説明

スフェンタニルを含む接着性調製物およびそれを用いる方法

本発明は、経済的な出発物質から得られ、従来のスフェンタニル接着性調製物より単純な構成を有し、かつ効果的な皮膚透過性を有する、スフェンタニルを含む経皮的吸収性接着性調製物および経皮組成物を提供する。該調製物および組成物は、異なる分子量を有する2つのポリイソブチレン、粘着性付与剤、および透過促進剤を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、内容が参照により本明細書に組み入れられている、2006年2月13日に出願された米国特許仮出願第60/772,522号の優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、スフェンタニル含有接着性調製物、または皮膚を通してのスフェンタニルの連続投与のための経皮組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
麻薬性鎮痛薬は、癌疼痛などの慢性疼痛の管理に広く用いられており、大きな有用性および治療効果を実証している。ほんのわずかの麻薬性鎮痛薬が、慢性疼痛を処置するための経皮的に吸収される接着性調製物として提供されている。経皮的吸収性調製物は他の投与経路を超える利点を有するため、そのような剤形が望ましく、新しい処置方法として社会に貢献している。
【0004】
しかしながら、麻薬性鎮痛薬の効果は、個々の被験体の間で異なり、薬物投与に関連した用量依存性有害事象は問題でありうる。それゆえに、投与のより十分な制御および利便性を達成するために、経皮的吸収性調製物が慢性疼痛の管理に用いられている。
【0005】
一般的に、スフェンタニルは、モルヒネなどの特定の他の麻薬性鎮痛薬と比較した場合、より効果的であり、かつ副作用の低下を伴っている。様々な構成を有するスフェンタニルを含む経皮的吸収性調製物が検討され、開示されている(米国特許第4,588,580号(特許文献1);第4,806,341号(特許文献2);第4,822,802号(特許文献3);第4,927,408号(特許文献4);および第5,656,285号(特許文献5);第6,074,665号(特許文献6))。しかしながら、スフェンタニルを含む経皮的吸収性調製物は規制認可を与えられていない。前記の特許におけるスフェンタニル調製物は、複雑な構成を有し、製造するのに非常に費用がかかり、経済的に不利である。費用をわずかでも低下させるために、工程費用を低下させるために組成を単純化し、経済的な材料を利用することが必要である。
【0006】
さらに、スフェンタニルは強力な麻薬性鎮痛薬であるため、全身循環に対し安全かつ効果的な薬物送達を提供する、経皮組成物などの送達系が必要である。それゆえに、初期吸収時間中の、比較的迅速だが制御された鎮痛の発現、および継続する鎮痛を与えて、薬物送達における用量ダンピングまたは極端なバリエーションを避ける独特な特徴を有する持続性送達を達成できる経皮組成物が必要である。系の除去による処置の迅速な停止およびその後の皮膚吸収における迅速な低下を可能にする経皮組成物も必要である。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,588,580号
【特許文献2】米国特許第4,806,341号
【特許文献3】米国特許第4,822,802号
【特許文献4】米国特許第4,927,408号
【特許文献5】米国特許第5,656,285号
【特許文献6】米国特許第6,074,665号
【発明の開示】
【0008】
概要
一つの態様において、経皮組成物は、支持体と支持体の一つの表面上に積層した接着層とを含み、接着層は、亜飽和量のスフェンタニル、異なる粘度平均分子量を有する第一のポリイソブチレンと第二のポリイソブチレンとを含むポリイソブチレン混合物、粘着性付与剤、ならびにそのポリイソブチレン混合物およびその粘着性付与剤に適合性の透過促進剤を含む。一つの態様において、第一のポリイソブチレンは、約600000〜約1500000の粘度平均分子量を有し、第二のポリイソブチレンは約40000〜約85000の粘度平均分子量を有する。
【0009】
もう一つの態様において、経皮組成物は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、または約1週間、治療レベルを提供するのに有効な量のスフェンタニルを含む。もう一つの態様において、経皮組成物は、約0.5mgから約15mgまでのスフェンタニルを含む。さらなる態様において、経皮組成物は、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、または約15mgの量のスフェンタニルを含む。
【0010】
もう一つの態様において、経皮組成物は速度制御膜を含む。
【0011】
もう一つの態様において、支持体は、多孔性フィルムに積層した非多孔性フィルムを含む、またはそれからなる。さらなる態様において、支持体は、織物、不織布、編物、紙、機械的穿孔シート、またはそれらのうちの2つもしくはそれ以上の組み合わせを含む、またはそれらからなる。もう一つの態様において、支持体は、半透明または透明である。
【0012】
もう一つの態様は、鎮痛を必要としている被験体を処置する方法であって、支持体と支持体の一つの表面上に積層した接着層とを含む第一のスフェンタニル経皮組成物を被験体の皮膚に適用する段階を含み、接着層が亜飽和量のスフェンタニル、異なる粘度平均分子量を有する第一のポリイソブチレンと第二のポリイソブチレンとを含むポリイソブチレン混合物、粘着性付与剤、ならびにそのポリイソブチレン混合物およびその粘着性付与剤に適合性の透過促進剤を含む、方法に向けられる。さらなる態様において、該方法は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、および約1週間からなる群より選択される期間、被験体に治療レベルのスフェンタニルを提供する。
【0013】
もう一つの態様において、鎮痛を必要としている被験体を処置する方法はさらに、(a)支持体と(b)支持体の一つの表面上に積層した接着層とを含む第二のスフェンタニル経皮組成物を被験体の皮膚に適用する段階を含み、接着層が、スフェンタニル、異なる分子量を有する第一のポリイソブチレンと第二のポリイソブチレンとを含むポリイソブチレン混合物、粘着性付与剤、ならびに該2種類のポリイソブチレンおよびその粘着性付与剤に適合性の透過促進剤を含む。さらなる態様において、該方法はさらに、第二のスフェンタニル経皮組成物を適用する前に、第一のスフェンタニル経皮組成物を被験体の皮膚から除去する段階を含む。
【0014】
もう一つの態様において、鎮痛を必要としている被験体を処置する方法では、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後約30分間〜約2時間の時間に、約2pg/ml未満の被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度を達成する。もう一つの態様において、該方法では、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後6時間以内に、約2pg/mlより高い被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度が達成される。もう一つの態様において、該方法では、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用から約12時間〜約72時間後に、被験体におけるスフェンタニルのピーク血漿濃度に達する。さらなる態様において、該方法では、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用から約24時間後に、被験体におけるスフェンタニルのピーク血漿濃度に達する。さらなる態様において、該方法では、組成物1cm2あたり約1pg/mlから約30pg/mlの被験体におけるスフェタニルのピーク血漿濃度が達成される。
【0015】
もう一つの態様において、スフェンタニル経皮組成物は、少なくとも約1日間から約7日間までの適用持続期間に渡って、組成物1cm2あたり約0.5μg/hrから約2μg/hrまでのスフェンタニルを送達するのに有効な量のスフェンタニルを含む。もう一つの態様において、スフェンタニル経皮組成物は、少なくとも約1日間から約7日間までの適用の持続期間、組成物1cm2あたりスフェンタニルが少なくとも約1μg/hrであるスフェンタニル送達速度を維持するのに有効な量のスフェンタニルを含む。さらなる態様において、持続期間は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、および約1週間の期間である。
【0016】
もう一つの態様において、スフェンタニル経皮組成物は、最初の適用後の初めの24時間以内に、組成物1cm2あたり少なくとも1μg/hrのスフェンタニルを送達するのに有効な量のスフェンタニルを含む。さらなる態様において、スフェンタニル経皮組成物は、最初の適用後の初めの24時間後に、組成物1cm2あたり少なくとも1pg/mlの被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度を達成するのに有効な量のスフェンタニルを含む。
【0017】
前記の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも例示的かつ説明的であり、請求の範囲に記載される本発明のさらなる説明を提供することを意図する。その他の目的、利点、および新規な特徴は、以下の図面の簡単な説明および発明の詳細な説明から当業者にとって容易に明らかであると考えられる。
【0018】
詳細な説明
従来の調製物と比較してより単純な組成または構成を有する、単純な段階により作製される、および皮膚透過性において効果的な機能を有するなどの、経済的な材料から調製されたスフェンタニル含有経皮的吸収性接着性調製物(例えば、経皮組成物)が本明細書に記載されている。本明細書に記載された経皮組成物は、安全かつ効果的な処置のための薬物の、制御されているが比較的迅速な送達を達成する。例えば、一つの態様は、支持体と支持体の一つの表面上に積層した接着層とを含む経皮的吸収性接着性調製物、または経皮装置もしくは経皮組成物を提供し、接着層が、スフェンタニル、異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレン、粘着性付与剤、ならびに前記の2種類のポリイソブチレンおよび前記の粘着性付与剤に適合性の有機液体(例えば、透過促進剤)を含む。いかなる理論にも縛られるつもりはないが、前記のポリイソブチレン、粘着性付与剤、および透過促進剤の使用は、これらの成分の混合比を変化させることにより皮膚透過を制御することができるという利点を提供する。薬物送達はまた、速度制御膜を介して制御することができ、該膜は、本明細書に記載された経皮組成物の任意の成分である。
【0019】
他の調製物におけるスフェンタニルの溶解性と比較して増加している、透過促進剤におけるスフェンタニルの高溶解性に少なくとも一部起因する、沈殿したスフェンタニル結晶を含まない経皮的吸収性調製物(経皮的組成物)もまた本明細書に記載されている。一つの態様において、経皮組成物は、亜飽和量のスフェンタニルを含む接着層を含む。「亜飽和量のスフェンタニル」とは、接着層においてその溶解度または飽和点より低い濃度のスフェンタニルを意味する。そのような調製物のさらなる利点は、外観の向上、例えば、本明細書に記載された経皮組成物は、美学的に美しい外観を有しうる。
【0020】
従って、本発明により、従来の調製物と比較して効果的な機能を有する調製物を経済的に製造することができ、優れたスフェンタニル調製物を低費用で提供することができる。
【0021】
本明細書に用いられる場合、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」は、単数のみを表すと明確に述べられていない限り、単数および複数の両方を表す。
【0022】
本明細書に用いられる場合、「約」は、当業者により理解されると考えられ、それが用いられる文脈によってある程度異なる。該用語が、当業者にとってそれが用いられている文脈から明らかでない使用がされている場合には、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味するものとする。
【0023】
本明細書に用いられる場合、「被験体」は、ヒト被験体を含む、疼痛治療を必要としている任意の被験体を意味する。
【0024】
本明細書に用いられる場合、「治療的有効量」および「治療レベル」という語句は、処置を必要としている被験体への薬物の投与により特定の薬理学的応答をもたらす薬物用量または被験体における血漿濃度を意味する。特定の場合において特定の被験体に投与される薬物の治療的有効量または治療レベルは、たとえそのような用量が当業者により治療的有効量であるとみなされているとしても、必ずしも本明細書に記載された状態/疾患を処置するのに有効であるとは限らないことが強調される。例示的な用量、薬物送達量、治療的有効量、および治療レベルは、成人ヒト患者に関して、以下に便宜的にのみ提供される。当業者は、そのような量を標準的技法に従って調整することができる。
【0025】
本明細書に用いられる技術的および科学的用語は、他に規定がない限り、当業者により一般的に理解されている意味を有する。当業者に公知の様々な方法が本明細書で参照される。参照されているそのような公知の方法を示す刊行物および他の資料は、あたかも省略せずに示されているように、全体として参照により本明細書に組み入れられている。当業者に公知の任意の適切な材料および/または方法は、本発明を実行するのに利用されうる。しかしながら、特定の材料および方法が記載されている。以下の説明および実施例に参照される材料、試薬などは、他に断りのない限り、商業的供給源から入手できる。
【0026】
本明細書に記載されたスフェンタニル調製物または経皮装置もしくは経皮組成物は、より低用量のスフェンタニルの使用を可能にするため、従来の麻薬性経皮剤形より優れている。スフェンタニルは、強力なII級指定オピオイドアゴニストであるフェンタニールに関連している。II級指定オピオイド物質は、フェンタニール、ヒドロモルホン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、およびオキシモルホンを含み、乱用の可能性が高く、かつ呼吸抑制による致死的過量摂取の付随的リスクを有する。麻薬性鎮痛薬は中毒になりえ、かつ乱用されうるため、スフェンタニルなどのより低用量の麻薬性鎮痛薬が好ましい。さらに、より高い薬物用量を有する麻薬性鎮痛薬剤形は、乱用および気晴らしの特定の標的になりうる。従って、より低用量のスフェンタニルは、中毒および乱用の両方の可能性を最小限にし、それゆえに、好ましい。
【0027】
スフェンタニルの治療的使用に関連したさらなる利点は、オピエート受容体における遺伝的変異、および鎮痛剤に対する個々の患者の応答へのその効果の新たな理解に関わる。一般的な薬理学的作用機序は患者間に差が見られないままであるが、化合物の構造におけるわずかな違い、およびオピエート受容体の複数の遺伝学的に決定された特徴への相対的結合が、様々な麻薬性鎮痛薬への応答における個々の違いをもたらす。従って、複数の代替物は、鎮痛応答に基づいた処置の個別化を可能にすることにより、全体的な患者処置に恩恵をもたらすと考えられる。加えて、時間とともに受容体応答における適応変化が起こる可能性があり、そのため、薬物耐性の発生により応答が減退する場合、代替的な鎮痛薬に対する持続的な患者応答の可能性が導かれる。
【0028】
スフェンタニルはフェンタニール類似体である。フェンタニールおよびスフェンタニルは以下の構造式を有する。

【0029】
他のオピオイド鎮痛薬と同様、フェンタニールおよびスフェンタニルは、中枢神経系内の多数の部位の立体特異的受容体に結合して、疼痛の知覚および疼痛に対する情動応答の両方に影響を及ぼす過程を変化させる。フェンタニールおよびスフェンタニルはいずれも、良好な皮膚透過性を有するが、スフェンタニルは、より強力な鎮痛効果を与え、より少量の薬物の使用で治療効果を生じるのを可能にする。スフェンタニルは、フェンタニールの約7〜10倍の効力を有すると報告されている。
【0030】
スフェンタニルの一つの特徴は、1757という極めて高いオクタノール:水分配係数であり、それは結果として、静脈内投与後、事実上即効性の中枢神経系効果を生じる。対応する高い脂溶性(log p=3.95)は、スフェンタニル経皮組成物の投与後の患者に対する安全性への懸念をもたらす、極めて迅速な経皮的透過を引き起こすことが予想される。しかしながら、本明細書に記載された経皮組成物は、ピーク血漿濃度までの遅延時間を示し、従って、予想されなかったであろう安全域を提供する。いかなる理論によっても縛られるつもりはないが、少量のスフェンタニルが組成物表面下の皮膚脂質層へ負荷され、それにより、吸収のための短いが有用な遅延時間が説明されうると考えられる。
【0031】
スフェンタニルについての典型的な検出閾値は約2pg/mlである。本明細書に記載された経皮組成物のヒト被験体への適用後、スフェンタニルは、最初の適用後約30分間〜約2時間、例えば最初の適用後30分間〜2時間、血液中で検出されず、しかも、スフェンタニルは、最初の適用後約6時間まで、例えば最初の適用後6時間までに、血液中に検出されない場合がある。従って、例えば、被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度は、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後6時間以内に、約2pg/mlより高く、例えば2pg/mlより高くに達しうる。ピーク血漿濃度(Cmax)は、本明細書に記載された経皮組成物の最初の適用後約24時間目を含む約12時間から約72時間(Tmax)までの内に、例えば最初の適用後12時間から72時間までの内、または24時間目に、達成されうる。従って、経皮組成物は、1日より長く続く疼痛を有する患者を含む、数時間を超える鎮痛の維持を必要とする患者への投与に適している。
【0032】
本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物、または経皮装置もしくは経皮組成物は、支持体、ならびに支持体の一つの表面上に積層した、亜飽和量のスフェンタニル、異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレン、粘着性付与剤、および前記の異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレンおよび前記の粘着性付与剤に適合性の透過促進剤を含む。調製物または経皮組成物は、一般的で経済的な材料から、かつ単純化された過程で都合良く製造されうるが、それは、従来の調製物と比較して、優れた性質(例えば、効果的な皮膚透過性、皮膚透過性を制御する能力など)を示す。
【0033】
経皮組成物
一つの態様により、経皮組成物は、支持体と支持体の一つの表面上に積層した接着層とを含み、接着層は、スフェンタニル、異なる分子量を有する第一のポリイソブチレンと第二のポリイソブチレンとを含むポリイソブチレン混合物、粘着性付与剤、ならびに該ポリイソブチレン混合物および該粘着性付与剤に適合性の透過促進剤を含む。
【0034】
経皮的吸収性接着性調製物または経皮組成物の剤形は、特に限定されないが、例えば、テープ、シートなどでありうる。経皮組成物の適切な剤形は当技術分野において公知である。
【0035】
経皮組成物は、1、2、5、10、15、20、または25cm2を含む約2、約5、約10、約15、約20、または約25cm2を含む、約1cm2から約30cm2までを含む、任意の適切なサイズの表面積で提供されうる。いくつかの態様において、経皮組成物のサイズおよび形は、特定の必要用量および/または所定の被験体の美的好みに合うように選択される。
【0036】
1. 接着層
A. スフェンタニル
上記のように、本明細書に記載された経皮組成物の接着層はスフェンタニルを含む。
【0037】
一つの態様において、接着層は、亜飽和量のスフェンタニル、例えば、接着層におけるスフェンタニルの溶解度または飽和点より低い量のスフェンタニルを含む。いくつかの態様において、接着層の総重量に対するスフェンタニルの割合は、約1.7%〜約4.0%を含む約1.5〜約5.0%、例えば1.5%〜5.0%または1.7%〜4.0%である。そのような量は、効力と費用検討の有利なバランスを提供しうる。スフェンタニルの割合が約1.5%未満である場合は、十分な臨床効果が得られない可能性があり、それが約5.0%を超える場合は、結晶沈殿が生じる可能性があり、経済的および治療的に不利である。
【0038】
本発明の経皮的吸収性接着性調製物(例えば、経皮組成物)におけるスフェンタニルの適切な用量は、典型的には、被験体の年齢、体重、症状などに依存して変わるが、典型的な調製物または組成物は、約0.5mg〜約15mg、例えば0.5mg〜15mgのスフェンタニルを含むことができ、約2cm2〜約20cm2を含む約1cm2〜約30cm2、例えば1cm2〜30cm2または2cm2〜20cm2の表面積へ経皮組成物を用いて、約2cm2〜約20cm2を含む約1cm2〜約30cm2の成人ヒトの皮膚へ一般的に適用される。特定の態様において、スフェンタニル調製物(経皮組成物)は、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11,mg、12mg、13mg、14mg、または15mgを含む、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11,mg、約12mg、約13mg、約14mg、または約15mgのスフェンタニルを含む。
【0039】
B. ポリイソブチレン混合物
上記のように、本明細書に記載された経皮組成物の接着層は、異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレン、例えば、異なる分子量を有する第一のポリイソブチレンと第二のポリイソブチレンとを含むポリイソブチレン混合物を含む。「異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレン」という用語は、一般的に一つの平均分子量を有する第一のポリイソブチレンと、一般的に第一のポリイソブチレンとは異なる平均分子量を有する第二のポリイソブチレンとを含む組成物を指し、「平均分子量」は粘度平均分子量を指す。
【0040】
粘度平均分子量は、20℃におけるウベローデ粘度計のキャピラリー1のフロー時間から、およびシュタウディンガー(Staudinger)指数J0値を用いる以下の式から、シュルツ-ブラシュケ(Schulz-Blaschke)方程式によりシュタウディンガー指数J0を計算することにより決定されうる。

t:溶液のフロー時間(ハーゲンバハ-クエット(Hagenbach-couette)補正)
t0:溶液のフロー時間(ハーゲンバハ-クエット補正)
c:溶液の濃度(g/cm3)

【0041】
異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレンは、特に限定されず、適切なポリイソブチレンは当技術分野において公知である。スフェンタニルの優れた接着性および剥離性を達成しうるいくつかの態様において、第一のポリイソブチレンは、約700,000〜約1,350,000を含む約600,000〜約1,500,000の粘度平均分子量を有し、第二のポリイソブチレンは、約40,000〜約85,000、または約45,000〜約65,000の粘度平均分子量を含む、第一のポリイソブチレンより小さい粘度平均分子量を有する。従って、一つの態様において、第一のポリイソブチレンは、700,000〜1,350,000を含む600,000〜約1,500,000の粘度平均分子量を有し、第二のポリイソブチレンは、40,000〜85,000または45,000〜65,000の粘度平均分子量を有する。ここで、第一のポリイソブチレンが約600,000未満の粘度平均分子量を有する場合、接着層に必要な内部凝集は達成できない傾向にあり、それが約1,500,000を超える場合、接着層の皮膚接着および粘着は低下する傾向にある。さらに、第二のポリイソブチレンが約40,000未満の粘度平均分子量を有する場合、接着層は粘着性が増して皮膚表面を汚染する可能性があり、それが約85,000を超える場合、接着層の皮膚接着および粘着は低下する傾向にある。適切なポリイソブチレンは商業的供給源から経済的な価格で安定的に供給されうる。
【0042】
いくつかの態様において、上記の第一のポリイソブチレン:第二のポリイソブチレンの混合比は、ポリイソブチレンの重量で、約1:1.3〜約1:1.8を含む約1:1.2〜約1:2である。一つの態様において、第一および第二のポリイソブチレンの混合比は、ポリイソブチレンの重量で、1:1.3〜1:1.8を含む1:1.2〜1:2である。第一のポリイソブチレンに対する第二のポリイソブチレンの混合比率が重量で約1.2未満である場合、接着層は、皮膚接着の顕著な減少を示し、比率が約2を超える場合、接着層は内部凝集の顕著な減少を示す。
【0043】
いくつかの態様において、接着層の総重量に対する、異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレンの割合は、接着層の総重量に基づいて約55%〜約78%を含む約50%〜約83%である。一つの態様において、2種類のポリイソブチレンの割合は、接着層の総重量に基づいて55%〜78%を含む50%〜83%である。いくつかの態様において、接着層の全重量に対する、異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレンの第一のポリイソブチレン(第二のポリイソブチレンより高い粘度平均分子量を有する)の割合は、約22%〜約32%を含む約18%〜約36%である。一つの態様において、接着層の全重量に対する第一のポリイソブチレンの割合は、22%〜32%を含む18%〜36%である。いくつかの態様において、接着層の総重量に対する、第二のポリイソブチレン(第一のポリイソブチレンより小さい粘度平均分子量を有する)の割合は、約35%〜約44%を含む約33%〜約48%である。一つの態様において、接着層の全重量に対する、第二のポリイソブチレンの割合は、35%〜44%を含む33%〜48%である。
【0044】
C. 粘着性付与剤
上記のように、本明細書に記載された経皮組成物は、粘着性付与剤を含む。経皮組成物に用いられる粘着性付与剤は、接着性調製物の分野において公知のものから適切に選択されうる。粘着性付与剤は、例えば、ポリブテン、ロジン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、クロマン樹脂などでありうる。費用および優れた粘着性の面から、以下の化合物が適している:(i)約980〜約2000を含む約900〜約2900、または980〜2000を含む900〜2900の数平均分子量を有するポリブテン(例えば、1-ブテンポリマー、2-ブテンポリマー、1-ブテンと2-ブテンのコポリマー);および(ii)570〜710を含む500〜800を含む、約570〜約710を含む約500〜約860の数平均分子量を有する脂環式飽和炭化水素樹脂。上記(i)のポリブテンの数平均分子量が約900未満である場合、接着層は粘着性が増す傾向にあり、従って、取扱特性に関して問題をもたらす可能性があり、それが約2900を超える場合、粘着性付与剤の効果は現れにくく、接着層の粘着は減少する傾向にある。上記(ii)の脂環式飽和炭化水素樹脂の数平均分子量が約500未満である場合、接着層は粘着性が増す傾向にあり、それが約860を超える場合、適合性が劣るようになる。上記(ii)の脂環式飽和炭化水素樹脂の例には、限定されるわけではないが、ARCON P-70、ARCON P-900、ARCON P-100などのArakawa Chemical Industries, Ltd.により製造された市販されている水素化石油樹脂が挙げられる。
【0045】
数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法または蒸気圧オスモメトリー(V.P.O.)法により測定されうる。
【0046】
いくつかの態様において、経皮組成物の粘着性付与剤成分は、1種類または複数の種類の上記の粘着性付与剤の組み合わせを含む。
【0047】
いくつかの態様において、接着層の総重量に対する粘着性付与剤の割合は、約16%〜約28%を含む約15%〜約30%である。いくつかの態様において、接着層の総重量に対する粘着性付与剤の割合は、16%〜28%を含む15%〜30%である。粘着性付与剤の割合が約15%未満である場合、粘着が弱い可能性があり、それが約30%を超える場合、接着層は、望ましくないことに破壊へ向かう性質を示しうる。
【0048】
D. 透過促進剤
上記のように、本明細書に記載された経皮組成物は、透過促進剤(有機液体)を含む。本発明に用いられる透過促進剤は、それが、前記の異なる粘度平均分子量を有する2種類のポリイソブチレンおよび上記の粘着性付与剤に適合性である限り、特に限定されない。
【0049】
有用な透過促進剤の例には、限定されるわけではないが、脂肪酸アルキルエステル、分枝長鎖アルコールなどが挙げられる。例示的な脂肪酸アルキルエステルには、限定されるわけではないが、12個〜14個を含む12個〜16個の炭素原子を有する高級脂肪酸および1個〜4個の炭素原子を有する低級一価アルコールを含む、約12個〜約14個を含む約12個〜約16個の炭素原子を有する高級脂肪酸ならびに約1個〜約4個の炭素原子を有する低級一価アルコールを含む脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。上記の高級脂肪酸として、適切な例は、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、およびパルミチン酸(C16)である。いくつかの態様において、ミリスチン酸が用いられる。例示的な低級一価アルコールには、限定されるわけではないが、1〜4個の炭素原子を含む約1個〜約4個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖アルコールが挙げられる。具体的な例には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどが挙げられる。いくつかの態様において、イソプロピルアルコールが用いられる。いくつかの特定の態様において、用いられる好ましい脂肪酸アルキルエステルはイソプロピルミリステートである。例示的な分枝長鎖アルコールには、限定されるわけではないが、16〜22個または18〜20個の炭素原子を有するものを含む、約18個〜約20個を含む約16個〜約22個の炭素原子を有する飽和または不飽和長鎖アルコールが挙げられる。具体的な例には、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどが挙げられる。いくつかの態様において、イソステアリルアルコールおよび/またはオクチルドデカノールが用いられる。透過促進剤として長鎖アルコールを用いる特定の態様においては、分枝長鎖アルコールが用いられる。非分枝長鎖アルコールは、時に、ポリイソブチレンとの適合性が悪い場合がある。
【0050】
いくつかの態様において、経皮組成物の透過促進剤は、1種類または複数の種類の上記の透過促進剤の組み合わせを含む。
【0051】
透過促進剤として用いる適切な有機液体には、限定されるわけではないが、脂肪酸アルキルエステルおよび分枝長鎖アルコールが挙げられる。いくつかの態様において、イソプロピルミリステート、イソステアリルアルコール、および/またはオクチルドデカノールが用いられる。これらの態様は、そのような透過促進剤を含むスフェンタニル接着層の溶解度の増加に少なくとも一部起因しうる、有利なスフェンタニル吸収促進効果を示す。
【0052】
いくつかの態様において、透過促進剤は、脂肪酸アルキルエステルと分枝長鎖アルコールとの組み合わせを含む。そのような態様は、そのような有機液体におけるスフェンタニルの溶解度による有利な性質を有し、また皮膚透過性の増強、およびそのような接着層の良好な皮膚接着性を示しうる。特定の態様において、脂肪酸アルキルエステルおよび分枝長鎖アルコールの混合比は、これらの2つの有機液体成分の重量で、約1:0.3〜約1:4を含む約1:0.2〜約1:5でありうる。一つの態様において、脂肪酸アルキルエステルおよび分枝長鎖アルコールの混合比は、これらの2つの有機液体成分の重量で、1:0.3〜1:4を含む1:0.2〜1:5である。重量での(分枝長鎖アルコール:脂肪酸アルキルエステルの)混合比が約0.2未満である場合、スフェンタニルの溶解度は低くなる可能性があり、それが約5を超える場合、適用中および使用中の皮膚接着は、使用中に系の下および/または周りで生じる皮膚発汗により大幅に低下しうる。
【0053】
いくつかの態様において、接着層の総重量に対する、透過促進剤を含む有機液体の割合は、約20%以下である。有機液体の割合が約20%を超える場合、接着層の凝集は大幅に減少し、凝集破壊が容易に起こる傾向にある。
【0054】
E. 任意の添加剤
いくつかの態様において、接着層は、任意の成分として、他の添加剤を含んでもよい。任意の添加剤の例には、(1)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどのエステル、(2)ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンなどの高沸点を有する有機溶媒、および(3)ピロリドンカルボキシレートなどの吸収促進剤などが挙げられる。当業者は、経皮組成物の効果、例えば、適切な薬物送達および接着性能を維持するという原則に導かれて適切な添加剤を選択できる。いくつかの態様において、任意の成分としての添加剤の割合は、接着層の総重量の約15%以下、例えば15%以下である。
【0055】
接着層は任意の適切な厚さでありうる。いくつかの態様において、接着層の厚さは、一般的に、約30μm〜約300μmであり、約60μm〜約180μmを含む。一つの態様において、接着層の厚さは、60μm〜180μmを含む30μm〜300μmである。
【0056】
2. 支持体
上記のように、本明細書に記載された経皮組成物は支持体を含む。用いられる支持体は特に限定されず、経皮組成物に適した支持体は当技術分野において公知である。
【0057】
いくつかの態様において、支持体は、調製物の薬物(スフェンタニル)および他の成分に対して実質的に不透過性である。従って、例えば、いくつかの態様において、組成物は、支持体を通した漏出による接着層からのスフェンタニル、添加剤などの損失による調製物含有量の減少を被ることがない。例示的な支持体には、限定されるわけではないが、(1)ポリエステル、ナイロン、Saran(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、Surlyn(登録商標)、金属箔などの単一フィルム、または(2)用いられうるこれらおよび同様のものの積層フィルムが挙げられる。
【0058】
いくつかの態様において、支持体は、支持体と接着層の間の接着力(定着性)を向上させるために上記の材料から作製された非多孔性プラスチックフィルムおよび多孔性フィルムの積層フィルムである。この場合、接着層は多孔性フィルム側に形成されうる。そのような多孔性フィルムとして、接着層との定着性を向上させることができるものが用いられうる。具体的には、紙、織物、不織布、編物、機械的穿孔シートなどが用いられうる。有利な取扱特性などを有しうるいくつかの態様において、支持体は、紙、織物、および/または不織布を含む。
【0059】
多孔性フィルムは任意の適切な厚さでありうる。いくつかの態様において、多孔性フィルムは、10μm〜200μmを含む約10μm〜約200μmの厚さを有する。そのような態様は、定着性の向上、全体としての接着性調製物の良好な屈曲性、および良好な接着機能性などを示しうる。プラスター型調製物または圧力により接着する粘着型調製物などの薄い調製物の場合、10μm〜100μmを含む約10μm〜約100μmの厚さを有する多孔性フィルムが用いられうる。
【0060】
織物または不織布が多孔性フィルムとして用いられる場合、布重量は約5g/m2〜約30g/m2であり、約6g/m2〜約15g/m2を含みうる。一つの態様において、布重量は6g/m2〜15g/m2を含む5g/m2〜30g/m2である。
【0061】
いくつかの態様において、好ましい支持体は、1.5μm〜6μmを含む約1.5μm〜約6μmの厚さを有するポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)、および6g/m2〜12g/m2を含む約6g/m2〜約12g/m2の布重量を有するポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)の不織布の積層フィルムである。上記の接着層製剤と組み合わせてこの型のフィルムを含む支持体はいくつかの利点を提供する。例えば、支持体材料は、皮膚表面に適用された場合、組成物が、著しい不調和感を生じることなく皮膚表面の曲線および動きに従うことができるほどの適切な程度の屈曲性を提供する。
【0062】
いくつかの態様において、支持体は不透明または透明であり、実質的に透き通った、透明の、または半透明の経皮組成物を可能にする。これらの態様は、系の美的特徴の向上の利点を提供しうる。
【0063】
いくつかの態様において、支持体は印刷されているが、他の態様において、支持体は印刷されていない。
【0064】
これらの性質は、患者の応諾および患者の好みの基準に基づいて非常に望ましい。
【0065】
3.
いくつかの態様において、本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物または経皮組成物は、薬物送達を制御する、例えば、延長するための薬物放出制御膜を含む。薬物放出制御膜(例えば、速度制御膜)は、特に限定されず、経皮的吸収性接着性調製物(経皮組成物)からの薬物放出を制御する適切な膜は、当技術分野において公知である。例示的な薬物放出制御膜には、限定されるわけではないが、エチレン酢酸ビニルフィルム、微孔性フィルムなどが挙げられる。速度制御膜として用いられる例示的なエチレン酢酸ビニルフィルムは、膜の重量で、約4.5%〜約19%を含む約2%〜約30%の濃度で酢酸ビニルを含みうる。一つの態様において、酢酸ビニル濃度は、膜の重量で、4.5%〜19%を含む2%〜30%である。本発明の調製物において速度制御膜として用いられる例示的な微孔性フィルムは、0.01μm〜1μmを含む約0.01μm〜約1μmの細孔直径を有することができ、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、ポリテトラフルオロエチレンなどの化合物から作製されうる。薬物放出制御膜(速度制御膜としても知られている)の厚さは、任意の適切な厚さであることができ、一般的に、約20μm〜約100μmを含む約10μm〜約200μmである。一つの態様において、膜の厚さは20μm〜100μmを含む10μm〜200μmである。
【0066】
4. 剥離ライナー
本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物または経皮組成物は、使用まで接着層の接着表面を保護するためにそれに積層した剥離ライナーを有しうる。剥離ライナーは、それが剥離処理を受けることができ、十分な可剥性を有する限り、特に限定されない;そのような剥離ライナーは当技術分野において公知である。それらの例には、限定されるわけではないが、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルム、上質紙、グラシンなどの紙、上質紙、グラシンなどのラミネートフィルムが挙げられ、それらは、接着層と接触しうる表面へシリコン樹脂、フッ素樹脂などを適用する段階を含む剥離処理を受けている。剥離ライナーの厚さは、任意の適切な厚さであることができ、一般的に、約25μm〜約100μmを含む約10μm〜約200μmである。一つの態様において、剥離ライナーは25μm〜100μmを含む10μm〜200μmの厚さを有する。
【0067】
いくつかの態様において、剥離ライナーはポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)から作製され、それは有利なバリア性および費用優位性を提供しうる。特定の態様において、そのような剥離ライナーは、25μm〜100μmを含む約25μm〜約100μmの厚さを有する。
【0068】
5. 包装
いくつかの態様において、経皮的吸収性接着性調製物または経皮組成物は、保存、輸送などのために使用前までに包装材料に密封されている。包装は、任意の適切な形をなし、任意の適切な手段により達成されることができ、適切な包装材料および方法は当技術分野において公知である。包装方法は、例えば、経皮的吸収性接着性調製物の1シートまたは数枚のシートを重ね合わせる段階、それらを包装材料で包装する段階、および調製物を囲む部分を熱融着させる段階を含む。従って、例えば、経皮組成物は、包装材料の2つの層の間に置かれ、包装材料の一つまたは複数の縁が熱融着されうる。他の包装材料および方法もまた用いられうる。
【0069】
包装材料は特に限定されず、例えば、シートまたはフィルムでありうる。有利な包装および気密性を有しうるいくつかの態様において、包装材料は熱融着することができる。適切な包装材料の具体的な例には、ポリエチレン、Surlyn(登録商標)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、ポリアクリロリトリルコポリマー、ポリビニルアルコールコポリマーなどの熱融着特性を有するプラスチックシートを用いるものが挙げられる。ポリエステルフィルム、金属箔などのガス不透過性フィルムのラミネートは、接着性調製物に存在する活性成分であるスフェンタニルの揮発、散乱などを防ぐために用いられうる。
【0070】
包装材料は、任意の適切な厚さを有することができ、一般的に10μm〜200μmを含む約10μm〜約200μmの厚さを有する包装材料が典型的に用いられる。一つの態様において、最も内側の層に高バリア性を有するポリアクリロニトリルコポリマーを含む上記の包装材料が用いられる。いくつかの態様において、設計戦略は、接着性成分などのブリーディングにより引き起こされうるような、取扱特性(例えば、包装からの簡単な取り出し)の低下を防ぐために用いられうる。例示的な設計には、包装材料のエンボス加工、調製物と比較して前記のライナー部分(例えば、最も内側の層)を少し大きくするためのドライエッチング加工、接触領域を低減するようにブリスター成形により形成された包装などが挙げられる。そのような包装設計は当技術分野において公知である。典型的な使用の方法において、経皮的吸収性接着性調製物または経皮組成物を、使用直前に任意の包装から取り出し、任意の剥離ライナーを除去し、(露出した)接着性表面を皮膚表面へ接着させる。
【0071】
製造方法
本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物または経皮組成物は、当技術分野において公知の任意の手段により作製されうる。例えば、異なる粘度平均分子量を有する2種類のポリイソブチレン、粘着性付与剤、透過促進剤、任意の他の選択的添加剤、およびスフェンタニルをトルエンなどの適切な溶媒に溶解し、接着性溶液を得ることができる。接着性溶液を剥離ライナーへ塗布し、その後、乾燥させて、接着層を形成することができる。接着層を、その後、支持体へ積層させることができる。または、上記の接着性溶液を支持体に塗布し、乾燥させて、接着層を形成することができる。接着性溶液が厚く塗布される場合には、溶液は均一に乾燥されない可能性がある。従って、この問題を回避し、接着層の特定の望ましい厚さを保証するために、接着性溶液を、所望の厚さに達するまで、薄層で2回またはそれ以上、塗布してもよい。塗布と塗布の間、層を任意で乾燥させてもよい、または乾燥するようにさせておいてもよい。
【0072】
本発明のスフェンタニル調製物を用いる処置の方法
本発明の経皮的吸収性接着性調製物または経皮組成物は、麻薬性鎮痛を必要としている被験体を処置するのに有用である。例示的な処置方法において、本発明によるスフェンタニル調製物または経皮組成物は被験体の皮膚に適用され、治療的有効量のスフェンタニルの送達が達成される。本明細書に記載されたスフェンタニル調製物(例えば、経皮組成物)は、長期間、継続的な24時間のオピオイド投与を必要とする、および非ステロイド鎮痛剤、オピオイド併用薬剤、または即効型オピオイドなどの他の手段によって管理されることができない、持続性の中等度から重度の慢性疼痛を管理するのに特に有用でありうる。
【0073】
いくつかの態様において、前記方法は、例えば、週に1回、2回、または3回を含む週に約1回、約2回、または約3回、経皮組成物を適用する段階を含む。従って、例えば、第一組成物が適用され、約1日〜約3日後またはそれ以上後に、第二組成物が適用されうる。いくつかの態様において、第一組成物は、第二組成物が適用される前に除去される、または第二組成物の適用と実質的に同時に除去される。いくつかの態様において、追加のスフェンタニル経皮組成物は、最初の投与後、1〜6回、または必要に応じて何回でも、最初およびその後の組成物を除去して、または除去せずに、適用される。
【0074】
いくつかの態様において、スフェンタニル調製物または経皮組成物は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または7日間を含む約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、または約1週間まで(例えば、約7日間)、またはそれ以上、治療レベルのスフェンタニルを提供する。従って、例えば、組成物は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または7日間、またはそれ以上を含む約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、および約1週間、またはそれ以上の期間、被験体において治療レベルのスフェンタニルを提供するのに有効な量のスフェンタニルを含みうる。上記のように、新しい組成物は、処置に必要とされる期間、必要に応じて、7日間あたり約1回〜約3回、または約7回、適用されうる(例えば、新しい組成物は、週に約1回、2回、もしくは3回、または毎日、適用されうる)。
【0075】
いくつかの態様において、スフェンタニル経皮組成物は、1cm2あたり0.5、1、1.5、または2μg/hrのスフェンタニルを含む、組成物の表面積1cm2あたり約0.5μg/hrから約1μg/hr、約1.5μg/hr、または約2μg/hrまでのスフェンタニルを被験体に送達するのに有効な量のスフェンタニルを含む。特定の態様において、経皮組成物は、適用の持続期間、例えば、約1日から約1週間までの間、またはそれ以上、組成物の表面積1cm2あたり約0.5、約1、約1.5、または約2μg/hrのスフェンタニルの送達を維持するのに有効な量のスフェンタニルを含みうる。一つの態様において、経皮組成物は、適用の持続期間、例えば、1日から1週間までの間、またはそれ以上、組成物の表面積1cm2あたり0.5、1、1.5、または2μg/hrのスフェンタニルの送達を維持するのに有効な量のスフェンタニルを含む。経皮組成物は、最初の適用後の初めの24時間以内に、組成物の表面積1cm2あたり1μg/hrより多いスフェンタニルを送達するのに有効なスフェンタニルの量、および/または最初の適用後の初めの24時間後に、組成物の表面積1cm2あたり少なくとも1pg/mlの被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度を達成するのに有効な量を含みうる。
【0076】
上記のように、本明細書に記載された経皮組成物をヒト被験体へ適用した後、スフェンタニルは最初の適用後約30分間〜約2時間は血液中に検出されないこと、およびスフェンタニルは最初の適用後約6時間までに血液中に検出されない場合があることが見出されている。従って、例えば、被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度は、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後6時間以内に約2pg/mlより高く、例えば2pg/mlより高くに達しうる。ピーク血漿濃度(Cmax)は、本明細書に記載された経皮組成物の適用後、約24時間を含む約12時間から約72時間(Tmax)までの内に達成しうることも見出されている。
【0077】
いくつかの態様において、本発明の経皮組成物は、1cm2あたり1、5、10、15、20、25、もしくは30pg/mlを含む組成物の表面積1cm2あたり約1、約5、約10、約15、約20、約25、または約30pg/mlを含む、組成物の表面積1cm2あたり約1pg/mlから約30pg/mlまでの被験体におけるスフェンタニルのピーク血漿濃度に達する。一つの態様において、経皮組成物は、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、もしくは90pg/mlを含む約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、または約90pg/mlを含む、約30〜約90pg/mlの被験体におけるスフェンタニルのピーク血漿濃度に達するのに有効な量のスフェンタニルを含む。この態様の一つの特定の局面において、組成物は、2.7cm2を含む約2.7cm2を含む、約3cm2の表面積を有する。
【0078】
従って、例えば、組成物は、被験体におけるスフェンタニルの上記のピーク血漿濃度を達成するのに有効な量のスフェンタニルを含みうる。特定の態様において、被験体におけるピーク血漿濃度は、最初の適用から12〜72時間後、または24時間後を含む、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用から約24時間後を含む、約12〜約72時間後に達成される。
【0079】
以下の実施例は本発明を例証するために示される。しかしながら、本発明の精神および範囲は、これらの実施例に記載された特定の条件または詳細に限定されず、特許請求の範囲のみにより限定されるべきことが理解されているはずである。
【0080】
米国特許を含む本明細書に特定されたすべての参考文献は、全体として参照により明確に組み入れられている。
【0081】
実施例
本発明は、以下で実施例を参照することにより詳細に説明されているが、限定として解釈されるべきではない。以下において、「部分」および「%」は、それぞれ、「重量での部分」および「wt%」を意味する。
【0082】
実施例および比較例 - 試料の製造
以下の表3、表7、および表8に示された試料番号1〜23の混合比を有する組成物を、30%の溶質濃度を有する溶液を含む接着層を与えるようにトルエンに溶解した。この溶液を、表に示されているような乾燥後の接着層の重量を与えるように、シリコン剥離処理後のポリエチレンテレフタレート(PET)ライナーに塗布した。これを、熱風循環オーブンにおいて105℃で5分間、乾燥させ、接着層を提供した。
【0083】
ポリエステル接着剤でお互いに接着した2μmの厚さのPETフィルムおよびPET不織布(12g/m2)でできた支持体の不織布表面を、接着層に積層し、シート様経皮的吸収性接着性調製物、例えば、経皮組成物、を与えるように室温で2日間、寝かせた。実験例において、試料番号1および17が比較例である。
【0084】
試料番号24〜29を含み、かつ実験例5および表9に記載された組成物は、速度制御膜を含む多層系である。これらの組成物を、接着層を2つの部分に調製することにより調製した。上記のスフェンタニルを含む接着層を含む貯留層を、上記の様式で作製した。接触接着層を、剥離フィルム上へ溶媒和ポリイソブチレン組成物を被覆し、フィルムを乾燥させ、その後、被覆剥離フィルムを速度制御膜に積層した。貯留層および接触接着層を、貯留層の剥離ライナーを除去し、接触接着層の膜側に貯留層を積層することにより結合させた。
【0085】
この例において、接触接着層を不活性接着層として調製したが、この層を、任意で、スフェンタニルを含むように調製できる。
【0086】
実験例1(添加剤におけるスフェンタニルの溶解度)
スフェンタニル(0.1g)を測定し、表1に示された添加剤(1g)のそれぞれを加え、混合物を室温(約25℃)で30min、撹拌した。溶液を濾過し、濾液(0.1g)を正確に測定し、メタノールに溶解し、それに溶解したスフェンタニルの量をHPLCにより測定した。
【0087】
表1は、各添加剤におけるスフェンタニルの溶解度を示す。このデータに基づいて、イソプロピルミリステート(IPM:NIKKO CHEMICALS IPM-100)およびオクチルドデカノール(ODO:Cognis Co., EUTANOL(登録商標)G)を、経皮組成物に適しているとみなし、以下の試験を行うのに用いた。
【0088】
(表1) 添加剤(透過促進剤)におけるスフェンタニルの溶解度

溶解度は1gの添加剤に溶解しているスフェンタニルの量である(mg)。
【0089】
実験例2(3ヶ月後のマウスから摘出された皮膚の透過試験、最大透過速度の分析、および外観の評価)
1. マウスから摘出された皮膚の透過試験
上記の方法により作製された、表3の試料番号1〜18(表2に示された因子およびレベルの様々な組み合わせ)に示された組成物を有する経皮的吸収性接着性調製物を、マウスから摘出された皮膚を用いる以下の方法による透過試験に供した。試験について、細胞透過試験装置を用いた。
【0090】
各調製物を、試料を提供するためにφ6mmで一度に2個、打ち抜いた。皮膚は8週齢(雄)のマウスから摘出された。受容体溶液として、0.15mol/Lクエン酸-リン酸緩衝液を用いた。
【0091】
φ6mm(0.2826cm2)で打ち抜かれた調製物の1つのシートを、摘出された皮膚へ接着させた。摘出された皮膚を、拡散セルに、表面が上向きに接着性調製物と面して、そこに置くことにより設置した。受容体溶液を約2.5ml/hrで与え、拡散セルから排出された受容体溶液を、4、5、6、7、8、9、12、15、18、21、および24時間目における画分としてバイアル容器に回収した。回収後、重量を正確に測定した。回収された溶液のスフェンタニル濃度をHPLCにより測定し、透過量および透過速度を計算した。
【0092】
以下の「L18実験計画により予測分析」を、参照により具体的に組み入れられている2005年8月4日に出願された米国特許出願第11/196,935号に記載されているように、最初にフェンタニールについて行った。上記のように、スフェンタニルはフェンタニール類似体である。フェンタニールとスフェンタニルの間の関係に基づいて、L18実験計画においてフェンタニールについて以前に得られた結果は、スフェンタニルについて得られると予測されるものと非常に類似している、または同一であると予想されるだろうことは予期される。
【0093】
2. L18実験計画による予測分析
スフェンタニルの最大透過速度は、L18実験計画による望大特性に基づいた因子効果分析に適用されうる。表2は、因子(例えば、混合比、分子量、濃度)およびレベルを示し、表3は、L18直交表による組み合わせに基づいた18個の提案された試料を示し、表4は、各試料における予測される最大透過速度を示し、表5は予測される分散分析結果を示し(有意な因子がD(接着層のパーセントとしてのイソプロピルミリステート濃度)およびG(接着層のパーセントとしてのスフェンタニル濃度)であることを実証することが予想される)、表6は段階平均を示し、図1は概略図の形をとる表6の図解的因子効果を示す。表5において、因子A〜Gは、表2における制御因子A〜Gであり、Hおよびeは各因子にとって無関係な誤差であり、Tは全体の拡散であり、fは自由度であり、Sは平方和であり、Vは拡散である。表6において、因子A〜Gは表3における制御因子A〜Gであり、Hは因子にとって無関係な誤差であり、レベル1〜3は表2のレベル1〜3であり、表における数値は、各レベルにおける望大特性に基づいたSN比を示す。望大特性に基づいたSN比は以下の式により決定された:
SN比=-10xLog(1/y2)(db)、yは固有値である。
【0094】
図1における推定工程平均は、最も有効なレベルの組み合わせにより達成されると予想される効果の推定値である。図1において、下線を引かれたレベルは、工程平均の推定値を得るために用いられた。
【0095】
予測結果から、本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物または経皮組成物におけるスフェンタニルの皮膚透過性は、異なる分子量を有する2種類のポリイソブチレン、粘着性付与剤、および様々なレベルの皮膚透過性を達成する透過促進剤の比率を変化させることにより制御される。誤差(列H)と比較した場合、スフェンタニル濃度およびIPM濃度は、皮膚透過性へ有意な効果を生じることが予想される。
【0096】
L18実験計画による分析方法の詳細は、「Quality Engineering Course 4 Experiments for Quality Design, Genichi Taguchi, Japanese Standards Association」に従う。分析について、分析ソフトウェア「RIPSES for windows」RICOH RIPSES DEVELOPMENT G CO., Ltd.が用いられた。
【0097】
表2および表3における略語は、以下の意味を有する。
B80:Oppanol(登録商標)B80(BASF)ポリイソブチレン、粘度平均分子量820,000
B100:Oppanol(登録商標)B100(BASF)ポリイソブチレン、粘度平均分子量1,110,000
P100:ARKON(登録商標)P100(Arakawa Chemical Industries, Ltd.)粘着性付与剤、脂環式飽和炭化水素樹脂、平均分子量610
B12:Oppanol(登録商標)B12(BASF)ポリイソブチレン、粘度平均分子量55,000
IPM:IPM-100(NIKKO Chemicals)イソプロピルミリステート
ISO:(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)試薬イソステアリルアルコール
SUF:スフェンタニル
【0098】
(表2) 因子およびレベル

【0099】
表2において、B、C、およびEは混合比を示し、D、E、およびFは接着層の総重量に対する(%)を示す。
【0100】
(表3)


【0101】
表3において、各数値は混合wt%を示す。
【0102】
(表4) 3ヶ月後の最大透過速度(n=2平均)および外観の評価

【0103】
(表5)

【0104】
(表6)

【0105】
実験例3(凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮におけるインビトロ透過試験)
1. 凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮の透過試験
試料番号19〜22の組成物を有する経皮的吸収性接着性調製物(経皮組成物)を、上記方法により作製し、凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮の透過試験に供した。試験について、細胞透過試験装置を用いた。
【0106】
試料を提供するために、調製物をφ7.938mm(調製物適用面積:0.4946cm2)で打ち抜いた(一度に5個)。凍結保存した死体皮膚をその後、熱分離法を用いて表皮層を単離するように分離し、ヒト表皮を得た。受容体溶液として、0.01%アジ化ナトリウムを含む0.9%塩化ナトリウムを用いた。
【0107】
(透過試験方法)
φ7.938mm(0.4946cm2)で打ち抜かれた調製物の1つのシートを、凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮へ接着させた。表皮を、拡散セルに、表面が上向きに接着性調製物と面して、そこに置くことにより設置した。特定の量の受容体溶液を時の経過とともにサンプリングし、受容体溶液におけるスフェンタニルの濃度をHPLCにより測定し、流束を計算した。
【0108】
表7における略語は以下の意味を有する:
H300:PANALENE(登録商標)H300(BP Amoco Chemical Co.)ポリブテン、数平均分子量(GPC)1300
ODO:EUTANOL(登録商標)G NF(Cognis Co.)オクチルドデカノール
SUF、B80、B12、およびIPMは表2および表3に示されたものと類似している。
【0109】
(表7)

【0110】
表7において、各数値は混合wt%を示す。
【0111】
ヒト表皮を通してのスフェンタニルのインビトロ経皮流束の結果は、図2および3に示されている。これらの結果から、本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物は、効果的な経皮吸収性を示すことが確認され、経皮吸収は1週間続いた。
【0112】
実験例4(臨床研究)
1. 臨床研究
試料番号23の組成物を有する経皮的吸収性接着性調製物(経皮組成物)を上記方法により作製し、8人のヒト被験体における透過試験に供した。
【0113】
調製物を、試料を提供するために、2.7cm2に打ち抜いた。2.7cm2に打ち抜かれた1シートの調製物をヒト被験体に適用した。血液試料を時間とともに採取し、スフェンタニルの血中濃度をHPLC/MS/MSにより測定した。
【0114】
SUF、B80、B12、およびIPMは表2および表3に示されたものと類似している。H300およびODOは表7に示されたものと類似している。
【0115】
(表8)

【0116】
表8において、各数値は混合wt%を示す。
【0117】
結果は図4に示されている。これらの結果から、本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物は、調製物が適用されている間、十分な血中レベルを示すことが確認された。スフェンタニル調製物に関連した皮膚炎または他の皮膚副作用は観察されなかった。
【0118】
実験例5(凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮におけるインビトロ透過試験)
1. 凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮の透過試験
試料番号24〜29の組成物を有する経皮的吸収性接着性調製物(経皮組成物)を、上記方法により作製し、凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮の透過試験に供した。試験について、細胞透過試験装置を用いた。
【0119】
試料を提供するために、調製物をφ7.938mm(調製物適用面積:0.4946cm2)で打ち抜いた(一度に5個)。凍結保存した死体皮膚をその後、熱分離法を用いて表皮層を単離するように分離し、ヒト表皮を得た。受容体溶液として、0.01%アジ化ナトリウムを含む0.9%塩化ナトリウムを用いた。
【0120】
(透過試験方法)
φ7.938mm(0.4946cm2)で打ち抜かれた調製物の1つのシートを、凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮へ接着させた。表皮を、拡散セルに、表面が上向きに接着性調製物と面して、そこに置くことにより設置した。特定の量の受容体溶液を時の経過とともにサンプリングし、受容体溶液におけるスフェンタニルの濃度をHPLCにより測定し、流束を計算した。
【0121】
表9は以下を示す。
CoTran(登録商標)9702:(3M)制御された厚さエチレンアセテート膜、厚さ50.8μm、9%酢酸ビニル
CoTran(登録商標)9707:(3M)制御された厚さエチレンアセテート膜、厚さ50.8μm、4.5%酢酸ビニル
Celgard(登録商標)2400:(Celgard Inc.)微孔性ポリプロピレン膜、厚さ25μm
接触層:不活性接着層
【0122】
SUF、B80、B12、およびIPMは表2および表3に示されたものと類似している。H300およびODOは表7に示されたものと類似している。
【0123】
(表9)

【0124】
表9において、成分および被覆重量の各数値は、それぞれ、混合wt%およびmg/cm2を示す。
【0125】
ヒト表皮を通してのスフェンタニルのインビトロ経皮流束の結果は、図5に示されている。これらの結果から、本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物は、効果的な経皮吸収性を示すことが確認された。経皮吸収は1週間続いた。
【0126】
実験例6(臨床研究)
臨床研究
試料番号26の組成物を有する経皮的吸収性接着性調製物を上記方法により作製し、8人のヒト被験体における透過試験に供した。
【0127】
調製物を、試料を提供するために、2.7cm2組成物に打ち抜いた。1つの組成物(2.7cm2に打ち抜かれた1シートの調製物を含む)を各ヒト被験体に適用した。血液試料を時間とともに採取し、スフェンタニルの血中濃度をHPLC/MS/MSにより測定した。検出の閾値は約2pg/mlであった。
【0128】
SUF、B80、B12、およびIPMは表2および表3に示されたものと類似している。H300およびODOは表7に示されたものと類似している。
【0129】
結果は図6に示されている。これらの結果から、本明細書に記載された経皮的吸収性接着性調製物は、調製物が適用されている間、十分な血中レベルを示すことが確認された。制御膜の組み入れは、膜なしに設計された系と比較してスフェンタニルのより持続的かつ制御された送達を与えた。観察された、スフェンタニル調製物に関連した皮膚炎および他の副作用は最小であった。
【0130】
様々な改変およびバリエーションが、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の方法および組成物になされうることは当業者にとって明らかであると考えられる。従って、本発明は、添付された特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入るとの条件で、本発明の改変およびバリエーションを網羅することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】因子A〜G(例えば、分子量、混合比、濃度)のレベル1〜2、または1〜3におけるSN比変動(表7)を示す、実験例2の分析結果を反映する因子効果図である。
【図2】凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮を通してのスフェンタニルのインビトロ経皮流束を示す、実験例3の分析結果を反映するグラフである。
【図3】凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮を通してのスフェンタニルのインビトロ経皮流束を示す、実験例3の分析結果を反映するグラフである。
【図4】3日間の2.7cm2の接着性調製物(経皮組成物)の経皮適用後の血中スフェンタニル濃度を示す、実験例4の結果を反映するグラフである。
【図5】凍結保存した死体皮膚から得られたヒト表皮を通してのスフェンタニルのインビトロ経皮流束を示す、実験例5の分析結果を反映するグラフである。
【図6】7日間の2.7cm2の接着性調製物(経皮組成物)の経皮適用中および後の11日間に渡る血中スフェンタニル濃度を示す、実験例6の結果を反映するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む経皮組成物:
(a)支持体;および
(b)支持体の一つの表面上に積層した接着層であって、
亜飽和量のスフェンタニル、異なる粘度平均分子量を有する第一のポリイソブチレンと第二のポリイソブチレンとを含むポリイソブチレン混合物、粘着性付与剤、ならびに該ポリイソブチレン混合物および該粘着性付与剤に適合性の透過促進剤を含む、接着層。
【請求項2】
スフェンタニルが接着層の総重量の約1.5%〜約5.0%を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
第一のポリイソブチレンが約600000〜約1500000の粘度平均分子量を有し、第二のポリイソブチレンが約40000〜約85000の粘度平均分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
粘着性付与剤が、約900〜約2900の数平均分子量を有するポリブテンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
粘着性付与剤が、約500〜約860の数平均分子量を有する脂環式飽和炭化水素樹脂を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
ポリイソブチレン混合物が、重量で約1:1.2〜約1:2の第一のポリイソブチレン:第二のポリイソブチレンの混合比を含み、かつ第二のポリイソブチレンが第一のポリイソブチレンより小さい分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ポリイソブチレン混合物が、重量で約1:1.3〜約1:1.8の第一のポリイソブチレン:第二のポリイソブチレンの混合比を含み、かつ第二のポリイソブチレンが第一のポリイソブチレンより小さい粘度平均分子量を有する、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
粘着性付与剤が接着層の総重量の約15%〜約30%を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
透過促進剤が接着層の総重量の約20%以下を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
透過促進剤が脂肪酸アルキルエステルおよび分枝長鎖アルコールからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
透過促進剤がイソプロピルミリステート、イソステアリルアルコール、および/またはオクチルドデカノールを含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
透過促進剤が脂肪酸アルキルエステルと分枝長鎖アルコールとの組み合わせを含み、脂肪酸アルキルエステル:分枝長鎖アルコールの混合比が重量で約1:0.2〜約1:5である、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
透過促進剤が脂肪酸アルキルエステルと分枝長鎖アルコールとの組み合わせを含み、脂肪酸アルキルエステル:分枝長鎖アルコールの混合比が重量で約1:0.3〜約1:4である、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、および約1週間からなる群より選択される期間、治療レベルを提供するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
約1週間までの間、治療レベルのスフェンタニルを提供するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
約0.5mg〜約15mgのスフェンタニルを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
速度制御膜をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
速度制御膜がエチレン酢酸ビニルフィルムまたは微孔性フィルムである、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
エチレン酢酸ビニルフィルムが酢酸ビニルを約2%〜約30%の濃度で含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
速度制御膜が約0.01μm〜約1μmの細孔直径を有する微孔性フィルムである、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
速度制御膜がポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択される化合物を含む、請求項17記載の組成物。
【請求項22】
速度制御膜の厚さが約10μm〜約200μmである、請求項18記載の組成物。
【請求項23】
速度制御膜の厚さが約20μm〜約100μmである、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
支持体が多孔性フィルムに積層した非多孔性フィルムを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項25】
支持体が多孔性フィルムに積層した非多孔性フィルムからなる、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
支持体が織物、不織布、編物、紙、機械的穿孔シート、またはそれらのうちの2つもしくはそれ以上の組み合わせを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項27】
支持体が織物、不織布、編物、紙、機械的穿孔シート、またはそれらの組み合わせからなる、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
支持体が約5g/m2〜約30g/m2の布重量を有する織物または不織布を含む、請求項26記載の組成物。
【請求項29】
支持体がポリエステルフィルムおよびポリエステルの不織布からなる、請求項24記載の組成物。
【請求項30】
支持体が半透明または透明である、請求項1記載の組成物。
【請求項31】
スフェンタニル経皮組成物が約1cm2〜約30cm2のサイズを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項32】
剥離ライナーをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項33】
鎮痛を必要としている被験体を処置する方法であって、以下を含む第一のスフェンタニル経皮組成物を被験体の皮膚に適用する段階を含む、方法:
(a)支持体;および
(b)支持体の一つの表面に積層した接着層であって、
亜飽和量のスフェンタニル、異なる粘度平均分子量を有する第一のポリイソブチレンと第二のポリイソブチレンとを含むポリイソブチレン混合物、粘着性付与剤、ならびに該ポリイソブチレン混合物および該粘着性付与剤に適合性の透過促進剤を含む、接着層。
【請求項34】
スフェンタニル経皮組成物が、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、および約1週間からなる群より選択される期間、被験体において治療レベルのスフェンタニルを提供するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
スフェンタニル経皮組成物が約0.5mgから約15mgまでの量のスフェンタニルを含む、請求項33記載の方法。
【請求項36】
(a)支持体と(b)支持体の一つの表面に積層した接着層とを含む第二のスフェンタニル経皮組成物を被験体の皮膚に適用する段階をさらに含む方法であって、接着層が、亜飽和量のスフェンタニル、異なる分子量を有する第一のポリイソブチレンと第二のポリイソブチレンとを含むポリイソブチレン混合物、粘着性付与剤、ならびに該2種類のポリイソブチレンおよび該粘着性付与剤に適合性の透過促進剤を含む、請求項33記載の方法。
【請求項37】
第二のスフェンタニル経皮組成物を適用する段階の前に、第一のスフェンタニル経皮組成物を被験体の皮膚から除去する段階をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度が、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後約30分間〜約2時間の時間、約2pg/ml未満にとどまる、請求項33記載の方法。
【請求項39】
スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後6時間以内に、約2pg/mlより高い被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度を達成する、請求項33記載の方法。
【請求項40】
被験体におけるスフェンタニルのピーク血漿濃度が、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後約12時間から約72時間までに達せられる、請求項33記載の方法。
【請求項41】
被験体におけるスフェンタニルのピーク血漿濃度が、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後約24時間目に達せられる、請求項40記載の方法。
【請求項42】
スフェンタニル経皮組成物が約1cm2〜約30cm2のサイズを有する、請求項33記載の方法。
【請求項43】
スフェンタニル経皮組成物が、組成物1cm2あたり約1pg/mlから約30pg/mlの被験体におけるスフェンタニルのピーク血漿濃度を達成するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項33記載の方法。
【請求項44】
被験体におけるピーク血漿濃度が、スフェンタニル経皮組成物の最初の適用後約24時間目に達成される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
スフェンタニル経皮組成物が、少なくとも約1日間から約7日間までの適用持続期間に渡って、組成物1cm2あたり約0.5μg/hrから約2μg/hrのスフェンタニルを送達するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項33記載の方法。
【請求項46】
スフェンタニル経皮組成物が、少なくとも約1日間から約7日間までの適用持続期間、組成物1cm2あたりスフェンタニルが少なくとも約1μg/hrであるスフェンタニル送達速度を維持するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項33記載の方法。
【請求項47】
持続期間が約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、および約1週間からなる群より選択される期間である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
スフェンタニル経皮組成物が、最初の適用後の初めの24時間の間、組成物1cm2あたり少なくとも1μg/hrのスフェンタニルを送達するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項33記載の方法。
【請求項49】
スフェンタニル経皮組成物が、最初の適用後の初めの24時間後に、組成物1cm2あたり少なくとも1pg/mlの被験体におけるスフェンタニルの血漿濃度を達成するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
スフェンタニル経皮組成物が、約30pg/ml〜約90pg/mlの被験体におけるスフェンタニルのピーク血漿濃度を達成するのに有効な量のスフェンタニルを含む、請求項33記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−528990(P2009−528990A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555290(P2008−555290)
【出願日】平成19年2月12日(2007.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/003630
【国際公開番号】WO2007/095147
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(508245404)アヴィバ ドラッグ デリバリー システムズ (1)
【Fターム(参考)】