説明

スピンオンフィルタおよびそのフィルタ用エレメント組立体

【課題】フィルタヘッドとケースとの面接触部およびネジ結合部に外部から異物が入り込むことを防止することができるスピンオンフィルタおよびそのフィルタ用エレメント組立体を提供する。
【解決手段】フィルタヘッド2(ボディ10)に形成された雄ネジ21aとエレメントケース30(ケースカバー35)に形成された雌ネジ36aによるネジ結合部、および、フィルタヘッド2に形成された第1シール面10aとエレメントケース30に形成された第2シール面35aとの面接触部より外側におけるフィルタヘッド2とエレメントケース30との間に挟持されるように設けられ、前記ネジ結合部および前記面接触部に外部から異物が入り込むことを防止するガスケット70を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル等の流体の濾過に使用されるスピンオンフィルタに関し、さらに詳しくは、流体圧が高圧となる環境下で使用されるスピンオンフィルタおよびそのフィルタ用エレメント組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
スピンオンフィルタは、従来からエンジン用オイルフィルタ等として種々用いられている。従来のスピンオンフィルタは、円筒状のケース内にフィルタエレメントを内蔵してなるエレメント組立体を、エンジン等に固定されたフィルタヘッドにネジ結合して着脱自在に取り付け、交換可能なように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。このようなスピンオンフィルタにおいて作動油の濾過を行うとき、ケース内の作動油の油圧は、ケースを下方に押してフィルタヘッドから離す方向に作用する。この力はフィルタヘッドとケースとのネジ結合部に作用するのであるが、特許文献1に開示されたスピンオンフィルタでは、流入通路および流出通路がネジ結合部よりも内径側に設けられているので、このネジ部の有効径を大きくすることができ、これにより、ネジ結合部の強度を十分に高くすることが可能であり、作動油圧が高圧となる環境下でも使用することができるようになっている。また、ネジ結合部よりも外周側にシールリング、および、フィルタヘッドとケースとの面接触部を設けることにより、ケース内の作動油圧が高圧となっても作動油が外部に漏れ出すことを防止することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5‐96107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなスピンオンフィルタにおいて、ケース内の作動油圧がさらに高圧になると、ケースを下方に押してフィルタヘッドから離す方向に作用する力が大きくなるため、フィルタヘッドとケースとの面接触部にわずかな隙間が生じる場合がある。その際、この隙間に外部から泥や埃などの異物が入り込むと、ケース内の作動油圧を十分に低下させても、ネジ結合部に作用する力が解放されずに残留するため、ケースをフィルタヘッドから取り外すために通常よりも大きなトルクが必要になるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、フィルタヘッドとケースとの面接触部およびネジ結合部に外部から異物が入り込むことを防止することができるスピンオンフィルタおよびそのフィルタ用エレメント組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るスピンオンフィルタ(例えば、実施形態におけるオイルフィルタ1)は、フィルタヘッドと、ケース(例えば、実施形態におけるエレメントケース30)内にフィルタエレメントを内蔵してなり前記フィルタヘッドに螺合して取り付けられるエレメント組立体とを有して構成される。このとき、前記ケースが、上端部が開口し下端部が閉塞したケース本体と、このケース本体にその上端開口を覆って取り付けられるカバー部材(例えば、実施形態におけるケースカバー35)とを有して構成され、前記ケース本体に前記フィルタエレメントを内蔵した状態で前記カバー部材を取り付けて前記エレメント組立体が構成される。そして、前記フィルタヘッドには円筒状に形成された突出連結部(例えば、実施形態における外側円筒部21)が設けられるとともにこの突出連結部の外周面に雄ネジが形成され、前記カバー部材には上下に貫通する貫通孔が形成されるとともにこの貫通孔に雌ネジが形成されており、前記雄ネジと前記雌ネジとがネジ結合して前記エレメント組立体が前記フィルタヘッドに着脱自在に取り付け可能となっており、前記エレメント組立体が前記フィルタヘッドに取り付けられたときに、前記フィルタヘッドと前記カバー部材とが面接触して前記フィルタヘッドと前記カバー部材との間の空間を密閉するように構成される。その上で、前記ネジ結合部および前記面接触部より外側における前記フィルタヘッドと前記カバー部材との間に挟持されるように設けられ、前記ネジ結合部および前記面接触部に外部から異物が入り込むことを防止するシール部材(例えば、実施形態におけるガスケット70)を備えることを特徴とする。
【0007】
なお、上記構成のスピンオンフィルタにおいて、前記シール部材は、弾性材料を用いて形成されるとともに、前記フィルタヘッドに向けて起立して形成されたリップ部を有し、前記リップ部が前記フィルタヘッドと当接して弾性変形した状態で前記フィルタヘッドと前記カバー部材との間に挟持されることが好ましい。また、前記シール部材において、前記リップ部はその先端部が基端部よりも外側に位置するように外側に傾いて形成されることが好ましい。
【0008】
また、上記構成のスピンオンフィルタにおいて、前記シール部材は、複数の前記リップ部を有して構成されることが好ましい。
【0009】
また、上記構成のスピンオンフィルタにおいて、前記シール部材は、前記カバー部材に固定されて前記エレメント組立体と一体に構成されることが好ましい。
【0010】
一方、本発明に係るスピンオンフィルタ用エレメント組立体は、上端部が開口し下端部が閉塞したケース本体と、このケース本体内に挿入保持されこのケース本体内を通って流れる流体の濾過を行うフィルタエレメントと、前記ケース本体内に前記フィルタエレメントを配設した状態で前記ケース本体の上端部に前記開口を覆って取り付けられたカバー部材とを有して構成される。そして、前記カバー部材には上下に貫通する貫通孔が形成されるとともにこの貫通孔に雌ネジが形成され、前記雌ネジをフィルタヘッドに形成した雄ネジとネジ結合させて前記エレメント組立体を前記フィルタヘッドに着脱自在に取り付け可能であり、このように前記フィルタヘッドに取り付けられたときに、前記カバー部材が前記フィルタヘッドと面接触して前記カバー部材と前記フィルタヘッドとの間の空間を密閉するように構成される。その上で、前記雌ネジおよび前記フィルタヘッドと面接触する部分より外側における前記カバー部材上に設けられ、前記エレメント組立体が前記フィルタヘッドに取り付けられたときに、前記カバー部材と前記フィルタヘッドとの間に挟持されて、前記ネジ結合部および前記面接触部に外部から異物が入り込むことを防止するシール部材を備えることを特徴とする。
【0011】
なお、上記構成のスピンオンフィルタ用エレメント組立体において、前記シール部材は、弾性材料を用いて形成されるとともに、上方に起立して形成されたリップ部を有し、前記エレメント組立体が前記フィルタヘッドに取り付けられたときに、前記リップ部が前記フィルタヘッドと当接して弾性変形した状態で前記フィルタヘッドと前記カバー部材との間に挟持されることが好ましい。また、前記シール部材において、前記リップ部はその先端部が基端部よりも外側に位置するように外側に傾いて形成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記構成のスピンオンフィルタ用エレメント組立体において、前記シール部材は、複数の前記リップ部を有して構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るスピンオンフィルタおよびそのフィルタ用エレメント組立体によれば、ネジ結合部および面接触部より外側におけるフィルタヘッドとカバー部材(ケース)との間に挟持されるようにシール部材が設けられるので、フィルタヘッドとケースとの面接触部にわずかな隙間が生じても、その隙間およびネジ結合部に外部から泥や埃などの異物が入り込むことを防止することができる。そのため、ケース内の作動油圧を十分に低下させたときに、ネジ結合部に作用する力が解放されるので、通常の大きさのトルクによりケース(エレメント組立体)をフィルタヘッドから取り外すことができる。また、シール部材により面接触部およびネジ結合部に外部から水が浸入することも防ぐことができ、これにより、ネジ結合部等の腐食を防ぐことができる。
【0014】
なお、上記スピンオンフィルタおよびエレメント組立体において、シール部材は、弾性材料を用いて形成されるとともに、フィルタヘッドに向けて起立して形成されたリップ部を有し、リップ部がフィルタヘッドと当接して弾性変形した状態でフィルタヘッドとカバー部材との間に挟持されるように構成することが好ましい。さらにこのとき、シール部材において、リップ部はその先端部が基端部よりも外側に位置するように外側に傾いて形成されることが好ましい。一般にシール部材は潰し代が大きいほどシール性(密閉性)や寸法安定性に優れるが、その反面、締め付け(取り付け)トルクを増加させないとフィルタヘッドとカバー部材(ケース)との面接触部の面圧が下がり、油圧変動や振動がかかるときに緩み易くなる。しかしながら、シール部材を上記のようにリップ部を有する構成とすることで、十分な潰し代によるシール性を保持しながら、低トルクによりケース(エレメント組立体)をフィルタヘッドに取り付けることができる。
【0015】
また、上記スピンオンフィルタおよびエレメント組立体において、シール部材は、複数のリップ部を有して構成されることが好ましく、このように構成すると、ケースの取り付けトルクをそれほど増加させることなく、シール部材によるシール性をより一層向上させることができる。
【0016】
また、上記スピンオンフィルタにおいて、シール部材は、カバー部材に固定されてエレメント組立体と一体に構成されることが好ましく、このように構成すると、必要に応じてエレメント組立体がフィルタヘッドから取り外されて新しいエレメント組立体と交換されるときに、シール部材も一緒に交換されることになり、シール部材の初期性能を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオイルフィルタを示す断面図である。
【図2】上記オイルフィルタを示す断面図の要部拡大図である。
【図3】上記オイルフィルタを構成するエレメント組立体を示す断面図である。
【図4】(a)は上記エレメント組立体を構成するガスケットを示す平面図であり、(b)は(a)における矢印b‐bに沿って示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るオイルフィルタを示す断面図である。
【図6】上記オイルフィルタを示す断面図の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明に係るスピンオンフィルタの一例であるオイルフィルタ1は、図1に示すように、フィルタヘッド2と、このフィルタヘッド2に着脱自在にネジ結合されて取り付けられたエレメント組立体3とを有して構成される。このオイルフィルタ1では、フィルタヘッド2が例えば油圧装置等に固定され、必要に応じてエレメント組立体3がフィルタヘッド2から取り外されて新しいエレメント組立体3と交換されるようになっている。
【0019】
フィルタヘッド2は、鋳鉄やアルミ等の金属材料からなるボディ10により全体が構成されており、このボディ10は入口ポート11と出口ポート13とを有し、これらのポート11,13にそれぞれ連通する第1通路12と第2通路14とが図示のように形成されている。両通路12,14は壁部15により隔てられているが、この壁部15には両通路12,14を繋ぐバイパス通路15aが形成され、このバイパス通路15aにはリリーフバルブ18が設けられている。リリーフバルブ18は、通常はバイパス通路15aを閉鎖し、第1通路12内の油圧P1と第2通路14内の油圧P2との差圧P(=P1−P2)が所定圧Pa以上(P>Pa)となったときにバイパス通路15aを開放する。
【0020】
ボディ10の下面側には、図2にも示すように、下方に突出する外側円筒部21および内側円筒部23からなる2重円筒状の突出部が設けられている。このため、外側円筒部21の内周面と内側円筒部23の外周面との間には上下に延びる断面リング状の外側通路22が形成され、この外側通路22の上部において第1通路12に連通し、下部は開放されている。また、内側円筒部23内には上下に延びる円筒状の内側通路24が形成され、この内側通路24の上部において第2通路14に連通し、下部は開放されている。
【0021】
なお、図示のように、内側円筒部23の方が外側円筒部21よりも下方への突出量が多く、内側円筒部23の下端部23aは外側円筒部21の下端部よりもさらに下方に突出している。外側円筒部21の外周面には雄ネジ21aが形成されている。外側円筒部21より外周側におけるボディ10の下面には、第1シールリング61および後述するケースカバー35の上面に形成された第2シール面35aと当接する第1シール面10aが形成されている。さらに、第1シール面10aより外周側におけるボディ10の下面には、後述するガスケット70と当接する第3シール面10bが形成されている。
【0022】
エレメント組立体3は、図3にも示すように、エレメントケース30と、このエレメントケース30内に挿入保持されたフィルタエレメント50とを有して構成される。エレメントケース30は、上端部が開口して下端部が閉塞された円筒状のケース本体31と、このケース本体31の上端開口を覆って取り付けられたケースカバー35とを有して構成される。
【0023】
ケースカバー35は、フィルタヘッド2と同様に金属材料からなり、その中央部に上下に貫通する貫通孔36が形成され、この貫通孔36の内周面にフィルタヘッド2の外側円筒部21に形成された雄ネジ21aと螺合する雌ネジ36aが形成されている。このため、この雌ネジ36aを外側円筒部21の雄ネジ21aと螺合させるようにして、エレメント組立体3を回転させながらフィルタヘッド2に取り付けることができる。貫通孔36より外周側におけるケースカバー35には、上下に貫通する複数の連通孔37が形成されている。この連通孔37は、エレメント組立体3の交換の際、ネジの噛み合いが残っているうちから外気の吸入とエレメント組立体3よりも上方の油の排出を行うためのものであり、この連通孔37によりネジが外れる瞬間に作動油が一気に落下して作業者や装置等へはねるのを防止することができる。
【0024】
連通孔37より外周側におけるケースカバー35の上面には、リング状の段付き部35bが形成されており、この段付き部35bに第1シールリング61が設置されている。また、段付き部35bより外周側におけるケースカバー35の上面には、フィルタヘッド2(ボディ10)の下面に形成された第1シール面10aと当接する第2シール面35aが形成されている。さらに、第2シール面35aより外周側におけるケースカバー35の上面には、リング状の凹溝35cが形成されており、この凹溝35cに後述するガスケット70が設置されている。
【0025】
ケースカバー35の外周面には、リング状溝38が形成されており、ケースカバー35がケース本体31の上端開口内に挿入された後、ケース本体31の上端部が内方にプレス形成されてリング状溝38内に入り込む。これにより、ケースカバー35がケース本体31の上端部にしっかりと結合されている。なお、この結合部のシール(密閉)を行う第2シールリング62が、リング状溝38より下側に形成されたシールリング溝内に設置されてケース本体31により覆われている。ケースカバー35の下端外周部には、下方に突出する複数のガイド部40が設けられている。各ガイド部40の内周部には、段付き部が形成されており、この段付き部によりフィルタエレメント50の上端外周部を支持するようになっている。
【0026】
フィルタエレメント50は、蛇腹状に折曲した濾材の端部を接合して断面が菊花状で外径が略円筒状となるようにした濾材54を、円板状の上および下エンドプレート51,52で挟持し、内周部を円筒状のセンターチューブ53により支持して構成される。センターチューブ53は、多数の小孔53aを有してパンチシート等から作られており、濾材54を通過して濾過された作動油がこの小孔53aを通過して、その内部空間である第2空間82内に流入するようになっている。
【0027】
ケース本体31の底部には圧縮コイルバネ55が配設されており、この圧縮コイルバネ55によりフィルタエレメント50が上方に付勢されている。このため、フィルタエレメント50の上端外周部(上エンドプレート51の外周部)が、ケースカバー35に形成されたガイド部40に受け止められ、この状態でフィルタエレメント50はエレメントケース30内で保持されている。このように保持されると、エレメントケース30内の空間が、フィルタエレメント50より外側の第1空間81と、フィルタエレメント50(センターチューブ53)内の第2空間82とに分割される。
【0028】
フィルタエレメント50の上エンドプレート51には、その中央部に上下に貫通する連通孔51aが形成されており、上記のようにフィルタエレメント50がエレメントケース30内に保持された状態で、この連通孔51aはケースカバー35の貫通孔36と対向する。このため、エレメント組立体3がフィルタヘッド2に取り付けられる前の状態(図3に示す単体の状態)では、センターチューブ53内の第2空間82はこの連通孔51aを介して第1空間81と連通する。なお、この連通孔51aの内周部には第3シールリング63が設けられている。
【0029】
エレメント組立体3がケースカバー35の雌ネジ36aを外側円筒部21の雄ネジ21aと螺合させるようにして回転しながらフィルタヘッド2に取り付けられると、図1および図2に示すように、内側円筒部23の下端部23aが上エンドプレート51の連通孔51a内に突入する。このため、第1空間81は内側円筒部23により仕切られて第2空間82と隔離され、第2空間82は連通孔51aを介して内側通路24と連通する。このとき、第3シールリング63によりこの部分がシールされる。また同時に、第1空間81は外側通路22と連通し、この空間はネジ結合部の外側において、段付き部35bと第1シール面10aとの間に挟持された第1シールリング61、および、第1シール面10aと第2シール面35aとの当接部によりシールされる。
【0030】
ガスケット70は、フィルタヘッド2(ボディ10)とケースカバー35の間に外部から泥や埃等の異物や水が入り込むことを防止するためのものであり、ゴム等の弾性材料を用いてリング状に形成され、雄ネジ21aと雌ネジ36aとによるネジ結合部および第1シール面10aと第2シール面35aとによる当接部よりも外周側に設けられる。図4に示すように、ガスケット70の下面には、リング状の凸部71が形成されており、この凸部71をケースカバー35に形成された凹溝35cに嵌合させてガスケット70がケースカバー35の上面に設置される。
【0031】
ガスケット70の上面には、上方に起立したリング状の第1リップ部72が形成されており、さらに、この第1リップ部72よりも外周側に上方に起立したリング状の第2リップ部73が形成されている。第1および第2リップ部72,73は、その先端部が基端部よりも外周側に位置するように外周側に傾いて形成されている。このため、上記のようにエレメント組立体3がフィルタヘッド2に取り付けられると、第1および第2リップ部72,73の先端部がボディ10の第3シール面10bと当接してガスケット70の上面に近づく方向に弾性変形する。これにより、ガスケット70がボディ10とケースカバー35の間のシールを行い、外部から異物や水が入り込むことを防止するようになっている。
【0032】
以上のように構成されたオイルフィルタ1による作動油の濾過について簡単に説明する。濾過対象となる作動油は、図1の矢印INで示すように、入口ポート11から第1通路12内に送り込まれ、外側通路22を通って第1空間81内に流入する。そして、第1空間81から濾材54を通って濾過され、第2空間82内に流入する。第2空間82に流入した作動油は、内側通路24および第2通路14を通って出口ポート13から矢印OUTで示すように送り出される。この場合において、濾材54の目詰まりが進みこの濾材を通過する前後の作動油の差圧Pが所定圧Pa以上になると、リリーフバルブ18によりバイパス通路15aが開放される。
【0033】
以上のようにして作動油の濾過を行うときに、エレメントケース30内の作動油の油圧は、エレメントケース30を下方に押してフィルタヘッド2から離す方向に作用する。この力は、ネジ結合部に作用するのであるが、本実施形態の場合には、エレメントケース30内に流入する通路(外側通路22)およびエレメントケース30から流出する通路(内側通路24)の両通路がネジ結合部よりも内径側に設けられているので、このネジ部の有効径を大きくすることができる。このため、ネジ結合部の強度を十分に高くすることが可能であり、作動油圧が高圧となる環境下でも使用することができる。また、ネジ結合部よりも外周側に第1シールリング61および第1シール面10aと第2シール面35aとによる当接部が設けられているので、エレメントケース30内の作動油圧が高圧となっても作動油が外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0034】
ところで、作動油圧がさらに高圧になると、エレメントケース30を下方に押してフィルタヘッド2から離す方向に作用する力が大きくなるため、第1シール面10aと第2シール面35aの間にわずかな隙間が生じる場合がある。その際、この隙間に外部から泥や埃等の異物が入り込むと、エレメントケース30内の作動油圧を十分に低下させても、ネジ結合部に作用する力が解放されずに残留するため、エレメントケース30をフィルタヘッド2から取り外すために通常よりも大きなトルクが必要となる。しかしながら、本発明に係るオイルフィルタ1では、第1および第2シール面10a,35aとによる当接部よりも外周側にガスケット70が設けられているので、両シール面の間に外部から異物や水が入り込むことを防止することができる。そのため、エレメントケース30内の作動油圧を十分に低下させたときに、ネジ結合部に作用する力が解放されるので、通常の大きさのトルクによりエレメントケース30をフィルタヘッド2から取り外すことができる。また、水の浸入も防止するができるので、ネジ結合部等の腐食を防ぐことができる。
【0035】
また、上述したように、ガスケット70が、ゴム等の弾性材料を用いて形成されるとともに、上方に起立した第1および第2リップ部72,73を有して構成されているので、十分な潰し代によるシール性を保持しながら、低トルクによりエレメントケース30をフィルタヘッド2に取り付けることができる。なお、ガスケット70では、第1リップ部72と第2リップ部73の複数のリップ部を有して構成されているため、取り付けトルクをそれほど増加させることなく、シール性をより一層向上させることができる。
【0036】
なお、上記実施形態において、ガスケット70は第1および第2リップ部72,73の2つのリップ部を有して構成されているが、1つまたは3つ以上のリップ部を有してガスケットを構成してもよい。また、リップ部を備えずにガスケットを構成してもよく、その実施形態について図5および図6を参照して以下に説明する。
【0037】
オイルフィルタ100では、ガスケットがリップ部を備えずに構成されており、また、フィルタヘッドの下面形状およびケースカバーの形状が上述のオイルフィルタ1とは異なり、第1シールリング61がネジ結合部より内側に設けられているとともに、シール面による当接部がネジ結合部より内側にも設けられている。なお、以下の説明において、上記実施形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付すこととし、その説明は省略する。
【0038】
オイルフィルタ100におけるフィルタヘッド2では、雄ネジ21aより下側における外側円筒部21の外周面に、後述するケースカバー135に形成された第5シール面136bおよび第1シールリング61と当接する第4シール面21bが形成されている。外側円筒部21より外周側におけるボディ10の下面には、ケースカバー135の上面に形成された第2シール面135aと当接する第1シール面10aが形成されている。さらに、第1シール面10aより外周側におけるボディ10の下面には、後述するガスケット170と当接する第3シール面10bが形成されている。
【0039】
オイルフィルタ100におけるエレメント組立体3は、エレメントケース130と、このエレメントケース130内に挿入保持されたフィルタエレメント50とを有して構成される。エレメントケース130は、ケース本体31と、ケース本体31の上端開口を覆って取り付けられたケースカバー135とを有して構成される。
【0040】
ケースカバー135は、フィルタヘッド2と同様に金属材料からなり、その中央部に上下に貫通する貫通孔136が形成され、この貫通孔136の内周面にフィルタヘッド2の外側円筒部21に形成された雄ネジ21aと螺合する雌ネジ136aが形成されている。このため、この雌ネジ136aを外側円筒部21の雄ネジ21aと螺合させるようにして、エレメント組立体3を回転させながらフィルタヘッド2に取り付けることができる。また、雌ネジ136aより下側における貫通孔136の内周面には、外側円筒部21に形成された第4シール面21bと当接する第5シール面136bが形成されている。さらに、第5シール面136bより下側における貫通孔136の内周面には、シールリング溝136cが形成されており、このシールリング溝136cに第1シールリング61が配置されている。
【0041】
ケースカバー135の上面には、フィルタヘッド2(ボディ10)の下面に形成された第1シール面10aと当接する第2シール面135aが形成されている。また、第2シール面135aより外周側におけるケースカバー135の上面には、リング状の凹溝135cが形成されており、この凹溝135cに後述するガスケット170が配置されている。
【0042】
ケースカバー135の外周面には、リング状溝138が形成されており、ケースカバー135がケース本体31の上端開口内に挿入された後、ケース本体31の上端部が内方にプレス形成されてリング状溝138内に入り込む。これにより、ケースカバー135がケース本体31の上端部にしっかりと結合されている。なお、この結合部のシールを行う第2シールリング62が、リング状溝138より下側に形成されたシールリング溝内に設置されてケース本体31により覆われている。ケースカバー135の下端外周部には、下方に突出する複数のガイド部140が設けられている。各ガイド部140の内周部には、段付き部が形成されており、この段付き部によりフィルタエレメント50の上端外周部を支持するようになっている。
【0043】
ガスケット170は、フィルタヘッド2(ボディ10)とケースカバー135の間に外部から泥や埃等の異物や水が入り込むことを防止するためのものであり、ゴム等の弾性材料を用いてリング状に形成され、雄ネジ21aと雌ネジ136aとによるネジ結合部および各々のシール面による当接部よりも外周側に設けられる。図6に示すように、ケースカバー135の上面に形成された凹溝135cにガスケット170が設置されている。エレメント組立体3がフィルタヘッド2に取り付けられると、ガスケット170の上面がボディ10の第3シール面10bに当接してボディ10とケースカバー135の間のシールを行い、外部から異物が入り込むことを防止するようになっている。
【0044】
以上のように構成されたオイルフィルタ100でも、上述のオイルフィルタ1と同様に、エレメントケー130内に流入する通路(外側通路22)およびエレメントケース130から流出する通路(内側通路24)の両通路がネジ結合部よりも内径側に設けられているので、このネジ部の有効径を大きくすることができる。このため、ネジ結合部の強度を十分に高くすることが可能であり、作動油圧が高圧となる環境下でも使用することができる。また、ネジ結合部よりも内側に第1シールリング61および第4シール面21bと第5シール面136bとによる当接部が設けられ、さらに、ネジ結合部よりも外側に第1シール面10aと第2シール面135aとによる当接部が設けられているので、エレメントケース130内の作動油圧が高圧となっても作動油が外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0045】
また、作動油圧がさらに高圧になってエレメントケース130を下方に押してフィルタヘッド2から離す方向に作用する力が大きくなり、第1シール面10aと第2シール面135aの間にわずかな隙間が生じる場合であっても、第1および第2シール面10a,35aとによる当接部よりも外周側にガスケット170が設けられているので、両シール面の間に外部から異物や水が入り込むことを防止することができる。そのため、エレメントケース130内の作動油圧を十分に低下させたときに、ネジ結合部に作用する力が解放されるので、通常の大きさのトルクによりエレメントケース130をフィルタヘッド2から取り外すことができる。また、水の浸入も防止するができるので、ネジ結合部等の腐食を防ぐことができる。
【0046】
なお、上述の本実施形態において、フィルタヘッドを一体に構成した例を示しているが、外側円筒部をボディとは別体に製造し、両者をネジ結合してフィルタヘッドを構成しても良い。このようにすれば、ボディの鋳造および機械加工が容易となり、フィルタヘッドの製作が容易となる。
【符号の説明】
【0047】
1 オイルフィルタ(スピンオンフィルタ) 2 フィルタヘッド
3 エレメント組立体 10 ボディ
21 外側円筒部(突出連結部) 21a 雄ネジ
30 エレメントケース(ケース) 31 ケース本体
35 ケースカバー(カバー部材) 36 貫通孔
36a 雌ネジ 50 フィルタエレメント
70 ガスケット(シール部材) 72 第1リップ部
73 第2リップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタヘッドと、ケース内にフィルタエレメントを内蔵してなり前記フィルタヘッドに螺合して取り付けられるエレメント組立体とを有するスピンオンフィルタであって、
前記ケースが、上端部が開口し下端部が閉塞したケース本体と、このケース本体にその上端開口を覆って取り付けられるカバー部材とを有して構成され、前記ケース本体に前記フィルタエレメントを内蔵した状態で前記カバー部材を取り付けて前記エレメント組立体が構成され、
前記フィルタヘッドには円筒状に形成された突出連結部が設けられるとともにこの突出連結部の外周面に雄ネジが形成され、前記カバー部材には上下に貫通する貫通孔が形成されるとともにこの貫通孔に雌ネジが形成されており、前記雄ネジと前記雌ネジとがネジ結合して前記エレメント組立体が前記フィルタヘッドに着脱自在に取り付け可能となっており、
前記エレメント組立体が前記フィルタヘッドに取り付けられたときに、前記フィルタヘッドと前記カバー部材とが面接触して前記フィルタヘッドと前記カバー部材との間の空間を密閉するように構成され、
前記ネジ結合部および前記面接触部より外側における前記フィルタヘッドと前記カバー部材との間に挟持されるように設けられ、前記ネジ結合部および前記面接触部に外部から異物が入り込むことを防止するシール部材を備えることを特徴とするスピンオンフィルタ。
【請求項2】
前記シール部材は、弾性材料を用いて形成されるとともに、前記フィルタヘッドに向けて起立して形成されたリップ部を有し、前記リップ部が前記フィルタヘッドと当接して弾性変形した状態で前記フィルタヘッドと前記カバー部材との間に挟持されることを特徴とする請求項1に記載のスピンオンフィルタ。
【請求項3】
前記シール部材において、前記リップ部はその先端部が基端部よりも外側に位置するように外側に傾いて形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピンオンフィルタ。
【請求項4】
前記シール部材は、複数の前記リップ部を有して構成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のスピンオンフィルタ。
【請求項5】
前記シール部材は、前記カバー部材に固定されて前記エレメント組立体と一体に構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスピンオンフィルタ。
【請求項6】
上端部が開口し下端部が閉塞したケース本体と、このケース本体内に挿入保持されこのケース本体内を通って流れる流体の濾過を行うフィルタエレメントと、前記ケース本体内に前記フィルタエレメントを配設した状態で前記ケース本体の上端部に前記開口を覆って取り付けられたカバー部材とを有するエレメント組立体であって、
前記カバー部材には上下に貫通する貫通孔が形成されるとともにこの貫通孔に雌ネジが形成され、前記雌ネジをフィルタヘッドに形成した雄ネジとネジ結合させて前記エレメント組立体を前記フィルタヘッドに着脱自在に取り付け可能であり、このように前記フィルタヘッドに取り付けられたときに、前記カバー部材が前記フィルタヘッドと面接触して前記カバー部材と前記フィルタヘッドとの間の空間を密閉するように構成され、
前記雌ネジおよび前記フィルタヘッドと面接触する部分より外側における前記カバー部材上に設けられ、前記エレメント組立体が前記フィルタヘッドに取り付けられたときに、前記カバー部材と前記フィルタヘッドとの間に挟持されて、前記ネジ結合部および前記面接触部に外部から異物が入り込むことを防止するシール部材を備えることを特徴とするスピンオンフィルタ用エレメント組立体。
【請求項7】
前記シール部材は、弾性材料を用いて形成されるとともに、上方に起立して形成されたリップ部を有し、前記エレメント組立体が前記フィルタヘッドに取り付けられたときに、前記リップ部が前記フィルタヘッドと当接して弾性変形した状態で前記フィルタヘッドと前記カバー部材との間に挟持されることを特徴とする請求項6に記載のスピンオンフィルタ用エレメント組立体。
【請求項8】
前記シール部材において、前記リップ部はその先端部が基端部よりも外側に位置するように外側に傾いて形成されていることを特徴とする請求項7に記載のスピンオンフィルタ用エレメント組立体。
【請求項9】
前記シール部材は、複数の前記リップ部を有して構成されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のスピンオンフィルタ用エレメント組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−62658(P2011−62658A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216502(P2009−216502)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000252252)和興フィルタテクノロジー株式会社 (41)
【Fターム(参考)】