説明

ストラットタワーの上部構造

【課題】ストラットタワー上端面の薄肉化を達成しつつストラットの支持強度を十分に確保できるストラットタワーの上部構造の提供を図る。
【解決手段】ストラットタワー1の上端面4を、ストラット支持部材5とストラット支持部材5とによって構成し、連結部材6の車内側端部6aをストラット支持部材5の車外側端部5aの下面に重ねて接合する。連結部材6に、第1の前・後側フランジ部6F1、6F2と第1の内側フランジ部6F3と第1の外側フランジ部6F4とを設けて、各フランジ部6F1〜6F4を連続形成する。これにより、連結部材6の周囲を各フランジ部6F1〜6F4が連続して取り囲むため、連結部材6の曲げ剛性や捩り剛性を高めることができ、ストラットタワー1の上端面4の薄肉化を達成しつつストラットの支持強度を十分に確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のストラットタワーの上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサスペンションに備わるストラット(以下、ストラットとはショックアブソーバを含むものとする)は、ストラットタワーの上端面に取り付けて、該ストラットタワーでストラットの上端部を支持するようになっている。この場合、ストラットタワーの上端面を、ストラットの上端部を連結するトレー状のストラット支持部材(スプリングサポート部)と、このスプリングサポート部の車外側端部に外嵌してフードリッジアッパメンバに接合する連結部材(ガセット)と、によって構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−251758号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来のストラットタワーの上部構造では、ストラット支持部材を、これの車外側端部に単に重ね合わせて接合した連結部材を介して車体側のフードリッジアッパメンバに連結してある。このため、サスペンションの上下方向荷重が入力されるストラット支持部材の強度を確保しつつ剛性を高めるためには、そのストラット支持部材や前記連結部材の板厚増加が余儀なくされ、車体重量の増加やコストアップの原因となる。
【0004】
そこで、本発明は、ストラットタワー上端面の薄肉化を達成しつつストラットの支持強度を十分に確保できるストラットタワーの上部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ストラットを支持するストラット支持部材と、一端が該ストラット支持部材の車外側に結合されると共に、他端が車体に連結される連結部材と、を備えた自動車のストラットタワーの上部構造において、前記連結部材に、前後両側部を上下方向に折曲した第1の前・後側フランジ部と、車内側端部を上下方向に折曲し、前記第1の前・後側フランジ部の車内側端部を前後方向に一体に連結する第1の内側フランジ部と、を形成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前記連結部材に、前記第1の前・後側フランジ部の車内側端部を前後方向に一体に連結する第1の内側フランジ部を形成しているため、連結部材の曲げ剛性や捩り剛性を高めることができる。そして、このように剛性が高められた連結部材にストラット支持部材を重ねて接合したことにより、そのストラット支持部材の剛性をも高めることができる。従って、これらストラット支持部材および連結部材で構成されるストラットタワーの上端面の支持強度を増大できるため、そのストラットタワー上端面の薄肉化を達成しつつストラットの支持強度を十分に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0008】
[第1実施形態]
図1〜図5は本発明にかかるストラットタワーの上部構造の第1実施形態を示し、図1はストラットタワーの斜視図、図2はストラット支持部材と連結部材を車内側から見た分解斜視図、図3はストラット支持部材と連結部材との接合状態を車両後方から見た斜視図、図4は図3中A−A線に沿った断面を概略的に示す説明図、図5は連結部材のフランジ部無しの場合を模式的に示す図4に対応した比較説明図である。
【0009】
図1は、フードを開いてエンジンルーム内のストラットタワー1を見た状態を示し、このストラットタワー1は図外のストラットを収納するストラットハウジング2が立ち上がっている。ストラットタワー1の上端面4はフードリッジアッパメンバ3近傍の高さに配置し、その上端面4にストラットの上端部を取り付けるようになっている。
【0010】
ストラットタワー1の上端面4を、ストラットの上端部を支持するストラット支持部材5と、このストラット支持部材5を車体に連結する連結部材6と、によって構成し、連結部材6の車内側端部6aをストラット支持部材5の車外側端部5aの下面に重ねて接合してある。
【0011】
ストラット支持部材5は、図2に示すように、中央部分にストラット取付座面7を形成してあり、そのストラット取付座面7にストラット取付穴7aを形成してある。
【0012】
そして、ストラット支持部材5の前後両側5b、5cおよび車内側端部5dに、それぞれ下方に折曲した第2の前・後側フランジ部5F1、5F2および第2の内側フランジ部5F3を連続させて形成してある。
【0013】
一方、連結部材6は、図2に示すように、前後両側部6b、6cを上下方向に折曲した第1の前・後側フランジ部6F1、6F2と、車内側端部6aを上下方向に折曲した第1の内側フランジ部6F3と、車外側端6dに車体に接合する第1の外側フランジ部6F4と、を設けてある。
【0014】
第1の外側フランジ部6F4は、連結部材6の車外側端6dを上方および前・後両側方に折曲して形成してあり、図1に示すように、その外側フランジ部6F4をフードリッジアッパメンバ3に接合するようになっている。従って、連結部材6にストラット支持部材5を接合することにより、ストラット支持部材5は、連結部材6を介してフードリッジアッパメンバ3、つまり、車体に連結される。
【0015】
ここで、第1の前・後側フランジ部6F1、6F2と第1の内側フランジ部6F3と第1の外側フランジ部6F4とを連続形成し、連結部材6の周囲をそれら各フランジ部6F1〜6F4で取り囲んである。
【0016】
また、本実施形態では、ストラット支持部材5の上面の車幅方向には、エンボス形成したストラット取付座面7に連続させて上方に突出する第1のビード部8を設けてある。一方、連結部材6の上面の車幅方向に、第1のビード部8に対応した位置にこの第1のビード部8の断面形状に沿った第2のビード部9を設けてある。そして、図3、図4に示すように、それら第1のビード部8と第2のビード部9とを相互に重ね合わせて、少なくともそれぞれのビード部8、9の側面8a、9a同士をスポット溶接部P1によって接合してある。
【0017】
このとき、第1のビード部8はストラット支持部材5の前後方向中央部に形成してあり、これに伴って第2のビード部9も連結部材6の前後方向中央部に形成してある。尚、本実施形態では、図2に示すように、第1のビード部8および第2のビード部9の側面8a、9aの幅W1、W2を長くするために、それら各ビード部8、9とそれらの両側面5S、6Sとの間に下方に凹設する溝部8V、9Vを形成してある。また、ビード部8、9の両側面8a、9aは、それぞれの対向面が下方に行くに従って広がる傾斜面となっている。
【0018】
ストラット支持部材5と連結部材6とは、図4に示すように、上述のスポット溶接部P1以外にも、ビード部8、9の頂部同士をスポット溶接部P2によって接合するとともに、ビード部8、9の両側面5S、6S同士をスポット溶接部P3によって接合している。更には、第1の前・後側フランジ部6F1、6F2と第2の前・後側フランジ部5F1、5F2とをスポット溶接部P4によって接合してある。尚、図4は概略的な断面図であるため、便宜上、溝部8V、9Vは省略してある。
【0019】
そして、ストラット支持部材5を、連結部材6を介してフードリッジアッパメンバ3に連結した後、図1に示すように、ストラット支持部材5の第2の前・後側フランジ部5F1、5F2および第2の内側フランジ部5F3と、連結部材6の第1の前・後側フランジ部6F1、6F2とを、ストラットハウジング2の上端部で覆って接合するようになっている。
【0020】
以上の構成により第1実施形態のストラットタワー1の上部構造によれば、ストラット支持部材5の車外側端部5aの下面に重ねて接合した連結部材6には、第1の前・後側フランジ部6F1、6F2と第1の内側フランジ部6F3と第1の外側フランジ部6F4とを設けて、それら各フランジ部6F1〜6F4を連続形成してある。これにより、連結部材6の周囲を各フランジ部6F1〜6F4が連続して取り囲むため、連結部材6の曲げ剛性や捩り剛性を高めることができる。
【0021】
また、このように剛性が高められた連結部材6の車内側端部6aを、ストラット支持部材5の車外側端部5aの下面に重ねて接合したことにより、そのストラット支持部材5の剛性をも高めることができる。従って、これらストラット支持部材5および連結部材6で構成されるストラットタワー1の上端面4の支持強度を増大できるため、その上端面4の薄肉化を達成しつつストラットの支持強度を十分に確保できる。
【0022】
また、連結部材6の車内側端部6aを、ストラット支持部材5の車外側端部5aの下面に重ねて接合してあり、つまり、連結部材6の車内側端部6aの上面に、ストラット支持部材5の車外側端部5aを上方から重ねて接合している。これにより、連結部材6を第1の外側フランジ部6F4を介して車体に接合した状態で、その連結部材6の上側にストラット支持部材5を重ねて組み付けることができるため、ストラットタワー1の上部の組付性を向上することができる。
【0023】
更に、本実施形態では、ストラット支持部材5に設けた第1のビード部8と、連結部材6に設けた第2のビード部9とを相互に重ね合わせて、少なくともそれぞれのビード部8、9の側面8a、9a同士をスポット溶接部P1によって接合してある。このとき、第1のビード部8はエンボス形成したストラット取付座面7に連続させて上方に突出させてあるので、第1のビード部8の側面8aには、ストラットタワー1の上端面4に入力される上下方向荷重Fの入力を、図3中矢印aによって示すように、せん断方向の力として効率良く伝達することができる。従って、スポット溶接部P1は上下方向荷重Fの入力をせん断方向の力として受けるので、ストラットタワー1の上端面4の接合剛性や強度を向上することができる。
【0024】
即ち、内側フランジ部6F3が設けられていない場合は、図5に示すように、上下方向荷重Fに対してストラット支持部材5および連結部材6は、それらの前後方向両側部分が上下方向に容易に撓み変形してしまう。
【0025】
ところで、本実施形態では、特に、ビード部8、9の側面8a、9aを傾斜面としてあるので、ストラット取付座面7から側面8aにより効率良く荷重Fを伝達して効果を高めることができる。
【0026】
[第2実施形態]
図6、図7は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図6はストラットタワーの斜視図、図7はストラット支持部材と連結部材を車外側から見た分解斜視図である。
【0027】
図6、図7に示すように、本実施形態のストラットタワーの上部構造は基本的に第1実施形態と同様の構成となり、ストラットタワー1の上端面4を、ストラット支持部材5と連結部材6とによって構成してある。
【0028】
ここで、本実施形態が第1実施形態と主に異なる点は、連結部材6の車内側端部6aをストラット支持部材5の車外側端部5aの上面に重ねて接合し、そのストラット支持部材5の周囲をフランジ部で囲繞したことにある。
【0029】
図7に示すように、ストラット支持部材5には、前後両側部5b、5cを下方に折曲した第2の前・後側フランジ部5F1、5F2と、車内側端部5dを下方に折曲した第2の内側フランジ部5F3と、車外側端部5aを下方に折曲した第2の外側フランジ部5F4と、を設け、これら各フランジ部5F1〜5F4を連続形成してある。つまり、第2の前側フランジ部5F1の端部と第2の後側フランジ部5F2の端部とを第2の外側フランジ部5F4によって前後方向に一体に連結している。
【0030】
このとき、連結部材6は、車内側端部6aをストラット支持部材5の上面に重ねる関係上、その車内側端部6aにはフランジ部(第1実施形態の内側フランジ部6F3に相当)を設けることなく、前後両側部6b、6cに下方に折曲した第1の前・後側フランジ部6F1、6F2と、車外側端6dに車体に接合する第1の外側フランジ部6F4と、を設けてある。
【0031】
そして、第1実施形態と同様に第1の外側フランジ部6F4は、連結部材6の車外側端6dを上方および前・後両側方に折曲して形成してあり、図6に示すように、その外側フランジ部6F4を、フードリッジアッパメンバ3に接合することにより、ストラット支持部材5を、連結部材6を介してフードリッジアッパメンバ3、つまり、車体に連結するようになっている。
【0032】
また、図7に示すように、第1実施形態と同様にストラット支持部材5の上面の車幅方向には、エンボス形成したストラット取付座面7に連続させて上方に突出する第1のビード部8を設けてある。一方、連結部材6の上面の車幅方向に、第1のビード部8に対応した位置に、この第1のビード部8の断面形状に沿った第2のビード部9を設けてある。そして、それら第1のビード部8と第2のビード部9とを相互に重ね合わせて、少なくともそれぞれのビード部8、9の側面8a、9a同士をスポット溶接部P1によって接合してある。
【0033】
更に、ビード部8、9の頂部同士をスポット溶接部P2によって接合するとともに、ビード部8、9の両側面5S、6S同士をスポット溶接部P3によって接合し、更には、第1の前・後側フランジ部6F1、6F2と第2の前・後側フランジ部5F1、5F2とをスポット溶接部P4によって接合してある。
【0034】
また、本実施形態にあっても第1実施形態と同様に、ストラット支持部材5を、連結部材6を介してフードリッジアッパメンバ3に連結した後、図6に示すように、ストラット支持部材5の第2の前・後側フランジ部5F1、5F2および第2の内側フランジ部5F3と、連結部材6の第1の前・後側フランジ部6F1、6F2とを、ストラットハウジング2の上端部で覆って接合するようになっている。
【0035】
以上の構成により第2実施形態のストラットタワー1の上部構造によれば、連結部6の車内側端部6aの下面に重ねて接合したストラット支持部材5には、第2の前・後側フランジ部5F1、5F2を前後方向に連結する第2の外側フランジ部5F4を一体に連続形成してある。また、ストラット支持部材5の周囲を前記各フランジ部5F1〜5F4が連続して取り囲む。このため、ストラット支持部材5の曲げ剛性や捩り剛性を高めることができる。
【0036】
そして、このように剛性が高められたストラット支持部材5に連結部材6を重ねて接合したことにより、その連結部材6の剛性をも高めることができる。従って、これらストラット支持部材5および連結部材6で構成されるストラットタワー1の上端面4の支持強度を増大できるため、そのストラットタワー1の上端面4の薄肉化を達成しつつストラットの支持強度を十分に確保できる。
【0037】
ところで、本発明のストラットタワーの上部構造は前記第1・第2実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるストラットタワーの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるストラット支持部材と連結部材を車内側から見た分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるストラット支持部材と連結部材との接合状態を車両後方から見た斜視図である。
【図4】図3中A−A線に沿った断面を模式的に示す説明図である。
【図5】連結部材のフランジ部無しの場合を模式的に示す図3に対応した比較説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるストラットタワーの斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかるストラット支持部材と連結部材を車外側から見た分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ストラットタワー
3 フードリッジアッパメンバ(車体)
4 ストラットタワーの上端面
5 ストラット支持部材
5a ストラット支持部材の車外側端部
5b、5c ストラット支持部材の側部
5d ストラット支持部部材の車内側端部
5F1 第2の前側フランジ部
5F2 第2の後側フランジ部
5F3 第2の内側フランジ部
5F4 第2の外側フランジ部
6 連結部材
6a 連結部材の車内側端部
6b、6c 連結部材の側部
6d 連結部材の車外側端
6F1 第1の前側フランジ部
6F2 第1の後側フランジ部
6F3 第1の内側フランジ部
6F4 第1の外側フランジ部
7 ストラット取付座面
8 第1のビード部
9 第2のビード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストラットを支持するストラット支持部材と、該ストラット支持部材の車外側に結合されると共に車体に連結される連結部材と、を備えた自動車のストラットタワーの上部構造において、
前記連結部材に、前後両側部を上下方向に折曲した第1の前・後側フランジ部と、車内側端部を上下方向に折曲し、前記第1の前・後側フランジ部の車内側端部を前後方向に一体に連結する第1の内側フランジ部と、を形成したことを特徴とするストラットタワーの上部構造。
【請求項2】
ストラットを支持するストラット支持部材と、該ストラット支持部材の車外側に結合されると共に車体に連結される連結部材と、を備えた自動車のストラットタワーの上部構造において、
前記ストラット支持部材に、前後両側部を上下方向に折曲した第2の前・後側フランジ部と、車外側端部を上下方向に折曲し、前記第2の前・後側フランジ部を前後方向に一体に連結する第2の内側フランジ部と、を形成したことを特徴とするストラットタワーの上部構造。
【請求項3】
ストラット支持部材の上面の車幅方向に、ストラット取付座面に連続して上方に突出する第1のビード部を設ける一方、前記連結部材の上面の車幅方向に、前記第1のビード部に対応した位置に該第1のビード部の断面形状に沿った第2のビード部を設け、これら第1のビード部と第2のビード部とを相互に重ね合わせて、少なくともそれぞれのビード部の側面同士を接合したことを特徴とする請求項1または2に記載のストラットタワーの上部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−292226(P2009−292226A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146084(P2008−146084)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】