とが同軸であるが、光学カメラ12がX線撮像系と同軸でない場合、カメラ校正部329は、X線撮像系だけでなく、光学カメラ12のカメラパラメータの校正も別途行うことが好ましい。また、光学カメラ12については、レンズの収差によって画面周辺部に歪みが見られることが一般的であるので、適当な補正式を求めてその歪みを補正することが好ましい。
【0067】
カメラ校正部329によって校正されたカメラパラメータは、座標データ生成部323へ渡される。座標データ生成部323は、校正されたカメラパラメータに基づいて、フレームバッファ内の画像データの各点の三次元座標データを算出する。従って、カメラ校正部329によるカメラパラメータの校正は、位置設定機構6が傾斜テーブル7の回動角度等を変更する都度に実行する必要がある。
【0068】
ここで、以上のように形成されたX線ステレオ透視装置の動作について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは、カメラパラメータの校正は完了しているものとして説明を行う。
【0069】
最初に、被検体20をある所定の角度から撮影できるように、制御部3の動作制御部31が、位置設定機構6のXYステージ8および回動駆動部9を制御する。ここでは、図7(a)に示すように被検体20が固定された傾斜テーブル7を回動駆動部9で回動させ、第1の角度θ1(例えば8度)に固定する。そして、被検体20にX線源5からX線を照射し、傾斜テーブル7を挟んでX線源5に対向配置された平面状のイメージセンサ10で被検体20の第1の透過画像を撮影する。この第1の透過画像が、透過画像入力部321を介して画像処理制御部32へ入力され、フレームメモリ(図示せず)に記憶される。また、このとき同時に、光学カメラ12により第1の透過画像に対応する被検体20の第1の表面画像が撮影され、表面画像入力部322を介して画像処理制御部32へ入力され、フレームメモリ(図示せず)に記憶される(ステップS1)。
【0070】
次に、座標データ生成部323が、カメラ校正部329によって校正されたカメラパラメータを用いて、フレームメモリの第1の透過画像および第1の表面画像のそれぞれについて三次元座標データを求める。さらに、形状データ抽出部325が、第1の透過画像および第1の表面画像の三次元座標データのそれぞれからエッジ(輪郭線)を抽出してセグメントに分割する(ステップS2)。そして、形状データ抽出部324が、形状モデルデータベース330を参照しつつ、セグメントを単位とする探索処理を行い、輪郭線の三次元情報(三次元輪郭線)を復元する(ステップS3)。
【0071】
ここで、ステップS2,S3によって復元される三次元輪郭線の特徴点及び三次元幾何特徴について説明する。図8(a)〜(h)は、輪郭線の三次元情報がセグメントに分割される特徴点の例を表す説明図である。三次元輪郭線は、ステップS2において、図示のような各種特徴点で分割される。
【0072】
一方、この処理と並行して、形状データ抽出部324が、ステップS1で入力された第1の透過画像および第1の表面画像に基づき、画素間の相関値に基づく相関ステレオ処理を行い、テクスチャ領域およびシェイジング領域の三次元情報を復元する(ステップS4)。ここで、テクスチャ領域とは、細かい模様が存在する領域である。また、シェイジング領域とは、滑らかな曲面が光源との位置関係にしたがって、その明るさを少しずつ変化させている領域である。前記の相関ステレオ処理とは、画像内のある画素周辺の小領域の相関計数を評価することによって、対応探索を行う手法である。相関ステレオ処理によれば、セグメントベーストステレオでは復元が困難な、テクスチャ領域やシェイジング領域の三次元情報を復元することができる。
【0073】
次に、現在作成中の物体モデルがあるか否かの判断を行う(ステップS5)。ここで、作成中の物体モデルがあれば、ステップS3で得られた輪郭線の三次元情報を用いて、登録された物体モデルとの位置合わせを行い(ステップS6)、物体モデルにステップS3で得られた輪郭線の三次元情報およびステップS4で得られたテクスチャ/シェイジング領域の三次元情報を統合し、物体モデルを更新する(ステップS7)。なお、ステップS6における位置合わせは、領域の三次元情報に基づいて行うようにしても良いし、輪郭線及び領域の両方の情報により行うようにしても良い。一方、ステップS5で、作成中の物体モデルが存在しなければ、ステップS3で得られた輪郭線の三次元情報と、ステップS4で得られたテクスチャ/シェイジング領域の三次元情報とを統合し、新たな物体モデルを作成する(ステップS7)。
【0074】
次に、物体全体のモデルが完成しているかどうかの判断を行う(S8)。ここで、全体のモデルが完成していなければ、被検体20を今回とは異なる角度から撮影できるように、制御部3の動作制御部31が、位置設定機構6のXYステージ8および回動駆動部9を制御する(ステップS9)。例えば、図7(b)に示すように傾斜テーブル7を回動させ第2の角度θ2(例えば20度)に固定する。そして、被検体20の第2の透過画像と、この第2の透過画像に対応する被検体20の第2の表面画像を撮影し、これらの第2の透過画像および第2の表面画像を用いて、上述のステップS1〜S8の処理を繰り返す。一方、全体のモデルが完成していれば、処理を終了する。
【0075】
以上の処理により、本実施形態にかかるX線ステレオ透視装置によれば、被検体20の三次元形状モデルを生成することができる。また、形状モデルデータベース330に格納されている形状モデルデータがCADシステムで取り扱われるデータと互換性を有している場合は、CADデータ生成部327が、形状モデル生成部325が生成した三次元形状モデルをCADデータに変換して形状モデルデータベース330に記憶させることにより、被検体20からCADデータを容易に得ることができ、CADシステムによる編集加工も可能となる。
【0076】
表示データ生成部326は、上述のように生成された三次元形状モデルに基づいて、ステレオ表示用の表示データを生成する。次に、ステレオ表示工程について説明する。図9はステレオ表示工程を示す模式図である。図9中、20aは被検体20の観察ポイント、25は観察者、25a,25bはそれぞれ観察者25の左右の眼、lは表示器4から観察者25までの距離、wは観察者25の左右の眼25a,25bの間隔、αは撮影角度の差(撮影視差)である。透過画像検出工程で検出した角度の異なる第1及び第2の透過画像を制御部3から取出して表示器4でステレオ表示する。ここで、α=2tan-1(w/2l)であり、l=300mm、w=60mmの場合、α=11.4(度)となる。従って、例えば前述のように第1の角度θ1=8(度)、第2の角度θ2=20(度)とすることで、α≒θ2−θ1となりほぼ適正なステレオ表示を行うことができる。検出角度設定工程で設定された二種類の角度θ1,θ2で撮影された第1及び第2の透過画像を用いてステレオ表示できるので、短時間で正確に被検体20の内部構造や内部欠陥等の位置や状態を三次元的に観察できる。また、ハイブリッド表示工程においては、第1及び第2の透過画像にそれぞれに対応する第1及び第2の表面画像を重ねてステレオ表示する。これにより、実物の内部を透視したような状態で被検体20の三次元構造を表現することができ、被検体20の三次元情報を短時間に認識して観察時間を短縮することができる。
【0077】
ここで、カメラパラメータが前述のように11の自由度を有し、第1の角度θ1で撮影された第1の透過画像が観察者の右目で観察された画像であるとして、そのときのカメラパラメータHRを下記の式(1)で表す。また、第2の角度θ2で撮影された第2の透過画像が観察者の左目で観察された画像であるとして、そのときのカメラパラメータHLを下記の式(2)で表す。この場合、観察者が右目および左目のそれぞれで見たときのパラメータをMR、MLとすると、第1の透過画像上の点(XR,YR)は、観察者から見た場合の位置(XmR,YmR)と、以下の式(3−1)から得られる式(3−2)の関係を持ち、第2の透過画像上の点(XL,YL)は、観察者から見た場合の位置(XmL,YmL)と、以下の式(4−1)から得られる式(4−2)の関係を持つ。
【0078】
【数1】

【0079】
【数2】

【0080】
【数3】

【0081】
【数4】

【0082】
なお、傾斜テーブル7の回動角度θ(図1参照)は、適宜、選択することができる。観察を行いたい角度が予め分かっている場合には、前述のように二種類の角度θ1,θ2を設定してステレオ表示に最低限必要な二種類の透過画像や表面画像の撮影を行えばよい。また、少しずつ回動角度θを変えながら多数の透過画像の撮影を行った後、任意の角度を組合せてステレオ表示し観察を行うこともできる。二種類の角度θ1,θ2の差により深さ(厚さ)方向の倍率を変化させることができる。特にθ1,θ2の角度差を大きくすることで深さ(厚さ)方向に拡大して強調した表示を行うことができる。
【0083】
さらに、ステレオ表示を行う際に、二つの画像の内の一方を固定し、他方を角度の異なる画像に連続的に切替えて表示させた場合、動画のように視野角を変えながら表示させることができる。このとき、視野角に応じて深さ(厚さ)方向の倍率が変化するので、画面を見ながら観察を行い易い角度を選択することができ観察の作業性に優れる。
【0084】
また、ステレオ表示の二つの画像を同時に角度の異なる画像に連続的に切替えて表示させた場合は、被検体20全体を回転させながら視点を変えて観察を行うことができる。これにより、様々な角度からの観察を短時間で連続的に行うことができ、被検体20の内部構造や内部欠陥の観察が容易で実用性に優れる。
【0085】
さらに、ステレオ表示された画像において、任意の点をマウス等のポインティングデバイスで指定することにより、被検体20における当該箇所の厚さを測定して表示することができる。これは、X線撮影された透過画像に基づき、座標データ生成部323によって被検体20の三次元座標データが求められているからである。
【0086】
また、被検体20に特定の三次元形状が含まれているか否かを、CADデータ照合部328によって判断することができる。例えば、被検体20の内部に、ある特定の部品が含まれているか否かを判断したい場合、形状モデルデータベース330へその部品のCADデータを登録し、CADデータ照合部328において、形状モデル生成部325によって生成された三次元形状モデルと、形状モデルデータベース330へ登録された当該部品のCADデータとを照合すればよい。これにより、被検体20に当該部品が含まれているか否かを判断できると共に、含まれている場合は、被検体20内の当該部品の個数、位置、および向き(姿勢)についても判断することが可能となる。また、被検体20に当該部品が含まれていると判断された場合、さらに、当該部品の設計データ(CADデータ)と実際の部品との誤差を計測することもできる。これにより、例えば、内部構造が分からない装置を被検体20とし、その内部構造を解析することが可能となる。また、例えば、各種装置の完成検査において、設計データどおりに装置が組み立てられているかを容易に確認することも可能となる。
【0087】
また、被検体20を平行移動させながら撮影した複数の画像を合成することにより、図10(a)に示すように比較的大きな被検体20の全体合成画像を生成することもできる。図10(a)の例では、被検体20の全体合成画像を、横6個×縦5個の合計30個の部分画像から生成しているが、もちろん、部分画像の数はこの例にのみ限定されない。この場合、複数の画像のそれぞれが隣接する画像と重なり部分を有するように、XYステージ8が移動する。例えば、図10(a)において斜線を付して示した部分画像P22は、上側の部分画像P12、左側の部分画像P21、下側の部分画像P32、右側の部分画像P23とそれぞれ重なり部分を有する。
【0088】
そして、部分画像から全体合成画像を生成する際は、形状データ抽出部324によって抽出された形状データに基づき、例えば図10(b)に示すように、部分画像A,B中に存在する共通パターンを自動的に検出し、その共通パターンが重なるように部分画像の重ね合わせ位置を決定する。
【0089】
また、被検体20に所定の部品が複数含まれていることが分かっており、その個数を計数したい場合は、当該部品のその被検体20中での設置間隔よりも小さな幅の領域(円または矩形)を透過画像中に設定し、その領域内で最も透過率が低く、かつ当該透過率が所定の閾値よりも低い点を検出する。そして、透過画像中で、当該領域を平行移動させながら前述の条件に合致する点を探索し、そのような点の総数が、当該部品の個数として検出できる。
【0090】
次に、位置設定機構の変形例について説明する。
【0091】
図11は位置設定機構の変形例を示す要部平面図である。図11中、6aは変形例を示す位置設定機構、7aは傾斜テーブル7を互いに直交する2つの軸周りに回動自在に保持する位置設定機構6aの回動保持部、8a’は傾斜テーブル7の両側に突出して配設され回動駆動部9により傾斜テーブル7を左右方向に回動させる左右方向回動軸、8bは略コ字型に形成され左右方向回動軸8a’の両端部を回動自在に保持する回動保持部7aのアーム部、8cは左右方向回動軸8a’と直交してアーム部8bに配設された回動保持部7aの前後方向回動軸、9aは前後方向回動軸8cに連結され回動保持部7aを介して傾斜テーブル7を前後方向に回動させる位置設定機構6aの回動駆動部である。これにより、被検体20が固定される傾斜テーブル7を互いに直交する2つの軸周りに回動させることができるので、被検体20を三次元的に傾斜させることができ、透過画像の撮影角度や観察角度を任意に設定することができ、汎用性、実用性に優れる。
【0092】
以上のように本実施形態のX線ステレオ透視装置は構成されているので、以下の作用を有する。
【0093】
(1)被検体20を移動自在に保持する位置設定機構6を有するので、位置設定機構6により傾斜テーブル7を回動させるだけで、被検体20の表面とイメージセンサ10の表面とのなす角を容易に設定することができ、X線源5からX線を照射して被検体20の任意の角度における透過画像を簡便に撮影することができる。
【0094】
(2)X線源5と平面状のイメージセンサ10が被検体20を挟んで対向配置されているので、被検体20の透過画像を精度よく検出することができ、表示器4によるステレオ表示の再現性に優れる。
【0095】
(3)X線源5を用いることにより、被検体20の寸法や形状によらず確実に被検体20の内部構造の観察や内部欠陥等を検出することができ実用性、汎用性に優れる。
【0096】
(4)傾斜テーブル7に回動軸8aが配設されていることにより、被検体20全体を回動軸8aよりX線源5側で回動させることができるので、ステレオ表示した際に、被検体20全体を表示器4の画面より手前側、即ち相対的に観察者25の近傍に存在する立体として表示でき、被検体20を立体として認識し易く、内部欠陥の発生位置等を正確かつ容易に把握でき、画面上で指し示すことができる。
【0097】
(5)傾斜テーブル7にはXYステージ8を備えることにより、被検体20を傾斜テーブル7と平行な面内で前後及び左右に移動させることができ、被検体20の任意の箇所を選択して詳細に観察することができる。
【0098】
(6)イメージセンサ10が平面状に形成されていることにより、画像に歪が発生し難く、X線ステレオ透視装置1の小型化が容易で微小物を対象とした観察に好適に用いることができる。
【0099】
(7)X線源5と被検体20との間に配設され被検体20の表面から反射された反射光を反射させる反射ミラー11を有するので、X線による透過画像に加え、反射ミラー11で反射された被検体20の表面画像を光学カメラ12により撮影することができ、被検体20の表面観察を行うことができる。
【0100】
(8)被検体20までの距離がX線源5と光学的に等距離の位置に焦点を有する光学カメラ12を備えることにより、X線による透過画像とほぼ同等の画角で被検体20の表面画像を撮影することができるので、透過画像又は表面画像に拡大や縮小等の特別な画像処理等を施す必要がなく、比較が容易で画像データの取扱性に優れる。
【0101】
(9)光学カメラ12のレンズに焦点距離が一定で撮影画角が固定された単焦点レンズ12aを使用した場合、撮影時に光学系の調整が不要で取扱性に優れると共に、ズームレンズに比べレンズ収差が少なく、高画質の画像を撮影することができ非破壊検査を高い精度で効率よく行うことができ信頼性に優れる。
【0102】
(10)透過画像と表面画像を重ねて表示することにより、実物の内部を透視したような状態を表現することができ、三次元的な距離感が掴み易く、被検体20の構造や配置が分かり易く位置合わせ等を容易に行うことができる。
【0103】
(11)位置設定機構6aが、被検体20が固定される傾斜テーブル7を互いに直交する左右方向回動軸8a'及び前後方向回動軸8cの2つの軸周りに回動自在に保持する回動保持部7aを有することにより、被検体20を三次元的に傾斜させることができるので、透過画像の撮影角度や観察角度を任意に設定することができ、汎用性、実用性に優れる。
【0104】
本実施形態におけるX線ステレオ透視装置を用いたステレオ観察方法によれば、以下の作用を有する。
【0105】
(12)検出角度設定工程により、被検体20が固定された傾斜テーブル7を回動駆動部9で回動させるだけで、容易に任意の回動角度θを選択して被検体20を固定することができる。
【0106】
(13)透過画像検出工程により、検出角度設定工程で設定された少なくとも二種類の角度θ1,θ2で被検体20にX線源5からX線を照射することができ、傾斜テーブル7を挟んでX線源5に対向配置された平面状のイメージセンサ10で被検体20の少なくとも二種類の透過画像を検出することができる。
【0107】
(14)ステレオ表示工程により、透過画像検出工程で検出した透過画像の中から角度の異なる二種類の透過画像を選択して表示器4でステレオ表示することができ、短時間で正確に被検体20の内部構造や内部欠陥の状態や位置を三次元的に観察できる。
【0108】
(15)表面画像撮影工程により、X線源5と被検体20との間に配設された反射ミラー11で被検体20の表面から反射された反射光を反射させ、透過画像に対応する被検体20の表面画像を正確に光学カメラ12で撮影することができる。
【0109】
(16)表面画像撮影工程に用いる光学カメラ12の焦点から被検体20までの距離をX線源5から被検体20までの距離と光学的に等距離の位置となるように光学カメラ12を配設することにより、X線による透過画像とほぼ同等の画角で撮影された被検体20の表面画像を得ることができるので、煩雑な画像処理等を行うことなく透過画像と表面画像との重ね合わせ等の処理を行うことができ、データ処理時間の短縮化を図ることができる。
【0110】
(17)ハイブリッド表示工程により、異なる角度θ1,θ2で撮影された被検体20の二種類の透過画像にそれぞれに対応した表面画像を重ね合わせてステレオ表示することができるので、被検体20の表面形状と内部状態を同時に表示することができ、被検体20の三次元的な構造を容易に把握することができ、観察時間を短縮することができる。
【0111】
(18)観察を行いたい角度が分かっている場合には、二種類の角度θ1,θ2を設定してステレオ表示に最低限必要な二枚の透過画像のみの撮影を行うことができ、短時間でステレオ観察を行うことができる。
【0112】
(19)少しずつ傾斜テーブル7の回動角度θを変えながら多数の透過画像の撮影を行った後、任意の角度を組合せて様々な角度でステレオ観察を行うことができ汎用性、実用性に優れる。
【0113】
(20)ステレオ表示を行う際に、二つの画像の内の一方を固定し、他方を角度の異なる画像に連続的に切替えて表示させた場合、動画のように視野角を変えながらステレオ表示させることができる。視野角に応じて深さ方向の倍率が変化するので、画面を見ながら観察を行い易い角度を選択することができ観察の作業性に優れる。
【0114】
(21)ステレオ表示の二つの画像を同時に角度の異なる画像に連続的に切替えて表示させた場合は、被検体20全体を回転させながら視点を変えて観察を行うことができ、被検体の内部構造や内部欠陥の観察が容易で実用性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、X線等の被検体を透過する放射線を用いて、非破壊検査などで被検体を立体視するためのステレオ透視装置及びそれを用いたステレオ観察方法に関し、被検体の寸法や形状によらず内部構造の観察や内部欠陥等を検出することができ、被検体を回転させる簡素な構造で装置を小型化することができる汎用性、取扱い性に優れるステレオ透視装置の提供及びそれを用いた短時間で正確な画像処理を行うことができ、立体認識が容易で簡便に三次元情報を得ることができ実用性に優れるステレオ観察方法の提供を行うものであり、特に観察対象が微小な工業用途に好適に用いることができ、工場等の量産ラインにおける短時間の検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施形態におけるX線ステレオ透視装置を示す全体斜視図
【図2】本発明の実施形態におけるX線ステレオ透視装置の構成を示す要部正面模式図
【図3】本発明の実施形態におけるX線ステレオ透視装置の構成を示す要部側面模式図
【図4】本発明の実施形態におけるX線ステレオ透視装置の制御部の機能的構成を示すブロック図
【図5】(a)〜(c)は、本発明の実施形態におけるX線ステレオ透視装置のカメラパラメータの校正に用いられるキャリブレーションパターンの例を示す説明図
【図6】本発明の実施形態におけるX線ステレオ透視装置の動作手順を示すフローチャート
【図7】X線ステレオ透視装置を用いたステレオ観察方法を示す要部側面模式図
【図8】(a)〜(h)は、輪郭線の三次元情報がセグメントに分割される特徴点の例を表す説明図
【図9】ステレオ表示工程を示す模式図
【図10】(a)は複数画像を重ね合わせて生成される全体合成画像の模式図、(b)は複数画像の重複パターンを検出して重ね合わせる手法の模式図
【図11】位置設定機構の変形例を示す要部平面図
【符号の説明】
【0117】
1 X線ステレオ透視装置
2 遮蔽箱
2a 開閉扉
2b 窓
3 制御部
4 表示器
5 X線源
6,6a 位置設定機構
7 傾斜テーブル
7a 回動保持部
8 XYステージ
8a 回動軸
8a' 左右方向回動軸
8b アーム部
8c 前後方向回動軸
9,9a 回動駆動部
10 イメージセンサ
11 反射ミラー
12 光学カメラ
12a 単焦点レンズ
20 被検体
20a 観察ポイント
25 観察者
25a,25b 眼
31 動作制御部
32 画像処理制御部
321 透過画像入力部
322 表面画像入力部
323 座標データ生成部
324 形状データ抽出部
325 形状モデル生成部
326 表示データ生成部
327 CADデータ生成部
328 CADデータ照合部
329 カメラ校正部
330 形状モデルデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を透過する放射線を発生する放射線源と、
被検体を移動自在に保持する位置設定機構と、
前記被検体を挟んで前記放射線源に対向配置され前記被検体の透過画像を検出する平面状のイメージセンサと、
前記位置設定機構により少なくとも二種類の回動角度および/または位置で保持されたときに前記イメージセンサで得られる前記被検体の透過画像に基づいて、当該被検体の三次元構造を表す三次元座標データを生成する座標データ生成部とを備えたことを特徴とするステレオ透視装置。
【請求項2】
前記三次元座標データに基づいて、前記透過画像をステレオ表示する表示器をさらに備え、
前記表示器の表示画面上で前記透過画像の少なくとも一点を指定したときに、前記三次元座標データに基づいて、当該点における前記被検体の厚さを出力する、請求項1に記載のステレオ透視装置。
【請求項3】
前記三次元座標データに基づいて、前記被検体の三次元構造を表現する形状モデルデータを生成する形状モデル生成部をさらに備えた、請求項1に記載のステレオ透視装置。
【請求項4】
前記形状モデルデータに基づいて、前記被検体の三次元構造をCADシステムで利用可能なCADデータを生成するCADデータ生成部をさらに備えた、請求項3に記載のステレオ透視装置。
【請求項5】
前記形状モデルデータと、所定の対象物の三次元構造をCADシステムで利用可能なCADデータで表した対象物モデルとを照合するCADデータ照合部をさらに備えた、請求項3に記載のステレオ透視装置。
【請求項6】
前記放射線源と前記イメージセンサとによって構成される撮像系のカメラパラメータを校正するカメラ校正部をさらに備え、
前記カメラ校正部は、前記位置設定機構において前記被検体が載置される載置台に、前記放射線の透過率が部分的に異なるパターンを有するキャリブレーションパターンが載置された状態で、前記位置設定機構により少なくとも二種類の回動角度で保持されたときに前記イメージセンサで得られる前記キャリブレーションパターンの透過画像に基づいて、カメラパラメータの校正を行う、請求項1に記載のステレオ透視装置。
【請求項7】
前記放射線源と前記被検体との間に配設され前記被検体の表面から反射された反射光を反射させる反射ミラーと、前記被検体までの距離が前記放射線源と光学的に等距離の位置に焦点を有し前記反射ミラーで反射された前記被検体の表面画像を撮影する光学カメラとをさらに備え、
前記座標データ生成部が、前記透過画像と前記光学カメラで撮影された表面画像とに基づいて当該被検体の三次元構造を表す三次元座標データを生成する、請求項1に記載のステレオ透視装置。
【請求項8】
前記三次元座標データに基づいて、前記透過画像をステレオ表示する表示器をさらに備え、
前記表示器が前記透過画像と前記表面画像とを重ねて表示する、請求項7に記載のステレオ透視装置。
【請求項9】
前記被検体の部分を撮影した透過画像を複数組み合わせて、当該被検体の全体画像を合成する画像合成部をさらに備えた、請求項1に記載のステレオ透視装置。
【請求項10】
前記透過画像の透過率に基づいて、前記被検体に含まれる所定の物体の個数を計数する計数部をさらに備えた、請求項1に記載のステレオ透視装置。
【請求項11】
前記位置設定機構が、前記被検体が固定される傾斜テーブルと、前記傾斜テーブルを互いに直交する2つの軸周りに回動自在に保持する回動保持部とを有する、請求項1に記載のステレオ透視装置。
【請求項12】
被検体が移動自在に保持された位置設定機構により前記被検体を回動させ前記被検体の表面と前記イメージセンサとの表面とのなす角を設定する検出角度設定工程と、
前記検出角度設定工程で設定された少なくとも二種類の回動角度および/または位置で保持された被検体に、当該被検体を透過する放射線を放射線源から照射し、前記被検体を挟んで前記放射線源に対向配置された平面上のイメージセンサで前記被検体の少なくとも二種類の透過画像を検出する透過画像検出工程と、
前記少なくとも二種類の透過画像に基づいて、当該被検体の三次元構造を表す三次元座標データを生成する座標データ生成工程とを含むことを特徴とするステレオ観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−298480(P2008−298480A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142461(P2007−142461)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(505018740)株式会社ビームセンス (5)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504454060)株式会社アプライド・ビジョン・システムズ (11)
【Fターム(参考)】