説明

スピーカユニット

【課題】リード線の断線不良を抑制できるスピーカユニットを提供する。
【解決手段】スピーカユニットは、振動板10と、振動板10に固定されたボイスコイル20と、ボイスコイル20に接続され、ボイスコイル20に通電するリード線21とを備える。振動板10は、ボイスコイル20が固定される環状の固定部と、固定部に対してボイスコイル20が固定されている面側に突起し、固定部に沿って延在する外側凸部16と、を含む。外側凸部16は、頂部16aを有する。外側凸部16には、頂部16aの一部が窪んだ窪み部18が形成されている。リード線21は、窪み部18の内部において外側凸部16を横切るように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカユニットに関し、特に、ボイスコイルが取付けられた振動板を備えるスピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカユニットに用いられるスピーカ用振動板に関する従来の技術は、たとえば、特開2003−264890号公報(特許文献1)に記載されている。特開2003−264890号公報(特許文献1)では、振動板と、振動板の裏面の円環状凹嵌部に設けたボイスコイルと、振動板の外周部に設けた外周保持リングからなるスピーカ用振動板であって、円環状凹嵌部の振動板厚みを外周部の振動板厚みより厚くした、ボイルコイルが剥がれにくいスピーカ用振動板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−264890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2003−264890号公報(特許文献1)に記載のスピーカ用振動板では、振動板には円環状凹嵌部が形成されており、円環状凹嵌部の外周側には振動板の裏面側に突起する凸形状が形成されている。ボイスコイルは円環状凹嵌部に設けられ、ボイスコイルに接続されたリード線は、上記凸形状を乗り越えるように配置され、外周保持リングを介して外部端子へ導出されている。
【0005】
リード線が凸形状を跨ぐように配置されることにより、リード線が屈曲するので、リード線には応力が作用する。リード線に応力が作用した状態でスピーカユニットが長時間駆動することにより、リード線に金属疲労が生じリード線が断線する断線不良が発生する問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、リード線の断線不良を抑制できる、スピーカユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスピーカユニットは、振動板と、振動板に固定されたボイスコイルと、ボイスコイルに接続され、ボイスコイルに通電するリード線とを備える。振動板は、ボイスコイルが固定される環状の固定部と、固定部に対してボイスコイルが固定されている面側に突起し、固定部に沿って延在する畝状凸部と、を含む。畝状凸部は、頂部を有する。畝状凸部には、頂部の一部が窪んだ窪み部が形成されている。リード線は、窪み部の内部において畝状凸部を横切るように配置されている。
【0008】
上記スピーカユニットにおいて好ましくは、畝状凸部は、固定部の内周側に形成された内側凸部と、固定部の外周側に形成された外側凸部とを有する。
【0009】
上記スピーカユニットにおいて好ましくは、窪み部は、外側凸部に形成されている。
上記スピーカユニットにおいて好ましくは、内側凸部と外側凸部とは、固定部から突起する突起高さが略等しいように形成されている。
【0010】
上記スピーカユニットにおいて好ましくは、畝状凸部は、固定部に固定されたボイスコイルに対向する壁面を有し、壁面は、固定部に対し切り立った形状に形成されている。
【0011】
上記スピーカユニットにおいて好ましくは、リード線は、振動板の固定部に近接する側のボイスコイルの端部に接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスピーカユニットによると、リード線の断線不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1のスピーカユニットの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す領域II付近を拡大して示す模式図である。
【図3】ボイスコイルが振動板に固定された状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す領域IV付近を拡大して示す模式図である。
【図5】図4中に示すV−V線に沿う振動板の断面を示す断面図である。
【図6】実施の形態2のスピーカユニットの構成を示す断面図である。
【図7】実施の形態3のスピーカユニットの構成を示す断面図である。
【図8】図7に示すマグネットの斜視図である。
【図9】実施の形態3の振動板の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1のスピーカユニット1の構成を示す断面図である。図1に示すように、スピーカユニット1は、フレーム2と、カバー3と、マグネット4と、プレート5と、ヨーク6と、振動板10と、ボイスコイル20とを主に備える。
【0016】
フレーム2は、平面形状環状に形成されており、その内周面において、ヨーク6を支持している。またフレーム2の上部には、カバー3が配置されている。カバー3は、上面に向けて台形状の断面形状を有するように形成されている。フレーム2とカバー3とは、振動板10を挟持している。
【0017】
振動板10は、上下方向(図1中に示す両矢印A方向)に振動可能なように、薄板によって形成されている。振動板10は、たとえば厚さ8〜50μmの可撓性膜である。振動板10は、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)またはPEI(ポリエーテルイミド)などに代表される、合成樹脂で形成されている。
【0018】
振動板10は、平面視における中央側の中央部11と、中央部11の外周部に形成され
ボイスコイル20が固定される環状の固定部12と、固定部12の外周側に形成された周辺部13と、周辺部13の外周側に形成された外周部14と、を含む。中央部11と周辺部13とは、図1に示す断面視において、円弧状に形成されている。固定部12の下面に筒状のボイスコイル20の上面が接着されることにより、ボイスコイル20は振動板10に固定されている。振動板10は、外周部14の下面とフレーム2の上面とが対向するように、フレーム2の上部に取付けられている。
【0019】
カバー3は、外周部14の上面とカバー3の外周部の下面とが対向するように、振動板10の上部に取付けられている。カバー3は、振動板10を覆うように形成されている。カバー3は、振動板10を介して、フレーム2に支持されている。フレーム2の上面に振動板10の外周部14が載置され、フレーム2の上面とカバー3の下面とによって振動板10を支持することにより、振動板10はスピーカユニット1の内部において振動可能に支持されている。
【0020】
ヨーク6は、ボイスコイル20の外周面と間隔をあけてボイスコイル20の外周側に配置された外周側部分と、ボイスコイル20およびマグネット4の下側に配置された下側部分とを有する。ヨーク6は、外周側部分の外周側でフレーム2の内周面に接触して固定されている。ヨーク6の下側部分は、ボイスコイル20の下面と間隔をあけて配置されており、かつヨーク6の下側部分の中央部にはマグネット4が配置されている。
【0021】
マグネット4は、ボイスコイル20の内周面と間隔をあけて、ボイスコイル20の内周側に配置されている。ボイスコイル20は、マグネット4の形成する磁場中に配置されている。プレート5は、マグネット4の上面に配置されている。フレーム2は、ヨーク6を介して、マグネット4およびプレート5を支持している。スピーカユニット1は、柱状のマグネット4を筒状のボイスコイル20が取り巻く、内磁型である。永久磁石であるマグネット4は、壺状のヨーク6の内部に配置されている。マグネット4、プレート5およびヨーク6により、磁気回路が形成されている。
【0022】
フレーム2には、フレーム2の厚み方向(図1中の上下方向)にフレーム2を貫通する、複数の貫通孔31が形成されている。貫通孔31は、貫通孔31の内部を通って空気がスピーカユニット1の内部と外部との間を流通できる、通気孔としての機能を有する。スピーカユニット1の駆動時に振動板10が上下方向に振動することに伴い、振動板10の周辺に空気流が発生する。このとき、通気孔である複数の貫通孔31が形成されていることにより、空気がスピーカユニット1の内部から外部へ流れ、またスピーカユニット1の外部から内部へ流れることができる。これにより、空気の流れが振動板10の振動を阻害してスピーカユニット1の性能が低下することを、抑制できる。
【0023】
フレーム2の下面には、スピーカユニット1に含まれる電気回路を他の回路や素子へ接続するための、端子33が固定されている。フレーム2の下面が壷状のヨーク6の下側部分よりも上側に配置されるように、フレーム2とヨーク6とは組み付けられている。そのため、フレーム2の下面から下方へ張り出す端子33が取付けられても、スピーカユニット1全体としての外形の寸法が増大するのを抑制し、スピーカユニット1の小型化を可能としている。
【0024】
フレーム2にはまた、スピーカユニット1の内部空間と外部空間とを連通する、連通孔32が形成されている。この連通孔32を貫通して、リード線21が配置されている。リード線21は、一端がボイスコイル20に接続され、他端が端子33に接続されている。端子33とボイスコイル20とは、リード線21によって電気的に接続されている。リード線21は、ボイスコイル20に接続され、ボイスコイル20に通電する。端子33およびリード線21を経由して、ボイスコイル20に電流が流される。
【0025】
図2は、図1に示す領域II付近を拡大して示す模式図である。図2を参照して、振動板10にボイスコイル20が固定された固定部12周辺の構造の詳細について説明する。図2に示す断面視において、固定部12は平坦に形成されている。ボイスコイル20は、図1に両矢印Aで示す上下方向に平行な軸を中心として巻かれた導線からなり、筒状形状を有する。ボイスコイル20に交流電流を流すことによって、上下方向を振動方向として、振動板10を振動させることができる。
【0026】
ボイスコイル20の端部のうち、振動板10の固定部12に近接する側の端部20aは、固定部12に接触する。固定部12が平坦に形成されているために、ボイスコイル20の端部20aと振動板10の固定部12との接触面積が増大している。そのため、振動板10に対しボイスコイル20が接着固定される接着強度が向上している。なお、固定部12は平坦な形状に限られるものではなく、たとえば接着剤を溜める凹形状の形成された固定部であってもよい。ボイスコイル20が筒状の形状に形成されているために、ボイスコイル20が固定される固定部12は、ボイスコイル20の形状に対応する、環状の形状に形成されている。
【0027】
図2に示すように、固定部12の内周側には、内側凸部15が形成されている。また、固定部12の外周側には、外側凸部16が形成されている。内側凸部15と外側凸部16とは、固定部12に対して、振動板10のボイスコイル20が固定されている面側に突起する。内側凸部15と外側凸部16とは、固定部12においてボイスコイル20が固定される側の、振動板10の表面に対して、突起している。
【0028】
内側凸部15は、環状の固定部12の内周側において、固定部12に沿って延在する畝状の形状を有する。外側凸部16は、環状の固定部12の外周側において、固定部12に沿って延在する畝状の形状を有する。内側凸部15と外側凸部16とは、畝状凸部に含まれる。振動板10は、畝状凸部を含む。畝状凸部は、内側凸部15と外側凸部16とを有する。
【0029】
内側凸部15は、頂部15aを有する。頂部15aは、振動板10の中央部11および固定部12に対し突起する形状を有する内側凸部15の、突起形状の突端、すなわち最も突起した先端部分を形成する表面である。内側凸部15はまた、振動板10の内周側の中央部11側に向く内壁部15bを有する。内側凸部15はまた、振動板10の外周側の固定部12側に向く、外壁部15cを有する。外壁部15cは、内側凸部15の、固定部12に固定されたボイスコイル20に対向する壁面を構成する。
【0030】
外側凸部16は、頂部16aを有する。頂部16aは、振動板10の固定部12および周辺部13に対し突起する形状を有する外側凸部16の、突起形状の突端、すなわち最も突起した先端部分を形成する表面である。外側凸部16はまた、振動板10の内周側の固定部12側に向く内壁部16bを有する。内壁部16bは、外側凸部16の、固定部12に固定されたボイスコイル20に対向する壁面を構成する。外側凸部16はまた、振動板10の外周側の周辺部13側に向く、外壁部16cを有する。
【0031】
固定部12の両側に、固定部12に対して、ボイスコイル20が固定されている側に突起する、一対の畝状凸部が形成されている。そのために、一対の畝状凸部、すなわち内側凸部15および外側凸部16と、固定部12とによって、溝部17が形成されている。ボイスコイル20は、内側凸部15、外側凸部16および固定部12によって規定された、環状の溝部17の内部に配置されている。この溝部17の内側に接着剤34が充填されることにより、ボイスコイル20は振動板10に接着固定される。
【0032】
接着剤34が溝部17の内部に塗布され、溝部17はその内側に接着剤34を溜め込む接着剤溜まりとして機能する。振動板10にボイスコイル20が貼付される貼付面としての固定部12の内側に、固定部12から突起した内側凸部15が形成され、固定部12の外側に固定部12から突起した外側凸部16が形成されることで溝部17が形成されている。接着剤溜まりとして機能する溝部17の内部に、接着剤34が溜められる構造とされている。
【0033】
図2に示すように、内側凸部15と外側凸部16とは、固定部12から突起する突起高さが略等しいように形成されている。つまり、図1中に両矢印Aで示す上下方向における、固定部12から内側凸部15の頂部15aまでの距離と、固定部12から外側凸部16の頂部16aまでの距離とは、略等しくなっている。突起高さの略等しい内側凸部15と外側凸部16とを形成することにより、溝部17内において、ボイスコイル20の内周側と外周側との両方に均等に接着剤34が充填される。
【0034】
図2に示すように、内側凸部15の外壁部15cと、外側凸部16の内壁部16bとは、平坦な形状の固定部12に対し、ほぼ垂直に切り立った形状に形成されている。外壁部15cと内壁部16bとは、固定部12が形成する平面に対し垂直に近い角度の鋭い傾斜を形成し、固定部12に対してそそり立つように形成されている。このように内側凸部15と外側凸部16とを形成することで、より溝部17内に接着剤34が溜まり易くなっている。
【0035】
溝部17内に接着剤34が溜められることにより、接着剤34を介在させて振動板10とボイスコイル20とが接着される接着面積が大きくなる。そのため、振動板10とボイスコイル20との接着強度を向上することができる。
【0036】
ボイスコイル20の振動板10に対する接着部の強度向上により、スピーカユニット1の駆動時に何かが共鳴したような雑音が出る、ボイスコイル20の接着不良に起因するビリツキ不良の発生を、低減することができる。また、接着強度の向上により、長時間駆動時の接着部の剥れを防止できるので、スピーカユニット1の信頼性を向上することができる。さらに、接着部の強度向上に伴って、スピーカユニット1の音圧特性を向上することができる。
【0037】
また、内側凸部15の外壁部15cと外側凸部16の内壁部16bとは溝部17の側壁面を形成する。これら溝部17の側壁部は、溝部17内にボイスコイル20を配置する際の、ボイスコイル20の位置合わせを行なう、位置決めガイドとして機能する。つまり、ボイスコイル20は、内側凸部15と外側凸部16との間の溝部17内に挿通されて、溝部17内に充填された接着剤34により振動板10に貼り付けられる。このようにボイスコイル20を接着固定する際のガイド部が設けられ、ガイド部にボイスコイル20を挿通することにより、ボイスコイル20の振動板10に対する高精度の位置決めを容易に行なうことができる。
【0038】
外壁部15cと内壁部16bとが、固定部12に対し略垂直の角度を形成し、互いに略平行に対向するような形状とされることにより、溝部17内へボイスコイル20を嵌め入れたときにボイスコイル20をより位置決めし易くなる。外壁部15cと内壁部16bとは、固定部12が形成する平面に対し垂直であってもよく、または、±2°以下の範囲で垂直から外れ、固定部12が形成する平面に垂直な平面に対してわずかに傾斜していてもよい。
【0039】
図3は、ボイスコイル20が振動板10に固定された状態を示す斜視図である。図3には、図1に示す振動板10とボイスコイル20とを上下反転させた状態の、振動板10にボイスコイル20が接着された一体の構造が図示されている。
【0040】
図3に示すように、本実施の形態の振動板10は、平面形状が概略レーストラック形状に形成されている。レーストラック形状とは、対向する二つの半円部と、これらの半円部を接続する二つの平行な直線部とから構成される形状である。振動板10に取付けられるボイスコイル20もまた、振動板10の形状に合わせられ、平面形状がレーストラック形状に形成されている。なお、振動板10およびボイスコイル20は、この形状に限られるものではなく、たとえば平面形状が円形状であってもよく、またはその他の任意の形状であってもよい。
【0041】
平面形状がレーストラック形状の振動板10の中央に、中央部11が形成され、中央部11に対し外周側に周辺部13が形成されている。周辺部13には、複数の溝13aが螺旋状または放射状に形成されている。周辺部13からさらに外周側に張り出すように、環状の平板により形成されたフランジ形状の外周部14が形成されている。この外周部14が、図1に示すフレーム2とカバー3とによって挟持されることで、振動板10はスピーカユニット1に取り付けられる。
【0042】
筒状のボイスコイル20は、中央部11と周辺部13の間において、振動板10に固定されている。ボイスコイル20は、図2を参照して説明した、内側凸部15と外側凸部16とによって規定される溝部17内に配置される。ボイスコイル20に駆動電流を供給するためのリード線21が、ボイスコイル20に接続されている。ボイスコイル20を形成するための巻線がボイスコイル20から引き出されて、リード線21を形成している。なお、ボイスコイル20の巻線の一端に、巻線と異なる導線が連結されて、リード線21を形成してもよい。
【0043】
ボイスコイル20が振動板10に固定される固定部12に沿って延在する畝状凸部は、外側凸部16を含む。外側凸部16は、ボイスコイル20が振動板10に固定されている面側に振動板10の一部が突起して、形成されている。外側凸部16には、外側凸部16が突起する突起高さが一部において小さくなった、窪み部18が形成されている。窪み部18は、外側凸部16に形成されている。外側凸部16には、その突起の一部が高さ方向に窪んだ窪み部18が形成されている。
【0044】
図4は、図3に示す領域IV付近を拡大して示す模式図である。図4に詳細に示すように、振動板10に固定されたボイスコイル20に対して外周側に設けられた外側凸部16は、畝形状の外側凸部16の天端部を形成する、頂部16aを有する。外側凸部16が固定部12に沿って延在する畝形状であるために、畝頂部を形成する頂部16aもまた、固定部12に沿って延在している。
【0045】
外側凸部16には、頂部16aの一部が窪んだ、窪み部18が形成されている。窪み部18は、外側凸部16の径方向の全体に亘って外側凸部16の頂部16aの一部が切り欠かれて、形成されている。ボイスコイル20に接続されたリード線21は、窪み部18の内部において外側凸部16を横切るように、配置されている。振動板10は、ボイスコイル20からのリード線21の引き出し口に対応する振動板10の一部のみに、外側凸部16が形成されないような形状を有する。
【0046】
この窪み部18は、振動板10をプレス加工により成形するときに、窪み部18に対応する形状を有する金型を予め準備することにより、追加の製造工程を必要とすることなく形成することができる。振動板10をプレス成形するときに同時に窪み部18が形成されるので、窪み部18を形成するための工程を別途設ける必要はなく、スピーカユニット1の製造コストの上昇を招来せずに容易に窪み部18を形成できる。
【0047】
図5は、図4中に示すV−V線に沿う振動板10の断面を示す断面図である。図5に示すように、外側凸部16の一部が切り欠かれて窪み部18が形成されているために、ボイスコイル20のコイルボビン部から引き出されたリード線21が屈曲することなく、振動板10の外周側へ延びるように配置されている。窪み部18を形成することにより、リード線21が外側凸部16を乗り越える必要がなく、外側凸部16を跨ぐようにリード線21を配置する必要がない。そのため、リード線21の屈曲を抑制でき、リード線21に応力が作用するのを抑制できる構成とされている。
【0048】
ボイスコイル20に電流が供給されることにより、スピーカユニット1が駆動する。つまり、ボイスコイル20を流れる電流と、マグネット4から発生する磁界とにより、フレミングの左手の法則に従って、ボイスコイル20が上下に振動する。これにより、ボイスコイル20が接着固定された振動板10が振動し、電気信号(電流)が音響(振動)に変換される。
【0049】
このときリード線21は、振動板10およびボイスコイル20とともに、上下方向に振動する。リード線21の屈曲を無くすことで、リード線21にかかる応力を削減できるので、スピーカユニット1が長時間駆動するときの金属疲労によるリード線21の断線不良が発生する可能性を、低減することができる。したがって、スピーカユニット1の信頼性を向上することができる。
【0050】
リード線21は、ボイスコイル20が振動板10の固定部12に接触する側のボイスコイル20の端部20aに接続されている。そのため、振動板10が振動するときに、スピーカユニット1の他の構成要素(たとえば図1に示すヨーク6またはフレーム2など)とリード線21との接触などによってリード線21が断線するのを防止でき、また振動板10の振幅をより大きくすることができる。
【0051】
加えて、リード線21がボイスコイル20の端部20aに接続されているために、リード線21が窪み部18を経由して外周側へ引き出されることによりリード線21の屈曲を抑制できる効果を、より顕著に得ることができる。つまり、リード線21が外側凸部16を跨ぐように配置されることでリード線21は屈曲するが、リード線21がボイスコイル20の端部20aに接続された場合、その屈曲の曲率がより大きくなる。これに対し、本実施の形態のように窪み部18の内部にリード線21を配置することにより、ボイスコイル20の端部20aに接続されたリード線21においても、リード線21が屈曲してリード線21に応力が作用することを抑制することができる。
【0052】
本実施の形態では、窪み部18において、外側凸部16は固定部12に対し突起していない。窪み部18が頂部16aから窪んだ窪み深さは、外側凸部16が固定部12に対して突起した突起高さと等しい。そのため、図5に示すように、固定部12の平坦な形状が外周側の周辺部13まで延び、ボイスコイル20の端部20aが接触する平面が周辺部13にまで至る。このように窪み部18を形成することにより、リード線21の屈曲を一層抑制することができる。つまり、外側凸部16の頂部16aの突起高さを小さくすることでリード線21の屈曲を抑制できるので、頂部16aの突起高さを最小にすることで、リード線21の屈曲を抑制できる効果を一層顕著に得ることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、一対の畝状凸部のうち、外周側の外側凸部16にのみ窪み部18が形成されている。リード線21は、ボイスコイル20と外部の端子33とを電気的に接続するための導線であるので、ボイスコイル20から外周側へ引き出されるように、ボイスコイル20の外周側にリード線21を配置する方が有利である。つまり、外側凸部16に形成された窪み部18を経由するようにリード線21を配置することで、リード線21の配置の自由度を向上させることができ、また、リード線21とフレーム2またはヨーク6などとの接触をより効果的に抑制することができる。
【0054】
窪み部18は、環状に形成された外側凸部16の、周方向に延びるように形成されている。つまり、窪み部18は外側凸部16の一部の頂部16aが窪んで形成されているが、図3および図4に示すように、窪み部18は外側凸部16の周方向における一定の範囲に亘って形成されている。たとえば、平面形状がレーストラック形状の外側凸部16の中心を中心点とする、中心角30°の扇形に対応する範囲において、外側凸部16の周方向に延びるように窪み部18が形成されていてもよい。
【0055】
このように窪み部18を形成することにより、外側凸部16の周方向においてリード線21が配置可能な範囲が増大するために、リード線21を容易に窪み部18の内部に配置することができ、ボイスコイル20の組み付け性を向上させることができる。また、外側凸部16の周方向における窪み部18の両端を規定する頂部16a間の間隔が大きくなる。そのため、頂部16aを有する外側凸部16と窪み部18の内部を通るリード線21との接触を容易に回避できるので、リード線21が外側凸部16により屈曲されることを、さらに抑制することができる。
【0056】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2のスピーカユニット1の構成を示す断面図である。実施の形態1では、本発明の振動板10とボイスコイル20との接続構造が内磁型のスピーカユニットに適用される例について説明したが、本発明は、ボイスコイル20を取り巻くようにリング状のマグネット4が配置される、外磁型のスピーカユニット1にも適用可能である。
【0057】
図6に示すように、マグネット4は、ボイスコイル20の外周側と間隔をあけて、ボイスコイル20の外周側に配置されている。ヨーク6は、ボイスコイル20の内周面と間隔をあけてボイスコイル20の内周側に配置された内周側部分と、ボイスコイル20およびマグネット4の下側に配置された下側部分とを有する。ヨーク6の下側部分には、リング状のマグネット4が載置されている。またマグネット4の上面には、プレート5が配置されている。
【0058】
このような構成を有する実施の形態2のスピーカユニット1においても、振動板10の外側凸部16に頂部の一部が窪んだ窪み部を形成し、ボイスコイル20に接続されたリード線21が窪み部の内側を通って外周側へ延びるように配置されている。したがって、リード線21の屈曲を抑制でき、リード線21に応力が作用するのを抑制できるので、スピーカユニット1の駆動中のリード線21の断線を抑制でき、スピーカユニット1の信頼性を向上することができる。
【0059】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3のスピーカユニット1の構成を示す断面図である。実施の形態1および2では、スピーカユニットに搭載されるボイスコイルが、ボイスコイルの中心軸方向(厚み方向と称する)において、ボイスコイルの中心軸方向に交差する方向(幅方向と称する)よりも多い積層数を有する例について説明した。本発明の振動板10とボイスコイル20との接続構造は、厚み方向における積層数よりも幅方向における積層数の方が多い形状のボイスコイル20を搭載したスピーカユニット1にも、適用可能である。
【0060】
図7に示すように、ボイスコイル20は、厚み方向よりも幅方向の積層数が多い形状に形成されている。ボイスコイル20は、マグネット4の上面の上部に、間隔をあけて配置されている。ボイスコイル20は、マグネット4によって生じる磁束がボイスコイル20を横切るように配置されている。
【0061】
マグネット4は、厚み方向に磁性化されている。マグネット4は、一対の直方体状のアウターマグネット4aと、直方体状のインナーマグネット4bとを含んでいる。マグネット4は、アウターマグネット4aの外周面がフレーム2の内周面と接触して固定されている。ヨーク6は、マグネット4の下側に固定されている。ヨーク6は、ヨーク6の側面がフレーム2の内周面と接触することにより固定されている。フレーム2は、内周面において、マグネット4およびヨーク6を支持している。
【0062】
図8は、図7に示すマグネット4の斜視図である。図8を参照して、一対のアウターマグネット4aとインナーマグネット4bとは、逆向きに磁性化されている。つまり、一対のアウターマグネット4aの下面がN極となるように磁性化され、インナーマグネット4bの上面がN極となるように磁性化されている。なお、一対のアウターマグネット4aとインナーマグネット4bとは、逆向きに磁性化されていればよい。したがって、一対のアウターマグネット4aの上面がN極となるように磁性化され、インナーマグネット4bの下面がN極となるように磁性化されていてもよい。
【0063】
図9は、実施の形態3の振動板10の形状を示す断面図である。実施の形態3のスピーカユニット1においても、振動板10の外側凸部16に頂部の一部が窪んだ窪み部を形成し、ボイスコイル20の端部20aに接続されたリード線21が窪み部の内側を通って外周側へ延びるように配置されている。したがって、リード線21の屈曲を抑制でき、リード線21に応力が作用するのを抑制できるので、スピーカユニット1の駆動中のリード線21の断線を抑制でき、スピーカユニット1の信頼性を向上することができる。
【0064】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のスピーカユニットは、携帯電話機、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータおよび携帯ゲーム機などの携帯型情報端末に搭載される、小型のマイクロスピーカに、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 スピーカユニット、2 フレーム、3 カバー、4 マグネット、5 プレート、6 ヨーク、10 振動板、11 中央部、12 固定部、13 周辺部、14 外周部、15 内側凸部、15a,16a 頂部、15b,16b 内壁部、15c,16c 外壁部、16 外側凸部、17 溝部、18 窪み部、20 ボイスコイル、20a 端部、21 リード線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
前記振動板に固定されたボイスコイルと、
前記ボイスコイルに接続され、前記ボイスコイルに通電するリード線とを備え、
前記振動板は、
前記ボイスコイルが固定される環状の固定部と、
前記固定部に対して前記ボイスコイルが固定されている面側に突起し、前記固定部に沿って延在する畝状凸部と、を含み、
前記畝状凸部は、頂部を有し、
前記畝状凸部には、前記頂部の一部が窪んだ窪み部が形成されており、
前記リード線は、前記窪み部の内部において前記畝状凸部を横切るように配置されている、スピーカユニット。
【請求項2】
前記畝状凸部は、前記固定部の内周側に形成された内側凸部と、前記固定部の外周側に形成された外側凸部とを有する、請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項3】
前記窪み部は、前記外側凸部に形成されている、請求項2に記載のスピーカユニット。
【請求項4】
前記内側凸部と前記外側凸部とは、前記固定部から突起する突起高さが略等しいように形成されている、請求項2または請求項3に記載のスピーカユニット。
【請求項5】
前記畝状凸部は、前記固定部に固定されたボイスコイルに対向する壁面を有し、
前記壁面は、前記固定部に対し切り立った形状に形成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載のスピーカユニット。
【請求項6】
前記リード線は、前記振動板の前記固定部に近接する側の前記ボイスコイルの端部に接続されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載のスピーカユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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