説明

スピロ化合物

本発明は、式(I)のスピロ化合物、および二重開環重合によってそれから製造され、金属酸化物または半金属酸化物の多孔質の骨格で作られ、かつ触媒担体または活性剤用担体として用いるのに適したモノリス材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式Iのスピロ化合物、および二連開環重合によってそれから製造される複合材、好ましくはモノリスの形態であって、とりわけ触媒を担持するのに適している金属酸化物または半金属酸化物の多孔質材料に関する。
【0002】
「モノリス」という用語は、材料の大部分が従来の顆粒の大きさよりも大きい凝集小片の形態であることを意味する。
本明細書において金属酸化物または半金属酸化物という用語は、文字通りの意味での金属酸化物または半金属酸化物、および金属水酸化物または半金属水酸化物をさらに含む酸化物(酸化物/水酸化物の混合物)の両方を包含する。
【0003】
米国特許第2,276,094号明細書に記載されているテトラフルフリルオキシシラン(TFOS)のカチオン重合により、相互に侵入する仕方で架橋されたポリフルフリルアルコールとシリカゲルとからなるナノ複合材が、たった1回のステップで製造される(Spange et al. Angew. Chem. 2007, 119,636−640を参照)。
【0004】
1種のモノマーから2種類のポリマーが形成されるため、この新しいタイプの重合に関して「二連重合」という分類が提案された(Spange et al. Angew. Chem. 2007, 119, 636−640を参照)。ただし、この分類は、Spange et al.が示した例の非常に大まかな分類であり、というのは、形成される縮合生成物が水であるため、それは特別な縮合重合だからであり、水は、加水分解によって生じうる副反応により阻害するようなものとして、また分離される成分として識別されうる。特に、周期律表の他の元素(アルミニウムまたはチタンなど)をモノマーの組み合わせにおいて使用した場合、水の加水分解作用をもはや無視できなくなり、結果として、同時または顕著に、従来のゾル−ゲル法の現象が起こる(C.J. Brinker et al. Sol−gel science:the physics and chemistry of sol−gel processing, 6th Edn. Academic Press, San Diego, 1995を参照)。
【0005】
さらに、フラン誘導体は非常に反応性があり、副反応(特に酸化)を起こしやすく、そのためそうした誘導体は特定の産業利用がいっそう難しい。それゆえにポリフラン樹脂は多くの場合、不均一であり、極めてもろく、着色している(実に黒色であることも多い)。こうしたことのために、多くの用途から締め出されている。それゆえに本発明の目的は、副反応のない均一なプロセスがもたらされ、水などの妨害物質が重合の過程で取り除かれるように、かつ均一で無色またはほんの少しだけ色がついているナノ複合材が得られるように、TFOSとジフルフリルオキシジメチルシラン(DFS)とから出発する周知の二連縮合重合をさらに発展させることである。
【0006】
本目的は、驚くべきことに、例えば、2,2’−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン](SPISIと略す)などの金属または半金属スピロ化合物の「二連開環重合」によって複合材を製造することで達成される。こうした複合材は、例えば、シリカとフェノール樹脂とを含む2つの両連続した、均一かつナノ構造の相を有し、複合材は、有機相を酸化させることにより、モノリス構造を失うことなく酸化物モノリスに変換することができる。シリカ相も同様にエッチングによって溶出させて、連続した多孔質有機樹脂体を得ることができる。さらに、反応を適切な仕方で実施するならば、本発明による方法で得られた複合材は色がついていないかまたはほんの少しだけ色がついていて、透明である。
【0007】
したがって、本発明は、式I
【化1】

[式中、
Mは、金属または半金属、好ましくはSi、Ti、ZrまたはHf、特に好ましくはSiまたはTiであり、
1、A2、A3、A4は、互いに独立に、水素、または線状または分岐の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または芳香族−脂肪族炭化水素基であり、
1、R2は、互いに独立に、水素、または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチルまたはHである]
のスピロ化合物に関する。
【0008】
1〜A4の基のうちの2個または3個以上が互いに結合している、特に縮合している(すなわち、結合して共通の芳香族環系を形成している)のが好ましい。
1〜A4の基の1個または複数個の炭素原子が、互いに独立にヘテロ原子で、特に酸素、硫黄及び/または窒素で置換されているのがさらにより好ましい。さらに、A1〜A4が互いに独立に、1つまたは複数の官能基を含んでいるのが好ましい。好適な官能基は、特に、以下の基である:ハロゲン(特に臭素または塩素)、−CNおよび−NR2(ここで、Rは、特に水素、または脂肪族または芳香族の炭化水素基、好ましくはH、メチル、エチルまたはフェニルである)。
【0009】
本発明によれば、R1およびR2の基はさらに好ましくは、互いに独立に、水素であるか、または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。R1およびR2は、好ましくは水素(H)およびメチルから選択される。R1およびR2は、特に好ましくはHと等しい。
【0010】
加えて、A1およびA3の2つの基のうちの少なくとも1個が水素原子であるのが特に好ましい。特に非常に好ましい実施態様では、A1およびA3の両方が水素原子である。さらに、A1〜A4は、特に非常に好ましくはHと等しい。
化合物は、もっとも好ましくは2,2’−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]である。
【0011】
本発明はさらに、一般式I
【化2】

[式中、
1およびA3は、H及び/または一般式II
【化3】

[式中、
1およびB2は互いに独立に、線状または分岐の脂肪族または芳香族炭化水素基であり、これはヘテロ原子、好ましくは酸素、窒素または硫黄を含んでもよく、B1基とB2基との間には、1個または複数個の炭素原子またはヘテロ原子を介して閉環が存在していてよく、
M、A1、A2、A3、A4、R1、R2の意味は上述のとおりであり、A1およびA3は水素と等しい]
の化合物を表す]
のスピロ化合物の群から選択される1種または複数種のモノマー単位の重合(好ましくは、二連開環重合)によって得ることができる無機/有機ハイブリッド材料(複合材)に関する。
【0012】
こうした複合材は、例えば、高耐熱性および高強度を有する材料として使用できる。
【0013】
本発明はさらに、カチオン重合による(好ましくは二連開環重合による)無機/有機ハイブリッド材料から得ることのできる多孔質酸化物モノリスであって、有機相が完全に除去されている(好ましくは酸化されている)多孔質酸化物モノリスに関する。こうした多孔質の安定した無機モノリスは、例えば、触媒担体として好適である。
【0014】
本発明によれば、「酸化物モノリス」とは、1種または複数種の金属酸化物または半金属酸化物からなる、上に述べたように金属水酸化物または半金属水酸化物も含みうるモノリスと定義される。
【0015】
本発明はさらに、カチオン重合による(好ましくは二連開環重合による)無機/有機ハイブリッド材料から得ることができる多孔質有機樹脂体であって、無機相が、好ましくは溶解またはエッチングによって完全に除去されている多孔質有機樹脂体に関する。好適な溶剤またはエッチング剤は、好ましくは、有機相に悪影響を与えることなく無機相を完全に溶解または化学修飾する試剤(特に、酸)である。
【0016】
こうした多孔質の安定した有機樹脂は、例えば、触媒担体として、または活性物質(医薬品または作物保護剤など)用の担体として好適である。
【0017】
2種類の異なる巨大分子が同時に形成されるというのが、二連重合の過程の特徴である。2種類のポリマーの成長段階は速度論的に結びついており、その結果、第1ポリマーの形成は、第2ポリマーの形成と同じ時間尺度で行われる。したがって、有機/無機ハイブリッドモノマーの二連重合は、すでに知られている2種類の異なるモノマーが単一系で同時に重合する併発重合、または複合モノマー(親モノマー)が2種類の異なるメカニズムで連続的に重合することが多い逐次重合などのプロセスとは明らかに区別される。本発明によれば、2つのタイプの二連重合は次のように区別される。
【0018】
・ 環等価物を持たないハイブリッドモノマーは、たとえ単一のプロセスで2種類のポリマー構造体を生じるとしても、更なる低分子量縮合生成物(例えば、水など)をさらに形成するに違いない。したがって、この反応は縮合重合である。
【0019】
・ 本発明による二連重合では、環等価物を有するモノマーを使用する。その場合、開環重合時に低分子量の生成物を生じることなく2種類のポリマーを単一のプロセスで形成することができる。これは、例えば、スピロケイ素化合物の開環カチオン重合で観察される。
【0020】
2種類の異なる共有結合単位からなる特別に考え出されたモノマー(ハイブリッドモノマー)の二連重合により、たった1回の工程段階で、2種類の異なるポリマーが同時に形成される。本発明の目的においては、2種類の異なる巨大分子構造体が単一のプロセスで同時に形成されることが非常に重要である。ここで形成される2種類のポリマーはそれぞれが線状構造体、分岐構造体または架橋構造体を形成しうる。ハイブリッドモノマーの分子組成により、理論架橋度が明確に定まる。2種類の架橋ポリマー構造体が同時に形成される場合、複合材中のそれぞれの構成成分の長さスケールは、モノマー単位の分子サイズおよび拡散過程によって決まる。したがってこの新規の重合方法により、有機ポリマーを用いた鋳型援用方法がその固有の限界に直面するような非常に様々な種類の材料で、0.5nm〜2nmの長さスケールのナノ構造複合材を開発することも可能になる。したがって本発明による重合方法により、分子と典型的なナノ構造(<2nm)との間の長さスケールのギャップがなくなる。
【0021】
上にすでに述べたように、無機相と有機相とを含むハイブリッド材料の有利な両連続構造が、その2つの相が同時に形成されるもとになる単一の出発物質を用いて実現される。それらの相は、重合時に分離するが、肉眼で見えるような反応生成物の沈殿が生じることはない。むしろ、ナノメートル範囲の長さスケールで分離が起こる。重合で形成される2つの相は、完全かつ連続的に相互に侵入する。反応が正しく行われるならば、分離した領域の形成を観察することはできない。
【0022】
一般式Iの新規のスピロ化合物及び/または上に定義した基を含む一般式IIの化合物、あるいはこの2つの式を組み合わせたものの場合、反応時に低分子量の脱離生成物が形成されるのを避けられる。
【0023】
形成されるハイブリッド材料は、2つの相が非常に均一に分散されていることで区別される。得られたモノリスが透明であることは、2つの相のうちの一方が肉眼で見える領域として反応で形成されていないことを示す。好適な酸性触媒を選択することも、重合反応の最適な過程にとって非常に重要である。ここでは、酸、例えば、トリフルオロ酢酸またはメタンスルホン酸などを使用するのが好ましい。トリフルオロ酢酸(これは特に好ましい)などの比較的弱いプロトン酸では、重合反応が遅くなり、透明な複合材が得られる(表1を参照)。それとは対照的に、比較的強い酸性触媒では、反応が制御不能なほど急速に進行することが多い。
【0024】
本発明はさらに、前述のとおりの一般式Iのスピロ化合物及び/または一般式IIの化合物の群から選択される1種または複数種のモノマー単位を重合させることによって、無機/有機ハイブリッド材料を製造する方法に関する。
【0025】
無機/有機ハイブリッド材料を生じさせるためには、式Iおよび(使用する場合)式IIのA1およびA3が水素(H)であること、特にA1〜A4がHと等しいことが好ましい。置換基A1およびA3としての水素原子は、重合反応の目的のための反応性基を表す。
【0026】
したがって本発明はさらに、
a)上に定義された一般式Iのスピロ化合物及び/または一般式IIの化合物の群から選択される1種または複数種のモノマー単位を重合させることによってハイブリッド材料を製造するステップと、
b)有機相を(好ましくは酸化によって)完全に除去して、酸化物モノリスを得るステップと
を含む、酸化物モノリスの製造方法に関する。
【0027】
加えて、本発明はさらに、酸化物モノリスの製造方法に関して記載したステップa)と、a)の項で記載した1種または複数種のモノマー単位を重合させることによってハイブリッド材料を製造するステップと、無機相を(好ましくはエッチングによって)完全に除去するステップとを含む、多孔質有機樹脂体の製造方法に関する。
【0028】
本発明はさらに、式III
【化4】

[式中、
1、A2、A3、A4、R1、R2の意味は上述のとおりであり、
1およびA3はHと等しい]
の化合物を、元素Si、Ti、ZrまたはHfを有する少なくとも1種のアルコキシ及び/またはハロゲン化合物と反応させることを特徴とする、式Iのスピロ化合物の製造方法に関する。
【0029】
本発明によれば、使用するハロゲン化合物は、好ましくはSiCl4であり、使用するアルキル化合物は、好ましくはテトラアルキルオルトシリケートまたはテトラアルキルチタネートである。テトラメチルオルトシリケート(TMOS)およびテトラエチルオルトシリケート、ならびにテトライソプロピルチタネートが特に好ましい。
SiCl4を使用する場合、トリエチルアミンを補助塩基として使用する。しかし、形成されるかさばったアンモニウム塩は、製造時における障害物となりうるので、そのことはテトラアルキル化合物の使用がさらにより好ましいことを意味する。
【0030】
本発明はさらに、触媒担体としての酸化物モノリスの製造における、式I及び/またはIIのスピロ化合物の使用に関する。
【0031】
本発明はさらに、触媒担体としての無機または酸化物のモノリスの使用に関する。この場合、金属、酸化物または錯化合物は、多孔質表面に吸着されるか、またはそれに化学結合するかのいずれかである。有利な表面と体積との比である場合、単位体積当たりの触媒の量を多くすることができ、輸送孔により活性中心への材料輸送を良好にすることができ、さらにモノリス構造により取り扱いが簡単になる。
【0032】
本発明はさらに、触媒担体または活性化合物(医薬品または作物保護剤など)用の担体としての多孔質有機樹脂の製造における、式I及び/またはIIのスピロ化合物の使用に関する。
【0033】
本発明はさらに、触媒担体または活性化合物用担体としての有機多孔質樹脂の使用に関する。触媒担体としての場合は、金属、酸化物または錯化合物は、多孔質表面に吸着されるか、またはそれに化学結合するかのいずれかである。有利な表面と体積との比である場合、単位体積当たりの触媒の量を多くすることができ、また輸送孔により活性中心への材料輸送を良好にすることができる。
【0034】
担持される場合、活性化合物は孔の中に吸着され、制御された仕方で時間と共にまたは周囲変数に応じて遊離される。したがって活性化合物は、ある期間にわたって、または所望の作用部位で遊離させることが可能である。
【0035】
本発明はさらに、材料の製造、特に高耐熱性および高強度を有する材料の製造における、式I及び/またはIIのスピロ化合物の使用に関する。
【0036】
本発明はさらに、材料として、特に高耐熱性および高強度を有する材料としての複合材の使用に関する。
【0037】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図したものである。ただし、それらは決して限定するものと見なされるべきではない。製造に使用できる化合物または構成成分はすべて、周知で市販のものであるか、または周知の方法で合成できるものである。実施例に示してある温度は、常に℃である。さらに言うまでもないことであるが、説明でも実施例でも、組成物中の構成成分の添加量は、合計して必ず100%になる。示されている百分率データは、常に、示されている関係において考慮すべきである。しかし、それらは通常は必ず、示されている部分量または総量の質量と関係している。トルエンおよびジクロロメタンは乾燥させた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、伝統的な共重合によってコポリマーが得られることを示す。
【図2】図2は、TFOSタイプの二連重合および本発明による二連開環重合の概念に従った特定のスピロ化合物を示す。
【図3】図3は、テトラメトキシシランを用いたサリチルアルコールのエステル化によるSPISIの合成を示す。
【図4】図4は、2,2’−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]の例を参照しながら、本発明による二連開環重合の理論式全体を示す。
【0039】
実施例
実施例1:2,2′−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン](SPISI)の調製(図3を参照)
135.77gのサリチルアルコール(1.0937mol)をトルエン中に85℃で溶かした。その後で、83.24g(0.5469mol)のテトラメトキシシラン(TMOS)をゆっくり滴加したが、その際にTMOSの3分の1を添加した後、0.3mlのテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド(THF中に1M)を一度に注入した。85℃で1時間攪拌した後、メタノール/トルエン共沸混合物を留去した(63.7℃)。残りのトルエンをロータリーエバポレーターで分離した。得られた底部の反応生成物から、約70℃でヘキサンを用いて生成物を溶出させ、冷却した後、透明な溶液をデカンテーションで取り出した。ヘキサンを除去すると、白色固体が残る。生成物は、ヘキサンを用いた再沈殿によって不純物からさらに精製することができる。
1H−NMR(400MHz、CDCl3、25℃、TMS)δ[ppm]=5.21(m、4H、CH2)、6.97−7.05(m、6H)、7.21−7.27(M、2H)。
13C−NMR(100MHz、CDCl3、25℃):δ[ppm]=66.3(CH2)、119.3、122.3、125.2、125.7、129.1、152.4。
29Si−CP−MAS(79.5MHz):δ[ppm]=−78.4
【0040】
実施例2:2,2’スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]のカチオン重合(二連重合)によってフェノール樹脂/シリカのナノ複合材を得る(図4を参照)
実施例1に従って調製したモノマーを、アルゴン下において80℃で溶融させるか、または25℃でクロロホルム中に溶かす。攪拌しながら開始剤であるトリフルオロ酢酸を滴加し、同じ温度で反応混合物をさらに3時間攪拌し、その後、25℃で放置する。SiO2相およびフェノール樹脂の形成が、固体核磁気共鳴分光法によって疑問の余地なく確認される。
【0041】
実施例3:酸化してナノ多孔性シリカにする
空気を供給しながら、複合材のモノリスを2K/分で900℃まで加熱し、この温度で3時間か焼する。
【0042】
実施例4:多孔質有機樹脂体の製造
複合材料を、HFの20%水溶液を用いて40℃で3時間処理する。
【0043】
実施例5〜11:触媒であるトリフルオロ酢酸(CF3COOH)およびメタンスルホン酸(CH3SO3H)の影響下で、2,2’−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]のカチオン重合によりフェノール樹脂/シリカのナノ複合材を得る
第1表:
【表1】

[a]スピロ化合物:触媒のモル比
[7]、[9]以下に記載する実施例7および9
【0044】
実施例7:スピロ化合物:触媒の比 → 25:1
72.920g(0.268mol)の2,2’−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]を、97mlのCH2Cl2に溶かした。攪拌および還流冷却しながら、73mlのCH2Cl2中に0.696ml(1.029g、0.011mol)のCH3SO3Hを溶かしたものを0℃で一度に添加した。60分後に、冷却を停止すると、ピンク色の固体が生じていた。その後、その固体を真空中で40℃において乾燥させた。
【0045】
実施例9:スピロ化合物:触媒の比 → 25:1
14.856g(0.055mol)の2,2’−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]を85℃で溶融させ、攪拌しながら0.167ml(0.249g、0.0022mol)のCF3CO2Hを滴加した。混合物を85℃でさらに2時間加熱したが、攪拌は1時間行っただけで停止した。橙褐色の透明モノリスを得た。
【0046】
図の一覧
図1:図式は、伝統的な共重合によってコポリマーが得られることを示す:a)単分子方式とb)二分子方式型。共重合の特別な形式である二連重合の場合、2種類のホモポリマー(無機酸化物と有機ポリマー)が同時に形成される。A=無機構成成分(Si、B、Ti、)、B=有機構成成分。
【0047】
図2:TFOSタイプの二連重合および本発明による二連開環重合の概念に従った特定のスピロ化合物を示す。ここでは有機構成成分Dは、2個の別々に結合した酸素原子を保持でき、その結果として、非対称開裂が行われてOHを持つポリマーが形成される。このようにして脱水縮合反応が回避される。
【0048】
図3:テトラメトキシシランを用いたサリチルアルコールのエステル化によるSPISIの合成を示す。
【0049】
図4:2,2’−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]の例を参照しながら、本発明による二連開環重合の理論式全体を示す。分かりやすくするため、線状ポリマーの形成のみを示す。しかし、本発明による重合反応では、網状体が形成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、
Mは、金属または半金属、好ましくはSi、Ti、ZrまたはHf、特に好ましくはSiまたはTiであり、
1、A2、A3、A4は、互いに独立に、水素であるか、または線状または分岐の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または芳香族−脂肪族炭化水素基であり、
1、R2は、互いに独立に、水素であるか、または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくはメチルまたはHである]のスピロ化合物。
【請求項2】
前記基A1、A2、A3およびA4のうちの少なくとも2つが互いに結合、特に縮合していることを特徴とする、請求項1に記載のスピロ化合物。
【請求項3】
前記基A1、A2、A3およびA4の1個または複数個の炭素原子が互いに独立に、ヘテロ原子で、特にO、S及び/またはNで置換されていることを特徴とする、請求項1及び/または2に記載のスピロ化合物。
【請求項4】
1、A2、A3およびA4が互いに独立に1つまたは複数の官能基、特に、BrおよびClなどのハロゲン、CNおよびNR2(ここで、Rは特に、Hまたは脂肪族または芳香族の炭化水素、好ましくはH、メチル、エチルまたはフェニルである)を含むことを特徴とする、請求項1〜3の1つ以上に記載のスピロ化合物。
【請求項5】
1およびR2がHを表すことを特徴とする、請求項1〜4の1つ以上に記載のスピロ化合物。
【請求項6】
1およびA3がHを表し、A1〜A4が好ましくはHを表すことを特徴とする、請求項1〜5の1つ以上に記載のスピロ化合物。
【請求項7】
1およびA3が、H及び/または一般式II
【化2】

[式中、
1、B2は、互いに独立に、線状または分岐の脂肪族または芳香族炭化水素基であり、これはヘテロ原子、好ましくはO、NまたはSを含んでもよく、B1とB2との間には、1個または複数個の炭素原子またはヘテロ原子を介して閉環が存在し、
M、A1、A2、A3、A4、R1、R2は、請求項1〜6の1つ以上に記載の意味を有し、A1およびA3は水素と等しい]の化合物である、請求項1〜6に記載の一般式Iのスピロ化合物の群から選択される1種または複数種のモノマー単位を重合させて得られる無機/有機ハイブリッド材料。
【請求項8】
前記重合がカチオン重合、好ましくは二連開環重合であることを特徴とする、請求項7に記載の無機/有機ハイブリッド材料。
【請求項9】
前記有機相が完全に除去されている、好ましくは酸化されている、請求項7及び/または8に記載の無機/有機ハイブリッド材料から得られる多孔質酸化物モノリス。
【請求項10】
前記ハイブリッド材料が、金属酸化物または半金属酸化物の無機多孔質骨格とポリマーとを含むことを特徴とする、請求項9に記載の多孔質酸化物モノリス。
【請求項11】
前記金属酸化物または半金属酸化物として、ケイ素の二酸化物/水酸化物、チタンの二酸化物/水酸化物、ジルコニウムの二酸化物/水酸化物またはハフニウムの二酸化物/水酸化物が使用されることを特徴とする、請求項9及び/または10に記載の多孔質酸化物モノリス。
【請求項12】
前記ポリマーがフェノール樹脂であることを特徴とする、請求項9〜11の1つ以上に記載の多孔質酸化物モノリス。
【請求項13】
請求項7及び/または8に記載の無機/有機ハイブリッド材料から無機相を完全除去することによって得られる多孔質有機樹脂体。
【請求項14】
前記ハイブリッド材料が、金属酸化物または半金属酸化物の無機多孔質骨格とポリマーとを含むことを特徴とする、請求項13に記載の多孔質有機樹脂体。
【請求項15】
前記ポリマーがフェノール樹脂であることを特徴とする、請求項13及び/または14に記載の多孔質有機樹脂体。
【請求項16】
請求項1〜6の1つ以上に記載の一般式Iのスピロ化合物及び/または請求項7及び/または8に記載の一般式IIの化合物の群から選択される1種または複数種のモノマー単位を重合させることによる、無機/有機ハイブリッド材料の製造方法。
【請求項17】
多孔質酸化物モノリスの製造方法において、
a)請求項1〜6の1つ以上に記載の一般式Iのスピロ化合物及び/または請求項7及び/または8に記載の一般式IIの化合物の群から選択される1種または複数種のモノマー単位を重合させることによってハイブリッド材料を製造するステップと、
b)前記有機相を完全に除去するステップと
を含む、多孔質酸化物モノリスの製造方法。
【請求項18】
一般式III
【化3】

[式中、
1、A2、A3、A4、R1、R2は、請求項1〜6の1つ以上に記載の意味を有し、A1およびA3はHと等しい]の化合物を、元素Si、Ti、ZrまたはHfを有する少なくとも1種のアルコキシ及び/またはハロゲン化合物と反応させることを特徴とする、請求項1〜6の1つ以上に記載の一般式Iのスピロ化合物の製造方法。
【請求項19】
アルキル化合物として、テトラアルキルオルトシリケートまたはテトラアルキルチタネートが使用されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
多孔質有機樹脂体の製造方法において、
a)請求項1〜6の1つ以上に記載の一般式Iのスピロ化合物及び/または請求項7及び/または8に記載の一般式IIの化合物の群から選択される1種または複数種のモノマー構成成分を重合させることによってハイブリッド材料を製造するステップと、
b)前記無機相を完全に除去するステップと
を含む、多孔質有機樹脂体の製造方法。
【請求項21】
触媒担体または活性化合物用担体として使用される多孔質有機樹脂体の製造における、請求項1〜6の1つ以上に記載の式Iのスピロ化合物及び/または請求項7及び/または8に記載の式IIの化合物の使用。
【請求項22】
触媒担体として使用される多孔質酸化物モノリスの製造における、請求項1〜6の1つ以上に記載の式Iのスピロ化合物及び/または請求項7及び/または8に記載の式IIの化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−508736(P2011−508736A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540040(P2010−540040)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010169
【国際公開番号】WO2009/083083
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】