説明

ストレッチ布帛

【課題】 ストレッチ機能に加えて、優れた抗菌性および消臭性、特に加齢臭消臭機能を備えたストレッチ布帛を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)紡績糸に対してカルボキシル基を含有するセルロース系繊維を100〜5重量%および紡績糸に対してポリエステル繊維を0〜95重量%含む紡績糸、および(B)ポリウレタン弾性繊維を含有し、(A)紡績糸を布帛に対して99〜70重量%、および(B)ポリウレタン弾性繊維を1〜30重量%含有する布帛であって、抗菌剤が吸尽もしくは担持されているストレッチ布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性および消臭性を有するストレッチ布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常生活の中で快適性への要望が高まっており、衣服用布帛(衣服用織物・編物・繊維構造物など)については快適な伸縮性に加えて消臭性についても注目されている。
例えば、木綿繊維等のセルロース系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合させて得られる改質セルロース系繊維は、アンモニアや屎尿臭等の悪臭に対する消臭性に優れたものとして知られている(例えば、特開平6−184941号公報参照)。一方、消臭性については、高齢化社会の進行により、特に加齢臭の消臭機能が求められている。一般に、加齢臭とは、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸及びノネナールの各臭気成分よりなるものと考えられており、(社)繊維評価技術協議会公表の「消臭加工」の評価基準によれば、加齢臭の消臭には、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸及びノネナールの全ての成分を除去する機能が必須とされている。
【0003】
各種の消臭機能を備えた布帛を得るために種々の試みがなされており、酸化チタン光触媒を付着させた原繊維を編成してなる布帛(例えば、特許文献2参照)、および布帛製品自体を光触媒含有処理液に投入して加工処理する方法(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
しかしながら、出願人の知る限り、加齢臭の優れた消臭性を備えた布帛を得ることができたとは、未だ報告されていないのが現状である。
【0004】
一方、伸縮機能を備えた布帛を得るためにも種々の試みがなされており、種々の弾性繊維の混用によって伸縮性が付与されたストレッチ布帛が知られている(例えば、特許文献4〜7参照)。しかし、これらのストレッチ布帛に対し、ストレッチ布帛自体を後加工法によって処理して消臭性を付与した布帛は、洗濯耐久性や洗濯後のストレッチ性が不十分になるという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−184941号公報
【特許文献2】特開2002−030552号公報
【特許文献3】特開2007−126764号公報
【特許文献4】特開平09−302553号公報
【特許文献5】特開平09−228144号公報
【特許文献6】特開2006−028453号公報
【特許文献7】特開2004−131866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、満足できる加齢臭の消臭性を備えたストレッチ布帛は報告されていない。
本発明は、上記従来のストレッチ布帛の問題点に鑑みて、ストレッチ機能に加えて、優れた抗菌性および消臭性、特に加齢臭消臭機能を備えたストレッチ布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、消臭性を備えたストレッチ布帛を開発する過程で、特定のセルロース系繊維、ポリエステル繊維、およびポリウレタン弾性繊維の組合せが加齢臭に対し驚くべき消臭性を発現することを発見した。本発明は、このような知見に基づいて、更に鋭意開発を重ねて完成に至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[1] (A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維を紡績糸に対して100〜5重量%およびポリエステル繊維を紡績糸に対して0〜95重量%含む紡績糸、および(B)ポリウレタン弾性繊維を含有し、(A)紡績糸を布帛に対して99〜70重量%、および(B)ポリウレタン弾性繊維を1〜30重量%含有する布帛であって、抗菌剤が吸尽もしくは担持されているストレッチ布帛。
[2] カルボキシル基を含有するセルロース系繊維がセルロース系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させて得られる改質セルロース系繊維である[1]記載のストレッチ布帛。
[3] 紡績糸が、リング・トラベラー法、オープンエンド法、結束法および精紡交撚法のいずれか1種以上の製造方法により得られたものである[1]または[2]に記載のストレッチ布帛。
[4] ポリエステル繊維の1g当たりの繊維表面積が約0.1m以上またはポリエステル繊維の単繊維繊度が約3デニール以下である[1]〜[3]のいずれかに記載のストレッチ布帛。
[5] ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンのウレタン基濃度が約0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下である[1]〜[4]のいずれかに記載のストレッチ布帛。
[6] ポリウレタン弾性繊維が、下記の構造単位(a)を5〜25モル%及び構造単位(b)を95〜75モル%含む数平均分子量が250〜10000であるポリアルキレンエーテルジオールと、ジイソシアネート化合物と、ジアミノ化合物とを重合させて得られるポリウレタンウレアからなる[1]〜[5]のいずれかに記載のストレッチ布帛。
【化1】

(ただし、R1は炭素原子数が好ましくは1〜3の直鎖のアルキレン基、R2は水素または炭素原子数が好ましくは1〜3のアルキル基をそれぞれ表す。)
[7] ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンの有効末端アミン濃度が15〜50meq/kgである[1]〜[6]のいずれかに記載のストレッチ布帛。
[8] 抗菌剤が有機窒素硫黄系化合物、第4級アンモニウム系化合物、リン酸エステル系化合物および金属イオンを含有する無機系化合物のいずれか1種以上から選択されてい
る[1]〜[7]のいずれかに記載のストレッチ布帛。
[9] 目付が100〜1000g/mであり、タテ方向および/またはヨコ方向の伸長率が5%以上である[1]〜[8]のいずれかに記載のストレッチ布帛。
[10] 紡績糸が6〜60英式綿番手である[1]〜[9]のいずれかに記載のストレッチ布帛。
[11] 抗菌剤による吸尽もしくは担持処理に際し、抗菌剤を含む処理液のpHが5.0以上6.0以下の範囲である[1]〜[10]のいずれかに記載のストレッチ布帛。
【発明の効果】
【0009】
本発明のストレッチ布帛は、ストレッチ機能に加えて、優れた抗菌性および消臭性、特に加齢臭消臭機能を兼ね備えており、更に、これら全ての機能が布帛の洗濯後も低下しないか低下の度合が少ない点で洗濯耐久性が驚くほど優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のストレッチ布帛製造においては、(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維が紡績糸100重量%に対して100〜5重量%およびポリエステル繊維が紡績糸100重量%に対して0〜95重量%からなる紡績糸が用いられる。
【0011】
本発明におけるセルロース系繊維は、特に限定されないが、綿、麻などのセルロース系天然繊維やレーヨンなどのセルロース系再生繊維、半合成セルロース系繊維、いわゆる指定外繊維(リヨセル、キュプラ)等が挙げられる。特にリヨセルは、その柔らかな風合いや吸湿性の良さから衣料用素材として好ましく用いられる。
【0012】
本発明におけるカルボキシル基を含有するセルロース系繊維とは、好ましくは、前記セルロース系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させて得られる改質セルロース系繊維を挙げることが出来る。前記改質セルロース系繊維はアンモニアやアミン、屎尿臭等の塩基性悪臭物質に対する吸着性に優れており、消臭繊維として好ましい。そして、前記改質セルロース系繊維は、後述のポリウレタン弾性繊維との混用において、消臭性に対する相乗効果を発揮できる観点で好ましい。尚、前記改質セルロース系繊維の製造方法は、日本蚕毛染色株式会社の所有する特許第3239146号(特開平6−184941号公報)に開示されている。例えば、アクリル酸およびビニルスルホン酸ナトリウムからなるモノマー混合物またはアクリル酸およびビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドからなるモノマー混合物を含むメタノール水溶液に被処理セルロース系繊維製品を浸漬した状態で放射線グラフト重合する方法である。
【0013】
本発明におけるポリエステル繊維は、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ホリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレングリコールテレフタレートあるいは、これらの構成単位を主体とし、他の共重合成分を共重合したポリエステル系樹脂から得られたポリエステル繊維であり、特に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート系繊維、即ち、主たるポリマーがポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエチレンテレフタレートである繊維である。
【0014】
例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはエチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し成分とするもの(好ましくは繰り返し単位の90モル%以上のもの)、ブチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し成分とするもの(好ましくは繰り返し単位の90モル%以上のもの)などからなる繊維を好ましく用いることができる。なかでも、エチレンテレフタレート単位が90モル%以上繰り返し成分とするポリエステルからなる繊維が好ましく、エチレンテレフタレート単位が95モル%以上繰り返し成分とするポリエステルからなる繊維であることがより好ましい。エチレンテレフタレート単位が100モル%繰り返し成分とするポリエステル、すなわち、ポリエチレンテレフタレートからなる繊維であることはさらに好ましい。このポリエチレンテレフタレート系繊維は、良好な風合い、光沢を有し、またしわになりにくいなどのイージーケア性があり、伸縮性を有する布帛を構成する繊維素材として好適である。また、ポリエチレンテレフタレート系繊維は、本発明で好ましく用いられるポリウレタンウレア弾性繊維との組合せで用いる場合に好適であって、良好なストレッチ布帛とすることが可能である。
【0015】
これら、ポリエステル繊維の断面形態は丸形、異形を問わない。
また、吸水速乾性ポリエステル繊維糸が好ましく用いられる。吸水速乾性のポリエステル繊維としては、中空繊維の壁面に更に小さな孔が多数設けられている繊維や、繊維表面などに多くの溝や孔などが設けられて、吸水性はこれら繊維自体の微小な孔、繊維表面の溝、繊維間、糸間の空隙に水分が吸収されるようにした異形断面形状の繊維などで、合成繊維メーカーにより、吸水速乾性繊維として各種市販されているものを用いることができる 。例えば、吸水速乾性ポリエステル繊維としては、インビスタ社製“クールマックス”、東レ株式会社製“セオα”、帝人ファイバー株式会社製“ウエルキイ”、東洋紡績株式会社製“ドライファスト” 、旭化成せんい株式会社製“テクノファイン”などが挙げられる。
吸水速乾性を付与するには、前述したようにポリエステル繊維やアクリル繊維など重合体自体として吸湿性の少ない素材を用い、中空繊維状にしてその壁面に更に小さな孔が多数設けられている繊維の形状にしたものや、繊維表面などに多くの溝や孔などが設けられて、吸水性はこれら繊維自体の微小な孔、繊維表面の溝、繊維間、糸間の空隙に水分が吸収されるようにした異形断面形状の繊維など、水分の入り込む微小な孔や空隙を設けたものなどが挙げられる。
【0016】
また、必要なら帯電防止性の合成繊維として、ポリエステル導電性繊維を用いてもよい。導電性繊維としては、導電性物質として例えばカーボンブラックを用いた複合ポリエステル繊維(例えばカネボウ合繊株式会社製“ベルトロン”)、白色のヨウ化銅や金属複合酸化物(例えば、TiO・SnO・Sb)を用いた複合ポリエステル繊維などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明に用いられるポリエステル繊維は、好ましくは織編物1g当たりの繊維表面積が0.1m以上または単繊維繊度が約3デニール以下であるもの、更に好ましくは表面積が0.12m以上または単繊維繊度が約3デニール以下のものである。繊維に抗菌剤が付着または吸尽する作用は繊維の表面積もしくは繊維の単繊維繊度に依存するので、表面積が0.1m以上の繊維または単繊維繊度が約3デニール以下の繊維では、高度な工業洗濯耐久性を有する抗菌性繊維構造物(布帛)を得ることができる。
【0018】
本発明の(A)紡績糸は、カルボキシル基を含有するセルロース系繊維が紡績糸100重量%に対して100〜5重量%およびポリエステル繊維が紡績糸100重量%に対して0〜95重量%からなるものである。
前記カルボキシル基を含有するセルロース系繊維の(A)紡績糸中の含有割合は、100〜5重量%とされ、好ましくは100〜10重量%、より好ましくは100〜50重量%、最も好ましくは75〜60重量%とされる。
【0019】
例えば、リヨセル繊維に対して前記定法によりメタクリル酸5重量%をグラフト重合することにより改質した改質リヨセル繊維が100重量%からなる紡績糸、リヨセル繊維に対して定法によりメタクリル酸10重量%をグラフト重合することにより改質した改質リヨセル繊維が30重量%とポリエステル繊維が70重量%からなる紡績糸、木綿に対して定法によりメタクリル酸10重量%をグラフト重合することにより改質した改質綿が90重量%とポリエステル繊維が10重量%からなる紡績糸などが挙げられる。そのうち、最も好ましくは、リヨセル繊維に対して定法によりメタクリル酸10重量%をグラフト重合することにより改質した改質リヨセル繊維が75〜60重量%とポリエステル繊維が25〜40重量%からなる紡績糸である。
【0020】
さらには、布帛の風合いなどの観点から、前記改質を施さないセルロース系繊維を混用することにより、(A)紡績糸中のカルボキシル基を含有するセルロース系繊維の含有割合を上記の含有率に調整することも好ましく行われる。例えば、リヨセル繊維に対して定法によりメタクリル酸5重量%をグラフト重合することにより改質した改質リヨセル繊維が10重量%と綿が90重量%からなる紡績糸、リヨセル繊維に対して定法によりメタクリル酸10重量%をグラフト重合することにより改質した改質リヨセル繊維が30重量%と綿が70重量%からなる紡績糸、綿に対して定法によりメタクリル酸10重量%をグラフト重合することにより改質した改質綿が30重量%と綿が70重量%からなる紡績糸、レーヨンに対して定法によりメタクリル酸10重量%をグラフト重合することにより改質した改質レーヨンが50重量%とレーヨンが50重量%からなる紡績糸、キュプラに対して定法によりメタクリル酸12重量%をグラフト重合することにより改質した改質キュプラが80重量%とレーヨンが20重量%からなる紡績糸、リヨセル繊維に対して定法によりメタクリル酸5重量%をグラフト重合することにより改質した改質リヨセル繊維が10重量%、綿が60重量%、ポリエステル繊維が30重量%からなる紡績糸などが挙げられる。
【0021】
なお、(A)紡績糸中のカルボキシル基を含有するセルロース系繊維が5重量%未満の場合、消臭効果が著しく低下する。なお、(A)紡績糸は、カルボキシル基を含有するセルロース系繊維が100〜5重量%およびポリエステル繊維が0〜95重量%からなり、さらにポリエステル繊維以外の複数種の合成繊維、例えば、ポリアミド繊維、ポリアクリルニトリル繊維、そして、羊毛、絹等の天然繊維が、50重量%未満の割合で組み合わされたものであっても良い。
【0022】
本発明における(A)紡績糸は、吸水性を向上させる観点から、カルボキシル基を含有するセルロース系繊維(好ましくは改質リヨセル繊維)とポリエステル繊維との混紡糸、特に吸水速乾性ポリエステル繊維との混紡糸とすることが好ましく、また、カルボキシル基を含有するセルロース系繊維と帯電防止性のポリエステル導電性繊維との混紡糸とすることが好ましい。
また、(A)紡績糸は、公知方法に従って製造されてよく、例えば、リング・トラベラー法、オープンエンド法、結束法および精紡交撚法のいずれか1種以上の製造方法により得られたものであることが好ましい。
【0023】
本発明における(A)紡績糸の繊度は、特に限定されないが、6〜60英式番手が好ましい。番手とは糸の太さの単位のことをいい、番手数が大きくなるほどその糸は細くなる。本発明においては前記した太さの範囲の単糸、双糸とも好適に使用することができる。
尚、6番手より太い糸を使用すると布帛が厚くなりすぎてソフト性に欠けるので好ましくなく、60番手より細い糸を使用すると薄くなりすぎ、傷みやすくなるため好ましくない。
【0024】
本発明におけるポリウレタン弾性繊維は、ポリウレタンおよびポリウレタンウレアのいずれからなる弾性繊維でよい。
【0025】
ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンのウレタン基濃度は、好ましくは約0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下、より好ましくは約0.4mol/kg以上1.0mol/kg以下である。ウレタン基濃度は、(ポリウレタン系樹脂に含有されるポリマージオール(mol))×2/(ポリウレタン系樹脂重量(kg))として算出される。
【0026】
また、ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンの有効末端アミン濃度は、15〜50meq/kgであることが好ましい。有効末端アミン濃度は、以下の方法によって算出される。まず、ポリウレタンまたはポリウレタンウレアの溶液をN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)で希釈して、濃度が2重量%の溶液25mlとし、p−トルエンスルホン酸(0.01N)で電位差滴定して、第1級アミンと2級アミンとの含量合計(a)を求める。次いで、この溶液にサリチルアルデヒドを添加して、第1級アミンと反応させた後、第2級アミンをp−トルエンスルホン酸(0.01N)で電位差滴定し、第2級アミン濃度(b)を求める。有効末端アミン濃度は次式により算出される。
有効末端アミン濃度(meq/kg)=(a)−(b)
【0027】
ポリウレタンウレア弾性繊維は、好ましくは、下記の構造単位(a)を約5〜25モル%及び構造単位(b)を約95〜75モル%含む数平均分子量が約250〜10000であるポリアルキレンエーテルジオールと、ジイソシアネート化合物と、対称性ジアミノ化合物、より好ましくは対称性芳香族系ジアミノ化合物とを重合させて得られるポリウレタンウレアであり、このポリウレタンウレアを通常の紡糸方法で紡糸することによって製造される弾性繊維である。
【0028】
【化2】

(ただし、R3は炭素原子数が好ましくは1〜3の直鎖のアルキレン基、R4は水素または好ましくは炭素原子数1〜3のアルキル基をそれぞれ表す。)
【0029】
上記構造単位(a)は、ポリアルキレンエーテルジオール中に側鎖を導入させるためのものであり、例えば、3−メチル−テトラヒドロフランに由来する構造単位や、ネオペンチルグリコールに由来する構造単位で代表される。なかでも、前記式中、R1が炭素数2の直鎖アルキレン基、R2が水素である構造単位が特に好ましい。
【0030】
このポリアルキレンエーテルジオールは、分子鎖中に側鎖を有することにより、高い柔軟性と高い回復性をもつ。さらに、このように側鎖を有するポリエーテルジオールを用いて製造されるポリウレタンウレア弾性繊維は、高温染色や高温熱セットに対する耐久性が向上し、回復応力の低下が著しく抑制される。
【0031】
また、上記構造単位(a)と上記構造単位(b)とからなる共重合は、好ましくはブロック共重合またはランダム共重合であるが、特に、分子鎖の末端部分に上記構造単位(a)がリッチに存在することが好ましい。即ち、分子鎖の末端に占める上記構造単位(a)の割合(末端a割合)が、分子鎖全体中の上記構造単位(a)の割合(全体a割合)よりも多く、例えば、全体a割合に対する末端a割合の値が2倍以上であることが好ましい。このようにすれば、特に高温染色時の弾性繊維の回復応力の保持をさらに高めることができる。
このように上記構造単位(a)が分子鎖末端部分にリッチに存在するためには、上記構造単位(a)を形成させるモノマーと上記構造単位(b)を形成させるモノマーとを重合させる工程の終期において、上記構造単位(a)を形成させるモノマーを追加供給して反応させる重合方法をとればよい。この追加供給するモノマーの量や供給タイミング等により、末端中に存在する構造単位(a)割合を所望水準に制御することができる。
【0032】
なお、上記した両モノマーとして、3−メチル−テトラヒドロフランとテトラヒドロフランとを用いる場合には、触媒として、例えばテトラヒドロフランを開環させ得る強酸、例えばクロロスルホン酸、2−フロロスルホン酸、過塩素酸などを存在させ、0〜50℃程度の温度で共重合反応させて、上記構造単位(a)及び構造単位(b)からなるポリアルキレンエーテルジオールを製造することができる。
【0033】
ポリアルキレンエーテルジオール中において、上記構造単位(a)の割合は5〜25モル%であり、好ましくは8〜20モル%である。上記構造単位(b)は残りの割合である。このような割合で上記構造単位(a)が含まれることにより高温での染色がより好ましくできる。
【0034】
本発明で好ましく用いるポリウレタン弾性繊維は、上記した特定のポリアルキレンエーテルジオールをポリオールとして用いて重合されるポリウレタンウレアから構成されるので、弾性繊維の伸度が高くなり、強度も上がり、さらに数度の染色も可能となり、染色後も、高い伸縮性を保持することでできる。
【0035】
本発明で使用されるジアミノ化合物の一例である対称性ジアミノ化合物としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン等が挙げられるが、繊維着色防止の点からはジアミノジフェニルメタン(以下、MBAと略す)が好ましい。
また、ジイソシアネート化合物としては通常のものが用いられ、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)が用いられる。
【0036】
ポリウレタンウレアは、例えば、ポリアルキレンエーテルジオール約1モルとジイソシアネート化合物約2モルとから得られるプレポリマーを、対称性芳香族系ジアミノ化合物で鎖伸長させることによって製造することができる。このポリウレタンウレア中には、ポリアルキレンエーテルジオールとジイソシアネート化合物とから形成されたウレタン結合(−NHCOO−)をもつ構造単位が存在し、さらに、対称性芳香族系ジアミノ化合物とジイソシアネート化合物とから形成されたウレア結合(−NHCONH−)をもつ構造単位とが存在する。また、ジイソシアネート化合物としてMDIを用い、対称性芳香族系ジアミノ化合物としてMBAを用いる場合には、MDIのDMAc溶液中に水を添加してMBAを生成させる反応を利用することもできる。即ち、鎖伸長剤としてMBAを添加する代わりに、水を添加して、残存MDIと水とを反応させてMBAを系内で生成させ、このMBAを鎖伸長剤として作用させ、ポリウレタンウレアを生成することもできる。
【0037】
ポリウレタンウレア中に存在するウレア結合をもつ構造単位(ウレア構造単位)は、一般に水素結合が多い方が耐熱性が高いと推定される。しかし、実際には、MDIとエチレンジアミンとから形成されるウレア構造単位を含むポリウレタンウレアの繊維よりも、MDIとMBAとから形成されるウレア構造単位を含むポリウレタンウレアの繊維の方が、高温水処理、高温スチーム処理、また、乾熱処理した際のポリマーの劣化が小さく抑えられ、処理後の弾性繊維の回復応力保持率が高く、残留ひずみ低下率が大きくなる。その理由は定かではないが、水素結合が多く存在すると分子中に水が浸透し易いのに対し、芳香環を有する化合物は分子中に水が浸透し難いので、鎖伸長剤としてMBAのような芳香環を有する対称性芳香族系ジアミノ化合物を用いた場合、分子中への水の浸透が少なく抑えられ、この結果として、得られるポリウレタンウレアの耐熱水性が向上するものと考えられる。
【0038】
さらに、本発明で好ましく用いるポリウレタン弾性繊維は耐熱水性はもとより、耐乾熱性も高い。この理由は定かではないが、ポリマー中に芳香族系のウレア基を有することにより、その凝集性が高まり、弾性繊維を加熱したとき、グライコール成分の動きを抑え込むことが可能になり、結果として耐乾熱性が向上するものと推定される。従って、ジアミノジフェニルメタンのような対称性芳香族系ジアミノ化合物で鎖伸長して得られるポリウレタンウレアを用いることにより、弾性繊維の耐湿熱性や耐乾熱性を高めることが可能になると考えられる。
【0039】
本発明で用いるポリウレタンウレア弾性繊維は、高温染色工程において、高温の熱水や高温のスチームに曝され、さらに伸びや張力などが付加される条件下におかれるが、この条件下で弾性繊維が受ける回復力の低下は、必ずしも水素結合の多さのみに比例するものではないと推定される。伸長状態の弾性繊維を熱水で処理したり、またスチームで処理したりする場合、ポリマーの熱分解や加水分解などが生じて、弾性繊維の回復性が低下するものと考えられる。しかし、本発明で好ましく用いる弾性繊維は、こうした湿熱処理条件下で処理された弾性繊維の残留ひずみが、処理する前の弾性繊維よりも低下するものである。
【0040】
本発明に使用するポリウレタンウレア弾性繊維は、さらに、以下の特性を有することが好ましい。つまり、130℃の熱水中で定長で60分間処理した糸の回復応力の保持率(未処理の糸の回復応力と比較しての保持率。以下、熱水保持率という。)が55%以上であり、かつ該処理により残留ひずみが低下する特性を有することが好ましい。ここで、熱水保持率は、弾性繊維を2倍に伸ばした状態で60分間熱処理することによって保持される200%伸長時回復応力である。200%伸長時回復応力は、弾性繊維を5回繰返し伸長し回復させた5回目回復時の応力であり、また、残留ひずみは、この繰り返し伸長後の変形を元の長さで割った値である。ポリウレタンウレア弾性繊維の熱水保持率は55%以上が好ましく、特に好ましいのは58%以上である。
【0041】
また、かかる熱水処理した後の弾性繊維の残留ひずみは、処理前の糸に比較して低いことが好ましい。特に好ましいのは、処理後の弾性繊維の残留ひずみが、処理前の弾性繊維の残留ひずみよりも1%以上低下することである。 残留ひずみが小さいほど弾性回復特性は優れているので、このように残留ひずみが低下するのは、熱水処理を経た後でも、糸を構成するポリマー自体は優れた回復特性をもっていることを意味する。このような熱水保持率の値や残留ひずみ特性を有するポリウレタンウレア弾性繊維を、本発明における上記(A)紡績糸と用いると、本発明で用いる抗菌剤の吸尽もしくは担持加工時および染色加工時などで高温湿熱処理をしても、得られる伸縮性繊維構造物としての布帛の回復性が高く、伸縮性に富んだ本発明のストレッチ布帛となるのである。
【0042】
また、より好ましいポリウレタンウレア弾性繊維は、さらに、130℃のスチーム中で定長で1分間処理した糸の回復応力の保持率(未処理の糸の回復応力と比較しての保持率。以下、スチーム保持率という。)が、85%以上であり、かつ、上記スチーム処理により残留ひずみが低下する特性を有するものである。かかる特性の繊維として更に好ましいのは、スチーム保持率が90%以上であり、かつ該処理糸の残留ひずみが未処理の糸より1%以上低いものである。このようなスチーム保持率の値や残留ひずみ特性を有する弾性繊維を上記(A)紡績糸とともに用いて伸縮性繊維構造物としての布帛を製造すると、高温染色や繰り返し染色でのトラブル発生が少ないストレッチ布帛ができるのである。
【0043】
そして、さらに好ましいのは、さらに、200℃の空気中で定長で1分間処理した糸の回復応力の保持率(より詳しくは、未処理の糸の回復応力と比較しての保持率。以下、乾熱保持率という。)が50%以上であるポリウレタンウレア弾性繊維を用いることである。この乾熱保持率は、55%以上であることが更に好ましい。かかる弾性繊維の場合、染色加工時に高温で熱セットすることが必要とされる上記(A)紡績糸を用いた布帛に伸縮性付与素材として混用させても問題なく熱セットすることができ、良好なストレッチ布帛が得られるのである。
【0044】
本発明で好ましく用いるポリウレタンウレア弾性繊維は、前述した特定のポリウレタンウレアからなるとともに、さらに上述したような特性を有することが好ましい。かかる特性のポリウレタンウレア弾性繊維の製法は特に限定されるものではないが、ポリウレタンウレアの組成、分子量や紡糸条件等を任意に制御することによって製造できる。
【0045】
なお、本発明で用いるカルボキシル基を含有するセルロース系繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン弾性繊維には、適宜、各種の無機系・有機系添加剤、安定剤などが含まれていてもよい。例えば、ハイドロタルサイト類化合物、フンタイト及びハイドロマグネサイト、トルマリンなどに代表される各種の鉱物、Ca、Mg、Zn、Al、Ba、Tiに代表される金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物などが、本発明の効果を損なわない範囲内で含まれていてもよい。
【0046】
また、これら無機系添加剤を配合する場合には、その糸中への分散性を向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤またはこれらの混合物で表面処理された無機薬品を用いることも好ましい。
【0047】
さらに、本発明で用いるカルボキシル基を含有するセルロース系繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン弾性繊維には、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、安定剤として、ジビニルベンゼンとp−クレゾールとの付加重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462)、耐光剤、酸化防止剤などとして、いわゆるBHTや住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80などをはじめとする両ヒンダードフェノール系薬剤、チバガイギー社製“チヌビン”等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業(株)製の“スミライザー”P−16等のリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料、フッ素系樹脂粉体またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などを添加してもよいし、またポリマーと反応して存在させてもよい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるためには、酸化窒素捕捉剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN−150、熱酸化安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80等、光安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミソーブ”300#622などの光安定剤などを含有させてもよい。
【0048】
本発明において用いられる抗菌剤としては、特に限定されることなく、有機系・無機系の各種抗菌剤が挙げられ、有機窒素硫黄系化合物、第4級アンモニウム系化合物、リン酸エステル系化合物および金属イオンを含有する無機系化合物のいずれか1種以上よりなるものであることが好ましい。
【0049】
有機系抗菌剤としては、有機窒素硫黄系化合物、フェノール系化合物、有機錫化合物、有機銅化合物、有機銀化合物などの抗菌性金属イオンを有する有機抗菌剤、各種有機シリコーン系第4級アンモニウム塩、アルキルリン酸エステルの第4級アンモニウム塩(例えば、セチルジメチルアンモニウムクロライドなど)、塩化ベンザルコニウム、アルキルアリールスルホネート、ハロフェノール及び酢酸フェノール第二水銀等有機系抗菌剤、ポリフェノール類、キトサンが挙げられる。
抗菌剤における抗菌活性部位としてアミノ基が好ましく、アリルアミノおよびジアリルアミノがより好ましく、アミン系抗菌剤として体的には、ジメチルアミンとエピクロルヒドリン縮合物やジアリルアミン誘導体系重合物やアリルアミンとビニルアミン誘導体重合物が好ましい。洗濯耐久性から1級、2級、3級アリルアミン系重合物が目的とする消臭効果をより高めることができ、得られる布帛の生地ソフト感を阻害しない。
【0050】
また、抗菌性を考慮すると、抗菌剤が繊維表面に付着している状態は、細菌との接触頻度が高く最も優れている。しかしこの状態は抗菌剤が剥離しやすく、洗濯耐久性の観点からは好ましくない。一方、抗菌剤が繊維内部に均一に拡散すると、抗菌性は低下するが洗濯耐久性は向上する。以上のことから、抗菌剤が繊維内部で繊維表面近傍においてリング状に分布、もしくは枝状に繊維表面から内部に分岐拡散している状態が、抗菌性および洗濯耐久性の面で優れていると考えられる。かかる有機系抗菌剤による抗菌加工は、一般的には、後加工で抗菌剤を布帛素材に連続的にパッド、ドライ、キュアする連続処理や、液流染色機等で加熱処理をするバッチ処理等により行われ得るが、予め抗菌剤を含有する繊維を構成繊維として用いることも可能であり、布帛素材表面に抗菌剤を露出せしめられるように施されていることが好ましい。均質な消臭性能と洗濯耐久性の観点から、バッチ処理が好ましい。
【0051】
無機系抗菌剤としては、水不溶性である限り特に限定されるものではなく、銅、銀、亜鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ゲルマニウム、セリウム等の遷移金属の水酸化物、アルミニウム、珪素、スズ、アンチモン等の両性金属の水酸化物、マグネシウム等の水酸化物、アルカリ金属を除く金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、アルミン酸塩、ジルコン酸塩等が例示される。これら金属化合物の中では、水酸化亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛が特に好適である。
【0052】
また、銀をゼオライトに担持させた微粒子組成物をバインダー中に分散した分散液に布帛を含浸し、乾燥し、所定寸法に切断して作成した抗菌性材料も用いることができる。銀の担体としては、ゼオライトの他にヒドロキシアパタイト、シリカゲル、シリカ・アルミナ、リン酸ジルコニウムなどを用いることもできる。
ゼオライトに担持させた銀の代わりに、銅,亜鉛などの抗菌性金属またはその酸化物,水酸化物,または塩、β−ツジャプリシン(ヒノキチオール)、ポリフェノン類、ティトリーオイル、塩化ベンザルコニウム系,塩化ベンゼトニウム系などの陽イオン界面活性剤、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩などの両性界面活性剤、グルコン酸クロルヘキシジン,ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩などのビグアナイド化合物、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、2,3,5,6−チトクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジン、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、トリメトキシシリル−プロピルオクタデシルアンモニウムクロライド、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、デヒドロ酢酸ナトリウム、サリチル酸、パラオキシ安息香酸エステル類、N−ココイル−L−アルギニンエチルエステル・ピロリドンカルボン酸塩、ヘキサクロロフェンの1種以上を、含浸して、または担体に担持させた組成物をバインダーを用いて付着させて用いることも好ましい。
【0053】
中でも、酸化亜鉛は、微粒子化されると、抗菌性能ならびに消臭性能が発現するばかりか、体臭で汗の分解に起因する酢酸・イソ吉草酸等の酸性ガスを化学的に消臭する能力が高くなる。また、酸化亜鉛は化粧品の原料に使用され人体に対する安全性が高いことが実証されており、皮膚と直接接触することの多い衣料の抗菌剤及び酸性ガスの消臭剤として優れている。
【0054】
また、光半導体粉末の光触媒作用により殺菌・抗菌が行われる抗菌剤も好ましく用いられる。この光触媒作用は、一方の電極が光半導体粉末である光半導体セラミックスで、他方の電極が金属とされる電気化学セルによって化学的作用として発生される。かかる光半導体粉末として、TiO2 、CdS、CdSe、WO3 、Fe23 、SrTiO3、KNbO3 等が用いられ、金属粉末としては、金、銀、白金、銅等の種々の金属粉末が用いられる。
【0055】
本発明においては、上記抗菌剤が、布帛全体の重量に対し、好ましくは約0.1〜10重量%、より好ましくは約0.1〜5重量%吸尽もしくは担持されているのが好ましい。
本発明のストレッチ布帛は、上記抗菌剤による吸尽もしくは担持処理に際し、抗菌剤を含む処理液のpHが5.0以上6.0以下の範囲で吸尽もしくは担持処理されたものであることが好ましい。
【0056】
すなわち、上記(A)紡績糸が99〜70重量%、および(B)ポリウレタン弾性繊維が1〜30重量%を含有するストレッチ布帛への抗菌剤による吸尽もしくは担持処理は、通常、常法により行われ得る。例えば、布帛の染色液中にて同時に抗菌剤を投入して行うバッチ処理や連続処理が挙げられ、単独で独立した抗菌剤の吸尽もしくは担持処理する場合には、抗菌剤を必要により溶媒(例えば、水、メタノールなどの有機溶媒)に溶解や分散した処理液に上記布帛又は布帛を含む繊維製品を含浸して液流染色機等で加熱処理するバッチ処理や、またはディッピングの後にマングル等で均一に絞り、乾熱処理する連続処理法等が挙げられる。中でも均質な消臭性能を得る観点からバッチ処理が好ましい。それらの場合の処理液は布帛に存在するカルボキシル基を保護して、良好な消臭性を発現せしめる観点から酸性を維持することが好ましく、抗菌剤を含む好ましい処理液のpHは5.0以上6.0以下の範囲がこのましい。この場合、規定量の抗菌剤が均一にストレッチ布帛に吸収され、吸尽もしくは担持できる。布帛の染色液中にて同時に抗菌剤を投入して行う工程において、黒や紺など濃色染色時のpHは発色の観点から5.0〜6.0が好ましく、白色や淡色の染色時のpHは消臭性能および黄変の観点から、5.5〜6.0が好ましい。また、吸尽またはディッピング工程時間は、通常、1〜120分程度が好ましい。
【0057】
本発明において、消臭性の付与は、ノネナールやイソ吉草酸に対する消臭性を持つポリウレタン系樹脂と、アンモニア等の塩基性ガスに対する消臭性を有するカルボキシル基と、酢酸やイソ吉草酸等の酸性ガスに対する消臭性を有するセルロース系繊維により付与され、また、、尿や汗を分解して臭気を発生させる菌の増殖を抑制する抗菌剤を用いることにより行われている。この場合、酸化チタンの如く、光触媒を用いて、紫外線が当たると活性酸素を発生させ、有機物質を分解させる抗菌性と消臭性を兼ねるものを抗菌剤として用いてもよいのは上述の通りである。
なお、必要により、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブ、嵩比重の大きな非晶質アルミノシリケートなど、のように、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素などの臭気成分に対する吸着性能が高い物質(消臭剤)を更に添加ないし繊維表面に固着させてもよい。もちろん、予め、消臭剤が用いられた繊維を使用してもよい。
【0058】
また、消臭剤としては、ゼオライト、アパタイト(リン灰石)、活性炭、活性アルミナ、活性シリカゲル、ベントナイト、又はセピオライト等のセラミックス粉末、及び絹繊維含有物等または鉄、銅などの金属塩並びにこれらの混合物を挙げることができる。これらの消臭剤は、消臭作用のみならず吸湿作用をも兼ね備えているため、1成分で布帛に脱臭、吸湿の両機能を付与することができる。中でも好ましくはゼオライトが挙げられる。ゼオライトの特長は、無定形もしくは蜂の巣状の無数のミクロン細孔を有しており比表面積が大きい点である。このため湿気にあうと、水分がこの細孔中に吸い込まれ、さらに水分と同時に四大悪臭(アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプトン)を含む無機ガス及びイソ吉草酸やフェノール等を含む有機ガスまでもが吸い込まれる。
【0059】
<ストレッチ布帛>
本発明のストレッチ布帛は、上記した(A)紡績糸と(B)ポリウレタン弾性繊維から常法に従って布帛を製造することにより得られ、織物、編物もしくは不織布のいずれであってもよい。例えば、(B)ポリウレタン弾性繊維に(A)紡績糸をカバーリングしてカバーリング弾性繊維として布帛を得てもよいし、(A)紡績糸に(B)ポリウレタン弾性繊維を裸糸(ベア)のまま織り・編みこんで交編織編地としてもよい。
【0060】
さらに、織物の場合、上記した紡績糸とポリウレタン弾性繊維のみで製織されていてもよく、また、これら以外の繊維が交織されていてもよい。
織物の組織は、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織等の変化組織、蜂の巣織、模紗織、梨地織等の特別組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、風通織、袋織、二重ビロード等の二重織組織、ベルト織等の多層組織、たてビロード、タオル、シール、ベロア等のたてパイル織、別珍、よこビロード、ベルベット、コール天等のよこパイル織、絽、紗、紋紗等のからみ組織等が好ましい。
製織は有杼織機(フライシャットル織機等)または無杼織機(レピア織機、グリッパー織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機等)等によって行われるのが好ましい。
【0061】
また、編物の場合も、上記した紡績糸とポリウレタン弾性繊維のみで製編されていてもよく、また、これら以外の繊維が交編されていてもよい。編物の種類は、よこ(緯)編物であってもよく、また、たて(経)編物等であってもよい。編物の組織は、よこ編は、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畦編、レース編、添毛等が好ましく、たて編は、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャカード編等が好ましい。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。
製編は、丸編機、横編機、コットン式編機のような平型編機、トリコット編機、ラッシェル編機、ミラニーズ編機等によって行われるのが好ましい。
【0062】
さらに、本発明の布帛はタイツ、ストッキング、パンティストッキング、ソックス等の靴下類や下着類に対して、特に好適である。 本発明のストレッチ布帛は、上記(A)紡績糸が99〜70重量%、および(B)ポリウレタン弾性繊維が1〜30重量%を含有する布帛であり、好ましくは(A)紡績糸が95〜80重量%、および(B)ポリウレタン弾性繊維が5〜20重量%を含有する。
【0063】
本発明のストレッチ布帛の製法は特に限定されるものではなく、任意の方法が適用出来る。
なお、(B)ポリウレタン弾性繊維の繊度は特に限定されるものではなく用途に応じて任意のものを使えばよい。
また、本発明のストレッチ布帛は、目付が100〜1000g/mであり、伸長率がタテ方向および/またはヨコ方向とも5%以上であることが好ましく、目付は150〜280g/mであることが特に好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下に単に「%」とあるのは、「重量%」を意味する。
【0065】
<カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維からなる紡績糸>
改質セルロース系繊維としてレンチング社製リヨセル原綿(単糸繊度1.5デニール、繊維長38mm)を用い、メタクリル酸グラフト化率12%カルボキシル化処理を常法により実施した。この改質セルロース系繊維原綿を30%およびポリエステル繊維原綿として米国インビスタ社製ダクロン(R)原綿(単糸繊度1.5デニール、繊維長38mm、以下T702と称する)70重量%からなる原綿を混合し、豊田自動織機社製リング式精紡機を使用して、30番英式綿番手の混紡糸T702−70−SLY−30を作製した(T702はポリエステル種、−70は70%、−SLYはセルロース系繊維種、−30は英式綿番手を表す)。
同様に、改質セルロース系繊維原綿を70%、およびポリエステル繊維原綿30%からなる混紡糸T702−30−SLY−30を作製した。
同様に、改質セルロース系繊維原綿を100%使用し、30番英式綿番手の紡績糸SLY−100−30を作製した。
<ポリウレタン弾性繊維>
【0066】
脱水されたテトラヒドロフラン87.5モルと脱水された3−メチル−テトラヒドロフラン12.5モルとを撹拌機付き反応器に仕込み、窒素シール下、温度10℃で、触媒(過塩素酸70重量%及び無水酢酸30重量%の混合物)の存在下で8時間重合反応を行ない、反応終了液に水酸化ナトリウム水溶液で中和する共重合方法により得られた、数平均分子量2500の共重合テトラメチレンエーテルジオール(3−メチル−テトラヒドロフラン由来の構造単位(a)を12.5モル%含む)を、ポリアルキレンエーテルジオールとして用いた。
この共重合テトラメチレンエーテルジオール1モルに対しMDIを1.41モルになるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に十分に溶解させた。次に、鎖伸長剤としてMBAを含むDMAc溶液を、前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマー中の固体分が29重量%であるポリウレタンウレア溶液を調製した。
【0067】
このポリウレタンウレア溶液を、紡糸口金から高温(350℃)の不活性ガス(N2)中に4フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の糸が撚り合わされるようにエアージェット式撚糸機を通し、4フィラメントを合着させ、540m/分のスピードで巻き取り、4フィラメント合着で33dtexのポリウレタンウレア弾性繊維を製造した。以下、この製品をB−aと略称することがある。
なお、このポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンのウレタン基濃度は0.70mol/kgであり、有効末端アミン濃度は32meq/kgであった。
【0068】
<洗濯方法>
繊維製品新機能評価評議会が制定している、洗濯方法マニュアルに準拠した。すなわち、JIS L0217の洗い方103に規定される家庭電気洗濯機を使用し、40℃の水30リットルに対しJAFET標準洗剤(繊維製品新機能評価評議会製)40ミリリットルを溶解して洗濯液とし、この洗濯液に1kgの試料である被洗濯物を入れる。5分間洗濯、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水、2分間濯ぎ洗い、脱水の工程を1回とし、50回の洗濯を行った。
【0069】
<初期抗菌試験>
繊維製品新機能評価評議会が制定した、繊維製品の定量的抗菌性試験方法マニュアルに準拠した。すなわち、減菌した1/20濃度のニュートリエントブロスに下記試験菌1±0.3×105個/mlを0.4gの試料に均一に接種し、37℃で18時間培養する。培養終了後、試験菌を洗い出し、その液で混釈平板寒天培地を作製し、37℃で24〜48時間培養し生菌数を測定する。なお、未加工品(抗菌処理をしていない試料)に関しては接種直後にも試験菌を洗い出し、その液で混釈平板寒天培地を作製し、37℃で24〜48時間培養することによって、接種した生菌数を測定する。抗菌性は下記式による静菌活性値で評価する。静菌活性値の高いものほど抗菌性に優れている。なお、試験菌として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:ATCC 6538P)を使用した。
静菌活性値:Log(B)−Log(C)
但し、試験成立条件:Log(B)−Log(A)>1.5を満たすこと。
A:未加工品の接種直後に回収した菌数の平均値
B:未加工品の18時間培養回収した菌数の平均値
C:加工品(抗菌処理をした試料)の18時間培養回収した菌数の平均値
試料として洗濯10回実施後の布帛を用いた。結果を表4に示す。
【0070】
<耐久抗菌試験>
試料として洗濯50回実施後の布帛を用い、上記<初期抗菌試験>と同じ試験を行った。結果を表5に示す。
【0071】
<初期消臭試験>
臭気成分として、加齢臭の原因とされている2−ノネナール(C916O、分子量140.2、CAS番号:463−53−8 以下、単にノネナールという)、イソ吉草酸、アンモニア及び酢酸の四成分を用いて消臭試験を行い、下記の方法により消臭性能を評価した。結果を表4に示す。
消臭性能評価
JAFET法に従い、上記四成分について機器分析試験を行い、さらにノネナールについては別途官能試験を行った。なお、洗濯はJIS L 217 103法に従い、その後タンブル乾燥を行った。
機器分析試験:アンモニアと酢酸は検知官法により、イソ吉草酸とノネナールはガスクロマトグラフィー法により測定した。ノネナールは減少率75%以上、イソ吉草酸は減少率85%以上、アンモニアは減少率70%以上、酢酸は減少率80%以上の条件全てを満足する場合を合格(表示○)と判定した。
官能試験:判定者6名のうち、5名以上が下記基準により臭気を弱と判断した場合を合格とした。
臭気強:判定臭ガスより強い場合
臭気弱:判定臭ガスと比較して同等もしくはより弱い場合
【0072】
<耐久消臭試験>
試料として洗濯50回実施後の布帛を用い、上記<初期消臭試験>と同じ試験を行った。結果を表5に示す。
【0073】
<布帛の伸長率(生地伸長性)>
温度23℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S1(%)と温度43℃、湿度65RH%におけるストレッチ率S2(%)を、JIS L1096−1998 6.14.1に規定される伸縮織物の伸縮性のB法(定荷重法)により測定する。
【0074】
[実施例1]
(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維を含む紡績糸として、上述の改質セルロース系繊維原綿を30%、およびポリエステル繊維原綿を70%からなる30番英式綿番手の混紡糸「T702−70−SLY−30」(702はポリエステル種、−70は70wt%、−SLYはセルロース系繊維種、−30は英式綿番手を表す)を使用し、(B)ポリウレタン弾性繊維として上記したB−aを用いて表1に示す条件でベア−天竺丸編生地(釜径38インチ、24ゲージ、114フィーダー)を作製し、ポリウレタン弾性繊維を5%含有する生地を得た。
【0075】
該生地について、表2に示す加工工程および加工条件に従い、一般的にポリエステルとセルロース系繊維混用布帛に適用される二浴法染色加工を実施した。
抗菌剤の吸尽加工については表2に示すように、ポリエステルの染色時に同時実施し、浴比1:10、pH5.0、薬剤濃度5%(生地に対する重量%)で処理を行った。抗菌剤には、下記構造式で表される、重量平均分子量約20,000のアリルアミン・ジアリルアミン系重合物を含有する濃度40%水溶液(PAA−D41−HCl、日東紡績社製)を使用した。
次いで、生地重量に対し、2.5%の抗菌剤が吸尽されたことを確認した。
【0076】
【化3】

【0077】
ファイナルヒートセット工程において生地密度を調整し、最終的に生地目付175g/mのベア−天竺生地を得た。表3に、布帛の構成、編組織などの条件を示す。表4〜5に、布帛の評価結果を示す。抗菌機能、消臭機能、吸汗・速乾性、生地伸長性、生地ソフト感(指触による生地のソフト感を言う。実施例2〜5、比較例1〜3についても同様である)、また洗濯を50回繰り返した後のこれら性能についても、全てに優れる機能を有するストレッチ布帛が得られた。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
[実施例2]
(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維を含む紡績糸および(B)ポリウレタン弾性繊維としては実施例1と同じものを使用し、表3に示すように(B)の給糸重量比を実施例1の2倍とし、ベア−天竺丸編生地を作成し、ポリウレタン弾性繊維を10%含有する生地を得た。二浴法染色加工および抗菌剤の吸尽加工についても実施例1と同様に実施した。
ファイナルヒートセット工程において生地密度を調整し、最終的に生地目付175g/mのベア−天竺生地を得た。次いで、生地重量に対し、2.5%の抗菌剤が吸尽されたことを確認した。
表3に、布帛の構成、編組織などの条件を示す。表4〜5に、布帛の評価結果を示す。抗菌機能、消臭機能、生地伸長性、生地ソフト感、また洗濯を50回繰り返した後のこれ ら性能についても、全てに優れる機能を有するストレッチ布帛が得られた。
【0081】
[実施例3]
(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維を含む紡績糸として、改質セルロース系繊維原綿を70%およびポリエステル繊維原綿を30%からなる30番英式綿番手の混紡糸T702−30−SLY−30を使用し、(B)ポリウレタン弾性繊維としてB−aを用いて、実施例1と同様に、ベア−天竺丸編生地を作成し、ポリウレタン弾性繊維を5%含有する生地を得た。二浴法染色加工および抗菌剤の吸尽加工についても実施例1と同様に実施した。
ファイナルヒートセット工程において生地密度を調整し、最終的に生地目付175g/mのベア−天竺生地を得た。次いで、生地重量に対し、2.4%の抗菌剤が吸尽されたことを確認した。
表3に、布帛の構成、編組織などの条件を示す。表4〜5に、布帛の評価結果を示す。抗菌機能、消臭機能、生地伸長性、生地ソフト感の全てに優れる機能を有するストレッチ布帛が得られた。
【0082】
[実施例4]
(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維を含む紡績糸としては、改質セルロース系繊維原綿を100%からなる30番英式綿番手の紡績糸SLY−100−30を使用し、(B)ポリウレタン弾性繊維としてはB−aを用いて、実施例2と同様に、ベア−天竺丸編生地を作成し、ポリウレタン弾性繊維を10%含有する生地を得た。二浴法染色加工および抗菌剤の吸尽加工についても実施例2と同様に実施した。
ファイナルヒートセット工程において生地密度を調整し、最終的に生地目付175g/mのベア−天竺生地を得た。次いで、生地重量に対し、2.5%の抗菌剤が吸尽されたことを確認した。
表3に、布帛の構成、編組織などの条件を示す。表4〜5に、布帛の評価結果を示す。抗菌機能、消臭機能、生地伸長性、生地ソフト感の全てに優れる機能を有するストレッチ布帛が得られた。
【0083】
[実施例5]
(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維を含む紡績糸および(B)ポリウレタン弾性繊維としては実施例1と同じものを使用し、(B)の給糸重量比を実施例1の5倍とし、ベア−天竺丸編生地を作成し、ポリウレタン弾性繊維を25%含有する生地を得た。二浴法染色加工および抗菌剤の吸尽加工についても実施例1と同様に実施した。 ファイナルヒートセット工程において生地密度を調整し、最終的に生地目付175g/mのベア−天竺生地を得た。次いで、生地重量に対し、2.5%の抗菌剤が吸尽されたことを確認した。
表3に、布帛の構成、編組織などの条件を示す。表4〜5に、布帛の評価結果を示す。抗菌機能、消臭機能、生地伸長性、生地ソフト感の全てに優れる機能を有するストレッチ布帛が得られた。
【0084】
[比較例1]
(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維を含む紡績糸の代わりに、未加工セルロース原綿(メタクリル酸グラフト重合によるカルボキシル化処理を行わないレンチング社製リヨセル原綿、単糸繊度1.5デニール、繊維長38mm、LYと称する。)とポリエステル繊維原綿(T702)からなる混紡糸T702−70−LY−30を実施例1と同様の方法により作製し、このT702−70−LY−30を使用し、(B)ポリウレタン弾性繊維としてB−aを使用し、実施例1と同様に、天竺編地を作製し、実施例1と同様に、抗菌剤加工を施したストレッチ布帛を得た。次いで、布帛重量に対し、2.6%の抗菌剤が吸尽されたことを確認した。
表3に、布帛の構成、編組織などの条件を示す。表4〜5に、布帛の評価結果を示す。消臭機能において、アンモニア吸収能、ノネナール吸収能が不満足であり、消臭性不合格であった。
【0085】
[比較例2]
(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維を含む紡績糸として、T702−70−SLY−30を使用し、(B)ポリウレタン弾性繊維を用いないで、丸編機で編地を作製した。
次に、実施例1と同様に、抗菌剤加工を施した布帛を得た。次いで、布帛重量に対し、2.5%の抗菌剤が吸尽されたことを確認した。
表3に、布帛の構成、編組織などの条件を示す。表4〜5に、布帛の評価結果を示す。消臭機能において、ノネナール吸収能が不満足であり、消臭性不合格であった。また、生地伸長性は不満足であった。
【0086】
[比較例3]
(A)カルボキシル基を含有するセルロース系繊維およびポリエステル繊維を含む紡績糸として、T702−70−SLY−30を使用し、(B)ポリウレタン弾性繊維はB−aを使用し、丸編機で編地を作製した。抗菌剤加工を施さないままの布帛を試験に供した。
表3に、布帛の構成、編組織などの条件を示す。表4,5に布帛の評価結果を示す。消臭機能において、ノネナール吸収能が不満足であり、消臭性不合格であった。また、洗濯を50回繰り返した後のノネナール吸収能についても低下が大きかった。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)紡績糸に対してカルボキシル基を含有するセルロース系繊維を100〜5重量%および紡績糸に対してポリエステル繊維を0〜95重量%含む紡績糸、および(B)ポリウレタン弾性繊維を含有し、(A)紡績糸を布帛に対して99〜70重量%、および(B)ポリウレタン弾性繊維を1〜30重量%含有する布帛であって、抗菌剤が吸尽もしくは担持されていることを特徴とするストレッチ布帛。
【請求項2】
カルボキシル基を含有するセルロース系繊維がセルロース系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させて得られる改質セルロース系繊維であることを特徴とする請求項1記載のストレッチ布帛。
【請求項3】
紡績糸が、リング・トラベラー法、オープンエンド法、結束法および精紡交撚法のいずれか1種以上の製造方法により得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のストレッチ布帛。
【請求項4】
ポリエステル繊維の1g当たりの繊維表面積が約0.1m以上またはポリエステル繊維の単繊維繊度が約3デニール以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のストレッチ布帛。
【請求項5】
ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンのウレタン基濃度が約0.2mol/kg以上3.5mol/kg以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のストレッチ布帛。
【請求項6】
ポリウレタン弾性繊維が、下記の構造単位(a)を5〜25モル%及び構造単位(b)を95〜75モル%含む数平均分子量が250〜10000であるポリアルキレンエーテルジオールと、ジイソシアネート化合物と、ジアミノ化合物とを重合させて得られるポリウレタンウレアからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のストレッチ布帛。
【化1】

(ただし、R1はアルキレン基、R2は水素またはアルキル基をそれぞれ表す。)
【請求項7】
ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンの有効末端アミン濃度が15〜50meq/kgであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のストレッチ布帛。
【請求項8】
抗菌剤が有機窒素硫黄系化合物、第4級アンモニウム系化合物、リン酸エステル系化合物および金属イオンを含有する無機系化合物のいずれか1種以上から選択されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のストレッチ布帛。
【請求項9】
目付が100〜1000g/mであり、タテ方向および/またはヨコ方向の伸長率が5%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のストレッチ布帛。
【請求項10】
紡績糸が6〜60英式綿番手であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のストレッチ布帛。
【請求項11】
抗菌剤による吸尽もしくは担持処理に際し、抗菌剤を含む処理液のpHが5.0以上6.0以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のストレッチ布帛。

【公開番号】特開2009−191415(P2009−191415A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35235(P2008−35235)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【特許番号】特許第4235244号(P4235244)
【特許公報発行日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(390008394)長谷虎紡績株式会社 (3)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】