ステータ
【課題】励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータにおいて、モータの小型、軽量化およびコストダウンに寄与する従来にない画期的な励磁コイル構造を提供する。
【解決手段】ステータ2の励磁コイル8u〜8wを平角線コイル13aにより形成し、その際、平角線コイル13aは、平角線13を、幅の広い面がステータ2の各ティース51、62の周面に対向する向きで、段毎に巻き方向を外周側から内周側、内周側から外周側に交互に変えて外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回して形成するとともに、少なくとも一部ずつを同じ平角線13のカセットコイル81により形成する。
【解決手段】ステータ2の励磁コイル8u〜8wを平角線コイル13aにより形成し、その際、平角線コイル13aは、平角線13を、幅の広い面がステータ2の各ティース51、62の周面に対向する向きで、段毎に巻き方向を外周側から内周側、内周側から外周側に交互に変えて外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回して形成するとともに、少なくとも一部ずつを同じ平角線13のカセットコイル81により形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータに関し、詳しくは、従来にない画期的な励磁コイルの構造の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アキシャルギャップ、ラジアルギャップのいずれのモータも、励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータを備える。
【0003】
図11は3相駆動のアキシャルギャップモータにおけるステータの励磁コイルの結線構造を示し、ステータ100のコア110は、モータケース111内において、中心部にモータ軸(図示せず)が遊挿される円環状であり、3相U、V、Wの励磁コイルとして、それぞれ4個のU相コイルU1〜U4、V相コイルV1〜V4、W相コイルW1〜W4を備える。各コイルU1〜W4は、コア110に周方向に略等間隔に設けられた各磁極のティース112にインシュレータ(図示せず)を介して集中巻きされ、外周側、内周側のコイル巻線(ワイヤ)113u、113v、113wをバスリングとして、直列或いは並列に結線され、さらに、コア110の外周側に位置する各結線部14u、14v、14wに引き出される。なお、中性線115は、外周側に配置されている(例えば、特許文献1(段落[0007]、[0008]、図1等)参照)。
【0004】
また、アキシャルギャップモータにおけるステータの励磁コイルの他の結線構造として、断面円形の同じ丸線を集中巻きして同相の磁極の各励磁コイルを連続的に形成することも提案されている(例えば、特許文献2(段落[0040]−[0093]、図1、図2等)参照)。
【0005】
さらに、アキシャルギャップモータにおけるステータの励磁コイルのさらに他の結線構造として、上下に重ねて形成した平角コイルの一層目と二層目を電気的に接続することによりコイルを形成することも提案されている(例えば、特許文献3(段落[0014]、図1等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−345655号公報
【特許文献2】特開2006−230179号公報
【特許文献3】特開平9−168270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のステータの場合、励磁コイルを接続するために外周側および内周側にバスリングが必要でモータの体格、重量が大きくなり、モータのコストアップも招く。また、バスリングと各励磁コイルを接続するので結線個所が多く、生産性が低い。
【0008】
特許文献2に記載のステータの場合、前記のバスリングは使用しないが、各励磁コイルを、各相毎に連続した1本の巻線により、コイル間の渡り線とともにダミーメンバーに巻きつけその長さを確保して製作するので、その製造方法上、平角線は使えず、丸線のコイルしか使用できない。そのため、コイルの占積率は、丸線間の隙間により平角線ほどには高くできず、その分モータの体格は大きくなる。
【0009】
特許文献3に記載のステータの場合、上側の平角コイルと下側の平角コイルの結線が必要であり、コイルの内周側を半田づけする等しなければならず、生産性が低いという問題がある。
【0010】
そして、ラジアルギャップモータにおけるステータの励磁コイルについても、上記と同様の各問題がある。
【0011】
本発明は、励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータにおいて、モータの小型、軽量化およびコストダウンに寄与する従来にない画期的な励磁コイル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明のステータは、励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータにおいて、前記励磁コイルは平角線コイルにより形成され、前記平角線コイルは、平角線を、幅の広い面が前記各ティースの周面に対向する向きで、段毎に巻き方向を外周側から内周側、内周側から外周側に交互に変えて外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回した構造であり、かつ、前記各磁極の前記励磁コイルとしての前記平角線コイルは、少なくとも一部ずつが同じ平角線で連続して形成されたものであることを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明のステータの場合、ステータの各磁極の励磁コイルは、平角線を、幅の広い面が各ティースの周面に対向する向き(エッジワイズを横向きとすれば、それを引き起こした巻き易い縦向き)で、1段目は巻き方向を外周側から内周側、2段目は巻き方向を反対の内周側から外周側、…に、段毎に巻き方向を交互に変え、外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回したコイル体で形成される。しかも、例えば同じ相の磁極の励磁コイルのコイル体は、同じ1本の平角線により、前記のようにして外周側から巻き始めて外周側で巻き終わることをくり返して連続的に形成される。
【0014】
この場合、丸線でなく平角線を用いるとともに、その平角線をいわゆるアルファ巻きで集中巻きして各励磁コイルが形成されるので、平角線が隙間なく巻き重ねられることにより、ステータのスロット断面積に対する励磁コイルの占積率が高くなる。また、平角線のアルファ巻きのコイル体は、曲げ容易方向に折り曲げて励磁コイルを構成するので、丸線のコイル体のように内周側および外周側に膨らまず、とくにステータの内周側とモータ軸との空間を狭くしてモータの体格を小さくできる。
【0015】
さらに、平角線の巻き始めと巻き終りがいずれもコイル体の外周側の位置になるので、巻き終わった平角線をステータの内周側から外周側に引き回す必要がなく、そのため、モータ軸方向の平角線の引き回しが不要で、モータの体格が大きくなることがない。具体的には、平角線を内周側から外周側に引き回すのであれば、ステータの磁極高さ、またはステータとロータとのギャップ(隙間)をその平角線の厚み分大きい目に確保する必要があり、また、ステータの外周側にも平角線の厚み分の隙間を確保する必要があるが、本発明の場合は平角線をステータの内周側から外周側に引き回す必要がないので、その分モータ軸方向にも径方向にもモータの体格が小さくなる。
【0016】
その上、平角線をアルファ巻きするので、励磁コイルのコーナー部分や渡り線等の折り曲げが容易で厚みも厚くならず、励磁コイル等の形成が容易で、しかも、モータが一層小型、軽量になる。
【0017】
また、同じ相の全部または一部の磁極の励磁コイルが、同じ平角線のコイル体で継ぎ目なく連続的に形成されるので、バスリングは不要になり、その分、モータは小型、軽量になるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0018】
したがって、モータの小型、軽量化およびコストダウンに寄与する従来にない画期的な励磁コイルの構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の3相駆動のアキシャルギャップモータの一部を省略した分解斜視図である。
【図2】は図1のステータの一部の励磁コイルを形成するカセットコイルの斜視図である。
【図3】図2のカセットコイルの平面図である。
【図4】(a)、(b)は図3のB−B線、A−A線の位置それぞれの巻回状態を説明する断面図である。
【図5】(a)、(b)は1相の一部の励磁コイルを組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのC−C線の断面図である。
【図6】(a)、(b)は2相の一部の励磁コイルを組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのD−D線の断面図である。
【図7】(a)、(b)は3相の一部の励磁コイルを組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのE−E線の断面図である。
【図8】(a)、(b)は1相の残りの励磁コイルも組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのF−F線の断面図である。
【図9】(a)、(b)は2相の残りの励磁コイルも組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのG−G線の断面図である。
【図10】(a)、(b)は3相の残りの励磁コイルも組み付けた組み付け完了状態の図1のステータの正面図、そのH−H線の断面図である。
【図11】従来例のステータの励磁コイル構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、一実施形態について、図1〜図10を参照して詳述する。なお、それらの図面においては、モータ軸等は適宜省略している。
【0021】
図1は本実施形態の3相駆動のアキシャルギャップモータ1を示し、アキシャルギャップモータ1は、ステータ2の表裏の両面側にギャップを設けてロータ3a、3bが対向するように配置され、ステータ2の表裏のいずれか一方の磁極面が全てN極またはS極に励磁され、ステータ2の表裏のいずれか他方の磁極面が全て逆のS極またはN極に励磁される立体磁路構成である。
【0022】
この立体磁路構成につき、3相U、V、Wの励磁によってステータ2の表面側の磁極が全てS極、裏面の磁極が全てN極に励磁されるとして、さらに詳述する。
【0023】
まず、ロータ3a、3bはモータ軸4に回転自在に軸支され、ステータ2はモータ軸4が中心部に遊挿されてロータ3a、3b間に固定状態に配置さる。
【0024】
つぎに、ステータ2の表面および裏面に、U、V、Wの順に各相の磁極を配設して、各相の磁極を90度の間隔で各4個ずつ配置する場合、ステータ2は、平面視が扇形の12個の分割コア51を周方向に配置した表面側コア5と、分割コア51と同じ形状の12個の分割コア61を各分割コア51と背中合わせで1/2磁極ビッチずらして周方向に配置した裏面側コア6とを備える。各分割コア51は例えば圧粉磁心によりS極のティース52とともに形成され、各分割コア61は例えば圧粉磁心によりN極のティース62とともに形成される。このようにすることにより、モータ軸4方向から見たステータ2の磁極数は表裏の片側の12極の倍の24極になる。
【0025】
各分割コア51、61にはそれぞれ絶縁隔壁としての例えば樹脂製のつば付外枠形状のインシュレータ7が着脱自在に外装される。
【0026】
U相の分割コア51、61にはインシュレータ7を介して集中巻きのU相の励磁コイル8uが装着され、V相の分割コア51、61にはインシュレータ7を介して集中巻きのV相の励磁コイル8vが装着され、W相の分割コア51、61にはインシュレータ7を介して集中巻きのW相の励磁コイル8wが装着される。
【0027】
そして、各分割コア51にインシュレータ7を介して装着された励磁コイル8u、8v、8wは、渡り線ガイドおよび端子台としての絶縁性の環状の2重の外側枠体9a、9bおよび、それぞれ1対の分割リング状の3重の内側係止体10a、10b、10cが、外側および内側に嵌められて固定される。同様に、各分割コア61にインシュレータ7を介して装着された励磁コイル8u、8v、8wは、渡り線ガイドおよび端子台としての絶縁性の環状の2重の外側枠体9c、9dおよび、それぞれ1対の分割リング状の3重の内側係止体10d、10e、10fが、外側および内側に嵌められて固定される。
【0028】
一方、ロータ3a、3bは、それぞれステータ2に対向する磁極面に周方向に等間隔に配設された例えば8個のティースの磁極31を備える。
【0029】
さらに、モータ軸4に同軸状に磁性体の円筒形の軸磁路材11が設けられ、軸磁路材11の両端面はロータ3a、3bのヨーク面に接合している。
【0030】
そして、アキシャルギャップモータ1は、ステータ2の表裏両面の各相の励磁コイル8u、8v、8wの順次の通電により、例えばU相の場合、表側の90度間隔の4個のU相のティース52はS極に励磁され、裏側の90度間隔の4個のU相のティース62はN極に励磁され、この裏側のU相のN極から出た磁束が、対向するロータ3bの近傍の磁極31、磁路形成部材4を通ってロータ3aに向かい、ステータ2のU相のS極近傍のロータ3aの磁極からステータ2の表側のU相のS極に向かう。また、V相の場合、ステータ2において、表側のU相のティース52の隣の90度間隔の4個のV相のティース52はS極に励磁され、裏側の90度間隔の4個のV相のティース62はN極に励磁され、裏側のV相のN極から出た磁束が、対向するロータ3bの近傍の磁極31、磁路形成部材4を通ってロータ3aに向かい、ステータ2のV相のS極近傍のロータ3aの磁極からステータ2の表側のV相のS極に向かう。さらに、W相の場合、ステータ2において、表側のV相のティース52の隣の90度間隔の4個のW相のティース52はS極に励磁され、裏側の90度間隔の4個のW相のティース62はN極に励磁され、裏側のW相のN極から出た磁束が、対向するロータ3bの近傍の磁極31、磁路形成部材4を通ってロータ3aに向かい、ステータ2のW相のS極近傍のロータ3aの磁極からステータ2の表側のW相のS極に向かう。
【0031】
このようにして、ステータ2とその表裏のロータ3a、3bとの間でモータ軸4方向に進む立体磁路が構成されてロータ3a、3bが回転してモータ軸4が回転し、アキシャルギャップモータ1が駆動される。
【0032】
なお、本実施形態のアキシャルギャップモータ1は、磁束量を多くしてアキシャルギャップモータ1のトルクアップを図るため、ステータ2に、表裏毎に、または、表裏両面共通に、環状の界磁コイル12を備え、この界磁コイル12に適当な大きさの直流を給電して一定のバイアス磁束を発生するように構成される。
【0033】
つぎに、ステータ2の表裏の各相の励磁コイル8u〜8wの構造および、組み付けについて、さらに説明する。
【0034】
ステータ2の表裏両面の各相の4個の励磁コイル8u〜8wは、いずれも例えば2個1組のカセットコイル81からなる。
【0035】
図2は例えば表側のU相の90度間隔の2個の励磁コイル8uを形成するカセットコイル81を示し、このカセットコイル81は、1本の平角線13を集中巻きした2個の平角線コイル13aによりステータ2の半周分に位置する2個の集中巻きの励磁コイル8uを形成し、両励磁コイル8uの平角線コイル13aを渡り線82により繋いだ構成である。平角線コイル13aは、平角線を、いわゆるアルファ巻きしたものであり、幅の広い面がティース52の周面に対向する向きで、段毎に巻き方向を外周側から内周側、内周側から外周側に交互に変えて外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回した構造である。
【0036】
図3は図2のカセットコイル81の平面図であり、図4の(a)、(b)は図3の励磁コイル8uのB−B線、A−A線の巻き線構造を示す切断面の模式図である。
【0037】
そして、励磁コイル8u〜8wは、それぞれ1段分がほぼ7ターンで、モータ軸4方向に平角線コイル13aを4段に重ねた構成である場合、平角線13の巻き回しを1個の励磁コイル8uで説明すると、図4の(a)、(b)に示すように、励磁コイル8uとしての平角線コイル13aは、1段目は外側から巻き始めて7ターン分巻回し、8ターン目を斜め上方向に巻いて2段目に進み、2段目は内側から巻き始めて14ターン目で外側に達すると、15ターン目を斜め上方向に巻いて3段目に進み、3段目は外側から巻き始めて21ターン目で内側に達すると、22ターン目を斜め上方向に巻いて4段目に進み、4段目は内側から巻き始めて29ターン目で外側に達すると、30ターン目の所定位置から引き出され、このようにして励磁コイル8uがアルファ巻きで形成される。図4(a)、(b)の数字1〜30はターン番号である。
【0038】
さらに、最初の励磁コイル8uの平角線コイル13aを巻き終わると、適当な長さの渡り線82を形成して次の励磁コイル8uの平角線コイル13aが同様にアルファ巻きで形成される。
【0039】
そして、相毎に各2個の励磁コイル8u〜8wそれぞれを渡り線82で繋いだ形状のカセットコイル81を必要数(本実施形態の場合は表裏それぞれ毎に1相当たり2個)用意すると、ステータ2の表裏それぞれにおいて、例えばU相から順に積み重ねるようにしてカセットコイル81の2個の励磁コイル8u〜8wをステータ2の該当する各2個のティース52、62にインシュレータ7を介して装着する。なお、各カセットコイル81は、例えばスピンドル巻きで生産性よく製造できる。
【0040】
つぎに、ステータ2の表側のカセットコイル81によって、ステータ2の表裏の各カセットコイル81の装着についてさらに説明する。なお、各相のカセットコイル81は各相1個ずつの半周分を装着し、つぎに残りの半周分を装着するものとする。また、ステータ2の裏側のカセットコイル81の装着も同様である。
【0041】
図5(a)、(b)は、最初のU相の1個目(ステータ2の半周分)のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、同図(a)のC−C線の断面図である同図(b)に示すように、渡り線82は一方の内側係止体10cのガイド溝14cに沿って配設される。このとき、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9bの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って引き出される。
【0042】
図6(a)、(b)は、さらにV相の1個目のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、V相のカセットコイル81はU相のカセットコイル81の上にずらして重なるように装着され、同図(a)のD−D線の断面図である同図(b)に示すように、その渡り線82は一方の内側係止体10bのガイド溝14bに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9bの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って引き出される。
【0043】
図7(a)、(b)は、さらにW相の1個目のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、W相のカセットコイル81はV相のカセットコイル81の上にU相、V相のカセットコイル81とずらして重なるように装着され、同図(a)のE−E線の断面図である同図(b)に示すように、その渡り線82は一方の内側係止体10aのガイド溝14aに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9aの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って引き出される。
【0044】
図8(a)、(b)は、さらに残りの半周の最初のU相のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、同図(a)のF−F線の断面図である同図(b)に示すように、渡り線82は他方の内側係止体10cのガイド溝14cに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9aの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って1番目のU相のカセットコイル81の引き出し位置とほぼ同じ位置に引き出される。なお、残りの半周の各相の2本の引き出し線83は外側枠体9bの左右それぞれの方向から引き回されるので、外側枠体9aのガイド溝91の数は外側枠体9bの半分の3本である。
【0045】
図9(a)、(b)は、さらに残りの半周のV相のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、このV相のカセットコイル81は前記した残りの半周U相のカセットコイル81の上にU相のカセットコイル81とずらして重なるように装着され、同図(a)のG−G線の断面図である同図(b)に示すように、渡り線82は他方の内側係止体10bのガイド溝14bに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9aの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って1番目のV相のカセットコイル81の引き出し位置とほぼ同じ位置に引き出される。
【0046】
図10(a)、(b)は、さらに残りの半周のW相のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、このW相のカセットコイル81は前記した残りの半周のV相のカセットコイル81のさらに上にU相、V相のカセットコイル81とずらして重なるように装着され、同図(a)のH−H線の断面図である同図(b)に示すように、渡り線82は他方の内側係止体10aのガイド溝14aに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9aの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って1番目のW相のカセットコイル81の引き出し位置とほぼ同じ位置に引き出される。
【0047】
そして、外側枠体9a、9bに引き出された各相の半周分ずつの端子部が直列または並列に接続され、ステータ2の表側のカセットコイル81の装着が終了し、ステータ2の裏側についても同様にして各相のカセットコイル81が装着される。
【0048】
このようにして組み付けられたアキシャルギャップモータ1の場合、(1)ステータ2の表裏の励磁コイル8u〜8wが平角線13のいわゆるアルファ巻きで集中巻きして形成されるので、ノズル巻きの丸線のコイル体で励磁コイルを形成する場合のようなノズル隙間を設ける必要がなく、ステータ2の面積に対する励磁コイル8u〜8wの占有率が高くなる。また、平角線13のアルファ巻きのコイル体は丸線のコイル体のように内周側および外周側に膨らまず、とくにステータ2の内周側とモータ軸4との空間を狭くしてアキシャルギャップモータ1の体格を小さくできる。
【0049】
(2)各励磁コイル8u〜8wがカセットコイル81で形成されてステータ2の表裏の各ティースに簡単に装着できるので、アキシャルギャップモータ1の組み付け性が向上して生産性が高まる。
【0050】
(3)各カセットコイル81の平角線13の巻き始めと巻き終りがいずれも外周側の位置になるので、巻き終わった平角線13をステータ2の内周側から外周側に引き回す必要がなく、そのため、モータ軸4方向の平角線13の引き回しが不要で、モータ軸4方向にアキシャルギャップモータ1の体格が大きくなることがない。具体的には、平角線13をステータ2の内周側から外周側に引き回すのであれば、ステータ2とロータ3a、3bとのギャップ(隙間)を平角線13の厚み分大きくする必要があり、また、ステータ2の外周側にも平角線13の厚み分の隙間を確保する必要があるが、本実施形態の場合は平角線13をステータ2の内周側から外周側に引き回す必要がないので、その分モータ軸方向にも径方向にもモータ2の体格が小さくなる。
【0051】
(4)平角線13をアルファ巻きして各カセットコイル81の励磁コイル8u〜8wを形成するので、励磁コイル8u〜8wのコーナー部分や渡り線82、引き出し線83の折り曲げ等が容易で厚みも厚くならず、励磁コイル8u〜w等の形成が容易で、しかも、アキシャルギャップモータ1が一層小型、軽量になる。
【0052】
(5)各相の半周部の2個ずつの磁極の励磁コイル8u〜8wが、同じ平角線13の1個のカセットコイル81でそれぞれ継ぎ目なく連続的に形成されるので、バスリングは部分的なものでよく、スリーブ等も削減でき、場合によってはそれらを省略可能であり、部品点数が一層少なくなってアキシャルギャップモータ1は小型、軽量になるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0053】
(6)各カセットコイル81の励磁コイル8u〜8wはインシュレータ7により絶縁が図られる。また、渡り線82、引き出し線83はステータ2の内周側、外周側において相毎に異なる径方向、モータ軸4方向の位置にガイド溝14a〜14c、91の隔壁によって絶縁しつつ保持される。この場合、異なる相の渡り線82、引き出し線83どうし、渡り線82、引き出し線83と他相の励磁コイル8u〜8Wの十分な空間距離および沿面距離を確保でき、相間の確実な絶縁が行なえる。なお、渡り線82の絶縁は前記の隔壁によって行なわれるのでコンパクトであり、ステータ2の内周側に十分なスペースを確保でき、本実施形態の場合、軸磁路材11のスペースを確保できる。また、渡り線82等の振動等による損傷を防止でき絶縁の信頼性を向上できるとともに耐久性を向上できる利点もある。
【0054】
(7)ステータ2の内周側に渡り線82を設けることにより各カセットコイル81の線長を短くでき、その保持部としての内側係止体10a〜10cも小型化する。
【0055】
したがって、アキシャルギャップモータ1の小型、軽量化およびコストダウンに寄与する従来にない画期的な励磁コイル構造を提供することができる。
【0056】
そして、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、各相の励磁コイル8u〜8wは、3個、4個(全部)を1個のカセットコイル82の1本の平角線13で形成してもよく、その場合には、十分な空間距離および沿面距離を確保するように、ガイド溝10a〜10c、91の個数等を適宜増やす等すればよい。
【0057】
ステータ2の駆動相の数やステータ2、ロータ3a、3bの磁極数等は前記実施形態の3相、12極等に限るものではなく、4相以上の多相駆動、18極、24極等であってもよい。
【0058】
つぎに、ステータ2は表または裏の片面にのみ磁極面が形成される片面磁極構成であってもよく、その場合は、例えばそれぞれ1個のステータ2とロータ3aによってアキシャルギャップモータ1が形成される。
【0059】
つぎに、本発明は、アキシャルギャップモータ1とはステータ2やロータ3a、3bの磁極構造が異なる種々のアキシャルギャップモータ、例えば、ステータ2の周方向の各相の磁極がS極とN極を交互に形成する磁極構造のアキシャルギャップモータに同様に適用することができ、さらには、磁極面がステータ2の周側面に配設されるラジアルギャップモータの集中巻きの励磁コイル構造にも同様に適用することができる。
【0060】
そして、本発明は、電気自動車の駆動モータ等の種々の用途のアキシャルギャップモータ、ラジアルギャップモータのステータの励磁コイル構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 アキシャルギャップモータ
2 ステータ
8u〜8w 励磁コイル
13 平角線
13a 平角線コイル
52、62 ティース
81 カセットコイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータに関し、詳しくは、従来にない画期的な励磁コイルの構造の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アキシャルギャップ、ラジアルギャップのいずれのモータも、励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータを備える。
【0003】
図11は3相駆動のアキシャルギャップモータにおけるステータの励磁コイルの結線構造を示し、ステータ100のコア110は、モータケース111内において、中心部にモータ軸(図示せず)が遊挿される円環状であり、3相U、V、Wの励磁コイルとして、それぞれ4個のU相コイルU1〜U4、V相コイルV1〜V4、W相コイルW1〜W4を備える。各コイルU1〜W4は、コア110に周方向に略等間隔に設けられた各磁極のティース112にインシュレータ(図示せず)を介して集中巻きされ、外周側、内周側のコイル巻線(ワイヤ)113u、113v、113wをバスリングとして、直列或いは並列に結線され、さらに、コア110の外周側に位置する各結線部14u、14v、14wに引き出される。なお、中性線115は、外周側に配置されている(例えば、特許文献1(段落[0007]、[0008]、図1等)参照)。
【0004】
また、アキシャルギャップモータにおけるステータの励磁コイルの他の結線構造として、断面円形の同じ丸線を集中巻きして同相の磁極の各励磁コイルを連続的に形成することも提案されている(例えば、特許文献2(段落[0040]−[0093]、図1、図2等)参照)。
【0005】
さらに、アキシャルギャップモータにおけるステータの励磁コイルのさらに他の結線構造として、上下に重ねて形成した平角コイルの一層目と二層目を電気的に接続することによりコイルを形成することも提案されている(例えば、特許文献3(段落[0014]、図1等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−345655号公報
【特許文献2】特開2006−230179号公報
【特許文献3】特開平9−168270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のステータの場合、励磁コイルを接続するために外周側および内周側にバスリングが必要でモータの体格、重量が大きくなり、モータのコストアップも招く。また、バスリングと各励磁コイルを接続するので結線個所が多く、生産性が低い。
【0008】
特許文献2に記載のステータの場合、前記のバスリングは使用しないが、各励磁コイルを、各相毎に連続した1本の巻線により、コイル間の渡り線とともにダミーメンバーに巻きつけその長さを確保して製作するので、その製造方法上、平角線は使えず、丸線のコイルしか使用できない。そのため、コイルの占積率は、丸線間の隙間により平角線ほどには高くできず、その分モータの体格は大きくなる。
【0009】
特許文献3に記載のステータの場合、上側の平角コイルと下側の平角コイルの結線が必要であり、コイルの内周側を半田づけする等しなければならず、生産性が低いという問題がある。
【0010】
そして、ラジアルギャップモータにおけるステータの励磁コイルについても、上記と同様の各問題がある。
【0011】
本発明は、励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータにおいて、モータの小型、軽量化およびコストダウンに寄与する従来にない画期的な励磁コイル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明のステータは、励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータにおいて、前記励磁コイルは平角線コイルにより形成され、前記平角線コイルは、平角線を、幅の広い面が前記各ティースの周面に対向する向きで、段毎に巻き方向を外周側から内周側、内周側から外周側に交互に変えて外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回した構造であり、かつ、前記各磁極の前記励磁コイルとしての前記平角線コイルは、少なくとも一部ずつが同じ平角線で連続して形成されたものであることを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明のステータの場合、ステータの各磁極の励磁コイルは、平角線を、幅の広い面が各ティースの周面に対向する向き(エッジワイズを横向きとすれば、それを引き起こした巻き易い縦向き)で、1段目は巻き方向を外周側から内周側、2段目は巻き方向を反対の内周側から外周側、…に、段毎に巻き方向を交互に変え、外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回したコイル体で形成される。しかも、例えば同じ相の磁極の励磁コイルのコイル体は、同じ1本の平角線により、前記のようにして外周側から巻き始めて外周側で巻き終わることをくり返して連続的に形成される。
【0014】
この場合、丸線でなく平角線を用いるとともに、その平角線をいわゆるアルファ巻きで集中巻きして各励磁コイルが形成されるので、平角線が隙間なく巻き重ねられることにより、ステータのスロット断面積に対する励磁コイルの占積率が高くなる。また、平角線のアルファ巻きのコイル体は、曲げ容易方向に折り曲げて励磁コイルを構成するので、丸線のコイル体のように内周側および外周側に膨らまず、とくにステータの内周側とモータ軸との空間を狭くしてモータの体格を小さくできる。
【0015】
さらに、平角線の巻き始めと巻き終りがいずれもコイル体の外周側の位置になるので、巻き終わった平角線をステータの内周側から外周側に引き回す必要がなく、そのため、モータ軸方向の平角線の引き回しが不要で、モータの体格が大きくなることがない。具体的には、平角線を内周側から外周側に引き回すのであれば、ステータの磁極高さ、またはステータとロータとのギャップ(隙間)をその平角線の厚み分大きい目に確保する必要があり、また、ステータの外周側にも平角線の厚み分の隙間を確保する必要があるが、本発明の場合は平角線をステータの内周側から外周側に引き回す必要がないので、その分モータ軸方向にも径方向にもモータの体格が小さくなる。
【0016】
その上、平角線をアルファ巻きするので、励磁コイルのコーナー部分や渡り線等の折り曲げが容易で厚みも厚くならず、励磁コイル等の形成が容易で、しかも、モータが一層小型、軽量になる。
【0017】
また、同じ相の全部または一部の磁極の励磁コイルが、同じ平角線のコイル体で継ぎ目なく連続的に形成されるので、バスリングは不要になり、その分、モータは小型、軽量になるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0018】
したがって、モータの小型、軽量化およびコストダウンに寄与する従来にない画期的な励磁コイルの構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の3相駆動のアキシャルギャップモータの一部を省略した分解斜視図である。
【図2】は図1のステータの一部の励磁コイルを形成するカセットコイルの斜視図である。
【図3】図2のカセットコイルの平面図である。
【図4】(a)、(b)は図3のB−B線、A−A線の位置それぞれの巻回状態を説明する断面図である。
【図5】(a)、(b)は1相の一部の励磁コイルを組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのC−C線の断面図である。
【図6】(a)、(b)は2相の一部の励磁コイルを組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのD−D線の断面図である。
【図7】(a)、(b)は3相の一部の励磁コイルを組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのE−E線の断面図である。
【図8】(a)、(b)は1相の残りの励磁コイルも組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのF−F線の断面図である。
【図9】(a)、(b)は2相の残りの励磁コイルも組み付けた状態の図1のステータの正面図、そのG−G線の断面図である。
【図10】(a)、(b)は3相の残りの励磁コイルも組み付けた組み付け完了状態の図1のステータの正面図、そのH−H線の断面図である。
【図11】従来例のステータの励磁コイル構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、一実施形態について、図1〜図10を参照して詳述する。なお、それらの図面においては、モータ軸等は適宜省略している。
【0021】
図1は本実施形態の3相駆動のアキシャルギャップモータ1を示し、アキシャルギャップモータ1は、ステータ2の表裏の両面側にギャップを設けてロータ3a、3bが対向するように配置され、ステータ2の表裏のいずれか一方の磁極面が全てN極またはS極に励磁され、ステータ2の表裏のいずれか他方の磁極面が全て逆のS極またはN極に励磁される立体磁路構成である。
【0022】
この立体磁路構成につき、3相U、V、Wの励磁によってステータ2の表面側の磁極が全てS極、裏面の磁極が全てN極に励磁されるとして、さらに詳述する。
【0023】
まず、ロータ3a、3bはモータ軸4に回転自在に軸支され、ステータ2はモータ軸4が中心部に遊挿されてロータ3a、3b間に固定状態に配置さる。
【0024】
つぎに、ステータ2の表面および裏面に、U、V、Wの順に各相の磁極を配設して、各相の磁極を90度の間隔で各4個ずつ配置する場合、ステータ2は、平面視が扇形の12個の分割コア51を周方向に配置した表面側コア5と、分割コア51と同じ形状の12個の分割コア61を各分割コア51と背中合わせで1/2磁極ビッチずらして周方向に配置した裏面側コア6とを備える。各分割コア51は例えば圧粉磁心によりS極のティース52とともに形成され、各分割コア61は例えば圧粉磁心によりN極のティース62とともに形成される。このようにすることにより、モータ軸4方向から見たステータ2の磁極数は表裏の片側の12極の倍の24極になる。
【0025】
各分割コア51、61にはそれぞれ絶縁隔壁としての例えば樹脂製のつば付外枠形状のインシュレータ7が着脱自在に外装される。
【0026】
U相の分割コア51、61にはインシュレータ7を介して集中巻きのU相の励磁コイル8uが装着され、V相の分割コア51、61にはインシュレータ7を介して集中巻きのV相の励磁コイル8vが装着され、W相の分割コア51、61にはインシュレータ7を介して集中巻きのW相の励磁コイル8wが装着される。
【0027】
そして、各分割コア51にインシュレータ7を介して装着された励磁コイル8u、8v、8wは、渡り線ガイドおよび端子台としての絶縁性の環状の2重の外側枠体9a、9bおよび、それぞれ1対の分割リング状の3重の内側係止体10a、10b、10cが、外側および内側に嵌められて固定される。同様に、各分割コア61にインシュレータ7を介して装着された励磁コイル8u、8v、8wは、渡り線ガイドおよび端子台としての絶縁性の環状の2重の外側枠体9c、9dおよび、それぞれ1対の分割リング状の3重の内側係止体10d、10e、10fが、外側および内側に嵌められて固定される。
【0028】
一方、ロータ3a、3bは、それぞれステータ2に対向する磁極面に周方向に等間隔に配設された例えば8個のティースの磁極31を備える。
【0029】
さらに、モータ軸4に同軸状に磁性体の円筒形の軸磁路材11が設けられ、軸磁路材11の両端面はロータ3a、3bのヨーク面に接合している。
【0030】
そして、アキシャルギャップモータ1は、ステータ2の表裏両面の各相の励磁コイル8u、8v、8wの順次の通電により、例えばU相の場合、表側の90度間隔の4個のU相のティース52はS極に励磁され、裏側の90度間隔の4個のU相のティース62はN極に励磁され、この裏側のU相のN極から出た磁束が、対向するロータ3bの近傍の磁極31、磁路形成部材4を通ってロータ3aに向かい、ステータ2のU相のS極近傍のロータ3aの磁極からステータ2の表側のU相のS極に向かう。また、V相の場合、ステータ2において、表側のU相のティース52の隣の90度間隔の4個のV相のティース52はS極に励磁され、裏側の90度間隔の4個のV相のティース62はN極に励磁され、裏側のV相のN極から出た磁束が、対向するロータ3bの近傍の磁極31、磁路形成部材4を通ってロータ3aに向かい、ステータ2のV相のS極近傍のロータ3aの磁極からステータ2の表側のV相のS極に向かう。さらに、W相の場合、ステータ2において、表側のV相のティース52の隣の90度間隔の4個のW相のティース52はS極に励磁され、裏側の90度間隔の4個のW相のティース62はN極に励磁され、裏側のW相のN極から出た磁束が、対向するロータ3bの近傍の磁極31、磁路形成部材4を通ってロータ3aに向かい、ステータ2のW相のS極近傍のロータ3aの磁極からステータ2の表側のW相のS極に向かう。
【0031】
このようにして、ステータ2とその表裏のロータ3a、3bとの間でモータ軸4方向に進む立体磁路が構成されてロータ3a、3bが回転してモータ軸4が回転し、アキシャルギャップモータ1が駆動される。
【0032】
なお、本実施形態のアキシャルギャップモータ1は、磁束量を多くしてアキシャルギャップモータ1のトルクアップを図るため、ステータ2に、表裏毎に、または、表裏両面共通に、環状の界磁コイル12を備え、この界磁コイル12に適当な大きさの直流を給電して一定のバイアス磁束を発生するように構成される。
【0033】
つぎに、ステータ2の表裏の各相の励磁コイル8u〜8wの構造および、組み付けについて、さらに説明する。
【0034】
ステータ2の表裏両面の各相の4個の励磁コイル8u〜8wは、いずれも例えば2個1組のカセットコイル81からなる。
【0035】
図2は例えば表側のU相の90度間隔の2個の励磁コイル8uを形成するカセットコイル81を示し、このカセットコイル81は、1本の平角線13を集中巻きした2個の平角線コイル13aによりステータ2の半周分に位置する2個の集中巻きの励磁コイル8uを形成し、両励磁コイル8uの平角線コイル13aを渡り線82により繋いだ構成である。平角線コイル13aは、平角線を、いわゆるアルファ巻きしたものであり、幅の広い面がティース52の周面に対向する向きで、段毎に巻き方向を外周側から内周側、内周側から外周側に交互に変えて外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回した構造である。
【0036】
図3は図2のカセットコイル81の平面図であり、図4の(a)、(b)は図3の励磁コイル8uのB−B線、A−A線の巻き線構造を示す切断面の模式図である。
【0037】
そして、励磁コイル8u〜8wは、それぞれ1段分がほぼ7ターンで、モータ軸4方向に平角線コイル13aを4段に重ねた構成である場合、平角線13の巻き回しを1個の励磁コイル8uで説明すると、図4の(a)、(b)に示すように、励磁コイル8uとしての平角線コイル13aは、1段目は外側から巻き始めて7ターン分巻回し、8ターン目を斜め上方向に巻いて2段目に進み、2段目は内側から巻き始めて14ターン目で外側に達すると、15ターン目を斜め上方向に巻いて3段目に進み、3段目は外側から巻き始めて21ターン目で内側に達すると、22ターン目を斜め上方向に巻いて4段目に進み、4段目は内側から巻き始めて29ターン目で外側に達すると、30ターン目の所定位置から引き出され、このようにして励磁コイル8uがアルファ巻きで形成される。図4(a)、(b)の数字1〜30はターン番号である。
【0038】
さらに、最初の励磁コイル8uの平角線コイル13aを巻き終わると、適当な長さの渡り線82を形成して次の励磁コイル8uの平角線コイル13aが同様にアルファ巻きで形成される。
【0039】
そして、相毎に各2個の励磁コイル8u〜8wそれぞれを渡り線82で繋いだ形状のカセットコイル81を必要数(本実施形態の場合は表裏それぞれ毎に1相当たり2個)用意すると、ステータ2の表裏それぞれにおいて、例えばU相から順に積み重ねるようにしてカセットコイル81の2個の励磁コイル8u〜8wをステータ2の該当する各2個のティース52、62にインシュレータ7を介して装着する。なお、各カセットコイル81は、例えばスピンドル巻きで生産性よく製造できる。
【0040】
つぎに、ステータ2の表側のカセットコイル81によって、ステータ2の表裏の各カセットコイル81の装着についてさらに説明する。なお、各相のカセットコイル81は各相1個ずつの半周分を装着し、つぎに残りの半周分を装着するものとする。また、ステータ2の裏側のカセットコイル81の装着も同様である。
【0041】
図5(a)、(b)は、最初のU相の1個目(ステータ2の半周分)のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、同図(a)のC−C線の断面図である同図(b)に示すように、渡り線82は一方の内側係止体10cのガイド溝14cに沿って配設される。このとき、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9bの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って引き出される。
【0042】
図6(a)、(b)は、さらにV相の1個目のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、V相のカセットコイル81はU相のカセットコイル81の上にずらして重なるように装着され、同図(a)のD−D線の断面図である同図(b)に示すように、その渡り線82は一方の内側係止体10bのガイド溝14bに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9bの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って引き出される。
【0043】
図7(a)、(b)は、さらにW相の1個目のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、W相のカセットコイル81はV相のカセットコイル81の上にU相、V相のカセットコイル81とずらして重なるように装着され、同図(a)のE−E線の断面図である同図(b)に示すように、その渡り線82は一方の内側係止体10aのガイド溝14aに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9aの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って引き出される。
【0044】
図8(a)、(b)は、さらに残りの半周の最初のU相のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、同図(a)のF−F線の断面図である同図(b)に示すように、渡り線82は他方の内側係止体10cのガイド溝14cに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9aの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って1番目のU相のカセットコイル81の引き出し位置とほぼ同じ位置に引き出される。なお、残りの半周の各相の2本の引き出し線83は外側枠体9bの左右それぞれの方向から引き回されるので、外側枠体9aのガイド溝91の数は外側枠体9bの半分の3本である。
【0045】
図9(a)、(b)は、さらに残りの半周のV相のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、このV相のカセットコイル81は前記した残りの半周U相のカセットコイル81の上にU相のカセットコイル81とずらして重なるように装着され、同図(a)のG−G線の断面図である同図(b)に示すように、渡り線82は他方の内側係止体10bのガイド溝14bに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9aの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って1番目のV相のカセットコイル81の引き出し位置とほぼ同じ位置に引き出される。
【0046】
図10(a)、(b)は、さらに残りの半周のW相のカセットコイル81をステータ2に取り付けた状態を示し、このW相のカセットコイル81は前記した残りの半周のV相のカセットコイル81のさらに上にU相、V相のカセットコイル81とずらして重なるように装着され、同図(a)のH−H線の断面図である同図(b)に示すように、渡り線82は他方の内側係止体10aのガイド溝14aに沿って配設され、平角線13の始端、終端の引き出し線83は外側枠体9aの外周部に形成されたそれぞれのガイド溝91に沿って1番目のW相のカセットコイル81の引き出し位置とほぼ同じ位置に引き出される。
【0047】
そして、外側枠体9a、9bに引き出された各相の半周分ずつの端子部が直列または並列に接続され、ステータ2の表側のカセットコイル81の装着が終了し、ステータ2の裏側についても同様にして各相のカセットコイル81が装着される。
【0048】
このようにして組み付けられたアキシャルギャップモータ1の場合、(1)ステータ2の表裏の励磁コイル8u〜8wが平角線13のいわゆるアルファ巻きで集中巻きして形成されるので、ノズル巻きの丸線のコイル体で励磁コイルを形成する場合のようなノズル隙間を設ける必要がなく、ステータ2の面積に対する励磁コイル8u〜8wの占有率が高くなる。また、平角線13のアルファ巻きのコイル体は丸線のコイル体のように内周側および外周側に膨らまず、とくにステータ2の内周側とモータ軸4との空間を狭くしてアキシャルギャップモータ1の体格を小さくできる。
【0049】
(2)各励磁コイル8u〜8wがカセットコイル81で形成されてステータ2の表裏の各ティースに簡単に装着できるので、アキシャルギャップモータ1の組み付け性が向上して生産性が高まる。
【0050】
(3)各カセットコイル81の平角線13の巻き始めと巻き終りがいずれも外周側の位置になるので、巻き終わった平角線13をステータ2の内周側から外周側に引き回す必要がなく、そのため、モータ軸4方向の平角線13の引き回しが不要で、モータ軸4方向にアキシャルギャップモータ1の体格が大きくなることがない。具体的には、平角線13をステータ2の内周側から外周側に引き回すのであれば、ステータ2とロータ3a、3bとのギャップ(隙間)を平角線13の厚み分大きくする必要があり、また、ステータ2の外周側にも平角線13の厚み分の隙間を確保する必要があるが、本実施形態の場合は平角線13をステータ2の内周側から外周側に引き回す必要がないので、その分モータ軸方向にも径方向にもモータ2の体格が小さくなる。
【0051】
(4)平角線13をアルファ巻きして各カセットコイル81の励磁コイル8u〜8wを形成するので、励磁コイル8u〜8wのコーナー部分や渡り線82、引き出し線83の折り曲げ等が容易で厚みも厚くならず、励磁コイル8u〜w等の形成が容易で、しかも、アキシャルギャップモータ1が一層小型、軽量になる。
【0052】
(5)各相の半周部の2個ずつの磁極の励磁コイル8u〜8wが、同じ平角線13の1個のカセットコイル81でそれぞれ継ぎ目なく連続的に形成されるので、バスリングは部分的なものでよく、スリーブ等も削減でき、場合によってはそれらを省略可能であり、部品点数が一層少なくなってアキシャルギャップモータ1は小型、軽量になるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0053】
(6)各カセットコイル81の励磁コイル8u〜8wはインシュレータ7により絶縁が図られる。また、渡り線82、引き出し線83はステータ2の内周側、外周側において相毎に異なる径方向、モータ軸4方向の位置にガイド溝14a〜14c、91の隔壁によって絶縁しつつ保持される。この場合、異なる相の渡り線82、引き出し線83どうし、渡り線82、引き出し線83と他相の励磁コイル8u〜8Wの十分な空間距離および沿面距離を確保でき、相間の確実な絶縁が行なえる。なお、渡り線82の絶縁は前記の隔壁によって行なわれるのでコンパクトであり、ステータ2の内周側に十分なスペースを確保でき、本実施形態の場合、軸磁路材11のスペースを確保できる。また、渡り線82等の振動等による損傷を防止でき絶縁の信頼性を向上できるとともに耐久性を向上できる利点もある。
【0054】
(7)ステータ2の内周側に渡り線82を設けることにより各カセットコイル81の線長を短くでき、その保持部としての内側係止体10a〜10cも小型化する。
【0055】
したがって、アキシャルギャップモータ1の小型、軽量化およびコストダウンに寄与する従来にない画期的な励磁コイル構造を提供することができる。
【0056】
そして、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、各相の励磁コイル8u〜8wは、3個、4個(全部)を1個のカセットコイル82の1本の平角線13で形成してもよく、その場合には、十分な空間距離および沿面距離を確保するように、ガイド溝10a〜10c、91の個数等を適宜増やす等すればよい。
【0057】
ステータ2の駆動相の数やステータ2、ロータ3a、3bの磁極数等は前記実施形態の3相、12極等に限るものではなく、4相以上の多相駆動、18極、24極等であってもよい。
【0058】
つぎに、ステータ2は表または裏の片面にのみ磁極面が形成される片面磁極構成であってもよく、その場合は、例えばそれぞれ1個のステータ2とロータ3aによってアキシャルギャップモータ1が形成される。
【0059】
つぎに、本発明は、アキシャルギャップモータ1とはステータ2やロータ3a、3bの磁極構造が異なる種々のアキシャルギャップモータ、例えば、ステータ2の周方向の各相の磁極がS極とN極を交互に形成する磁極構造のアキシャルギャップモータに同様に適用することができ、さらには、磁極面がステータ2の周側面に配設されるラジアルギャップモータの集中巻きの励磁コイル構造にも同様に適用することができる。
【0060】
そして、本発明は、電気自動車の駆動モータ等の種々の用途のアキシャルギャップモータ、ラジアルギャップモータのステータの励磁コイル構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 アキシャルギャップモータ
2 ステータ
8u〜8w 励磁コイル
13 平角線
13a 平角線コイル
52、62 ティース
81 カセットコイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータにおいて、
前記励磁コイルは平角線コイルにより形成され、
前記平角線コイルは、平角線を、幅の広い面が前記各ティースの周面に対向する向きで、段毎に巻き方向を外周側から内周側、内周側から外周側に交互に変えて外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回した構造であり、
かつ、前記各磁極の前記励磁コイルとしての前記平角線コイルは、少なくとも一部ずつが同じ平角線で連続して形成されたものであることを特徴とするステータ。
【請求項1】
励磁コイルが集中巻きされる複数の磁極のティースを周方向に配設したステータにおいて、
前記励磁コイルは平角線コイルにより形成され、
前記平角線コイルは、平角線を、幅の広い面が前記各ティースの周面に対向する向きで、段毎に巻き方向を外周側から内周側、内周側から外周側に交互に変えて外周側から巻き始めて外周側で巻き終わるように巻回した構造であり、
かつ、前記各磁極の前記励磁コイルとしての前記平角線コイルは、少なくとも一部ずつが同じ平角線で連続して形成されたものであることを特徴とするステータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−188587(P2011−188587A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49234(P2010−49234)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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