説明

スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)受容体モジュレーターを含む組成物

本発明は、ある剤形としての使用に適当な、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)受容体モジュレーターを含む安定な組成物に関する。該S1P受容体モジュレーターは、典型的には、2−置換された2−アミノ−プロパン−1,3−ジオールまたは2−アミノ−プロパノール誘導体といったようなスフィンゴシン類似体、例えば、式Yの基を含む化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)受容体モジュレーターを含む組成物に関する。
【0002】
特に、本発明は、ある剤形としての使用に適当な、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)受容体モジュレーターを含む安定な組成物に関する。
【発明の概要】
【0003】
S1P受容体モジュレーターは、典型的には、2−置換された2−アミノ−プロパン−1,3−ジオールまたは2−アミノ−プロパノール誘導体といったようなスフィンゴシン類似体、例えば、式Yの基を含む化合物である。
【0004】
S1P受容体モジュレーター
スフィンゴシン−1−リン酸(以降、“S1P”)は、天然の血清脂質である。現在、既知のS1P受容体は8つ、すなわちS1P1〜S1P8まである。S1P受容体モジュレーターは、典型的には、2−置換された2−アミノ−プロパン−1,3−ジオールまたは2−アミノ−プロパノール誘導体といったようなスフィンゴシン類似体、例えば、式Y:
【化1】

[式中、
Zは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、フェニル、OHで置換されたフェニル、ハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびOHで置換されたフェニルよりなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されたC1−6アルキル、またはCH−R4Z{ここで、R4Zは、OH、アシルオキシまたは式(a):
【化2】

(式中、
は、直接結合またはO、好ましくはOであり;
5ZおよびR6Zは各々独立して、H、または1、2もしくは3個のハロゲン原子で所望により置換されていてよいC1−4アルキルである。)
の残基である。}であり;
1Zは、OH、アシルオキシまたは式(a)の残基であり;そして
2ZおよびR3Zは各々独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。]
の基を含む化合物である。
【0005】
結果として生ずる分子(ここで、ZおよびR1Zの少なくとも1個は、式(a)の残基であるか、または式(a)の残基を含む。)が、多くのスフィンゴシン−1−リン酸受容体の1つでアゴニストとしてシグナル伝達する限りにおいて、式Yの基は、親水性または親油性であって、1個以上の脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式残基を含んでいてよい部分に末端基として結合した官能基である。
【0006】
S1P受容体モジュレーターは、1個以上のスフィンゴシン−1−リン酸受容体、例えば、S1P1〜S1P8でアゴニストとしてシグナル伝達する化合物である。S1P受容体に結合するアゴニストは、例えば、細胞内ヘテロ三量体Gタンパク質のGα−GTPおよびGβγ−GTPへの解離、そして/またはアゴニストが占有する受容体のリン酸化の増大および下流シグナル伝達経路/キナーゼの活性化を結果的に生じ得る。
【0007】
式Yの基を含む、適当なS1P受容体モジュレーターの例は、例えば、EP627406A1に開示されているような化合物、例えば、式I:
【化3】

[式中、
は、直鎖もしくは分枝鎖(C12−22
{−これは、該鎖内に、二重結合、三重結合、O、S、NR(ここで、Rは、H、C1−4アルキル、アリール−C1−4アルキル、アシルまたは(C1−4アルコキシ)カルボニルである。)、およびカルボニルから選択される結合もしくはヘテロ原子を有していてよく、そして/または
−これは、C1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキル−オキシ、アシル、C1−4アルキルアミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)−カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシもしくはカルボキシを置換基として有していてよい}であるか;または
は、
−アルキルが直鎖もしくは分枝鎖の(C6−20)炭素鎖であるフェニルアルキル;または
−アルキルが直鎖もしくは分枝鎖の(C1−30)炭素鎖であるフェニルアルキル(ここで、該フェニルアルキルは、
−ハロゲンで所望により置換されていてよい直鎖もしくは分枝鎖の(C6−20)炭素鎖、
−ハロゲンで所望により置換されていてよい直鎖もしくは分枝鎖の(C6−20)アルコキシ鎖、
−直鎖もしくは分枝鎖の(C6−20)アルケニルオキシ、
−フェニル−C1−14アルコキシ、ハロフェニル−C1−4アルコキシ、フェニル−C1−14アルコキシ−C1−14アルキル、フェノキシ−C1−4アルコキシもしくはフェノキシ−C1−4アルキル、
−C6−20アルキルで置換されたシクロアルキルアルキル、
−C6−20アルキルで置換されたヘテロアリールアルキル、
−複素環C6−20アルキル、または
−C2−20アルキルで置換された複素環アルキルである。)であり;
ここで、該アルキル部分は、
−該炭素鎖内に、二重結合、三重結合、O、S、スルフィニル、スルホニル、またはNR(ここで、Rは、先に定義した通りである。)から選択される結合またはヘテロ原子;および
−置換基として、C1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキルオキシ、アシル、C1−4アルキル−アミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシ;
を有していてよく;そして
、R、RおよびRは各々独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0008】
EP1002792A1に開示されているような化合物、例えば、式II:
【化4】

[式中、
mは、1〜9であり;そして
R'、R'、R'およびR'は各々独立して、H、C1−6アルキルまたはアシルである。]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0009】
EP0778263A1に開示されているような化合物、例えば、式III:
【化5】

[式中、
Wは、H;C1−6アルキル;C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニル;非置換もしくはOHで置換されたフェニル;R''O(CH);またはハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびOHで置換されたフェニルよりなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されたC1−6アルキルであり;
Xは、H、または炭素原子数pを有する非置換もしくは置換された直鎖アルキル、または炭素原子数(p−1)を有する非置換もしくは置換された直鎖アルコキシ、例えば、C1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、オキソ、ハロC1−6アルキル、ハロゲン、非置換フェニル、並びにC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルおよびハロゲンよりなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されたフェニルよりなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されたものであり;
Yは、H、C1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルまたはハロゲンであり;
は、単結合、または炭素原子数qを有する直鎖アルキレンであり;
pおよびqは各々独立して、1〜20の整数(ただし、6≦p+q≦23)であり;
m'は、1、2または3であり;
nは、2または3であり;
R''、R''、R''およびR''は各々独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0010】
WO02/18395に開示されているような化合物、例えば、式IVaまたはIVb:
【化6】

[式中、
は、O、S、NR1Sまたは基−(CH)na−(この基は、非置換か、または1ないし4個のハロゲンで置換されている。)であり;
は、1または2であり;
1Sは、Hまたは(C1−4)アルキル(このアルキルは、非置換か、またはハロゲンで置換されている。)であり;
1aは、H、OH、(C1−4)アルキルまたはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは、非置換か、または1ないし3個のハロゲンで置換されている。)であり;
1bは、H、OHまたは(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは、非置換か、またはハロゲンで置換されている。)であり;
2aは各々独立して、Hまたは(C1−4)アルキル(このアルキルは、非置換か、またはハロゲンで置換されている。)から選択され;
3aは、H、OH、ハロゲンまたはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは、非置換か、またはハロゲンで置換されている。)であり;そして
3bは、H、OH、ハロゲン、(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは、非置換か、またはヒドロキシで置換されている。)、またはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは、非置換か、またはハロゲンで置換されている。)であり;
は、−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、−C(=NOH)−、OまたはSであり;そして
4aは、(C4−14)アルキルまたは(C4−14)アルケニルである。]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0011】
式V:
【化7】

[式中、
Xは、O、S、SOまたはSOであり;
は、ハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH−OH、CH−CH−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロもしくはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルもしくはフェニルC1−4アルコキシ(そのフェニル基は各々、ハロゲン、CF、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで所望により置換されていてよい。)であり;
は、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
は、H、ハロゲン、CF、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1−4アルコキシメチルであり;
およびRは各々独立して、H、または式(a):
【化8】

{式中、
およびRは各々独立して、H、またはハロゲンで所望により置換されていてよいC1−4アルキルであり;そして
nは、1から4までの整数である。}
の残基である。]
のアミノアルコール化合物、またはその薬学的に許容される塩;または
【0012】
式VI:
【化9】

[式中、
1aは、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、アラルキル、所望により置換されていてよいフェノキシまたはアラルキルオキシであり;
2aは、H、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシであり;
3aは、H、ハロゲン、CF、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたはベンジルオキシであり;
4aは、H、C1−4アルキル、フェニル、所望により置換されていてよいベンジルもしくはベンゾイル、または低級脂肪族C1−5アシルであり;
5aは、H、モノハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ−メチル、C1−4アルキル−チオメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2−4アルケニルまたは−アルキニルであり;
6aは、HまたはC1−4アルキルであり;
7aは、H、C1−4アルキルまたは上記の式(a)の残基であり;
は、O、S、SOまたはSOであり;そして
は、1〜4の整数である。]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩;
である。
【0013】
式(I)および(II)の化合物に関して、“ハロゲン”という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。“トリハロメチル基”という用語は、トリフルオロメチルおよびトリクロロメチルを包含する。“C1−7アルキル”は、直鎖または分枝鎖アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチルを包含する。“置換または非置換フェノキシ基”という語句は、そのベンゼン環のいずれかの位置に、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素といったようなハロゲン原子、トリフルオロメチル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシを有するものを包含する。“アラルキル基”または“アラルキルオキシ基”におけるような“アラルキル基”という用語は、ベンジル、ジフェニルメチル、フェネチルおよびフェニルプロピルを包含する。“C1−4アルコキシ”、“C1−4アルキルチオ”、“C1−4アルキルスルフィニル”または“C1−4アルキルスルホニル”において存在するようなアルキル部分はいずれも、直鎖または分枝鎖C1−4アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチルを包含する。“置換または非置換アラルキル基”という語句は、そのベンゼン環のいずれかの位置に、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素といったようなハロゲン原子、トリフルオロメチル、1ないし4個の炭素原子を有する低級アルキル、または1ないし4個の炭素原子を有する低級アルコキシを有するものを包含する。
【0014】
式Vの他の化合物は、式Va:
【化10】

[式中、
、R、R、Rおよびnは、上記の通りであり;また
Yは、OまたはSであり;そして
は、水素、ハロゲン、C1−7アルキル、C1−4アルコキシまたはトリフルオロメチルである。]
の化合物である。
【0015】
式VおよびVaの化合物は既知であって、各々、例えばWO03/029205、WO03/029184およびWO04/026817に開示されており、そのリン酸化誘導体は、例えばWO04/074297に開示されており、それらの内容は全て、参照により本明細書中に組み込まれる。開示された化合物は、本明細書中の引用文献に開示されている通りに製造され得る。
【0016】
本明細書中に記載する化合物のリン酸化誘導体は、当技術分野において既知の、例えば、WO2005/021503(例えば、11頁および12頁を参照)に記載されているリン酸化化合物を合成するための手順を利用して製造することができる。
【0017】
その光学活性化合物およびリン酸化誘導体は、当技術分野において、例えば、Hinterdingら,Synthesis,第11巻,1667頁−1670頁(2003)に記載されている手順を利用して高純度で製造することができる。
【0018】
WO02/06268A1に開示されているような化合物、例えば、式VI:
【化11】

[式中、
1dおよびR2dは各々独立して、Hまたはアミノ保護基であり;
3dは、水素、ヒドロキシ保護基または式:
【化12】

の残基であり;
4dは、C1−4アルキルであり;
は、1〜6の整数であり;
は、エチレン、ビニレン、エチニレン、式−D−CH−(ここで、Dは、カルボニル、−CH(OH)−、O、SまたはNである。)を有する基、アリール、または下記に定義するような群から選択される3個までの置換基で置換されたアリールであり;
は、単結合、C1−10アルキレン、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたC1−10アルキレン、炭素鎖の中間部もしくは末端部にOもしくはSを有するC1−10アルキレン、またはグループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換された炭素鎖の中間部もしくは末端部にOもしくはSを有するC1−10アルキレンであり;
5dは、水素、C3−6シクロアルキル、アリール、複素環基、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたC3−6シクロアルキル、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたアリール、またはグループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換された複素環基であり;
6dおよびR7dは各々独立して、H、またはグループaから選択される置換基であり;
8dおよびR9dは各々独立して、H、またはハロゲンで所望により置換されていてよいC1−4アルキルであり;
グループaは、ハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、低級脂肪族アシル、アミノ、モノ−低級アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノまたはニトロであり;そして
グループbは、C3−6シクロアルキル、アリールまたは複素環基であり、各々、グループaから選択される3個までの置換基で所望により置換されていてよい。
ただし、R5dが水素である場合、Yは、単結合または直鎖C1−10アルキレンのいずれかである。]
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、エステルもしくは水和物;
【0019】
JP−14316985(JP2002316985)に開示されているような化合物、例えば、式VII:
【化13】

[式中、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6e、R7e、n、XおよびYは、JP−14316985に開示されている通りである。]
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、エステルもしくは水和物;
【0020】
WO03/062252A1に開示されているような化合物、例えば、式VIII:
【化14】

[式中、
Arは、フェニルまたはナフチルであり;
およびnは各々独立して、0または1であり;
Aは、COOH、PO、POH、SOH、PO(C1−3アルキル)OHおよび1H−テトラゾール−5−イルから選択され;
1gおよびR2gは各々独立して、H、ハロゲン、OH、COOH、またはハロゲンで所望により置換されていてよいC1−4アルキルであり;
3gは、H、またはハロゲンもしくはOHで所望により置換されていてよいC1−4アルキルであり;
4gは各々独立して、ハロゲン、または所望によりハロゲン置換されていてよいC1−4アルキルもしくはC1−3アルコキシであり;そして
およびMは各々、WO03/062252A1で各々BおよびCに関して示されているような意味の1つを有する。]
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物;
【0021】
WO03/062248A2に開示されているような化合物、例えば、式IX:
【化15】

[式中、
Arは、フェニルまたはナフチルであり;
nは、2、3または4であり;
Aは、COOH、1H−テトラゾール−5−イル、PO、PO、−SOHまたはPO(R5h)OH(ここで、R5hは、C1−4アルキル、ヒドロキシC1−4アルキル、フェニル、−CO−C1−3アルコキシおよび−CH(OH)−フェニルから選択され、ここで、該フェニルまたはフェニル部分は、所望により置換されていることがある。)であり;
1hおよびR2hは各々独立して、H、ハロゲン、OH、COOH、または所望によりハロゲノ置換されていてよいC1−6アルキルもしくはフェニルであり;
3hは、H、またはハロゲンおよび/またはOHで所望により置換されていてよいC1−4アルキルであり;
4hは各々独立して、ハロゲン、OH、COOH、C1−4アルキル、S(O)0、1または21−3アルキル、C1−3アルコキシ、C3−6シクロアルコキシ、アリールまたはアラルコキシであり、ここで、該アルキル部分は、1つ−3つのハロゲンで所望により置換されていてよく;そして
およびMは各々、WO03/062248A2で各々BおよびCに関して示されているような意味の1つを有する。]
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物;
【0022】
WO04/103306A、WO05/000833、WO05/103309またはWO05/113330に開示されているような化合物、例えば、式XaまたはXb:
【化16】

[式中、
は、COOR5k、OPO(OR5k)、PO(OR5k)、SOOR5k、POR5kOR5kまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、R5kは、HまたはC1−6アルキルであり;
は、結合、C1−3アルキレンまたはC2−3アルケニレンであり;
は、ハロゲン、OH、NO、C1−6アルキル、C1−6アルコキシから選択される1ないし3個の基で所望により置換されていてよいC6−10アリールまたはC3−9ヘテロアリール、ハロ置換されたC1−6アルキルおよびハロ置換されたC1−6アルコキシであり;
は、WO04/103306Aに示されているような複素環基、例えば、アゼチジンであり;
1kは、C1−6アルキル、C6−10アリール、C6−10アリールC1−4アルキル、C3−9ヘテロアリール、C3−9ヘテロアリールC1−4アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキルC1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルもしくはC3−8ヘテロシクロアルキルC1−4アルキルで所望により置換されていてよいC6−10アリールまたはC3−9ヘテロアリールであり、ここで、R1kのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルはいずれも、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシおよびハロ置換されたC1−6アルキルまたはC1−6アルコキシから選択される1ないし5個の基で置換されていてよく;
2kは、H、C1−6アルキル、ハロ置換されたC1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであり;そして
3kまたはR4kは各々独立して、H、ハロゲン、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、またはハロ置換されたC1−6アルキルもしくはC1−6アルコキシである。]
の化合物、およびそのN−オキシド誘導体もしくはそのプロドラッグ、またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物
である。
【0023】
式I〜式Xbの化合物は、遊離形または塩形で存在し得る。式III〜式VIIIの化合物の薬学的に許容される塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩および硫酸塩といったような無機酸との塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩といったような有機酸との塩、または適当なとき、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムといったような金属との塩、トリエチルアミンといったようなアミンとの塩、並びにリジンといったような二塩基アミノ酸との塩が含まれる。本発明の組み合わせの化合物および塩は、水和物および溶媒和物の形態を包含する。
【0024】
上記のようなアシルは、残基R−CO−(ここで、Rは、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである。)であり得る。特に他に記載のない限り、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖または分枝鎖であり得る。
【0025】
アリールは、フェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。
【0026】
式Iの化合物において、Rとしての炭素鎖が置換されているとき、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されているのが好ましい。該炭素鎖が所望により置換されていてよいフェニレンで遮断されているとき、該炭素鎖は、非置換であるのが好ましい。フェニレン部分が置換されているとき、ハロゲン、ニトロ、アミノ、メトキシ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されているのが好ましい。
【0027】
式Iの好ましい化合物は、Rがニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで所望により置換されていてよいC13−20アルキルであるもの、またさらに好ましくは、Rがハロゲンで所望により置換されていてよいC6−14アルキル鎖で置換されたフェニルアルキルであり、そして該アルキル部分がヒドロキシで所望により置換されていてよいC1−6アルキルであるものである。さらに好ましくは、Rは、フェニルが直鎖または分枝鎖、好ましくは直鎖C6−14アルキル鎖で置換されたフェニル−C1−6アルキルである。該C6−14アルキル鎖は、オルト、メタまたはパラ位、好ましくはパラ位であり得る。
【0028】
好ましくは、R〜Rは各々、Hである。
【0029】
上記の式VIIにおいて、“複素環基”は、S、OおよびNから選択される1ないし3個のヘテロ原子を有する5員環〜7員環の複素環基を表す。そのような複素環基の例には、上記のヘテロアリール基、および部分的にまたは完全に水素化されたヘテロアリール基、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、アゼピニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニルまたはピラゾリジニルに対応する複素環化合物が含まれる。好ましい複素環基は、5員環または6員環のヘテロアリール基であり、また最も好ましい複素環基は、モルホリニル、チオモルホリニルまたはピペリジニル基である。
【0030】
式Iの好ましい化合物は、2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオールである。式IIIの特に好ましいS1P受容体アゴニストは、FTY720、すなわち、遊離形または薬学的に許容される塩形の、例えば、
【化17】

で示されるような塩酸塩の、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(以下、化合物Aと称する。)である。
【0031】
式IIの好ましい化合物は、R'〜R'が各々Hであり、そしてmが4であるもの、すなわち、遊離形でのまたは薬学的に許容される塩形での、例えば、塩酸塩での、2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール(以下、化合物Bと称する。)である。
【0032】
式IIIの好ましい化合物は、WがCHであり、R''〜R''が各々Hであり、Zがエチレンであり、Xがヘプチルオキシであり、そしてYがHであるもの、すなわち、遊離形または薬学的に許容される塩の、例えば塩酸塩の、2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノール(以下、化合物Cと称する。)である。R−エナンチオマーが特に好ましい。
【0033】
式IVaの好ましい化合物は、FTY720−リン酸(R2aがHであり、R3aがOHであり、XがOであり、R1aおよびR1bがOHである。)である。式IVbの好ましい化合物は、化合物C−リン酸(R2aがHであり、R3bがOHであり、XがOであり、R1aおよびR1bがOHであり、YがOであり、そしてR4aがヘプチルである。)である。式Vの好ましい化合物は、化合物B−リン酸である。
【0034】
式VIIの好ましい化合物は、(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オールである。
【0035】
式Xaの好ましい化合物は、例えば、1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸、またはそのプロドラッグである。
【0036】
本明細書中に記載するような化合物は、直接的な活性物質であり得るか、またはプロドラッグであり得ることが理解され得る。例えば、該化合物はリン酸化型であり得る。
【0037】
経口製剤
本発明の組成物の剤形、例えば最終剤形は、固形の剤形、例えば錠剤であり得る。本発明の別の態様において、該剤形は、顆粒、例えば粉末形であって、懸濁液またはゲルを一部含んでなり得る。別の剤形は、小さな多粒子ペレット/ビーズを含んでなり得る。他の剤形は、投与前に液体製剤を調製するための液体に可溶性である固形または顆粒の組成物を含んでなり得る。そのような製剤の例は、可溶性錠剤、カプセル剤およびサシェ剤である。該最終液体製剤は、飲用として摂取され得る。
【0038】
経口経路は、薬物投与に関して最も便利な経路であることが多い。これは、標準的な錠剤、従来の口腔内崩壊錠剤、凍結乾燥錠剤、または薄膜剤の形態であり得る。
【0039】
式Yの基、例えば、アミノ−プロパン−1,3−ジオールを含む化合物、例えば、S1Pアゴニスト活性を有するものは、製剤化するのが容易ではないことが見出されている。特に、これらは、固形の経口製剤で製剤化するのが容易ではない。
【0040】
そのようなことから、驚いたことに、本発明者らは、限られた数の賦形剤だけがそのようなアミノジオールと実現可能にする可能性があることを見出している。
【0041】
メイラード反応
メイラード反応は、通常、加熱を必要とするアミノ酸と還元糖[カルボン酸へと酸化されるアルデヒド基を含む糖は、還元糖として分類される。還元糖には、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノースおよびマルトースが含まれる。]との間の化学反応である。キャラメル化と同様、非酵素的褐化の一形態である。糖の反応性カルボニル基がアミノ酸の求核性アミノ基と相互作用して、興味深いがあまり特徴のない香気および風味分子を結果的に生ずる。該アミノ基が中和しないので、この過程は、アルカリ環境において促進する。アミノ酸の種類が結果として生ずる香味を決定することから、この反応は、香味料産業の基礎となる。
【0042】
実現可能にする可能性がある賦形剤は、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動調節剤、可塑剤、およびマトリックス形成剤に分類される。幾つかの賦形剤は、2以上のクラスで挙げることができる。
【0043】
本明細書中に記載するような化合物を含む最終製剤において見出される典型的な範囲は、次の通りである:
充填剤:10−97%;
結合剤:1−15%;
崩壊剤:1−15%;
滑沢剤:0.5−2%;
流動調節剤:0.5−3%;
マトリックス形成剤:3−50%;
可塑剤:5−30%;
香味剤:1−20%;
甘味料:1−20%。
【0044】
従って、本発明は、式Yの基を有する化合物および少なくとも1個の他の賦形剤を含む安定な混合物に関する。
【0045】
一態様において、式Yの基を有する化合物は、1個以上の次の賦形剤と共に混合され得る。
(a)ラクトース一水和物、無水ラクトース、トウモロコシデンプン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、スクロース、微結晶性セルロース、例えば、アビセル PH101、リン酸水素カルシウム、マルトデキストリン、ゼラチン、例えば、DE12から選択される充填剤;および/または
(b)HPMC、例えば、3cPs、L−HPC、例えば、HP−セルロース LH−22、ポビドンから選択される結合剤;および/または
(c)トウモロコシデンプン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、例えば、プリモジェル(Primojel)、アルファ化デンプン、例えば、スターチ(Starch) 1500(Sta RX)、ケイ酸カルシウムから選択される崩壊剤;および/または
(d)水素化された、例えば、リシノール酸の(ricinoleic)、ヒマシ油、例えば、キュティナ(Cutina)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、鉱油、シリコン液、ラウリル硫酸ナトリウム、L−ロイシン、フマル酸ステアリルナトリウムから選択される滑沢剤;および/または
(e)アエロジル(Aerosil) 200 コロイド状二酸化ケイ素、例えば、アエロジル 200、タルクから選択される流動調節剤;および/または
(f)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プルラン、デンプン、例えば、ピュア・コート、ポビドンから選択されるマトリックス形成剤;および/または
(g)PEG400、セバシン酸ジブチル、ソルビトールから選択される可塑剤;および/または
(h)メントール、トゥッティ・フルッティから選択される香味剤;および/または
(i)スクラロース、サッカリンナトリウムから選択される甘味料。
【0046】
充填剤は、好ましくは、ラクトース一水和物、無水ラクトース、トウモロコシデンプン、キシリトール、ソルビトール、スクロース、微結晶性セルロース、例えば、アビセル PH101、リン酸水素カルシウム、マルトデキストリンおよびゼラチンから選択される充填剤から選択される。
【0047】
本発明の一態様により、好ましい滑沢剤(fubricants)は、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムから選択される。
【0048】
また別の一態様において、本発明は、式Yの基を有する化合物、およびソルビトール、キシリトール、第二リン酸カルシウム、ラクトース、微結晶性セルロース、HPMC、HPC、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、好ましくは含水の、ケイ酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムから選択される1つの賦形剤を含む二成分混合物に関する。
【0049】
好ましくは、水分が存在しない。
【0050】
特に、該賦形剤は、第二リン酸カルシウム、HPC、クロスポビドン、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムから選択される。
【0051】
特に、本発明の製剤または混合物は、還元糖、例えば、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノースおよびマルトースを含んでいない。
【0052】
さらに好ましい態様において、本発明の製剤または混合物は、PEG、ステアリン酸を含んでいない。
【0053】
必要ならば、安定剤を加えて、pHを増大させ得るか、または減少させ得る。pHを変更することにより、該組成物を適合させて、メイラード(malliard)反応、または発生する他の副反応の可能性の低下を最適化し得る。安定剤の例は、クエン酸である。
【0054】
好ましい態様において、本発明の組成物は、二成分混合物、すなわち、式Yの基を含む化合物および本明細書中に挙げるような1個の賦形剤の混合物である。
【0055】
本明細書中に開示するような安定な二成分混合物の特別な利点は、それらが、分解(degredation)産物を形成することなく、最終製剤化前に送達されて貯蔵され得ることである。従って、本発明の混合物、例えば、二成分混合物は、本明細書中に記載するようなS1Pモジュレーターを安定な状態で貯蔵するための商業的に実行可能な選択肢を提供する。
【0056】
本発明の驚くべき発見以前は、基Yを含む化合物の不安定性は、不純物が形成される可能性なしに、安全に貯蔵されることはできなかった。本発明により、当業者は、賦形剤が貯蔵のためにS1Pモジュレーターと共に使用され得ること、また最も重要なことには、賦形剤を使用して、メイラード(malliard)反応により形成される不純物といったような、最終薬物製品を汚染する不純物の危険性を低下させ得ることを本明細書に示す。
【0057】
許容される不純物レベル
本発明の組成物、例えば、二成分混合物および/または最終剤形は、不純物を含まないのが好ましい。許容される不純物レベルは、薬学的に許容される基準を使用して判定されることが理解され得る。
【0058】
しかしながら、該薬学的基準は、最終剤形、すなわち、最終製品にしか適用され得ないこともまた理解される。本発明は、好ましい態様において、不純物の少ない、例えば、不純物を含まない、本明細書中に定義するようなS1P受容体モジュレーター、すなわち、式Yの基を含む化合物を含む二成分混合物を提供する。好ましくは、本発明の二成分混合物は、不純物レベルに関して次の基準を満たす。
・不純物が4.5重量%程度および/または個々の不純物に関して僅か2重量%程度。
・好ましくは、個々の不純物が0.5重量%以上ではなく、不純物が2重量%またはそれ以下である。
【0059】
上記の“重量%”測定値は、許容される不純物量の指標である。“重量%”という用語は、全製剤量に関してのパーセンテージを意味し、例えば、4重量%は、錠剤100mg中4mgを意味する。
【0060】
化合物FTY720を参考基準として用いる、不純物許容範囲の例
ある剤形で観察される認定分解産物が3種ある:アセチルアミド、パルミチン酸アミドおよびステアリン酸アミド。
【0061】
これらの分解産物の形成機構は、酢酸、パルミチン酸またはステアリン酸のカルボニル炭素での、FTY720分子の一級アミンの求核攻撃によるものであると仮定される。
【0062】
毒性認定(tox qualification)試験に基づき、3種の一次分解産物、アセチルアミド、パルミチン酸アミドおよびステアリン酸アミドは各々、4.6%、4.5%および4.8%のレベルで認定された。
【0063】
最終投与製品の品質および有効性を適切に管理するために、2.0%と同等またはそれ未満の標識強度の指定が各々の認定分解産物に割り当てられた。
【0064】
1.0%と同等またはそれ未満の標識強度の指定が特定の分解産物に割り当てられた。
【0065】
ノバルティス(Novartis)の薬物製品純度方針の通り、0.5%と同等またはそれ未満の標識強度の指定が不特定の分解産物に割り当てられた。
【0066】
定量限度(0.1%の標識強度)を上回る全ての分解産物の合計は、合わせて4.5%と同等またはそれ未満に設定した。
【0067】
FTY720:式Yの基を含む化合物の一例
FTY720の原薬を使用して、FTY720および賦形剤の二成分混合物を使用する化学安定性プログラム(密閉バイアル中、1%の原薬を50℃で1ヶ月間貯蔵した。)を行った。
【0068】
二成分混合物を製造するための一般的方法:
1.原薬10mgおよび賦形剤1000mgをガラス製バイアルに充填した(=二成分混合物)。
2.その密閉バイアルを50℃で1ヶ月間貯蔵した。
【0069】
勾配HPLCをUV検出と共に使用して、分析的特性評価を行った。分析のために、その貯蔵試料をイソプロパノール中の0.0005N塩酸40mlに溶解して、磁性スターラーを用いて30分間撹拌した。この溶液を遠心分離して、透明な上清のアリコートを試験溶液として使用した。
【0070】
該方法の定量限度(loq)は、0.1%であった。該アッセイ測定の相対標準偏差Srelは、≦2%であった。
【表1】

【実施例】
【0071】
以下の表は、安定性プログラムの結果を含め、実現可能にする可能性がある賦形剤のリストを提供する。
【0072】
実施例1:選択された充填剤とのFTY720の安定性試験
【表2】

【0073】
実施例2:選択された結合剤とのFTY720の安定性試験
【表3】

【0074】
実施例3:選択された崩壊剤とのFTY720の安定性試験
【表4】

【0075】
実施例4:選択された滑沢剤とのFTY720の安定性試験
【表5】

【0076】
実施例5:選択された流動調節剤とのFTY720の安定性試験
【表6】

【0077】
実施例6:選択されたマトリックス形成剤とのFTY720の安定性試験
【表7】

様々な分子量を有する、例えば、低および高分子量を有するポリマーが同じ製剤中で使用され得る。すなわち、例えば、低および高分子量を有するセルロース系ポリマーの混合物を使用して、様々な特性を提供することができる。
【0078】
実施例7:選択された可塑剤とのFTY720の安定性試験
【表8】

【0079】
実施例8:選択された香味剤とのFTY720の安定性試験
【表9】

【0080】
実施例9:選択された甘味料とのFTY720の安定性試験
【表10】

【0081】
実施例10:実現不可能な賦形剤
実現不可能な賦形剤の例を以下に示す。二成分混合物を製造するための方法および分析的特性評価は、上記に記載したものと同じである。
【表11】

【0082】
実施例10:S1Pアッセイ
S1P受容体モジュレーターの個々のヒトS1P受容体への結合親和性は、次のアッセイにおいて測定され得る。
【0083】
化合物のS1P受容体モジュレーター活性を、ヒトS1P受容体であるS1P、S1P、S1P、S1PおよびS1Pで試験する。適当なヒトS1P受容体を安定に発現するトランスフェクトされたCHOまたはRH7777細胞から調製された膜タンパク質へのGTP[γ−35S]結合を誘発する化合物を定量化することにより、機能的受容体活性化を評価する。使用するアッセイ技術は、SPA(シンチレーション近接ベースのアッセイ)である。簡単に言えば、DMSOに溶解した化合物を連続的に希釈して、50mM Hepes、100mM NaCl、10mM MgCl、10μM GDP、0.1% 無脂肪BSAおよび0.2nM GTP[γ−35S](1200Ci/mmol)の存在下、S1P受容体を発現する膜タンパク質(10−20μg/ウェル)を固定化したSPAビーズ(Amersham-Pharmacia)に加える。96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて室温で120分間インキュベーションした後、非結合GTP[γ−35S]を遠心分離段階により分離する。膜結合GTP[γ−35S]により引き起こされるSPAビーズの発光をトップカウント(TOPcount)プレートリーダー(Packard)で定量化する。標準曲線適合ソフトウェアを使用して、EC50を計算する。このアッセイにおいて、S1P受容体モジュレーターは、S1P受容体への結合親和性<50nMを有するのが好ましい。
【0084】
好ましいS1P受容体モジュレーターは、例えば、それらのS1P結合特性に加えて、促進的なリンパ球ホーミング特性も有する化合物、例えば、全身性免疫抑制を惹起することなく、血液循環から二次リンパ組織までのリンパ球の、好ましくは可逆的な再分布から結果的に生ずるリンパ球減少症を引き起こす化合物である。ナイーブ細胞を隔離し;血液由来のCD4およびCD8のT細胞およびB細胞を刺激すると、リンパ節(LN)およびパイエル板(PP)へと移動する。
【0085】
リンパ球ホーミング特性は、次の血液リンパ球枯渇アッセイにおいて測定され得る。
【0086】
S1P受容体モジュレーターまたはビヒクルを経管栄養によりラットへ経口投与する。血液学的モニタリングのための尾部血液を、個々のベースライン値を得るため1日前に、また投与後2時間、6時間、24時間、48時間および72時間で採取する。このアッセイにおいて、S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターは、例えば、<20mg/kgの用量で投与したとき、末梢血リンパ球を、例えば50%まで枯渇させる。
【0087】
最終製品の製造:
最終医薬製品の製造は、従来技術を使用して行われ得る。そのような技術例を例として以下に記載する。
【0088】
圧縮錠剤
圧縮錠剤は、その材料を圧縮するために、大きな圧力がかけられる。もし単純混合で十分に均一な成分混合物を得ることができなければ、その成分を圧縮する前に粒状として、最終錠剤における活性化合物の均等な分布を確実なものとしなければならない。2つの基本的な技術:湿式造粒および乾式造粒を使用して、錠剤への造粒用粉末を製造する。
【0089】
十分混合することができ、従って、造粒を必要としない粉末は、直接圧縮と称される技術によって錠剤へと圧縮することができる。
【0090】
凍結乾燥錠剤
これらの錠剤は、活性成分、並びに他の賦形剤、例えば、ゼラチン(例えば、約3重量%の量で)、例えば、マンニトールまたはソルビトールといったような構造形成剤(例えば、約1.5重量%の量で)、甘味料および香味料を含む懸濁液を調製する目的で製造され得る。
【0091】
凍結乾燥錠剤の製剤例を以下に提供する。
【0092】
ゼラチン/マンニトール溶液を23℃まで冷却して、活性物質と混合する。全固形含量は、50%未満であるのが好ましい。次いで、その懸濁液を15℃まで冷却して、凍結乾燥開始前の懸濁液の沈降を防ぐ。
【0093】
薄膜剤
本発明の組成物をさらに追加の賦形剤と混合して、最終製品を形成し得る。該最終製品は、以下のものといったような標準的な技術を使用して、二成分組成物から作られ得る。
【0094】
可能な製造は、鋳造(casting)、延伸(drawing)、押し出し(extrusion)またはコーティング/ラミネーション工程を含む。
【0095】
鋳造は、薬物/賦形剤の混合物を鋳型へと導入し、その鋳型内部で固化させた後、取り出すかまたは破砕して取り出して、個々の薄膜剤を作ることによる製造工程である。
【0096】
延伸は、溶融した薬物/賦形剤の混合物を長さが増すまで引っ張ることにより、ロールを製造する。これは、典型的には、材料からの菲薄化を伴う。次いで、これらのロールから単一ユニットを切り取るかまたは打ち抜いて、例えば、ポーチへと詰め込む。
【0097】
押し出しは、所望の輪郭形状の型打ち機(die)を通じて押すおよび/または延伸することにより、ロールを製造する。押し出しは、連続的(無限に長い材料を作製する。)または半連続的(多くの短い断片を作製する。)であり得る。次いで、これらのロールから単一ユニットを切り取るかまたは打ち抜いて、例えば、ポーチへと詰め込む。
【0098】
コーティング/ラミネーションは、最初に、コーティングおよびラミネーションによりラミネートを製造するものとして記載することができるであろう。次いで、結果として生ずるロールをより小さなロールへと分割する。次いで、これらのロールから単一ユニットを切り取るかまたは打ち抜いて、例えば、ポーチへと詰め込む。
【0099】
本発明により、本発明の組成物、例えば、最終剤形は、
a)臓器または組織移植拒絶反応の処置および予防、例えば、心臓、肺、心肺同時、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植の移植患者の処置、また骨髄移植後に時々発生するような移植片対宿主病の予防;特に、急性もしくは慢性の同種および異種移植拒絶反応の処置において、またはインスリン産生細胞、例えば、膵島細胞の移植において;
b)自己免疫疾患または炎症状態、例えば、多発性硬化症、関節炎(例えば、関節リウマチ)、炎症性腸疾患、肝炎等の処置および予防;
c)肝炎およびエイズ(AIDS)を含む、ウイルス性心筋炎、およびウイルス性心筋炎により引き起こされるウイルス性疾患の処置および予防;
d)癌、例えば、固形腫瘍、癌腫の処置および予防、例えば、腫瘍の転移拡大を予防するため、または微小転移増殖を予防するまたは阻害するため;
に有用である。
【0100】
“固形腫瘍”とは、リンパ腺癌以外の腫瘍および/または転移(どこに局在しようとも)、例えば、脳および他の中枢神経系腫瘍(例えば、髄膜、脳、脊髄、脳神経および中枢神経系の他の部分の腫瘍、例えば、神経膠芽腫または髄芽腫(medulla blastomas));頭部および/または頸部癌;乳腺腫瘍;循環系腫瘍(例えば、心臓、縦隔および胸膜、並びに他の胸腔内臓器、血管腫瘍および腫瘍関連血管組織);排泄系腫瘍(例えば、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、他のおよび不特定の泌尿器);消化管腫瘍(例えば、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状結腸移行部、直腸、肛門および肛門管)、肝臓および肝内胆管、胆嚢、胆道の他のおよび不特定の部分、膵臓、他のおよび消化器を侵す腫瘍;口腔(唇、舌、歯茎、口腔底、口蓋、および口の他の部分、耳下腺、および唾液腺の他の部分、扁桃腺、中咽頭、鼻咽頭、梨状陥凹、下咽頭、並びに唇、口腔および咽頭における他の部位);生殖器系腫瘍(例えば、外陰部、膣、子宮頸部、子宮体、子宮、卵巣、および女性生殖器と関連のある他の部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣、および男性生殖器と関連のある他の部位);呼吸器腫瘍(例えば、鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、気管、気管支および肺、例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌);骨格系腫瘍(例えば、四肢、骨関節軟骨および他の部位の骨および関節軟骨);皮膚腫瘍(例えば、皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮細胞癌、中皮腫、カポジ肉腫);並びに末梢神経および自律神経系、結合および軟組織、後腹膜および腹膜、目および付属器、甲状腺、副腎および他の内分泌腺および関連構造を含め、他の組織を侵す腫瘍、リンパ節の続発性および不特定の悪性新生物、呼吸器および消化器系の続発性悪性新生物、および他の部位の続発性悪性新生物を意味する。
【0101】
上記および下記にて、腫瘍、腫瘍疾患、癌腫または癌について言及するとき、原発の臓器もしくは組織における、および/または他のいずれかの部位における転移もまた、該腫瘍および/または転移の部位がどこであろうとも、その代わりとしてまたはそれに加えて含意される。
【0102】
従って、さらなる局面において、本発明は、
1.上記の疾患または状態を処置するまたは予防する際に使用するための、上記の組成物;
2.免疫調節を必要とする対象を処置する方法であって、上記の組成物の有効量を該対象に投与することを含む方法;
3.上記の疾患または状態を処置するまたは予防する方法であって、上記の組成物を該対象に投与することを含む方法;
4.上記の疾患または状態の予防または処置のための薬物を製造するための、上記の医薬組成物の使用;
を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な組成物であって、
(i)式Y:
【化1】

[式中、
Zは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、フェニル、OHで置換されたフェニル、ハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびOHで置換されたフェニルよりなる群から選択される1ないし3個の置換基で置換されたC1−6アルキル、またはCH−R4Z{ここで、R4Zは、OH、アシルオキシまたは式(a):
【化2】

(式中、
は、直接結合またはO、好ましくはOであり;
5ZおよびR6Zは各々独立して、H、または1、2もしくは3個のハロゲン原子で所望により置換されていてよいC1−4アルキルである。)
の残基である。}であり;
1Zは、OH、アシルオキシまたは式(a)の残基であり;そして
2ZおよびR3Zは各々独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。]
の基を含む化合物;並びに
(ii)1個以上の次の賦形剤:
(a)ラクトース一水和物、無水ラクトース、トウモロコシデンプン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、スクロース、微結晶性セルロース、例えばアビセル(Avicel)PH101、リン酸水素カルシウム、マルトデキストリン、ゼラチンから選択される充填剤;および/または
(b)HPMC、L−HPC、ポビドン、HPCから選択される結合剤;および/または
(c)トウモロコシデンプン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、アルファ化デンプン、ケイ酸カルシウムから選択される崩壊剤;および/または
(d)水添ヒマシ油、ベヘン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、鉱油、シリコン液、ラウリル硫酸ナトリウム、L−ロイシン、フマル酸ステアリルナトリウムから選択される滑沢剤;および/または
(e)コロイド状二酸化ケイ素、タルクから選択される流動調節剤;および/または
(f)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プルラン、デンプン、例えば、ピュア・コート(Pure Cote)、ポビドンから選択されるマトリックス形成剤;および/または
(g)PEG 400、セバシン酸ジブチル、ソルビトールから選択される可塑剤;および/または
(h)メントール、トゥッティ・フルッティ(tutti fruti)から選択される香味剤;および/または
(i)スクラロース、サッカリンナトリウムから選択される甘味料;
を含む安定な組成物。
【請求項2】
賦形剤が、ソルビトール、キシリトール、第二リン酸カルシウム、ラクトース、微結晶性セルロース、HPMC、HPC、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、ケイ酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、式Yの基を含む化合物および1個の賦形剤よりなる二成分混合物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
式Yの基を含む化合物が、遊離形での2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(FTY720)、その薬学的に許容される塩、FTY720−リン酸、1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸、およびそのプロドラッグから選択され、好ましくはFTY720である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
不純物レベルが、個々の不純物に関して、多くて4.5重量%および/または2重量%程度である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
医薬品として使用するための、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
錠剤、カプセル剤の形態での、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
臓器もしくは組織移植拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫疾患、炎症状態、ウイルス性心筋炎、ウイルス性心筋炎により引き起こされるウイルス性疾患、または癌の処置のための薬物を製造するための、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項9】
自己免疫疾患の処置のための薬物の製造において使用するための、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
多発性硬化症の処置のための薬物の製造において使用するための、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
式Yの化合物が、遊離形またはその薬学的に許容される塩形の、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(FTY720)、その薬学的に許容される塩、FTY720−リン酸、1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸、およびそのプロドラッグから選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物または使用。

【公表番号】特表2011−500583(P2011−500583A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529013(P2010−529013)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/079264
【国際公開番号】WO2009/048993
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】