説明

ストラップ取付機構

【課題】美観が保たれると共に、高い強度が得られ、また、ストラップの取り付けが容易なストラップ取付機構を提供する。
【解決手段】フロントケース11の側面板12aに、孔部15a及び15bと係止部16とが設けられる。リアケース21の側面板22aに、孔部25a及び25bと係止部26とが設けられる。フロントケース11の外側にリアケース21を重ねて固定すると、フロントケース11の係止部16とリアケース21の係止部26とが同位置で重なり、ストラップ引掛部が形成される。フロントケース11の孔部15a,15bとリアケース21の孔部25a,25bとが連通し、ストラップ取付孔が形成される。筐体1の正面からストラップ取付孔が見えない構造となり、美観が保たれると共に、ストラップの取り付け強度を十分に確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末等の筐体にストラップを取り付けるためのストラップ取付機構に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末の筐体にストラップを取り付けると、使用者がストラップを手首に巻き付ける等して携帯電話端末を吊り下げて持ち運ぶことができ、携帯電話端末の携帯性が向上する。また、近年、ファッション性を考慮したストラップが多数販売されており、各自の携帯電話端末に好みのデザインのストラップを取り付けて、携帯電話端末に装飾を加えている使用者も多い。
【0003】
携帯電話端末の筐体のストラップ取付機構としては、図4に示されるように、筐体101の正面111と側面112とのコーナー部に、連通した孔部113a及び113bを形成するようにしたものが知られている。このようなストラップ取付機構では、孔部113a又は113bのうちの一方から他方に、ストラップ105を先端の円環状の部分105aから挿入し、ストラップ105の他端をストラップ105の円環状の部分105aに絡めることで、筐体101にストラップ105が取り付けられる。
【0004】
このようなストラップ取付機構は、構成が簡単で、ストラップの取り付けが簡単に行える。しかしながら、このようなストラップ取付機構では、筐体101の正面に孔部113aが見えてしまい、デザイン上、好ましくない。
【0005】
そこで、図5に示されるように、筐体201の側面212に、連通した孔部213a及び213bを形成するようにすることが考えられる。筐体201の側面212に、孔部213a及び213bを形成するようにしてストラップ取付機構を構成した場合には、筐体201の正面に孔部が見えなくなり、デザイン性を損なうことがなくなる。
【0006】
ここで、デザイン性の向上や取付強度の向上を図るようにした各種のストラップ取付機構としては、下記特許文献に示すものが提案されている。
特許文献1には、カバー部材によって、ストラップ取付手段が外部から見えないようにして、外観に影響を与えないようにしたものが記載されている。
また、特許文献2には、ストラップを係止可能な係止棒を有する取付部材を用意しておき、この取付部材をケース本体を構成するフロントケース及びリアケースの間に係合させることで、デザインの制約を少なくし、また、取付強度を上げるようにしたものが記載されている。
さらに、特許文献3には、背面ケースに一対の貫通孔とリブとを形成し、全面ケースに取付孔を画成する底壁を設けることで、外観の小型化を達成し得るものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−109224号公報
【特許文献2】特開2005−109224号公報
【特許文献3】特開平11−54947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図5に示したように、筐体の側面212に、2つの連通した孔部213a及び213bを形成するようにしてストラップ取付機構を構成すると、筐体の正面に孔部が見えなくなり、デザイン性を損なうことがなくなる。しかしながら、近年、携帯電話端末の筐体は薄型化の傾向があり、薄型の筐体の場合には、ストラップ取付機構を設けるためのスペースを筐体の側面に広く確保することは難しい。
【0009】
特に、フロントケースとリアケースとを組み付けて筐体を構成するような場合、筐体の側面にストラップ取付機構を設けるようにすると、フロントケースとリアケースとが重なった部分にストラップ取付機構を設ける必要が生じる。
【0010】
例えば、図6に示すように、フロントケース301の外側にリアケース302を嵌合させて筐体300を構成する場合には、筐体300の外側になるリアケース302側のみに孔部313a及び313bによりストラップ取付機構を設けると、ストラップの荷重をリアケース302でのみ受けることになるため、ストラップの取り付け強度を十分に確保することが困難となる。これに対し、ストラップの取り付け強度の向上を図るべくリアケース302の材料を肉厚の部材にすると、携帯電話端末自体が大型化してしまい携帯性が損なわれる。
【0011】
一方、図7に示すように、内側になるフロントケース401に、連通した孔部413a及び413bを形成してストラップ取付機構を構成することも考えられる。この場合には、フロントケース401に設けた孔部413a及び413bを外部に露呈させるために、外側になるリアケース402には、開口415を設ける必要がある。
【0012】
しかしながら、図7に示すように、フロントケース401に孔部413a及び413bを設けるようにした場合には、図8に示すように、開口415による凹部Tが生じてしまい、ストラップの取り付け作業がしずらくなる。また、デザイン性の向上のために、フロントケース401の色とリアケース402の色とを変えるようにした場合には、開口415の部分でフロントケース401の色が見えてしまい、デザイン性が損なわれる。
【0013】
なお、特許文献1に示されているものでは、ストラップ取付手段が外部から見えないようにするためのカバー部材が必要になる。また、特許文献2に示されるものでは、ストラップを係止可能な係止棒を有する取付部材を新たに用意する必要がある。また、特許文献3に示されるものでは、ストラップにかかる荷重を背面ケース側のリブで全て受けることになるため、ストラップの取り付け強度が不足するおそれがある。
【0014】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、デザイン性を担保しつつ、高い強度が得ることができるとともにストラップを容易に取り付けることが可能なストラップ取付機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するために、本発明に係るストラップ取付機構は、第1及び第2の孔部と、前記第1及び第2の孔部の間に設けられた第1の係止部とを側面に有する第1のケースと、第3及び第4の孔部と、前記第3及び第4の孔部の間に設けられた第2の係止部とを側面に有する第2のケースとを備え、前記第1のケースの外側に第2のケースを嵌合させて筐体を構成する際に、前記第1及び第2の孔部と前記第3及び第4の孔部とが互いに連通することでストラップ取付孔が形成されるとともに、前記第1の係止部と前記第2の係止部とが互いに重なることでストラップ引掛部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、筐体の側面にストラップ取付孔が形成され、筐体の正面からストラップ取付孔が見えない構造となるため、デザイン性を担保することができる。また、本発明によれば、フロントケースの係止部とリアケースの係止部とが同位置で重なり、ストラップ引掛部となるため、ストラップの取り付け強度を十分に確保することができる。更に、本発明によれば、ストラップ機構の部分に凹部が生じることがないため、ストラップの取り付けが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態のストラップ取付機構に係る携帯電話端末の筐体の構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のストラップ取付機構に係る携帯電話端末の正面図及び側面図である。
【図3】本発明の実施形態のストラップ取付機構の説明に用いる断面図である。
【図4】筐体の正面と側面とのコーナー部に連通した孔部を形成するようにしたストラップ取付機構の説明図である。
【図5】筐体の側面に連通した孔部を形成するようにしたストラップ取付機構の説明図である。
【図6】リアケース側にストラップ取付機構を設けた場合の説明図である。
【図7】フロントケース側にストラップ取付機構を設けた場合の説明図である。
【図8】フロントケース側にストラップ取付機構を設けた場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態のストラップ取付機構に係る携帯電話端末の筐体1の構成を示す分解斜視図である。本発明の実施形態に係る携帯電話端末の筐体1は、図1に示すように、フロントケース(第1の筐体)11の外側にリアケース(第2の筐体)21を嵌合して構成される。
【0019】
フロントケース11内には、電子基板(図示せず)が収納される。リアケース21の上面には、カメラ部23が配設される。フロントケース11の先端には、ヒンジ部10が設けられる。ヒンジ部10は、当該筐体1と、ディスプレイ等が配設された他方の筐体(図示せず)とを回動自在に連結するためのものである。
【0020】
また、本発明の第1の実施形態に係る携帯電話端末の筐体1は、装置全体の剛性に寄与するフロントケース11は、リアケース21に比べて、高い強度が要求される。このため、フロントケース11に使用される材料は、リアケース21に使用される材料に比べて高剛性のものを用いている。
【0021】
図1に示すように、フロントケース11は、側面板12a及び12bを有している。フロントケース11の一方の側面板12aには、孔部(第1及び第2の孔部)15a及び15bと、孔部15a及び15bの間の係止部(第1の係止部)16が設けられる。
【0022】
リアケース21は、側面板22a及び22bを有している。リアケース21の側面板22a及び22bの内側の間の距離は、フロントケース11の側面板12a及び12bの外側の間の距離に対応している。また、リアケース21の一方の側面板22aには、孔部(第3及び第4の孔部)25a及び25bと、孔部25a及び25bの間の係止部(第2の係止部)26が設けられる。孔部25a及び25bの位置は、フロントケース11の孔部15a及び15bとそれぞれ対応している。また、係止部26の位置は、フロントケース11の係止部16の位置と対応している。更に、孔部25a及び25bの周囲には、隆起部27が設けられる。隆起部27は、滑らかな曲線状に隆起している。
【0023】
図1に示すように、フロントケース11とリアケース21とは、互いに対向するように配置され、フロントケース11の外側にリアケース21が嵌合されて固定される。また、フロントケース11には、バッテリーケース13が固定される。
【0024】
図2(A)及び図2(B)は、フロントケース11に、リアケース21及びバッテリーケース13とを固定したときの状態を示す正面図及び側面図である。
【0025】
前述したように、フロントケース11の側面板12a及び12bの外側の間の距離は、リアケース21の側面板22a及び22bの内側の間の距離に対応している。このため、フロントケース11にリアケース21を固定すると、リアケース21の側面板22a及び22bは、フロントケース11の側面板12a及び12bの外側に重なるように嵌合される。これにより、フロントケース11とリアケース21との間には、図2(B)に示すように、分割ライン30で段差が生じる。このような構造では、筐体1を薄型にしても、必要な強度を保つことができる。また、フロントケース11の色とリアケース21の色とを異なるようにすると、分割ライン30で色が分かれるツートンカラーのデザインとすることができ、デザイン性の向上を図ることができる。
【0026】
また、前述したように、本発明の第1の実施形態に係る携帯電話端末の筐体1では、リアケース21の孔部25a及び25bの位置と、フロントケース11の孔部15a及び15bとの位置とがそれぞれ対応している。また、係止部26の位置は、係止部16の位置と対応している。このため、フロントケース11にリアケース21を固定すると、フロントケース11の孔部15a及び15bとリアケース21の孔部25a及び25bとの位置が揃い、孔部15a及び15bと孔部25a及び25bとが連通し、図2(B)のストラップ取付孔33a及び33bが形成される。また、フロントケース11の係止部16の位置と、リアケースの係止部26の位置とが揃い、係止部16と係止部26とが同一で重なり、図2(B)のストラップ引掛部34が形成される。
【0027】
このような構造のストラップ取付機構について、更に説明する。図3(A)及び図3(B)は、図2に示した筐体の断面構造を示すものである。図3(A)は、図2(A)に示した筐体1のA−A断面図を示し、図3(B)は、B−B断面図を示すものである。
【0028】
フロントケース11の2つの孔部15aと孔部15bは、その側面板12aの内部で連通しており、図3(A)において、挿入口32は、フロントケース11の2つの孔部15aと孔部15bがフロントケース11の内部で連通して生じたものである。フロントケース11の側面板12a及び12bの外側にリアケース21の側面板22a及び22bを重ねて固定すると、図3(A)に示すように、フロントケース11の係止部16とリアケース21の係止部26とが同位置で重なり、これにより、ストラップ引掛部34が形成される。また、図3(B)に示すように、フロントケース11の孔部15bとリアケース21の孔部25bとは連通して、ストラップ取付孔33bが形成される。同様に、フロントケース11の孔部15aとリアケース21の孔部25aとは連通して、ストラップ取付孔33a(図2(B)参照)が形成される。
【0029】
図3(A)及び図3(B)において、ストラップを取り付ける場合には、使用者は、孔部15a及び15bと孔部25a及び25bとを連通して形成されたストラップ取付孔33a又は33bのうちの一方から、ストラップ(図示せず)の先端の円環状の部分を挿入し、このストラップの先端を挿入口32を通過させて、ストラップ取付孔33a又は33bのうちの他方から引き出し、ストラップの円環状の部分に、ストラップの他端を絡めて、ストラップを固定する。このとき、孔部25a及び25bの周囲には、隆起部27が設けられている。このため、使用者は、隆起部27でストラップの先端をガイドさせながら、ストラップの先端をストラップ取付孔33a又は33bに簡単に挿入することができる。
【0030】
本発明の第1の実施形態に係る携帯電話端末の筐体1では、側面に設けられた2つのストラップ取付孔33a及び33bによりストラップ取付機構が構成される。このため、筐体1の正面からストラップ取付孔が見えない構造となり、美観が保たれる。
【0031】
また、図3(A)に示すように、フロントケース11の係止部16とリアケース21の係止部26とが同位置で重なり、ストラップ引掛部34となる。このため、ストラップを取り付けた場合、ストラップの荷重は、剛性の高いフロントケース11の係止部16とリアケース21の係止部26とを重ねてなるストラップ引掛部34で受けることになり、ストラップの取り付け強度を十分に確保することができる。
【0032】
更に、本発明の第1の実施形態に係る携帯電話端末の筐体1では、フロントケース11の係止部16とリアケース21の係止部26とが同位置で重なるため、ストラップ機構の部分に凹部が生じることがなく、ストラップが取り付けが容易である。更に、孔部25a及び25bの周囲に隆起部27が設けることで、ストラップの取り付けをより簡単に行うことができる。
【0033】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:筐体
10:ヒンジ部
11:フロントケース(第1のケース)
12a,12b:側面板
13:バッテリーケース
15a,15b:孔部(第1及び第2の孔部)
16:係止部(第1の係止部)
21:リアケース(第2のケース)
22a,22b:側面板
23:カメラ部
25a,25b:孔部(第3及び第4の孔部)
26:係止部(第2の係止部)
27:隆起部
30:分割ライン
32:挿入口
33a,33b:ストラップ取付孔
34:ストラップ引掛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の孔部と、前記第1及び第2の孔部の間に設けられた第1の係止部とを側面に有する第1のケースと、
第3及び第4の孔部と、前記第3及び第4の孔部の間に設けられた第2の係止部とを側面に有する第2のケースとを備え、
前記第1のケースの外側に第2のケースを嵌合させて筐体を構成する際に、前記第1及び第2の孔部と前記第3及び第4の孔部とが互いに連通することでストラップ取付孔が形成されるとともに、前記第1の係止部と前記第2の係止部とが互いに重なることでストラップ引掛部が形成されることを特徴とするストラップ取付機構。
【請求項2】
前記第2のケースが、前記第3及び第4の孔部の周囲に隆起部を有することを特徴とする請求項1に記載のストラップ取付機構。
【請求項3】
前記第1のケースの剛性を、前記第2のケースの剛性より高くしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のストラップ取付機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−49692(P2012−49692A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188310(P2010−188310)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】