説明

ステージ装置

【課題】ステージの送り方式(微動⇔粗動)を切り換えるときの操作性を向上させたステージ装置を提供する。
【解決手段】ステージ装置1は、移動機構30が運動変換機構を用いて送り軸15の回転を受けて送り軸15上を移動する微動状態と、移動機構30の運動変換機能を解除して移動機構30が送り軸15の回転によらず送り軸15上を自由に移動する粗動状態とを切り換える切換機構50を備え、切換機構50は、外部から作用させた送り軸15に沿った方向の力を用いて微動状態と粗動状態とを切り換えるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物が載置されるステージをベース部材に対して直線移動させることが可能なステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなステージ装置として、従来、ステージに回転可能かつステージの移動方向に対して平行に支持された送り軸と、この送り軸を回転させる送りハンドルと、ベース部材に送り軸を上下から挟むように設けられた上下二つの支持ブロックと、上下の支持ブロックに送り軸に対して回転軸線が交差するように配置され送り軸と当接するベアリングとを備えるステージ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このステージ装置では、送りハンドルを操作して送り軸を回転させると、送り軸に当接されたベアリングの回転によって上下の支持ブロックが送り軸の軸方向に移動され、これによりステージが送り軸に沿って少しずつ移動(以下、この移動を微動と称する)される。しかし、ステージを送り軸に沿って大きく移動させたい場合には、送りハンドルの操作回数(送り軸の回転数)を増加させなければならず、非常に効率が悪い。
【0003】
そこで、特許文献1のステージ装置では、ステージに回転可能かつ送り軸と平行に支持された切換軸と、この切換軸を回転させる切換ハンドルと、切換軸に設けられた楕円形状のカムとを備え、切換ハンドルを操作して切換軸を回転させるとカムが回転し、このカムにより上下の支持ブロックの間隔を変化させて、送り軸とベアリングとの当接および離隔を可能に構成されている。これにより、切換ハンドルを操作して送り軸を回転させることで、送り軸とベアリングとの当接状態が解除され、ステージがフリー状態となるので、このステージを手で直接動かせばステージを送り軸に沿って大きく移動(以下、この移動を粗動と称する)させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007‐327773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のステージ装置では、一方の手でステージの送りを微動から粗動に切り換えるときには、送りハンドルから手を放して切換ハンドルに持ち替えて切換ハンドルを操作する必要があり、さらにステージの送りを粗動から微動に切り換えるときには、切換ハンドルを別方向に操作する必要があるため、ステージの送り方式(微動⇔粗動)を切り換えるときの操作が煩雑であるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みたものであり、ステージの送り方式を切り換えるときの操作性を向上させたステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明に係るステージ装置は、ベース部材と、前記ベース部材に所定方向に直線移動自在に設けられたステージと、前記ステージおよび前記ベース部材のいずれか一方に前記所定方向に延びて回転可能に設けられた送り軸と、前記ステージおよび前記ベース部材の他方に設けられ、前記送り軸の回転運動を前記送り軸に沿った方向の運動に変換する運動変換機能を有し、前記送り軸の回転を受けて前記送り軸上を前記所定方向に移動する移動機構と、前記移動機構が前記運動変換機能を用いて前記送り軸の回転を受けて前記送り軸上を前記所定方向に移動する第1移動状態と、前記運動変換機能を解除して前記移動機構が前記送り軸の回転によらず前記送り軸上を前記所定方向に自由に移動する第2移動状態とを切り換える切換機構とを備え、前記切換機構は、外部から作用させた前記所定方向の力を用いて前記第1移動状態と前記第2移動状態とを切り換えるように構成される。
【0008】
なお、上記ステージ移動機構において、前記切換機構は、前記ステージおよび前記ベース部材のいずれか一方に前記所定方向に移動可能に設けられた支持部材と、前記所定方向に延びる2枚の板状部材を重ね合わせて構成され、一端が前記ステージおよび前記ベース部材のいずれか一方に支持されるとともに他端が前記支持部材に支持され、前記支持部材を介して作用された前記所定方向の外力により前記2枚の板状部材が互いに反対方向にスライド移動して作り出した力を用いて前記第1移動状態と前記第2移動状態とを切り換える切換部材とを備えて構成されることが好ましい。
【0009】
また、上記ステージ移動機構において、前記送り軸の外部に露出した部分に設けられ、前記送り軸の回転操作を行うための送り操作部を備え、前記切換機構は、前記支持部材を前記所定方向に移動させる操作を行うための切換操作部を備え、前記切換操作部が前記送り操作部の近傍に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ステージの送り方式(微動⇔粗動)を切り換えるときの操作性を向上させたステージ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るステージ装置の斜視図である。
【図2】上記ステージ装置を構成するステージ送り機構の平面図(一部断面)である。
【図3】上記ステージ送り機構を構成する移動機構を示す図であり、(a)は図2の矢視III‐IIIにおける移動機構の断面図、(b)は移動機構を構成する左支持ブロックの斜視図である。
【図4】(a)および(b)は上記ステージ送り機構の正面図(一部省略)である。
【図5】(a)は上記ステージ送り機構を構成する切換機構の構成部材である切換部材の正面図であり、(b)は(a)における要部拡大図である。
【図6】上記切換機構における切換作動を説明する説明図である。
【図7】上記切換部材の変形例を示す模式図である。
【図8】上記切換機構の構成部材である切換レバーの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るステージ装置1は、例えば測定顕微鏡等に備え付けられるステージ装置であり、図1に示すように、顕微鏡等の本体に固定されるベース部材2と、このベース部材2の上側に配置され、対象物が載置される直方体状のステージ3と、このステージ3の前面側に設けられ、ベース部材2に対してステージ3を移動させるステージ送り機構5とを有して構成される。
【0013】
ステージ送り機構5は、図2にも示すように、ステージ3に固定された左右のブラケット10L,10Rと、左右のブラケット10L,10Rに回転自在に支持された円柱状軸材の送り軸15と、送り軸15の右ブラケット10Rを貫通した右端部に固定された送りハンドル20と、ベース部材2に固定されるとともに、送り軸15上を軸方向に移動可能に設けられた移動機構30と、ステージ3の送り方式(微動⇔粗動)を切り換える切換機構50とを有して構成される。また、ステージ送り機構5は、左右のブラケット10L,10R、送り軸15、移動機構30、および切換機構50の一部を覆ってこれらを内部に収容するハウジング12を有して構成されている。
【0014】
なお、以下の説明において、「微動」とは、送りハンドル20を操作して送り軸15を回転させることにより、移動機構30の機能を用いて送り軸15の回転に応じてステージ3を送り軸15に沿って移動させることをいう。また、「粗動」とは、移動機構30の機能を解除して移動機構30が送り軸15の回転によらず送り軸15に沿って移動するフリー状態とし、そのフリー状態において、送りハンドル20を操作することなく、手で直接的にステージ3を送り軸15に沿って移動させることをいう。
【0015】
左右のブラケット10L,10Rは、平面視において前後方向に延びる直方体状の部材であり、左右方向に所定の間隔をあけてステージ3にボルト等で固定され、前後方向の中間部に設けられた軸受(図示せず)により送り軸15を回転自在に支持するようになっている。また、左右のブラケット10L,10Rは、送り軸15よりも前方の前端側において切換機構50を支持するようになっている。
【0016】
送りハンドル20は、中央部が送り軸15の右端部に固定された略円柱状のハンドル本体21と、ハンドル本体21の右側面の外周側に回転可能に設けられた取手部22とを有して構成され、取手部22を介してハンドル本体21を回転させると、送り軸15が回転するようになっている。
【0017】
移動機構30は、図2および図3に示すように、ベース部材2にボルト等で固定されたステージ側ブラケット31と、ステージ側ブラケット31に上下揺動自在に枢結された左右一対の支持ブロック35L,35Rと、左右の支持ブロック35L,35Rに設けられた二つの微動用ベアリング33と、左右の支持ブロック35L,35Rに設けられ、微動用ベアリング33が送り軸15に当接した状態を保持させるコイルばね34とを有して構成される。
【0018】
左右の支持ブロック35L,35Rは、略直方体状の部材であり、平面視において上面の長辺が送り軸15の軸線Aと直交するように配置され、ステージ側ブラケット31に上下揺動自在に枢結されている。左右の支持ブロック35L,35Rには、左右に貫通した貫通孔36がそれぞれ形成されており、この貫通孔36に送り軸15が挿通されている。貫通孔36の内径は、送り軸15の外径よりも大きく形成されており、これにより左右の支持ブロック35L,35Rが送り軸15に対して相対移動可能になっている。
【0019】
左右の支持ブロック35L,35Rの互いに対向する内側面には、微動用ベアリング33を取り付けるための四つの円形状の取付凹部37が挿通孔36に隣接して(挿通孔36の上側に二つ)形成されており、側面視において取付凹部37の外周側の一部が挿通孔36と重なるように形成されている。なお、本実施形態では、左支持ブロック35Lにおいて挿通孔36の上側に形成された二つの取付凹部37にそれぞれ微動用ベアリング33が取り付けられている。
【0020】
微動用ベアリング33は、内輪と外輪の間に転動体を有する転がり軸受けであり、内輪が左支持ブロック35Lの取付凹部37にボルトで固定されるとともに、左支持ブロック35Lに対して回転可能な外輪の外周面が送り軸15に当接するようになっている。ここで、微動用ベアリング33の回転軸線は、送り軸15の軸線に対して僅かな角度を成して送り軸15の軸線Aと交差するように配置されており、二つの微動用ベアリング33の回転軸線が送り軸15の軸線と交差する角度は、等しくなっている。
【0021】
左支持ブロック35Lの前面下部には、前方に延びるとともにその先端側が右方に延びた平板状のばね支持部38Lが設けられており、そのばね支持部38Lの先端側の上面にコイルばね34を支持するための円形状の支持凹部39Lが形成されている。一方、右支持ブロック35Uの前面上部には、前方に延びるとともにその先端側が左方に延びた平板状のばね支持部38Rが設けられており、そのばね支持部38Rの先端側の下面にコイルばね34を支持するための円形状の支持凹部39Rが形成されている。これら支持凹部39L,39Rに設けられたコイルばね34の付勢力により、左支持ブロック35Lに取り付けられた二つの微動用ベアリング33が送り軸15に当接した状態を保持させることができるようになっている。
【0022】
また、左支持ブロック35Lの前面上部および右支持ブロック35Rの前面下部には、粗動用ベアリング40を取り付けるための取付孔41がそれぞれ形成されている。粗動用ベアリング40は、上記微動用ベアリング33と同様に、内輪と外輪の間に転動体を有する転がり軸受けであり、内輪が取付孔41に挿入されるボルトで支持ブロックに固定され、粗動用ベアリング40の回転軸線が送り軸15の軸線Aに対して直交するように配置されている。
【0023】
このような移動機構30によれば、送りハンドル20の操作により送り軸15を回転させると、送り軸15に当接された微動用ベアリング33の外輪が回転するが、二つの微動用ベアリング33の回転軸線が送り軸15の軸線と等しい角度で交差するように配置されているので、微動用ベアリング33の外輪の回転によって左右の支持ブロック35L,35Rが送り軸15の軸方向に移動され、これによりステージ3がベース部材2に対して贈り軸15に沿った方向(左右方向)に移動される。
【0024】
切換機構50は、図2および図4に示すように、左端部が左ブラケット10Lの前面に支持され、送り軸15と平行に延びる矩形板状の切換部材51と、右ブラケット10Rの前端部に送り軸15(切換部材51)の軸方向に移動自在に支持されるとともに、切換部材51の右端部を支持する支持部材52と、支持部材52の右ブラケット10Rを貫通した右端部に設けられた切換レバー53とを有して構成される。
【0025】
切換部材51は、図5にも示すように、送り軸15と平行に延びる2枚の板状の部材を前後に重ね合わせて、互いに上下方向にスライド移動可能に構成されている。以下の説明では、切換部材51を構成する2枚の板状部材のうち、前側の部材を前側切換部材51a、後側の部材を後側切換部材51bと称する。
【0026】
前側および後側切換部材51a,51bの左右端部には、前後に貫通し正面視において長円形状の支持孔55a,55bがそれぞれ形成されている。ここで、図5(b)に示すように、前側切換部材51aの左端部に形成された支持孔55aは、支持孔55aの長軸線が送り軸15の軸線Aに対して略45度の角度を成し左上方に傾斜して形成され、後側切換部材51bの左端部に形成された支持孔55bは、支持孔55bの長軸線が上記軸線Aに対して略45度の角度を成し左下方に傾斜して形成されている。さらに、これらの支持孔55a,55bは、前側および後側切換部材51a,51bが互いの上下位置を合わせて重ね合わさった状態(図5に示す状態)において、支持孔55a,55bの右側内周面が整合して前後に貫通する略円形状の貫通孔を成すように形成されている。
【0027】
また、前側切換部材51aの右端部に形成された支持孔55aは、支持孔55aの長軸線が送り軸15の軸線Aに対して略45度の角度を成し右上方に傾斜して形成され、後側切換部材51bの右端部に形成された支持孔55bは、支持孔55bの長軸線が上記軸線Aに対して略45度の角度を成し右下方に傾斜して形成されている。さらに、これらの支持孔55a,55bは、前側および後側切換部材51a,51bが互いの上下位置を合わせて重ね合わさった状態(図5に示す状態)において、支持孔55a,55bの左側内周面が整合して前後に貫通する略円形状の貫通孔を成すように形成されている。
【0028】
なお、上記において、支持孔55a,55bが正面視において長円形状に形成されていると説明したが、この長円形状とは、楕円形状、および、図5(b)に示すような2本の平行な直線の両側を円弧で繋いだ形状の両方を含む概念であり、支持孔55a,55bは正面視において楕円形状および図5(b)に示す形状のいずれであってもよい。
【0029】
前側および後側切換部材51a,51bは、図4(a)に示すように、互いの上下位置を合わせて重ね合わさった状態において整合した左右の支持孔55a,55bに挿入されたボルト56により、左端部が左ブラケット10Lの前面に取り付けられ、右端部が支持部材52の左端部に取り付けられる。このとき、前側および後側切換部材51a,51bは、ボルト56により左ブラケット10Lおよび支持部材52に締め付け(固定)されてはおらず、後述するように長円形状の支持孔55a,55bを利用して互いに上下方向にスライド移動可能になっている。
【0030】
支持部材52は、図2および図4に示すように、送り軸15の軸線A方向に延びる略直方体状の部材であり、右ブラケット10Rの前端部に設けられた軸受(図示せず)により上記軸線A方向に移動可能に支持されている。支持部材52の左端部前面には、ボルト56により切換部材51が取り付けられている。右ブラケット10Rを貫通した支持部材52の右端部の前面には、切換レバー53が上記軸線A方向に揺動可能に取り付けられている。
【0031】
切換レバー53は、上下方向に延びる略直方体状の部材であり、上下方向の中間部において支持部材52に送り軸15の軸線A方向(左右方向)に揺動可能に支持されている。ここで、切換レバー53は、図4(a)に示すように、前側および後側切換部材51a,51bが互いの上下位置を合わせて重ね合わさった状態において、切換レバー53の左側面が右ブラケット10Rの右側面と面接触するように支持部材52に支持されており、図4(b)に示すように、この状態から切換レバー53の上部を送りハンドル20側(右方)に揺動させると、切換レバー53の下端部と右ブラケット10Rの右側面との接触点(接触線)を支点として支持部材52を右ブラケット10Rに対して送りハンドル20側に移動させるようになっている。
【0032】
したがって、切換レバー53の上部を送りハンドル20側に揺動させると、支持部材52が右ブラケット10Rに対して送りハンドル20側に移動されるので、切換部材51を支持部材52に取り付けているボルト56が、前側および後側切換部材51a,51bに形成された支持孔55a,55b内を右方に移動されるとともに、切換部材51を左ブラケット10Lに取り付けているボルト56が、前側および後側切換部材51a,51bに形成された支持孔55a,55b内を左方に移動され、これにより前側切換部材51aが後側切換部材51bに対して下方にスライド移動され、後側切換部材51bが前側切換部材51aに対して上方にスライド移動され、切換部材51の上下寸法が大きくなる(図4を参照、L′>L)。
【0033】
このように切換部材51の上下寸法が大きくなると、図6に示すように、前側切換部材51aの下面が右支持ブロック35Rに取り付けられた粗動用ベアリング40の外輪に当接して右支持ブロック35Rをステージ側ブラケット31に対して下方に揺動させるとともに、後側切換部材51bの上面が左支持ブロック35Lに取り付けられた粗動用ベアリング40の外輪に当接して左支持ブロック35Lをステージ側ブラケット31に対して上方に揺動させる。これにより、送り軸15と二つの微動用ベアリング33との当接状態が解除され、移動機構30およびステージ3は、ベース部材2に対して送り軸15および切換部材51に沿った方向(軸線A方向)へと自由に移動可能なフリー状態となる。
【0034】
このように構成されたステージ装置1を、例えば測定顕微鏡に備え付けた場合おいて、ステージ3上の所定位置に測定対象物を固定し、接眼レンズを覗きながら、ステージ3すなわち測定対象物の位置決めを行う際の操作について説明する。例えば、右手で送りハンドル20を操作して送り軸15を回転させると、送り軸15に当接された微動用ベアリング33の回転によって左右の支持ブロック35L,35Rが送り軸15の軸方向に移動され、これによりステージ3が送り軸15に沿って微動する。この際、所定の位置で送りハンドル20の操作を止めれば、ステージ3がその位置で位置決めされる。
【0035】
ここで、接眼レンズを覗いたままで、ステージ3を送り軸15に沿って粗動させたい場合には、まず、送りハンドル20に置いた右手をそのまま送りハンドル20に置いた状態で、例えば、右手の親指で切換レバー53の上部を送りハンドル20側(右方)に揺動させる操作を行う。このような切換レバー53の揺動操作を行うと、支持部材52が送りハンドル20側に移動され、これにより前側および後側切換部材51a,51bが上下方向にスライド移動して切換部材51の上下寸法が大きくなる。そのため、左右の支持ブロック35L,35Rが互いに反対方向に上下揺動され、送り軸15と微動用ベアリング33,33との当接状態が解除されるため、移動機構30およびステージ3が、ベース部材2に対して送り軸15および切換部材51に沿った方向へと自由に移動可能なフリー状態となる。そして、左手でステージ3を送り軸15および切換部材51に沿って粗動させることができる。このように、送りハンドル20に置いた片手をそのまま送りハンドル20に置いた状態で、その片手により微動送り可能な状態と粗動送り可能な状態とを切り換えることができる。
【0036】
また、フリー状態のステージ3を再び微動させたい場合には、まず、送りハンドル20に置いたまま切換レバー53の揺動操作を行っている右手の親指を切換レバー53から放す。切換レバー53から右手の親指を放すと、切換レバー53の左側面と右ブラケット10Rの左側面とが面接触する元の状態に戻るように切換レバー53が揺動し、支持部材52が左ブラケット10L側(左方)に移動され、これにより前側および後側切換部材51a,51bが上下方向にスライド移動して切換部材51の上下寸法が元の大きさに戻る。そのため、互いに反対方向に上下揺動されていた左右の支持ブロック35L,35Rがコイルばね34により元の状態に戻り、送り軸15と微動用ベアリング33,33とが当接した状態となる。そして、送りハンドル20に置いたままの右手で送りハンドル20を操作して送り軸15を回転させると、前述と同様にして、ステージ3が送り軸15に沿って微動する。以上のような操作により、ステージ3すなわち測定対象物が位置決めされる。
【0037】
このように、本実施形態のステージ装置1によれば、ステージ3の送りを微動から粗動へ切り換えるときには、送りハンドル20から手を放す必要がない。また、ステージ3の送りを微動から粗動へ切り換えるときには、切換レバー53の上部を送りハンドル20側に揺動させ、切換レバー53から手を放すとステージ3の送りが粗動から微動へ切り換わる。すなわち、ステージ3の送り方式(微動⇔粗動)を切り換えるときの操作が一つの操作で済み、切り換え操作が容易である。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、切換機構の切換部材として、2枚の板状部材を重ね合わせて互いに上下方向にスライド移動可能な構成としたが、図7に示すように、送り軸方向の力が作用すると上下寸法が変化するリンク構造によって切換部材を構成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、切換レバーを送りハンドル側に揺動させてステージが粗動送り可能な状態において、切換レバーから手を放すと自動的に切換レバーが元の状態に戻りステージが微動送り可能な状態となる構成としたが、切換レバーから手を放しても切換レバーの揺動姿勢を保ち粗動送り可能な状態を保持させる保持機構を備えるようにしてもよい。この保持機構として、例えば、図8に示すように、上記実施形態における切換レバーの支持部材との枢結部より下部の寸法を短くし、切換レバーが送り軸の軸方向と平行となる揺動姿勢を保持できるようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、ステージ送り機構として、送り軸に対して回転軸線が僅かな角度を成して交差する微動用ベアリングを備える構成としたが、これに限らず、例えば、送り軸をネジ軸によって構成するとともに、このネジ軸に噛合(当接)するハーフナットを備える構成としてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、送り軸および切換機構等が設けられた左右のブラケットをステージに固定し、送り軸上を移動する移動機構をベース部材に取り付けたが、これとは逆に、左右のブラケットをベース部材に固定し、移動機構をステージに取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ステージ装置
2 ベース部材
3 ステージ
5 ステージ送り機構
15 送り軸
20 送りハンドル(送り操作部)
30 移動機構
33 微動用ベアリング(運動変換機能)
50 切換機構
51 切換部材
52 支持部材
53 切換レバー(切換操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に所定方向に直線移動自在に設けられたステージと、
前記ステージおよび前記ベース部材のいずれか一方に前記所定方向に延びて回転可能に設けられた送り軸と、
前記ステージおよび前記ベース部材の他方に設けられ、前記送り軸の回転運動を前記送り軸に沿った方向の運動に変換する運動変換機能を有し、前記送り軸の回転を受けて前記送り軸上を前記所定方向に移動する移動機構と、
前記移動機構が前記運動変換機能を用いて前記送り軸の回転を受けて前記送り軸上を前記所定方向に移動する第1移動状態と、前記運動変換機能を解除して前記移動機構が前記送り軸の回転によらず前記送り軸上を前記所定方向に自由に移動する第2移動状態とを切り換える切換機構とを備え、
前記切換機構は、外部から作用させた前記所定方向の力を用いて前記第1移動状態と前記第2移動状態とを切り換えることを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記切換機構は、前記ステージおよび前記ベース部材のいずれか一方に前記所定方向に移動可能に設けられた支持部材と、前記所定方向に延びる2枚の板状部材を重ね合わせて構成され、一端が前記ステージおよび前記ベース部材のいずれか一方に支持されるとともに他端が前記支持部材に支持され、前記支持部材を介して作用された前記所定方向の外力により前記2枚の板状部材が互いに反対方向にスライド移動して作り出した力を用いて前記第1移動状態と前記第2移動状態とを切り換える切換部材とを備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記送り軸の外部に露出した部分に設けられ、前記送り軸の回転操作を行うための送り操作部を備え、
前記切換機構は、前記支持部材を前記所定方向に移動させる操作を行うための切換操作部を備え、
前記切換操作部が、前記送り操作部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のステージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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