説明

ストレッチベンダー機

【課題】調整作業の作業効率が向上すると共に、油圧シリンダー内に発生する異常圧の発生タイミングを精度良く知ることができるストレッチベンダー機を提供する。
【解決手段】ピストンロッド側圧力室27内に内圧センサー50の測定部51を配置した。また、ピストンロッド25に、ロータリーエンコーダ55により構成される移動長さ検出装置54を配設し、予め定められた基準位置からの移動長さを測定可能とした。また、ラップアーム部5にロータリーエンコーダ60を配設し、予め定められた基準位置からの回転角度を測定可能とした。かかる構成にあって、内圧センサー50によりピストンロッド側圧力室27で異常圧が測定されると、その時点におけるピストンロッド25の移動長さ、及びラップアーム部5の回転角度をモニター65で報知するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダーを備えたストレッチベンダー機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺状のワークを、長手方向に引張しながら所定形状の金型に沿って湾曲させるストレッチベンダー機は良く知られている(例えば、特許文献1参照。)。さらに詳述すると、このストレッチベンダー機は、中空形状で作動油が内在するシリンダーチューブと、該シリンダーチューブ内に摺動可能に配設されたピストン部と、末端に該ピストン部が接続され、かつ先端にワークを保持するテンションチャックが接続された杆状のピストンロッドとを具備した油圧シリンダーを備えている。また、該ストレッチベンダー機は、前記油圧シリンダーと連係し、所定角度範囲内で左右に回動するラップアーム部も備えている。そして、ラップアーム部が所定態様で回動すると、油圧シリンダーによりワークを所定引張力で引張しつつ、湾曲状に弾性変形させて金型に圧接させることができる。このような一連の成形加工により、所望形状の曲げ製品が製造されることとなる。
【0003】
ところで、油圧シリンダーに大きな引張力が急激に作用すると、シリンダーチューブ内に画成されてなるピストンロッド側圧力室が高圧となって異常圧が発生する。このように異常圧が発生してしまうと、ワークの曲げ部分に不要な負荷がかかるため、ワークにしわが寄ったりあるいは曲げ部分で破断が生じたりする問題が発生する。このような問題に鑑み、特許文献1では、成形加工中に発生した異常圧を適切に解消する構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−282644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来構成にも、以下のような問題があった。
欠陥のない曲げ製品を大量生産できる段階に至るまでには、事前に、油圧シリンダーの引張力、又はラップアーム部の複雑な動作態様を各々設定しておく必要がある。具体的には、ラップアーム部等の動作態様を何度も微調整して、最適なワークの引張力、ワークの曲げ開始タイミング、ワークの曲げ方向、又はワークの曲げ速さ等を見つけ出し、所望の曲げ製品を生産するための動作体系を構築するようにしている。しかし、従来は、このような事前の調整段階において、作業者は油圧シリンダー内の異常圧発生の有無、又は異常圧が発生している場合にはその発生タイミングが客観的に把握することができないでいた。このため、作業者は、異常圧の発生を経験的に予測して機械調整する必要があり、適正な動作態様を特定するには熟達した高度な技術を要した。また、高度な技術がない場合は、無駄な調整作業が多くなって作業効率が低下し、結果的に、製品の生産性、及び加工精度が低下してしまうおそれがあった。
【0006】
なお、特許文献1に開示された構成は、内圧センサーが油圧シリンダーに接続される配管に設けられているため、配管による流動抵抗が内圧センサーの測定結果に悪影響を与え、測定結果の精度について改善の余地があるということもわかってきた。
【0007】
そこで、本発明は、調整作業の作業効率が向上すると共に、油圧シリンダー内に発生する異常圧の発生タイミングを精度良く知ることができるストレッチベンダー機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、作動油が投入される中空形状のシリンダーチューブと、該シリンダーチューブ内に摺動可能に配設されたピストン部と、末端に該ピストン部が接続され、かつ先端に所定形状の型に配置された長尺状のワークを保持する保持手段が接続された杆状のピストンロッドとを具備すると共に、ピストン部によりシリンダーチューブ内にピストンロッド側圧力室とキャップ側圧力室とが画成されてなる油圧シリンダーと、油圧シリンダーと連係してなる動作部とを備え、動作部が所定態様で動作することにより、油圧シリンダーを介して前記ワークを引張し、かつ当該ワークを前記型に沿って湾曲させる一連の成形加工を行うものであるストレッチベンダー機において、ピストンロッド側圧力室の内圧を測定する内圧測定手段と、ピストンロッド及び/又は動作部の、予め定められた基準位置からの変位値である動作変位値を検出する動作変位値検出手段と、前記成形加工中に内圧測定手段が予め定められた基準内圧よりも高い内圧を測定すると、その時点のピストンロッド及び/又は動作部の動作変位値を報知する動作変位値報知手段とを備えたことを特徴とするストレッチベンダー機である。
【0009】
かかる構成にあって、ワークの成形加工過程では、保持手段を介してワークと連繋したピストンロッドが所定の引張力を発生させるべく前後に移動する。また、動作部は、前後移動、又は所定の回動中心の周りで回動することとなる。本発明は、このように成形加工過程で動作する動作部位に適宜動作変位値検出手段を配設し、検出された動作変位値を作業者が把握可能に報知するようにした構成である。したがって、上述の調整作業を行う作業者は、動作変位値報知手段の報知により、基準内圧よりも高い内圧(異常圧)が発生した時点におけるピストンロッド等の動作変位値を参考にしながら、油圧シリンダーによる引張力や動作部の動作につき最適な設定を順次行うことが可能となる。これにより、上述の調整作業において無駄な作業が減少して作業時間が短縮されることとなり、効率的に曲げ製品を大量生産できるストレッチベンダー機を設定することができる。なお、動作変位値を報知する構成には、様々な態様が提案され得る。例えば、画面表示により報知する構成や、音声出力により報知する構成が挙げられる。要は、作業者が動作変位値を認識することができる報知態様であれば良い。
【0010】
また、上記構成にあって、ピストンロッド及び/又は動作部が予め定められた基準位置から動作開始したタイミングからの経過時間である動作時間を計測する動作時間計測手段と、成形加工中に内圧測定手段が予め定められた基準内圧よりも高い内圧を測定すると、その時点におけるピストンロッド及び/又は動作部の動作時間を報知する動作時間報知手段とを備えた構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあって、上述の調整作業を行う作業者は、基準内圧よりも高い内圧(異常圧)が発生した時点におけるピストンロッド等の動作変位値と、前記のような動作時間を把握することが可能となる。すなわち、動作変位値と動作時間とを把握することにより、異常圧が発生するまでの経過時間と、そのときの動作部の動作変位値を把握することが可能となる。さらに、動作変位値と動作時間とを把握することにより、異常圧発生までのピストンロッド等の動作速度を把握することも可能となる。したがって、作業者は、異常圧発生時のピストンロッド等の動作状況を参考にしながら、最適な機械設定を行うことが可能となる。
【0012】
また、内圧測定手段は、測定部を具備し、該測定部が前記ピストンロッド側圧力室内に配置されるものである構成が提案される。
【0013】
かかる構成とすることにより、内圧測定に際し配管による流動抵抗の悪影響が排除されるため、ピストンロッド側圧力室の内圧を正確に測定することが可能となる。これにより、異常圧の発生が精度良く検出されることとなるため、異常圧測定時のピストンロッド等の動作変位値の信頼性が向上し、高精度な調整作業が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のストレッチベンダー機は、内圧測定手段が基準内圧よりも高い内圧を測定した時点のピストンロッド及び/又は動作部の動作変位値を報知する構成としたため、作業者は、異常圧が発生した時点におけるピストンロッド等の動作変位値を把握することが可能となり、調整作業の中で、報知された動作変位値を参考にして最適なピストンロッド等の動作を設定し直すことが可能となる。これにより、調整作業が従来に比して簡易となるため、熟練の作業者でなくても一定の加工精度を確保できる効果があると共に、無駄な調整作業が排除されて作業効率が向上する効果がある。また、作業時間が短縮されることにより、製品の生産性も向上する効果がある。
【0015】
また、上記構成にあって、内圧測定手段が基準内圧よりも高い内圧を測定した時点のピストンロッド及び/又は動作部の動作時間を計測すると共に、該動作時間を報知する構成とした場合は、報知された動作時間を参考にして最適なピストンロッド等の動作を設定し直すことが可能となる効果がある。また、異常圧が発生した時点におけるピストンロッド等の動作速度も把握することが可能となり、この動作速度に基づいて最適なピストンロッド等の動作を設定し直すことが可能となる効果がある。
【0016】
また、内圧測定手段を、測定部がピストンロッド側圧力室内に配置されるものとした場合は、ピストンロッド側圧力室の内圧を正確に測定することができるため、異常圧測定時のピストンロッド等の動作変位値の信頼性が向上し、高精度な調整作業が可能となる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るストレッチベンダー機の実施例を添付図面に従って説明する。
図1に示されるように、ストレッチベンダー機1は、床面に固定された支持台2を中央に備えている。また、この支持台2の上端には、板状の金型台3が配設されている。そして、この金型台3の上面に、曲げ加工用金型4が脱着可能に配設されている。
【0018】
この曲げ加工用金型4の側面には、図1,2に示されるように、平面部と曲面部とを含む型面14が形成されている。そして、金属製のワークWがこの型面14に面接触状に順次圧接されることにより、所望の曲げ製品が得られることとなる。なお、この曲げ加工用金型4は、製造する曲げ製品の形状に応じて適宜交換されるものである。
【0019】
また、図1,2に示されるように、支持台2の両側部からは、ラップアーム部5,5が水平状に突設されている。ここで、両ラップアーム部5の基端には、縦断面コ字状の接続部15が設けられている。さらに、この接続部15は、支持台2に配設された鉛直方向の回動軸16と連係し、当該接続部15と回動軸16とで軸支部9を構成している。そして、ラップアーム部5は、回動軸16が軸線周りに自転することにより、軸支部9を回動中心として左右に回動する(図2中の矢印方向)。なお、両ラップアーム部5は、同じ構成であるため、以下、一方のラップアーム部5について説明する。
【0020】
また、ラップアーム部5の上縁であってほぼ中腹には、テンションポスト6が起立状に配設されている。このテンションポスト6は、ラップアーム部5の上縁に沿って移動可能となっており、加工対象となるワークWの全長に従って、適宜、位置変更できる。なお、本実施例に係るテンションポスト6は、成形加工時においてはラップアーム部5に固定されて移動不能となる。
【0021】
また、図2に示されるように、テンションポスト6には、支持杆8が水平支持されている。また、この支持杆8は、当該テンションポスト6に沿って上下に移動可能となっている。さらに、この支持杆8には、水平に保持された油圧シリンダー10が接続されており、支持杆8がテンションポスト6に沿って上下動することにより、油圧シリンダー10も上下に移動する構成となっている。なお、この油圧シリンダー10には、起立状に配置された上下動油圧シリンダー11が接続されており、適宜、上下の移動速度を変更することができる。
【0022】
ここで、上記した構成により油圧シリンダー10とラップアーム部5とが相互に連係しているため、ラップアーム部5が回動(動作)すると、この回動動作に伴って油圧シリンダー10も回動することとなる。ところで、油圧シリンダー10とラップアーム部5との連係機構は、上記構成に限定されず、適宜変更可能である。なお、前記ラップアーム部5により、本発明に係る動作部が構成される。
【0023】
次に、油圧シリンダー10の内部構造について説明する。
図5に示されるように、油圧シリンダー10は、中空円筒状で作動油が内在するシリンダーチューブ17を備えている。具体的には、シリンダーチューブ17は、両端が開放した円筒形の胴部18、蓋体であるヘッドブロック21、円環状のセンサー取付用ポートブロック22、及び蓋体であるキャップブロック23とで構成されている。
【0024】
さらに詳述すると、胴部18の先端には、取付孔を構成する内圧センサー取付用ポート42を備えたセンサー取付用ポートブロック22が接続されている。また、センサー取付用ポートブロック22の先端側には、油路を構成する第一ポート41を備えたヘッドブロック21が接続されている。一方、胴部18の末端には、油路を構成する第二ポート43を備えたキャップブロック23が接続されている。かかる構成により、シリンダーチューブ17に作動油が充填される内空部が形成されると共に、各ポート41,42,43を介して該内空部と外部とが連通する。
【0025】
またシリンダーチューブ17内には、円板状のピストン部19が摺動可能に設けられている。さらに、このピストン部19には、ヘッドブロック21を貫通する棒状のピストンロッド25の末端が接続されている。一方、このピストンロッド25の先端には、公知のテンションチャック26(図1,2参照)が接続されており、曲げ加工の対象となる長尺状のワークWを挟持することが可能となっている。かかる構成にあって、ピストン部19がシリンダーチューブ17内で前後に摺動すると、ピストンロッド25も前後に進退し、テンションチャック26の位置が前後(図1中の矢印方向)に変化することとなる。なお、前記テンションチャック26により、本発明に係る保持手段が構成される。
【0026】
なお、図3に示されるように、上述した油圧シリンダー10の周囲には、当該油圧シリンダー10と平行なガイドロッド48が複数設けられている。これにより、油圧シリンダー10の支持が補強されると共に、油圧シリンダー10がその軸線周りに回転してしまうことを防止できる。
【0027】
また、図1,2に示されるように、金型台3の上面中央には、加工物保持具12が取り付けられている。この加工物保持具12は、図2に示すように、左右のテンションチャック26に保持されたワークWの加工部位を、曲げ加工用金型4の型面14に密接させるものである。換言すれば、加工物保持具12は、加工開始時にワークWを適正位置に位置決めする機能を有している。
【0028】
これまでに述べた構成にあって、ラップアーム部5が所定回転角度、及び所定回転速度で回動することにより、油圧シリンダー10を介して前記ワークWが引張され、かつ当該ワークWが曲げ加工用金型4に沿って曲げ加工されて、一連の成形加工が実行される。
【0029】
ところで、図5に示されるように、油圧シリンダー10内は、上述のピストン部19により、ピストンロッド側圧力室27とキャップ側圧力室28とに画成されている。すなわち、ピストンロッド側圧力室27には、第一ポート41、及び内圧センサー取付用ポート42が臨むこととなると共に、キャップ側圧力室28には、第二ポート43が臨むこととなる。
【0030】
また、図5に示されるように、本ストレッチベンダー機1は、第一ポート41と連通する第一ポート用油路32、及び第二ポート43と連通する第二ポート用油路33を備えている。さらに、第一ポート用油路32、及び第二ポート用油路33には、電磁比例流量制御バルブ31が配設されている。また、この電磁比例流量制御バルブ31には、作動油供給装置34が作動油供給路35を介して接続されている。この作動油供給装置34は、作動油供給路35を介して作動油を供給する機能を有する。
【0031】
ここで、前述の電磁比例流量制御バルブ31は、第一ポート用油路32と第二ポート用油路33とのうち、いずれかを選択して作動油供給装置34から供給される作動油の流路を確保すると共に、その作動油の流量を調整する機能を有する。さらに詳述すると、電磁比例流量制御バルブ31が所定態様で駆動して、油路32,33を切り替えることにより、第一ポート41又は第二ポート43を介して、作動油供給装置34からピストンロッド側圧力室27又はキャップ側圧力室28に作動油を供給することができる。なお、電磁比例流量制御バルブ31、及び作動油供給装置34は、公知品が好適に採用される。
【0032】
また、上述の内圧センサー取付用ポート42には、ピストンロッド側圧力室27の内圧を測定する内圧センサー50(図3,5参照)が装着されている。この内圧センサー50は、その外筐体の先端に測定部51が設けられており、該測定部51がピストンロッド側圧力室27内に配置されている。なお、内圧センサー50が測定した測定データは、後述のシリンダー内圧制御装置45に送信される。ところで、この内圧センサー50により、本発明に係る内圧測定手段が構成される。この内圧センサー50は、半導体等により構成される公知品が好適に採用される。
【0033】
次に、ストレッチベンダー機1のシリンダー内圧制御装置45について説明する。
図5に示されるように、ストレッチベンダー機1は、シリンダー内圧制御装置45を備えている。このシリンダー内圧制御装置45は、上記電磁比例流量制御バルブ31、作動油供給装置34、及び内圧センサー50とそれぞれ信号の送受信が可能となるように接続されている。具体的には、シリンダー内圧制御装置45は、基板回路(図示省略)を備え、該基板回路上に中央制御装置(CPU)46が配設されている。そして、この中央制御装置46は、電磁比例流量制御バルブ31、及び作動油供給装置34に駆動信号を送信して駆動制御する制御処理を実行する。また、中央制御装置46には、タイマー(TM)47が接続されており、所定の計測開始タイミングで時間計測を開始し、所定の計測タイミングでその経過時間を計測する機能を有している。例えば、後述するように、本実施例ではピストンロッド25とラップアーム部5の各基準位置からの動作開始から、異常圧発生時までの経過時間を計測することができる。
【0034】
次に、本発明に係る要部を説明する。
本ストレッチベンダー機1は、図3に示されるように、油圧シリンダー10に係るピストンロッド25の移動長さを測定する移動長さ検出装置54を備えている。この移動長さ検出装置54は、後述するように、ロータリーエンコーダ55、ラック57、及びピニオン56により構成されている。さらに詳述すると、上述した油圧シリンダー10の周囲にあるガイドロッド48の側傍には、当該ガイドロッド48の長手方向に沿うようにして、長尺状のラック57が配設されている。一方、ピストンロッド25には、支持板66が配設されていると共に、該支持板66に断面コ字形の支持部材67が接続されている。そして、この支持部材67に、公知のロータリーエンコーダ55が取り付けられている。このロータリーエンコーダ55は、下方に突出した回転可能な軸棒(隠れて見えない)を備え、該軸棒の先端に前記ラック57と係合するピニオン56が配設されている。
【0035】
かかる構成にあって、油圧シリンダー10のピストンロッド25が軸方向に進退すると、これに連動してロータリーエンコーダ55もラック57に沿って前後に移動する。そうすると、当該ラック57に係合するピニオン56が回転し、その回転量をロータリーエンコーダ55が検出することとなる。すなわち、このロータリーエンコーダ55が検出する回転量に基づき、ピストンロッド25の軸方向における移動長さ(変位値)が測定可能となっている。ここで、このロータリーエンコーダ55は、図5に示されるように、シリンダー内圧制御装置45と信号の送受信が可能となるように接続されており、ロータリーエンコーダ55の測定データはシリンダー内圧制御装置45に送信される構成となっている。
【0036】
ところで、本実施例では、一連の成形加工前においてピストンロッド25の基準位置を予め設定してある。そして、シリンダー内圧制御装置45は、前記ロータリーエンコーダ55によって測定された移動長さに基づき、成形加工過程でピストンロッド25が基準位置からどれだけ移動したかをピストンロッド25の動作変位値(基準位置からの移動長さ)として検出する制御内容を備えている。勿論、シリンダー内圧制御装置45は、移動長さ検出装置54により、ピストンロッド25が変動開始したタイミングである変動開始タイミングも検出することができる。
【0037】
また、本ストレッチベンダー機1にあっては、ラップアーム部5の回動軸16にもロータリーエンコーダ60が装着されている。具体的には、図4に示されるように、回動軸16の端部にロータリーエンコーダ60の回転可能な軸棒61が固結されており、回動軸16が回転すると、これに連動して軸棒61が回転し、当該回動軸16の回転角度がロータリーエンコーダ60によって検出可能としている。すなわち、かかる構成により、成形加工中のラップアーム部5の回転角度(変位値)が測定されることとなる。なお、図5に示されるように、このロータリーエンコーダ60もシリンダー内圧制御装置45に接続されており、ロータリーエンコーダ60の測定データがシリンダー内圧制御装置45に送信される。
【0038】
また、本実施例では、一連の成形加工前においてラップアーム部5の基準位置を予め設定してある。そして、シリンダー内圧制御装置45は、前記ロータリーエンコーダ60によって測定された回転角度に基づき、成形加工過程でラップアーム部5が基準位置からどれだけ回転したかをラップアーム部5の動作変位値(基準位置からの回転角度)として検出する制御内容を備えている。勿論、シリンダー内圧制御装置45は、ラップアーム部5が基準位置から変動開始したタイミングである変動開始タイミングも検出することができる。
【0039】
なお、上記シリンダー内圧制御装置45には、市販のモニター65(図5参照)が接続されており、ピストンロッド25の移動長さ、ラップアーム部5の回転角度、及びピストンロッド25又はラップアーム部5の動作開始からの経過時間が当該モニター65に表示されて、作業者がその値を確認できるようにしている。具体的には、モニター65の画面表示を切り替えることにより、複数の情報を確認することができるようにしている。例えば、図6に示されるように、横軸をピストンロッド25の変動開始からの経過時間である動作時間、縦軸をピストンロッド側圧力室27の内圧としたグラフをモニター65で表示することができる。また、図7に示されるように、横軸をピストンロッド25の基準位置からの移動長さ、縦軸をピストンロッド側圧力室27の内圧としたグラフも表示できる。さらに、図8に示されるように、横軸をラップアーム部5の基準位置からの回転角度、縦軸をピストンロッド側圧力室27の内圧としたグラフも表示できる。
【0040】
次に、上述のストレッチベンダー機1の調整作業について説明する。
まず、図2に示されるように、ワークWの両端をテンションチャック26で保持し、その加工部位を曲げ加工用金型4に密着させる。このワークWが保持された状態におけるピストンロッド25の位置、及びラップアーム部5の位置をそれぞれ上記した基準位置とする。
【0041】
次に、ピストンロッド側圧力室27の内圧を、5.0MPa(基準内圧)とする。このとき、作動油供給装置34からは、所定量の作動油がピストンロッド側圧力室27又はキャップ側圧力室28に供給されて、適宜、内圧調整される。なお、ピストンロッド側圧力室27の内圧は、内圧センサー50で測定されてモニター65で確認することができる。
【0042】
そして、基準内圧が維持される引張状態が確保されると、一連の成形加工を実行する。具体的には、ラップアーム部5を所定の動作態様(回転速度、回転角度)で回動開始して、ワークWを曲げ加工用金型4に沿って湾曲させる。
【0043】
ここで、前記ワークWが大きな角度で曲げ加工されると、油圧シリンダー10による引張力が急激に増大し、ピストン部19がシリンダーチューブ17内で急激に前進する。そうすると、ピストンロッド側圧力室27が前記基準内圧に比して急激に高圧化し(例えば5.1MPa)、ピストンロッド側圧力室27内に異常圧が発生する。
【0044】
このとき、作業者は、モニター65で表示(報知)される上記グラフにより異常圧の発生を把握することができる。すなわち、シリンダー内圧制御装置45は、内圧センサー50から送信される測定データに基づいてピストンロッド側圧力室27が高圧(5.1MPa)となったことをモニター65で表示する。さらに、作業者は、モニター65の画面表示(図6〜8参照)により、異常圧が発生した時点における動作時間、ピストンロッド25の基準位置からの移動長さ、又はラップアーム部5の基準位置からの回転角度等を確認することができる。
【0045】
例えば、図6に示される画面表示によれば、ラップアーム部5の動作時間が71秒であるときに、異常圧が発生したことが確認できる。また、図7に示される画面表示によれば、ピストンロッド25が基準位置から90mmだけ移動したときに、異常圧が発生したことが確認できる。また、図8に示される画面表示によれば、ラップアーム部5が基準位置から60度だけ回転したときに、異常圧が発生したことが確認できる。
【0046】
そして、作業者は、モニター65で確認した情報に基づいて、油圧シリンダー10の引張力、ラップアーム部5の回転角度、ラップアーム部の回転速度等を修正して、所望の曲げ製品が得られるように順次調整作業を行う。
【0047】
なお、上述のモニター65の表示態様は、加工開始から継続的にピストンロッド25及びラップアーム部5の動作変位をモニタリングしてグラフ表示し、異常圧発生時の動作変位値や動作時間を表示する構成であるが、異常圧が発生した瞬間の動作変位や動作時間のみを表示する構成としても良い。すなわち、本発明は、少なくとも異常圧発生時の動作変位や動作時間を報知することを特徴とするものである。
【0048】
なお、ピストンロッド25の移動長さを測定する移動長さ検出装置54、ラップアーム部5の回転角度を測定するロータリーエンコーダ60、及び上記制御内容を実行して動作変位値を検出するシリンダー内圧制御装置45により、本発明に係る動作変位値検出手段が構成される。
【0049】
また、異常圧を検出するとモニター65により動作変位値を報知する制御内容を実行するシリンダー内圧制御装置45により、本発明に係る動作変位値報知手段が構成される。
【0050】
また、時間計測するタイマー47、及び動作時間を算出する制御内容を実行するシリンダー内圧制御装置45により、本発明に係る動作時間計測手段が構成される。
【0051】
また、異常圧を検出するとモニター65により動作時間を報知する制御内容を実行するシリンダー内圧制御装置45により、本発明に係る動作時間報知手段が構成される。
【0052】
また、上記構成のほか、検出した動作時間と動作変位値とから動作速度を算出してモニター65で表示する構成としても良い。また、図6〜図8のようにグラフ化した表示態様の他、数値化して数値を表示する構成としても良い。
【0053】
また、上記構成は、ピストンロッド25及びラップアーム部5に動作変位値を検出するロータリーエンコーダ55,60を配設した構成であるが、ピストンロッド25又はラップアーム部5にロータリーエンコーダ55,60を配設した構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ストレッチベンダー機1の側面図である。
【図2】ストレッチベンダー機1の平面図である。
【図3】油圧シリンダー10を示す拡大斜視図である。
【図4】ロータリーエンコーダ60を示す概念図である。
【図5】油圧シリンダー10の内部構造、及びストレッチベンダー機1の制御回路を説明する説明図である。
【図6】モニター65の表示内容を示す説明図である。
【図7】モニター65の表示内容を示す説明図である。
【図8】モニター65の表示内容を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ストレッチベンダー機
4 曲げ加工用金型
5 ラップアーム部
9 ピストン部
10 油圧シリンダー
17 シリンダーチューブ
25 ピストンロッド
26 テンションチャック
27 ピストンロッド側圧力室
28 キャップ側圧力室
45 シリンダー内圧制御装置
47 タイマー
50 内圧センサー
51 測定部
54 移動長さ検出装置
60 ロータリーエンコーダ
65 モニター
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油が投入される中空形状のシリンダーチューブと、該シリンダーチューブ内に摺動可能に配設されたピストン部と、末端に該ピストン部が接続され、かつ先端に所定形状の型に配置された長尺状のワークを保持する保持手段が接続された杆状のピストンロッドとを具備すると共に、ピストン部によりシリンダーチューブ内にピストンロッド側圧力室とキャップ側圧力室とが画成されてなる油圧シリンダーと、
油圧シリンダーと連係してなる動作部と
を備え、
動作部が所定態様で動作することにより、油圧シリンダーを介して前記ワークを引張し、かつ当該ワークを前記型に沿って湾曲させる一連の成形加工を行うものであるストレッチベンダー機において、
ピストンロッド側圧力室の内圧を測定する内圧測定手段と、
ピストンロッド及び/又は動作部の、予め定められた基準位置からの変位値である動作変位値を検出する動作変位値検出手段と、
前記成形加工中に内圧測定手段が予め定められた基準内圧よりも高い内圧を測定すると、その時点のピストンロッド及び/又は動作部の動作変位値を報知する動作変位値報知手段と
を備えたことを特徴とするストレッチベンダー機。
【請求項2】
ピストンロッド及び/又は動作部が予め定められた基準位置から動作開始したタイミングからの経過時間である動作時間を計測する動作時間計測手段と、
成形加工中に内圧測定手段が予め定められた基準内圧よりも高い内圧を測定すると、その時点におけるピストンロッド及び/又は動作部の動作時間を報知する動作時間報知手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のストレッチベンダー機。
【請求項3】
内圧測定手段は、
測定部を具備し、該測定部が前記ピストンロッド側圧力室内に配置されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のストレッチベンダー機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−142718(P2008−142718A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329747(P2006−329747)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(592172699)株式会社東晃製作所 (5)
【Fターム(参考)】