説明

ステント

本発明は、壁部(3)が非膨張状態から膨張状態まで移行しうるウェブ構造(4)を持ったチューブ状可撓性本体(2)を備えるステント(1)に関する。ウェブ構造(4)は複数の近隣ウェブパターン(5、6)を備え、これらパターンは隣接するウェブ(それぞれ9、10および9′、10′)で構成される。ウェブパターン(5、6)は相互接続される。各ウェブ(それぞれ9、10および9′、10′)は、互いに角度(α、β)にて配置された3つの部分(それぞれ9a、9b、9cおよび10a、10b、10c)を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分によるステントに関する。
【0002】
種々異なるステント設計が従来技術から知られている。これらは、人体許容材料よりなる血管補綴具を形成する。一般にステントは、たとえば血管または人体オリフィスのような中空血管を膨張させると共にこれらを膨張状態に保つべく使用される。この目的でステントは一般に非膨張状態にて患者人体の狭い中空血管に挿入され、次いでたとえばバルーンカテーテルのような適する手段により膨張される。一般にステント本体は、隣接するウェブを有すると共に接続要素により相互接続される数個の近隣ウェブパターンを備えたウェブ構造を有する。
【0003】
多くのステント構造にて遭遇する基本的問題は、これらが膨張に際し短縮する点である。しかしながら、この種の短縮はその短縮に基づいて膨張ステントがもはや血管もしくはオリフィス内側の全領域(この領域はたとえばステントにより膨張および支持すべきである)を網羅しないことを排除しえないため望ましくない。
【0004】
したがって、本発明の課題は、ステントが非膨張状態にて可撓性であると共に膨張状態にて充分な保持力をこの状態で保つよう蓄積し、さらに膨張に際しその長さができるだけ少なく減少するような請求項1の前提部分に概説した種類のステントを提供することにある。
【0005】
前記課題は、請求項1記載の特徴部分により達成される。
【0006】
ウェブパターンの各ウェブは互いに角度を持って配置された3つの部分を備えるので、これは膨張に際し各部分の間の角度が増大して膨張の際にステントの収縮を最小化させ或いは殆ど排除さえするという効果を有する。
【0007】
この種の構造により本発明のステントは好ましくは非膨張状態に極めて可撓性であり、この種の可撓性は移植箇所まで血管の内部にたとえばカテーテルにて捲縮状態でステントを案内する際に極めて有利な作用を有する。さらに本発明による構造は膨張状態にて極めて安定な構造を与え、移植ステントが大きい力を受け入れることにより移植状態にて優秀な支持機能を果たしうる。
【0008】
従属クレームは本発明の有利な開発に関するものである。
【0009】
好ましくは各ウェブの部分は直線的にされる。
【0010】
さらに、ウェブは、中央部分と、この中央部分の各端部に隣接する2つの横方向部分とに分割される。横方向部分は好ましくは中央部分に対し鈍角を形成する。
【0011】
3つの部分は好ましくは、ボウル状(bowl−like)もしくはプレート状形状が得られるよう互いに配置される。かくして、この種の形状はステントの捲縮に際し極めて小型の形態を与える。何故なら、ウェブは互いに積層したプレートのように互いに挿入されるからである。
【0012】
ウェブパターンは好ましくは、直線ウェブとして形成された接続要素により相互接続される。
【0013】
特に好適な実施形態において、直線ウェブはそれぞれ近隣ウェブを相互接続するウェブパターンの接続セクションに直線にて突入する。
【0014】
2個の近隣ウェブパターンの間における接続要素の配向は同一である。このことは、互いに上下位置せしめた接続要素が同じ配向を有することを意味する。他方、接続要素の配向は2つの近隣ウェブパターンの間で交互し、従ってたとえば平面に解いたステントの壁部を見れば接続要素の交互配向(すなわち1回は上方向でおよび1回は下方向)が得られる。
【0015】
本発明のステントは、使用する材料に応じて自己膨脹性ステントとして或いはバルーンカテーテルにより膨張させうるステントとして設計しうると言う格別の利点を有する。両者の場合、その有利な前記特徴が維持される。自己膨張性ステントが望ましければ、好ましくはニッケル−チタン合金を材料として使用すべきである。
【0016】
以下、図面を参照して本発明の詳細、特徴および利点につき本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1は、チューブ状可撓性本体2からなるステント1の概略的に簡略化した斜視図である。
【0018】
チューブ状可撓性本体2は、図2〜図4を参照して以下詳細に説明するようなウェブ構造を持った壁部3を備える。
【0019】
図2は非膨張状態におけるウェブ構造4を示す。
【0020】
ウェブ構造4は近隣ウェブパターン5、6を備え、これらは交互に並列配置されて、図2に示したセクションによるウェブパターンが配列5、6、5、6、5、6などで配置されるようにする。図2は、ウェブパターン5および6が隣接ウェブ9および10を有することを示す。前記ウェブ9、10の設計については以下詳細に説明するが、図2はウェブ9、10がプレート状もしくはボウル状配置を有すると共に図2に示した図面によれば上方向に開口することを示す。近隣ウェブパターン6のウェブ9′、10′も同じプレート状もしくはボウル状配置を有するが図2に従い下方向に開口する。
【0021】
ウェブパターン5、6はそれぞれ、ウェブパターン5と6との間の接続要素7およびウェブパターン6と5との間の接続要素8により相互接続される。図2は複数の接続要素7がウェブパターン5と6との間に設けられると共に複数の接続要素8がウェブパターン6と5との間に設けられることを示すが、断面図のため図2には2個のみの各接続要素を示す。接続要素7は全て同じ配向を有し、図2に示した図面によれば左側底部から右側頂部まで延びる。
【0022】
接続要素8も互いに同じ配向を有するが、図2に示した図面(図2の平面にて壁部を解く)によれば左側頂部から右側底部に延びる。前記配向はそれぞれ図2に示した2つのウェブパターン5、6と6、5との間で交互する。
【0023】
図3はステント1の膨張状態を示し、この場合もステント1の本体2における壁部3が図3の平面まで解かれた図面にてウェブ構造4のセクションを参照する。図3はウェブ構造4の展延状態を示し、膨張位置におけるステントには高い固有の剛性を与えてステント1を前記膨張位置に保持すると共に、たとえばステント1を狭窄症の領域における中空血管に移植する際に受けるような半径方向の力を受けることを可能にする。
【0024】
図4は、図2の状態におけるウェブ構造4の断面を示す拡大図である。
【0025】
図4は、各ウェブ9、10がそれぞれ3つのセクション9a〜9cおよび10a〜10cを備えることを示す。セクション9a〜9cはそれぞれ直線配置を有すると共に互いに隣接して前記プレート状もしくはボウル状配置を形成する。部分9aおよび9bは鈍角αを形成する。中央部分9bと右部分9cとは鈍角βを形成する。
【0026】
図4に示した図面にてウェブ9の下に位置するウェブ9に隣接したウェブ10のセクション10a〜10cは相応に設計される。図4は、互いに交互方式で隣接するウェブ9および10がそれぞれステント1の非膨張状態にて互いに積層されたプレートのように配置されることを示す。図4は、各ウェブのセクションの前記配置が上記したようなウェブ構造と一緒に図1に示したようにステント1の壁部のチューブ状態を形成する各ウェブにも勿論適用されることを示す。
【0027】
互いにウェブ9、10は、一方の接続セクション12が図4に図示される丸み接続セクション12を介し相互接続される。
【0028】
対応する設計が隣接ウェブパターン6のウェブ9′、10′にも適用される。
【0029】
さらに図4はこの場合も接続要素7、8の配置を示す。図4に示した図面において、ウェブパターン5と近隣ウェブパターン6との間の接続要素7は常にすなわち全接続要素7において同一である配向Aを有する。配向Aは図4にて直線により示され、図4によれば左側底部から右側頂部に延びる。
【0030】
接続要素8の配向はラインBにより示され、左側頂部から右側底部に延びる。相互の全接続要素8の配向は常に同一である。従って、交互する配向A、B、A、Bなどが全ウェブ構造にわたって得られる。
【0031】
接続要素7、9はそれぞれ直線ウェブとして配置され、直線としてウェブパターン5の接続セクション11に突入すると共にウェブパターン6の接続セクション11′にも突入し、これを他の全接続要素7および8につきそれぞれ隣接接続セクション11および11′を有する接続要素7により図4にシンボリックに示す。
【0032】
3つのセクションよりなるウェブおよび前記セクション間に配置されると共に好ましくは鈍角である角度α、βの設計の結果として、図3に示した展延状態にて前記角度α、βの増加が得られ、これは膨張位置にてステントの力受容能力を特に有利に与える。非膨張位置にてステントは極めて可撓性であり、従って人体血管を通過する際に湾曲部に対し極めて良好に適合することにより移植過程を相当に容易化させる。
【0033】
図5は、図3の図面による、すなわち膨張状態における、本発明のステントの第2実施形態を示す。
【0034】
この実施形態の基本構造は先に説明した実施形態の構造に対応する。従って、この実施形態も、壁部が図5に示した膨張状態まで非膨張状態から移行しうるウェブ構造を持ったチューブ状可撓性本体を有するステントに関する。
【0035】
さらにウェブ構造は複数の近隣ウェブパターンをも備え、そのうち2個を参照符号5および6により図5に例示して示す。ウェブパターンはこの場合もそれぞれ隣接するウェブ9、10および9′、10′が設けられる。それぞれ各ウェブ9、10および9′、10′は3つのセクションに分割され、従ってこの点に関しても上記説明(特に図4)を参照することができる。
【0036】
図5による実施形態は先に説明した実施形態とはウェブパターン間に接続要素が存在しない点で相違する。図5は、この実施形態においてウェブパターンが互いに予備決定可能な移行セクション13に突入することを示し、ここでは対応ウェブ、すなわちそれぞれセクション9cおよび9′a並びに10cおよび10′aの隣接セクションが延びることにより一体的移行セクション13が各場合に形成される。
【0037】
図5に示したように、ウェブパターンの非対称的設計が移行セクション13の領域に得られ、この移行セクション13はウェブ幅B1とB2との合計よりも大きい寸法Dを有して剛性を増大させる。
【0038】
図5から明らかなように、第3番目の各隣接ウェブ対9、9′および10、10′は近隣ウェブパターン1個につき前記一体的移行セクション13を有する。しかしながら原理的には、それより多数もしくは少数の移行セクション13を設けることも可能である。
【0039】
前記実施形態の格別の利点は、同等に高い可撓性と強度とを膨張状態にて有する極めて小型な構造である。
【0040】
さらに図5は、接続要素7と同様に移行セクション13が交互の配向を有することを示す。この場合も図4に示した実施形態を参照することができる。さらに図5は、特に膨張状態にて隣接ウェブセクションによる移行セクション13のH状配置が得られることを示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明によるステントの基本構造をかなり簡略化して示す斜視図である。
【図2】
非膨張状態における本発明によるステントの壁部のウェブ構造部分を示す概略的にわずかに簡略化した図である。
【図3】
膨張状態における本発明によるステントのウェブ構造を示す図2に対応する図である。
【図4】
図2の状態におけるステントのウェブ構造部分を示す拡大図である。
【図5】
本発明によるステントの第2実施形態を示す図3に対応する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 壁部(3)が非膨張状態から膨張状態まで移行しうるウェブ構造(4)を有するチューブ状可撓性本体(2)を備え、 前記ウェブ構造(4)はそれぞれ隣接ウェブ(9、10)および(9′、10′)からなる複数の近隣ウェブパターン(5、6)を備えてなり、 各ウェブ(9、10)は互いに角度(α、β)にて配置された3つのセクション(それぞれ9a、9b、9cおよび10a、10b、10c)を備えることを特徴とするステント(1)。
【請求項2】 各部分(それぞれ9a、9b、9cおよび10a、10b、10c)が直線であることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項3】 中央部分(それぞれ9bおよび10b)が設けられ、その端部に続き鈍角(α、β)を形成する2つの他の部分(それぞれ9a、9cおよび10a、10c)を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のステント。
【請求項4】 前記部分(それぞれ9a〜9cおよび10a〜10c)がボウル状形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のステント。
【請求項5】 前記ウェブパターン(5、6)が接続要素(7、8)により好ましくは直線ウェブの形態にて相互接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のステント。
【請求項6】 前記接続要素(7、8)が、前記ウェブパターン(5、6)の隣接する接続セクション(11、11′)中へ直線にて突入することを特徴とする請求項5に記載のステント。
【請求項7】 直接隣接するウェブパターン(5、6)と(6、5)との間における全接続要素(7、8)の配向(A、B)がそれぞれ同一であることを特徴とする請求項5または6に記載のステント。
【請求項8】 前記配向(A、B)が交互することを特徴とする請求項7に記載のステント。
【請求項9】 前記ウェブパターン(5、6)が、互いに予備決定しうる移行セクション(13)に突入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のステント。
【請求項10】 前記移行セクション(13)が、隣接ウェブ(それぞれ9、10および9′、10′)の隣接セクション(9c、9′aおよび10c、10a)の延長部により形成されることを特徴とする請求項9に記載のステント。
【請求項11】 前記壁部(3)の前記ウェブ構造がニッケル−チタン合金よりなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のステント。
【請求項12】 前記壁部(3)の材料が人体許容性であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のステント。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公表番号】特表2002−524135(P2002−524135A)
【公表日】平成14年8月6日(2002.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−568422(P2000−568422)
【出願日】平成11年9月2日(1999.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP99/06456
【国際公開番号】WO00/13611
【国際公開日】平成12年3月16日(2000.3.16)
【出願人】
【氏名又は名称】ヨーメト インプランターテ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Jomed Implantate GmbH
【Fターム(参考)】