説明

スパッタリング装置

【課題】真空チャンバーを開放することなくターゲットのエロージョンを監視できると共に、エロージョン監視手段の格納設備が不要なスパッタリング装置の提供を課題とする。
【解決手段】真空を保持すると共に所定のガスが封入される真空チャンバー11と、薄膜12を形成すべきウェハ13を保持するウェハステージ14と、薄膜12を形成する成分を放出するターゲット15を保持するバッキングプレート16と、ターゲット15に直流電流を印加する電流印加手段17と、ウェハステージ14に設けられターゲット15のエロージョンを監視するエロージョン監視手段としての光変位センサー20と、光変位センサー20を所定の範囲で移動させる移動手段19とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング装置で使用されるターゲットのエロージョン(侵食)が進むと、ターゲットを保持する部材までスパットされ、スパッタリングすべき製品の不良が発生してしまうおそれがある。このため、ターゲットのエロージョンを監視し、エロージョン量が所定値以上になったときに、別のターゲットに交換するのが一般的である。
【0003】
従来、ターゲットのエロージョン量を測定する場合は、先ず真空チャンバー(真空容器)を大気開放して、新しいターゲットを真空チャンバー内に装着する。
【0004】
このとき、ターゲットに印加される電力をモニターするため、直流電源にセットされている積算電力計の数値を0kWにセットする。
【0005】
次に、例えば所定数のウェハに対するスパッタ処理を行い、積算電力計の積算電力値が所定値に達したとき、真空チャンバーを大気開放して、ターゲットのエロージョン量を測定する。
【0006】
ここで測定したエロージョン量の最大値と、ターゲットの当初の厚さとから、比例関係でターゲットの寿命を予測する。そして、ターゲットの寿命に相当する積算電力値を算出する。
【0007】
この後、所定数のウェハに対するスパッタ処理を行い、真空チャンバーを大気開放してターゲットのエロージョン量を測定する。次に、予想したターゲットの寿命と積算電力値との関係が正しいかどうかのチェックを行う。
【0008】
しかし、従来の方法では、真空チャンバーを複数回開閉する必要があり、作業が煩雑になるという問題があった。
【0009】
また、真空チャンバーを開放するごとに、真空チャンバー内の真空を保持するためのシールド部を交換する必要があった。更に、真空チャンバーを閉じた後、内部の空気を再排気する作業が必要があった。
【0010】
また、真空チャンバーを開放したときにターゲットの表面に発生する酸化膜を除去するために、ターゲットクリーニングと呼ばれる事前スパッタ処理を行う必要があった。このため、スパッタリング装置の稼働率を著しく阻害するという問題があった。
【0011】
また、ターゲットのエロージョン量を直接計測していない為、何らかの原因でターゲット設置の初期に積算電力値が0kWにリセットされていない場合には、実際より早くターゲットライフに達してしまうという問題があった。
【0012】
また、何らかの原因で積算電力値が途中で0kWにリセットされてしまうことがあり、この場合には、実際より長いターゲットライフが設定されたことになる。この場合は、ターゲットの保持部材であるバッキングプレートまでスパッタされてしまうおそれがある。また、製品不良が生じてしまうおそれがある。
【0013】
そこで、上記の問題を解決するため、真空チャンバーを開放することなく、必要に応じてターゲットのエロージョンを監視することが可能なスパッタリング装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】特開平11−61403号公報
【特許文献2】特開2002−60935号公報
【特許文献3】特開平6−88223号公報
【特許文献4】特許第2953940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の真空チャンバーを開放することなくターゲットのエロージョンを監視することが可能なスパッタリング装置は、エロージョン監視装置を格納する格納設備を、真空チャンバーの外側に付属させて新たに設ける必要があった。このため、スパッタリング装置が大型になるという問題があった。
【0015】
また、エロージョン監視装置にスパッタが付着するのを防止するため、シャッター設備を設ける必要があった。この場合は、シャッター設備からパーティクルが発生したり、排気特性が悪くなったりするなど新たな問題が生じるおそれがあった。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、真空チャンバーを開放することなくターゲットのエロージョンを監視できると共に、エロージョン監視手段の格納設備が不要であり、装置が大型になるのを抑制できるスパッタリング装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、
真空を保持すると共に所定のガスが封入される真空チャンバーと、
前記真空チャンバー内に配置され、薄膜を形成すべき被薄膜形成部材を保持する被薄膜形成部材保持手段と、
前記真空チャンバー内における前記被薄膜形成部材保持手段と対向する位置に配置され、前記薄膜を形成する成分を放出するターゲットを保持するターゲット保持手段と、
前記ターゲットに直流電源を印加する電流印加手段と、
前記被薄膜形成部材保持手段に設けられ前記ターゲットのエロージョンを監視するエロージョン監視手段と、
前記エロージョン監視手段を所定の範囲で移動させる移動手段と、
を備える。
【0018】
本発明では、被薄膜形成部材保持手段にターゲットのエロージョンを監視するエロージョン監視手段が設けられているので、真空チャンバーを開放することなくエロージョンを監視できる。また、真空チャンバーの外側に、エロージョン監視手段の格納設備を設ける必要がない。
【0019】
ここで、前記エロージョン監視手段は、前記被薄膜形成部材によって遮蔽されるように構成できる。この構成により、エロージョン監視手段を遮蔽するシャッターなどを設けることなく、エロージョン監視手段がスパッタ処理されるのを防止できる。
【0020】
また、前記移動手段は、前記ターゲット監視手段を前記ターゲットの中心に対応する位置から、前記ターゲットの端縁に対応する位置まで直線的に移動させるように構成できる。この構成により、ターゲットの中心から端縁までのエロージョンを監視できる。
【0021】
また、前記被薄膜形成部材保持手段を回転させる回転手段を有するのが好ましい。この構成により、ターゲットの全体に亘ってエロージョンを監視できる。
【0022】
また、前記エロージョン量が所定値以上のとき、警報を発生するように構成できる。この構成により、エロージョンの進行状況を即座に認識できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、真空チャンバーを開放することなくターゲットのエロージョンを監視できるので、エロージョンを監視するための手間を省くことができる。また、スパッタリング装置の外側にエロージョン監視手段の格納設備を設ける必要がないので、装置が大型になるのを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るスパッタリング装置について、図1から図14を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る実施の形態のスパッタリング装置1を示す。このスパッタリング装置1は、真空を保持すると共に所定のガスが封入される真空チャンバー11と、この真空チャンバー11内に配置され、薄膜12を形成すべき被薄膜形成部材であるウェハ13を保持する被薄膜形成部材保持手段であるウェハステージ14と、真空チャンバー11内におけるウェハステージ14と対向する位置に配置され、薄膜12の成分を放出するターゲット15を保持するターゲット保持手段であるバッキングプレート16と、ターゲット15に直流電流を印加する電流印加手段17と、ウェハステージ14に設けられターゲット15のエロージョン(侵食)を監視するエロージョン監視手段である光変位センサー20と、この光変位センサー20を所定の範囲で移動させる移動手段19と、を備えている。
【0026】
次に、上記各構成要素について説明する。なお、以下に説明する以外は、従来のスパッタリング装置と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0027】
真空チャンバー11は、密閉された容器状に形成されている。この真空チャンバー11内には、ガスライン21からプロセスガスとして、例えばアルゴンガスが所定量供給される。
【0028】
また、真空チャンバー11内の空気は、排気ポート22を介して真空ポンプ23によって吸引されて外部に排出される。なお、図1中の符号24はその中心を回転中心として回転するマグネット、25はアルゴンガスの供給量を制御するバルブである。
【0029】
ウェハステージ14の下側には、ウェハステージ14をその中心を回転中心として回転させるモータなどの回転手段26が設けられている。このウェハステージ14は、図2に示すように、略円形に形成されている。
【0030】
光変位センサー20は、図3に示すように、発光素子30と、受光素子31とを有している。本実施形態では、発光素子30として半導体レーザが使用されている。また、受光素子31として、光位置検出素子が使用されている。
【0031】
この光変位センサー20は、ターゲット15のエロージョン量(侵食量)t(図5参照)を、三角測量の原理で測定する。本実施形態では、ターゲット15のエロージョン量tの測定に必要な精度は、0.1mm程度である。一方、市販されている光学式変位センサーの測定分解能は、50ミクロン以下である。従って、光変位センサー20は、市販の光
学式変位センサーを使用できる。
【0032】
なお、本実施形態では、エロージョン量tが、ターゲット15の基準面であるエロージョン発生前の表面39aから、エロージョン発生後の表面39bまでの距離で表される。
【0033】
光変位センサー20の発光素子30から光35が放出されると、この光35がターゲット15で反射して受光素子31に入光される。これにより、ターゲット15のエロージョン量tが測定される。
【0034】
この光変位センサー20は、図1に示すように、ウェハステージ14の上面に設けられた溝14a内に移動自在に挿入されている。溝14aの上側には、透明な蓋14bが設けられている。
【0035】
移動手段19は、図3に示すように、エアシリンダ32を有している。このエアシリンダ32は、チューブ状の本体33と、本体33内に供給される圧力空気によって、本体33から出し入れされるピストン34とを有している。
【0036】
ピストン34の先端は、光変位センサー20に連結されている。ピストン34が、本体33から出し入れされることにより、光変位センサー20が所定の範囲37(図2参照)を直線的に往復移動する。本実施形態では、所定の範囲37が、ウェハステージ14の中心14c付近から端縁14d付近まで直線状に設定されている。
【0037】
エアシリンダ32のピストン34が、本体33から最大に伸ばされたときに、光変位センサー20の発光素子30における光照射部30aが、ターゲット15の端縁15a付近に対応する位置に配置される。
【0038】
そして、光変位センサー20の発光素子30から放出された光35が、ターゲット15の端縁15a付近に照射される。これにより、ターゲット15の端縁15a付近におけるエロージョン量tが測定される。なお、図3中の符号31aは、受光素子31の光受光部である。
【0039】
また、図4に示すように、エアシリンダ32のピストン34が、本体33内に最後まで挿入されたときに、光変位センサー20の発光素子30における光照射部30aが、ターゲット15の中心15b付近に対応する位置に配置される。
【0040】
そして、光変位センサー20の発光素子30から放出された光35が、ターゲット15の中心15b付近に照射される。これにより、ターゲット15の中心15b付近におけるエロージョン量tが測定される。
【0041】
図5に示すように、ターゲット15のエロージョン量tは、エロージョン発生前のターゲット15の表面(基準面)39aから、エロージョン発生後の表面39bまでの距離(深さ)によって表される。なお、図5中の符号Tは、ターゲット15の残厚である。
【0042】
次に、このスパッタリング装置1の作用を説明する。ウェハ13にスパッタ処理によって薄膜12を形成する場合は、図1に示すように、まず真空ポンプ23によって、排気ポート22を介して真空チャンバー11内の空気が排気される。これにより、真空チャンバー11内の圧力が、1.3×10−6Pa〜1.3×10−7Pa程度に保持される。
【0043】
次に、ガスライン21を介して供給されたプロセスガス、例えばアルゴンガスが、真空チャンバー11内に導入され、真空チャンバー11内の圧力が1.3×10−1Pa程度
に保持される。
【0044】
次に、電流印加手段17からターゲット15に直流電流が印加される。これにより、マグネトロン放電が発生し、真空チャンバー11内に封入されているアルゴンガスがイオン化されて、ターゲット15の成分がウェハ13上にスパッタされる。これにより、ウェハ13上に薄膜12が形成される。
【0045】
スパッタ処理が進むにつれて、マグネット24の水平磁場が最も強い部分で、ターゲット15のエロージョン量tが最も多くなる。これは、垂直磁場に比べて水平磁場の方が、アルゴンガスなどのプロセスガスを捕らえにくいためである。
【0046】
本実施形態では、図6に示すように、ターゲット15が円形に形成されている。また、マグネット24も円形に形成されている。更に、ターゲット15のエロージョンを均等化するため、マグネット24はその中心を回転中心として、モータなどによって回転されている。このため、ターゲット15のエロージョンは略同心円上に発生する。
【0047】
このようにして、スパッタ処理が終了したウェハ13は、自動交換手段(図示せず)によって、真空チャンバー11を開放することなく、別のウェハ13に交換される。そして、所定数のウェハ13にスパッタ処理が行われる。
【0048】
ウェハ13にスパッタ処理が行われている間は、ウェハ13によって光変位センサー20及び透明な蓋14bが遮蔽されている。従って、光変位センサー20及び蓋14bがスパッタ処理されるのを防止できる。
【0049】
所定数(例えば50枚から100枚程度)のウェハ13のスパッタ処理が終了した後、図7に示すように、ウェハステージ14上のウェハ13が取り除かれた状態で、光変位センサー20によって、ターゲット15のエロージョン量tが直接的に計測される。本実施形態では、ターゲット15の複数箇所のエロージョン量tが測定され、その最大値が抽出される。
【0050】
ターゲット15のエロージョン量tの測定に際しては、図5に示すように、光変位センサー20の発光素子30から放出された光35が、ターゲット15の所定の位置に照射される。この光35は、ターゲット15で反射され、受光素子31に入光される。
【0051】
受光素子31の出力は、外部の演算部36に供給される。演算部36では、受光素子31からの入力に基づいて、ターゲット15のエロージョン量tが算出される。また、演算部36では、エロージョン量tに基づいて、ターゲット15の残りの厚さ(残厚)Tが算出される。
【0052】
ターゲット15のエロージョン量tの測定は、光変位センサー20を移動手段19によって移動させながら行われる。本実施形態では、図2に示すように、ウェハステージ14の中心14c付近から、端縁14d付近までの所定の範囲37を、光変位センサー20が直線的に移動する。
【0053】
この所定の範囲37は、図6に示すように、光変位センサー20によって、ターゲット15のスパッタ処理に使用される使用範囲38の直径線38aに沿ってエロージョン量tを測定できるように設定される。
【0054】
また、本実施形態では、ウェハステージ14がその中心14cを回転中心として所定の角度ずつ間欠的に回転しながら、且つ光変位センサー20が直線的に移動しながらエロー
ジョン量tが計測される。これによって、ターゲット15のスパッタ使用範囲38全体のエロージョン量tが計測される。
【0055】
図8は、ターゲット15の材料としてアルミニウムを使用した場合における、エロージョン量tの測定結果を示す。
【0056】
また、図9は、ターゲット15の材料としてチタンを使用した場合における、エロージョン量tの測定結果を示す。図8及び図9の横軸はターゲットの中心からの距離、縦軸はエロージョン量tを示す。
【0057】
図8及び図9から分かるように、エロージョン量tは、ターゲット15の中心15bからの距離によって異なる。また、ターゲット15が回転しているため、中心15bの左側及び右側のエロージョン量tが対象形になっている。
【0058】
ターゲット15のエロージョン量tの最大値が所定値以上となったときに、警報が発生される。本実施形態では、エロージョン量tが所定値であるアラーム値(予め設定していた所定の数値)に達したときに、光変位センサー20に接続されている信号変換機から、警報としてターゲット交換信号(所定の信号)が発生される。
【0059】
このターゲット交換信号が発生されることにより、ターゲット15の寿命であることを即座に認識して、ターゲット15を交換することができる。これにより、ターゲット15を保持するバッキングプレート16の成分が放出される飛ばし現象が生じるのを防止できる。なお、アラーム値は、ターゲット15の初期の厚さT及びバッキングプレート16の厚さに応じて、任意に設定できる。
【0060】
図10は、スパッタ処理のフローチャートを示す。ここでは、まずウェハに対してスパッタ処理が行われる(S1)。次に、所定数のウェハに対してスパッタ処理が終了したか否かが判断される(S2)。
【0061】
ステップ(S2)で所定数のウェハに対するスパッタ処理が終了していないと判断されると、次に、ステップ(S1)の処理が行われる。
【0062】
ステップ(S2)で所定数のウェハに対するスパッタ処理が終了したと判断されると、次に、ターゲットのエロージョン量が測定される(S3)。次に、測定されたエロージョン量が表示される(S4)。
【0063】
次に、エロージョン量が所定のアラーム値以上か否かが判断される(S5)。ステップ(S5)でアラーム値未満であると判断されると、次に、ステップ(S1)以下の処理が行われる。
【0064】
ステップ(S5)でエロージョン量がアラーム値以上であると判断されると、次に、アラームが発生される(S6)。これにより、処理が終了する。
【0065】
以上のように、本発明のスパッタリング装置1によれば、真空チャンバー11を開放することなく、光変位センサー20によって直接的にターゲット15のエロージョン量tを測定できる。従って、エロージョンを監視するための作業工数を低減できる。
【0066】
また、従来の技術における積算電力値による間接測定の誤操作によるバッキングプレート16の成分の飛ばし現象を未然に防ぐことができる。
【0067】
また、ターゲット15の寿命を精度良く見極めて、ターゲット15の寿命の限界までターゲット15を有効に利用できるので、ランニングコストの低減による生産性向上に大幅に寄与することができる。
【0068】
また、真空チャンバー11の外側に、光変位センサー20の格納設備を設ける必要がないので、スパッタリング装置1が大型になるのを抑制できる。
【0069】
また、光変位センサー20は、スパッタ処理の最中にウェハ13によって遮蔽されるので、光変位センサー20を遮蔽するシャッターなどを設ける必要がない。従って、構成を簡略化できる。
【0070】
更に、光変位センサー20を移動手段19で直線的に移動させると共に、ウェハステージ14の回転によって、光変位センサー20をウェハステージ14の中心14cを回転中心として回転させる。
【0071】
これにより、ターゲット15におけるスパッタ使用範囲38の全体に亘ってエロージョン量tを測定できる。従って、エロージョン監視の信頼性が高くなる。
【0072】
なお、上記実施形態では、光変位センサー20の移動手段19を、エアシリンダ32によって構成したが、図11に示すように、歯車及びラックによって構成された移動手段40を使用できる。
【0073】
この移動手段40は、光変位センサー20の下側に所定の長さのラック41が設けられている。また、光変位センサー20の底面には、図12に示すように、ラック41に歯合された歯車42が設けられている。この歯車42は、光変位センサー20に設けられたモータ(図示せず)によって回転される。
【0074】
また、図13に示すように、ネジ及びナットによって構成される移動手段50を使用できる。この移動手段50は、光変位センサー20の下側に配置されたネジ51と、ネジを回転させるモータ52とを有している。
【0075】
光変位センサー20の底面には、ネジ51に螺入されたナット53が設けられている。なお、光変位センサー20の下側には、図14に示すように、レール54が設けられている。
【0076】
なお、上記実施形態では、エロージョン監視手段として光変位センサー20を使用したが、エロージョン監視手段として、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダなどの各種のレーダ型センサー、近接方位センサーなどの各種の光センサー、或いは静電容量センサーなどを使用できる。
【0077】
また、本発明のスパッタリング装置は、以下の付記的事項を含むものである。
【0078】
〔その他〕
本発明は、以下のように特定することができる。
【0079】
(付記1)真空を保持すると共に所定のガスが封入される真空チャンバーと、
前記真空チャンバー内に配置され、薄膜を形成すべき被薄膜形成部材を保持する被薄膜形成部材保持手段と、
前記真空チャンバー内における前記被薄膜形成部材保持手段と対向する位置に配置され、前記薄膜を形成する成分を放出するターゲットを保持するターゲット保持手段と、
前記ターゲットに直流電流を印加する電流印加手段と、
前記被薄膜形成部材保持手段に設けられ前記ターゲットのエロージョンを監視するエロージョン監視手段と、
前記エロージョン監視手段を所定の範囲で移動させる移動手段と、
を備えるスパッタリング装置。
【0080】
(付記2)前記エロージョン監視手段は、基準面から前記ターゲットの表面までの距離に基づいて、前記エロージョン量を測定する付記1に記載のスパッタリング装置。
【0081】
(付記3)前記エロージョン監視手段は、前記被薄膜形成部材によって遮蔽される付記1に記載のスパッタリング装置。
【0082】
(付記4)前記エロージョン監視手段は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、光センサー、近接方位センサー、又は静電容量センサーである付記1に記載のスパッタリング装置。
【0083】
(付記5)前記移動手段は、前記ターゲット監視手段を前記ターゲットの中心に対応する位置から、前記ターゲットの端縁に対応する位置まで直線的に移動させる付記1に記載のスパッタリング装置。
【0084】
(付記6)前記被薄膜形成部材保持手段を回転させる回転手段を有する付記1に記載のスパッタリング装置。
【0085】
(付記7)前記エロージョン量が所定値以上のとき、警報を発生する付記1に記載のスパッタリング装置。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係るスパッタリング装置を示す断面図である。
【図2】本発明に係るウェハステージを示す上面図であり、図1のA−A断面図である。
【図3】本発明に係るエロージョン監視装置がターゲットの端縁に対応する位置に配置されている状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係るエロージョン監視装置がターゲットの中心に対応する位置に配置されている状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係るエロージョン量の測定方法を示す断面図である。
【図6】本発明に係るターゲットのスパッタ使用範囲を示す図であり、図1のB矢視図である。
【図7】本発明に係るターゲットのエロージョン測定方法を示す図であり、ウェハを取り除いた状態を示す図である。
【図8】本発明に係るターゲットの材料にアルミニウムを使用した場合のエロージョン量の測定結果を示す図である。
【図9】本発明に係るターゲットの材料にチタンを使用した場合のエロージョン量の測定結果を示す図である。
【図10】本発明に係るスパッタ処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る別の移動手段を示す図であり、歯車とラックで構成された移動手段を示す上面図である。
【図12】本発明に係る歯車とラックで構成された移動手段を示す側面図であり、図10のC矢視図である。
【図13】本発明に係る別の移動手段を示す図であり、ネジとナットで構成された移動手段を示す正面図である。
【図14】本発明に係るネジとナットで構成された移動手段を示す側面図であり、図13のD矢視図である。
【符号の説明】
【0087】
1 スパッタリング装置
11 真空チャンバー
12 薄膜
13 ウェハ(被薄膜形成部材)
14 ウェハステージ(被薄膜形成部材保持手段)
14a 溝
14b 透明な蓋
14c ウェハステージの中心
14d ウェハステージの外周縁(端縁)
15 ターゲット
15a ターゲットの端縁
15b ターゲットの中心
16 バッキングプレート(ターゲット保持手段)
17 電流印加手段
19 移動手段
20 光変位センサー(エロージョン監視手段)
21 ガスライン
22 排気ポート
23 真空ポンプ
24 マグネット
26 回転手段
30 光変位センサーの発光素子
30a 光照射部
31 光変位センサーの受光素子
31a 光受光部
32 エアシリンダ
33 本体
34 ピストン
35 照射光
36 演算部
37 所定の範囲
38 ターゲットのスパッタ使用範囲
38a 直径線
39a エロージョン発生前のターゲット表面(基準面)
39b エロージョン発生後のターゲット表面
40 移動手段
41 ラック
42 歯車
50 移動手段
51 ネジ
52 モータ
53 ナット
54 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空を保持すると共に所定のガスが封入される真空チャンバーと、
前記真空チャンバー内に配置され、薄膜を形成すべき被薄膜形成部材を保持する被薄膜形成部材保持手段と、
前記真空チャンバー内における前記被薄膜形成部材保持手段と対向する位置に配置され、前記薄膜を形成する成分を放出するターゲットを保持するターゲット保持手段と、
前記ターゲットに直流電源を印加する電流印加手段と、
前記被薄膜形成部材保持手段に設けられ前記ターゲットのエロージョンを監視するエロージョン監視手段と、
前記エロージョン監視手段を所定の範囲で移動させる移動手段と、
を備えるスパッタリング装置。
【請求項2】
前記エロージョン監視手段は、前記被薄膜形成部材によって遮蔽される請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記エロージョン監視手段を前記ターゲットの中心付近に対応する位置から、前記ターゲットの端縁付近に対応する位置まで直線的に移動させる請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記被薄膜形成部材保持手段を回転させる回転手段を有する請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記エロージョン量が所定値以上のとき、警報を発生する請求項1に記載のスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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