説明

ステータモジュール、とりわけ多相の電動機のためのステータモジュール、およびステータモジュールの製造方法

本発明は、コイルによって巻回された複数の個々の軟磁性ステータセグメントを備える多相の機器のためのステータモジュールであって、前記ステータセグメントはヨークと接続可能であり、1つの層の複数のコイルが直列に接続されている形式のステータモジュールに関し、1つの層の複数のステータセグメントが1つのステータセグメントチェーンを形成しており、少なくとも2つのステータセグメントを含み、該ステータセグメントのコイルは、中断のない巻線によって形成されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詳細には請求項1の上位概念に記載の特徴を備えた多相の電動機のためのステータモジュールに関する。
【0002】
本発明はさらに、この種のステータモジュールの製造方法に関する。
【0003】
電動機、とりわけ回転磁界電動機は、従来技術から種々異なる形態および種々異なる使用目的で公知である。この種の回転磁界電動機は、とりわけオートマチックトランスミッションにおけるサーボモータとして使用されている。このサーボモータは、僅かな構造スペースが要求される場合にも高い電力密度を有しなければならない。したがってステータモジュールの製造に関して、所要の構造スペースという観点から非常に高い要求が課されている。このようなステータモジュールの製造に関しては種々異なる方法が考えられる。第1の手段は、周囲が巻回されたシングルコイルを備えた個々のステータセグメントの形態の極から出発する。このように巻回されたステータセグメントは、予め大量に生産して備えておくことができ、要求に応じてステータモジュールと組み合わせることができる。
【0004】
複数の個々のステータセグメントからなるステータモジュールのセグメント状の実施形態は、例えば刊行物DE102009004391A1から公知である。個々のステータセグメントから構成されたステータモジュールは、高いスロット充填率を提供することができる。なぜなら、巻回は予め製造されたユニットにおいて既に行われており、巻回工具のために要求されるスペースを考慮しなくてもよいからである。この構造の欠点は、ステータセグメント毎に2つのコンタクト箇所が生じ、ステータがこのようなセグメントを所定数有する場合、相当数の相接続部と、とりわけ多数の配線ユニットを介してコンタクトを接続しなければならないことにある。個々に巻回されたステータセグメントのコイルを配線するためのより拡張された解決方法は、配線エレメントを使用することであり、配線エレメントは、打ち抜き部材として支持構造に組み立てられるか、または、コイルの巻線ヘッドの端面に予め射出成形されて接合される。小電流の場合には、配線エレメントとしてプリント基板も使用される。特別に形成されたプラスチック製の支持体ないしコイルヘッドは、導体エレメントを配置および固定することによって配線を支持する。これらの配線ユニットは、スペースを必要とし、コストがかかる。
【0005】
さらにはコンタクトの数が多いことにより、配線ユニットと接続するための接合加工の数も相応に多くなってしまう。個々の接合接続はそれぞれ、製造時にも後々の動作においても潜在的なエラー源である。
【0006】
刊行物DE102008061421A1から、例えば回転電機のための集中配電部材が公知である。集中配電部材は、回転電機のステータに巻回される各相コイルのうち同相コイル同士を接続する各相接続用の接続バスバーと、各接続バスバーを収容して相互に絶縁させるための円環状形状の保持スロットを有する絶縁部とを有する。
【0007】
ヨークは、リングとして形成されているか、または個々のステータセグメントによるセグメント状の構造の場合には個々のステータセグメントと一緒に形成される。このようなヨーク領域に配線構造が設けられる場合、この配線構造は、非常に大きな巻回数を有するモータ、ひいては細い巻線を有するモータに制限されてしまう。しかしながら多くの使用ケースの場合には、巻回数はむしろ少なく、巻線は高い強度、ひいては大きな直径または他の寸法によって特徴付けられている。極数の多いモータでは、必要な配線のためにヨークの前の構造スペースはもはや充分ではなく、したがって個々の界磁コイルの配線はコイルヘッドの前で軸に沿って実施する必要があり、相応の構造スペースが要求される。さらにステータモジュールが配線側からケーシングへと押圧される場合には、押圧時に高まるスペース要求によってヨーク領域での配線は不可能となる。
【0008】
さらに、1つの相の複数の極が1つに巻回される方法が公知である。このために基本的に、コイルヘッドの端面において固定点が定められ、この固定点は、巻回の敷設時に転換点として使用される、および/または、コイル端部を固定する。この際、転換点の周囲の巻線の敷設は同様に大きな構造スペースを要し、導体長さおよび巻線損失を増加させる。
【0009】
択一的手段は、リング状のステータモジュールを、巻回された積層鉄心ユニットから形成することであり、この際、開かれたスロットが巻線ニードルを用いて通しで巻回され、その後引き続き巻回が中止され、巻線の接続路が配線エレメントを用いてコイルヘッドの前で軸に沿って導かれる。
【0010】
複数のステータセグメントを巻線ニードルを用いて巻回する際に、巻回工具は、予め規定されたスロット領域において充分な作業スペースを必要とする。これによってコイルは、スロットスペースを相応に充填することができなくなり、したがってこのような実施形態では、スロット充填率が低くなってしまう。極を形成する隣り合うステータセグメント同士は巻回時により大きな距離を置いて配置され、これによって周方向に相互に隣接配置されたコイル間の接続は長過ぎとなり、これによって最終的なステータモジュールにおいて配置と固定のために要するスペースが大きくなり、配線の損失が高まってしまう。
【0011】
さらに、順次連続するコイルの角度配置が少なくとも90°である、特定の極配置のためだけの公知の巻回方法を使用することができる。
【0012】
多くの公知例は、1つの相の複数のセグメントおよび個々の相の間の配線のために、軸方向にステータモジュールの前または後ろに互いに付加的な構造スペースが必要となるという点で共通している。この際、必要とされる軸方向の付加的な構造長さは、巻線直径の何倍もになることが多い。さらに、電気的接続を結合ないし形成するための相応の接続エレメントは相応に大きく、巻線抵抗、ひいては巻線損失を増加させてしまう。
【0013】
公知例のさらなる重大な欠点は、上述した付加的な構造スペースに対する要求の他に、製造コスト、ならびに、個々のコイル端部と配線エレメントとの間の接続を実現するためのコスト自体が非常に高いことである。
【0014】
したがって本発明の課題は、それぞれ極を形成する個々の巻回されたステータセグメントを有する電動機のためのステータモジュールを発展させて、所要の配線を含めた軸方向におけるステータモジュールの所要の構造長さを短くし、相巻線のための巻線抵抗を低く抑えることができるようにすることである。最小限のコストを用いた大量生産による製造を可能にするべきであり、できるだけ自動化すべきである。
【0015】
本発明の解決方法は、請求項1に記載の特徴的構成を有する。本発明の方法は、請求項10に記載の特徴的構成を有する。有利な実施形態はそれぞれ従属請求項に記載されている。
【0016】
スロットを形成しつつ周方向に互いに間隔を置いて配置されており、かつコイルによって巻回されている複数のステータセグメントを備える、多相の電動機のためのステータモジュールであって、1つの相の少なくとも2つのコイルは直列に接続されている形式のステータモジュールにおいて、1つの相の少なくとも2つのコイルは、少なくとも1つのステータセグメントチェーンを形成しており、前記ステータセグメントチェーンのコイルと、該コイルの接続部とが、互いに連続した一本の巻線によって形成されることを特徴とする。これによって、ステータセグメントチェーン内では、給電線へのコンタクトのために必要な相応の端部を始端領域および終端領域において有する、ただ1本の連続した巻線または複数の平行に巻回された巻線だけが使用される。ステータモジュールにおいて実現すべきコンタクト箇所の数は、このようなステータセグメントチェーンの数に応じて相の数にまで低減される。さらに本発明によれば、個々のステータセグメントチェーンを予め製造しておき、その後、相応のヨークまたはケーシングに対して完全なステータセグメントチェーンを配置および配向し、個々のステータセグメントによってヨークが形成されている場合にはこれを互いに相応に配向することができる。巻線が一貫しているので、そうでなければ直列に接続される1つの相の個々の複数のコイルに必要であった接合箇所、後から配線するための接続エレメント、および、このような構造に必要な構造スペースが省略される。したがって本発明のステータモジュールは、軸方向の長さが短いことを特徴としている。
【0017】
有利には、1つのステータセグメントチェーンの少なくとも2つのステータセグメントが、周方向に互いに直接隣接して配置され、この際これらのステータセグメントのコイルは互いに逆向きの巻回方向を有し、これらのコイル同士間の接続は、第1形式または第2形式の短い接続路によって表すことができる。第1形式の接続路と第2形式の接続路との違いは、1つの相巻線において先行して配置されるコイルのコイル端部の位置に依存している。先行して配置されるステータセグメントのコイルが、当該相巻線において後続して配置されるコイルとの共通のスロットで終端している場合には、特に短距離の接続を達成することができる。この第1形式の接続路は、互いに隣接配置されたコイル同士間におけるいわゆる短距離接続であり、第1形式の短距離接続は、巻線を、相巻線において先行して配置されるコイルの共通のスロットの前にあるコイル端部から、当該相巻線において後続して配置されるコイルの始端へと導くことによって実現される。これは、放射方向に延在する接続路にある巻線を、隣接する2つのコイルのコイルヘッド同士の間にある凹部のスペースに配置することによって実現される。
【0018】
当該相巻線において後続して配置されるコイルとの、第2形式の接続路としての接続は、より長距離であり、まずは先行して配置されたコイルのコイルヘッドの上に亘って延びている。なぜなら、先行して配置されたコイルの最後の巻回が、別の隣接するステータセグメントとの境界のスロットを通過した後に終端しているからである。その後、この接続路の巻線は、2つのコイルヘッドの間にある凹部においてヨーク領域またはヘッド領域へと導かれ、そこから当該相巻線において後続して配置されるコイルの始端へと導かれる。
【0019】
接続路のうち接線方向に延びる部分は、ステータモジュールのヨーク領域の手前で軸に沿って位置するか、または、極シュー領域の前で軸に沿って位置する。
【0020】
さらには選択的または付加的に、1つのステータセグメントチェーンの複数のステータセグメントの少なくとも一部分を、周方向に1つ以上のステータセグメントだけ互いに間隔を置いて配置することができ、この際、そのずれは有利には180°である。1つのステータセグメントチェーンの複数のステータセグメントの一部分が、周方向に互いにずらされて配置されている場合には、この個々の部分はステータセグメントグループを形成する。個々のステータセグメントグループはそれぞれ少なくとも1つのステータセグメント、有利には複数のステータセグメントから形成される。ステータセグメントグループ同士間の接続は、第1形式または第2形式の長距離の接続路によって表され、この長距離の接続路は、間に配置されている少なくとも1つまたは複数のステータセグメントの上に亘って伸長している。特に有利には、個々のステータセグメントグループが、周方向に互いに隣接して配置された2つのステータセグメントを有するステータセグメントペアを含み、ここでは上述したように、1つのステータセグメントペアのステータセグメント同士での巻線方向は互いに逆向きになっている。個々のステータセグメントグループはそれぞれ2つ以上のステータセグメントとして存在していてもよく、ここでも、周方向に互いに隣接するステータセグメントに対する巻線方向に関して同様のことが当てはまる。長距離の接続路を介して、ステータモジュールの周囲の異なる場所に配置および固定されている、1つの相巻線の複数のステータセグメントを結合することができる。周方向に互いに隣接するステータセグメントのコイル同士の接続によって特徴付けられたステータセグメントチェーンを形成できることによって、ステータモジュールの周方向における非常に大きい伸長領域に亘って伸長することができ、かつ、個々のステータセグメントの個々のコイル間に接合箇所を有さず、かつ、個々のステータセグメントチェーンの始端領域および終端領域にのみ相応の端部が設けられている、ステータセグメントチェーンを形成することができる。これによって第1形式または第2形式の短距離の接続路だけを使用する場合、非常にコンパクトなステータセグメントチェーンを予め製造しておき、後々簡単にステータモジュールに組み立てることが可能となる。同様にして、長距離接続または短距離と長距離の接続との組み合わせを有するステータセグメントチェーンにも同様のことが当てはまる。
【0021】
1つの有利な実施形態においては、短距離接続および長距離接続によって互いに結合されたコイルによってステータセグメントを配置および形成することを特徴とした、ステータセグメントチェーンの組み合わせを使用することができる。
【0022】
択一的な実施形態においては、短距離接続によるステータセグメントチェーンのみからステータモジュールを形成することも考えられる。
【0023】
軸方向に必要な構造スペースをできるだけ小さくするために、有利には、2つの連続するシングルコイルの間の接続路と軟磁性ステータセグメントの端面との間の軸方向における間隔は、コイルヘッドの最も外側の表面と軟磁性ステータセグメントの端面との間の最大間隔よりも、実質的に、巻線直径より短い間隔だけ上回っている。
【0024】
特に有利な実施形態においては、1つのステータセグメントチェーンの2つの連続するコイル同士間の接続路と個々のステータセグメントの端面との間の軸方向における間隔は、最大でも、個々のステータセグメントの端面とコイルヘッドの表面との最大間隔に相当する。これによって接続は、軸方向のコイルヘッドの領域内に設けられ、軸方向に付加的な構造スペースは必要なくなる。後者の形態は、軸方向にコイルヘッドの外側で接続路が伸長することを僅かに、とりわけ充分に回避することを特徴としている。
【0025】
できるだけステータモジュール平面に直接接続を敷設するために、1つのステータセグメントチェーンの2つのコイルの間の接続を表す接続路の少なくとも一部の領域が、周方向に連続して配置されたコイルヘッド同士間の凹部の中にて、少なくとも部分的に放射方向に配置される。これによって第1形式および第2形式の短距離の接続路を、コイルヘッドの外径によって表される2つの平行な平面の間の間隔内に、ないしはコイルの軸上に伸長する領域内に、敷設することができる。このような巻線の導きは、とりわけ、最後の巻回が縁部ではないところでスロットから放射状に突出して延びる場合に行われる。そうでない場合や、コイル端部が放射方向に外側または内側のスロット縁部にて終端している場合には、接線方向に延びる接続路にある巻線は、軸方向に、ステータモジュールのヨーク領域または極シュー領域の前にて導かれる。
【0026】
基本的に、接続路が、延在する巻線のコイルの外側層の巻線の伸長内で接線方向および軸方向に延びる場合には、2つの形態が区別される。第1の形態は、巻回方向に先行して配置されたコイルのコイル端部が、周方向に後続して配置されるステータセグメントおよび該ステータセグメントを取り囲むコイルとの共通のスロットから出て行くことを特徴としている。第2の形態は、巻回方向に先行して配置されたコイルのコイル端部が共通ではないスロットから出ており、巻線がコイルヘッドの上に亘って、共通のスロットの前のコイルヘッドの凹部へと延びていることによって特徴付けられている。とりわけ長距離の接続路の構造に関して、周方向に個々に配置されたステータセグメントに沿った特徴的な巻線の延びは、巻回形式と下側層に対して表面層が巻回されていないスペースとによって生じた個々のコイル自体における使用可能なスペースが、巻線を導くために使用されるようになっている。とりわけ、表面層の巻回が無いコイル領域が使用される。これによってここでも長距離接続を、個々のコイルの構造平面に敷設することができる。
【0027】
巻回を形成するステータセグメントチェーンの端部は、有利には、周方向において周囲に亘って均等に分布されて配置されており、端部ペアの数は、相の数または相の数の倍数に相当している。有利には、できるだけ1つの相の全ての巻回されたステータセグメントが、1つのセグメントチェーンに配置されているように努められる。
【0028】
長距離の接続路同士の間の交点は、異なるステータセグメントグループの2つのコイルヘッド同士間の凹部の領域に位置する。これによって交点において、軟磁性ステータセグメントのより近くに延在する巻線を、当該巻線の上に位置する巻線によって凹部へと押圧することができ、このようにして下側の巻線の延びは軸方向に変形され、上側の巻線の延びは、コイルヘッドの外側層との間隔に相当する間隔を置いて延在することができる。
【0029】
巻線として、有利には丸線が使用される。個々のコイルの巻回自体は、高い充填率を達成するために有利にはオルソサイクリック(orthocyclic)に実施される。
【0030】
本発明の方法は、実質的に、以下に記載される方法ステップによって決定される。
・個々の分離されたステータセグメントチェーンと、該ステータセグメントチェーンを収容するケーシングとを準備するステップ。
・巻回工具においてステータセグメントチェーンのステータセグメントを配置するステップ。
・巻線からステータセグメントチェーンのコイルを形成するステップ。
・全ての相のステータセグメントチェーンをリング形に配置、配向/固定するステップ。
【0031】
巻回方法に関しては、種々異なる可能性が考えられる。巻回方法は、巻回すべきステータセグメントを位置固定的に配置して例えば巻線ニードルを用いて巻線を導くか、または、ステータセグメントが巻線に対して可動であるかによって特徴付けられている。双方の巻回方法とも、ステータセグメントチェーンの巻回時にも実現可能である。しかしながら始めに挙げた方法を用いた場合には、基本的に、特にコンパクトなステータセグメントペアを形成することができる。つまり、組み立て状態において周方向に直接連続して配置されている2つのステータセグメントを形成することができる。巻回工程のために使用される巻回工具は、ステータセグメントのための少なくとも2つの異なる収容軸ないし支持軸を備える支持装置を含み、支持軸は、ステータセグメントチェーンにおいて後続するステータセグメントを巻回するために、1つの相の予め配置されたステータセグメントの支持軸に対して互いに角度付けられて傾けられており、この傾けられた状態において、周方向に互いに連続するステータセグメントのコイル同士間の短距離の接続路が形成され、巻回が実施される。この際実施形態に応じて、短距離の接続路を、直接このように位置付けられたステータセグメントの角度領域にて形成することができ、その後、組み立て状態において同一のステータセグメントの端部領域間において接続が行われるか、または、傾きを特徴づける角度を利用して接続が行われる。後者の場合には、接続路は、組み立て状態において放射方向に異なるステータセグメントの端部領域同士の間の接続を表している。
【0032】
ステータセグメントチェーンの製造が完成した後、ステータセグメントは再度互いに配向され、最終位置が互いに相対的にもたらされる。このことは支持軸を、予め配置されたステータセグメントの支持軸を有する平面へと傾けることによって実施される。この工程は、事前製造の範囲内で行うことも、組み立ての際に初めてステータセグメントの中心軸を互いにそれぞれ傾けることによって行うことも可能である。
【0033】
多極のステータセグメントセクタからなる個々のステータセグメントチェーンが、多極のステータセグメントセクタ間の第1形式の短距離接続、第2形式の短距離接続、ならびに長距離接続によって形成される場合には、個々の相の個々のステータセグメントチェーンの組み立てが順次行われる。この際、組み立てるべき第1の相のステータセグメントチェーンの配向のためには、簡単な軸方向の動きで充分である。第2の相のためには、スペース内で、放射方向および軸方向の動きによって特徴付けられる複数の動きが必要であり、その一方でさらなる相のためには、各動きの方向をさらに変更することができ、この際、長距離接続によって異なる実施方法が可能である。
【0034】
本発明の解決方法は、巻回されたステータセグメントと、各相につき少なくとも2つのステータセグメントとを有する種々異なるステータモジュールを形成するために使用することができる。このことは、多相の電動機の特定の機械種類、特定の相数または極数に制限されていない。電動機は、インナーロータまたはアウターロータの機器とすることができる。
【0035】
本発明による解決方法を、以下図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、特に有利な実施形態による本発明のステータユニットの概略斜視図である。
【図2】図2は、周方向に互いに連続する2つのコイルの間において第1形式の短距離の接続路を実現する様子を、ステータセグメントに関する図1の部分図に基づいて詳細に示した図である。
【図3】図3は、1つのステータセグメントチェーンの2つのステータセグメントグループのステータセグメント同士間において長距離の接続路を実施する様子を、図1の部分図に基づいて詳細に示した図である。
【図4】図4は、巻回のための個々のステータセグメントの配置例を示す図である。
【図5】図5は、機能位置におけるステータセグメントチェーンBのコイルの配置および配線の例を示す図である。
【図6】図6は、ステータモジュールを製造するための本発明の方法の経過を示すフローチャートである。
【0037】
図1は、回転磁界電動機に使用するための本発明によるステータモジュール1の基本構造を、斜視図に基づいて簡単かつ概略的に示している。このような機械は有利にはサーボモータとして自動化されたトランスミッションに使用されており、したがって使用可能な構造スペースに基づいて高い電力密度を特徴としている。回転磁界電動機はアウターロータまたはインナーロータによって構成することができ、図1に図示した回転磁界電動機内のステータモジュール1にはインナーロータが使用されている。
【0038】
ステータモジュール1は多数のステータセグメント2を含む。これらのステータセグメント2は極とも呼ばれ、歯およびヨーク領域3から形成されている。個々のステータセグメント2は、円周においてステータモジュールの扇形角度領域を形成しており、ヨーク領域3内で互いに接している。図示の場合においては、これらのステータセグメントは、スロットのほぼ中央に継目箇所4を形成している。個々のステータセグメント2は、ステータモジュール1の周方向にてスロットを形成しつつ互いに隣接して配置されており、軟磁性材料からなる。ケーシングへのヨーク3の固定は、有利には予め組み立て済みのステータモジュールを、ここに図示しないケーシングスリーブへと押圧することによって実施される。ここでは個々のステータセグメント2の組立および交換を可能にする多数の手段を提示することができる。電動機の多相構造に応じて個々のステータセグメント2がステータセグメントチェーンに配置されている。ここでは3相の回転磁界電動機のためのステータモジュール1として実施し、これらのステータセグメントチェーンをA〜Cによって表す。この際、それぞれ1つの相に対して1つのステータセグメントチェーンA〜Cが割り当てられている。各ステータセグメントチェーンA〜Cは、巻回されてコイル6を形成しているそれぞれ少なくとも2つのステータセグメントから形成されている。ステータセグメントチェーンA〜Cの個々のコイルはそれぞれ直列に接続されており、本発明においては連続した巻線7A〜7C、つまり接合箇所の無い巻線7A〜7Cによって形成されている。ただ1本の線の代わりに、2本以上の線を平行に巻回することもできる。図示の場合においては、ステータモジュール1は例えば12個の極を形成するステータセグメント2を含んでおり、1つのステータセグメントチェーンA〜Cにはこのようなステータセグメントがそれぞれ4つ割り当てられている。ステータセグメントチェーンAのステータセグメントはここでは2A1〜2A4で表されている。ステータセグメントチェーンBのステータセグメントは2B1〜2B4で表されており、ステータセグメントチェーンCのステータセグメントは2C1〜2C4で表されている。各ステータセグメント2A1〜2C4はそれぞれコイル6A1〜6C4によって巻回されている。相Aの個々のコイル6A1〜6A4は直列に接続されており、これらは接合箇所および中断または接続の必要性なしに連続した巻線7Aによって形成されている。ステータセグメント2B1〜2B4および2C1〜2C4に割り当てられたコイル6B1〜6B4および6C1〜6C4にも同様のことが当てはまる。コイル6B1〜6B4および6C1〜6C4はそれぞれ巻線7Bおよび7Cによって形成されている。各ステータセグメントチェーンA〜Cはそれぞれ2つのステータセグメントグループに分けられており、図1に図示した実施形態では、ステータセグメントペア8A、9Aおよび8B、9Bおよび8C、9Cの形態で表されている。1つのステータセグメントグループの個々のステータセグメント、とりわけステータセグメントチェーンA〜Cのステータセグメントペアは、2つ1組で周方向に互いに直接隣接して配置されている。ステータセグメントチェーンAの内部では、ステータセグメント2A1、2A2がステータセグメントペア8Aを形成しており、一方でステータセグメント2A3、2A4はステータセグメントペア9Aを形成している。ステータセグメントペア8Bと9Bに関しても同様のことが当てはまり、それぞれステータセグメントペア8Bはステータセグメント2B1、2B2からなり、ステータセグメントペア9Bは2B3、2B4からなる。ステータセグメントペア8Cはそれぞれステータセグメント2C1、2C2から、ステータセグメントペア9Cは2C3、2C4からなる。これらのステータセグメントには、コイル6A1〜6C1が割り当てられている。
【0039】
ステータセグメントペアの個々のステータセグメント、ここではステータセグメント8Aの2A1、2A、ステータセグメント8Bの2B1、2B2、ステータセグメント8Cの2C1、2C2は、ステータセグメント8Aのコイル6A1、6A2、ステータセグメント8Bのコイル6B1、6B2、ステータセグメント8Cのコイル6C1、6C2に関して、それぞれ巻線7A〜7Cによって形成される第1形式の短距離の接続路10A、10B、10Cによる接続を特徴としている。ステータセグメントペア9Aのコイル6A3、6A4、ステータセグメントペア9Bのコイル6B3、6B4、ステータセグメントペア9Cのコイル6C3、6C4に関しては、11A〜11Cによって第2形式の短距離の接続路が表されている。さらにステータセグメントペア同士、例えばステータセグメントチェーンAのステータセグメントペア8Aと9Aは、長距離接続によって形成される接続路12A、ここでは第2形式、を介して互いに結合されている。ステータセグメントチェーンAの個々のステータセグメントペア8Aおよび9Aは、周方向に見て互いに対向している。つまり互いに180°ずらされて配置されている。ステータセグメントペアのコイル、例えばステータセグメントペア8Aの6A1と6A2、および、ステータセグメントペア9Aの6A3と6A4は、発生する電界の相応の向きを補償するために、それぞれ逆向きの巻回方向を特徴としている。このことは、ステータセグメントペア8Bのコイル6B1、6B2、ステータセグメントペア9Bのコイル6B3、6B4、ステータセグメントペア8Cのコイル6C1、6C2、ステータセグメントペア9Cのコイル6C3、6C4にも同様に当てはまる。 長距離の接続路12A〜12Cを介して互いに結合されたステータセグメントペア8Aと9A、8Bと9B、8Cと9Cは、図1による具体的な実施形態において、これらの長距離の接続路12A〜12Cの始めと終わりに存在するコイル、この場合6A2と6A3、6B2と6B3、6C2と6C3が同一の巻線方向を有することを特徴としている。
【0040】
全てのコイル6A1〜6A4、6B1〜6B4、6C1〜6C4は、有利には高い充填率を達成するために、丸線を用いてオルソサイクリック(orthocyclic)に巻回されている。オルソサイクリック巻回方法(orthocyclic winding)は、上側のコイル層の巻回をその下に配置されているコイル層の谷部の中に収納し、巻線7A〜7Cを互いに専らコイルヘッドにて、つまりスロットの外側にて交差させることにより、使用可能なスペースを最適に利用することを特徴としている。
【0041】
ステータセグメントグループの、周方向に互いに連続する少なくとも2つのコイル、すなわちこの場合ステータセグメントペア8A、9A、8B、9Bないし8C、9Cは、短距離接続を形成する第1形式の接続路10A〜10C、ないしは第2形式の接続路11A〜11Cが、組み立てられたステータモジュール1において、軸方向に、巻線ヘッドを形成するコイルヘッドの上には突出しないように巻回されている。このことをステータセグメントペア8Aを例にして説明する。この際、第1形式の短距離の接続路10Aの領域における巻線7Aは、コイル6A1のコイルヘッドとコイル6A2のコイルヘッドとの間の凹部にある放射状の延びによって表されている。特に有利な実施形態においては、短距離接続10Aないし11Aを介して互いに結合すべきコイルの端部、この場合例えばステータセグメントペア8Aのステータセグメント2A1、2A2のコイル6A1、6A2は、ステータセグメント2A1のコイル6A1の巻回がこれらのコイルの間に形成された共通のスロット14Aの領域にて終端し、ヨーク3の領域へと直接放射状に導かれ、このヨーク3の半径において、ステータセグメントチェーンA内で直列に後続するコイル、この場合6A2、の始端へと導かれるように構成されている。
【0042】
巻回方向において先行するコイル、例えば6A3が、共通のスロット14Aで終端していない場合には、巻線7Aはまず、さらなる別の巻回が続いているかのようにもう一度このコイル6A3の巻線ヘッドの上に亘って導かれる。コイルヘッド交差の終端においては、接続11Aが、2つの隣り合うコイルヘッドとコイルヘッドの間にある凹部において放射状にヨーク領域へと導かれ、このヨークの半径において、ヨーク3の内周4の領域にある、巻回方向に後続するコイル6A4に到着する。
【0043】
したがって、2つの直列に互いに連続するコイル、この場合6A1、6A2および6A3、6A4の、短距離接続を表す第1形式の接続路10Aないし第2形式の接続路11Aは、部分的に放射状に延びている。この放射状の延びは、隣り合う2つのコイルヘッドの間の凹部を利用して、ほぼスロット14Aないし14Aの中央にある対称線上に形成される。後続のコイル6A2ないし6A4の巻回はそれぞれ、個々のステータセグメント、この場合2A2、2A4、の放射方向に外側の領域にて、つまり軸方向にヨーク3の手前の領域にて開始する。スロット14Aの実施形態とコイルの形状、とりわけ台形形状に基づき、コイル端部は通常、放射方向に中間のスロット領域に存在している。すなわちコイルの外側層は、部分的にしか充填されていないのである。ステータセグメントペア9Aのコイル6A3へと向かう第2形式の長距離接続12Aは、特に有利な方法においては、ステータモジュール1の放射方向に内側の終端領域にて、コイルの外側層が使用していないスペースにおいて行われる。このために巻線7Aは、接線に沿って別の相のコイルヘッドの傍らを通り過ぎて、コイル6A2からコイル6A3の方向へとさらに導かれる。
【0044】
したがってステータセグメントチェーンAの例での、個々のコイル間の接続の延び、とりわけ第2形式の短い距離11Aおよび第2形式の長い距離12Aの延びにおけるこのような接線に沿った接続部分は、それぞれ属するステータセグメント2A1〜2A4の形態の軟磁性の極コアの端面に対する間隔が、コイル6A1〜6A4の外側層にある巻線7Aの最大間隔に相当している。
【0045】
長距離接続を表す各第2形式の接続路、この場合、2つのステータセグメントペア8Aと9Aとの接続に対する12Aは、図1に図示したステータモジュール1の場合、放射方向に、ステータモジュール1の内周15の領域において、周方向に間に設けられた他の相のステータセグメントチェーンB、Cのステータセグメントの傍らを通過している。この際接続路12A〜12Cのために、それぞれ軸方向に使用可能なスペースが利用される。このスペースは、個々のコイル6A1〜6C4の巻回時に、表面の巻回が無いまま残っているスペースであるか、ないしは、個々の巻回に設けられた段部のスペースによってコイルヘッドに空いたまま残っているスペースである。コイルヘッドないし巻回ヘッドにおけるこの段部は、個々のステータセグメント2A1〜2C4の外周に関して外側層ないし表面層がより少ない巻回を有しており、かつ、この少ない巻回が放射方向にてステータモジュール1の外側に位置することによって形成される。個々のコイルの接線方向の幅は、ステータモジュール1の組み立て状態において、放射方向に外周に向かって見た場合、ステータモジュール1の内周15の領域よりも大きい。
【0046】
個々のステータセグメントA〜Cの第2形式の長距離接続を表す接続路12A〜12Cは、それぞれ1箇所にて交差している。ここではそれぞれ2つのステータセグメントチェーン、例えばAとB、AとC、またはBとCの長距離接続が交差している。これらの交差点はここでは16.1〜16.3によって示されており、有利には同様に、隣り合うコイルヘッドとコイルヘッドの間の凹部の領域に位置している。つまり交差は、軸方向に外側の交差している巻線が、先行するコイルの最も上の位置から出発して、同一のコイルの下の位置に沿って導かれた他の巻線の上に亘って導かれるようにして達成される。
【0047】
個々のステータセグメントチェーンA〜Cの巻線7A〜7Cの各端部はそれぞれ7A1、7A2、7B1、7B2、7C1、7C2によって表されており、機能位置において軸方向にあるステータセグメント2A1〜2C4の装置平面から、軸方向に突出している。巻線の端部の配向は有利には表面層の領域にて行われ、この際終端領域は以下のようにして導かれて固定される。すなわち、これらの終端領域が放射方向にヨーク3の領域で支持されつつ導かれ、そして放射方向に中心方向へと配向され、そしてステータセグメント2A1〜2C4の延在する領域にて、この領域から、有利には中間の領域から、軸方向に突出しているようにして、終端領域が導かれる。
【0048】
1つの相の巻線を1つの部材からなる相巻線として、つまり中断のない相巻線として構成するための個々の特徴を、図2〜3にて簡単な概略図にて再現する。
【0049】
図2は、コイル6A1と6A2の間での、短距離接続を表す第1形式の接続路10Aの放射状の延びを詳細に図示している。個々のステータセグメント2A1および2A2に対してコイル6A1および6A2が形成されている様子が認識でき、巻線7Aの終端領域7A1は、ステータセグメントチェーンCの巻線7Cの終端領域7C2と共に、軸方向にステータセグメント平面から突出している。この際、ステータモジュール1の平面から90°の方向に突出しており、したがって実質的にステータモジュール1の中心軸Mに対して平行になっている。さらにステータセグメント2Aに関して、巻線7Aによって実現されるステータセグメントチェーンAの個々のコイル6A1〜6A4の直列接続の始端領域を形成している終端領域7A1の配向が見て取れ、この形成されたコイル6A1において、コイル6A1の表面層17対して接線方向に、巻線領域から出て中間スペースへと、ここではスロット18へと向かい、ステータセグメントペア9Cのステータセグメントに至っている。終端領域7A1はヨーク3の領域にて固定されている、ないしは、ステータセグメント2A1のコイル本体の、対応する側面領域19によって固定されており、この側面領域19はここでは突出部によって形成されている。
【0050】
個々のコイル6A1および6A2はオルソサイクリック(orthocyclic)に巻回されており、表面層はそれぞれ、巻線の断面によって生じる中間スペースへ収納されている。個々のステータセグメント2A1の周囲の巻回は、放射方向に対して角度付けられて実施される。巻線7Aは、組み立て状態で見て放射方向に外側の領域からステータモジュールの放射方向に内側の内周15へと導かれ、そしてこの内周から再び戻る。周方向にこのコイル6A1に対して直列に接続されたコイル6A2への移行は、放射方向に、ヨーク3の内周4とステータモジュールの内周15との間で実施される。それから巻線7Aは接続10Aを介して、自身の端部がスロット14Aまで延びているコイル6A1から、スロット14Aの領域にて放射方向に外側に、ないしはスロット14Aの中心線に対して平行に、ステータセグメント2A2の放射方向に外側にあるヨーク領域へと導かれる。この導きは、個々のコイル6A1のコイルヘッドとコイル6A2のコイルヘッドとの間にある、巻線によって形成された凹部の内部で行われる。
【0051】
第2形式の短距離接続に対する実施形態に関して、図1のコイル6A3とコイル6A4との間の接続に対する実施形態が示される。
【0052】
第2形式に応じて巻線7Aを接線に沿って導く様子を、ここではコイル6A2のコイル端部に関して再び示している。コイル6A2は、周方向に隣に配置されたスロットに到着する前に終端する。すなわちステータセグメント2A2と、該ステータセグメント2A2に周方向に隣接して配置されたステータセグメントチェーンBのステータセグメント2B3との間に形成されたスロットに到着する前に終端する。この巻線7A1の導きは、ここに図示されていないステータセグメントペア9Aと結合するための、第2形式の長距離の接続路12Aの形成に含まれる。
【0053】
図3は、図1の詳細図に基づいて、長距離接続12Bが、階段状に形成されたコイルヘッドの手前で接線に沿って延びる様子を例として図示している。ここでは例として巻線7Bが、ステータセグメントグループ8Bのステータセグメント2B2から、ステータセグメントグループ9Bのステータセグメント2B3へと導かれる。ここでは巻線7Bが、周方向にこれらの間に配置されたステータセグメントに沿って導かれており、相Cおよび相Aのステータセグメント2C3、2C4、2A1、2A2の図示した部分において、表面層17とその下に位置する層20との間に形成された段部に基づいて個々のコイル6C3、6C4、6A1、6A2に設けられたフリースペース21を通って導かれている様子が見て取れる。このフリースペース21は、ステータセグメントの層に関して、機能位置において、ステータモジュール1の内周15の領域に設けられている。
【0054】
接続路12Bと接続路12Aとの交差点16.1において、接続路12Aはコイル6A2の巻線を横断しており、この際巻線7Bは、コイル6A2の外側のとりわけ表面層17にて接線に沿って、少なくとも部分的に放射方向に導かれる。個々の交差点16.1は有利には、コイルの、この場合コイル6A2の巻線層同士の間にある段部の領域に位置し、異なるコイルペア(8A、9B)の2つのコイルヘッドの間にある凹部の領域に位置しているか、またはこれらに直接隣接して位置している。これによって交差点16.1において、軟磁性のボディのより近くに延在する巻線、つまりこの場合巻線7Bを、その上に位置する巻線7Aによって、コイル6A2のコイルヘッドとコイル6B3のコイルヘッドとの間にある凹部へと押圧することができる。したがって巻線7Bは、長距離接続12Bの延びにおいて軸方向に変形され、巻線7Bの上に延在する長距離接続12Aの巻線7Aは、外側のコイル層の間隔に相当する間隔を置いて延在することができる。巻線7Aを横断する巻線7Bは、接線方向から上に向かって屈曲し、凹部において放射方向にヨーク領域へと導かれる。
【0055】
図1〜3は、3相および12個の巻回された極を備えるステータモジュールの特に有利な実施形態を、例として示している。しかしながら、巻回されたステータセグメントの別の構成および別の極数も適当である。したがって1つの相の全ての極を周領域に配置することもでき、これによって長距離接続はなくなる。しかしながら巻回方向が異なるので、上に述べたように個々のコイルヘッド同士の間に形成された凹部の中に収納可能な、第1形式および第2形式の2つの異なる短距離接続は同様に存在する。さらには、極の数ならびに相の数を変化させることも、または第1形式または第2形式の長距離接続のみを備えたステータモジュールも製造することも考えられる。さらには、相巻線の断面が大きい場合には、1つの巻線の代わりに、平行に巻回された複数の巻線を使用することも可能である。
【0056】
このようなステータモジュールの製造に関して、基本的に種々の手段が存在する。しかしながら全ての手段は、有利には1つの相の相巻線を表すステータセグメントチェーンA〜Cのステータセグメントがそれぞれ、直列に接続されたコイル6A1〜6C4を構成するただ1つの巻線(または平行に巻回された複数の巻線)7A、7B、7Cを、中断なしに有すること、および、個々の直列に接続されたコイル6A1〜6C4の間の接続ができるだけ短く保たれることを特徴としている。図4は、予め製造されたステータセグメントチェーンAとして製造する際の接続路12Aを例にして、接続路の延びの詳細をより簡単に概略的に図示している。図6は、ステータモジュール1を製造するための方法の経過のフローチャートである。
【0057】
ここでは全ての実施形態において、第1ステップVAにて、ステータセグメントチェーンのステータセグメントが準備され、巻回工具において互いに配向される。巻回工具における配置は、ステータセグメントチェーンAに関する図4に、非常に概略的かつ簡単に図示している。個々のステータセグメント2A1〜2A4の配向は、実質的に周方向に関して、これらのステータセグメントが完成したステータモジュール1において互いに配向されているような位置に相当する。ここでは長距離の接続路12Aを介して互いに接続すべき個々のステータセグメントペア8Aおよび9Aが、1つの平面上に、または、ここに図示していない巻線工具の支持体における実際の位置に、配置されている。しかしながら、軸方向への配向は種々異なる方法で実施することができる。この際、以下の実施方法が区別される。すなわち、固定の支持体および固定のステータセグメントと、周方向に個々のステータセグメントの周囲に巻線を導くことができる巻線ニードルとを用いてステータセグメントを巻回する実施方法と、巻線に対して回転するステータセグメントを用いた実施方法とが区別される。しかしながら有利には、巻線7Aは、位置固定されたステータセグメントの周囲に巻線ニードルを用いて巻回される。
【0058】
図4は、図示していない巻回工具の図示していない支持装置における、ステータセグメントチェーンAの完成した巻回を図示している。ここでは個々のステータセグメントのための支持軸T1〜T4のみを図示している。周方向に互いに直接隣接するステータセグメント2A1、2A2および2A3、2A4のための支持軸T1、T2およびT3、T4は互いに角度付けられて配置されており、この際それぞれ周方向に隣接するステータセグメント2A2および2A4のステータセグメントのヨーク領域3は、先行するステータセグメント2A1および2A3に対して有利には20°から90°の角度範囲で、軸平面から手前に傾けられている。ステータセグメントグループが、第1形式の短距離の接続路を介して互いに結合すべきステータセグメントを複数有する場合には、工具における配置および配向は交替で互いに傾けられて行われる。この支持軸ないし固定軸にステータセグメントが配置および固定され、次の方法ステップVBにおいて、巻線7Aが、ステータセグメントチェーンAの個々のステータセグメント2A1、2A2、2A3、2A4の周囲に所期の方法によって順々に導かれる。この際、周方向に互いに隣接して配置されているステータセグメント2A1と2A2および2A3と2A4は、それぞれ異なる方向に巻回される。図1〜3のステータセグメントチェーンとは異なり、図4に図示されたステータセグメントチェーンの製造方法においては、ステータセグメントチェーンは、第1コイルの後に第2形式の短距離の接続路11Aを有しており、第2コイルの後に第1形式の長距離の接続路13Aを有しており、第3コイルの後に第1形式の短距離の接続路10Aを有している。したがってステータセグメントペア8Aと9Aの順序が入れ替わっている。ここでは図4に図示された短距離接続11Aは、組み立て状態においてステータセグメント2A1の放射方向に内側の領域から、ステータセグメント2A2の、ひいては後続コイル6A2の、軸平面から手前に傾けられている放射方向に外側の領域へと、巻線7Aを導くことによって実現される。移行時に巻回方向を変更することが重要である。図1のようにステータセグメントチェーンAが、周方向に互いに間隔を置いた、ないし有利には対向するステータペアによって表されている場合には、長距離の接続路13Aを実現するために、ステータセグメントグループ8Aと9Aの間の移行部は、支持装置においても同様に、有利には円形のセグメントまたは平坦な平面に沿って導かれる。他のステータセグメントチェーンB、Cも同様に製造することができる。支持軸は、有利な工具形態において、ステータセグメントの巻回後に、隣接し合う2つのステータセグメントの磁極ヘッドの間の開角が最終値に低減され、小さいスロットスリットを獲得できるように傾けられる。
【0059】
個々のステータセグメントチェーンA〜Cのための個々の巻線7A〜7Cによって直列に接続された個々のコイルの巻回および製造が完了した後、これらのステータセグメントチェーンは、方法ステップVCでは既に組み立て済みの形態で存在しており、リング形のヨーク3へと配向することができるようになっている。個々のステータセグメントチェーンA〜Cの組み立て、配向、および/または固定は、軸方向の簡単な挿入動作によって実施することができ、ステータセグメントチェーンBを例にして図5に図示している。個々のステータセグメント2B1、2B2および2B3、2B4は、ステータセグメントが放射方向に配向されている軸平面へと傾けられる。
【0060】
その後、次に組み立てるべきステータセグメントチェーンAまたはCのために、組み立てを保証するための複数のオーバーラップした動作、つまりこの場合軸方向の動作および放射方向の動作が必要である。その一方で、最後のステータセグメントチェーンAまたはCのために、組み立てのための相応の別の方向成分が必要である。とりわけ、最後のステータセグメントチェーンの組み立てのために、ステータセグメントペアの短時間だけ放射方向にそらす必要がある。
【0061】
ステータセグメントのヨーク領域間の接続の実施形態に応じて、この接続を力結合または素材結合によって実施することができ、したがって解除可能にも解除不能にも構成することができる。
【0062】
完成するための本発明の方法は、図6のフローチャートに基づいて示されている。図6は、方法ステップVAにおいて、工具の準備および工具における個々のステータセグメントの配向を示し、方法ステップVBにおいて、角度付け工程を示し、方法ステップVCにおいて、ケーシングに挿入可能なリングへの組み立てを示している。
【符号の説明】
【0063】
1 ステータモジュール
A1−2A4 ステータセグメント
B1−2B4 ステータセグメント
C1−2C4 ステータセグメント
3 ヨーク
4 継目箇所
A1−6A4 コイル
B1−6B4 コイル
C1−6C4 コイル
7A、7B、7C 巻線
7A1 第1終端領域
7A2 第2終端領域
7B1 第1終端領域
7B2 第2終端領域
7C1 第1終端領域
7C2 第2終端領域
8A、8B、8C ステータセグメントペア
9A、9B、9C ステータセグメントペア
10A、10B、10C ステータセグメントペア8A、8B、8C内部の第1形式の短距離接続
11A、11B、11C ステータセグメントペア9A、9B、9C内部の第2形式の短距離接続
12A、12B、12C ステータセグメントペア8と9の間の第2形式の長距離接続
13A 第1形式の長距離接続
14A スロット
15 内周
16.1−16.3 交差点
17 上側位置、上側巻線
18 スロット
10 側面領域
20 下側位置、下側巻線
21 フリースペース
A、B、C ステータセグメントチェーン
M 中心軸
T1−T4 支持軸
VA、VB、VC 方法ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロット(14A、18)を形成しつつ周方向に互いに間隔を置いて配置され、かつコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)によって巻回されている複数の個々の軟磁性ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)を備える、多相の電動機のためのステータモジュール(1)であって、
1つの相の少なくとも2つのコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)は直列に接続されている、
形式のステータモジュール(1)において、
1つの相の少なくとも2つのコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)は、少なくとも1つのステータセグメントチェーン(A、B、C)を形成しており、
前記ステータセグメントチェーンのコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)と、該コイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)の接続部とが、互いに連続した1本の巻線(7A、7B、7C)によって形成されるか、または少なくとも2本の平行に巻回された巻線(7A、7B、7C)によって形成される、
ことを特徴とするステータモジュール(1)。
【請求項2】
1つのステータセグメントチェーン(A,B,C)の2つの互いに連続するコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)間の接続路(10A,10B,10C,11A,11B,11C,12A,12B,12C)のうちの少なくとも一部、有利には全ての接続路と、前記ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)の端面との間の軸方向における間隔は、前記ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)の端面と個々のコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)の外側層(17)との間の最大間隔よりも、巻線直径よりも短い間隔だけ上回っている、
ことを特徴とする請求項1記載のステータモジュール(1)。
【請求項3】
1つのステータセグメントチェーン(A,B,C)の2つの互いに連続するコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)間の接続路(10A,10B,10C,11A,11B,11C,12A,12B,12C)のうちの少なくとも一部、有利には全ての接続路と、前記ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)の端面との間の軸方向における間隔は、最大でも、前記ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)の端面と個々のコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)の外側層(17)との間の最大間隔に相当する、
ことを特徴とする請求項1または2記載のステータモジュール(1)。
【請求項4】
1つのステータセグメントチェーン(A,B,C)の少なくとも2つのステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)は、周方向に互いに直接隣接して配置されており、
前記ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)の前記コイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)は、互いに逆向きの巻回方向を有しており、
前記コイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)同士の間の接続は、第1形式または第2形式の短距離の接続路によって表される、
但し、前記第1形式の接続路(10A,20A,30A)の場合には、相巻線において先行して配置されるコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)が、後続して配置されるステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)との共通のスロットを通過した後に終端しており、
その一方で、前記第2形式の接続路(11A,11B,11C)の場合には、相巻線において先行して配置されるコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)が、後続して配置されるステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)との共通のスロットに到着する前に終端しており、巻線(7A,7B,7C)を、前記先行して配置されるコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)の上に亘って導かなければならない、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のステータモジュール(1)。
【請求項5】
1つのステータセグメントチェーン(A,B,C)の前記ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)は、それぞれ少なくとも1つのステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)から、周方向に1つ以上のステータセグメントだけ、有利には180°だけ互いにずらされて配置されたステータセグメントグループ(8A,8B,8C,9A,9B,9C)を形成し、
前記ステータセグメントグループ(8A,8B,8C,9A,9B,9C)同士の間の接続は、第1形式または第2形式の長距離の接続路によって表される、
但し、前記第1形式の接続路の場合には、1つのステータセグメントグループ(A,B,C)の最後のコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)が、後続して配置される他のステータセグメントグループ(A,B,C)のステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)との共通のスロットを通過した後に終端しており、
その一方で、前記第2形式の接続路の場合には、1つのステータセグメントグループ(A,B,C)の最後のコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)が、後続して配置される他のステータセグメントグループ(A,B,C)のステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)との共通のスロットに到着する前に終端しており、巻線(7A,7B,7C)を、当該コイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)の上に亘って導かなければならない、
ことを特徴とする請求項1または2記載のステータモジュール(1)。
【請求項6】
1つのステータセグメントチェーン(A,B,C)の2つのコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)間の接続を表す接続路(10A,10B,10C,11A,11B,11C,12A,12B,12C)の少なくとも一部の領域は、周方向に互いに隣接して配置された2つのステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)のコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)のコイルヘッド同士の間にある凹部の中にて、少なくとも部分的に放射方向に延在する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載のステータモジュール(1)。
【請求項7】
1つのステータセグメントチェーン(A,B,C)の2つのコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)間の接続を表す接続路(10A,10B,10C,11A,11B,11C,12A,12B,12C)の少なくとも一部の領域は、前記コイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)の放射方向に内側の領域において少なくとも部分的に接線方向に延在しており、前記コイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)の前記外側層(17)の巻回の伸長内では軸方向に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載のステータモジュール(1)。
【請求項8】
2つのステータセグメントチェーン(A,B,C)の長距離の接続路(12A,12B,12C)同士の交差領域(16.1,16.2,16.3)は、隣接する2つの前記ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)のコイル(6A1−6A4、6B1−6B4、6C1−6C4)のコイルヘッド同士の間にある凹部の中に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載のステータモジュール(1)。
【請求項9】
個々の前記ステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)は、オルソサイクリック(orthocyclic)に巻回されている、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載のステータモジュール(1)。
【請求項10】
複数の個々の巻回されたステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)からなるステータモジュール(1)を、前記ステータセグメントを収容するケーシング、とりわけヨーク(3)に配向および固定することによって製造する方法において、
・組み立て状態において周方向に隣接するステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)を、互いに傾けられた支持軸(T1−T4)に配置することにより、巻回工具にて巻回すべきステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)を準備および配置するステップと、
・個々のステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)のコイルを、1本の巻線(7A,7B,7C)または平行に巻回される複数の巻線から形成するステップと、
・個々の巻回されたステータセグメント(2A1−2A4、2B1−2B4、2C1−2C4)を、最終的なステータモジュールにおいて該ステータセグメントが占める角度位置へと互いに傾け、このようにして形成された個々のステータセグメントチェーン(A,B,C)を互いに収容工具または共通のヨークにて配向および固定するステップと
によって、予め製造されたステータセグメントチェーン(A,B,C)を準備する、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−511256(P2013−511256A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539177(P2012−539177)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001250
【国際公開番号】WO2011/057599
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512006239)シェフラー テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (59)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】