説明

スピーカ

【課題】 高域特性を大幅に改善したスピーカを提供する。
【解決手段】 表裏一対のスキン7,8の間にコア材9を介装してサンドイッチ構造の振動板6を構成し、該振動板6を駆動コーン10を介してボイスコイルボビン13に連結してなるスピーカにおいて、振動板6のセンターホール11に駆動コーン10を挿通するとともに、該駆動コーン10の一端のフランジ部10aを振動板6の表面に接着固定し、駆動コーン10の他端をボイスコイルボビン13に接着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチ構造の振動板を駆動コーンを介してボイスコイルボビンに連結してなるスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
図5はこの種のスピーカの概略断面を示している。
支持ヨークaには、マグネットbと磁性リングcがセンターポールdを取り囲むように固設してある。振動板eは、表裏一対のスキンf,gの間にコア材hを介装してサンドイッチ構造に構成するとともに、その周縁部をフレームiに接着固定してある。振動板eの裏側には、駆動コーンjの一端がセンターホールkを取り囲むように接着固定してある。駆動コーンjの他端にボイスコイルボビンmを接着固定してある。
【0003】
このボビンmに巻回したボイスコイルnは、センターポールdと磁性リングcとの間の環状磁気空隙に臨ませてある。なお、フレームiとボイスコイルボビンmの間にはダンパoを架設してある。また、振動板eの表面にダストキャップpを接着固定してセンターホールkを閉塞してある。この類似構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平5−30591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このスピーカにおいては、入力端子に印加された電気信号がボイスコイルnに流れ、マグネットbの磁界との相互作用(フレミングの左手の法則)による電磁力がボイスコイルnに生じ、ボイスコイルボビンmが駆動コーンjを介して振動板eを駆動させることで、電気信号の音響信号への変換を行なっている。図9はこの時の音圧周波数特性を示している。
【0005】
しかし、ボイスコイルnの振動が振動板eの表側スキンfに伝わる過程を考察してみると、振動伝達経路に接着箇所が3つあり(駆動コーンjの両端、振動板eの表面)、ここを通過する度に高域成分が減衰し、高域特性の劣化が問題となっている。つまり、折角、振動板eを平面状にして従来のコーン型振動板の欠点を克服しても、上述のような問題が新たに発生しているのが実情である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、高域特性を改善したスピーカを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の本発明は、表裏一対のスキンの間にコア材を介装してサンドイッチ構造の振動板を構成し、該振動板を駆動コーンを介してボイスコイルボビンに連結してなるスピーカにおいて、上記振動板のセンターホールに上記駆動コーンを挿通するとともに、該駆動コーンのフランジ部を上記振動板の表面に接着固定したことを特徴とする。
【0008】
ここで、上記振動板のセンターホールを閉塞するダストキャップを設け、該ダストキャップの周縁部を上記駆動コーンのフランジ部に重ね合わせて上記振動板に接合するのが好ましい。
【0009】
上記課題を解決するための第2の発明は、表裏一対のスキンの間にコア材を介装してサンドイッチ構造の振動板を構成し、該振動板を駆動コーンを介してボイスコイルボビンに連結してなるスピーカにおいて、上記振動板は、その表側のスキンがセンターホールの周縁から裏側へ延出して上記駆動コーンを構成していることを特徴とする。
【0010】
ここで、上記表側のスキンが駆動コーンの先端から裏側へ延出して上記ボイスコイルボビンを構成しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイスコイルから振動板の表面に至る振動伝達経路における接着箇所が少なくなるので、接着箇所通過による高域成分の減衰が小さくなり、周波数特性の向上に役立つという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明のスピーカ(口径10cm)の断面図、図2は図1の点線枠A内を拡大して示している。
【0013】
〔第1の実施形態〕
図1において、1は支持ヨークで、その平板部1aにはセンターポール2を取り囲むようにしてマグネット3と磁性リング4を固設してある。磁性リング4にはフレーム5を固設してある。6は振動板で、表裏一対のスキン7,8の間にコア材9を介装してサンドイッチ構造に構成してある。この振動板6の周縁部はフレーム5に接着固定してある。
【0014】
10は駆動コーンで、その大径の開口を表面側に向けて振動板6のセンターホール11に挿通してある(図2参照)。この駆動コーン10は大径側の開口縁にフランジ部10aを備え、これにダストキャップ12の周縁部を重ね合わせて振動板6の表面側スキン7に接着固定してある。
【0015】
一方、駆動コーン10の小径側の開口部にはボイスコイルボビン13を接着固定してある。このボビン13に巻回したボイスコイル13は、センターポール2と磁性リング4との間の環状磁気空隙に臨ませてある。
15はフレーム5とボイスコイルボビン12の間に架設したダンパである。
【0016】
このスピーカにおいては、入力端子に印加された電気信号がボイスコイル13に流れ、マグネット3の磁界との相互作用(フレミングの左手の法則)による電磁力がボイスコイル13に生じ、ボイスコイルボビン12が駆動コーン10を介して振動板6を駆動させることで、電気信号の音響信号への変換を行なっている。
【0017】
つまり、ボイスコイル13の振動が駆動コーン10に伝わり、さらに、振動板6の表面側スキン7に伝わって音響信号を発生するわけであるが、振動伝達経路の途中に接着部分があると、その部分で高域成分の伝達損失が発生してしまう。従来の構造では、この損失が発生する箇所が3つ存在したが、本実施形態の構造によれば、損失発生箇所を2つにまで減少させている。このため、図6に示すような高域特性の改善が実現できる。
【0018】
〔第2の実施形態〕
本実施形態では、図3に示すように表側のスキン7を振動板6のセンターホール11の周縁から裏側へ延出させて駆動コーン20を構成し、この駆動コーン20の先端をボイスコイルボビン13に接着固定してある。つまり、駆動コーン20を振動板6と一体成形してある。駆動コーン20の内周面にはダストキャップ21を接着固定してある。その他の構成部材は第1の実施形態と同様に構成してあるので、同一符号を付し説明を省略する。
【0019】
本実施形態の構造によれば、振動伝達経路における接着箇所が1つだけになるので、図7に示すような高域特性の更なる改善が実現できる。
【0020】
〔第3の実施形態〕
本実施形態では、図4に示すように表側のスキン7を駆動コーン20の先端から裏側へ延出させてボイスコイルボビン30を構成してある。つまり、駆動コーン20とボイスコイルボビン30を振動板6と一体成形してある。その他の構成部材は第2の実施形態と同様に構成してあるので、同一符号を付し説明を省略する。
【0021】
本実施形態の構造によれば、振動伝達経路における接着箇所がなくなるので、図8に示すような高域特性の更なる改善が実現できる。
【0022】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の点線枠A内の拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す断面図である。
【図5】従来例を示す断面図である。
【図6】第1の実施形態の周波数特性を示す図である。
【図7】第2の実施形態の周波数特性を示す図である。
【図8】第3の実施形態の周波数特性を示す図である。
【図9】従来例の周波数特性を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 支持ヨーク
2 センターポール
3 マグネット
4 磁性リング
5 フレーム
6 振動板
7 表側スキン
8 裏側スキン
9 コア材
10 駆動コーン
10a フランジ部
11 センターホール
12 ダストキャップ
13 ボイスコイルボビン
14 ボイスコイル
15 ダンパ
20駆動コーン
30 ボイスコイルボビン




【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏一対のスキンの間にコア材を介装してサンドイッチ構造の振動板を構成し、該振動板を駆動コーンを介してボイスコイルボビンに連結してなるスピーカにおいて、上記振動板のセンターホールに上記駆動コーンを挿通するとともに、該駆動コーンのフランジ部を上記振動板の表面に接着固定したことを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
上記振動板のセンターホールを閉塞するダストキャップを設け、該ダストキャップの周縁部を上記駆動コーンのフランジ部に重ね合わせて上記振動板に接合したことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
表裏一対のスキンの間にコア材を介装してサンドイッチ構造の振動板を構成し、該振動板を駆動コーンを介してボイスコイルボビンに連結してなるスピーカにおいて、上記振動板は、その表側のスキンがセンターホールの周縁から裏側へ延出して上記駆動コーンを構成していることを特徴とするスピーカ。
【請求項4】
上記表側のスキンが駆動コーンの先端から裏側へ延出して上記ボイスコイルボビンを構成していることを特徴とする請求項3に記載のスピーカ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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