説明

スパッタ除去装置およびスパッタ除去方法

【課題】ボディに残留したスパッタを効率的且つ確実に除去することが可能な装置および方法を提供する。
【解決手段】ボディ1の四隅を4つの油圧シリンダ4により持ち上げて4点支持し、この状態でボディ1をバイブレータ5により加振してボディ1に残留したスパッタをスパッタ集約位置へ向けて移動させ、スパッタ集約位置へ向けて移動するスパッタをロボットに装着された吸引部を移動させながら吸引するので、従来除去するのが困難であったボディ1に張り付いたスパッタやパネルとパネルとの間に挟まったスパッタを浮かせて吸引することが可能になり、すべてのスパッタを確実に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタ除去装置およびスパッタ除去方法に関するもので、特に、車両の製造工程において溶接作業時に発生してボディに残留したスパッタを除去する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の製造ラインにおいては、溶接作業時に発生したスパッタは、ボディに残留した状態で塗装ラインに搬入されると塗装不良の原因になる。したがって、溶接作業と塗装工程との間に清掃工程を配置し、ボディに残留したスパッタ(以下、単にスパッタという)を除去する必要がある。例えば、ブラシを有する吸引用アタッチメントをロボットで移動させてスパッタを掃きだしながら吸引するように構成した清掃工程が知られている。
【0003】
このような清掃工程では、ロボットの動作プログラムがブラシの摩耗前のままであると、ブラシが摩耗した時にブラシがボディから浮いてしまう。この場合、特にボディに張り付いた状態のスパッタを除去するのは困難であり、清掃工程後のボディにスパッタが残留するおそれがある。また、上記清掃工程では、パネルとパネルとの間のブラシが届かないスパッタを除去することはできない。さらに、当該製造ラインにおけるタクトの制約から清掃工程に十分な時間を確保することができず、清掃工程の合理化が技術的課題になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ボディに残留したスパッタを効率的且つ確実に除去することが可能なスパッタ除去装置およびスパッタ除去方法を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のスパッタ除去装置は、車両の製造工程においてボディに残留した溶接作業時のスパッタを除去する装置であって、前記ボディに残留したスパッタを吸引部に開口した吸引口から吸引する吸引手段と、前記吸引手段の吸引部をロボット制御部に格納された動作プログラムに基づき移動させるロボットと、前記ボディの少なくとも1箇所に配置される加振部と該加振部を制御する振動制御部とを有する加振手段と、を有し、前記ボディに、前記スパッタを集約する少なくとも1箇所のスパッタ集約位置を設定しておいて、前記加振手段により前記ボディを加振して前記スパッタを前記スパッタ集約位置へ向けて移動させ、該スパッタ集約位置へ向けて移動する前記スパッタおよび前記スパッタ集約位置に集約した前記スパッタを前記吸引手段の吸引部により吸引することを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のスパッタ除去方法は、車両の製造工程においてボディに残留した溶接作業時のスパッタを除去する方法であって、前記ボディを加振して前記スパッタをスパッタ集約位置へ向けて移動させ、前記スパッタ集約位置へ向けて移動する前記スパッタを、吸引口を有する吸引部をロボットにより移動させながら吸引することを特徴とする。
【0007】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許
請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
なお、以下の各項において、(1)〜(10)項の各々が、請求項1〜10の各々に相当する。
【0008】
(1)車両の製造工程においてボディに残留した溶接作業時のスパッタを除去する装置であって、ボディに残留したスパッタを吸引部に開口した吸引口から吸引する吸引手段と、吸引手段の吸引部をロボット制御部に格納された動作プログラムに基づき移動させるロボットと、ボディの少なくとも1箇所に配置される加振部と該加振部を制御する振動制御部とを有する加振手段と、を有し、ボディに、スパッタを集約する少なくとも1箇所のスパッタ集約位置を設定しておいて、加振手段によりボディを加振してスパッタをスパッタ集約位置へ向けて移動させ、該スパッタ集約位置へ向けて移動するスパッタおよびスパッタ集約位置に集約したスパッタを吸引手段の吸引部により吸引することを特徴とするスパッタ除去装置。
本項に記載のスパッタ除去装置によれば、加振手段によりボディを加振することで、従来除去するのが困難であったボディに張り付いたスパッタやパネルとパネルとの間に挟まったスパッタを、スパッタ集約位置へ向けて移動させて吸引手段の吸引部により吸引することで確実に除去することができる。
本項の態様において、ボディの加振時には、例えば、ボディを4つの油圧シリンダにより4点支持してボディに振動が伝達され易くするのが好ましい。また、スパッタ集約位置は、ボディの高低差、仕切りおよびスパッタが移動する上での障害物の位置等に応じて設定すればよい。
【0009】
(2)加振手段は、振動制御部により加振部を制御することでスパッタをスパッタ集約位置へ向けて一定の速度で移動させ、ロボットは、スパッタ集約位置へ向けて移動するスパッタの挙動に同期するように吸引部を移動させる(1)のスパッタ除去装置。
本項に記載のスパッタ除去装置によれば、吸引部をスパッタの挙動に同期させて移動させることでスパッタを効率的に吸引することができ、清掃に要する時間を削減することができる。
本項の態様において、ボディを加振することによるスパッタの移動速度は、サンプリングしたスパッタの群速度を一定と見做すことで求めることができる。そして、ボディのスパッタ移動区間における吸引部の移動速度が求められたスパッタ移動速度に同期するようにロボットを制御(ティーチング)すればよい。なお、スパッタ集約位置に集約したスパッタを吸引する場合、必ずしも吸引部をスパッタの挙動に同期させて移動させる必要はない。
【0010】
(3)ロボットは、吸引部をスパッタ集約位置に対して遠方からスパッタ集約位置へ向けてスパッタの移動速度で移動させる(1)、(2)のスパッタ除去装置。
本項に記載のスパッタ除去装置によれば、スパッタ集約位置へ向けて移動するスパッタをより効率的に吸引することができる。
本項の態様において、吸引部を、例えば、スパッタ集約位置へ向けてジグザグの経路で移動させることで、スパッタを効率的に除去することができる。
【0011】
(4)加振手段は、4つの加振部がそれぞれボディの四隅に配置され、各加振部が振動制御手段により個別に制御される(1)−(3)のスパッタ除去装置。
本項に記載のスパッタ除去装置によれば、ボディの四隅に配置した各加振部を個別に制御することで、ボディを4点加振共振制御することができる。すなわち、各加振部の周波数ならびに加振するタイミングを変えることで、ボディの振動を一定共振制御、前後共振制御、左右共振制御、独立共振制御してスパッタを移動させるのに最適な共振制御方式を選択することができる。なお、一定共振制御とは、ボディの4点を同時に加振し、各点の振動周波数を変化させることでスパッタの挙動を制御するものである。また、前後共振制御とは、ボディを前部(2点)と後部(2点)とに分けて周波数に強弱を付与して加振するものであり、スパッタを前後方向へ移動させる場合に有効である。また、左右共振制御とは、ボディを左部(2点)と右部(2点)とに分けて周波数に強弱を付与して加振するものであり、スパッタを左右方向へ移動させる場合に有効である。さらに、独立共振制御とは、4点をそれぞれ独立に周波数に強弱を付与して加振するものである。
本項の態様において、例えば、ボディを4つの油圧シリンダにより4点支持して、各油圧シリンダのピストン先端部にそれぞれ加振部を設けることができる。
【0012】
(5)ボディがスパッタの挙動に基づき複数の領域に区画し、各領域に対応させてロボットが配置される(1)−(4)のスパッタ除去装置。
本項に記載のスパッタ除去装置によれば、清掃に要する時間を大幅に削減することができる。
本項の態様において、例えば、ボディを4つの領域に区画し、各領域に対応させて4基のロボットを配置することで、ロボットが1基の場合と比較して、単純計算で清掃時間を1/4にすることができる。
【0013】
(6)車両の製造工程においてボディに残留した溶接作業時のスパッタを除去する方法であって、ボディを加振してボディに残留したスパッタをスパッタ集約位置へ向けて移動させ、スパッタ集約位置へ向けて移動するスパッタを、吸引口を有する吸引部をロボットにより移動させながら吸引することを特徴とするスパッタ除去方法。
本項に記載のスパッタ除去方法によれば、ボディを加振することで、従来除去するのが困難であったボディに張り付いたスパッタやパネルとパネルとの間に挟まったスパッタを、スパッタ集約位置へ向けて移動させて吸引手段の吸引部により吸引することで確実に除去することができる。
本項の態様において、ボディの加振時には、例えば、ボディを4つの油圧シリンダにより4点支持してボディに振動が伝達され易くするのが好ましい。また、スパッタ集約位置は、ボディの高低差、仕切りおよびスパッタが移動する上での障害物の位置等に応じて設定すればよい。
【0014】
(7)ボディの振動を制御することでスパッタをスパッタ集約位置へ向けて一定の速度で移動させ、吸引部をスパッタ集約位置へ向けて移動するスパッタの挙動に同期するように移動させてスパッタを吸引する(6)のスパッタ除去方法。
本項に記載のスパッタ除去方法によれば、吸引部をスパッタの挙動に同期させて移動させることでスパッタを効率的に吸引することができ、清掃に要する時間を削減することができる。
本項の態様において、ボディを加振することによるスパッタの移動速度は、サンプリングしたスパッタの群速度を一定と見做すことで求めることができる。そして、ボディのスパッタ移動区間における吸引部の移動速度が求められたスパッタ移動速度に同期するようにロボットを制御(ティーチング)すればよい。なお、スパッタ集約位置に集約したスパッタを吸引する場合、必ずしも吸引部をスパッタの挙動に同期させて移動させる必要はない。
【0015】
(8)吸引部をスパッタ集約位置に対して遠方からスパッタ集約位置へ向けてスパッタの移動速度で移動させてスパッタを吸引する(6)、(7)のスパッタ除去方法。
本項に記載のスパッタ除去方法によれば、スパッタ集約位置へ向けて移動するスパッタをより効率的に吸引することができる。
本項の態様において、吸引部を、例えば、スパッタ集約位置へ向けてジグザグの経路で移動させることで、スパッタを効率的に除去することができる。
【0016】
(9)加振手段の加振部をボディの四隅に配置し、各加振部をボディに応じて個別に制御してボディの共振を制御することでスパッタの挙動を制御する(6)−(8)のスパッタ除去方法。
本項に記載のスパッタ除去方法によれば、ボディの四隅に配置した各加振部を個別に制御することで、ボディを4点加振共振制御することができる。すなわち、各加振部の周波数ならびに加振するタイミングを変えることで、ボディの振動を一定共振制御、前後共振制御、左右共振制御、独立共振制御してスパッタを移動させるのに最適な共振制御方式を選択することができる。なお、一定共振制御とは、ボディの4点を同時に加振し、各点の振動周波数を変化させることでスパッタの挙動を制御するものである。また、前後共振制御とは、ボディを前部(2点)と後部(2点)とに分けて周波数に強弱を付与して加振するものであり、スパッタを前後方向へ移動させる場合に有効である。また、左右共振制御とは、ボディを左部(2点)と右部(2点)とに分けて周波数に強弱を付与して加振するものであり、スパッタを左右方向へ移動させる場合に有効である。さらに、独立共振制御とは、4点をそれぞれ独立に周波数に強弱を付与して加振するものである。
本項の態様において、例えば、ボディを4つの油圧シリンダにより4点支持して、各油圧シリンダのピストン先端部にそれぞれ加振部を設けることができる。
【0017】
(10)ボディをスパッタの挙動に基づき複数の領域に区画し、各領域のスパッタを各領域に対応させて配置したロボットにより吸引する(6)−(9)のスパッタ除去方法。
本項に記載のスパッタ除去方法によれば、清掃に要する時間を大幅に削減することができる。
本項の態様において、例えば、ボディを4つの領域に区画し、各領域に対応させて4基のロボットを配置することで、ロボットが1基の場合と比較して、単純計算で清掃時間を1/4にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
ボディに残留したスパッタを効率的且つ確実に除去することが可能なスパッタ除去装置およびスパッタ除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図1〜図10に基いて説明する。
本実施形態のスパッタ除去装置は、車両の製造ラインの溶接作業と塗装工程との間に配置される清掃工程においてボディ1に残留した溶接作業時のスパッタ2を除去するものである。図1に示されるように、スパッタ除去装置は、搬送台車3に載置されたボディ1を4点(四隅)で持ち上げて支持する4つの油圧シリンダ4を有する。図2に示されるように、各油圧シリンダ4のピストンの上端部には、ボディ1に設定された各リフト部に係合されるピン6を有する支持部材7がそれぞれ設けられる。各支持部材7と各油圧シリンダ4のピストンの上端部との間には、それぞれバイブレータ5(加振部)が設けられる。各バイブレータ5は、マイクロコンピュータからなる振動制御部により加振周波数および加振タイミング等がそれぞれ独立に制御される。なお。本実施形態における加振手段は、各バイブレータ5および振動制御部を含んで構成される。
【0020】
図3に示されるように、ボディ1は、高低差ならびにパネルの位置等に基づき複数箇所のスパッタ集約位置8が設定される。ボディ1は、振動によるスパッタ2の挙動を考慮して複数箇所のスパッタ集約位置8が設定され、さらに、複数箇所のスパッタ集約位置8を
含む複数のブロック(領域)B1〜B4に区画される。図5に示されるように、本実施形態では、ボディ1の各ブロックB1〜B4に対応させて4基のロボットR1〜R4が配置される。図2および図4に示されるように、各ロボットR1〜R4には、吸引口の周囲にブラシ10が植付けられた吸引部9が持たされる。各吸引部9は、それぞれホースを介して負圧発生部に接続され、ボディ1に残留したスパッタ2を吸引することができる。なお、本実施形態における吸引手段は、各吸引部9および負圧発生部を含んで構成される。
【0021】
次に、上記スパッタ除去装置を使用してボディに残留したスパッタ2を除去する方法を説明する。なお、説明の便宜上、ボディ1の前部右側に配置されたバイブレータ5をバイブレータFR、前部左側に配置されたバイブレータ5をバイブレータFL、後部右側に配置されたバイブレータ5をバイブレータRR、後部左側に配置されたバイブレータ5をバイブレータRLという。
まず、清掃工程に搬入される前の状態のボディ1を観察し、ボディ1の高低差、パネル位置、スパッタ2の飛散状態等から、ボディ1上の複数箇所にスパッタ集約位置8を設定する。さらに、スパッタ2の飛散状態からボディ1をいくつかのブロック(領域)に区画し、各ブロックに対応させてラインにロボットを配置する。なお、本実施形態では、ボディ1をB1〜B4の4つのブロックに区画し、各ブロックB1〜B4に対応させて各ロボットR1〜R4を配置する。
【0022】
次に、各種条件出しをするためのボディ1を4つの油圧シリンダ4により持ち上げて四隅を4点で支持する。この状態で各バイブレータ5によりボディ1を加振して、スパッタ2が各スパッタ集約位置8に最も効率的に集約することができる制御方式を、一定共振制御、前後共振制御、左右共振制御、独立共振制御の中から選択する。ここで、一定共振制御とは、図6に示されるように、各バイブレータFR、FL、RR、RLを同時に同一の周波数で加振し、各バイブレータFR、FL、RR、RLの振動周波数を同時に変化させることでスパッタ2の挙動を制御するものである。また、前後共振制御とは、図7に示されるように、ボディ1の前部に配置されたバイブレータFR、FLと後部に配置されたRR、RLとに分けてそれぞれの周波数に強弱を付与して加振するものであり、スパッタ2を前後方向へ移動させる場合に有効である。
【0023】
また、左右共振制御とは、図8に示されるように、ボディ1の右側に配置されたバイブレータFR、RRと左側に配置されたバイブレータFL、RLとに分けてそれぞれの周波数に強弱を付与して加振するものであり、スパッタ2を左右方向へ移動させる場合に有効である。さらに、独立共振制御とは、図9に示されるように、各バイブレータFR、FL、RR、RLをそれぞれ独立に周波数に強弱を付与して加振するものである。なお、各バイブレータFR、FL、RR、RLは、ボディ1に設定した複数箇所の振動を実際に測定することにより、スパッタ2をボディ1から浮き上がらせるのに最適な加振条件(周波数、加振時間等)を求めることができる。
【0024】
次に、各ロボットR1〜R4の動作プログラムをティーチングにより作成する。ここでは、各ロボットR1〜R4の動作は、図4に示されるように、ボディ1を選択された共振制御方式により振動させた時のスパッタ集約位置8へ向けて移動するスパッタ2の挙動に同期させればよい。具体的には、図5に示されるように、吸引部9がスパッタ集約位置8に対して遠方からスパッタ集約位置8へ向けてスパッタの移動速度でジグザグの経路で移動するように、各ロボットR1〜R4の動作プログラムを作成する。これにより、スパッタ集約位置8へ向けて移動するスパッタ2を効率的に吸引することができる。
【0025】
なお、スパッタ集約位置8に集約されたスパッタ2を吸引する場合の各ロボットR1〜R4の動作は、必ずしもスパッタ2の挙動に同期させる必要はない。また、スパッタ集約位置8へ向けて移動するスパッタ2の移動速度は、図10に示されるように、n個のスパ
ッタ2の移動速度(a1,a2,...,an)の平均速度aとし、群速度aを一定と見做すことで算出することができる。
【0026】
次に、清掃工程における流れを説明する。清掃工程には、搬送台車3に載置された状態でボディ1が搬入される。搬送台車3が規定位置で停止すると、図1に示されるように、搬送台車3上のボディ1が各油圧シリンダ4により持ち上げられる。この状態で、各バイブレータ5を選択された共振制御方式により制御して、4点で支持されたボディ1を加振する。これにより、スパッタ2は、それぞれ指定のスパッタ集約位置8へ向けて一定の速度で移動を開始する。各ブロックB1〜B4のスパッタ集約位置8へ向けて移動するスパッタ2は、各ロボットR1〜R4に装着されてスパッタ2の挙動に同期して図5に示される軌道で一定の速度(スパッタ移動速度)で移動する各吸引部9により、吸引されて除去される。なお、各ブロックB1〜B4の各スパッタ集約位置8に集約されたスパッタ2は、スパッタ2の挙動に関係なく軌道がプログラミングされた相対する吸引部9により吸引されて除去される。
【0027】
この実施形態では以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、ボディ1の四隅を4つの油圧シリンダ4により持ち上げて4点支持し、この状態でボディ1をバイブレータ5(加振手段)により加振してボディ1に残留したスパッタ2をスパッタ集約位置8へ向けて移動させ、スパッタ集約位置8へ向けて移動するスパッタ2をロボット(R1〜R4)に装着された吸引部9(吸引手段)を移動させながら吸引するので、従来除去するのが困難であったボディ1に張り付いたスパッタ2やパネルとパネルとの間に挟まったスパッタ2を浮かせて吸引することが可能になり、すべてのスパッタ2を確実に除去することができる。
また、吸引部9の動作を、スパッタ集約位置8へ向けて移動するスパッタ2の挙動に同期させたので、スパッタ2を効率的に吸引することが可能になり、清掃に要する時間を削減することができる。そして、吸引部9を、スパッタ集約位置8に対して遠方からスパッタ集約位置8へ向けてスパッタ2の移動速度で移動させながらスパッタ2を吸引するので、スパッタ集約位置8へ向けて移動するスパッタ2をより効率的に吸引することができる。
また、各油圧シリンダ4に設けられたそれぞれのバイブレータ5の共振パターン(一定共振制御、前後共振制御、左右共振制御、独立共振制御)を振動制御部(加振手段)により制御したので、スパッタ2を効率的に集約するために最適な共振制御方式を選択することができる。
また、ボディ1をスパッタ2の挙動に基づき複数のブロック(領域)B1〜B4に区画し、各ブロックB1〜B4のスパッタ2を各ブロックB1〜B4に対応させて配置した各ロボットR1〜R4により吸引するので、清掃に要する時間を大幅に削減することができる。本実施形態の場合、4基のロボットR1〜R4を配置することで、ロボットが1基の場合と比較して、単純計算で清掃時間を1/4にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ボディの四隅が油圧シリンダにより持ち上げられて4点で支持された状態を示す側面図である。
【図2】ボディの支持構造を示す本実施形態の説明図である。
【図3】4つのブロックに区画されたボディの平面図である。
【図4】スパッタ集約位置へ向けて移動するスパッタの挙動を示す本実施形態の説明図である。
【図5】ボディの各ブロックにおける吸引部の移動経路を示す本実施形態の説明図である。
【図6】一定共振制御における各バイブレータの振動波形を示す本実施形態の説明図である。
【図7】前後共振制御における各バイブレータの振動波形を示す本実施形態の説明図である。
【図8】左右共振制御における各バイブレータの振動波形を示す本実施形態の説明図である。
【図9】独立共振制御における各バイブレータの振動波形を示す本実施形態の説明図である。
【図10】スパッタ移動速度の求め方を説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ボディ、2 スパッタ、5 バイブレータ(加振手段)、8 スパッタ集約位置、9
吸引部(吸引手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の製造工程においてボディに残留した溶接作業時のスパッタを除去する装置であって、前記ボディに残留したスパッタを吸引部に開口した吸引口から吸引する吸引手段と、前記吸引手段の吸引部をロボット制御部に格納された動作プログラムに基づき移動させるロボットと、前記ボディの少なくとも1箇所に配置される加振部と該加振部を制御する振動制御部とを有する加振手段と、を有し、
前記ボディに、前記スパッタを集約する少なくとも1箇所のスパッタ集約位置を設定しておいて、前記加振手段により前記ボディを加振して前記スパッタを前記スパッタ集約位置へ向けて移動させ、該スパッタ集約位置へ向けて移動する前記スパッタおよび前記スパッタ集約位置に集約した前記スパッタを前記吸引手段の吸引部により吸引することを特徴とするスパッタ除去装置。
【請求項2】
前記加振手段は、前記振動制御部により前記加振部を制御することで前記スパッタを前記スパッタ集約位置へ向けて一定の速度で移動させ、
前記ロボットは、前記スパッタ集約位置へ向けて移動する前記スパッタの挙動に同期するように前記吸引部を移動させることを特徴とする請求項1に記載のスパッタ除去装置。
【請求項3】
前記ロボットは、前記吸引部を前記スパッタ集約位置に対して遠方から前記スパッタ集約位置へ向けて前記スパッタの移動速度で移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタ除去装置。
【請求項4】
前記加振手段は、4つの前記加振部がそれぞれ前記ボディの四隅に配置され、各加振部が前記振動制御手段により個別に制御されることを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載のスパッタ除去装置。
【請求項5】
前記ボディを前記スパッタの挙動に基づき複数の領域に区画し、各領域に対応させて前記ロボットが配置されることを特徴とする請求項1−4のいずれかに記載のスパッタ除去装置。
【請求項6】
車両の製造工程においてボディに残留した溶接作業時のスパッタを除去する方法であって、前記ボディを加振して前記スパッタをスパッタ集約位置へ向けて移動させ、前記スパッタ集約位置へ向けて移動する前記スパッタを、吸引口を有する吸引部をロボットにより移動させながら吸引することを特徴とするスパッタ除去方法。
【請求項7】
前記ボディの振動を制御することで前記スパッタを前記スパッタ集約位置へ向けて一定の速度で移動させ、
前記吸引部を前記スパッタ集約位置へ向けて移動する前記スパッタの挙動に同期するように移動させて前記スパッタを吸引することを特徴とする請求項6に記載のスパッタ除去方法。
【請求項8】
前記吸引部を前記スパッタ集約位置に対して遠方から前記スパッタ集約位置へ向けて前記スパッタの移動速度で移動させて前記スパッタを吸引することを特徴とする請求項6または7に記載のスパッタ除去方法。
【請求項9】
加振手段の加振部を前記ボディの四隅に配置し、各加振部を前記ボディに応じて個別に制御して前記ボディの共振を制御することで前記スパッタの挙動を制御することを特徴とする請求項6−8のいずれかに記載のスパッタ除去方法。
【請求項10】
前記ボディを前記スパッタの挙動に基づき複数の領域に区画し、各領域の前記スパッタを各領域に対応させて配置した前記ロボットにより吸引することを特徴とする請求項6−9のいずれかに記載のスパッタ除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−70110(P2010−70110A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241089(P2008−241089)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】