説明

スプール弁

【課題】ハウジング内に少なくとも2つの接続孔が形成され、これらの接続孔がスライド通路内に開口し、該スライド通路内で軸方向に移動可能なスプールを有し、該スプールが少なくとも2つのガイド区分と、貫流横断面を開閉するための少なくとも1つの制御縁とを有しており、前記接続孔のうちの第1の接続孔が消費器に作用接続可能であり、第2の接続孔が圧力源に作用接続可能である形式の、オートマチックトランスミッションを制御するスプール弁を改良して、ハウジングの構成を簡単にする。
【解決手段】少なくとも1つの前記接続孔4が、スライド通路3を越えて延在する盲孔6として構成され前記ガイド区分のうちの、前記制御縁14,27を有する第1のガイド区分9が、前記盲孔6に配属され、前記第1のガイド区分9の外周面に少なくとも1つの環状溝15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のオートマチックトランスミッションを制御するためのスプール弁であって、ハウジングを有しており、該ハウジング内に少なくとも2つの接続孔が形成されていて、これらの接続孔がスライド通路内に開口しており、スライド通路内で軸方向に移動可能なスプールを有しており、該スプールが少なくとも2つのガイド区分と、貫流横断面を開閉するための少なくとも1つの制御縁とを有しており、前記接続孔のうちの第1の接続孔が消費器に作用接続可能であり、第2の接続孔が圧力源に作用接続可能である形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べた形式のスプール弁は、従来技術により公知である。スライド通路内でスプールを軸方向にスライドさせることによって、少なくとも1つの制御縁を用いて貫流横断面が開放又は閉鎖されるか、若しくは貫流横断面の大きさが規定される。この場合、スプールは、スライド通路内で少なくとも2つのガイド区分によってガイドされ、これらのガイド区分は同時に、スライド通路の内壁と気密に協働する。従って、スプールはピストンと同様に構成されていて、例えば直接的に電磁式に操作されるか、又は特に液圧式のパイロット制御圧力を介して操作される。貫流横断面を正確に調節するために、制御縁の精度が重要となる。さらに、スプールは小さい力でスライドさせることができ、しかも特に、全スライドストロークに亘って一様な摩擦を有していることが重要となる。スプールに半径方向に作用する液圧力によるスプールの傾き又は高い摩擦を避けるために、圧力補償を行うための様々な可能性が公知である。例えばドイツ連邦共和国特許公開第350577号明細書又はドイツ連邦共和国特許第4324589号明細書によれば、接続孔の領域内において、ケーシングの背後に環状の溝を形成し、各接続箇所のために互いに向き合い、かつ合致し合う孔を設け、同じ圧力で負荷し、それによって圧力が補償されるようになっていることが公知である。しかしながらこの場合、圧力若しくは液圧媒体を、相応の管路を介してすべての孔に供給しなければならないので、特にハウジングは、特に大きい構造スペースを必要とする複雑な形状のものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第350577号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第4324589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、以上のような従来技術における欠点を取り除いたスプール弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるスプール弁は、少なくとも1つの接続孔が、スライド通路を越えて延在する盲孔として構成されており、ガイド区分のうちの、制御縁を有する第1のガイド区分が、前記盲孔に配属されていて、前記第1のガイド区分の外周面に少なくとも1つの環状溝が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本明細書において盲孔とは、両側が開放しているのではなく、片側がハウジングの材料内で終わっている孔のことである。盲孔は、スライド通路の一方側からスライド通路を横切って延在していて、スライド通路の他方側のハウジング内で終わっている。これによって、接続側とは反対側の、スライド通路の側に室が形成される。盲孔に配属され、かつ有利な形式で少なくとも閉じた貫流横断面においてほぼこの盲孔内に位置する第1のガイド区分は、その外周面に環状溝を有している。環状溝は、構成部分の全外周、有利にはピストン状のスプールの第1のガイド区分の全外周に亘って延在している。ガイド区分がハウジングと気密に当接している間、環状溝は通路を提供し、この通路を通って、媒体有利には液圧媒体が、盲孔の接続側から、この盲孔とは反対側に位置する室に達する。これによって、接続側及び盲孔の室内に、同じ圧力が形成される。この圧力は、第1のガイド区分に互いに反対側から作用する。盲孔は、スライド通路の両側で有利には同じ直径を有しているので、半径方向圧力補償が得られる。何故ならば、スプールの両側に同じ圧力が作用するからである。このような有利な構成によって、小さい摩擦力を有し、スライド通路内におけるスプールの傾きを確実に阻止するスプール弁が得られる。
【0007】
環状溝は、前記スプールの各位置、特にスプールの各シフト位置において少なくとも部分的に前記盲孔内、若しくは盲孔の領域内に位置している。これによって、スプールの各位置で前記半径方向補償が得られる。スプールの最大移動位置は、有利な形式で、ハウジングの軸方向ストッパによって形成されており、軸方向ストッパは、ハウジング自体によって形成されるか、又は例えばスライド通路内に挿入された固定リングによっても形成され得る。
【0008】
有利な形式で、盲孔の直径は、スライダ通路の直径よりも大きい。これによって、盲孔の接続側において、流体を流入若しくは流出させるための大きい貫流横断面及び半径方向圧力補償が迅速に得られる。
【0009】
また有利な形式で、スプール弁は圧力制御式のスプール弁として構成されている。このために、特に有利にはスプール内に圧力補償通路が形成されており、該圧力補償通路は、盲孔に配属され、かつ特に前記環状溝内に開口する少なくとも1つの半径方向孔と、前記スプールの軸方向若しくは端部側の端面から前記半径方向孔に通じる軸方向孔とを有している。スライダ通路は、スプールの移動運動を可能にするために、スプールよりも長く構成されている。またスプールの一端部に、スプールを操作するための手段が作用し、これに対してスプールの他方の端部は、スライダ通路内に自由に位置している。有利な形式でスプールの自由端部の端面に通じる圧力補償通路によって、スプールとハウジングとの間に形成された室(この室内に軸方向孔が開口している)と、盲孔の接続部との間の圧力補償が得られる。第1の接続孔が盲孔として構成されていれば、圧力制御弁若しくは圧力制御式のスプール弁が形成される。単に1つの半径方向孔だけが設けられている場合、この半径方向孔は、有利な形式で、スプール弁全体を貫通して延在している。選択的に、2つ又はそれ以上の半径方向孔が設けられていて、これらの半径方向孔が、互いに所定の角度を成して交差し合っていてもよい。例えば2つの半径方向孔が設けられている場合、これら2つの半径方向孔は、圧力補償通路を形成するために、互いに90゜ずらされていて、軸方向孔内で交差し合っている。
【0010】
選択的な実施例によれば、圧力補償通路の軸方向孔内にピンが軸方向に移動可能に配置されており、該ピンはその一端部がハウジングと協働するようになっている。このピンは、スプールのガイド区分のように、ハウジングの軸方向孔内に有利な形式で半径方向に気密に位置している。有利には、このスプール弁は、パイロット制御圧力を介して制御されるスプール弁である。従ってスプールは、室とは反対側が、特に液圧式のパイロット制御圧力によって、操作のために押圧される。この場合、有利には、軸方向孔内で移動可能なピンの横断面は、パイロット制御圧力によって押圧される、スプールの横断面よりも小さいので、スプールにおける力の釣合は、面比に反比例する圧力比によって得られ、これによって、盲孔内の圧力とパイロット制御圧力との間で液圧的な増圧が得られる。液圧式のパイロット制御圧力に対して選択的に、スプールは、例えば電磁式のアクチュエータによって直接操作される。この場合も、上記のような液圧式の増圧が可能である。特に有利には、ピンは、有利な形式でスプールの自由端部に被せ嵌め可能な組立補助エレメントによって、軸方向孔内で保持されるようになっているので、ピンのための紛失防止手段が提供され、この紛失防止手段によって、スプール弁の組立が容易に行われる。
【0011】
有利な形式で、第1の接続孔は盲孔として構成されている。特に有利には、第1の接続孔は第1の制御縁と協働し、この際に、前述のように、第1の制御縁は第1のガイド区分に設けられている。これによって、消費器のための開放又は閉鎖される貫流横断面は、第1のガイド区分と第1の接続孔との交差位置によって規定される。
【0012】
本発明の有利な実施態様によれば、ハウジングが第3の接続孔を有していて、該第3の接続孔は低圧部特に液圧タンクに作用接続可能であり、該第3の接続孔は、軸方向で見て、前記第1の接続孔の、前記第2の接続孔と反対側に位置している。これによって、ハウジング内に3つの接続孔が設けられており、これら3つの接続孔は、軸方向で見て相前後して位置していて、第1の接続孔が第2の接続孔と第3の接続孔との間に位置している。
【0013】
有利な形式で、スプールの前記第1のガイド区分は、第2のガイド区分と第3のガイド区分との間に配置されていて、別の貫流横断面を開閉するための第2の制御縁を有しており、該第2の制御縁が前記第1の接続孔と協働する。これによって、ガイド区分は、それぞれ第1の接続孔と協働する、第1の制御縁も第2の制御も有している。第1のガイド区分がどの方向でスプールによって軸方向で移動せしめられるかに応じて、1つの貫流横断面又は別の貫流横断面が開放若しくは閉鎖される。残りのガイド区分は、ガイド及びシールのためだけに用いられ、特別な制御縁を有していなくてもよい。何故ならば、それぞれの貫流横断面は、第1のガイド区分若しくはその位置だけによって規定されるからである。これによって、スプール及びスプール弁の製造が簡略化され、製造コストが安価になる。
【0014】
本発明によればさらに、スプールが前記ガイド区分間にそれぞれ1つの、直径の減径された接続部分を有しており、これらの接続区分がそれぞれ、スプールの各位置において第2の接続孔若しくは第3の接続孔の領域内に少なくとも部分的に位置している。スプールが2つのガイド区分だけを有している場合、これら2つのガイド区分を接続する接続区分が、スプールの各位置において、第2の接続孔の領域内に少なくとも部分的に位置するので、常に半径方向圧力補償が行われる。これと同じことは、3つのガイド区分を有する実施例のためにも当てはまる。この場合、常に半径方向圧力補償を保証するために、スプールの各位置において、一方の接続区分が第2の接続孔の領域内に少なくとも部分的に位置し、また他方の接続区分が第3の接続孔の領域内に少なくとも部分的に位置している。
【0015】
これによって全体的に、シフト行程に亘ってスライダ通路内でのスプールの確実な移動若しくはシフトが、特に均一な小さい摩擦力によって可能であり、しかも小さい構造スペースしか必要としない、簡単かつ安価製造可能なスプール弁が得られる。半径方向圧力補償を確実に実施するために、互いに向き合う複数の孔を避けることによって、ハウジングは全体的に簡単に構成することができる。この場合、特にハウジングの一方側だけに、複数の接続孔の夫々に通じる複数の供給部を設ければよい。複数の接続孔を設けることによって、スプールの操作時にまず小さい貫流横断面だけが開放される微調整縁部が提供される。
【0016】
以下に図面を用いて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1A及び図1Bは、それぞれ異なる作動位置にある、第1実施例によるスプール弁の部分的な断面図である。
【図2】図2A及び図2Bは、それぞれ異なる作動位置にある、第2実施例によるスプール弁の部分的な断面図である。
【図3】図3A、図3B及び図3Cは、それぞれ異なる方向から見た、第3実施例によるスプール弁の部分的な断面図である。
【図4】図4A及び図4Bは、それぞれ異なる方向から見た、第4実施例によるスプール弁の部分的な断面図である。
【図5】第5実施例によるスプール弁の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1A及び図1Bは、それぞれ異なる作動状態における、第1実施例によるスプール弁1を示す。スプール弁1は、ハウジング2を有していて、該ハウジング2はスライド通路3を有している。スライド通路3は、1つの直径を有する簡単な孔として構成されているので、有利な形式で、小さい公差を有する、簡単かつ安価に製造可能なスライド通路3が得られる。スライド通路3内に、互いに相並んで配置された2つの接続孔4,5が、有利には半径方向に開口している。接続孔4は消費器に作用接続可能であり、接続孔5は液圧媒体のための圧力源に作用接続可能である。この場合、第1の接続孔4は、盲孔6として構成されていて、この盲孔6は、スライド通路3内を貫通してハウジング2の材料内で終わるように延在している。盲孔6若しくは第1の接続孔4は、スライド通路3の一方側で接続側を形成していて、スライド通路3の他方側で半径方向圧力補償室7を形成しており、該半径方向圧力補償室7の機能については後述されている。
【0019】
スライド通路3内に、スプール8が軸方向摺動可能に配置されている。スプール8は、第1のガイド区分9と第2のガイド区分10とを有しており、これらのガイド区分9,10は、接続区分11によって互いに堅固に結合されている。有利な形式で、ガイド区分9及び10は、接続区分11にそれぞれ一体的に構成されている。ガイド区分9及び10の直径は、スライド通路3の内径にほぼ相当しているので、ガイド区分9及び10は、スライド通路3内においてガイドされ、かつ半径方向でシールされている。接続孔4,5に関連して、ガイド区分9,10は互いに、軸方向で見て、接続孔4,5間の間隔よりも大きい間隔を保って配置されている。スライダ通路3は、一端部が開放していて、他端部にスプール8のための軸方向ストッパを有している。この軸方向ストッパは、ハウジング2によって形成され、矢印12方向におけるスプール8の最大ストロークを制限している。この軸方向ストッパに続いて、先細りした孔が設けられており、従ってスプール8とハウジング2との間に室22が形成されている。スプール弁8が矢印12方向でハウジング2の軸方向ストッパまでスライドされている、図1Aに示した最大移動位置において、接続孔4及び5が互いに流体技術的に接続されている。接続区分11は、ガイド区分9及び10の直径よりも小さい直径を有しているので、ガイド区分9と10との間に環状の室13が形成されていて、この室13は、図示の最大移動位置において2つの接続孔4及び5と接続している。
【0020】
第1のガイド区分9に、第1の制御縁14が設けられており、この第1の制御縁14は、貫流横断面を開閉するために第1の接続孔4と協働する。図示されているように、接続孔4とスライド通路3との間の貫流横断面は、スプール8の軸方向位置に応じて、公知の形式で調節される。
【0021】
ガイド区分9は、さらに環状溝15を有しており、この環状溝15の外周面は、スプール8の各位置において少なくとも部分的に盲孔6内若しくは第1の接続孔4内に位置するように、構成されている。これによって、盲孔6の接続側並びに半径方向圧力補償室7との間に常に流体技術的な接続が保証されるようになっている。環状溝15及び半径方向圧力補償室7によって、ガイド区分9は互いに反対側が同じ圧力で負荷される。言い換えれば、環状溝15及び半径方向圧力補償室7によって、スプール8特にガイド区分9のための半径方向圧力補償が得られる。
【0022】
スプール8が矢印12方向とは逆方向に移動すると、図1Aに示した開放された貫流横断面は、図1Bに示したように縮小されるか、又はスプール8がさらに移動することによって閉鎖される。貫流横断面が閉じられた状態においても、環状溝15及び半径方向圧力補償室7によって、ガイド区分9のための半径方向圧力補償が得られる。スプール弁1の有利な実施態様によれば、特にスプール8がスライド通路3内で傾くことは、効果的に阻止される。さらにまた、スプール8が移動する際の摩擦力は、全シフト行程若しくは全ストロークに亘って小さく維持される。接続孔4を、スライド通路3を越えて延在する盲孔6として構成することによって、従来一般的である解決策とは異なり、スライド通路3の両側に互いに向き合う2つの孔を設ける必要はなく、またこれらの孔に通じるそれぞれ1つの供給管路を設ける必要もない。これによって、従来の解決策と比較して、存在するスプール弁1の取り付けスペース並びに製造費用は低減された。
【0023】
図示の実施例では、スライド通路3は、室22とは反対側で、栓16によって気密に閉鎖されており、栓16とスプール8との間に、この栓16及びスプール8にプリロード(予備荷重)をかける押圧ばね17が嵌め込まれており、この押圧ばね17は、有利な形式でコイルばねとして構成されていて、スプール8を矢印12方向でその最大移動位置に押し付けている。スライダ通路3は、押圧ばね17の領域内で、孔、通路等によって公知の形式で無圧に保たれているか、若しくは無圧のレベル特にタンクに接続されているので、ガイド区分10における漏れによって、スライダ通路3の押圧ばね17の領域内で圧力が上昇することはない。選択的に、スプール8を磁気的又は液圧式のパイロット制御圧によって操作することも考えられる。
【0024】
さらにスプール8内に圧力補償通路18が設けられており、該圧力補償通路18は、ガイド区分9を通る少なくとも1つの半径方向孔19と、該半径方向孔19内に開口する軸方向孔20とから形成される。軸方向孔20は、半径方向孔19から、スプール8若しくはガイド区分9の一端部側の端面21まで達していて、ここで、ハウジング2及びガイド区分9によって形成された室22内に開口している。半径方向孔19は、ガイド区分9の環状溝15の領域内でスプール8全体を通って延在している。これによって、室22は、圧力補償通路18を介して常に接続孔4に接続されている。接続孔5から室13を介して接続孔4に達する圧力は、圧力補償通路18を介して室22に達し、ここで、押圧ばね17のばね力に抗する押圧力を生ぜしめる。この押圧力が、押圧ばね17のばね力を越えると、ガイド区分9は制御縁14で以て接続孔4を閉鎖する。例えば接続孔4における漏れによって圧力が低下すると、室22内の圧力が低下し、それによって押圧力は減少され、スプール8は押圧ばね17のばね力によって矢印12方向に移動せしめられ、それによって制御縁14において、接続孔4から接続孔5への接続が開放され、接続孔4内の圧力が再び上昇せしめられる。それによって圧力制御式のスプール弁1が提供される。
【0025】
図2A及び図2Bは、スプール弁1の第2実施例を示す。この場合、以下では、前記実施例に記載された部材と同じ部材には同一の符号が付けられており、従って同一の符号が付けられた部材については、前記実施例が参照される。以下では、前記実施例との主な相違点について説明する。
【0026】
図示の実施例では、ハウジング2が第3の接続孔23を備えており、該第3の接続孔23は、接続孔4の、接続孔5とは反対側に設けられており、従って接続孔4は、接続孔5と接続孔23との間に配置されている。スプール8は第3のガイド区分24を有しており、該第3のガイド区分24は、接続区分25を介して、ガイド区分9に特に一体的に接続されている。軸方向孔(圧力補償通路)18は、少なくとも1つの半径方向孔19から接続区分25及びガイド区分24を貫通して延在している。従って、接続孔4は、圧力補償通路18を介して室22に流体技術的に接続されている。この場合、端部側の端面21は、ガイド区分24に設けられている。接続区分11と同様に、接続区分25も、ガイド区分24及び9と比較して縮小された直径を有しているので、ガイド区分24とガイド区分9との間に環状の室26が形成されている。スプール8の最大シフト行程は、前述のように、スライド通路3で一端部がハウジングのストッパによって制限されていて、他端部が固定リング28によって制限されている。
【0027】
ガイド区分9はさらに第2の制御縁27を有しており、この第2の制御縁27は、別の貫流横断面を開放又は閉鎖するために、盲孔6と協働する。スプール8及び特に環状溝15は、環状溝15が常に盲孔6の領域内に位置するように配置若しくは構成されているので、接続側から圧力室7への流体技術的な接続が常に保証される。ガイド区分10及び24は、スプール8の各運転位置において、室13及び26が、接続孔23若しくは5と接続されるように、ガイド区分9から間隔を保って配置されている。
【0028】
スプール8の、端面21とは反対側に設けられた端部側の端面29は常に室30と接続されており、該室30はパイロット制御圧力に調節され、このパイロット制御圧力は有利には電磁操作式の弁によって制御される。
【0029】
図2Aに示した運転位置において、接続孔4は液圧式に、室26を介して接続孔23と接続されていて、圧力補償通路18を介して室22と接続されている。接続孔23は、低圧部特に液圧タンクに作用接続可能である。これによって、接続孔4と室22とはタンク、つまり無圧に接続されている。この状態で、室30内には周囲圧力が満たされている。接続孔5内及び室13内に存在する、圧力源の圧力は、スライド通路3内でガイド区分9及び10によってそれぞれギャップシールを用いてシールされている。ガイド区分9及び10のギャップシールを介した漏れは、接続孔23を介してタンクに達する。室13内の面は液圧式に補償されているので、スプール8は圧力源の圧力によって動くことはない。
【0030】
室30内のパイロット制御圧力が、電磁操作式の弁を制御することによって高められると、発生した押圧力を介して、スプール8は矢印12で左方向にシフトせしめられる。この際に、まずガイド区分9の制御縁27によって、接続孔4が室26から分離される。矢印12方向でさらに移動せしめられると、ガイド区分9はその第1の制御縁14が、接続孔4の領域内で移動し、それによって接続孔4を室13に接続する(図2B参照)。これによって圧力源は消費器に接続され、接続孔4内の圧力は、圧力源による圧力に応じて上昇する。それと同時に、圧力は圧力補償通路18を介して室22内に伝達され、この室22内で同様に圧力が形成される。室22内の圧力は、ガイド区分24の端面21に作用し、室30内のパイロット制御圧力によってガイド区分10の端面29において形成される圧力が前記室22内の圧力よりも小さい場合に、スプール8を矢印12方向に抗してシフトさせる。これによって、接続孔4と室13との間の接続が再び遮断される。
【0031】
例えば漏れ作用によって接続孔4内の圧力が低下すると、室22内の圧力も低下せしめられ、これによってスプール8に過剰な力が作用し、スプール8を再び矢印12方向に移動させる。これによって、接続孔4と室13との間の貫流横断面は再び開放せしめられ、接続孔5若しくは圧力源との接続が得られ、接続孔4内の圧力は再び上昇する。これに対して室30内のパイロット制御圧力が低下せしめられると、矢印12の作用方向とは逆方向に過剰な力が作用し、それによって接続孔4と室26との間の貫流横断面は開放され、接続孔4とタンクとの間で圧力補償が得られる。接続孔4と室26との間の別の貫流横断面若しくは、接続孔4と室13との間の貫流横断面の開閉は、接続孔4内の圧力を調整することによって得られる。これによって、接続孔4に、作業圧としての調整された圧力が提供される。
【0032】
ガイド区分9並びに接続孔4は、スプール弁1の全制御縁14,27を形成する。これに対して、ガイド区分10及び24並びに接続孔5及び23は、制御縁を備えていないので、製造時には、ガイド区分9における制御縁14及び17のための並びに接続孔4のための公差だけを考慮すればよい。これによって、製造は簡略化され、費用は安価になる。貫流横断面を開放する際には、接続孔4の円形の形状によって、まず小さい円形区分だけが開放され、より大きいストロークによって始めて貫流横断面は著しく大きくなるので、追加的な構造的手段又は製造技術的な手段を必要とすることなしに、微調整縁部の機能が得られる。
【0033】
環状溝15及び半径方向圧力補償室7によって、接続孔4の圧力は常に補償される。この圧力補償によって、接続孔4内の圧力が一方側ではスプール8に作用することはなく、従って、発生した押圧力を介してスプール8に傾倒力若しくは垂直力が作用することなく、ひいては高い摩擦力が発生することもない。スプール8の各運転位置において盲孔6の領域内に位置する環状溝15を備えた有利な構成によって、簡単かつ安価な圧力補償機能が確実に得られる。
【0034】
図2A及び図2Bを用いて、環状溝15の位置のための前提条件について説明する。図2Aに示されているように、環状溝15及びガイド区分9は、スプール8が固定リング28に当接している時に接続孔4の縁部からの制御縁27の間隔s1がゼロより大きくなるように、寸法設計されなければならない。確実な圧力制御を保証するために、接続孔4と室22との流体接続が常に確実に得られるようにする必要がある。このために、半径方向孔19が有利な形式で環状溝15内に開口している。特に、スプール8がハウジングのストッパに当接している他方の極端な位置(図2B参照)において、接続孔4の孔直径Dは、接続孔4と環状溝15との間に形成された貫流横断面の幅s2と、環状溝15から制御縁14までのガイド区分9の残りの領域の幅Iとの合計よりも大きくなるように、寸法設計されなければならない。従ってD>I+s2が当てはまり、この場合、s2>0である。
【0035】
別の実施態様は、図3A〜図3Cに示されている。図3Aはスプール弁1の概略的な縦断面図を示し、図3Bは接続孔4,5及び23を上から見たハウジングの平面図を示し、図3Cは半径方向孔19の領域内のスプール弁1の横断面図を示す。
【0036】
第3実施例によれば、接続孔4の直径は、スライド通路3を形成する孔の直径よりも大きく選定されている。これによって、環状溝15の領域内での圧力補償のためのスペース、及び流体を接続孔4に向かって流入若しくは流出させるために提供される貫流横断面も、図3Bの付加的なスペース領域31a及び31bに示したように、著しく増大される。これによって改善された圧力補償機能が得られる。接続孔4の充填又は排出、及び有利には接続孔4に接続された、自動車のクラッチの充填又は排出は、このような増大された貫流横断面によって改善され、特に促進される。接続孔4の迅速な充填及び排出、若しくは接続孔4内の迅速な増圧及び減圧は、特に自動車のためのオートマチックトランスミッションの制御装置内でのスプール弁の機能のために重要である。
【0037】
図4A及び図4Bは、スプール弁1の別の実施例について記載されており、この実施例は前記実施例に対して、第3の接続孔23は設けられているが、第3のガイド区分24は設けられていない点で異なっている。図4Aはスプール弁1の縦断面図を示し、図4Bは、B−B線に沿ったスプール弁1の横断面図を示す。さらに、圧力補償通路18の軸方向孔20内に、ピン32が軸方向摺動可能に支承されており、該ピン32は、軸方向孔20と協働して、接続孔4と、接続孔23が開口している室22との間のギャップシールを形成する。室22内のピン32の一方の端面側は周囲圧力若しくはタンク圧力によって負荷され、かつ/またはハウジングに当接していて、ピン32の他方の端面側は接続孔4内の圧力によって負荷されるので、スプール8に矢印12とは逆方向の作用する押圧力が生ぜしめられる。この押圧力は、接続孔4内若しくは半径方向孔19内の圧力に、ピン32の横断面を掛け算して算出される。ピン32の横断面は、スプール8のガイド区分10の横断面よりも小さいので、スプール8における力の釣合は、面積比に逆比例した圧力比によって得られる。これによって、接続孔4内の圧力が室30内の圧力に対して液圧的に増圧される。
【0038】
この液圧的な増圧機能によって特に、スプール8を、電磁弁によって励磁された室30内のパイロット制御圧力によって動かすか若しくは操作するだけではなく、スプールに直接作用する電磁操作式のアクチュエータによって操作することもできる。つまり、スプール8を直接制御することもできる。このために、有利な形式で端面29に、マグネットアンカがパイロット制御圧の押圧力と同じ機械的な力を直接作用させる。この場合、ガイド区分10における漏れによって、磁気力に対する妨害値を形成する圧力が室30内に形成されることがないように、室30は無圧のレベル(タンク)に接続されている。このような構成は、別の実施例において記載された、液圧式の増圧機能を有していないスプール弁のためにも適用することができる。
【0039】
図5は、スプール弁1の第5実施例を示す。この第5実施例によるスプール弁1は、前記実施例のものとは異なり、組立補助部材33が設けられている。組立補助部材33は杯状に構成されていて、スプール8の自由端部34に遊びを保って被せ嵌めることができる。このために、スプール8の自由端部は半径方向の係止突起35を有していて、組立補助部材33は、前記係止突起35に対応する半径方向の対抗突起36を有している。有利な形式で、組立補助部材33は、少なくとも対抗突起36の領域で以て弾性的に変形可能であるので、対抗突起36は係止突起35を越えてスライドせしめられ、係止突起35の後ろの係止位置に達する。組立補助部材33は、スプール8の取り付け前及び取り付け中における、ピン32のための紛失防止機能を有している。スプール8とピン32と組立補助部材33とは、スライド通路3内に挿入される1つの仮組立群を形成している。組立補助部材33は有利にはプラスチック射出成形部分として構成されている。スライド通路3内に挿入する際に、組立補助部材33は、減径された孔直径を有する領域37内に挿入され、スプール8の自由な端面を介して、図5に示したように、スライド通路3の底部までスライドせしめられ若しくは位置決めされる。組立補助部材33並びに領域37は、プレス嵌めを形成する直径を有しているので、組立補助部材33は図示の位置で摩擦結合(摩擦による束縛)式に固定される。スプール8は、組立補助部材33とスプール8との間の遊びに基づいて、組立補助部材33とスプール8との間で摩擦力が発生することなしに、前記形式で軸方向にシフトすることができる。従って、組立補助部材33の機能がスプール8に影響することはない。この場合、軸方向の遊びは、ガイド区分9から突き出す、スプール8の端部の長さによって、並びに杯状の組立補助部材32の深さによって規定される。
【0040】
前記スプール弁1は、種々異なる実施例、有利には自動車のオートマチックトランスミッション、特に電気油圧式の制御モジュールに使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 スプール弁、 2 ハウジング、 3 スライド通路、 4 第1の接続孔、 5 (第2の)接続孔、 6 盲孔、 7 半径方向圧力補償室、 8 スプール、 9,10 ガイド区分、 11 接続区分、 12 矢印、 13 環状の室、 14 第1の制御縁、 15 環状溝、 16 栓、 17 押圧ばね、 18 圧力補償通路(軸方向孔)、 19 半径方向孔、 20 軸方向孔、 21 端面、 22 室、 23 第3の接続孔、 24 第3のガイド区分、 25 接続区分、 26 環状の室、 27 第2の制御縁、 28 固定リング、 29 端面、 30 室、 31a,31b 付加的なスペース領域、 32 ピン、 33 組立補助部材、 34 自由端部、 35 係止突起、 36 対抗突起、 37 領域、
D 接続孔4の孔直径、 s1 接続孔4の縁部からの制御縁27の間隔、
s2 接続孔4と環状溝15との間に形成された貫流横断面の幅、
I 環状溝15から制御縁14までのガイド区分9の残りの領域の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車のオートマチックトランスミッションを制御するためのスプール弁(1)であって、ハウジング(2)を有しており、該ハウジング(2)内に少なくとも2つの接続孔(4,5,23)が形成されていて、これらの接続孔(4,5,23)がスライド通路(3)内に開口しており、スライド通路(3)内で軸方向に移動可能なスプール(8)を有しており、該スプール(8)が少なくとも2つのガイド区分(9,10,24)と、貫流横断面を開閉するための少なくとも1つの制御縁(14,27)とを有しており、前記接続孔のうちの第1の接続孔(4)が消費器に作用接続可能であり、第2の接続孔(5)が圧力源に作用接続可能である形式のものにおいて、
少なくとも1つの前記接続孔(4)が、前記スライド通路(3)を越えて延在する盲孔(6)として構成されており、前記ガイド区分のうちの、前記制御縁(14,27)を有する第1のガイド区分(9)が、前記盲孔(6)に配属されていて、前記第1のガイド区分(9)の外周面に少なくとも1つの環状溝(15)が設けられていることを特徴とする、スプール弁。
【請求項2】
前記環状溝(15)が前記スプール(8)の各位置において少なくとも部分的に前記盲孔(6)内に位置している、請求項1記載のスプール弁。
【請求項3】
前記第1の接続孔(4)の直径(D)が前記スライド通路(3)の直径よりも大きい、請求項1記載のスプール弁。
【請求項4】
前記スプール(8)内に圧力補償通路(18)が形成されており、該圧力補償通路(18)は、前記第1の接続孔(4)に配属され、かつ特に前記環状溝(15)内に開口する少なくとも1つの半径方向孔(19)と、前記スプール(8)の端部側の端面(21)から前記半径方向孔(19)に通じる軸方向孔(20)とを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のスプール弁。
【請求項5】
前記スプール(8)の軸方向孔(20)が、前記ハウジング(2)の、端面(21)に配属された室(22)内に開口している、請求項1から4までのいずれか1項記載のスプール弁。
【請求項6】
前記軸方向孔(20)内にピン(32)が軸方向に移動可能に配置されていて、該ピン(32)の一端部が前記ハウジング(2)と協働する、請求項1から5までのいずれか1項記載のスプール弁。
【請求項7】
第1の接続孔(4)が盲孔(6)として構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のスプール弁。
【請求項8】
前記ハウジング(2)が第3の接続孔(23)を有していて、該第3の接続孔(23)が低圧部特に液圧タンクに作用接続可能であり、該第3の接続孔(23)が、軸方向で見て、前記第1の接続孔(4)の、前記第2の接続孔(5)と反対側に位置している、請求項1から7までのいずれか1項記載のスプール弁。
【請求項9】
前記スプール(8)の第1のガイド区分(9)が、第2のガイド区分(10)と第3のガイド区分(24)との間に配置されていて、別の貫流横断面を開閉するための第2の制御縁(27)を有しており、該第2の制御縁(27)が第1の接続孔(4)と協働する、請求項1から8までのいずれか1項記載のスプール弁。
【請求項10】
前記スプール(8)が前記ガイド区分(9,10,24)間にそれぞれ1つの、直径の減径された接続区分(11,25)を有しており、これらの接続区分(11,25)がそれぞれ少なくとも部分的に、スプール(8)の各位置において第2の接続孔若しくは第3の接続孔(5,23)の領域内に位置している、請求項1から9までのいずれか1項記載のスプール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−67916(P2012−67916A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204758(P2011−204758)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】