説明

ストロー差込部を有するプラスチックキャップ

【課題】充填後加熱殺菌が必要な内容物について適用可能な耐熱性を有すると共に、ストローによる開口形成を容易に行うことが可能なストロー差込口を有するプラスチックキャップを提供することである。
【解決手段】頂板部と、頂板部周縁から垂下したスカート状側壁とから成り、該頂板部中央に開口が形成されているキャップシェルと、容器口部に対応する部分に密封部を有すると共に、キャップシェル中央の開口に対応する位置にストロー差込部が形成され、キャップシェルに嵌合固定される中栓とから成るプラスチックキャップにおいて、
前記中栓の密封部を構成する樹脂の硬度が、ストロー差込部を構成する樹脂の硬度よりも大きいと共に、前記キャップシェルを構成する樹脂の硬度が中栓の密封部を構成する樹脂の硬度よりも大きいことを特徴とするプラスチックキャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロー差込部を有するプラスチックキャップに関し、より詳細には、充填後加熱殺菌に付される内容物への適用が可能であると共に、キャップの機械的強度及び密封性に優れていると共に、ストローによる開口形成が容易なプラスチックキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップの頂板部をストローで穿孔して、キャップを容器口部から取外すことなく、容器内の飲料を飲むことを可能にしたキャップは従来より知られている。
従来のストロー差込口を有するキャップにおいては、下記特許文献1に示すように、キャップシェルの一部を薄肉化することによりストロー差込口を形成しているが、一般にキャップシェルは機械的強度を確保するために剛性を有する樹脂が用いられていることから、ストローによる開口性を容易に行うことは困難である。
【0003】
また開封明示機能を有するプラスチックキャップにおいては、キャップ下部に形成されたタンパーエビデントバンドを繋ぐブリッジが、キャップの密封性が解除されるよりも前に破断されることが必要であり、このためキャップシェルと、キャップシェルとは別途形成され且つキャップシェル内に設置される中栓とから成るキャップも提案されており、このようなキャップにおいては、キャップシェル頂板部中央に開口を形成し、当該開口部に対応する中栓にストロー差込口を形成したものが提案されている(特許文献2)。
また内容物が乳製品のような場合には、キャップのうち内容物に直接接触する部分はポリエチレンであることが要求されていることから、このような内容物に使用し得るキャップは、キャップシェルと中栓が別の素材から成形されることが望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−205753号公報
【特許文献2】特開2004−217250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、充填後加熱殺菌が必要な内容物について適用される場合には、キャップシェルや中栓には耐熱性に優れた樹脂を用いることが必要であり、このような耐熱性の高い樹脂は、剛性が大きいことから、中栓に直接ストロー差込口を形成してもストローで容易に開口することは困難である。
従って本発明の目的は、充填後加熱殺菌が必要な内容物について適用可能な耐熱性を有すると共に、ストローによる開口形成を容易に行うことが可能なストロー差込口を有するプラスチックキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、頂板部と、頂板部周縁から垂下したスカート状側壁とから成り、該頂板部中央に開口が形成されているキャップシェルと、容器口部に対応する部分に密封部を有すると共に、キャップシェル中央の開口に対応する位置にストロー差込部が形成され、キャップシェルに嵌合固定される中栓とから成るプラスチックキャップにおいて、前記中栓の密封部を構成する樹脂の硬度が、ストロー差込部を構成する樹脂の硬度よりも大きいと共に、前記キャップシェルを構成する樹脂の硬度が中栓の密封部を構成する樹脂の硬度よりも大きいことを特徴とするプラスチックキャップが提供される。
【0007】
本発明のプラスチックキャップにおいては、
1.ストロー差込部を構成する樹脂のショアD硬度が40乃至50、密封部を構成する樹脂のショアD硬度が53乃至80の範囲にあること、
2.ストロー差込部を構成する樹脂が低密度ポリエチレン、密封部を構成する樹脂が高密度ポリエチレン、且つキャップシェルを構成する樹脂がポリプロピレンであること、
3.密封部の内周側上面には、キャップシェル中央の開口端部に対応する環状の突条が形成されていると共に、該環状突条の外周面と開口の端面との間に間隙が形成されていること、
4.中栓の密封部にインナーリングが形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ストローによる開口形成を容易に行うことができると共に、キャップとしての密封性及び機械的強度をも具備している、ストロー差込部を有するプラスチックキャップを提供することが可能となる。
また本発明のプラスチックキャップによれば、優れた耐熱性を有するため充填後加熱殺菌が必要な内容物に対応することが可能であり、また乳飲料のような内容物にも適用することができる。
また充填後の加熱殺菌の際の高温シャワーを利用してキャップ内の殺菌及び洗浄を効率よく行うこともでき、殺菌性及び洗浄性にも優れているという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
前述したように、頂板部中央に開口が形成されているキャップシェルと、キャップシェルよりも軟質の樹脂からなり、キャップシェル中央の開口に対応する位置にストロー差込部が形成されている中栓から成るキャップは知られているが、本発明においては特に中栓が、容器口部に対応する密封部とストロー差込部から成り、この密封部とストロー差込部がそれぞれ硬度の異なる樹脂を用いて一体成形されている点が重要な特徴である。
すなわち本発明においては、キャップとしての機械的強度を確保するため、キャップシェルを最も硬度の高い樹脂で成形し、一方、中栓の部分でも密封部を構成する部分は、キャップシェルよりも硬度の低い樹脂で形成して密封性を高めると共に、中栓のキャップシェル頂板部開口に対応するストロー差込部は、キャップシェル及び密封部よりも硬度の低い樹脂で形成して、ストローにより容易に開口が形成し得るようにしているのである。
【0010】
また本発明のキャップにおいては、このようにキャップシェル、中栓の密封部及びストロー差込部をそれぞれ異なる樹脂から形成しているため、特に外側からの高温シャワーによる加熱殺菌に対して耐熱性が要求されるキャップシェルをポリプロピレン等の、耐熱性及び機械的強度に優れた硬度の高い樹脂で成形することが可能となり、充填後、高温シャワー等による加熱殺菌に施される所謂ホットパック品に好適に使用することが可能となるのである。
また中栓の密封部の内周側上面にはキャップシェル中央の開口端部に対応する環状突条が形成されていると共に、該環状突条の外周面と開口の端面との間に間隙が形成されていることが好ましく、これにより、加熱殺菌の際には高温シャワー水がこの間隙からキャップシェル頂板部内面と中栓の間、次いでキャップシェルスカート部内面と容器口部外面の間を通って、キャップ内を殺菌及び洗浄することが可能になるため、殺菌性及び洗浄性にも優れているという利点も有している。
【0011】
本発明のプラスチックキャップを添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のプラスチックキャップの一例を示すものであり、(A)は平面図、(B)は側面図をそれぞれ示し、図2は、図1に示すキャップを容器口部に適用した場合の側断面図である。
全体を1で示す本発明のプラスチックキャップは、概略的に言って、キャップシェル2と、中栓20から成っている。
キャップシェル2は、頂板部3、頂板部3の周縁から垂下するスカート部4、及びスカート部の下端に弱化部5を介して一体的に形成されているタンパーエビデントバンド(以下「TEバンド」という)6から成っている。頂板部3の中央には、開口7が形成されており、またスカート部4の内面側にはネジ部8が形成されている。またTEバンド6の内面には、容器口部40に形成された環状突起41と係合する複数のフラップ片9が形成されている。またスカート部4の上部には、洗浄水侵入のためのスリット10が形成されていてもよく、後述するキャップシェル開口端面及び密封部上面に形成された環状突条外面との間に形成される間隙と相俟ってキャップ内の洗浄性を向上させることができる。
【0012】
中栓20は、容器口部先端42に対応する環状の密封部21と、キャップシェル2の開口7に対応する位置のストロー差込部30の2つのパーツが一体的に成形されて成っている。図2に示す具体例では、密封部21は、容器口部先端42の内面側と密着して密封性を確保するインナーリング23と容器口部先端42の外面側と接触するアウターリング24がそれぞれ同心円状に形成されている。またこの環状の密封部21の内周側上面には、環状の突条25が形成されており、この環状突条25の外周面とキャップシェル2の開口7の端面7aとの間に環状の間隙26が形成されている。
尚、本発明のキャップにおいては、中栓20がキャップシェル2内に嵌め込まれ、開栓後もキャップシェルから離脱することがなく形成されているが、中栓上面及びキャップシェル頂板部内面は接着剤等で固着された状態になく、中栓上面及びキャップシェル頂板部内面の間に空隙が形成可能であることが、上記間隙26から侵入した加熱殺菌のためのシャワー水をキャップシェルと中栓の間を通って、キャップシェルと容器口部の間へと流すことが可能となり、加熱殺菌と同時に洗浄を有効に行うことが可能となる。
【0013】
中栓20の環状の密封部21よりも内側は、キャップシェル2の開口7を覆うように、密封部21を構成する樹脂よりも硬度の小さい樹脂から成るストロー差込部30が密封部21と分離不可能に一体的に形成されている。
このストロー差込部30には、円弧状の破断可能な薄肉部31及びこの円弧状の破断可能な薄肉部31の両端から延在する一対の直線状薄肉部32が形成されていると共に、かかる一対の直線状薄肉部32の終端を結ぶ部分33は比較的厚肉に形成され、破断可能な薄肉部31,32が破断された後も、ストロー差込部から円弧状の破断可能な薄肉部31で区画される円弧状主部34及び直線状薄肉部32で区画される直線状付加部35が容器内に脱落することが防止されている。
【0014】
直線状薄肉部32で区画される直線状付加部35には突部36が形成されており、該突部36は該一対の直線状薄肉部の各々に向かって下方に傾斜する一対の傾斜面36a,36bを有し、該一対の傾斜面の境界陵37は円弧状主部34に向かって下方に傾斜し、円弧状主部34の中央で円弧状薄肉部31との間に段差を形成している。かかる段差により、ストローによる開口に際してストローが滑ってしまうようなことが防止でき、確実に破断可能な薄肉部をストローで破断することが可能になるのである。
上述したように、ストロー差込部30はキャップシェル2及び中栓20の密封部21よりも硬度の低い樹脂を使用しているため、破断可能な薄肉部をストローにより容易に破断することができ、また破断可能な薄肉部31,32で区画される円弧状主部34及び直線状付加部35は、周囲が完全に破断して容器内に脱落してしまうことがなく、しかもストローが差し込まれた際に空気孔が確保可能であるため、内容物をストローでスムーズに吸引することができるのである。
【0015】
本発明においては上述したように、キャップシェル、中栓の密封部、ストロー差込部を構成する樹脂の硬度がそれぞれ異なり、キャップシェル、中栓の密封部、ストロー差込部の順でその硬度が小さくなっていることが重要である。
本発明においては、密封部を構成する樹脂のショアD硬度が53乃至80、且つストロー差込部を構成する樹脂のショアD硬度が40乃至50の範囲にあることが好ましい。
また各部位を構成する具体的な樹脂としては、これに限定されるものではないが、キャップシェルを構成する樹脂がポリプロピレン、密封部を構成する樹脂が高又は中密度ポリエチレン、ストロー差込部を構成する樹脂が低密度ポリエチレン、特に線状低密度ポリエチレンであることが好適である。
【0016】
本発明のキャップにおいては、キャップシェル、中栓の密封部、ストロー差込部を構成する樹脂の硬度が上述した関係にある限り、上述した形態のものに限定されるものではなく、従来この種のキャップに適用されている公知の形態を採用することができる。
例えば、中栓のストロー差込部の破断可能な薄肉部の形状は、図1に示したような円弧状薄肉部及び直線状薄肉部の組み合わせの他、中央に形成された突部から放射状に延びる放射状薄肉部からなるもの等であってもよい。また図2に示したように、薄肉部をキャップ上面から形成する以外にも、キャップ内面側から薄肉部を形成し、ストロー差込部上面には凹凸を形成しないもの等種々の形態を採用できる。
またキャップシェルの形状も、図1及び図2に示したような螺子キャップに限定されず、キャップと容器口部が上下方向の係合によって嵌合固定されるタイプのキャップであっても勿論よい。
【0017】
本発明のプラスチックキャップは、2色成形により成形した密封部及びストロー差込部から成る中栓を、射出成形又は圧縮成形などにより予め別途成形したキャップシェル内に嵌め込むことにより成形することができる。
本発明において、キャップシェル頂板部に形成する開口の直径は、キャップの大きさやストローの径などによって相違し、一概に規定できないが、ストローの径の1乃至2.5倍の大きさであることが好ましい。
またストロー差込部に形成される薄肉部の厚みは、キャップの大きさや使用されるストローの材質や形状等によっても相違するが、一般に0.15乃至0.25mmの範囲にあることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のプラスチックキャップの一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図2】図1に示す本発明のプラスチックキャップを容器口部に適用した状態の側断面図である。
【0019】
1 キャップ、2 キャップシェル、3 頂板部、4 スカート部、5 弱化部、
6 TEバンド、7 開口、8 螺子部、20 中栓、21 密封部、
22 インナーリング、23 アウターリング、24 環状突条、
30 ストロー差込部、31 円弧状薄肉部、32 直線状薄肉部、
34 円弧状主部、35 直線状付加部、36 突部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部と、頂板部周縁から垂下したスカート状側壁とから成り、該頂板部中央に開口が形成されているキャップシェルと、容器口部に対応する部分に密封部を有すると共に、キャップシェル中央の開口に対応する位置にストロー差込部が形成され、キャップシェルに嵌合固定される中栓とから成るプラスチックキャップにおいて、
前記中栓の密封部を構成する樹脂の硬度が、ストロー差込部を構成する樹脂の硬度よりも大きいと共に、前記キャップシェルを構成する樹脂の硬度が中栓の密封部を構成する樹脂の硬度よりも大きいことを特徴とするプラスチックキャップ。
【請求項2】
前記ストロー差込部を構成する樹脂のショアD硬度が40乃至50、密封部を構成する樹脂のショアD硬度が53乃至80の範囲にある請求項1記載のプラスチックキャップ。
【請求項3】
前記ストロー差込部を構成する樹脂が低密度ポリエチレン、密封部を構成する樹脂が高密度ポリエチレン、且つキャップシェルを構成する樹脂がポリプロピレンである請求項1又は2記載のプラスチックキャップ。
【請求項4】
前記密封部の内周側上面には、キャップシェル中央の開口端部に対応する環状突条が形成されていると共に、該環状突条の外周面と開口端面との間に間隙が形成されている請求項1乃至3の何れかに記載のプラスチックキャップ。
【請求項5】
前記中栓の密封部にインナーリングが形成されている請求項1乃至4の何れかに記載のプラスチックキャップ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−131312(P2007−131312A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324746(P2005−324746)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】