ステータの組み立て方法及びその組み立て装置
【課題】ステータのコイルにおける渡り線を短くして、エンドコイル部を小型化する。
【解決手段】ステータの組み立て方法は、ティース11aとコアバック部11bからなる複数の分割コア片11をコアバック部が円を描きかつティースが放射状を成すように環状に配置する方法であって、複数の分割コア片をティースが上方又は下方を向く横臥状態にして環状に配置する環状配置工程と、環状に配置された複数の分割コア片をティースが放射状を成すように起立させる起立工程とを含む。複数の分割コア片が渡り線16aを介して連続するコイル16を備える場合、環状配置工程において環状に配置された複数の分割コア片11の内側に渡り線16aを配置し、起立工程において渡り線16aを中心に複数の分割コア片11を起立させることが好ましい。組み立て装置は、分割コア片11を搭載可能な複数のコアマウント21と、それを起立させる操作機構22を備える。
【解決手段】ステータの組み立て方法は、ティース11aとコアバック部11bからなる複数の分割コア片11をコアバック部が円を描きかつティースが放射状を成すように環状に配置する方法であって、複数の分割コア片をティースが上方又は下方を向く横臥状態にして環状に配置する環状配置工程と、環状に配置された複数の分割コア片をティースが放射状を成すように起立させる起立工程とを含む。複数の分割コア片が渡り線16aを介して連続するコイル16を備える場合、環状配置工程において環状に配置された複数の分割コア片11の内側に渡り線16aを配置し、起立工程において渡り線16aを中心に複数の分割コア片11を起立させることが好ましい。組み立て装置は、分割コア片11を搭載可能な複数のコアマウント21と、それを起立させる操作機構22を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティースとコアバック部からなる複数の分割コア片を環状に配置してなるステータの組み立て方法及びその組み立て装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータは、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアを備える。そして、各ティースには線材を巻回する巻線が行われ、その巻回された線材からなるステータコイルが各スロットに納められる。このようなステータの製造方法として、ステータコアをティース毎に円周方向に分割して複数の分割コア片とし、その分割コア片におけるティースに絶縁用のボビンを装着し、その被巻線部材であるボビンに巻線をしてコイルとし、そのようなコイルがそれぞれ設けられた複数の分割コア片をその後に組み立てる方法が知られている。このように、ステータコアを複数の分割コア片に分割することにより、巻線機のノズルの移動に必要な軌道を確保してコイルを巻線できるため、コイルの整列性が良くなり、高いコイル占積率を得ることができるとされている。
【0003】
そして、近年では、U相、V相及びW相のコイル群を分割された複数の分割コア片における別々のティースに連続して巻回し、渡り線を介して連続するコイル群を有する複数の分割コア片をその後に環状に配置することが行われている。このように各分割コア片におけるコイル間を当初より渡り線により連結することにより、各分割コア片におけるコイルの結線を不要にし得るとされている。そして、各相のコイル群を形成する複数のコイルの各々から立ち上がる渡り線の位置をコイル群の相別に異ならせしめることにより、その端末に繋がった渡り線を交差させずに配置する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、渡り線が交差しないので、コイルエンドが小さくなり、回転電機の軸長を短縮できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3732076号公報(段落番号0006、図1、図7(c))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、分割コア片におけるコイルを当初より渡り線により連結することによりその後の結線は不要になるけれども、複数の分割コア片は渡り線を介して連結されることになり、それら分割コア片の組み立てにおける取り扱いが困難になる不具合があった。
【0006】
即ち、渡り線を介して連結された複数の分割コア片はその後に環状に配置されることになるけれども、その環状に配置する作業は、図14に示すように、複数の分割コア片2をそれらのティース2aが放射状を成すように比較的大きめの環状に配置し、その後それら複数の分割コア片2をそれらが描く円の中心Cに向かって移動させ、最終的に各分割コア片2の両側を隣接する分割コア片2の側面にそれぞれ接触させている。してみると、渡り線3の長さは、図14の一点鎖線で示すように、複数の分割コア片2を隣接する分割コア片2から離間させて比較的大きめの環状に配置し得るに足りる長さが必要となる。
【0007】
しかし、互いに離間している複数の分割コア片2を実線矢印で示すように中心Cに向かって移動させ、各分割コア片2の両側を隣接する分割コア片2の側面に接触させると、その渡り線3は実線で示すように弛むことになる。その弛んだ渡り線3は複数の分割コア片2を環状に配置することにより得られたステータ1の軸方向の端面であるコイルエンド4a部分に引き回されるけれども、その弛んだ余剰の渡り線3はそのコイルエンド4aからステータ1の軸方向外側に突出することになり、その渡り線3がコイルエンド4aから離間することにより回転電機の軸長を十分に短縮することができないという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0008】
また、渡り線3をコイルエンド4aに接近させて更に引き回す作業は手作業で行わなければならず、その引き回し作業中に引き回しのために用いる治具等がコイル4と接触するようなことがあれば、コイル4の表面が損傷してその信頼性が低下するおそれもある。このため、その作業には細心の注意が必要となり、その引き回し作業の効率を上げるには限界が生じていた。よって、渡り線3がコイル4と接近する以前にその渡り線3を所定の形状に成形可能であるならば、その後の引き回し作業に払う注意力が減少してその引き回し作業の効率が向上し、その信頼性を著しく高めることが期待できる。
【0009】
本発明の目的は、ステータの両端部における渡り線を短くして、その渡り線を含むエンドコイル部を十分に小型化し得るステータの組み立て方法及びその組み立て装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のステータの組み立て方法は、ティースとコアバック部からなる複数の分割コア片をコアバック部が円を描きかつティースが放射状を成すように環状に配置する方法の改良である。
【0011】
その特徴ある点は、複数の分割コア片をティースが上方又は下方を向く横臥状態にして環状に配置する環状配置工程と、環状に配置された複数の分割コア片をティースが放射状を成すように起立させる起立工程とを含むところにある。
【0012】
そして、複数の分割コア片が渡り線を介して連続するコイルを備える場合、環状配置工程において環状に配置された複数の分割コア片の内側に渡り線を配置し、起立工程において渡り線を中心に複数の分割コア片を起立させることが好ましい。
【0013】
本発明のステータの組み立て装置は、ティースとコアバック部からなる複数の分割コア片をコアバック部が円を描きかつティースが放射状を成すように環状に配置する装置である。
【0014】
その特徴ある構成は、横臥状態で環状に配置され分割コア片をティースが上方又は下方を向く横臥状態で搭載可能に構成された複数のコアマウントと、搭載された複数の分割コア片とともに複数のコアマウントを同時に起立させて複数の分割コア片のティースを放射状にする操作機構とを備えたところにある。
【0015】
そして、操作機構が、コアマウント毎に設けられ横臥状態のコアマウントを起立可能な複数の平行リンク機構を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のステータの組み立て方法及びその組み立て装置では、複数の分割コア片を横臥状態で環状に配置するので、環状に配置された複数の分割コア片の内側にあっては隣接する分割コア片との距離を縮めることができる。このため、環状に配置された複数の分割コア片の内側に渡り線を配置し、その渡り線を中心に複数の分割コア片を起立させるようにすれば、その渡り線の必要な長さを従来よりも短くすることができる。そして、渡り線の長さを従来より短くすることにより、得られたステータのコイルエンドにおいて配索される渡り線の占積率を高めて、その渡り線を含むエンドコイル部を十分に小型化することができる。また、コイルを製造するための線材の全長も減少し、そのコイルにおける銅損が減少し、得られたステータを用いる回転電機の効率を向上させるとともに、その回転電機の外形を小型化することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明実施形態のステータの組み立て状態を示す図8のA部の拡大図である。
【図2】複数の横臥状態の分割コア片が環状に配置された状態を示す上面図である。
【図3】1の相を形成する複数の分割コア片が環状に配置された状態を示す図2に対応する上面図である。
【図4】渡り線を介して連結された1の相を形成する複数の分割コア片を示す図である。
【図5】コアマウントが起立して複数の分割コア片が環状に配置してなるステータの渡り線が配置されたコイルエンドを示す平面図である。
【図6】本発明実施形態のステータの組み立て装置を示す上面図である。
【図7】その組み立て装置のコアマウントが横臥状態を成す正面構成図である。
【図8】そのコアマウントが起立状態を成す図7に対応する正面構成図である。
【図9】その昇降版が下降した状態を示す図7に対応する正面構成図である。
【図10】その起立して環状を成す複数の分割コア片が押し上げられた状態を示す図7に対応する正面構成図である。
【図11】そのステータを構成する分割コア片を示す斜視図である。
【図12】そのステータの中心軸に直交する平面における断面図である。
【図13】傾斜させたコアマウントに分割コア片を搭載させた状態を示す図1に対応する図である。
【図14】従来のステータの組み立てを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図12に、本発明により得られる分割コア式ステータ10の断面を示す。このステータ10は、ティース11a毎に円周方向に分割された複数の分割コア片11から成るステータコアと、その分割コア片11におけるティース11aに被巻線部材である絶縁用のボビン13を装着し、そのボビン13に巻線が成されたコイル16とを備える。具体的に、この分割コア片11は、円弧状を成すコアバック部11bと、このコアバック部11bの内周面から当該内周面の円弧中心に向けて突出しているティース11aとを備えた磁性材料からなり、この実施の形態における分割コア片11は、一定厚さのコアバック部11b及びティース11aを備えた略T字状のコア積層板を、所定の厚さとなるように積層して固定することにより構成された積層型のものを示す。
【0020】
図11に示すように、被巻線部材であるボビン13は絶縁性樹脂からなり、このボビン13は、ティース11aが挿入される筒状胴部13aと、この筒状胴部13aにおけるコアバック部11b側の端部に一体形成された外周側フランジ13bと、筒状胴部13aにおけるステータ10内周側の端部に一体形成された内周側フランジ13cとを備える。ボビン13の外周側フランジ13bには、分割コア片11のコアバック部11bにおけるステータ10の中心軸線方向の両側の端面を覆う一対の円弧状板部材14,14が一体的に形成され、このボビン13に線材が巻回されてコイル16(図12)が形成される。図12には、3相12スロットのステータ10を例示し、このステータ10では1つの相のコイル群における分割コア片11は90度ピッチ毎に配置され、3相のUコイル群、Vコイル群、Wコイル群は、30度毎に配置され、これら複数の分割コア片11をコアバック部11bが円を描きかつティース11aが放射状を成すように環状に配置することによりステータ10が得られる。
【0021】
本発明のステータの組み立て装置20(図6及び図7)は、複数の分割コア片11を環状に配置し得るものである。特に、図4に示すように、複数の分割コア片11におけるボビン13に線材が連続して巻回され、コイル16間に掛け渡されてそのコイル16とコイル16を電気的に接続する渡り線16aを介して連続する複数の分割コア片11からなるものを組み立てるのに適したものである。ここで、この実施の形態における線材は、表面に絶縁皮膜が形成された断面円形の丸線である場合を示す。そして、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明の組み立て装置20について説明する。
【0022】
図6及び図7に示すように、本発明のステータの組み立て装置20は、分割コア片11を搭載可能に構成された複数のコアマウント21と、そのコアマウント21を回転させて横臥状態又は起立状態とし得る操作機構22とを備える。操作機構22は、コアマウント21毎に設けられた複数の平行リンク機構23を備え、コアマウント21はこのリンク機構23を介して基台24に取付けられる。この平行リンク機構23及びコアマウント21の数は得ようとするステータ10の仕様により異なり、ティース11aの数に対応して決定される。3相12スロットのステータ10(図12)を得るこの実施の形態では、分割コア片11の数に対応して12のコアマウント21が設けられ、12のコアマウント21は12の平行リンク機構23を介して放射状に設けられる(図6)。複数の平行リンク機構23は円周方向に所定の間隔を空けて基台24に環状に設けられ、それらは同一構造であるので、その内の1つを代表してその構造を以下に説明する。
【0023】
図1に示すように、平行リンク機構23は一対の平行な横リンク部材23a,23bと一対の平行な縦リンク部材23c,23dを有し、それらを井形に組み合わせて交差した部分を枢支することにより作られる。基台24における水平な上板24aにはリンク機構23を支持する支持板26が上面視で放射状に立設され(図6及び図7)、それらの支持板26の外側に平行リンク機構23が配置され、その一対の平行横リンク部材23a,23bの内側における端縁がその支持板26に枢支される。この枢支は、その支持板26における枢支点を連結する仮想線Mが縦リンク部材23c,23dと平行になるように行われ、複数の支持板26におけるそれらの仮想線MはZ軸方向上方に向かって互いに近づくように傾斜して形成される。即ち、複数の支持板26により描かれる円の中央線Cに傾斜する仮想線Mが上方に向かって近づくように、一対の平行横リンク部材23a,23bの内側における端縁が支持板26に枢支される。そして、このように一対の平行横リンク部材23a,23bは、内側が支持板26に枢支されるので、外側に向かってその位置を下方に下げる図7に示す第1位置と、外側に向かってその位置が上方に向かい第1位置と略直交する図1及び図8〜図10に示す第2位置との間を、支持板26における枢支点を中心として回転可能に構成される。
【0024】
図6及び図7に示すように、基台24上部には、複数の支持板26を包囲するような第1リング部材27が設けられる。一方、基台24の内部には、その第1リング部材27と複数の連結棒28を介して連結された第1リング部材27と平行な第2リング部材29が設けられる。連結棒28は基台24の上板24aを貫通して上下動可能に設けられ、基台24の内部にはその第2リング部材29を昇降させる駆動源であるシリンダ31が設けられる。そのシリンダ31は上板24aに固定支柱32を介して固定された取付板33に固定され、そのロッド31aを突出させることにより第1リング部材27とともに第2リング部材29を上昇させ、そのロッド31aを没入させることにより第1リング部材27とともに第2リング部材29を下降し得るように構成される。
【0025】
図1に示すように、第1リング部材27にはリンク機構23を構成する一対の平行縦リンク部材23c,23dの内側における一方の下端が係止される。即ち、内側における平行縦リンク部材23cの下端にはローラ34が枢支され、第1リング部材27の上面には、このローラ34を収容して水平方向に移動可能であって、鉛直方向に移動不能なガイド部材36が上面から見て放射状に取付けられる(図6)。このように内側の平行縦リンク部材23cの下端を第1リング部材27に係止することにより、その第1リング部材27の昇降により平行縦リンク部材23cも昇降し、これにより一対の平行横リンク部材23a,23bが支持板26における枢支点を中心に回転可能に構成される。そして、図7に示すように、第1リング部材27が下降位置で一対の平行横リンク部材23a,23bが第1位置になり、図1、図8〜図10に示すように、第1リング部材27が上昇位置で一対の平行横リンク部材23a,23bが第2位置になるように構成される。
【0026】
一対の平行縦リンク部材23c,23dの上端には、平行横リンク部材23a,23bと平行に支持台37が枢支され、この支持台37にコアマウント21が取付けられる。この支持台37は1対の平行横リンク部材23a,23bとともに平行リンク機構23を構成するものであり、この支持台37も平行横リンク部材23a,23bとともに第1位置と第2位置の間を回転可能に構成される。コアマウント21は平行横リンク部材23a,23bが第1位置で水平面に平行な横臥状態を成すように支持台37に取付けられ、このリンク機構23を介して取付けられる複数のコアマウント21は、図6に示すように、横臥状態で円周方向に所定の間隔を空けて環状に配置され、上面視で放射状に配置される。この横臥状態におけるコアマウント21は、分割コア片11をティース11aが上方を向く横臥状態で搭載可能に構成される(図7)。
【0027】
この実施の形態におけるコアマウント21は永久磁石により作られ、横臥状態で搭載された分割コア片11におけるコアバック部11b(図5)をその上面に吸着してその分割コア片11をコアマウント21に固定可能に構成される。このコアマウント21は第1位置と第2位置の間を回転可能な支持台37に取付けられるので、このコアマウント21もその支持台37とともに回転可能となり、第1リング部材27が上昇して平行横リンク部材23a,23bが第2位置になると、コアマウント21はその外側を上昇させるように回転し、搭載された横臥状態の分割コア片11とともに起立可能に構成される。そして、この実施の形態における平行横リンク部材23a,23bは略90度回転可能であるので、コアマウント21が横臥状態から90度回転して起立すると、ティース11aが上を向いた横臥状態の分割コア片11も図1の破線矢印で示すようにそのコアマウント21ともに起立して、図5に示すように、そのティース11a部が内側を向いて放射状を成すように構成される。
【0028】
図7に示すように、この組み立て装置20には、起立した分割コア片11を起立したコアマウント21から上方にずらすことにより取り外す押し出し機構41と、その押し出し機構41により押し出された分割コア片11を保持筒38に案内して収容する筒固定機構51が設けられる。押し出し機構41は放射状に設けられた支持板26により包囲される中央に鉛直方向に延びて設けられた筒状部材42と、取付板33に取付けられその筒状部材42を昇降可能に構成された昇降機であるサーボモータ43を備える。サーボモータ43には図示しないコントローラにおける制御出力が接続され、コントローラからの指令により、サーボモータ43が駆動して筒状部材42が上昇すると、図10に示すように、その筒状部材42は起立した分割コア片11を押し上げて、その分割コア片11をコアマウント21から離脱させるように構成される。そして、その筒状部材42の中央には分割コア片11におけるコイル16から引き出される引き出し線16b(図4)を収容可能な凹部42aが形成される。
【0029】
一方、筒固定機構51は起立した分割コア片11の上方でY軸方向に移動可能に設けられた移動台52と、その移動台52に昇降可能に取付けられた昇降板53とを備える。基台24における上板24aには環状に配置されたリンク機構23をX軸方向の両側から挟むように支柱54が立設され、その支柱54の上端にY軸方向に帯びるレール56がそれぞれ設けられる。移動台52はこのレール56とレール56の間に架設され、移動台52は環状に配置された平行リンク機構23を上方から覆う覆い位置と、図6に示すようにそれら平行リンク機構23の上方から外れてその上方を開放する開放位置との間を移動可能に構成される。この移動台52にはロッド57aを鉛直にするエアシリンダ57がそのロッド57aを下側にして設けられ、そのロッド57aの下端に昇降板53が取付けられる。
【0030】
この昇降板53には移動台52を貫通する鉛直なガイド棒58が取付けられる。エアシリンダ57には図示しないコントローラにおける制御出力が接続され、コントローラからの指令により、図9及び図10に示すように、エアシリンダ57におけるロッド57aが突出すると昇降板53が下降し、図7及び図8に示すように、エアシリンダ57におけるロッド57aが没入すると昇降板53が上昇するように構成される。そして、この昇降板53に保持筒38が取り外し可能に取付けられ、移動台52には保持筒38に対向してその保持筒38を挿脱可能な開口52aが形成される。この保持筒38は、起立して環状に配置された複数の分割コア片11を環状に配置された状態で挿入可能に構成される。
【0031】
次に、本発明におけるステータの組み立て方法について説明する。
【0032】
本発明の組み立て方法は、図12に示すように、ティース11aとコアバック部11bからなる複数の分割コア片11をコアバック部11bが円を描きかつティース11aが放射状を成すように環状に配置する方法であり、図2に示すように、複数の分割コア片11を横臥状態にして環状に配置する環状配置工程と、図1に示すように、その環状に配置された複数の分割コア片11を起立させる起立工程とに分けることができる。以下に各工程を説明する。
【0033】
<環状配置工程>
この工程では、ティース11aにコイル16が巻回された複数の分割コア片11を準備し、図2に示すように、その複数の分割コア片11をティース11aが上方又は下方を向く横臥状態にして環状に配置する。この複数の分割コア片11は、渡り線16aを介して連続するコイル16を備えるものであっても良い。3相12スロットの構成のステータ10を例示するこの実施の形態では、図4に示すように4個の分割コア片11に線材が連続して巻回されたものが準備される。すると、その4つの分割コア片11はそれぞれのコイル16を電気的に接続する渡り線16aを介して連続する群となり、この4つの分割コア片11が連続する群は、U相、V相及びW相のものとして3組準備される。そしてこの工程では、渡り線16aで連結された状態の複数の分割コア片11を横臥状態にして環状に配置する。ここで、図4における符号16bは、群を成す両端におけるコイル16から引き出される引き出し線16bを示す。
【0034】
分割コア片11の配置において上記組み立て装置20を用いる場合には、移動台52を図6に示す開放位置として、図3に示すように、上面視において放射状に配置された横臥状態のコアマウント21上にそれぞれの分割コア片11を横臥状態で配置する。この横臥状態とは、ティース11aが上方又は下方を向いてティース11aの軸心が同一平面上にない状態を言うものであり、各分割コア片11におけるティース11aの軸心が同一平面上に存在しないのであれば、その軸心が鉛直方向に対して傾斜するような場合も含むものである。この実施の形態では、分割コア片11におけるコアバック部11bをコアマウント21に接触させて、そのティース11aが鉛直方向の上方を向く場合を例示する。そして、図3及び図7に示すように、円周方向に所定の間隔を空けて放射状に配置されたコアマウント21上に分割コア片11を配置することにより、複数の分割コア片11を円周方向に所定の間隔を空けて環状に配置することができる。
【0035】
この環状配置工程において、環状に配置された複数の分割コア片11の内側に渡り線16aを配置する。この実施の形態では、各相において4つの分割コア片11が渡り線16aを介して連続するので、図3に示すように、1つの相の分割コア片11は90度ピッチ毎に配置される。このとき、それらの分割コア片11を接続する渡り線16aを環状に配置された複数の分割コア片11の内側に配置し、その渡り線16aを所望の形状に成形する。複数の分割コア片11を環状に配置すると、この渡り線16aはコイル16と離間するので、この渡り線16aの成形作業を治具等を用いて行ったとしても、その治具等がコイル16と接触するようなことはない。図3では、その渡り線16aを環状に配置された分割コア片11に沿って円弧状を成すように成形した場合を示す。そして、このような分割コア片11の配置及び渡り線16aの成形を各相において行い、図2に示すように、30度毎にU、V、W相における分割コア片11をコアマウント21上に配置し、それらの渡り線16aを所望の形状に成形する。
【0036】
<起立工程>
この工程では、環状に配置された複数の分割コア片11を、それらのティース11aが放射状を成すように起立させる。分割コア片11の起立において上記組み立て装置20を用いる場合には、図8に示すように、基台24の内部に設けられたシリンダ31のロッド31aを突出させて第2リング部材29とともに第1リング部材27を上昇させ、第1位置の平行横リンク部材23a,23bを回転させて第2位置にする。これによりコアマウント21も平行横リンク部材23a,23bと同様に回転し、コアマウント21が横臥状態から90度回転して起立する。すると、ティース11aが上を向いた横臥状態の分割コア片11もそのコアマウント21ともに起立して、図5に示すように、複数の分割コア片11はコアバック部11bが円を描きかつそのティース11a部が内側を向いてその軸心が同一平面上で放射状を成すようになる。
【0037】
ここで、環状に配置された複数の分割コア片11の内側に渡り線16aを配置しているけれども、この起立工程において、渡り線16aを中心に複数の分割コア片11を起立させる。図1に示すように、上記装置20におけるコアマウント21は平行横リンク部材23a,23bとともに平行リンク機構23を構成する支持台37に取付けられているため、その回転中心はその平行横リンク部材23a,23bと支持板26の枢支点を連結する仮想線Mと、平行縦リンク部材23c,23dと支持台37の枢支点を連結する仮想線Nとの交点Pにある。環状に配置された複数のコアマウント21の中心Cから見ると、その交点Pよりも外側にコアマウント21を設けることにより、横臥状態のコアマウント21は、複数のコアマウント21が描く円の内側におけるその交点Pを回転中心として起立することになる。このため、本発明における上記装置20では、このコアマウント21に搭載された分割コア片11の内側における渡り線16aをその交点P近傍に配置することにより、その渡り線16aを中心に複数の分割コア片11を起立させることが可能になる。そして、渡り線16aを中心に複数の分割コア片11を起立させることにより、分割コア11を起立させる際にその渡り線16aが弛むようなことを防止することができる。
【0038】
また、複数の分割コア片11を起立させる際に、それら複数の分割コア片11が描く円を小さくして、起立した複数の分割コア片11の円周方向における側面をそれぞれ起立して隣接する分割コア片11にそれぞれ当接させることが好ましい。即ち、図5に示すように、分割コア片11の円周方向に延びるコアバック部11bにおける両端を、それぞれ起立して隣接する分割コア片11におけるコアバック部11bの両端にそれぞれ当接させることが好ましい。これは、後工程において起立して環状に配置された複数の分割コア片11を、それらが互いに接触した状態で固定されるからであり、その前工程となる本発明の組み立て方法において、複数の分割コア片11を互いに接触させておくことにより、その後工程を容易にすることができるからである。
【0039】
上記装置20では、複数のコアマウント21が描く円の内側における交点Pを回転中心として起立するので、起立したコアマウント21は得られるステータ10の中心軸Cに近づくことになり、コアマウント21に搭載された複数の分割コア片11が描く円を小さくすることができる。よって、上記本発明の装置20を用いれば、複数の分割コア片11が描く円を小さくして、起立した複数の分割コア片11の円周方向における側面をそれぞれ起立して隣接する分割コア片11にそれぞれ当接させることができる。
【0040】
このように、本発明のステータの組み立て方法及びその組み立て装置において、環状に配置された複数の分割コア片11の内側に渡り線16aを配置し、その渡り線16aを中心に複数の分割コア片を起立させて起立して隣接する分割コア片11にそれぞれ当接させるようにすれば、渡り線16aは弛むことなく配置時に成形された形状を維持することになる。このため、弛むことを考慮して渡り線の長さに余裕を必要とした従来に比較して渡り線16aの必要な長さを短くすることができる。そして、渡り線16aの長さを従来より短くすることにより、得られたステータ10のコイルエンドにおいて配索される渡り線16aの占積率は高められ、その渡り線16aを含むエンドコイル部を十分に小型化することができる。また、コイル16を製造するための線材の全長も減少し、そのコイル16における銅損が減少して、得られたステータ10を用いる回転電機の効率を向上させるとともに、その回転電機の外形を小型化することも可能となる。
【0041】
また、渡り線16aを中心に複数の分割コア片を起立させると、図5に示すように、渡り線16aは弛むことなく配置時に成形された形状を維持した状態で、起立した複数の分割コア片11におけるコイルエンドに沿って配索されることになる。このため、分割コア片11を起立させる以前に渡り線16aを予め所定の形状に成形しておくことにより、分割コア片11を起立させた後における渡り線16aの複雑な成形作業は不要になり、その後の引き回し作業に払う注意力はコイルエンド部において渡り線を成形する従来に比較して減少する。この結果、渡り線16aの引き回し作業の効率を従来より向上させることができ、ステータを低コスト化するとともに、コイル16に損傷を及ぼす危険性が薄れて得られたステータの信頼性を十分に高めることができる。
【0042】
更に、本発明の上記組み立て装置20では、その後、起立して環状に配置された複数の分割コア片11を保持筒38に収容し、次工程に供給することができる。この保持筒38への収容は、移動台52をY軸方向に移動して起立して環状に配置された複数の分割コア片11を上方から覆う覆い位置とし、図9に示すように、エアシリンダ57におけるロッド57aを突出させて昇降板53を下降させる。そして、サーボモータ43を駆動して筒状部材42を上昇させ、図10に示すように、起立した分割コア片11を押し上げて、その分割コア片11をコアマウント21から離脱させるとともに、その上方に設けられた保持筒38に、そのように起立して環状に配置された複数の分割コア片11を環状に配置された状態で挿入する。このように、起立して環状に配置された複数の分割コア片11はその状態で維持され、次工程に供給することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、円弧状を成すコアバック部11bと、このコアバック部11bの内周面から当該内周面の円弧中心に向けて突出しているティース11aとを備えた分割コア片11を用い、ティース11aが上方を向く横臥状態の分割コア片11をコアマウント21に搭載する場合を例示したが、図示しないが、円弧状を成すコアバック部の外周面からその外周面の外側に突出するティースを備えた分割コア片を用いることもできる。この場合には、そのティースが下方を向けて横臥状態とし、その横臥状態の分割コア片をコアマウントに搭載することになる。
【0044】
また、上述した実施の形態では、12のコアマウント21が12の平行リンク機構23を介して放射状に設けられる場合を例示したが、この平行リンク機構23及びコアマウント21の数は得ようとするステータ10の仕様により異なるので、この数に限定されるものではなく、その数はティース11aの数に対応して増減するものである。
【0045】
また、上述した実施の形態では、永久磁石により作られたコアマウント21を例示したが、コアマウント21は横臥状態の分割コア片11を搭載可能であってその分割コアを搭載状態で起立可能であれば、マグネットにより作ることを要しない。例えば、分割コア片11の周囲の全部又は一部を係止するようなフックを備え、起立する際にそのフックにより搭載された分割コア片11の搭載状態を維持させ、その分割コア片11とともに起立するようなコアマウント21であっても良い。
【0046】
更に、上述した実施の形態では、ティース11aが鉛直方向の上方を向けた横臥状態の分割コア片11をコアマウント21に搭載する場合を例示したが、横臥状態とは、ティース11aの軸心が同一平面上にない状態を言うものであり、その軸心が鉛直方向に対して傾斜するような場合も含むので、図13に示すように、コアマウント21の外側を上昇させることによりそのコアマウントを傾斜させ、ティース11aの軸心を鉛直方向に対して傾斜させた横臥状態の分割コア片11をその状態でコアマウント21に搭載するようにしても良い。この場合、分割コア片11をコアマウント21に搭載する際に、その分割コア片11におけるコイル16から引き出される引き出し線16bを筒状部材42の凹部42aに挿入しやすくなる。このため、引き出し線16aが比較的長いコイル16を有する場合に有利となる。
【符号の説明】
【0047】
10 ステータ
11 分割コア片
11a ティース
11b コアバック部
16 コイル
16a 渡り線
20 ステータの組み立て装置
21 コアマウント
22 操作機構
23 平行リンク機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティースとコアバック部からなる複数の分割コア片を環状に配置してなるステータの組み立て方法及びその組み立て装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータは、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアを備える。そして、各ティースには線材を巻回する巻線が行われ、その巻回された線材からなるステータコイルが各スロットに納められる。このようなステータの製造方法として、ステータコアをティース毎に円周方向に分割して複数の分割コア片とし、その分割コア片におけるティースに絶縁用のボビンを装着し、その被巻線部材であるボビンに巻線をしてコイルとし、そのようなコイルがそれぞれ設けられた複数の分割コア片をその後に組み立てる方法が知られている。このように、ステータコアを複数の分割コア片に分割することにより、巻線機のノズルの移動に必要な軌道を確保してコイルを巻線できるため、コイルの整列性が良くなり、高いコイル占積率を得ることができるとされている。
【0003】
そして、近年では、U相、V相及びW相のコイル群を分割された複数の分割コア片における別々のティースに連続して巻回し、渡り線を介して連続するコイル群を有する複数の分割コア片をその後に環状に配置することが行われている。このように各分割コア片におけるコイル間を当初より渡り線により連結することにより、各分割コア片におけるコイルの結線を不要にし得るとされている。そして、各相のコイル群を形成する複数のコイルの各々から立ち上がる渡り線の位置をコイル群の相別に異ならせしめることにより、その端末に繋がった渡り線を交差させずに配置する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、渡り線が交差しないので、コイルエンドが小さくなり、回転電機の軸長を短縮できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3732076号公報(段落番号0006、図1、図7(c))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、分割コア片におけるコイルを当初より渡り線により連結することによりその後の結線は不要になるけれども、複数の分割コア片は渡り線を介して連結されることになり、それら分割コア片の組み立てにおける取り扱いが困難になる不具合があった。
【0006】
即ち、渡り線を介して連結された複数の分割コア片はその後に環状に配置されることになるけれども、その環状に配置する作業は、図14に示すように、複数の分割コア片2をそれらのティース2aが放射状を成すように比較的大きめの環状に配置し、その後それら複数の分割コア片2をそれらが描く円の中心Cに向かって移動させ、最終的に各分割コア片2の両側を隣接する分割コア片2の側面にそれぞれ接触させている。してみると、渡り線3の長さは、図14の一点鎖線で示すように、複数の分割コア片2を隣接する分割コア片2から離間させて比較的大きめの環状に配置し得るに足りる長さが必要となる。
【0007】
しかし、互いに離間している複数の分割コア片2を実線矢印で示すように中心Cに向かって移動させ、各分割コア片2の両側を隣接する分割コア片2の側面に接触させると、その渡り線3は実線で示すように弛むことになる。その弛んだ渡り線3は複数の分割コア片2を環状に配置することにより得られたステータ1の軸方向の端面であるコイルエンド4a部分に引き回されるけれども、その弛んだ余剰の渡り線3はそのコイルエンド4aからステータ1の軸方向外側に突出することになり、その渡り線3がコイルエンド4aから離間することにより回転電機の軸長を十分に短縮することができないという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0008】
また、渡り線3をコイルエンド4aに接近させて更に引き回す作業は手作業で行わなければならず、その引き回し作業中に引き回しのために用いる治具等がコイル4と接触するようなことがあれば、コイル4の表面が損傷してその信頼性が低下するおそれもある。このため、その作業には細心の注意が必要となり、その引き回し作業の効率を上げるには限界が生じていた。よって、渡り線3がコイル4と接近する以前にその渡り線3を所定の形状に成形可能であるならば、その後の引き回し作業に払う注意力が減少してその引き回し作業の効率が向上し、その信頼性を著しく高めることが期待できる。
【0009】
本発明の目的は、ステータの両端部における渡り線を短くして、その渡り線を含むエンドコイル部を十分に小型化し得るステータの組み立て方法及びその組み立て装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のステータの組み立て方法は、ティースとコアバック部からなる複数の分割コア片をコアバック部が円を描きかつティースが放射状を成すように環状に配置する方法の改良である。
【0011】
その特徴ある点は、複数の分割コア片をティースが上方又は下方を向く横臥状態にして環状に配置する環状配置工程と、環状に配置された複数の分割コア片をティースが放射状を成すように起立させる起立工程とを含むところにある。
【0012】
そして、複数の分割コア片が渡り線を介して連続するコイルを備える場合、環状配置工程において環状に配置された複数の分割コア片の内側に渡り線を配置し、起立工程において渡り線を中心に複数の分割コア片を起立させることが好ましい。
【0013】
本発明のステータの組み立て装置は、ティースとコアバック部からなる複数の分割コア片をコアバック部が円を描きかつティースが放射状を成すように環状に配置する装置である。
【0014】
その特徴ある構成は、横臥状態で環状に配置され分割コア片をティースが上方又は下方を向く横臥状態で搭載可能に構成された複数のコアマウントと、搭載された複数の分割コア片とともに複数のコアマウントを同時に起立させて複数の分割コア片のティースを放射状にする操作機構とを備えたところにある。
【0015】
そして、操作機構が、コアマウント毎に設けられ横臥状態のコアマウントを起立可能な複数の平行リンク機構を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のステータの組み立て方法及びその組み立て装置では、複数の分割コア片を横臥状態で環状に配置するので、環状に配置された複数の分割コア片の内側にあっては隣接する分割コア片との距離を縮めることができる。このため、環状に配置された複数の分割コア片の内側に渡り線を配置し、その渡り線を中心に複数の分割コア片を起立させるようにすれば、その渡り線の必要な長さを従来よりも短くすることができる。そして、渡り線の長さを従来より短くすることにより、得られたステータのコイルエンドにおいて配索される渡り線の占積率を高めて、その渡り線を含むエンドコイル部を十分に小型化することができる。また、コイルを製造するための線材の全長も減少し、そのコイルにおける銅損が減少し、得られたステータを用いる回転電機の効率を向上させるとともに、その回転電機の外形を小型化することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明実施形態のステータの組み立て状態を示す図8のA部の拡大図である。
【図2】複数の横臥状態の分割コア片が環状に配置された状態を示す上面図である。
【図3】1の相を形成する複数の分割コア片が環状に配置された状態を示す図2に対応する上面図である。
【図4】渡り線を介して連結された1の相を形成する複数の分割コア片を示す図である。
【図5】コアマウントが起立して複数の分割コア片が環状に配置してなるステータの渡り線が配置されたコイルエンドを示す平面図である。
【図6】本発明実施形態のステータの組み立て装置を示す上面図である。
【図7】その組み立て装置のコアマウントが横臥状態を成す正面構成図である。
【図8】そのコアマウントが起立状態を成す図7に対応する正面構成図である。
【図9】その昇降版が下降した状態を示す図7に対応する正面構成図である。
【図10】その起立して環状を成す複数の分割コア片が押し上げられた状態を示す図7に対応する正面構成図である。
【図11】そのステータを構成する分割コア片を示す斜視図である。
【図12】そのステータの中心軸に直交する平面における断面図である。
【図13】傾斜させたコアマウントに分割コア片を搭載させた状態を示す図1に対応する図である。
【図14】従来のステータの組み立てを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図12に、本発明により得られる分割コア式ステータ10の断面を示す。このステータ10は、ティース11a毎に円周方向に分割された複数の分割コア片11から成るステータコアと、その分割コア片11におけるティース11aに被巻線部材である絶縁用のボビン13を装着し、そのボビン13に巻線が成されたコイル16とを備える。具体的に、この分割コア片11は、円弧状を成すコアバック部11bと、このコアバック部11bの内周面から当該内周面の円弧中心に向けて突出しているティース11aとを備えた磁性材料からなり、この実施の形態における分割コア片11は、一定厚さのコアバック部11b及びティース11aを備えた略T字状のコア積層板を、所定の厚さとなるように積層して固定することにより構成された積層型のものを示す。
【0020】
図11に示すように、被巻線部材であるボビン13は絶縁性樹脂からなり、このボビン13は、ティース11aが挿入される筒状胴部13aと、この筒状胴部13aにおけるコアバック部11b側の端部に一体形成された外周側フランジ13bと、筒状胴部13aにおけるステータ10内周側の端部に一体形成された内周側フランジ13cとを備える。ボビン13の外周側フランジ13bには、分割コア片11のコアバック部11bにおけるステータ10の中心軸線方向の両側の端面を覆う一対の円弧状板部材14,14が一体的に形成され、このボビン13に線材が巻回されてコイル16(図12)が形成される。図12には、3相12スロットのステータ10を例示し、このステータ10では1つの相のコイル群における分割コア片11は90度ピッチ毎に配置され、3相のUコイル群、Vコイル群、Wコイル群は、30度毎に配置され、これら複数の分割コア片11をコアバック部11bが円を描きかつティース11aが放射状を成すように環状に配置することによりステータ10が得られる。
【0021】
本発明のステータの組み立て装置20(図6及び図7)は、複数の分割コア片11を環状に配置し得るものである。特に、図4に示すように、複数の分割コア片11におけるボビン13に線材が連続して巻回され、コイル16間に掛け渡されてそのコイル16とコイル16を電気的に接続する渡り線16aを介して連続する複数の分割コア片11からなるものを組み立てるのに適したものである。ここで、この実施の形態における線材は、表面に絶縁皮膜が形成された断面円形の丸線である場合を示す。そして、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明の組み立て装置20について説明する。
【0022】
図6及び図7に示すように、本発明のステータの組み立て装置20は、分割コア片11を搭載可能に構成された複数のコアマウント21と、そのコアマウント21を回転させて横臥状態又は起立状態とし得る操作機構22とを備える。操作機構22は、コアマウント21毎に設けられた複数の平行リンク機構23を備え、コアマウント21はこのリンク機構23を介して基台24に取付けられる。この平行リンク機構23及びコアマウント21の数は得ようとするステータ10の仕様により異なり、ティース11aの数に対応して決定される。3相12スロットのステータ10(図12)を得るこの実施の形態では、分割コア片11の数に対応して12のコアマウント21が設けられ、12のコアマウント21は12の平行リンク機構23を介して放射状に設けられる(図6)。複数の平行リンク機構23は円周方向に所定の間隔を空けて基台24に環状に設けられ、それらは同一構造であるので、その内の1つを代表してその構造を以下に説明する。
【0023】
図1に示すように、平行リンク機構23は一対の平行な横リンク部材23a,23bと一対の平行な縦リンク部材23c,23dを有し、それらを井形に組み合わせて交差した部分を枢支することにより作られる。基台24における水平な上板24aにはリンク機構23を支持する支持板26が上面視で放射状に立設され(図6及び図7)、それらの支持板26の外側に平行リンク機構23が配置され、その一対の平行横リンク部材23a,23bの内側における端縁がその支持板26に枢支される。この枢支は、その支持板26における枢支点を連結する仮想線Mが縦リンク部材23c,23dと平行になるように行われ、複数の支持板26におけるそれらの仮想線MはZ軸方向上方に向かって互いに近づくように傾斜して形成される。即ち、複数の支持板26により描かれる円の中央線Cに傾斜する仮想線Mが上方に向かって近づくように、一対の平行横リンク部材23a,23bの内側における端縁が支持板26に枢支される。そして、このように一対の平行横リンク部材23a,23bは、内側が支持板26に枢支されるので、外側に向かってその位置を下方に下げる図7に示す第1位置と、外側に向かってその位置が上方に向かい第1位置と略直交する図1及び図8〜図10に示す第2位置との間を、支持板26における枢支点を中心として回転可能に構成される。
【0024】
図6及び図7に示すように、基台24上部には、複数の支持板26を包囲するような第1リング部材27が設けられる。一方、基台24の内部には、その第1リング部材27と複数の連結棒28を介して連結された第1リング部材27と平行な第2リング部材29が設けられる。連結棒28は基台24の上板24aを貫通して上下動可能に設けられ、基台24の内部にはその第2リング部材29を昇降させる駆動源であるシリンダ31が設けられる。そのシリンダ31は上板24aに固定支柱32を介して固定された取付板33に固定され、そのロッド31aを突出させることにより第1リング部材27とともに第2リング部材29を上昇させ、そのロッド31aを没入させることにより第1リング部材27とともに第2リング部材29を下降し得るように構成される。
【0025】
図1に示すように、第1リング部材27にはリンク機構23を構成する一対の平行縦リンク部材23c,23dの内側における一方の下端が係止される。即ち、内側における平行縦リンク部材23cの下端にはローラ34が枢支され、第1リング部材27の上面には、このローラ34を収容して水平方向に移動可能であって、鉛直方向に移動不能なガイド部材36が上面から見て放射状に取付けられる(図6)。このように内側の平行縦リンク部材23cの下端を第1リング部材27に係止することにより、その第1リング部材27の昇降により平行縦リンク部材23cも昇降し、これにより一対の平行横リンク部材23a,23bが支持板26における枢支点を中心に回転可能に構成される。そして、図7に示すように、第1リング部材27が下降位置で一対の平行横リンク部材23a,23bが第1位置になり、図1、図8〜図10に示すように、第1リング部材27が上昇位置で一対の平行横リンク部材23a,23bが第2位置になるように構成される。
【0026】
一対の平行縦リンク部材23c,23dの上端には、平行横リンク部材23a,23bと平行に支持台37が枢支され、この支持台37にコアマウント21が取付けられる。この支持台37は1対の平行横リンク部材23a,23bとともに平行リンク機構23を構成するものであり、この支持台37も平行横リンク部材23a,23bとともに第1位置と第2位置の間を回転可能に構成される。コアマウント21は平行横リンク部材23a,23bが第1位置で水平面に平行な横臥状態を成すように支持台37に取付けられ、このリンク機構23を介して取付けられる複数のコアマウント21は、図6に示すように、横臥状態で円周方向に所定の間隔を空けて環状に配置され、上面視で放射状に配置される。この横臥状態におけるコアマウント21は、分割コア片11をティース11aが上方を向く横臥状態で搭載可能に構成される(図7)。
【0027】
この実施の形態におけるコアマウント21は永久磁石により作られ、横臥状態で搭載された分割コア片11におけるコアバック部11b(図5)をその上面に吸着してその分割コア片11をコアマウント21に固定可能に構成される。このコアマウント21は第1位置と第2位置の間を回転可能な支持台37に取付けられるので、このコアマウント21もその支持台37とともに回転可能となり、第1リング部材27が上昇して平行横リンク部材23a,23bが第2位置になると、コアマウント21はその外側を上昇させるように回転し、搭載された横臥状態の分割コア片11とともに起立可能に構成される。そして、この実施の形態における平行横リンク部材23a,23bは略90度回転可能であるので、コアマウント21が横臥状態から90度回転して起立すると、ティース11aが上を向いた横臥状態の分割コア片11も図1の破線矢印で示すようにそのコアマウント21ともに起立して、図5に示すように、そのティース11a部が内側を向いて放射状を成すように構成される。
【0028】
図7に示すように、この組み立て装置20には、起立した分割コア片11を起立したコアマウント21から上方にずらすことにより取り外す押し出し機構41と、その押し出し機構41により押し出された分割コア片11を保持筒38に案内して収容する筒固定機構51が設けられる。押し出し機構41は放射状に設けられた支持板26により包囲される中央に鉛直方向に延びて設けられた筒状部材42と、取付板33に取付けられその筒状部材42を昇降可能に構成された昇降機であるサーボモータ43を備える。サーボモータ43には図示しないコントローラにおける制御出力が接続され、コントローラからの指令により、サーボモータ43が駆動して筒状部材42が上昇すると、図10に示すように、その筒状部材42は起立した分割コア片11を押し上げて、その分割コア片11をコアマウント21から離脱させるように構成される。そして、その筒状部材42の中央には分割コア片11におけるコイル16から引き出される引き出し線16b(図4)を収容可能な凹部42aが形成される。
【0029】
一方、筒固定機構51は起立した分割コア片11の上方でY軸方向に移動可能に設けられた移動台52と、その移動台52に昇降可能に取付けられた昇降板53とを備える。基台24における上板24aには環状に配置されたリンク機構23をX軸方向の両側から挟むように支柱54が立設され、その支柱54の上端にY軸方向に帯びるレール56がそれぞれ設けられる。移動台52はこのレール56とレール56の間に架設され、移動台52は環状に配置された平行リンク機構23を上方から覆う覆い位置と、図6に示すようにそれら平行リンク機構23の上方から外れてその上方を開放する開放位置との間を移動可能に構成される。この移動台52にはロッド57aを鉛直にするエアシリンダ57がそのロッド57aを下側にして設けられ、そのロッド57aの下端に昇降板53が取付けられる。
【0030】
この昇降板53には移動台52を貫通する鉛直なガイド棒58が取付けられる。エアシリンダ57には図示しないコントローラにおける制御出力が接続され、コントローラからの指令により、図9及び図10に示すように、エアシリンダ57におけるロッド57aが突出すると昇降板53が下降し、図7及び図8に示すように、エアシリンダ57におけるロッド57aが没入すると昇降板53が上昇するように構成される。そして、この昇降板53に保持筒38が取り外し可能に取付けられ、移動台52には保持筒38に対向してその保持筒38を挿脱可能な開口52aが形成される。この保持筒38は、起立して環状に配置された複数の分割コア片11を環状に配置された状態で挿入可能に構成される。
【0031】
次に、本発明におけるステータの組み立て方法について説明する。
【0032】
本発明の組み立て方法は、図12に示すように、ティース11aとコアバック部11bからなる複数の分割コア片11をコアバック部11bが円を描きかつティース11aが放射状を成すように環状に配置する方法であり、図2に示すように、複数の分割コア片11を横臥状態にして環状に配置する環状配置工程と、図1に示すように、その環状に配置された複数の分割コア片11を起立させる起立工程とに分けることができる。以下に各工程を説明する。
【0033】
<環状配置工程>
この工程では、ティース11aにコイル16が巻回された複数の分割コア片11を準備し、図2に示すように、その複数の分割コア片11をティース11aが上方又は下方を向く横臥状態にして環状に配置する。この複数の分割コア片11は、渡り線16aを介して連続するコイル16を備えるものであっても良い。3相12スロットの構成のステータ10を例示するこの実施の形態では、図4に示すように4個の分割コア片11に線材が連続して巻回されたものが準備される。すると、その4つの分割コア片11はそれぞれのコイル16を電気的に接続する渡り線16aを介して連続する群となり、この4つの分割コア片11が連続する群は、U相、V相及びW相のものとして3組準備される。そしてこの工程では、渡り線16aで連結された状態の複数の分割コア片11を横臥状態にして環状に配置する。ここで、図4における符号16bは、群を成す両端におけるコイル16から引き出される引き出し線16bを示す。
【0034】
分割コア片11の配置において上記組み立て装置20を用いる場合には、移動台52を図6に示す開放位置として、図3に示すように、上面視において放射状に配置された横臥状態のコアマウント21上にそれぞれの分割コア片11を横臥状態で配置する。この横臥状態とは、ティース11aが上方又は下方を向いてティース11aの軸心が同一平面上にない状態を言うものであり、各分割コア片11におけるティース11aの軸心が同一平面上に存在しないのであれば、その軸心が鉛直方向に対して傾斜するような場合も含むものである。この実施の形態では、分割コア片11におけるコアバック部11bをコアマウント21に接触させて、そのティース11aが鉛直方向の上方を向く場合を例示する。そして、図3及び図7に示すように、円周方向に所定の間隔を空けて放射状に配置されたコアマウント21上に分割コア片11を配置することにより、複数の分割コア片11を円周方向に所定の間隔を空けて環状に配置することができる。
【0035】
この環状配置工程において、環状に配置された複数の分割コア片11の内側に渡り線16aを配置する。この実施の形態では、各相において4つの分割コア片11が渡り線16aを介して連続するので、図3に示すように、1つの相の分割コア片11は90度ピッチ毎に配置される。このとき、それらの分割コア片11を接続する渡り線16aを環状に配置された複数の分割コア片11の内側に配置し、その渡り線16aを所望の形状に成形する。複数の分割コア片11を環状に配置すると、この渡り線16aはコイル16と離間するので、この渡り線16aの成形作業を治具等を用いて行ったとしても、その治具等がコイル16と接触するようなことはない。図3では、その渡り線16aを環状に配置された分割コア片11に沿って円弧状を成すように成形した場合を示す。そして、このような分割コア片11の配置及び渡り線16aの成形を各相において行い、図2に示すように、30度毎にU、V、W相における分割コア片11をコアマウント21上に配置し、それらの渡り線16aを所望の形状に成形する。
【0036】
<起立工程>
この工程では、環状に配置された複数の分割コア片11を、それらのティース11aが放射状を成すように起立させる。分割コア片11の起立において上記組み立て装置20を用いる場合には、図8に示すように、基台24の内部に設けられたシリンダ31のロッド31aを突出させて第2リング部材29とともに第1リング部材27を上昇させ、第1位置の平行横リンク部材23a,23bを回転させて第2位置にする。これによりコアマウント21も平行横リンク部材23a,23bと同様に回転し、コアマウント21が横臥状態から90度回転して起立する。すると、ティース11aが上を向いた横臥状態の分割コア片11もそのコアマウント21ともに起立して、図5に示すように、複数の分割コア片11はコアバック部11bが円を描きかつそのティース11a部が内側を向いてその軸心が同一平面上で放射状を成すようになる。
【0037】
ここで、環状に配置された複数の分割コア片11の内側に渡り線16aを配置しているけれども、この起立工程において、渡り線16aを中心に複数の分割コア片11を起立させる。図1に示すように、上記装置20におけるコアマウント21は平行横リンク部材23a,23bとともに平行リンク機構23を構成する支持台37に取付けられているため、その回転中心はその平行横リンク部材23a,23bと支持板26の枢支点を連結する仮想線Mと、平行縦リンク部材23c,23dと支持台37の枢支点を連結する仮想線Nとの交点Pにある。環状に配置された複数のコアマウント21の中心Cから見ると、その交点Pよりも外側にコアマウント21を設けることにより、横臥状態のコアマウント21は、複数のコアマウント21が描く円の内側におけるその交点Pを回転中心として起立することになる。このため、本発明における上記装置20では、このコアマウント21に搭載された分割コア片11の内側における渡り線16aをその交点P近傍に配置することにより、その渡り線16aを中心に複数の分割コア片11を起立させることが可能になる。そして、渡り線16aを中心に複数の分割コア片11を起立させることにより、分割コア11を起立させる際にその渡り線16aが弛むようなことを防止することができる。
【0038】
また、複数の分割コア片11を起立させる際に、それら複数の分割コア片11が描く円を小さくして、起立した複数の分割コア片11の円周方向における側面をそれぞれ起立して隣接する分割コア片11にそれぞれ当接させることが好ましい。即ち、図5に示すように、分割コア片11の円周方向に延びるコアバック部11bにおける両端を、それぞれ起立して隣接する分割コア片11におけるコアバック部11bの両端にそれぞれ当接させることが好ましい。これは、後工程において起立して環状に配置された複数の分割コア片11を、それらが互いに接触した状態で固定されるからであり、その前工程となる本発明の組み立て方法において、複数の分割コア片11を互いに接触させておくことにより、その後工程を容易にすることができるからである。
【0039】
上記装置20では、複数のコアマウント21が描く円の内側における交点Pを回転中心として起立するので、起立したコアマウント21は得られるステータ10の中心軸Cに近づくことになり、コアマウント21に搭載された複数の分割コア片11が描く円を小さくすることができる。よって、上記本発明の装置20を用いれば、複数の分割コア片11が描く円を小さくして、起立した複数の分割コア片11の円周方向における側面をそれぞれ起立して隣接する分割コア片11にそれぞれ当接させることができる。
【0040】
このように、本発明のステータの組み立て方法及びその組み立て装置において、環状に配置された複数の分割コア片11の内側に渡り線16aを配置し、その渡り線16aを中心に複数の分割コア片を起立させて起立して隣接する分割コア片11にそれぞれ当接させるようにすれば、渡り線16aは弛むことなく配置時に成形された形状を維持することになる。このため、弛むことを考慮して渡り線の長さに余裕を必要とした従来に比較して渡り線16aの必要な長さを短くすることができる。そして、渡り線16aの長さを従来より短くすることにより、得られたステータ10のコイルエンドにおいて配索される渡り線16aの占積率は高められ、その渡り線16aを含むエンドコイル部を十分に小型化することができる。また、コイル16を製造するための線材の全長も減少し、そのコイル16における銅損が減少して、得られたステータ10を用いる回転電機の効率を向上させるとともに、その回転電機の外形を小型化することも可能となる。
【0041】
また、渡り線16aを中心に複数の分割コア片を起立させると、図5に示すように、渡り線16aは弛むことなく配置時に成形された形状を維持した状態で、起立した複数の分割コア片11におけるコイルエンドに沿って配索されることになる。このため、分割コア片11を起立させる以前に渡り線16aを予め所定の形状に成形しておくことにより、分割コア片11を起立させた後における渡り線16aの複雑な成形作業は不要になり、その後の引き回し作業に払う注意力はコイルエンド部において渡り線を成形する従来に比較して減少する。この結果、渡り線16aの引き回し作業の効率を従来より向上させることができ、ステータを低コスト化するとともに、コイル16に損傷を及ぼす危険性が薄れて得られたステータの信頼性を十分に高めることができる。
【0042】
更に、本発明の上記組み立て装置20では、その後、起立して環状に配置された複数の分割コア片11を保持筒38に収容し、次工程に供給することができる。この保持筒38への収容は、移動台52をY軸方向に移動して起立して環状に配置された複数の分割コア片11を上方から覆う覆い位置とし、図9に示すように、エアシリンダ57におけるロッド57aを突出させて昇降板53を下降させる。そして、サーボモータ43を駆動して筒状部材42を上昇させ、図10に示すように、起立した分割コア片11を押し上げて、その分割コア片11をコアマウント21から離脱させるとともに、その上方に設けられた保持筒38に、そのように起立して環状に配置された複数の分割コア片11を環状に配置された状態で挿入する。このように、起立して環状に配置された複数の分割コア片11はその状態で維持され、次工程に供給することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、円弧状を成すコアバック部11bと、このコアバック部11bの内周面から当該内周面の円弧中心に向けて突出しているティース11aとを備えた分割コア片11を用い、ティース11aが上方を向く横臥状態の分割コア片11をコアマウント21に搭載する場合を例示したが、図示しないが、円弧状を成すコアバック部の外周面からその外周面の外側に突出するティースを備えた分割コア片を用いることもできる。この場合には、そのティースが下方を向けて横臥状態とし、その横臥状態の分割コア片をコアマウントに搭載することになる。
【0044】
また、上述した実施の形態では、12のコアマウント21が12の平行リンク機構23を介して放射状に設けられる場合を例示したが、この平行リンク機構23及びコアマウント21の数は得ようとするステータ10の仕様により異なるので、この数に限定されるものではなく、その数はティース11aの数に対応して増減するものである。
【0045】
また、上述した実施の形態では、永久磁石により作られたコアマウント21を例示したが、コアマウント21は横臥状態の分割コア片11を搭載可能であってその分割コアを搭載状態で起立可能であれば、マグネットにより作ることを要しない。例えば、分割コア片11の周囲の全部又は一部を係止するようなフックを備え、起立する際にそのフックにより搭載された分割コア片11の搭載状態を維持させ、その分割コア片11とともに起立するようなコアマウント21であっても良い。
【0046】
更に、上述した実施の形態では、ティース11aが鉛直方向の上方を向けた横臥状態の分割コア片11をコアマウント21に搭載する場合を例示したが、横臥状態とは、ティース11aの軸心が同一平面上にない状態を言うものであり、その軸心が鉛直方向に対して傾斜するような場合も含むので、図13に示すように、コアマウント21の外側を上昇させることによりそのコアマウントを傾斜させ、ティース11aの軸心を鉛直方向に対して傾斜させた横臥状態の分割コア片11をその状態でコアマウント21に搭載するようにしても良い。この場合、分割コア片11をコアマウント21に搭載する際に、その分割コア片11におけるコイル16から引き出される引き出し線16bを筒状部材42の凹部42aに挿入しやすくなる。このため、引き出し線16aが比較的長いコイル16を有する場合に有利となる。
【符号の説明】
【0047】
10 ステータ
11 分割コア片
11a ティース
11b コアバック部
16 コイル
16a 渡り線
20 ステータの組み立て装置
21 コアマウント
22 操作機構
23 平行リンク機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティース(11a)とコアバック部(11b)からなる複数の分割コア片(11)を前記コアバック部(11b)が円を描きかつ前記ティース(11a)が放射状を成すように環状に配置するステータの組み立て方法において、
前記複数の分割コア片(11)を前記ティース(11a)aが上方又は下方を向く横臥状態にして環状に配置する環状配置工程と、
環状に配置された前記複数の分割コア片(11)を前記ティース(11a)が放射状を成すように起立させる起立工程と
を含むことを特徴とするステータの組み立て方法。
【請求項2】
複数の分割コア片(11)が渡り線(16a)を介して連続するコイル(16)を備え、環状配置工程において環状に配置された前記複数の分割コア片(11)の内側に前記渡り線(16a)を配置し、起立工程において前記渡り線(16a)を中心に前記複数の分割コア片(11)を起立させる請求項1記載のステータの組み立て方法。
【請求項3】
ティース(11a)とコアバック部(11b)からなる複数の分割コア片(11)を前記コアバック部(11b)が円を描きかつ前記ティース(11a)が放射状を成すように環状に配置するステータの組み立て装置であって、
横臥状態で環状に配置され前記分割コア片(11)を前記ティース(11a)が上方又は下方を向く横臥状態で搭載可能に構成された複数のコアマウント(21)と、
搭載された前記複数の分割コア片(11)とともに前記複数のコアマウント(21)を同時に起立させて前記複数の分割コア片(11)の前記ティース(11a)を放射状にする操作機構(22)と
を備えたステータの組み立て装置。
【請求項4】
操作機構(22)が、コアマウント(21)毎に設けられ横臥状態の前記コアマウント(21)を起立可能な複数の平行リンク機構(23)を備えた請求項3記載のステータの組み立て装置。
【請求項1】
ティース(11a)とコアバック部(11b)からなる複数の分割コア片(11)を前記コアバック部(11b)が円を描きかつ前記ティース(11a)が放射状を成すように環状に配置するステータの組み立て方法において、
前記複数の分割コア片(11)を前記ティース(11a)aが上方又は下方を向く横臥状態にして環状に配置する環状配置工程と、
環状に配置された前記複数の分割コア片(11)を前記ティース(11a)が放射状を成すように起立させる起立工程と
を含むことを特徴とするステータの組み立て方法。
【請求項2】
複数の分割コア片(11)が渡り線(16a)を介して連続するコイル(16)を備え、環状配置工程において環状に配置された前記複数の分割コア片(11)の内側に前記渡り線(16a)を配置し、起立工程において前記渡り線(16a)を中心に前記複数の分割コア片(11)を起立させる請求項1記載のステータの組み立て方法。
【請求項3】
ティース(11a)とコアバック部(11b)からなる複数の分割コア片(11)を前記コアバック部(11b)が円を描きかつ前記ティース(11a)が放射状を成すように環状に配置するステータの組み立て装置であって、
横臥状態で環状に配置され前記分割コア片(11)を前記ティース(11a)が上方又は下方を向く横臥状態で搭載可能に構成された複数のコアマウント(21)と、
搭載された前記複数の分割コア片(11)とともに前記複数のコアマウント(21)を同時に起立させて前記複数の分割コア片(11)の前記ティース(11a)を放射状にする操作機構(22)と
を備えたステータの組み立て装置。
【請求項4】
操作機構(22)が、コアマウント(21)毎に設けられ横臥状態の前記コアマウント(21)を起立可能な複数の平行リンク機構(23)を備えた請求項3記載のステータの組み立て装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−142734(P2011−142734A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1647(P2010−1647)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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