説明

スピーカ装置及び電子機器

【課題】必要に応じて可聴音の品質を高くすることができ、かつ消費電力が高くなることを抑制する。
【解決手段】周波数設定部120は、パラメトリックスピーカ140から出力される音声に要求される音声品質を示す情報を取得する。そして周波数設定部120は、取得した音声品質を示す情報に基づいて、変調信号の周波数を、複数のパラメトリックスピーカ140相互間で異ならせるか否かを判断する。そして周波数設定部120は、判断結果に基づいて複数のパラメトリックスピーカ140それぞれにおける変調信号の周波数を設定する。変調部130は、周波数設定部120が設定した周波数の変調信号を生成する。この変調信号は、各パラメトリックスピーカ140に入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
他人に音声が聴かれないようにする技術として、超音波を搬送波として利用したパラメトリックスピーカが開発されている。超音波は指向性が高いため、パラメトリックスピーカを用いると、ユーザ近傍など、特定の方向にのみ音場を形成することができる。
【0003】
例えば特許文献1には、複数の超音波振動子を備える超音波振動子アレイをパラメトリックスピーカとして使用すること、及び、超音波振動子を個別に制御することにより音の指向性を制御することが開示されている。また特許文献1には、可聴音を再生すべき領域までの距離に応じて搬送波の周波数を変更することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−113190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パラメトリックスピーカは、搬送波の周波数が高くなるにつれて、再生された可聴音のうち最も音圧が高くなる周波数も高くなる。このため、搬送波の周波数として複数の周波数を用いれば、可聴音の品質を高くすることができる。一方、複数の周波数の搬送波を用いる場合、搬送波の平均周波数が高くなるため、スピーカの消費電力が高くなってしまう、という課題が出てくる。
【0006】
本発明の目的は、必要に応じて可聴音の品質を高くすることができ、かつ消費電力が高くなることを抑制できるスピーカ装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、音声信号を超音波帯域に変調した変調信号が入力される複数のパラメトリックスピーカと、
前記音声信号に要求される音声品質に基づいて、前記変調信号の周波数を、前記複数のパラメトリックスピーカ相互間で異ならせるか否かを判断し、判断結果に基づいて前記複数のパラメトリックスピーカそれぞれにおける前記変調信号の周波数を設定する周波数設定手段と、
前記設定された周波数の前記変調信号を生成する変調手段と、
を備え、
前記周波数設定手段は、
前記音声品質が高い場合には、前記変調信号の周波数を前記複数のパラメトリックスピーカ相互間で異ならせ、
前記音声品質が低い場合には前記変調信号の周波数を前記複数のパラメトリックスピーカ相互間で一致させ、かつ前記音声品質が高い場合における前記周波数のうち最も高い周波数よりも低くするスピーカ装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、上記したスピーカ装置を有する電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、必要に応じて可聴音の品質を高くすることができ、かつ消費電力が高くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るスピーカ装置の機能構成を示す図である。
【図2】復調される音声の周波数の音圧が、変調信号の周波数によってどのように変化するかを示す図である。
【図3】実施形態の効果を説明するための図である。
【図4】第2の実施形態に係るスピーカ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】人数検出部の構成の第1例を示す図である。
【図6】人数検出部の構成の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るスピーカ装置の機能構成を示す図である。このスピーカ装置は、周波数設定部120、変調部130、及び複数のパラメトリックスピーカ140を有している。パラメトリックスピーカ140は、可聴域の音声信号を超音波帯域に変調した変調信号が入力される。周波数設定部120は、パラメトリックスピーカ140から出力される音声に要求される音声品質を示す情報を取得する。そして周波数設定部120は、取得した音声品質を示す情報に基づいて、変調信号の周波数を、複数のパラメトリックスピーカ140相互間で異ならせるか否かを判断する。そして周波数設定部120は、判断結果に基づいて複数のパラメトリックスピーカ140それぞれにおける変調信号の周波数を設定する。変調部130は、周波数設定部120が設定した周波数の変調信号を生成する。この変調信号は、各パラメトリックスピーカ140に入力される。
【0013】
図2は、復調される音声の周波数の音圧が、変調信号の周波数によってどのように変化するかを示している。本図に示すように、変調信号の周波数が高くなるにつれて、復調される音声の音圧が最大になる周波数が高くなる。
【0014】
このため、図3に示すように、複数のパラメトリックスピーカ140における変調信号の周波数を互いに異ならせると、復調される音声の音圧の周波数依存性が低くなる。従って、復調された音声の品質が高くなる。
【0015】
このスピーカ装置は、電子機器、例えば携帯通信端末などの携帯型の電子装置に内蔵されている。このため、パラメトリックスピーカ140には、消費電力が少ないことも要求される。ここで変調信号の周波数が高くなると、パラメトリックスピーカ140のインピーダンスが低下するため、パラメトリックスピーカ140の消費電力が大きくなってしまう。
【0016】
これに対して本実施形態において、周波数設定部120は、要求される音声品質が高い場合には変調信号の周波数を複数のパラメトリックスピーカ140相互間で異ならせる。また周波数設定部120は、要求される音声品質が低い場合には、変調信号の周波数を複数のパラメトリックスピーカ相互間で一致させる。そして周波数設定部120は、このときの周波数を、音声品質が高い場合における周波数のうち最も高い周波数よりも低くする。従って、パラメトリックスピーカ140が消費する電力量を少なくすることができる。なお、周波数設定部120は、要求される音声品質が低い場合の変調信号の周波数を、音声品質が高い場合における平均周波数よりも低くしてもよい。
【0017】
パラメトリックスピーカ140は、音波を出力する振動手段、例えば圧電振動子などの超音波振動子を有している。複数のパラメトリックスピーカ140は、例えばアレイ状に配置されている。周波数設定部120は、この超音波振動子の基本共振周波数を予め記憶しており、この基本共振周波数の整数倍の周波数を選択する。例えば周波数設定部120は、要求される音声品質が低い場合には、基本共振周波数を変調信号の周波数として設定する。また周波数設定部120は、要求される音声品質が高い場合には、基本共振周波数、及び基本共振周波数のN倍(ただしN≧2かつ整数)の周波数を、複数のパラメトリックスピーカ140それぞれの変調信号の周波数として設定する。なお周波数設定部120は、Nを小さい順に設定していく。
【0018】
変調部130は、パラメトリックスピーカ140が再生すべき音声信号を、パラメトリックスピーカ用の変調信号に変調する。このとき、変調信号の搬送波の周波数を、周波数設定部120が設定した周波数に設定する。
【0019】
なお、周波数設定部120は、音声信号に要求される音声品質を、直接ユーザから入力されても良いし、再生すべき音声信号の属性情報に基づいて音声品質を判断しても良い。ここでの属性情報は、例えば音声信号が属するジャンル(音楽、映画の音声、又は会議等)である。
【0020】
以上、本実施形態によれば、パラメトリックスピーカ140から出力される音声の品質を必要に応じて高くすることができる。またパラメトリックスピーカ140の消費電力が増大することを抑制できる。
【0021】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係るスピーカ装置の構成を示すブロック図である。このスピーカ装置は、人数検出部110を備えている点を除いて、第1の実施形態に係るスピーカ装置と同様の構成である。
【0022】
パラメトリックスピーカ140が出力する音声の指向性は、電子機器の周囲に位置する人の数によって変更されることが望ましい。例えば、電子機器の周囲にその電子機器のユーザしかいない場合、指向性はそれほど高くしなくてもよい。しかし、電子機器の周囲にユーザ以外の人がいる場合、指向性を高くして、ユーザ以外の人に音声が聞こえないようにする必要がある。
【0023】
本実施形態では、人数検出部110は、スピーカ装置を有している電子機器の周囲に位置する人の数を検出する。周波数設定部120は、人数検出部110が検出した人数に基づいて、要求される音声品質が低い場合における変調信号の周波数を設定する。具体的には、周波数設定部120は、人数検出部110が検出した人数が複数の場合は、検出した人数が一人の場合と比較して周波数を高く設定する。これは、上記したように、パラメトリックスピーカ140が出力する音声の指向性は、変調信号の周波数が高くなるほど高くなるためである。パラメトリックスピーカ140が出力する音声の指向性は、変調信号の周波数が高いほど高くなる。従って、本実施形態によれば、上記したニーズを満たすことができる。
【0024】
図5は、人数検出部110の構成の第1例を示す図である。本例において、人数検出部110は、撮像部112及び画像処理部114を有している。撮像部112は、例えば電子機器に取り付けられたカメラであり、電子機器の周囲を撮像して画像データを生成する。画像処理部114は、撮像部112が生成した画像データを処理することにより、電子機器の周囲に位置する人の人数を検出する。
【0025】
図6は、人数検出部110の構成の第2例を示す図である。本例において、人数検出部110は、音声取得部116及び音声処理部118を有している。音声取得部116は、例えば電子機器に取り付けられたマイクであり、電子機器の周囲の音声を音声データに変換する。音声処理部118は、音声取得部116が生成した音声データを処理し、人と判断される音源の数を認識することにより、電子機器の周囲に位置する人の人数を検出する。なお、パラメトリックスピーカ140を用いているため、可聴音が復調される領域を、マイクから離すことができる。この場合、音響エコーが生じにくくなるため、音響エコーキャンセラーを必要としない。
【0026】
なお、人数検出部110は、互いに離間した2つのマイクを有するのが好ましい。このようにすると、人数検出部110は、BSS(Blind Source separation)技術を使用して音源を特定し、この音源を、音声を出力すべき人であると認識することもできる。これにより、スピーカ装置を内蔵する電子機器のユーザの位置を、ヘッドセットなどの機材を使用しなくても、リアルタイムで検出することができる。
【0027】
また、人数検出部110は、図5に示した方法と図6に示した方法を併用しても良い。
【0028】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、周波数設定部120は、人数検出部110が検出した人数に基づいて、変調信号の周波数を設定する。このため、要求される音声品質が低い場合、電子機器の周囲にその電子機器のユーザしかいない場合、指向性を低くし、かつ、電子機器の周囲にユーザ以外の人がいる場合、指向性を高くすることができる。
【0029】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0030】
110 人数検出部
112 撮像部
114 画像処理部
116 音声取得部
118 音声処理部
120 周波数設定部
130 変調部
140 パラメトリックスピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号を超音波帯域に変調した変調信号が入力される複数のパラメトリックスピーカと、
前記音声信号に要求される音声品質に基づいて、前記変調信号の周波数を、前記複数のパラメトリックスピーカ相互間で異ならせるか否かを判断し、判断結果に基づいて前記複数のパラメトリックスピーカそれぞれにおける前記変調信号の周波数を設定する周波数設定手段と、
前記設定された周波数の前記変調信号を生成する変調手段と、
を備え、
前記周波数設定手段は、
前記音声品質が高い場合には、前記変調信号の周波数を前記複数のパラメトリックスピーカ相互間で異ならせ、
前記音声品質が低い場合には前記変調信号の周波数を前記複数のパラメトリックスピーカ相互間で一致させ、かつ前記音声品質が高い場合における前記周波数のうち最も高い周波数よりも低くするスピーカ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスピーカ装置において、
前記パラメトリックスピーカは、音波を出力する振動手段を有しており、
前記周波数設定手段は、前記周波数の少なくとも一つとして、前記振動手段の共振周波数の整数倍の周波数を選択し、かつ前記音声品質が低い場合には前記変調信号の周波数として前記振動手段の基本共振周波数を設定するスピーカ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスピーカ装置において、
前記パラメトリックスピーカは、音波を出力する振動手段を有しており、
さらに、周囲に位置する人の人数を検出する人数検出手段を備え、
前記周波数設定手段は、前記周波数として、前記振動手段の共振周波数の整数倍の周波数を選択し、かつ前記音声品質が低い場合には、前記人数検出手段が検出した人数に基づいて、前記変調信号の周波数を設定するスピーカ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスピーカ装置において、
前記周波数設定手段は、前記人数が複数の場合は、前記人数が一人の場合と比較して前記周波数を高く設定するスピーカ装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のスピーカ装置において、前記人数検出手段は、撮像手段、及び前記撮像手段が生成した画像を解析して前記人数を検出する画像処理手段を有するスピーカ装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載のスピーカ装置において、
前記人数検出手段は、音声検出手段、及び前記音声検出手段が生成した音声データを解析して前記人数を検出する音声処理手段を有するスピーカ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のスピーカ装置において、
前記周波数設定手段は、前記音声信号の属性に基づいて、前記音声品質を判断するスピーカ装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のスピーカ装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−217017(P2012−217017A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80991(P2011−80991)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】