説明

ストロボ装置

【課題】従来のストロボ装置においては、光の出射面を小型化すると、光源に対する光束利用率が低下して効率が減少すると共に、充分な照射範囲が得られないものとなり、実用性が低下するという問題点を生じていた。
【解決手段】本発明により、光源2とは大気を介してして対峙し、光源から水平方向に射出される光を入射させる正面入射部3aを有すると共に、正面入射部の上方と下方に光源に向かい突出する一対のプリズム部3c、3dを有するレンズと、光源から上下方向に射出される光をプリズム部の外側からレンズに取り込み、それ以外の方向から放出される光をプリズム部の内側からレンズ内に取り込むリフレクタとから成るストロボ装置とすることで、小型化と光束利用率の向上を共に可能として課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間の写真撮影時に照明用として用いられるストロボ装置に係るものであり、詳細には前記ストロボ装置における円筒状光源から発光される光の利用効率の向上に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種、光源からの光の有効利用を図るストロボ装置90の構成の例を示すものが図8、および、図9であり、まず、図8は、キセノン放電管など円筒型光源91から水平方向に放射される光に対する作用を示すものであり、前記円筒型光源91は全周に光を放射するものであるので、この円筒型光源91の背面側には、照射を目的とする方向に対して背面方向に放射される光を照射方向に戻すリフレクタ92が、半円筒状などとして設けられている。
【0003】
また、前記円筒型光源91の前方には、この円筒型光源91からの光を平行光線などに変換する投影レンズ部93aを有するレンズ93が設けられ、このレンズ93の、前記円筒型光源91の上下方向には夫々に反射部93bと光取込部93cとが設けられている。即ち、前記円筒型光源91は前方と上下との三方から光取込部93cで取り囲まれている。
【0004】
そして、前記円筒型光源91から背面方向に射出された光は前記リフレクタ92により照射方向に反射され、最初から照射方向に射出された光と加算され、投影レンズ部93aを透過して適宜な照射角を有する照明光として照射方向に投射される。
【0005】
また、図9に示すものは、前記円筒型光源91から上下方向に射出される光に対する回収手段を示すものであり、一旦、円筒型光源91から大気中に射出された光は、大気よりも屈折率の高い部材で形成されたレンズ93の上下方向の光取込部93cからレンズ93内に導入され、前記反射部93bに達し内面全反射を行い、投射部93dに達し、この投射部93dから外部に射出される。そして、図8と図9とを合成したのが、従来のストロボ装置90の照射特性となる。
【特許文献1】特開平04−138438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来のストロボ装置90においては、円筒型光源91から上下方向に放射される光を照射方向に向けるためには、上下方向の夫々に約45°に傾斜する反射部93bを設ける必要を生じ、集光性能を維持する状態で小型化することは困難となる。従って、明るさを損なうことなく小型化することは困難であるという問題点を生じている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記した従来の課題を解決するための具体的手段として、円筒状光源と、前記円筒状光源からの光を鏡面で全反射するリフレクタと、前記円筒状光源からの光、および、前記リフレクタから内部に入射した光に対して大気との境界面の屈折率の差により生じる臨界角に応じて内面反射、または、大気中への射出が行われる角度に透明部材により形成されたレンズとにより構成されるストロボ装置であり、このストロボ装置の照射方向を水平としたときの前記円筒状光源から水平方向に発せられる光の前記照射方向側への直射光は直接に、前記直射光と対称の背面から発せられる光は前記リフレクタにより反射が行われて、前記前記レンズの中心に前記円筒状光源と大気を介在させて設けられた正面入射部を介して前記レンズ内に入射し、このレンズ内を透過し射出面から出射して前方を照射し、前記円筒状光源から上下方向に発せられる光は前記リフレクタにより反射が行われ、前記レンズの正面入射部の上方、および、下方に前記円筒状光源側に向かい突出して設けられたプリズム部の外側面からレンズ内に入射し複数回の内面反射を行い前記射出面から出射して前方を照射し、前記水平方向と上下方向との中間から発せられる光は、前記プリズム部の内側面から前記レンズ内に入射し少なくとも1回の内面反射を行い射出面から出射して前方を照射するものとされていることを特徴とするストロボ装置を提供することで、性能を損なうことなく一層の小型化を可能として課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、円筒状光源の上端近傍と下端近傍とに、この円筒状光源に向かい尖端を突出させるプリズム部を形成し、加えて、円筒状光源から放出される光をリフレクタによりレンズに設けたプリズム部内を照射方向に内面反射を繰り返しながら進行するようにしたことで、円筒状光源の径とそれ程相違のない上下方向への寸法のレンズにおいても集光性能を失うことなく小型化を可能として、この種のストロボ装置の小型化に優れた効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは、本発明に係るストロボ装置であり、このストロボ装置1は、基本的には、キセノン放電管などである円筒状光源2と、透明樹脂で形成されたレンズ3と、前記円筒状光源2から外部に放射される光に所望の方向性を与えるリフレクタ4とで構成されている。
【0010】
尚、実際のストロボ装置1においては、シャッターが押された時点で前記円筒状光源2に給電を行い発光を行わせる電源装置、発光により露光量が過剰になるときには、前記円筒状光源2の発光を強制的に停止させる調光装置なども付属させられているが、本発明では、要旨の部分ではないので、図示と説明は省略する。
【0011】
まず、本発明のストロボ装置1においては、前記円筒状光源2にはレンズ3が取付けられる。そして、このレンズ3には前記円筒状光源2から発せられる光を照射方向に集束して向かわせる正面入射部3aが設けられており、前記正面入射部3aの照射方向側の端部は、基本的には平面とされて出射面3bとされている。
【0012】
また、前記レンズ3の正面入射部3aの上下には尖端を前記筒状光源2方向とする楔状とした一対のプリズム部3c、3dが設けられている。このときに、前記一対のプリズム部3c、3dは、前記筒状光源2の中心Oを通る水平線Hに対して、線対称の形状とされている。よって、前記円筒状光源2と正面入射部3aとの間には前記プリズム部3c、3dの長さ分の空間が有るものとなり、正面入射部3aの曲率などが定められるものとなる。
【0013】
そして、前記プリズム部3c、3dの後端側は、前記正面入射部3aの出射面3bと同一面とされている。よって、前記プリズム部3c、3dから入射した光も、前記出射面3bから出射が行われるようにされ、前記プリズム部3c、3dは適宜な部分から先は上下面3eが略平行面とされ、レンズ3がカメラ(図示せず)などに設けられた所定の範囲内に収納できるようにされている。
【0014】
また、前記リフレクタ4は、金属、樹脂などで所定の形状に形成されるものであり、その表面にはアルミニウム、銀などの真空蒸着が行われるなどして鏡面4aが形成されている。そして、そのリフレクタ4の形状は、前記円筒状光源2の中心Oを通る垂直線Vから後半をほぼ密着した状態で覆う半円筒鏡部4bとされている。
【0015】
前記垂直線Vから前方では前記円筒状光源2の中心Oを略焦点とする放物鏡部4cとして形成され、前記プリズム部3c、3dとは適宜な間隔を有するようにされている。尚、このときの前記放物鏡部4cの形状、反射方向は、この放物鏡部4cからの反射光が前記プリズム部3c、3d内に入射した後には効率良く内面反射を繰り返し、前記レンズ3の出射面3bに達するようにされている。
【0016】
また、上記の説明でも明らかなように、発光源の形状が略円筒状であるので、正面入射部3aの形状もそれに併せてシリンドリカルレンズ状など、前記円筒状光源2からの光をできるだけ効率良く採り入れられる形状とすることが好ましく、同様に、前記プリズム部3c、3dの面形状も前記円筒状光源2、リフレクタ4の形状に併せて曲面などとしても良い。また、出射面3bにも所望する配光形状に沿うようにフレネルレンズカットを施すなどは、自在である。
【0017】
つぎに、図2〜図4により、本発明に係るストロボ装置1の作用を説明する。図2は、前記円筒状光源2から前後(水平)方向に放射される光の軌跡を示すものであり、照射方向側に放射された光は、そのままレンズ3の正面入射部3aに捕捉され、レンズ3内を透過して出射面3bから規定照射角として外部に放出される。
【0018】
これに対して、背面側に向かい放射された光は、リフレクタ4の半円筒鏡部4aで反射し、照射方向側に折り返されるものとなり、結果としては、前記正面入射部3aに入射する光量は略倍増するものとなる。
【0019】
図3は、前記円筒状光源2から上下(垂直)方向に向かい放射される光の軌跡を示すものであり、この場合、前記円筒状光源2から放射された光の内、背面寄りの約半分の光はリフレクタ4の半円筒鏡部4bに達し、照射方向寄りの約半分の光は放物鏡部4cに達するものとなる。そして、前記半円筒鏡部4bで反射が行われた光は、反射後は放物鏡部4cに達するものとなる。
【0020】
よって、前記放物鏡部4cで反射した後には、レンズ3のプリズム部3c、3dの何れかに外側面3oから入射し、内側面3iで大気との境界面により内面反射し、この後、再度外側面3oまたは、上下面3eで内面反射後、出射面3bから外部に放出される。よって、円筒状光源2から上下方向に向かい放射される光もほぼ全てが出射面3bから外部に放射されるものとなる。
【0021】
図4は、上記に説明した前後方向と上下方向以外の方向にである中間部に放射される光の軌跡を示すものであり、これらの光は前記レンズ3のプリズム部3c、3dの何れかに内側面3iから入射し、同じプリズム部3c、3dの外側面3oで内面反射を行い、その後、直接または、さらに前記内側面3iで内面反射し、前記出射面3bから外部に放出されるものとなる。
【0022】
以上の説明でも明らかなように、本発明のストロボ装置1の構成によれば、円筒状光源2(キセノン放電管)から放射される光は、図2〜図4に示した光の捕捉状態を重ね合わせても明らかなように、ほぼ全てを捕捉可能とするものであり、そして、捕捉した光を出射面3bから外部に放射することができるものとなる。しかも、前記出射面3bも円筒状光源2に対してそれほど幅の広いものとはならないので、ストロボ装置1全体の小型化が可能となる。
【0023】
図5は従来例のストロボ装置の上下方向に対する配光特性OVと、本発明のストロボ装置1との上下方向に対する配光特性NVとを比較して示すものであり、本発明の配光特性NVの方が遠方まで明るく照射していることが明らかであり、また、均一な照度範囲で比較しても、本発明のストロボ装置1の方がやや広いと云える。
【0024】
図6は従来例のストロボ装置の左右方向に対する配光特性OHと、本発明のストロボ装置1との左右方向に対する配光特性NHとを比較して示すものであり、本発明の配光特性NHの方が遠方まで明るく、且つ、幅広く照射していることが明らかであり、図5、および、図6の両図からも本発明のストロボ装置1の構成が、円筒状光源2に対する光束利用率に優れていることが明白である。
【0025】
図7は本発明に係るストロボ装置1の別の実施例であり、前の実施例では必要とされる部分では、確実に内部反射が行われ出射面3b以外の部分からの漏光はないものとして説明した。しかしながら、現実には製造誤差、或いは、レンズ3を形成する部材の屈折率の相違などで必要以外の部分から漏光を生じることも起こり得るので、出射面3bを除く全ての部分をリフレクタ4で覆ったものであり、確実に漏光が防止できるものとなり、一層に効率も良く、配光特性も優れるストロボ装置1が得られるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るストロボ装置の実施例を示す断面図である。
【図2】同じ実施例における光源から水平方向に発せられる光に対する軌跡を示す説明図である。
【図3】同じ実施例における光源から上下方向に発せられる光に対する軌跡を示す説明図である。
【図4】同じ実施例における光源から中間方向に発せられる光に対する軌跡を示す説明図である。
【図5】本発明に係るストロボ装置の上下方向への配光特性を従来例との比較で示すグラフである。
【図6】本発明に係るストロボ装置の左右方向への配光特性を従来例との比較で示すグラフである。
【図7】本発明に係るストロボ装置の別の実施例を示す断面図である。
【図8】従来例における光源から水平方向に発せられる光に対する軌跡を示す説明図である。
【図9】同じ従来例における光源から上下方向に発せられる光に対する軌跡を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1…ストロボ装置
2…円筒状光源
3…レンズ
3a…正面入射部
3b…出射面
3c、3d…プリズム部
3o…プリズム部の外側面
3i…プリズム部の内側面
4…リフレクタ
4a…鏡面
4b…半円筒鏡部
4c…放物鏡部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状光源と、前記円筒状光源からの光を鏡面で全反射するリフレクタと、前記円筒状光源からの光、および、前記リフレクタから内部に入射した光に対して大気との境界面の屈折率の差により生じる臨界角に応じて内面反射、または、大気中への射出が行われる角度に透明部材により形成されたレンズとにより構成されるストロボ装置であり、このストロボ装置の照射方向を水平としたときの前記円筒状光源から水平方向に発せられる光の前記照射方向側への直射光は直接に、前記直射光と対称の背面から発せられる光は前記リフレクタにより反射が行われて、前記レンズの中心に前記円筒状光源と大気を介在させて設けられた正面入射部を介して前記レンズ内に入射し、このレンズ内を透過し射出面から出射して前方を照射し、前記円筒状光源から上下方向に発せられる光は前記リフレクタにより反射が行われ、前記レンズの正面入射部の上方、および、下方に前記円筒状光源側に向かい突出して設けられたプリズム部の外側面からレンズ内に入射し複数回の内面反射を行い前記射出面から出射して前方を照射し、前記水平方向と上下方向との中間から発せられる光は、前記プリズム部の内側面から前記レンズ内に入射し少なくとも1回の内面反射を行い射出面から出射して前方を照射するものとされていることを特徴とするストロボ装置。
【請求項2】
前記レンズの前記正面入射部を非球面形状としたことを特徴とする請求項1記載のストロボ装置。
【請求項3】
前記レンズの前記プリズム部の外側面、または、内側面を、曲面形状としたことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載のストロボ装置。
【請求項4】
前記レンズの前記射出面には、フレネルレンズカットが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3何れかに記載のストロボ装置。
【請求項5】
前記リフレクタは前記レンズとの間隙が必要な部分、および、前記射出面を除きレンズ、および、円筒状光源の側面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4何れかに記載のストロボ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−240759(P2007−240759A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61453(P2006−61453)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】