説明

ストライカ式プラズマ発生装置及びプラズマ処理装置

【課題】ストライカによる接触作用を長期に亘って安定的に行わせて、ターゲット材料を最大限に利用可能にし、且つ生成プラズマの高品質化を実現することのできるストライカ式プラズマ発生装置及びそれを用いたプラズマ処理装置を提供することである。
【解決手段】プラズマ処理の開始により、ストライカアームの回動動作に移り(ステップS2、S3)、陰極2にストライカチップ35が当接した後もサーボモータ40が駆動し続けて回動動作が継続していく。ストライカアームに加わる負荷量が所定値を超える反転条件が成立すると、モータ40に逆転駆動を指示し、ストライカチップ35を陰極2から離反させる(ステップS4、S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ構成物質の供給源を陰極とし、前記陰極の前方又は周囲に陽極を設け、前記陰極と前記陽極間においてアーク放電を行って前記陰極表面からプラズマを発生させるプラズマ発生装置及び前記プラズマ発生装置による発生プラズマを用いて成膜等のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置に関する。詳細には、本発明は、アーク放電用ストライカ機構を備えたストライカ式プラズマ発生装置及びそれを用いたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマ中で固体材料の表面に薄膜を形成したり、イオンを注入することにより、固体の表面特性が改善されることが知られている。金属イオンや非金属イオンを含むプラズマを利用して形成した膜は、固体表面の耐磨耗性・耐食性を強化し、保護膜、光学薄膜、透明導電性膜などとして有用なものである。特に、カーボンプラズマを利用した炭素膜はダイヤモンド構造とグラファイト構造のアモルファス混晶からなるダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜という)として利用価値が高い。
【0003】
金属イオンや非金属イオンを含むプラズマを発生する方法として、真空アークプラズマ法がある。真空アークプラズマは、陰極と陽極の間に生起するアーク放電で形成され、陰極表面上に存在する陰極点から陰極材料が蒸発し、この陰極蒸発物質により形成されるプラズマである。また、雰囲気ガスとして反応性ガスを導入した場合には、反応性ガスも同時にイオン化される。前記反応性ガスと共に不活性ガス(希ガスという)を導入しても良いし、また前記反応性ガスに代えて前記不活性ガスを導入することもできる。このようなプラズマを用いて、固体表面への薄膜形成やイオンの注入を行って表面処理を行うことができる。
【0004】
一般に、真空アーク放電では、陰極点から陰極材料イオン、電子、陰極材料中性原子団(原子及び分子)といった真空アークプラズマ構成粒子が放出されると同時に、サブミクロン以下から数百ミクロン(0.01〜1000μm)の大きさのドロップレットと称される陰極材料微粒子も放出される。このドロップレットが被処理物表面に付着すると、被処理物表面に形成される薄膜の均一性が失われ、薄膜の欠陥を生じさせ、成膜等の表面処理結果に影響を与える。
【0005】
特開2002−8893号公報(特許文献1)及び特開2002−25794号公報(特許文献2)には従来のプラズマ加工装置が開示されている。
従来、プラズマ加工装置のプラズマ発生部においては、陰極とトリガ電極の間に電気スパークを生起し、陰極と陽極の間に真空アークを発生させてプラズマが生成される。トリガ電極には、ストライカと呼ばれる回動式電気スパーク発生機構が使用されている。
【0006】
図11は特許文献2に開示された、従来の回動式電気スパーク発生機構の一例を示す。プラズマ発生部200には、アーク用電源201に接続された陰極202が配設され、陰極202上にはプラズマ構成物質の供給源(以下、ターゲットと称する)203が設置されている。ストライカ204がターゲット203に対して接触・離反するように回動軸205の回りに回動自在に配置されている。即ち、ストライカ204のストライカアームを所定角度回動させてターゲット203に接触させた後、ストライカアームを反転駆動して離反させている。
【0007】
アーク用電源201からアーク電流を流し、約−30Vのアーク電圧をストライカ204に印加してターゲット203に接触させることにより、陰極202を介して陰極202とストライカ204との間でアーク放電を行なわせてプラズマ206が生成される。プラズマ206はプラズマ発生部200から、湾曲型磁場ダクト207及び直進型磁場ダクト208を通じてプラズマ処理室209に誘導されていく。湾曲型磁場ダクト207及び直進型磁場ダクト208の夫々には磁場発生用直流電源210、211が接続されている。プラズマ処理室209内のステージ212には直流電源214又は高周波電源215による印加電圧が付与される。ステージ212に設置された被処理物213は磁場ダクトを通じて導入されたプラズマ206が照射されて表面処理される。プラズマ処理室209は排気ポンプ216により反応ガスやプラズマ流が室外に排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−8893号公報
【特許文献2】特開2002−25794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記回動式電気スパーク発生機構においては、ストライカ先端部の接触によりアーク放電を繰り返していくうちに、徐々にターゲット材料が摩耗し、接触位置が変化する。しかしながら、従来のストライカ回動駆動は、ストライカアームの回動限度角を予め所定角度に設定して行っていたため、前記摩耗が進行しているときにはストライカの先端がターゲットに的確に接触せず、アーク放電が不十分となったり、不発になったりするといった問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、ストライカによる接触作用を長期に亘って安定的に行わせて、ターゲット材料を最大限に利用可能にし、且つ生成プラズマの高品質化を実現することのできるストライカ式プラズマ発生装置及びそれを用いたプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の形態は、プラズマ構成物質の供給源を陰極とし、前記陰極の前方又は周囲に陽極を設け、回転駆動源により回動自在に軸支されたアームの先端部を前記供給源に接触させてアーク放電を生じさせるストライカと、前記ストライカを前記供給源に対し接触又は離反させる方向に前記回転駆動源を回動制御する回動制御装置を備え、前記アーク放電の発生により前記陰極と前記陽極間にアークプラズマを発生させるプラズマ発生装置において、前記回動制御装置は、前記アームの回動により前記先端部を前記供給源に接触させたとき、前記ストライカに加わる負荷量が所定量を超える反転条件が成立するまで前記接触方向への回動を継続し、前記反転条件が成立したときに前記離反方向に前記アームを反転回動させる回動制御手段からなるプラズマ発生装置である。
【0012】
本発明の第2の形態は、第1形態において、前記回転駆動源の出力軸に過負荷が生じたとき、前記アームに対するトルクの伝達を遮断するトルクリミッタを前記出力軸に設け、前記アームの回動開始からの回動継続時間を計時する計時手段を備え、前記回動制御手段は、前記トルクリミッタによる遮断が生じた後、前記計時手段による計時時間が所定時間に達したことに基づき前記反転条件が成立したと判断する時間経過判断手段を有するプラズマ発生装置である。
【0013】
本発明の第3の形態は、第1形態において、前記回転駆動源の出力軸に過負荷が生じたとき、前記アームに対するトルクの伝達を遮断するトルクリミッタを前記出力軸に設け、前記アームの回動開始からの回動角度を計測する角度計測手段を備え、前記回動制御手段は、前記トルクリミッタによる遮断が生じた後、前記角度計測手段による計測角度が所定角度に達したことに基づき前記反転条件が成立したと判断する回動角度判断手段を有するプラズマ発生装置である。
【0014】
本発明の第4の形態は、第1形態において、前記アームの回動開始からの単位時間当たりのトルク変化量を逐次、抽出して計測するトルク変化量計測手段を備え、前記回動制御手段は、予め定めた規定値を超えるトルク変化量が所定回数以上、連続して計測されたとき前記反転条件が成立したと判断するトルク変化量判断手段を有するプラズマ発生装置である。
【0015】
本発明の第5の形態は、第4形態において、前記回動制御手段は、前記反転条件が成立するまでに、予め定めた規定値を超えるトルク変化量が計測され、且つトルク変化量の超過回数が規定回数に達したとき、トルク変化量の超過分を上乗せした規定値を新たな規定値として更新し、その規定値に基づいて前記反転条件の成立有無を判断する規定値更新処理手段を有するプラズマ発生装置である。
【0016】
本発明の第6の形態は、第5形態において、前記回動制御手段は、前記更新された規定値が上限値に達したか否か判断する上限到達判断手段と、前記更新された規定値が前記上限値に達したと判断したときアラームを発生させるアラーム発生手段とを含むプラズマ発生装置である。
【0017】
本発明の第7の形態は、第4、第5又は第6形態のいずれかにおいて、前記トルク変化量計測手段は、前記回動駆動源用モータの電流値を計測してトルク変化量を求めるモータ電流計測手段からなるプラズマ発生装置である。
【0018】
本発明の第8の形態は、第1〜第7形態のいずれかにおいて、前記アームの素材をステンレス鋼材より高耐熱性を有した耐熱金属材から形成したプラズマ発生装置である。
【0019】
本発明の第9の形態は、第1〜第7形態のいずれかにおいて、前記アームの素材をステンレス鋼材より高いヤング率を有した金属材から形成したプラズマ発生装置である。
【0020】
本発明の第10の形態は、第8又は第9形態において、前記アームの素材をモリブデン、タングステン、チタン、インコネル又はこれらのうち2種以上からなる耐熱合金のいずれかから形成したプラズマ発生装置である。
【0021】
本発明の第11の形態は、第1〜第10形態のいずれかにおいて、前記アームの一端に形成した嵌合孔に前記出力軸の軸端部を軸着して前記アームと前記出力軸を連結し、前記嵌合孔及び前記軸端部の断面形状を非円形にしたプラズマ発生装置である。
【0022】
本発明の第12の形態は、第1〜第10形態のいずれかにおいて、前記嵌合孔及び前記軸端部の夫々の軸方向の中間部に互いに係合する抜け止め係合部を形成したプラズマ発生装置である。
【0023】
本発明の第13の形態は、第1〜第12形態のいずれかに係るプラズマ発生装置と、前記プラズマ発生装置により発生されたプラズマを輸送するプラズマ輸送管と、前記プラズマ輸送管から供給されるプラズマにより被処理物を処理するプラズマ処理部を有するプラズマ処理装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の形態によれば、ストライカ式プラズマ発生装置において、前記回動制御手段により、前記アームの回動により前記先端部を前記供給源に接触させたとき、前記ストライカに加わる負荷量が所定量を超える反転条件が成立するまで前記接触方向への回動を継続し、前記反転条件が成立したときに前記離反方向に前記アームを反転回動させるので、前記供給源(ターゲット)に接触してから前記反転条件が成立した時点で前記ストライカを離反させ、過負荷を与える危険性を排除することができる。従って、本形態においては、前記ストライカによる接触作用を長期に亘って的確に行わせ、ターゲット材料を最大限に有効利用することができる。前記ストライカに加わる負荷量の検出には、前記回転駆動源用モータの駆動電流、トルク変化量やストライカのアーム角度、アーム回動時間等を直接ないし間接的に計測して行うことができる。
【0025】
従来の回動角度の設定範囲を固定する方式では、狭く固定してしまうと、アーク放電の不発や不十分な放電しか生じないといったトラブルを招来する。本発明においては、前記ストライカの接触状態を経てから離反させる前記反転条件を設けているので、アーク放電の不発や不十分な放電が生ずることなく、適切なタイミングでストライカを離反させることができる。
【0026】
本発明に係る所定量は、ストライカ回動の繰り返しに伴ってターゲット材料が消耗する変化を実測して決定するのが好ましい。このとき、実測データにはターゲット材料の種別毎に求めておくことも離反タイミングの精度向上の観点から有効となる。また、前記回転駆動源にはサーボモータ、パルスモータ等の電動機を使用することができる。
【0027】
例えば、新品のターゲットを使用し始める初期の段階では、ストライカの接触後、離反するまで接触し続けるため、ストライカアームの回転モータへの負荷が増大して、モータ破損を生じたりストライカが傷んだり、更にターゲット自体が損傷する危険性が生ずる。そこで、第2形態によれば、回転モータのトルク過負荷を瞬断可能な負荷制限手段として好適なトルクリミッタを前記出力軸に設けて、前記時間経過判断手段により、前記トルクリミッタによる遮断が生じた後、前記計時手段による計時時間が所定時間に達したことに基づき前記反転条件が成立したと判断するので、例えば、前記ストライカの回動開始時からの経過時間をタイマ監視することによって、前記反転条件を正確に把握して前記ストライカによる接触作用を長期に亘って的確に行わせることができる。
【0028】
本発明の第3の形態によれば、前記回動角度判断手段により、前記トルクリミッタによる遮断が生じた後、前記角度計測手段による計測角度が所定角度に達したことに基づき前記反転条件が成立したと判断するので、例えば、前記ストライカの回動開始時からの回動角度を角度検出センサにより計測することによって、前記反転条件を正確に把握して前記ストライカによる接触作用を長期に亘って的確に行わせることができる。前記角度検出センサには、ストライカアームの変位を検出する光学センサ、磁気センサ、接触センサ等を使用することができる。
【0029】
本発明の第4の形態によれば、前記トルク変化量計測手段により前記アームの回動開始からの単位時間当たりのトルク変化量(微分変化量)を逐次、抽出して計測し、前記トルク変化量判断手段により、予め定めた規定値を超えるトルク変化量が所定回数以上、連続して計測されたとき前記反転条件が成立したと判断するので、何らかの原因に起因して発生した外乱ノイズの影響でトルク変化量が検出されてしまっても、前記規定値を超えるトルク変化量が所定回数以上、連続して計測されない限りノイズによるものとして排除することができ、反転条件としてトルクの設定を行った場合の誤作動を防止することができる。
【0030】
反転条件としてトルクの設定を行う場合には、前記規定値を経験値等から予め想定して定めたとしても、長期稼働による経時変化を十分に予測して定めるには困難を伴う。そこで、本発明の第5の形態によれば、前記規定値更新処理手段により、前記反転条件が成立するまでに、予め定めた規定値を超えるトルク変化量が計測され、且つトルク変化量の超過回数が規定回数、例えば全体の70%に達したとき、トルク変化量の超過分を上乗せした規定値を新たな規定値として更新し、その規定値に基づいて前記反転条件の成立有無を判断するので、最初に定めた規定値を超えるトルク変化量が計測される事態が生じたとき、トルク変化量の超過分を上乗せした規定値を新たな規定値として更新して、経時変化に追随させることができ、より長期に亘り高精度に反転条件の成立判断を行うことができる。上乗せされる超過分は予め定めた上乗せ値を用いてもよいし、複数検出した値のうちの最大値を選択して決定されてもよい。
【0031】
本発明の第6の形態によれば、前記更新された規定値が上限値に達したか否かを前記上限到達判断手段により判断して、前記更新された規定値が前記上限値に達したと判断したとき前記アラーム発生手段によりアラームを発生させるので、必要以上に規定値の更新を行うことなく、前記上限値への到達により装置異常やトラブルの発生の可能性等をアラーム報知することができ、ストライカ式プラズマ発生装置の安全性の向上と長期安定稼働の維持、促進に寄与する。
【0032】
本発明の第7の形態によれば、前記モータ電流計測手段により、前記回動駆動源用モータの電流値を計測してトルク変化量を求めるので、微小時間当たりのトルクの微分変化量を安定且つ精密に行って前記反転条件を正確に把握でき、前記ストライカによる接触作用を長期に亘って的確に行わせることができる。
【0033】
ストライカ式プラズマ発生装置において、ストライカ回動動作を繰り返し行うと、アーク放電による発熱のためにストライカアームの温度が高くなる。従来のストライカにはステンレス鋼(SUS)を使用していたため、高温により析出物が表面に生じて、プラズマ発生装置の装置特性に悪影響を与えていた。従って、本発明の実施によって前記ストライカによる接触作用を長期化したときに、係るストライカ材質が生成プラズマの品質に及ぼす影響は少なくない。そこで、本発明の第8の形態によれば、前記アームの素材をステンレス鋼材より高耐熱性を有した耐熱金属材から形成したので、前記ストライカ回動動作の繰り返しに伴う高温化による析出物の生成を抑制でき、高品質のプラズマ生成を行うことができる。
【0034】
従来、ストライカには例えばSUS304使用していたが、例えばSUS304のヤング率が193〜197GPaであるため、ストライカアームを約90°回動して接触動作させるハンマリング操作時に発生するアーム振幅が大きくなる傾向にあった。そのため、ストライカによる初期放電の制御性の低下を招いていた。そこで、本発明の第9の形態によれば、前記アームの素材をステンレス鋼材より高いヤング率を有した金属材から形成したので、上記接触動作させる時に発生するアーム振幅が小さくなり、ストライカによる初期放電の制御性を向上させることができる。
【0035】
本発明の第10の形態によれば、モリブデン、タングステン、チタン、インコネル又はこれらのうち2種以上からなる耐熱合金のいずれかの高融点金属材から形成した前記アームにより、耐熱性及びアーム振幅の抑制性に問題のあるSUSに代えて、耐熱性及びアーム振幅の抑制機能に優れたストライカアームを構成でき、ストライカの繰り返し使用に対する耐久性を具備させることができる。
【0036】
ストライカアームは、従来、前記出力軸の丸材をアームの軸穴に挿着していたが、丸材の為固定の際に回転方向の位置合わせが困難である欠点があった。そこで、本発明の第11の形態によれば、前記アームの一端に形成した嵌合孔に前記出力軸の軸端部を軸着して前記アームと前記出力軸を連結し、前記嵌合孔及び前記軸端部の断面形状を非円形にしたので、回転方向への位置が一意且つ正確に決まり回動精度の向上、メンテナンス性の向上に寄与する。
【0037】
本発明の第12の形態によれば、前記嵌合孔及び前記軸端部の夫々の軸方向の中間部に互いに係合する抜け止め係合部を形成したので、前記ストライカ回動動作の繰り返しに伴って前記出力軸の軸方向へのずれが生じず、安定的に初期放電を行わせることができ、生成プラズマの品質向上に寄与する。
【0038】
本発明の第13の形態によれば、第1〜第12形態のいずれかに係るプラズマ発生装置により安定的に初期放電を行わせて発生されたプラズマを、前記プラズマ輸送管を経由して前記プラズマ処理部に供給して該プラズマによる成膜処理等を行えるので、アーク放電不良を起こすことなく安定稼働を行って成膜等の処理効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係るストライカ式プラズマ発生装置が設置されたプラズマ処理装置の断面概略構成図である。
【図2】前記プラズマ発生装置のプラズマ発生部4周辺の断面概略図である。
【図3】前記プラズマ発生装置に用いるストライカ回動式電気スパーク発生機構の概略構成図である。
【図4】ストライカ回動式電気スパーク発生機構のストライカ5の構造図である。
【図5】ストライカ5のモータ駆動機構構成図である。
【図6】前記プラズマ処理装置の制御ブロック図である。
【図7】本発明に係るストライカ回動駆動制御の基本フローチャートである。
【図8】前記プラズマ処理装置における本実施形態におけるトルク変化量(微分変化量)管理方式のストライカ駆動制御フローチャートである。
【図9】前記プラズマ処理装置におけるタイマ監視方式のストライカ回動駆動制御フローチャートである。
【図10】前記プラズマ処理装置における回動角度管理方式のストライカ回動駆動制御フローチャートである。
【図11】従来のストライカ式プラズマ発生装置の断面概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態に係るストライカ式プラズマ発生装置及びプラズマ処理装置を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0041】
図1は本発明に係るストライカ回動式のプラズマ発生装置1が設置されたプラズマ処理装置の断面概略構成図である。プラズマ発生部4には、プラズマ構成物質の供給源を陰極(ターゲット)2とし、陰極2の前方側には筒状の陽極3が配設されている。トリガ電極のストライカ5は陰極2に対し接近・後退可能に、回動自在に設けられている。ストライカ5のアーム素材にはモリブデンを使用している。陽極3は筒内壁を多分割構成とした電極筒体からなる。真空雰囲気下で陰極2とストライカ5の間に電気スパークを生起し、陰極2と陽極3の間に真空アークを発生させてプラズマPが生成される。陰極2は、プラズマ構成物質の供給源であり、その形成材料は、導電性を有する固体なら特に限定されず、金属単体、合金、無機単体、無機化合物(金属酸化物・窒化物)等を単独又は2種以上混合して用いることができる。プラズマ発生部4における真空アーク放電によりターゲット材料イオン、電子、陰極材料中性粒子(原子及び分子)といった真空アークプラズマ構成粒子が放出されると同時に、サブミクロン以下から数百ミクロン(0.01〜1000μm)の大きさの陰極材料微粒子(以下「ドロップレットD」と称する)も放出される。生成されたプラズマPは、プラズマ進行路6を進行し、屈曲部7において屈曲磁場発生器8、8により形成された磁場によって第2進行路へ進行する。このとき、ドロップレットDは、電気的に中性であり磁場の影響を受けないため、ドップレット進行路9を直進し、ドロップレット捕集部10に捕集される。屈曲部7には第2進行路に接続する直進管路が設けられ、ドップレット進行路9等のプラズマPの各進行路の内壁には、ドロップレットDが衝突して付着するバッフル11、12及び17が設けられている。なお、前記直進管路にプラズマ進行磁場を発生させる磁場発生器18が設置されている。
【0042】
第2進行路は内壁に複数のバッフル12が設けられた拡径管13からなり、拡径管13にはプラズマ進行磁場を発生させる磁場発生器20が設置されている。プラズマPが拡径管13内を進行するとき、残存するドロップレットDが前記バッフル12に衝突して付着し、更にドロップレットDが除去される。拡径管13は前記直進管路に対して傾斜配置されている。拡径管13の終端は縮径管23を介してプラズマ処理部15に接続されている。ドロップレットDが除去されたプラズマPは磁場発生器14、14の磁場によりプラズマ処理部15に供給され、被処理物16をプラズマ処理することができる。縮径管23内にもバッフル19が設置されている。プラズマ処理部15には、ガス導入システム(図示せず)により必要に応じて反応性ガスが導入され、ガス排気システム(図示せず)により反応ガスやプラズマ流が排気される。なお、本実施形態では、プラズマ発生部4とプラズマ処理部15の間に複数に屈曲した進行路を設けているが、本発明はこれに限らず略L字状の進行路等を備えた各種プラズマ処理装置に適用することができる。
【0043】
図2はプラズマ発生部4周辺の断面概略図である。同図の(2A)に示すように、ストライカ5は回動軸24を中心に揺動自在に軸支されたストライカアームからなる。電源25により通電26、27を介して陽極内壁28及びストライカ5と陰極2のターゲットの間に電圧が印加される。プラズマ発生部外壁29は陽極内壁28と接触しておらず、外壁29の上下端に取着した絶縁部材30、31により電気的中性が保たれている。プラズマ発生部外壁29のプラズマ出口側にはプラズマ進行路6の管路端33が接続されている。陽極3の電極筒体は陰極2側にて開放され空隙34が形成されている。
【0044】
実線で示す接触位置にあるストライカを破線で示す離反方向へ引き離すことにより、陰極2の放電面32と陽極内壁28の間に真空アーク放電が誘起される。ストライカ5は回転駆動源(図示せず)の回転駆動を受けて揺動し、離反した位置にあるストライカ5を放電面32に接触させる場合、回転駆動源(後述の図5のモータ40)により接触したストライカのトルク反力を検出し、接触状態にあることが判断される。更に、プラズマ発生部4のプラズマ出口側には、フィルタコイル22が配設されており、プラズマ進行磁場B2が形成される。ターゲットコイル21により発生する安定化磁場B1は、プラズマ進行磁場B2とは逆相(カプス)に形成されており、安定したプラズマの生成が可能になる。図2の(2B)に示すように、ターゲットコイル21により発生する安定化磁場B1が同相(ミラー)の場合、アークスポットの安定性は低下するが、プラズマの生成効率が向上することが分かっている。
【0045】
図3はプラズマ発生装置1に用いるストライカ回動式電気スパーク発生機構の概略構成を示す。図4は同ストライカ回動式電気スパーク発生機構のストライカ5の構造を示す。図4(4A)はストライカ5の側面を示し、同図(4B)はストライカ5の正面を示す。図5はストライカ5のモータ駆動機構を示す。
ストライカ5は約90°(最大95°)の範囲で回動自在に軸支されていて、起立待機状態から揺動して陰極ターゲット面を叩く長さを備えたストライカアームからなる。起立待機状態では、ストライカ5は陽極3の出入り口(図示せず)より陽極壁の外側に退避する位置に保持される。ストライカアームの駆動側端部はモータ40の出力軸36に連結されている。ストライカアームの作用端部にはストライカチップ35が取着されている。ストライカチップ35には陰極2と同種又は異種の導電性物質が使用される。本実施形態ではカーボン陰極に対してカーボンチップをストライカチップ35に使用している。陽極3もカーボン製であり、陰極2と陽極3の間にアーク電源37が接続されている。プラズマ発生部4全体は電気的中性状態に保持されている。ストライカ5にもアーク電源37が印加される。陰極ターゲット面を叩く初期放電時には150Vが印加され、初期放電後は25Vに印加電圧が切り換えられる。
【0046】
図4の(4A)に示すように、モータ40の出力軸36は半円と三角形状を組み合わせた非円形の断面形状を有する。これに合わせて、ストライカアームの駆動側端部にも同様の形状の嵌合孔が穿設されている。従って、該駆動側端部に形成した非円形嵌合孔に同形状の非円形出力軸36の軸端部を軸着して、ストライカアームと出力軸36を連結したので、回転方向への位置が一意且つ正確に決まり回動精度の向上、メンテナンス性の向上に寄与する。係る非円形形状に限らず、多角形状、非対称四辺形等の断面形状にすれば同様の効果を奏する。
【0047】
図4の(4B)に示すように、モータ40の出力軸36の先端中間には前記嵌合孔内中間の突起38に嵌合する穴39が穿設されている。従って、突起38に穴39が嵌合する構造によって、ストライカアームと出力軸36の軸方向の中間部に互いに係合する抜け止め係合部を形成したので、ストライカ回動動作の繰り返しに伴って出力軸36の軸方向へのずれが生じず、安定的に初期放電を行わせることができ、生成プラズマの品質向上を寄与させることができる。
図5に示すように、モータ40の出力軸36にはトルクリミッタ41が取着されている。トルクリミッタ41は固定部42に固定されている。
【0048】
図6は本実施形態のプラズマ処理装置の制御ブロック図を示す。
プラズマ処理装置の制御部はマイクロプロセッサで構成されており、CPU100、各種制御プログラムが格納されたROM101、制御データのワークメモリであるRAM102を有する。CPU100には、モータ40のコントローラ103が接続されている。モータ40はモータ本体105と、モータ本体105に直結されたエンコーダ106からなる。コントローラ103には、エンコーダ106から発生するパルスをカウントするカウンタ104が内蔵されている。コントローラ103はカウンタ104により読み取ったエンコーダパルスの進み具合に応じてサーボモータの駆動制御を行う。コントローラ103は、モータ本体105のモータ駆動に応じて供給する駆動電流値をCPU100に出力する。また、CPU100にはインターフェース111を介して角度検出センサ112、タイマ113等の外部出力が入力可能になっている。更に、CPU100にはインターフェース107を介してキー設定手段108の入力データが入力可能になっており、また、インターフェース109を介して各種データをディスプレイ108に表示出力可能になっている。
【0049】
上記構成のストライカ回動式電気スパーク発生機構を用いたストライカ回動駆動制御処理を以下に説明する。
本発明に係る回動制御装置はCPU100及びCPU100により実行されるストライカ回動駆動制御の実行プロセスにより構成される。
【0050】
図7は本発明に係るストライカ回動駆動制御の基本フローチャートを示す。
ストライカ回動駆動制御はまず、接触後のストライカ離反タイミングを規定する反転条件の設定を行ってから行われる(ステップS1)。反転条件の設定にはキー設定手段108を用いて行うことができる。プラズマ処理の開始により、モータ40を正転起動してストライカアームが起立待機状態から回動動作に移る(ステップS2、S3)。ストライカの回動が進行していくと、陰極2にストライカチップ35が当接する。更にモータ40が駆動し続けて回動動作が継続していく。反転条件が成立すると、モータ40に逆転駆動を指示し、ストライカチップ35を陰極2から離反させる離反動作に移行し、待機位置に戻ったときモータ40の駆動を停止する(ステップS4〜S6)。
【0051】
図8は本実施形態におけるトルク変化量(微分変化量)管理方式のストライカ駆動制御処理を示す。トルク変化量管理方式では、モータ40の駆動電流値変化から、一定時間間隔(例えば、1秒)で、モータトルクの微分変化値を逐次、計測する。反転条件としてモータトルク変化量の初期規定値Dの設定を行う(ステップS11)。本実施形態では、規定値Diを初期規定値Dから上限値まで随時更新処理していく更新処理を行う。プラズマ処理の開始により、モータ40を正転起動してストライカアームが起立待機状態から回動動作に移る(ステップS12、S13)。このとき、トルク変化量の逐次計測を開始し、ストライカ駆動停止まで逐次計測を上記一定時間ごとに繰り返す。ついでトルク変化量が規定値に達したか否か判断する。計測したトルク変化量が規定値を超過している場合にはその連続回数がカウントされる(ステップS16)。計測したトルク変化量が連続して3回、規定値を超過しているときには反転条件の成立として、モータ40に逆転駆動を指示し、ストライカチップ35を陰極2から離反させる離反動作に移行し、待機位置に戻ったときモータ40の駆動を停止する(ステップS17〜S19)。
【0052】
トルク変化量管理方式によれば、ストライカアームの回動開始からの単位時間当たりのトルク変化量(微分変化量)を逐次、抽出して計測し、予め定めた規定値を超えるトルク変化量が3回数以上、連続して計測されたとき反転条件が成立したと判断する。従って、何らかの原因に起因して発生した外乱ノイズの影響でトルク変化量が検出されてしまっても、規定値を超えるトルク変化量が3回以上、連続して計測されない限りノイズによるものとして排除することができ、反転条件としてトルクの設定を行った場合の誤作動を防止することができる。特に、回動駆動源用モータの電流値を計測してトルク変化量を求めるので、微小時間当たりのトルクの微分変化量を安定且つ精密に行って前記反転条件を正確に把握でき、前記ストライカによる接触作用を長期に亘って的確に行わせることができる。
【0053】
規定値Diを初期規定値Dから上限値まで随時更新処理していく更新処理はステップS20〜S21にて行われる。反転条件としてトルクの設定を行う場合には、規定値を経験値等から予め想定して定めたとしても、長期稼働による経時変化を十分に予測して定めるには困難を伴うので、上記更新処理を行って随時、補正する。即ち、3回連続して発生していないが、超過計測が3回連続でなく非連続的に4回行われたとき、その時点での規定値Diに超過分ΔDが上乗せされて、新たな規定値としてRAM102に記憶、更新される(ステップS14)。上乗せされる超過分ΔDは複数検出した値のうちの最大値を選択して決定される。なお、超過分ΔDには、予め定めた固定の上乗せ値を用いてもよい。
【0054】
上記規定値更新処理によれば、反転条件が成立するまでに、規定値を超えるトルク変化量が計測され、且つトルク変化量の超過回数が規定回数4に達したとき、トルク変化量の超過分を上乗せした規定値を新たな規定値として更新し、その規定値に基づいて反転条件の成立有無を判断するので、最初に定めた規定値を超えるトルク変化量が計測される事態が生じたとき、トルク変化量の超過分を上乗せした規定値を新たな規定値として更新して、経時変化に追随させることができ、より長期に亘り高精度に反転条件の成立判断を行うことができる。
【0055】
トルク変化量を計測することにより、トルク異常に関係した異常検出が可能になることに着目し、上記規定値更新処理にアラーム処理を付加している。即ち、更新された規定値が上限値に達したか否かを判断して(ステップS22)、更新された規定値が上限値に達したと判断したとき、ブザー(図示せず)による警報音やディスプレイ108画面の警告表示によってアラームを発生させる。従って、必要以上に規定値の更新を行うことなく、上限値への到達により装置異常やトラブルの発生の可能性等をアラーム報知することができ、ストライカ式プラズマ発生装置の安全性の向上と長期安定稼働の維持、促進に寄与する。
【0056】
各種反転条件に応じたストライカ回動駆動制御例を以下に示す。図9はタイマ監視方式のストライカ駆動制御処理を示す。
タイマ監視方式では、タイマ113の計時時間に基づいて駆動制御が行われ、反転条件として回動開始からの回動継続時間の上限値Tの設定を行う(ステップS41)。上限値Tは、平均的に90°を超えて回動した時点でターゲット消耗と判断されるとき、その継続時間の平均値に1秒を上積みして決定される。プラズマ処理の開始により、サーボモータ40を正転駆動してストライカアームが起立待機状態から回動動作に移る(ステップS42、S43)。ついで、トルクリミッタ41が働いて過負荷を遮断した後(ステップS44)、タイマ113による回動継続時間が設定時間Tに達したか否か判断され、設定時間Tに達したとき反転条件の成立として、サーボモータ40に逆転駆動を指示し、ストライカチップ35を陰極2から離反させる離反動作に移行し、待機位置に戻ったときサーボモータ40の駆動を停止する(ステップS45〜S47)。トルクリミッタ41は電動機のトルク過負荷を瞬断可能な負荷制限手段として好適であり、トルクリミッタ41を出力軸36に設けることにより、前記反転条件の成立までの期間、モータトルクの負担を確実に解消することができるので、プラズマ発生機構の安定動作を維持して長寿命化を図ることができる。
【0057】
タイマ監視方式によれば、ステップS45、S46に対応する時間経過判断手段により、トルクリミッタ41による遮断が生じた後、タイマ113による計時時間が設定時間Tに達したことに基づき反転条件が成立したと判断するので、ストライカ5の回動開始時からの経過時間をタイマ監視して反転条件を正確に把握でき、ストライカ5による接触作用を長期に亘って安定的に行うことができる。
【0058】
図10はストライカ回動角度検出方式のストライカ駆動制御処理を示す。
ストライカ回動角度検出方式では、図3に示すように、ストライカアーム起立待機位置より右側に配置された角度検出センサ112の出力に基づいて駆動制御が行われ、反転条件としてストライカアーム起立待機位置からの回転角度Aの設定を行う(ステップS31)。角度検出センサ112の設置位置は、ストライカアーム起立待機位置から僅か右方に設定される。図8及び図9の場合と同様に、プラズマ処理の開始により、モータ40を正転駆動してストライカアームが起立待機状態から回動動作に移る(ステップS32、S33)。ついで、トルクリミッタ41が働いて過負荷を遮断した後(ステップS34)、設定回転角度Aに達したか否かが判断され、Aに達したとき反転条件が成立したと判断されて、モータ40に逆転駆動を指示し、ストライカチップ35を陰極2から離反させる離反動作に移行し、待機位置に戻ったときサーボモータ40の駆動を停止する(ステップS35〜S37)。
【0059】
ストライカ回動角度検出方式によれば、ステップS35、S36に対応する回動角度判断手段により、トルクリミッタ41による遮断が生じた後、角度検出センサ112の出力に基づく計測回動角度が設定角度に達したとき反転条件の成立と判断するので、ストライカ5の回動開始時からの回動角度を角度検出センサにより計測することによって、反転条件を正確に把握してストライカ5による接触作用を長期に亘って安定的に行うことができる。前記角度検出センサには、ストライカアームの変位を検出する光学センサの他に、磁気センサ、接触センサ等を使用することができる。
【0060】
図1のプラズマ処理装置においては、ストライカアーム素材にモリブデンを使用している。従って、従来のSUSアームと比較して、高耐熱性で高ヤング率の構成とし、しかも高融点材からなるストライカアームを用いているので、アーク放電に伴う高温化による析出物の生成を抑制でき、高品質のプラズマ生成を行うことができる。更に、モリブデンアームでは、ストライカ5を陰極2に接触動作させるハンマリング操作時に発生するアーム振幅が小さくなり、ストライカ5による初期放電の制御性を向上させることができる。
【0061】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、ストライカによる接触作用を長期に亘って安定的に行わせて、ターゲット材料を最大限に利用可能にし、且つ生成プラズマの高品質化を実現することのできるストライカ式プラズマ発生装置を提供することができる。また、本発明に係るプラズマ処理装置によれば、前記ストライカ式プラズマ発生装置を搭載して、安定稼働を実現でき、しかも高品質プラズマによるプラズマ処理が行えるので、プラズマ中で固体材料の表面に欠陥や不純物が格段に少ない高純度の薄膜を形成したり、プラズマを照射することにより、固体の表面特性を欠陥や不純物を付与することなく、均一に改質することができ、例えば固体表面における耐磨耗性・耐食性強化膜、保護膜、光学薄膜、透明導電性膜などを高品質かつ高精度に形成することができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 プラズマ発生装置
2 陰極
3 陽極
4 プラズマ発生部
5 ストライカ
6 プラズマ進行路
7 屈曲部
8 屈曲磁場発生器
9 ドップレット進行路
10 ドロップレット捕集部
11 バッフル
12 バッフル
13 拡径管
14 磁場発生器
15 プラズマ処理部
16 被処理物
17 バッフル
18 磁場発生器
19 バッフル
20 磁場発生器
21 ターゲットコイル
22 フィルタコイル
23 縮径管
24 回動軸
25 電源
26 通電
27 通電
28 陽極内壁
29 外壁
30 絶縁部材
31 絶縁部材
32 放電面
33 管路端
34 空隙
35 ストライカチップ
36 出力軸
37 アーク電源
38 突起
39 穴
40 モータ
41 トルクリミッタ
42 固定部
100 CPU
101 ROM
102 RAM
103 コントローラ
104 カウンタ
105 モータ本体
106 エンコーダ
107 インターフェース
108 キー設定手段
109 インターフェース
110 ディスプレイ
111 インターフェース
112 角度検出センサ
113 タイマ
200 プラズマ発生部
201 アーク用電源
202 陰極
203 ターゲット
204 ストライカ
205 回動軸
206 プラズマ
207 湾曲型磁場ダクト
208 直進型磁場ダクト
209 プラズマ処理室
210 直流電源
211 直流電源
212 ステージ
213 被処理物
214 直流電源
215 高周波電源
216 排気ポンプ
P プラズマ
B1 安定化磁場
B2 プラズマ進行磁場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ構成物質の供給源を陰極とし、前記陰極の前方又は周囲に陽極を設け、回転駆動源により回動自在に軸支されたアームの先端部を前記供給源に接触させてアーク放電を生じさせるストライカと、前記ストライカを前記供給源に対し接触又は離反させる方向に前記回転駆動源を回動制御する回動制御装置を備え、前記アーク放電の発生により前記陰極と前記陽極間にアークプラズマを発生させるプラズマ発生装置において、前記回動制御装置は、前記アームの回動により前記先端部を前記供給源に接触させたとき、前記ストライカに加わる負荷量が所定量を超える反転条件が成立するまで前記接触方向への回動を継続し、前記反転条件が成立したときに前記離反方向に前記アームを反転回動させる回動制御手段からなることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記回転駆動源の出力軸に過負荷が生じたとき、前記アームに対するトルクの伝達を遮断するトルクリミッタを前記出力軸に設け、前記アームの回動開始からの回動継続時間を計時する計時手段を備え、前記回動制御手段は、前記トルクリミッタによる遮断が生じた後、前記計時手段による計時時間が所定時間に達したことに基づき前記反転条件が成立したと判断する時間経過判断手段を有する請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記回転駆動源の出力軸に過負荷が生じたとき、前記アームに対するトルクの伝達を遮断するトルクリミッタを前記出力軸に設け、前記アームの回動開始からの回動角度を計測する角度計測手段を備え、前記回動制御手段は、前記トルクリミッタによる遮断が生じた後、前記角度計測手段による計測角度が所定角度に達したことに基づき前記反転条件が成立したと判断する回動角度判断手段を有する請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記アームの回動開始からの単位時間当たりのトルク変化量を逐次、抽出して計測するトルク変化量計測手段を備え、前記回動制御手段は、予め定めた規定値を超えるトルク変化量が所定回数以上、連続して計測されたとき前記反転条件が成立したと判断するトルク変化量判断手段を有する請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記回動制御手段は、前記反転条件が成立するまでに、予め定めた規定値を超えるトルク変化量が計測され、且つトルク変化量の超過回数が規定回数に達したとき、トルク変化量の超過分を上乗せした規定値を新たな規定値として更新し、その規定値に基づいて前記反転条件の成立有無を判断する規定値更新処理手段を有する請求項4に記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記回動制御手段は、前記更新された規定値が上限値に達したか否か判断する上限到達判断手段と、前記更新された規定値が前記上限値に達したと判断したときアラームを発生させるアラーム発生手段とを含む請求項5に記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
前記トルク変化量計測手段は、前記回動駆動源用モータの電流値を計測してトルク変化量を求めるモータ電流計測手段からなる請求項4、5又は6に記載のプラズマ発生装置。
【請求項8】
前記アームの素材をステンレス鋼材より高耐熱性を有した耐熱金属材から形成した請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項9】
前記アームの素材をステンレス鋼材より高いヤング率を有した金属材から形成した請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項10】
前記アームの素材をモリブデン、タングステン、チタン、インコネル又はこれらのうち2種以上からなる耐熱合金のいずれかから形成した請求項8又は9に記載のプラズマ発生装置。
【請求項11】
前記アームの一端に形成した嵌合孔に前記出力軸の軸端部を軸着して前記アームと前記出力軸を連結し、前記嵌合孔及び前記軸端部の断面形状を非円形にした請求項1〜10のいずれかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項12】
前記嵌合孔及び前記軸端部の夫々の軸方向の中間部に互いに係合する抜け止め係合部を形成した請求項1〜11のいずれかに記載のプラズマ発生装置。
【請求項13】
前記請求項1〜12のいずれかに記載のプラズマ発生装置と、前記プラズマ発生装置により発生されたプラズマを輸送するプラズマ輸送管と、前記プラズマ輸送管から供給されるプラズマにより被処理物を処理するプラズマ処理部を有することを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−138671(P2011−138671A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297331(P2009−297331)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【特許番号】特許第4576476号(P4576476)
【特許公報発行日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000229830)株式会社フェローテック (25)
【Fターム(参考)】