説明

スペクトル領域光コヒーレンス断層放射線写真システムにおける交差分散分光計

交差分散分光計を使用したスペクトル領域光コヒーレンス断層放射線写真システムが開示される。干渉した光信号が回折格子によって複数の回折次数に分散され、これらの回折次数が追加分散光学エレメントによって分離される。スペクトル・インタフェログラムが、1組の線形検出器アレイによって、あるいは2次元検出器アレイによって記録される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に光コヒーレンス断層放射線写真に関し、詳細には、スペクトル領域光コヒーレンス断層放射線写真システムにおける交差分散エシェル構成分光計の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンス断層放射線写真(OCT:Optical Coherence Tomography)は、ミクロン・スケールの組織構造の画像を現場で実時間で提供することができる高解像度断面撮像を行うための技術である。近年、スペクトル領域OCTは、時間領域OCTと比較すると、速度の点で著しい利点を有していることが立証されている。スペクトル領域OCT(SD−OCT)の場合、標本アームと参照アームの間の光学距離の差が機械的に走査されるのではなく、異なる波長成分が異なる光検出器上に分散して空間発振干渉縞を形成する分光計に干渉結合ビームが送られる(スミス、エル エムおよびシー シー ドブソン(Smith,L.M.and C.C.Dobson)(1989年)の「Absolute displacement measurements using modulation of the spectrum of white light in a Michelson interferometer.」Applied Optics 28(15):3339〜3342ページ)。空間発振強度分布をフーリエ変換することにより、標本内の深さに沿った反射率分布の情報が提供される。機械的な深さ走査が存在しないため、標本内における全深さ範囲に沿った光の反射を同時に収集することができ、したがって、時間領域OCTと比較すると、深さ全体にわたる反射画像を得る速度が実質的に速い(ウォツコウスキー、エムら(Wojtkowski,M.,et al.)(2003年)の「Real−time in vivo imaging by high−speed spectral optical coherence tomography.」Optics Letters 28(19):1745〜1747ページ、およびライトゲブ、アール エーら(Leitgeb,R.A.,et al.)(2003年)の「Phase−shifting algorithm to achieve high−speed long−depth−range probing by frequency−domain optical coherence tomography.」Optics Letters 28(22):2201〜2203ページ)。また、標本内の全深さ範囲から反射した光は、多数の光検出器全体に完全に分散するため、時間領域OCTの場合と比較すると、光検出器毎の散射雑音が実質的に小さく、したがって信号対雑音比を実質的に大きくすることができる(ライトゲブ、アール エーら(Leitgeb,R.A.,et al.)(2003年)の「Performance of Fourier domain vs.time domain optical coherence tomography.」Optics Express 11(8):889〜894ページ、デ・ボー、ジェイ エフら(De−Boer,J.F.,et al.)(2003年)の「Improved signal−to−noise ratio in spectral−domain compared with time−domain optical coherence tomography.」Optics Letters 28(21):2067〜2069ページ、およびチョマ、エム エー、エム ブイ サルニクら(Choma,M.A.,M.V.Sarunic,et al.)(2003年)の「Sensitivity advantage of swept source and Fourier domain optical coherence tomography.」Optics Express 11(18):2183〜2189ページ)。
【0003】
SD−OCTシステムの場合、適度な走査深さで高い軸方向解像度の達成が追及されるか、あるいは深い走査深さで適度な軸方向解像度の達成が追及される。たとえば、網膜診断に対する現在のアプリケーションでは、約2mmの深さに対する解像度が約2ミクロンの網膜画像が望ましい(コ、ティー エイチ、ジェイ ジー フジモトら(Ko,T.H.,J.G.Fujimoto,et al.)(2005年)の「Comparison of Ultrahigh−and Standard−Resolution Optical Coherence Tomography for Imaging Macular Pathology.」Ophthalmology 112(11):1922〜1935ページ)。眼内レンズの処方に対する現在のアプリケーションの場合(ヒッツェンバーガー、シー(Hitzenberger、C.)(1991年)の「Optical measurement of the axial eye length by laser Doppler interferometry.」Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.32(3):616〜624ページ)、眼(最大30mmの長さ)の中のすべての光学界面を約30ミクロンの解像度で探索しなければならない。これらの2つのアプリケーションの場合、軸方向の解像度に対する組織内の走査深さの望ましい比率は、ほぼ同じ(30mm/30ミクロン対2mm/2ミクロン)であり、比率の値が大きいほど画像が改善される。簡単なSD−OCT技法の場合、1回の軸方向の走査における情報がスペクトル中で符号化される(ライトゲブ、アール エーら(Leitgeb、R.A.et al.)のOptics Express 11(8):889〜894ページ)。軸方向の解像度に対する走査深さの大きな比率は、1回の軸方向の走査で大量の情報が得られることを意味しており、そのためには線形検出器アレイに沿った極めて多数の画素が必要であり、上記の例では少なくとも4000個の画素が必要である。約1ミクロンの波長(生物学的アプリケーションにおける典型的な波長)で動作している分光計の典型的な空間光解像度が10ミクロンであると仮定すると、スペクトルに含まれている情報を解像するためには、約40mmのスペクトル長が必要である。このようなアレイは、一般的には入手することができず、また、たとえこのようなアレイを利用することができたとしても、光学系のレイアウトが極めて大きくなる(たとえ、リトロー構造であっても)ことが余儀なくされ、たとえば熱の問題が生じることになる。
【0004】
この問題の解決方法は、交差分散エシェル分光計を使用することである。このような構成の場合、ファイバまたはピンホールから出現した光は、エシェル格子に当たる前に平行化される。エシェルは、所望のスペクトル解像度を達成するために、典型的にはm=30以上であるmで表される高次数の回折に使用するべく設計された、粗的に線が引かれた回折格子(たとえば1ミリメートル当たり50個程度の溝の回折格子)である。このような構成の場合、ソースのスペクトル幅(高解像度OCTの場合、Δλ>130nm)が複数の次数で回折し、これらの次数が重畳する。つまり、ソースの帯域幅内の所与の回折角の複数の離散波長がその角度で回折し、個々の波長が異なる回折次数で回折する。したがって、分散スペクトルが線形検出器アレイに当たると、アレイ内の個々の検出器は、それぞれ異なる回折次数からの波長である複数の波長を受け取ることになる。これらの異なる回折次数から光を分離するために、エシェルの後段に、比較的分散の小さい光学エレメントを、その分散方向がエシェル格子の分散方向に対して垂直になるように配置することができる。この方法で使用される分散の小さいエレメントは、交差分散器と呼ばれている。このようなエレメントを配置することにより、異なる回折次数が空間的に分離され、2次元領域検出器アレイまたは線形検出器アレイのスタックを使用して画像化することができる。このような分光計は、古典的な方法、つまりファイバから出現した光を、光がエシェル格子に当たる前に平行化し、光が交差分散した後、分散した光をレンズ・システムを使用して2次元検出器アレイ上に再画像化することによって構築することができる。
【0005】
交差分散エシェル分光写真器は、主として、極端な波長解像度、たとえばR>100,000の解像度を必要とする天文学の分野で使用されており、天文学の分野では、最近、2次元赤外線検出器アレイの利用が可能になっており、複数の交差分散エシェル次数を画像化することができる(たとえばマクリーンら(McLean et al.)の1998年のSPIE Proceedings Vol.3354、566ページを参照されたい)。また、エシェル格子は、低温冷却する必要があるため、空間を節約するためにリトロー構造で使用されている。しかしながら、これらの従来技術によるエシェル分光写真器は、通常、最も高い可能スペクトル解像度に的が絞られているが、スペクトル領域OCTに必要な解像度は、通常、2,000<R<10,000の範囲である。
【0006】
この交差分散分光計は、エシェル格子をリトロー構成で使用することにより、2005年8月3日出願の同時係属出願第11/196,043号(本願明細書に援用する)に記載されているコンパクト性およびアライメントの安定性の利点を達成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回折したビームを入力ビームから分離するために、エシェル格子を傾斜させて円錐回折を生成することができる。この円錐回折によって、集束したビームに特定のひずみおよび非直線性が生成される。これらの問題については、図3に関連して以下でより詳細に説明する。本発明の1態様は、このようなひずみの光修正を提供することである。本発明によれば、交差分散エシェル構成またはエシェロン構成の高解像度分光計のための設計、およびSD−OCTシステムのためのこのような分光計の使用が開示される。また、このような交差分散エシェル格子は、既に開示されているリトロー構造に使用することも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
分光計は、入射する光ビームを波長に応じて分散させるための第1の回折格子を備えている。この回折格子は、通常、たとえば高回折次数m>30で動作する、粗的に線が引かれたエシェル格子である。したがって、高解像度SD−OCTシステムでカバーしなければならないスペクトル範囲は、空間的に重畳する複数の(たとえば5つの)回折次数に収まる。このエシェル格子の後段には、回折格子であってもあるいはプリズムであってもよい第2の分散エレメントが、その分散方向の配向がエシェル格子に対して垂直になるように配置されており、したがってエシェル格子で回折した光から空間次数の重畳が除去される。線形検出器アレイが、回折し、かつ、分散した関心のある光を受け取り、かつ、測定する。
【0009】
入射ビーム、エシェルおよびアレイは、回折したビームが入射ビームの近傍の軸に沿って伝播するよう、実質的にリトロー状態で配置されることが好ましい。当業者は、リトロー構成という用語をしばしば使用して、回折した関心のある光ビームの一部が入射ビームの伝播軸の近傍を伝播する構造を定義している。本明細書および特許請求の範囲には、リトロー構成(または構造あるいは状態)という用語は、より広義に定義されるものとして使用されている。この用語を使用する代わりに、コンパクト分光計構造も、関心のある入射ビームおよび回折ビームの両方を集束させるために共通のレンズが使用される構成として定義することができる。
【0010】
本発明の1態様では、入射するビームと測定すべき回折ビームとを空間的に分離するために、エシェルの配向を傾斜させることによって円錐回折を生じさせる。この円錐回折によって、平らな線形アレイに対してビームのフットプリントにおける特定の非直線性が生じることがある。本発明の1態様では、これらの非直線性を小さくするための光学エレメントが提供されている。
【0011】
本発明の他の態様では、検出エレメントとしてコンパクト分光計がスペクトル領域光コヒーレンス断層放射線写真システム(SD−OCT)に使用される。1実施形態では、分光計は、実質的にリトロー構成で構成されている。別法としては、分光計は、入射するビームと測定すべき回折ビームの両方を集束させるための共通レンズを備えている。必ずしもその必要はないが、いずれの場合においても、入射ビームと回折ビームとを垂直方向に分離するための円錐回折を使用することが好ましい。円錐回折の場合、必ずしもその必要はないが、回折したビームのフットプリントのひずみおよび/または非直線性が補正されることが好ましい。
【0012】
好ましい分光計には、他の様々な可能な改良が可能である。たとえば、熱変化に対する感度を小さくするための機能を備えた分光計を設計することができる。また、入射するビームの偏光状態に対して実質的に影響を受けない出力を生成する分光計を設計することも可能である。
【0013】
SD−OCTのための交差分散分光計の主な利点は、交差分散分光計を使用することによって大きい分散が検出器アレイ上に得られることであり、より大きい分散は、通常の高分散線形分光計に必要な広い視野を必要とすることなく、1nmのスペクトル範囲当たりの画素がより多いことを意味している。スペクトルの一部を互いに積み重ねることによってスペクトルがよりコンパクトになり、ひいては撮像光学系が良好に機能しなければならない領域がよりコンパクトになる。分散が大きいほど分光計の解像度が高くなり、解像すべき縞を密にすることができるため、深さの範囲がより良好な断層写真が得られる。
【0014】
2次元検出器アレイを使用している交差分散分光計は、追加結合器からの追加ファイバ入力を容易に受信することができ、追加スペクトルを検出器アレイ上に互いに上/下に置くことができる。SD−OCTの場合、これらの追加入力を使用して、検出または位相感応検出のバランスを取ることができる。
【0015】
交差分散分光計は、消費者アプリケーションのために利用することができるコンパクトで安価な面積センサを使用して、コンパクトで低コストのOCTスキャナの基礎を形成することができる。交差分散分光計は、その検出器アレイに複数のライン走査センサを使用することができる。これらのライン走査センサは、同時に読み出すことができるため、より高速のデータ収集速度が得られる。
【0016】
本発明のこれらおよび他の特徴ならびに利点については、添付の図面を参照しつつ好ましい実施形態についての以下の詳細な説明を精査することにより、当業者にはより容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
当業者に良く知られているように、広帯域光ビームは、プリズム、回折格子、アレイ化された導波路回折格子または光フィルタの組合せの使用を始めとする多くの方法でそのスペクトル成分に分散させることができる。回折格子は、分解能が高く、したがって限られた空間内におけるスペクトル解像度が高いため、通常、ほとんどの分光計に使用されている。平面回折格子は、湾曲回折格子、体積ホログラフィック・グレーティングあるいはフォトニック結晶格子などのより複雑な他の回折格子と比較すると低コストであるため、多くのアプリケーションでは平面回折格子が好ましい。
【0018】
図1は、平面反射回折格子101の例を示したもので、回折格子の式は、
mλ=d(sinα+sinβ) (1)
で与えられる。上式で、mは整数である回折次数、λは光の波長、dは回折格子の周期、αは入射角、βは回折角である。入射角および回折角は、回折格子の法線102、つまり回折格子の表面に対して垂直なダッシュ線から測定される。角度符号の慣習によれば、法線から反時計方向に測定した角度が正であり、法線から時計方向に測定した角度が負である。図1には、溝に対して垂直な回折格子の平面内の軸であるx軸が分散軸として表されている。
【0019】
所与の回折次数mに対して、回折したスペクトル成分の波長に対する角度依存性は、
β(λ)=arcsin{mλ−sinα} (2)
で与えられる。
【0020】
式(1)の有効性は、古典的回折つまり平面回折と呼ばれている、入射光線および回折光線が回折格子の溝に対して垂直な事例に限定されることに留意されたい。
入射する光ビームが溝に対して垂直でない場合、回折格子の式は、
mλ=dcosε(sinα+sinβ) (3)
に修正しなければならない。上式でεは、入射する光の経路と溝に対して垂直な平面との間の角度である。ε≠0である場合、回折したスペクトルは、平面上にではなく円錐上に位置し、その回折は円錐回折と呼ばれる。円錐回折をより深く理解するために、図2に示すz軸に平行の回折格子の溝201を使用して直交座標系Oxyzを考察する。入射する、波数ベクトルがk=(k+k+k)であり、かつ、その絶対値が|k|=(2π/λ)である平面波は、図2の点線の平面205で示すように、平面外の任意の方向から回折格子に当たる。回折理論(たとえば、メイスター ディら(Maystre D.et al.)(1985年)の「Geometrical invariance property of gratings」Applied Optics 24(2):215〜216ページを参照されたい)から、
【0021】
【数1】

である。この式によれば、kおよびkは同じ絶対値を有している。すべての回折次数mに対してkmz=kであるため、図に示すように、回折した様々な次数の波数ベクトルは、座標系Oxyzの原点および図2に示すダッシュ線の円によって形成される円錐上に位置する。回折したすべての次数の波数ベクトルをxy平面に投影すると、図1と同様の図が得られる。ただし、回折した様々な次数の波数ベクトルのxy平面成分の絶対値は、xy平面へのkの投影、つまり|kmx+kmy|=|k+k|=|k|cosεであるという点が異なる。εは、入射する波数ベクトルとxy平面との間の角度である。したがって、式(1)の代わりに式(3)を使用しなければならず、また、式(3)の角度は、xy平面に投影される波数ベクトルに対応する角度である。
【0022】
特定の回折次数mの回折効率は、溝ファセット角またはそれらの形状および深さを変更することによって調整することができる。溝を適切な形状にすることによる効率の最適化は、ブレージングとして知られている。プレーナ・ブレーズド・ホログラフィック・グレーティングおよびプレーナ・ブレーズド回折格子は、低コストであり、かつ、分解能が高いことに加えて効率が高いため、多くのアプリケーションで使用されている。
【0023】
とりわけ有用な事例は、リトロー構成で動作するブレーズド回折格子である。この場合、回折格子は、集光される所望の回折次数mの波長範囲に対して、約α≒βになり、回折したビームがほぼ入射ビームの光路に戻る角度に設定される。(たとえば米国特許第6710330号明細書、米国特許第6859317号明細書を参照されたい。)
図3(a)は、光ファイバ301からの光が共通レンズ302によって平行化され、かつ、ブレーズド反射回折格子303に向かって伝播する、円錐回折リトロー構成300の例を斜視図で示したものである。円錐回折を生成するために、回折格子は、矢印Aで示す軸の周りに傾斜する。回折格子が傾斜しておらず、入射する光が回折格子の溝に対して垂直に配向されていない場合、回折した光は、入射するビームの光路に沿って戻り、したがって回折した光のフットプリント305によって、中心が実質的にファイバ301の出力端に位置するスペクトル(つまり平面内リトロー状態)が形成されることになる。(同じく図3(b)の上面図を参照されたい。)
回折格子を傾斜させることにより、図3(a)に示すように、回折した光のフットプリントが量「z」だけ垂直方向に変位する円錐回折が生成され、これにより画素アレイ307による光の検出が可能になる。
【0024】
しかしながら、このような構造が抱えている重要な問題は、円錐回折によって導入される非平面効果のため、回折した光ビームのベクトルが円錐の表面に位置し、そのため、スペクトル分散したビームがレンズ302によって集束すると、集束した光のフットプリント305が湾曲することである(図3(a)に挿入されている端面図から分かるように)。より詳細には、フットプリントは、集束した領域のz軸上の高さが検出器アレイの両端部分より中心部分の方が高くなるような非線形性を検出器アレイの直線軸に対して有することになる。ライン走査カメラの検出器アレイなどの標準の線形検出器アレイ307を使用する場合、入力ビームのスペクトル幅に応じて、集束した湾曲スペクトル線の一部が検出器アレイ307の感光性領域外に当たることになる。これは、広帯域光源であることが望ましい、軸方向の解像度が高いSD−OCTシステムの場合、特にそうである。また、このような集束した湾曲スペクトル線によって、機械的な振動および温度変化に対する分光計の出力感度が極めて敏感になり、集束したスペクトル線の一部が画素外に当たる原因になることがある。
【0025】
1つの可能な解決法は、標準の線形検出器アレイではなく、湾曲した検出器アレイを使用して、湾曲した集束したスペクトル線の形状に整合させることである。しかしながら、そのためには特注のライン走査カメラが必要であり、したがってコストが高くなる。第2の解決法は、集束するスペクトル線の画素に対する若干の移動を許容することができるよう、ライン走査カメラで広く実施されているように検出器アレイの画素の形状を正方形ではなく長方形にすることである。しかしながら、このようなより細長い長方形画素のより広い感光性領域は、感光性領域のキャパシタンスがより大きいことを意味しており、そのために高速読出がますます困難になる。商用高速ライン走査カメラのほとんどは、光学ドキュメント・スキャナのためなどの全く異なるアプリケーションを対象にしており、したがってこれらのカメラの画素の高さは、通常、軸方向の解像度が高いSD−OCTシステムのための帯域幅の広い光源に起因する、集束したスペクトル線の湾曲を補償するためには不十分である。
【0026】
円錐回折に起因する非直線性が小さくなるようにレンズを選択することで、回折したビームのフットプリントと検出器アレイの位置決めが改善される。当業者に良く知られているように、アベラント・レンズは、図4に示すように、正のひずみ(糸巻き形ひずみとも呼ばれる)または負のひずみ(樽形歪曲とも呼ばれる)を有することができる。図4の左側の画像401は、ひずみが全く存在しない完璧な画像であり、中央の画像402は、正のひずみを有する画像であり、右側の画像403は、負のひずみを有する画像である。
【0027】
図5は、集束したスペクトル線305の、図3(a)に示す円錐回折に起因する湾曲を補償するための好ましい手法を示したものである。より詳細には、負のひずみ(樽形歪曲)を有する共通(一般的にはより分厚い)アベラント・レンズ502は、図5に示すように、入力アームと出力アームの両方の光路内に、出力ビームに対して特定の垂直軸ずれ変位で配置されることが好ましい。光ファイバ501からの入力ビームの主中心光線は、共通レンズ502をレンズの垂直中心線を介して通過し、回折格子503で円錐回折したビームの主中心光線は、共通レンズ502の下側の半分からレンズを通過するため、レンズからの負のひずみにより円錐回折したビームの正のひずみが実質的に補償される。したがって、湾曲した画像表面506上の画像化されたスペクトル分散したライン505は、図5に挿入されている端面図から分かるように、実質的に横方向に直線化される。
【0028】
上の段落を、円錐回折した光ビームのひずみを補償するためのリトロー分光計における共通レンズの使用に本発明を限定するものとして解釈してはならないことに留意されたい。リトロー分光計における円錐回折したビームのひずみは、他の方法で補償することも可能である。たとえば、ひずみを補償するために使用されるレンズは、分光計の出力アームのためだけの別個のレンズであってもよい。しかしながら、回折格子の前面でレンズを共有することによって、よりコンパクトな構造を達成することができる。また、スペクトル分散したビームを同じ回折次数に限定する必要はなく、場合によっては次数を垂直方向に分離するためにいくらかの交差分散を有する重畳回折次数を含むことも可能である。また、本発明は、軸ずらし画像誘導ひずみ補償の使用に限定されず、同様の効果を達成することができる限り、他のタイプのレンズを使用することも可能である。たとえば、スペクトル回折したビームが、回折格子がレンズに向かって傾斜している場合は、主中心光線がレンズの上側の半分を通ってレンズを通過するように配置され、または、回折格子がレンズとは反対側に傾斜している場合は、主中心光線がレンズの下側の半分を通って通過するように配置される限り、正のひずみを有するレンズを使用することも可能である。別法としては、特別に設計されたレンズを、回折したビームの主中心光線がレンズの垂直中心部分を通過する場合であっても、レンズが依然としてひずみを補償し、集束したスペクトル線が直線化される方法で使用することも可能である。
【0029】
図5に示す分光計に関連付けることができる問題は、従来の撮像システムにしばしば見られるように、良好に集束したスペクトル線が正の曲率の湾曲表面506(同じく図3(b)の306)に依然として位置する可能性があることである。良好な焦点のこの湾曲表面506によってもたらされる結果は、スペクトル線を平らな検出器アレイのすべての画素に良好に集束させることができないことである。その代わりに、個々の画素に集束するスポット・サイズがセンサ全体にわたって変化する。
【0030】
この問題の解決法として、本発明の1つまたは複数の実施形態によれば、図6(a)および(b)に示すように、スペクトル線605の焦点を検出器アレイの平らな表面606に良好に整列させることができるよう、良好な焦点の表面を実質的に平面化するためにフィールド平面化レンズ610が線形検出器アレイ607の前面の出力アームに挿入されている。上で言及したフィールド平面化レンズは、メニスカス・レンズの形態などの任意の適切な形態にすることができることを理解されたい。また、フィールド平面化の効果は、共通レンズの設計によって、あるいはレンズの組合せを使用することによって達成することも可能である。したがって好ましい実施形態では、本発明は、円錐回折リトロー分光計内の集束したスペクトル線を実質的に直線化する手法を提供し、横方向(図5に示すアレイを横切る方向)にスペクトル分散するビームのひずみ、またはビーム(図6に示すフィールド平面化レンズによって修正されたビーム)が伝播する方向にスペクトル分散するビームのひずみのいずれか一方または両方の補償が提供される。このようなひずみ補償は、平らな光検出器アレイと、直線化された集束したスペクトル線とを整列させることができるよう、3次元空間で集束するスペクトル線を直線化するための方法であって、それにより波長に応じた光エネルギーの電気信号への安定した真の変換が可能になる方法として解釈されたい。
【0031】
図5に示す構成に関連付けることができるもう1つの問題は、ほとんどの実用SD−OCTシステムの場合と同様、入力ビームが単一モード光ファイバから入射する場合、ファイバの開口数と分光計の開口数が整合しないことがあることである。本発明の追加特徴の1つとして、入力アームの開口数と出力アームの開口数を整合させるための入力レンズ612が、同じく図6(a)に示すようにファイバ・チップ601付近の入力アームに挿入されている。単一モード・ファイバ・チップから入射する光の開口数を変更するための他の方法が存在しており、たとえばファイバ・チップをレンズとして直接形成するか、あるいはファイバにグリン・レンズを取り付けることによって開口数を変更することができることを理解されたい。
【0032】
図5に示す構成のさらに他の問題は、商用的に入手可能なライン走査カメラの包装サイズが、一般的に画素アレイの感光性領域よりはるかに大きいことである。したがって光ファイバをカメラ本体の後方から画素アレイの真上に置くことは不可能である。本発明の好ましい追加特徴の1つとして、入力アームと出力アームの間の相対角度を小さい角度、たとえば約10度未満に維持することができるよう、図6(a)および(b)に示すように、光ビーム折りたたみミラー614がライン走査カメラの前面に取り付けられている。この構造によって回折が古典的な平面内回折に近づくため、回折したスペクトル線に円錐回折によって導入されるひずみの大きさを小さくすることができる。また、この構造によって分光計全体のサイズが実質的に小さくなるため、分光計をよりコンパクトに、かつ、より安定したものにすることができる。
【0033】
SD−OCTに応用する場合、スペクトルをライン走査画素アレイに沿って移動させる比較的大きい静的不整列を許容することができる。このような横方向の不整列によって、記録されるスペクトル干渉縞がシフトすることになるが、干渉縞の空間周波数がそのシフト内で第1の次数に変化することはない。干渉縞の周波数が変化するのは、光周波数とライン走査画素アレイ上の位置の間の関係が非線形である場合のみである。画素アレイに沿って−0.5から+0.5まで変化する変数xでパラメータ化される位置と光周波数νとの間の関係は、多項式によって近似することができる。1例として、中心光周波数の10%であるΔνの範囲の光周波数をカバーするリトロー構成の場合、典型的な近似関係は、ν=C[x+0.15x+0.05x]である。Cは定数である。OCTの分野の技術者は、カメラに対するスペクトルの非補償シフトδxによるOCT画像品質に対する影響を計算することができる。δx=0.05のシフト、つまり2048画素カメラ上の10個の画素がしばしば許容可能である。
【0034】
本発明の他の好ましい実施形態では、分光計は、熱膨張が実質的に小さい基礎材料の上に取り付けられている。インバー(Invar)などの特定の材料は、ゼロに近い熱膨張係数を有しており、本発明による分光計のための基礎として直接使用することができるが、熱膨張の補償係数を有する複合材料から基礎を構築することも可能である。たとえば、複合材料は、一方が正の熱膨張係数を有し、もう一方が負の熱膨張係数を有する2つの材料から構成することができる。図6(a)に示すように、基礎616は、正の熱膨張係数を有する金属であってもよく、また、埋設バー618は、負の熱膨張係数を有する異なる金属であってもよい。リトロー分光計構成の場合、回折したビームと入力ビームがほぼ同軸特性であるため、基礎の相対する熱膨張係数を選択することによって、レンズに対する撮像機能のあらゆる熱誘導変化を補償することができる。たとえば、ガラス・レンズの焦点距離は温度によって変化する傾向があり、この変化は、基礎の熱膨張または収縮によって補償することができる。
【0035】
図7(a)は、交差分散エシェル分光写真器をリトロー構成で実施するための好ましい手法を示したものである。好ましくはファイバ結合光源710から入射した干渉信号は、レンズ・システム720を通って移動した後、エシェル格子730で回折する。リトロー構成の場合、分散した光は、次にもう1度レンズ・システム720を通って移動した後、低分散エレメント740で交差分散する。低分散エレメント740は、ここではプリズムであるが、回折格子であってもよい。次に、エシェル格子の重畳回折次数が、2次元アレイ検出器、すなわち積み重ねられたマルチ・ライン検出器アレイ750の上に垂直変位する。図7(a)には、2つの回折次数からの2つの集束した部分スペクトル762および764が示されている。通常、複数の回折次数がかなりの量の光を含有しており、検出器アレイ750によって集光される。
【0036】
エレメント740によって提供される垂直変位は、個々の回折次数内の部分スペクトル全体にわたって大きく変化する波長によって決まる。したがって個々の次数内の波長範囲全体にわたって垂直変位が変化し、そのために集束した部分スペクトルが傾斜する。この傾斜は、エシェル格子をエシェル格子の表面に垂直な軸の周りに検出器アレイに対してわずかに回転させることによって除去することができる。
【0037】
通常、個々の回折次数がカバーしているスペクトルは、スペクトル範囲全体のごく一部にすぎない。角度に応じた回折格子730の回折効率によって、個々の次数に含まれる重要な回折光の水平方向の範囲が決まる。連続する2つの次数の中で検出される波長の範囲は、λからλおよびλからλであり、好ましくはλ<λ<λ<λと重畳しているため、検出される1組の波長には切れ目がない。エシェル格子をより高い回折次数に使用する場合、連続する次数(たとえばλ〜λ)間の波長の分離は、より小さくなる。十分に高い回折次数では、連続する次数間の分離が広帯域源の帯域幅未満になり、したがって広帯域源の帯域幅内の部分スペクトルは、エシェルによって回折した後に重畳するため、交差分散エレメントによってのみ分離しなければならない。交差分散分光計は、複数の回折次数が重畳する場合、つまりλ、λなどの複数の重畳波長が広帯域源の帯域幅内に存在している場合、固有の利点を示す。この目的のための帯域幅の適切な定義は、ピーク強度の10%におけるスペクトルの全幅である。
【0038】
図7(b)は、焦点フィールドをもたらすための追加フィールド平面化レンズ770を備えた好ましい実施形態を示したもので、追加フィールド平面化レンズ770の表面は、個々の波長の焦点を検出器アレイの平らな平面のより近くに結んでいる。フィールド平面化レンズ770および共通レンズ720の配置は、円錐回折によるひずみの影響が実質的に相殺され、部分スペクトルが検出器アレイ上のほぼ直線で焦点を結ぶように選択される。
【0039】
図7(c)は、リトロー構成の外部に回折格子1730が使用された代替実施形態を示したものである。ファイバ・チップ1710からの光は、コリメーティング・レンズ1720によって平行化され、ブレーズド・エシェル格子1730に向かって伝播する。回折したビームは、個々の波長の焦点を検出器アレイ1750の平面の近くに結ぶ集束レンズ1780を通過する。プリズム1740は、垂直方向の回折次数を分離する働きをしている。図7(c)には、2つの回折次数からの2つの集束した部分スペクトル1762および1764が示されている。通常、複数の回折次数が集光される。フィールド平面化レンズ1770は、個々の波長の焦点を検出器アレイ1750の平面の近くの点に結ぶように設計されている。
【0040】
この交差分散分光計をSD−OCTに応用するための設計計算について、例を挙げて説明する。ソース・スペクトルの中心が850nmである場合、軸方向の解像度が5ミクロンのSD−OCTは、約Δλ=130nmの帯域幅にわたる干渉スペクトルを収集しなければならない。散乱中心の縦方向の位置は、スペクトル全体の干渉縞の発振周波数によって符号化され、より深い縦方向の深さでの散乱によって、スペクトル全体がより高速で発振する。したがって、広い深さ範囲全体をSD−OCTを使用して画像化する能力は、スペクトル全体の高速発振を解像する分光計の能力で決まる。5mmの深さ範囲を画像化するためには、周期が0.07nmの縞を解像しなければならない。検出器アレイ内の1画素当たりの波長変化が0.03nmになるようにスペクトルを分散させることにより、オーバ・サンプリングの実際的なマージンが提供される。
【0041】
マイクロン(Micron) MT9M413センサは、12μmの間隔を隔てた1280個の画素を各行に備えた検出器アレイである。このセンサ上の1画素当たり0.03nmの分散は、長さ15.36mmの個々の行が38nmのスペクトルをカバーしていることを意味している。
【0042】
回折角に応じたエシェル格子の回折効率は、連続する次数間の波長分離に等しい波長範囲をカバーする半値全幅を有している(パーマー(Palmer)Diffraction Grating Handbook §11.5)。回折した光の大半を集光するためには、検出器アレイの行が、効率曲線によって画定される部分スペクトルの明るい領域の約2倍の幅になるように分光計を設計することが好ましい。(この選択は、検出器アレイの縁を個々の溝から単一スリット回折パターンの第1のゼロに置くことに対応している。)この場合、次数間の波長分離は、各行で集光されるスペクトル範囲の半分であり、この例では、次数間の波長分離は19nmでなければならない。次数間の波長分離は、mが複数の次数のうちの1つであるλ/mであり、したがって次数が約m=840nm/19nm=44になるように回折格子を選択しなければならない。
【0043】
コンパクト設計が望ましい場合、リトロー角に近い角度で動作させることが好ましい。その場合、回折格子の式は、約mλ=2d・sinθになる。θはブレーズ角である。エシェル格子の共通ブレーズ角は63.43°である(2の逆正接)。このブレーズ角および上で選択された次数の場合、溝の密度は、約48溝/mmでなければならない。リチャードソン(Richardson)カタログ(現在はSpectra Physics part number 53−size−415E)に最も緊密に整合する密度は、52.67溝/mmである。収集を所望する、2λ/m=38nmのスペクトル幅に相当する回折角の広がりは、回折格子の式から、ブレーズ角に対して±5.6°として決定することができる。このスペクトル幅をカメラの1行(長さ15.36mm)に適合させるためには、70mmの有効焦点距離が必要である。
【0044】
SF11ガラスからなる17°プリズムを1回通過すると(あるいは8°プリズムを2回通過すると)、次数がカメラ上で24μmだけ分離され、したがって画素のサイズが12μmの場合、連続する回折次数が1行置きに当たる。(SF11の分散は、次数を均等に分離することはできない。図8に示すプロットをもたらす計算は、回折の角度が波長の一次関数であると仮定してプリズムを概ねモデル化したものである。)エシェルを0.17°だけ回転させると、次数はカメラ上で概ね水平になる。図8に示す結果によれば、m=38ないし42の5つの次数に対してスペクトルが広がり、次数37および43の光の量が少ない。曲線は、785nmから915nmまでのものであり、マーカは、5nm毎に振られている。センサに当たる回折次数毎の波長範囲は、
m=42:787nm〜828nm
m=41:805nm〜847nm
m=40:826nm〜868nm
m=39:847nm〜891nm
m=38:869nm〜913nm
である。
【0045】
良好に整列すると、6400個の画素からスペクトルを読み出すことができる。5.6°以内の角度の光は、そのほとんどが回折格子で回折し、ブレーズ角を中心にして広がる。この1組の角度が7000ミクロンの長さでカメラの中央に水平に画像化される。
【0046】
要約すると、予測される軸方向の解像度および深さの範囲は、いずれも4096画素線形アレイを使用して達成することができる軸方向の解像度および深さの範囲と概ね等価であるが、交差分散分光計の場合、最大カメラ寸法は15mmであり、一方、線形分光計の場合は41mmである。MT9M413センサを備えたアナログ−ディジタル変換および読出しエレクトロニクスは、この6400画素スペクトルを毎秒100kスペクトルの速度で出力することができる。設計によって追加ファイバ入力を受信することができ、存在しているスペクトルより上または下の追加スペクトルが得られる。追加入力を使用することにより、干渉の複数の位相を同時に記録することができる。5行に配列された1280個の画素によってスペクトル上に6400個のサンプル・ポイントが得られる平均サンプリング密度が、匹敵する線形分光計の4096個の画素によって提供されるサンプリング密度より高いため、交差分散分光計の散在サンプリングにより、エイリアジングによるアーチファクトが減少する。
【0047】
第2の組の実例設計計算では、128×64画素センサが存在することが仮定されている。行中の画素が12μmの間隔を隔てている場合、所望の分散を得るためには、長さ1.536mmの各行に3.8nmのスペクトルを置かなければならない。次数間の分離λ/mは1.9nmであり、したがって約m=440の次数で動作させなければならない。左辺がmλ=440×0.84μm=370μmである回折格子の式により、大きな間隔dが強いられる。このような回折格子は、通常、積み重ねられたプレートによって構築され、エシェロンと呼ばれている。エシェロンの出所は未確認であるが、d=200μmのステップ間隔および40μmのステップ幅を仮定すると、有効ブレーズ角は、逆正接(5)=78.7°である。この場合も次数間の波長分離の2倍に相当する角度の広がりは、±1.23°である。このスペクトル幅をカメラの1行(長さ1.536mm)に適合させるためには、35mmの有効焦点距離が必要である。波長内における連続する次数が極めて近いため、交差分散エレメントは、プリズムより大きい分散を有していなければならない。スペクトルを連続する行に12μmの間隔を隔てて置くことを選択する場合、約0.010°/nmの分散が必要である。1ミリメートル当たり150個の溝を備えた第1次数の回折格子は、交差分散エレメントとして十分である。
【0048】
SD−OCTは、ライトゲブら(Leitgeb et al.)(「Ultrahigh resolution Fourier domain optical coherence tomography」、Optics Express 12 10、2156〜2165ページ(2004年))、チョマおよびサルニク(Choma and Sarunic)(「Sensitivity advantage of swept source and Fourier domain optical coherence tomography.」Optics Express 11(18):2183〜2189ページ(2003年))、およびデ・ボーら(de Boer et al.)(「Improved signal−to−noise ratio in spectral−domain compared with time−domain optical coherence tomography.」Optics Letters 28(21):2067〜2069ページ(2003年))によって記述されている。背景技術で言及したように、これまでのところ、従来技術によるすべてのSD−OCTシステムの分光計には2つのレンズが使用されており、そのうちの1つを使用して、入力ビームが回折格子に向かって伝播するよう平行化され、もう1つのレンズを使用して、分散したスペクトル・ビームを検出器アレイ上に集束させている。本発明の新規な特徴は、入力ビームならびに分散した出力ビームの両方に1つまたは複数の共通共有集束エレメントを使用しているSD−OCTシステムに分光計が組み込まれていることである。
【0049】
図9は、スペクトル領域光コヒーレンス断層放射線写真(SD−OCT)システムに使用されている交差分散分光計(図7に示されている)の好ましい実施形態を示したものである。この好ましい実施形態では、広帯域源950からの光は、単一モード・ファイバ952を介してファイバ結合器954へ導かれ、標本アーム956および参照アーム958に分割される。標本アーム956から戻った光と参照アーム958から戻った光が干渉する。干渉した光ビームの一部が検出アーム960によって案内され、交差分散分光計へ送られる。交差分散分光計は、上で説明した複数の有利な本発明の特徴のうちの1つまたは複数を有する交差分散分光計であることが好ましい。
【0050】
検出器アレイ750によって記録されたスペクトル強度をフーリエ変換することにより、標本の経路、たとえば標本内の深さに沿った反射率分布が提供される。検出される反射率分布には、鏡面反射だけでなく、光を分光計に戻す他の散乱過程が含まれている。反射率の高解像度画像を形成するために必要な処理方法の詳細については当分野で知られており、ライトゲブら(Leitgeb et al.)(「Ultrahigh resolution Fourier domain optical coherence tomograph.」、Optics Express 12 10、2156〜2165ページ(2004年))、チョマおよびサルニク(Choma and Sarunic)(「Sensitivity advantage of swept source and Fourier domain optical coherence tomography.」Optics Express 11(18):2183〜2189ページ(2003年))、およびデ・ボーら(deBoer et al.)(「Improved signal−to−noise ratio in spectral−domain compared with time−domain optical coherence tomography.」Optics Letters 28(21):2067〜2069ページ(2003年))によって記述されている。
【0051】
光干渉計には多数の変形形態が存在しており、また、SD−OCTシステムにおける交差分散分光計にも多数の変形形態が存在していることに留意されたい。たとえば、光干渉計は、マイケルソン型に限定する必要はなく、マッハ−ツェンダまたはマイケルソンとマッハ−ツェンダの組合せを使用することも可能であり、あるいは入射するビームを少なくとも2つのビームに分割し、かつ、分割したビームの一部を再結合することができる限り、他の干渉計を使用することも可能である。したがって参照アームを反射型に限定する必要はなく、透過型の参照アームを使用することも可能である(たとえば参照アームは、ビーム・スプリッタ954へのループ・バックを備えることができる)。光路は、光ファイバに限定する必要はなく、バルク光学系をベースにすることも、あるいは光ファイバとバルク光学系の組合せにすることも可能である。光ビームの特性を操作するための他の光学コンポーネントを光路に備えることも可能であり、たとえば1つまたは複数の偏光子、1つまたは複数の偏光コントローラ、1つまたは複数の偏光ビーム・スプリッタ、1つまたは複数の波長板、1つまたは複数のレンズ、1つまたは複数のミラー、1つまたは複数の非偏光ビーム・スプリッタなどを光ファイバまたはバルク光学系の形態で備えることができる。OCTシステムに使用されている他の構成には、平衡検出スキーム(たとえば米国特許出願公開2004/0239938号明細書、国際公開第04/111929号パンフレットを参照されたい)および高光パワー効率設計(たとえば米国特許第6657727号明細書を参照されたい)がある。これらは、すべて、SD−OCTに応用するために本発明の分光計と組み合わせることができる。
【0052】
スペクトル領域OCTシステムの分光計は、円錐回折リトロー分光計に限定する必要はない。スペクトル領域OCTシステムの分光計は、古典的な平面内回折分光計であってもよい。また、好ましい実施形態ではエシェルである第1の回折格子は、平面回折格子に限定する必要はない。この第1の回折格子は、分散と集束の両方の機能を果たすことができる湾曲した回折格子または凹面回折格子であってもよい。本発明の主な特徴は、入力ビームおよび回折した出力ビームのための1つまたは複数の共有集束エレメントを有する分光計をSD−OCTシステムに使用していることである。1つまたは複数の共有集束エレメントは、レンズまたは複数のレンズの組合せであっても、あるいは湾曲/凹面回折格子または湾曲/凹面ミラーであってもよい。
【0053】
好ましい実施形態では、スペクトル領域OCTシステムの分光計は、本発明の有利な特徴を備えた円錐回折リトロー分光計である。図10(a)および(b)は、円錐回折によって導入されるひずみを補償することができる分光計のレンズ設計の好ましい実施形態を示したものである。図10(a)には、入力ビームおよび回折した出力ビームのための共用共通レンズとして集合的に作用するダブレット1002およびシングレット1004からなる、SD−OCTシステムのリトロー分光計のためのレンズ・システムの設計が示されている。ダブレット1002は、クラウン・ガラスおよびフリント・ガラスからなる2つのレンズを組み合わせたものである。設計されたレンズ・システムの有効焦点距離は130mmである。コンピュータが、円錐回折を可能にするために約5度の傾斜角で傾斜した1500溝/mmの回折格子に送られる、中心波長が約840nm、スペクトル幅が795nmから885nmまでの広帯域光ビームをモデル化し、回折したビームは、ライン走査またはCCDカメラの幅30mmの画素アレイに集束している。図10(a)に示すモデルのレンズ・セットは、図3aの挿入部分に示す状況とは逆に、集束したスペクトル線を上に湾曲させる負のひずみ(樽形歪曲)を有しており、この場合、スペクトルの両端は、中心より15ミクロン高くなる。図10(b)は、CCDセンサの両端に約3.1%の正のひずみ(糸巻き形ひずみ)を有するフィールド平面化レンズ1006を挿入し、かつ、適切に配置することにより、集束したスペクトル線を直線化し、直線からの逸脱を最大でもわずかに1ミクロンにすることができることを示している。
【0054】
別法としては、入力アームと出力アームの両方が回折格子の前面で共通レンズを共有することも可能であり、また、回折したスペクトル・ビームに円錐回折によって導入されるひずみを実質的に補償する特定のひずみを共有レンズに持たせることも可能である。入力アームまたは出力アームのいずれか一方、あるいは両方に、追加機能を提供する追加光学コンポーネントを配置することも可能である。たとえば、出力アームにフィールド平面化レンズを配置し、集束したスペクトル線をさらに直線化することができる。また、入力アームにビーム折りたたみミラーを配置し、カメラの前面から入射する光ビームの受取りを可能にすることができる。入力レンズを使用して、開口数を整合させる働きをさせることも可能である。SD−OCTアプリケーションの場合、検出器アレイのデータ転送速度は、好ましくは高速であることが望ましい(1秒当たり1000ラインを超えることが好ましい)。
【0055】
以前のSD−OCT設計では十分に対処されていないもう1つの問題は、分光計の偏光依存性である。標準の回折格子は、通常、直交偏光状態の場合より、1偏光状態の場合の方がより効率的である。米国特許出願(US2004/0239943、US2005/0213103)から分かるように、この問題を解決するための手法の1つは、干渉したビームの1つの偏光方向のみを選択し、かつ、直線偏光ビームを選択された配向で分光計に送り込むことである。もう1つの手法は、2つの直線偏光干渉ビームを2つの分光計に送ることができるよう、干渉したビームを2つの直交偏光に分離することである。前者の手法は、信号対雑音比が小さくなり、また、後者の手法には2つの分光計が必要であり、したがってシステムのコストが実質的に高くなる。
【0056】
偏光を制御する対策を施さない限り、SD−OCTの分光計に入力することによって、通常、偏光状態が変化する。OCTの場合、2つのビームの偏光が実質的に整合するよう、干渉したビームの変調度の値を、干渉計の参照アームまたは標本アームのいずれか一方、あるいは両方の偏光状態を調整することによって確実に大きい値にすることが有利である。この調整は、通常、各標本を測定する毎に個々に実施され、それにより標本の偏光の回転が補償され、また、場合によっては光ファイバを含む標本へ導いている光学系の偏光の回転が補償される。また、分光計内の回折格子を照らしている干渉ビームの偏光の最終状態が、実質的に、回折格子の回折効率がより高くなる偏光状態になるよう、干渉したビームの偏光状態を干渉計の検出アーム内で調整することも可能である。しかしながら、OCTに広く使用されているファイバ干渉計の場合、最終偏光状態は、干渉計のあらゆるアーム内における光ファイバの湾曲で決まり、この湾曲は、場合によっては温度および機械的な振動に応じて変化するため、場合によってはファイバの偏光状態を動的に制御しなければならない。そのため、SD−OCTシステムにさらにコストが追加されることは明らかである。
【0057】
分光計が実質的に偏光に無関係である場合、SD−OCTシステムに必要なことは、標本アームと参照アームとの間の偏光状態を実質的に整合させることだけであり、それ以外の偏光制御を必要とすることなく、干渉したビームを分光計に送ることができる。実質的に偏光に無関係の分光計は、単純で、かつ、信頼性の高いSD−OCTシステムの設計に有利である。
【0058】
本発明の1態様として、SD−OCTシステムの交差分散分光計は、実質的に偏光に無関係になっている。第1の単純な方法は、互いに直交しているS偏光およびP偏光の回折効率が、関心のある中心波長に対して互いに交差する、つまり、実質的に等しくなるよう、適切なブレーズ角および適切な回折格子溝密度を選択することである。偏光依存性を補償するための第2の単純な方法は、偏光補償光学エレメントを検出アーム960に沿って挿入するか、あるいは交差分散分光計内の入口と検出器アレイとの間の光路に沿った任意の部分に挿入することである。このような偏光補償器は部分偏光子であってもよく、それにより、1つの偏光方向の光が実質的に透過している間、直交する偏光方向の光の一部を分光計に吸収させるか、あるいは分光計から反射して遠ざけることができる。多くの部分偏光子が存在しており、ブルースター角の周りに傾斜したガラスの単片あるいは複数の単片のスタックは、このような部分偏光子の好例である。
【0059】
別法としては、図11(a)ないし(e)に示すように、様々な方法で分光計内のエシェル格子を実質的に偏光に無関係にすることも可能である。第1の実施例は、図11(a)に示すように、回折格子を実質的に偏光に無関係にするために、回折格子周期が同じであり、かつ、変調度またはブレーズ角が異なる2つの異なる回折格子エレメント1260および1262を有する表面レリーフ・プロファイルを備えた回折格子である(たとえば米国特許第6487019号明細書を参照されたい)。個々の回折格子エレメント1260または1262の表面レリーフ・プロファイルの反復回数は、1からNまで(Nは整数である)変更することができることに留意されたい。第2の実施例は、図11(b)に示すように、回折格子を実質的に偏光に無関係にするために、金属ベース層1266および屈折率が変化する誘電材料の層1268を有するハイブリッド金属−誘電体回折格子である(たとえば米国特許第6754006号明細書を参照されたい)。第3の実施例は、図11(c)に示すように、回折格子を実質的に偏光に無関係にするために、溝の高さ対幅の比率が2より大きい概ね長方形の回折格子プロファイル1272を有する薄板体積回折格子である(たとえば米国特許第6724533号明細書を参照されたい)。第4の実施例は、図11(d)に示すように、回折格子を実質的に偏光に無関係にするために、基板1276および基板1276に隣接する反射材料1278を備えた回折格子である(たとえば米国特許第6577786号明細書を参照されたい)。もう1つの実施例は、図12(d)に示すように、回折効率が高く、かつ、偏光に対する独立性の程度が高い他の光媒体1284に埋め込まれた円形ロッド1282を使用して構築されたブレーズド・フォトニック結晶格子である(たとえばポポフ イーら(Popov E.et al.)の「Almost perfect blazing by photonic crystal rod gratings」、Applied Optics 40(15)2417〜2422ページを参照されたい)。
【0060】
本発明の1つまたは複数の装置は、関連する方法に拡張することも可能であることを理解されたい。たとえば、本発明の1態様は、スペクトル・インタフェログラムを測定するために、干渉したビームを干渉計から交差分散分光計へ送る工程を含んだ、スペクトル領域光コヒーレンス断層放射線写真を実行する方法である。本発明の他の態様は、円錐回折によって誘導されるひずみを、集束光学系によってもたらされる平衡ひずみを使用して補償する工程を含んだ、円錐回折したスペクトルを複数の回折次数から実質的に直線に集束させる方法である。本発明のさらに他の態様は、スペクトル・インタフェログラムを測定するために、干渉したビームを干渉計から偏光に無関係の交差分散分光器へ送る工程を含んだ、スペクトル領域光コヒーレンス断層放射線写真を実行する方法である。
【0061】
本発明についての以上の説明は、本発明を実例で示し、かつ、説明するためのものであり、本発明を余すところなく説明することを意図したものでも、あるいは開示した厳密な形態に本発明を制限することを意図したものでもない。以上の教示に照らして、多くの修正および変形形態が可能である。実施形態は、当業者が本発明を様々な実施形態に、企図されている特定の用途に適した様々な改良を加えて最も良好に使用することができるよう、本発明の原理および本発明の実際的なアプリケーションを最も良好に説明するべく選択され、かつ、記述されている。
【0062】
以下の特許、特許出願および他の文書は、本願明細書に援用する。
米国特許文書
米国特許第5565986号明細書
米国特許第6487019号明細書
米国特許第6577786号明細書
米国特許第6657727号明細書
米国特許第6710330号明細書
米国特許第6724533号明細書
米国特許第6754006号明細書
米国特許第6757113号明細書
米国特許第6847454号明細書
米国特許第6859317号明細書
米国特許出願公開第2004/0239938号明細書
米国特許出願公開第2004/0239943号明細書
米国特許出願公開第2005/0018201号明細書
米国特許出願公開第2005/0213103号明細書
米国特許出願番号第11/196,043号
外国特許文書
特開2000−046729号公報
特開2001−174404号公報
国際公開03/062802号パンフレット
国際公開03/073041号パンフレット
国際公開2004/043245号パンフレット
国際公開2004/111929号パンフレット
その他の刊行物
デ・ボー、ジェイ エフら(De−Boer,J.F.,et al.)(2003年)の「Improved signal−to−noise ratio in spectral−domain compared with time−domain optical coherence tomography.」Optics Letters 28(21):2067〜2069ページ
チョマ、エム エー、エム ブイ サルニクら(Choma,M.A.,M.V.Sarunic,et al.)(2003年)の「Sensitivity advantage of swept source and Fourier domain optical coherence tomography.」Optics Express 11(18):2183〜2189ページ
ライトゲブ、アール エーら(Leitgeb,R.A.,et al.)(2003年)の「Phase−shifting algorithm to achieve high−speed long−depth−range probing by frequency−domain optical coherence tomography.」Optics Letters 28(22):2201〜2203ページ
ライトゲブ、アール エーら(Leitgeb,R.A.,et al.)(2003年)の「Performance of Fourier domain vs.time domain optical coherence tomography.」Optics Express 11(8):889〜894ページ
メイスター ディら(Maystre D.et al.)(1985年)の「Geometrical invariance property of gratings」Applied Optics 24(2):215〜216ページ
マクリーンら(McLean et al.)の1998年の「Design and development of NIRSPEC:a near−infrared echelle spectrograph for the Keck II telescope」、SPIE Proceedings Vol.3354、566ページ
ポポフ イーら(Popov E.et al.)の「Almost perfect blazing by photonic crystal rod gratings」、Applied Optics 40(15):2417〜2422ページ
スミス、エル エムおよびシー シー ドブソン(Smith,L.M.and C.C.Dobson)(1989年)の「Absolute displacement measurements using modulation of the spectrum of white light in a Michelson interferometer.」Applied Optics 28(15):3339〜3342ページ
コ、ティー エイチ、ジェイ ジー フジモトら(Ko,T.H.,J.G.Fujimoto,et al.)(2005年)の「Comparison of Ultrahigh−and Standard−Resolution Optical Coherence Tomography for Imaging Macular Pathology.」Ophthalmology 112(11):1922〜1935ページ
ウォツコウスキー、エムら(Wojtkowski,M.,et al.)(2003年)の「Real−time in vivo imaging by high−speed spectral optical coherence tomography.」Optics Letters 28(19):1745〜1747ページ
ツェイリコビッチ、アイら(Zeylikovich,I.et al.)(1998年)の「Nonmechanical grating−generated scanning coherence microscopy.」Optics Letters 23(23):1797〜1799ページ
パーマー、シー(Palmer,C.)(2002年)のDiffraction Grating Handbook、第5版、リチャードソングレーティングラボラトリ(Richardson Grating Laboratory)、[米国ニューヨーク州ロチェスター(Rochester)所在]
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】通常の古典的構成つまり平面内構成に使用されている、入射する光ビームを複数の回折次数で回折させるための平面反射回折格子を示す図。
【図2】直交座標系Oxyzがz軸に平行の回折格子の溝を使用して仮定された円錐回折の一般的な事例を示す図。
【図3(a)】光が回折してほぼ入射方向に向かって戻り、また、入射した光ビームおよび回折した光ビームが円錐回折を介して互いに分離されるリトロー円錐回折を示す斜視図。
【図3(b)】図3(a)に示す構成の上面図。
【図4】左側の画像がひずみが全く存在しない完璧な画像であり、中央の画像が正のひずみ(糸巻き形ひずみとも呼ばれている)を有する画像であり、右側の画像が負のひずみ(樽形歪曲とも呼ばれている)を有する画像である、レンズ収差によるひずみを示す図。
【図5】負のひずみを有するレンズが特定の垂直軸ずれ変位で光路内に置かれ、そのために、円錐回折したビームが、アベラント・レンズによる負のひずみを受けて、回折したビームの正のひずみを実質的に補償しているリトロー円錐回折構成の好ましい実施形態を示す図。
【図6(a)】集束したスペクトル線をさらに直線化するためにフィールド平面化レンズが使用され、開口数を整合させるために入力ポート・レンズが使用され、かつ、分光計の総合サイズをさらに小さくするために偏向ミラーが検出器アレイの前面に配置された、円錐回折をベースとするリトロー分光計の好ましい実施形態の斜視図。
【図6(b)】図6(a)の上面図。
【図7(a)】低分散エレメントとしてプリズムを使用したリトロー構成における交差分散エシェル分光写真器の好ましい実施形態を示す図。
【図7(b)】フィールド平面化レンズが挿入されている点を除き、図7(a)に示すリトロー構成と同様のリトロー構成における交差分散エシェル分光写真器の第2の好ましい実施形態を示す図。
【図7(c)】交差分散エシェル分光写真器の代替実施形態を示す図。
【図8】本特許の本文に記載されている条件下におけるカメラ上のスペクトル次数の位置を示すグラフ。
【図9】SD−OCTシステムにおける交差分散分光計の使用を示す図。
【図10(a)】入力ビームおよび回折した出力ビームのための共用共通レンズとして集合的に作用するダブレットおよびシングレットからなる、SD−OCTシステムにおけるリトロー分光計のためのレンズ・システムの設計を示す図。
【図10(b)】集束したスペクトル線を直線からの逸脱がわずかに最大1ミクロンまで直線化することができる、約3.1%の正のひずみ(糸巻き形ひずみ)を有するフィールド平面化レンズの挿入および適切な配置を示す図。
【図11(a)】回折格子を実質的に偏光に無関係にするために、回折格子周期が同じであり、かつ、変調度またはブレーズ角が異なる2つの異なる回折格子エレメントを有する、表面レリーフ・プロファイルを備えた回折格子を示す図。
【図11(b)】回折格子を実質的に偏光に無関係にするために、金属ベース層および屈折率が変化する誘電材料の層を有するハイブリッド金属−誘電体回折格子を示す図。
【図11(c)】回折格子を実質的に偏光に無関係にするために、溝の高さ対幅の比率が2より大きい概ね長方形の回折格子プロファイルを有する薄板体積回折格子を示す図。
【図11(d)】回折格子を実質的に偏光に無関係にするために、基板および基板に隣接する反射材料を備えた回折格子を示す図。
【図11(e)】回折効率が高く、かつ、偏光に対する独立性の程度が高い他の光媒体に埋め込まれた円形ロッドを使用して構築されたブレーズド・フォトニック結晶格子を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトル領域OCTシステムであって、
広帯域光源と、
光を標本経路および参照経路に沿って分割するためのビーム・スプリッタと、
該標本経路および該参照経路の両方から戻る光を受信するための分光計であって、前記分光計が、該光を第1の軸に沿って波長に応じて角分散させるための回折格子を含み、該広帯域光源のスペクトル内の異なる波長領域に対応する少なくとも2つの回折次数が前記第1の軸に沿って空間的に重畳しており、前記分光計が、該回折次数を該第1の軸に対して垂直な軸に沿って分離するための光学エレメントを含み、更に、前記分光計が、少なくとも2つの線形検出器アレイを含む光検出器を含み、前記アレイが前記第1の軸に沿って展開し、前記複数のアレイのうちの1つが前記複数の回折次数のうちの1つを受け取るように配置されているとともに、他のアレイが他の回折次数を受け取るように配置され、個々のアレイが、波長に応じた出力信号を生成するためのものである、前記分光計と、
該出力信号を解析し、該標本経路に沿った反射率分布を引き出すためのプロセッサと
を備えたOCTシステム。
【請求項2】
前記光学エレメントがプリズムである、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項3】
前記光学エレメントが回折格子である、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項4】
前記回折格子および前記検出器アレイが実質的にリトロー状態で配置されている、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項5】
受信光と分散する光の両方の経路に共通集束光学系が配置されている、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項6】
前記回折格子が前記受信光に対して傾斜して円錐回折を誘導し、それにより前記分散する光の前記経路を前記第2の軸に沿って入射する光から空間的に分離する、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項7】
ビームの画像の前記円錐回折に関連するあらゆる非直線性を低減するための手段を備える、請求項6に記載のOCTシステム。
【請求項8】
前記円錐回折によって前記分散する光のフットプリントに前記第1の軸に対する非直線性が生じ、OCTシステムは、前記回折格子と前記アレイとの間に配置された光学エレメントであって、前記円錐回折に起因する該非直線性を低減して、前記アレイに対するフットプリントの位置決めを改善するための光学エレメントを備える、請求項6に記載のOCTシステム。
【請求項9】
前記光を前記標本経路および参照経路に沿って分割する前記ビーム・スプリッタが、前記標本経路および前記参照経路の両方から戻る前記光を結合するようにも機能する、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項10】
前記分光計が、前記光検出器によって生成される前記出力信号が、入射する光の偏光状態に対して実質的に影響を受けないように構成されている、請求項1に記載のOCTシステム。
【請求項11】
スペクトル領域OCTシステムであって、
広帯域光源と、
光を標本経路および参照経路に沿って分割するためのビーム・スプリッタと、
該標本経路および該参照経路の両方から戻る光を受信するための分光計であって、前記分光計が、該光を第1の軸に沿って波長に応じて角分散させるための回折格子を含み、該広帯域光源のスペクトル内の異なる波長領域に対応する複数の回折次数が前記第1の軸に沿って空間的に重畳しており、前記分光計が、該回折次数を該第1の軸に対して垂直な軸に沿って分離するための光学エレメントを含み、更に、前記分光計が、複数の検出器エレメントの2次元アレイを備えた光検出器を含み、前記アレイ内の選択された行が、前記複数の回折次数のうちの選択された回折次数に対応する波長の範囲を検出し、前記光検出器が、波長に応じた出力信号を生成するためのものである、前記分光計と、
該出力信号を解析し、該標本経路に沿った反射率分布を引き出すためのプロセッサと
を備えたスペクトル領域OCTシステム。
【請求項12】
前記光学エレメントがプリズムである、請求項11に記載のOCTシステム。
【請求項13】
前記光学エレメントが回折格子である、請求項11に記載のOCTシステム。
【請求項14】
前記回折格子および前記検出器アレイが実質的にリトロー状態で配置されている、請求項11に記載のOCTシステム。
【請求項15】
受信光と分散する光の両方の経路に共通集束光学系が配置されている、請求項11に記載のOCTシステム。
【請求項16】
前記回折格子が前記受信光に対して傾斜して円錐回折を誘導し、それにより前記分散する光の前記経路を前記第2の軸に沿って入射する光から空間的に分離する、請求項11に記載のOCTシステム。
【請求項17】
ビームの画像の前記円錐回折に関連するあらゆる非直線性を低減するための手段を備える、請求項16に記載のOCTシステム。
【請求項18】
前記円錐回折によって前記分散する光のフットプリントに前記第1の軸に対する非直線性が生じ、OCTシステムは、前記回折格子と前記アレイとの間に配置された光学エレメントであって、前記円錐回折に起因する該非直線性を低減して、前記アレイに対するフットプリントの位置決めを改善するための光学エレメントを備える、請求項16に記載のOCTシステム。
【請求項19】
前記光を前記標本経路および参照経路に沿って分割する前記ビーム・スプリッタが、前記標本経路および前記参照経路の両方から戻る前記光を結合するようにも機能する、請求項11に記載のOCTシステム。
【請求項20】
前記分光計が、前記光検出器によって生成される前記出力信号が、入射する光の偏光状態に対して実質的に影響を受けないように構成されている、請求項11に記載のOCTシステム。
【請求項21】
スペクトル領域OCTシステムであって、
広帯域光源と、
光を標本経路および参照経路に沿って分割するためのビーム・スプリッタと、
該標本経路および該参照経路の両方から戻る光を受信するための分光計であって、前記分光計が、該光を第1の軸に沿って波長に応じて角分散させるための回折格子を含み、該広帯域光源のスペクトル内の異なる波長領域に対応する複数の回折次数が前記第1の軸に沿って空間的に重畳しており、前記分光計が、該回折次数を該第1の軸に対して垂直な軸に沿って分離するための光学エレメントを含み、更に、前記分光計が、複数の検出器エレメントの2次元アレイを備えた光検出器を含み、前記アレイ内の選択された行が、前記複数の回折次数のうちの選択された回折次数に対応する波長の範囲を検出し、前記光検出器が、波長に応じた出力信号を生成するためのものであり、該回折格子および該検出器アレイが実質的にリトロー状態で配置されており、前記回折格子が受信光に対して傾斜して円錐回折を誘導し、それにより分散する光の経路を前記第2の軸に沿って入射する光から空間的に分離する、前記分光計と、
該出力信号を解析し、該標本経路に沿った反射率分布を引き出すためのプロセッサと
を備えたスペクトル領域OCTシステム。
【請求項22】
ビームの画像の前記円錐回折に関連するあらゆる非直線性を低減するための手段を備える、請求項21に記載のOCTシステム。
【請求項23】
前記円錐回折によって前記分散する光のフットプリントに前記第1の軸に対する非直線性が生じ、OCTシステムは、前記回折格子と前記アレイとの間に配置された光学エレメントであって、前記円錐回折に起因する該非直線性を低減して、前記アレイに対するフットプリントの位置決めを改善するための光学エレメントを備える、請求項21に記載のOCTシステム。
【請求項24】
前記分光計が、前記光検出器によって生成される前記出力信号が、前記入射する光の偏光状態に対して実質的に影響を受けないように構成されている、請求項21に記載のOCTシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図11(c)】
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【図11(d)】
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【図11(e)】
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【公表番号】特表2008−528953(P2008−528953A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551610(P2007−551610)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000435
【国際公開番号】WO2006/077106
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【Fターム(参考)】