説明

スポット溶接機に供せられる溶接電極

【課題】この発明はスポット溶接機に供せられる溶接電極で、スポット溶接すべき機材や部材などの被溶接材の加圧通電に直接関与する先端のチップ部分をシャンク部分とこのシャンク部分とともに一体に構成し、この一体のホルダ部分からシャンク部分を経てチップ部分まで冷却水通路を連通させて構成する一方、少なくとも先端チップ部分の外周には導電性テ−プを沿わせて一体化した溶接電極を提案する。
【解決手段】スポット溶接機1の少なくとも一方の電極として供せられる溶接電極100において、スポット溶接すべき機材、部材を加圧し通電するチップ部分110とこのチップ部分に接続されるシャンク部分120とこのシャンク部分に接続されるホルダ部分130とを一体に構成する一方、このホルダ部分からシャンク部分を介してチップ部分に連通させて冷却水通路140を設け、さらに、チップ部分およびシャンク部分の外周に導電性テ−プ150を沿わせて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポット溶接機に供せられる溶接電極であって、なかでも、スポット溶接すべき機材部材などの被溶接材を加圧通電して溶接する先端のチップ部分とこのチップ部分に接続されるシャンク部分とこのシャンク部分に接続されるホルダ部分とが一体に構成され、この一体のホルダ部分からシャンク部分を経てチップ部分まで冷却水通路を連通させ、しかも、少なくとも先端チップ部分の外周に導電性テ−プを沿わせたものである。
【背景技術】
【0002】
一般にいって、スポット溶接は溶接すべき金属板や金属枠など(以下、被溶接材という)を重ね合わせ、この部分を加圧通電して接合する抵抗溶接の一つであって、溶接部が点又はスポットであるところから、とくに、スポット溶接といわれている。また、利用するエネルギ−の面からみると、抵抗溶接もア−ク溶接と同様に電気エネルギ−であるが、その利用態様は相違し、ア−ク溶接はコンタクトチップで通電されて送られる芯線と被溶接材とを溶融させて融接する溶接法であるのに対し、スポット溶接は重ね合わせ部分の通電によって生じる抵抗熱又はジュ−ル熱を溶接熱源とする溶接法である。
【0003】
このようにア−ク溶接が連続的に溶加材として送り出す芯線と被溶接材とを溶加して接合すること、すなわち、芯線の融接であることから、溶接時に芯線の通電に関与するコンタクトチップとして数多くの改善、改良が提案されている。これに対し、圧接の領域に属するスポット溶接では被溶接材を直接関与するものが溶接チップであるのにも拘らず、その改善、改良に係る溶接チップはほとんど提案されていない。
【0004】
例えば、特開2004−230409号公報や特開2004−209529号公報には改善、改良に係る溶接チップがそれぞれに記載されている。いずれにしても、これら溶接チップは電気エネルギ−を利用する点においてスポット溶接と共通するア−ク溶接のコンタクトチップである。ア−ク溶接の一つとして知られる炭酸ガスア−ク溶接をみると、円筒状のガスノズル内にコンタクトチップといわれる溶接チップが配置され、この溶接チップから芯線が繰り出され、この芯線を電極として被溶接材との間でア−クを発生させて溶接するものである。
【0005】
この溶接チップは別名コンタクトチップといわれるように芯材として送られる電極ワイヤ−に対しその軸心を通る挿通孔を通る間に通電させア−クを発生するものであるため、数々の改善が施される余地があり、上記のところのほかにも改善されたものが提案されている。
【0006】
いずれの構造のものでも、コンタクトチップの挿通孔に芯線を通して通電して溶接を行なっていると、この挿通孔(案内孔)が摩耗し、コンタクトチップと芯線との接触不良、ア−ク発生の不安定などの諸現象が生じ、一定期間使用後の交換を配慮して先端のコンタクトチップが電極本体に螺着される構造に構成されている。
【0007】
これに反し、スポット溶接そのものが被溶接材の物性(抵抗)を利用して発熱させるものであり、溶接熱源は被溶接物間に発生するジュ−ル熱である。ジュ−ル熱は被溶接材間のみで発生させるものである。また、溶接条件を左右する溶接電流や加圧力が溶接チップや溶接電極によって与えられるのにも拘らず、溶接チップや溶接電極の構造を改善したものはほとんど見当らない。
【0008】
すなわち、スポット溶接は自動車ボディの製造を含めて数多くの分野、例えば板金加工などの分野で利用されている。しかし、いずれの用途のスポット溶接機であっても、溶接電極は溶接チップとシャンク部分とホルダ部分とから成ってこれら各部分が互いに組合わせ又は螺合されて一体化されて構成されている。このため、被溶接材の材質、厚さ、表面状態(例えば、表面処理されているかどうか、表面処理はどのようなものか)に合わせて溶接チップを選択し、溶接チップを消耗品として取替えて溶接することが行なわれている。
【0009】
しかしながら、この構造の溶接電極であると、各部分の継ぎ目の接触抵抗が多くなって好ましくなく、接触抵抗が使用中のゆるみによって変化し、溶接チップと被溶接材間に発生する熱を速やかに電極内に消費させることができなくなって溶接チップが被溶接材に融着することも起こる。
【0010】
更に説明すると、スポット溶接機は、2枚の被溶接物を上下の溶接電極先端の溶接チップによってはさみスポット溶接するものである。
【0011】
なかでも、最も一般的な直上加圧式のスポット溶接機は、上下の溶接電極の対向端部には溶接チップが取付けられ、上部電極を下部電極に向けて下降させ被溶接材の溶接部を局部的に加圧して溶接する構造で、プレス機器とほとんど同じ構造になっており、通常、一定の場所に据付けられて使用されるから、定置式とも云われている。定置式で溶接するときは、被溶接材は溶接機のところに移動させ、溶接すべきところ、すなわち、被溶接点を上下の溶接電極の間に順次に移動させながら溶接する。要するに、被溶接材を溶接機のところまで移動させ、そこで被溶接材を作業員が保持しながら被溶接点を順次に送って溶接が行なわれる。この運搬や被溶接点への順次の送り、移動は大変な重筋作業で、定置型スポット溶接機のほかにポ−タブル型や、定置型に較べて利用範囲を大巾に拡大したテ−ブル型なども提案されている。
【0012】
ポ−タブル型は被溶接材をはさむ溶接電極を溶接電源などから離れて持ち運びできるように構成されているが、大きな加圧力が加えられない。一方、テ−ブル型の一例は先に本発明者らが特願平5−139543号(特許第3445636号)明細書に示す構造のスポット溶接機である。このスポット溶接機の上部の溶接電極が先端の溶接チップとシャンク部分とホルダとから成る棒状の溶接ガンと構成されるが、下部の溶接電極はテ−ブル状に構成されるものである。
【0013】
いずれの型式のスポット溶接機であっても、少なくとも上部の電極として働く溶接ガンは溶接チップとシャンク部分とホルダとが組み合わせて構成され、先端の溶接チップが消耗品として交換できるように構成されている。しかし、溶接チップが加圧および加熱を達成することによって、点弧溶接、つまり局部的な通電によってスポット溶接が達成できる。要するに、スポット溶接は一つの電極として働く溶接ガン先端の溶接チップによって、被溶接材に高い加圧力と電流を与えるが、溶接チップと被溶接材との間に多量の熱が発生し、熱を速やかに溶接ガス内に放散して消費させないと、被溶接材と溶接チップは融着し、溶接ガンの電極としての寿命が大巾に低下する。この溶接熱の放散消費のため、電極として働く溶接ガンの内部に冷却水の流動通路が設けられているが、交換自在の溶接チップの内部にまで深く冷却通路を延長することは不可能であり、流動性促進のため冷却水の圧力を高めようとしても、溶接が継ぎ目のところから冷却水がもれ、冷却能力を大きくすることができない。
【特許文献1】特開2004−230409号公報
【特許文献2】特開2004−209529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記欠点を解決することを目的とし、具体的には、通常、上部電極として働く溶接ガンのチップ部分とシャンク部分とホルダ部分とを一体に構成する一方、この溶接ガンの内部にその軸線方向に沿って冷却水通路を設け、この冷却水通路の先端を溶接ガン内まで延長させる。
【0015】
したがって、溶接ガンはチップ部分を含めて一体に構成されているため、継ぎ目が全くなく接触抵抗が小さく電流ロスは最小限に減少できる。また、継ぎ目のないことから溶接チップの熱は迅速に抵抗なくシャンク部分やホルダ部分に放散でき、チップ部分の破損は防止できる。
【0016】
また、この構成の溶接ガンから成る溶接電極は、少なくともそのチップ部分の周囲には導電性の連続チップを介在させて成るため、溶接時には被溶接材に連続テ−プを介して溶接されることになり、チップ部分が溶融したり反応物が堆積することがない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
まず、本発明は、スポット溶接機の少なくとも一方の電極として供せられる溶接電極において、スポット溶接すべき機材部材を加圧通電して溶接するチップ部分とこのチップ部分に接続されるシャンク部分とこのシャンク部分に接続されるホルダ部分とを一体に構成する一方、このホルダ部分からシャンク部分を介してチップ部分に連通させて冷却水通路を設けて成ることを特徴とする。
【0018】
次に、本発明は、さらに、少なくともチップ部分およびシャンク部分の外周に導電性テ−プを沿わせて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
まず、本発明においては、スポット溶接機で少なくとも一方の電極を構成する溶接ガンは先端のチップ部分から後端のホルダ部分まで一体に構成されるため、導電性材料からなる溶接ガンは継ぎ目なく一体になっている。このため、継ぎ目などの接触抵抗がなく電流ロスがなく、溶接時に発生する熱は速やかに放散消失できる。また、内部を流通する冷却水は水圧や流速を速めても外部に全くもれることなく、冷却効果を大巾に上昇できる。
【0020】
また、上記構造の溶接ガンにおいて少なくとも先端のチップ部分の外周に導電性の連続テ−プを沿わせて成るため、溶接は連続テ−プ介在のもとで行なわれるため、チップ部分を取替えたりドレッシングなどの手入れを行なう必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
そこで、上記のところの手段たる構成ならびにその作用について図面に示すところを通じてさらに具体的に示すと、つぎのとおりである。
【0022】
なお、図1は本発明の一つの実施例に係るスポット溶接機に供せられる溶接電極の構造の一部を縦断面で示す説明図である。
【0023】
図2は図1に示す溶接電極の先端チップ部分の縦断面図である。
【0024】
図3は図1におけるA−A線上の断面図である。
【0025】
図4は図1におけるB−B線上の断面を分解して示す説明図である。
【0026】
まず、図1において、符号1は本発明の一つの実施例に係る溶接電極を具えるスポット溶接機を示す。すなわち、スポット溶接機1においてはその上部として本発明の一つの実施例に係る溶接電極が用いられ、この溶接電極を符号100で示す。溶接電極100は、図1および図2に示す例においては、板状でテ−ブル状に構成される下部の溶接電極200との間で被溶接物Wをはさみ、点接触させることによって、スポット溶接する。しかしながら、本発明に係る溶接電極100は図1および図2に示すように上部の電極として使用するほかに、下部の電極としても適用できる。後に示すように、図1および図2に示す例は下部の電極を板状テ−ブル状に構成するテ−ブル式の溶接機であるが、例えば、定置式といわれる他の型式のスポット溶接機にも適用でき、この場合には、本発明に係る棒状の溶接電極100をそのまま下部の電極として用いることができる。
【0027】
このように、溶接電極100は、従来例のスポット溶接機において少なくとも一方の電極として用いることができるものである。この溶接電極100は先端のチップ部分110とシャンク部分120とホルダ部分130とが継ぎ目なく一体に構成される。この構造の溶接電極100と板状のテ−ブル式電極200をそれぞれ上部と下部の電極として使用し、その間で被溶接物Wをはさんでスポット溶接するスポット溶接機であると、上部の溶接電極100は棒状の溶接ガンとして構成し、この溶接ガンを略々垂直、つまり縦に用いる縦向き姿勢でも、略々水、つまり横向きの姿勢でも用いることができる。何れの姿勢であっても、先端の溶接チップ110は下部の板状電極200に向って昇降し、これが平坦な導電性の板状材、例えば銅板から構成されると、その表面は全体にわたって電極として用いることができ、その上に被溶接物Wが置かれると、被溶接物Wがおかれて溶接チップ110によって加圧されるところが下部のテ−ブル式電極200のスポット電極となり、その間ではさまれてスポット溶接される。
【0028】
以上のとおり、スポット溶接機1で使用される溶接電極100においては、図1および図2に示すように、チップ部分110、シャンク部分120およびホルダ部分130が一体として全く継ぎ目なく構成する。したがって、製作する場合には、これらを一体として鋳造するのが好ましい。すなわち、チップ部分110は溶接すべき機材や部材Wを加圧通電して溶接する部分であって、このチップ部分110は従来例では溶接チップとして分離されて構成され、継ぎ目が残り、接触抵抗が大きくなる。しかし、本発明ではこのチップ部分110はシャンク部分120に継ぎ目なく一体に連続して構成される。
【0029】
このチップ部分110はシャンク部分120に接続され、シャンク部分120にホルダ部分130に接続され、これら各部分を継ぎ目なく一体に構成する。要するに、従来例の溶接電極は、先にのべたとおり、先端の溶接チップ、シャンク、ホルダが分離して構成するが、本発明ではこれらに対応する各部分を連続した一体のものとして構成するところに一つの特長がある。
【0030】
また、このように各部分が連続して構成された溶接電極100においてその中心軸に沿って冷却水通路140を設け、この冷却水通路140はこのホルダ部分130からシャンク部分120を介してチップ部分110まで連通させる。
【0031】
すなわち、冷却水通路140は往路141と復路142から成って、流入口143から流入された冷却水は先端のチップ部分110で噴射されてチップ部分110を冷却し、復路142を通って流出口144から排出される。
【0032】
このように冷却水通路140を構成すると、溶接電極100そのものが一体に構成され、この中心軸に沿って冷却水通路140は先端のチップ部分110まで達することになって、直接チップ部分110が冷却できる。このため、チップ部分110が溶接熱にさらされても溶接熱はチップ部分110に達した冷却水によって相当量の溶接熱が抜熱できる。
【0033】
また、冷却水の流動は、溶接電極100の各部分の間に継ぎ目がないために、もれが全くなく、円滑化し溶接熱の放散が促進される。
【0034】
次に、以上のとおり構成される溶接電極100において少なくともチップ部分110およびシャンク部分120の外周に導電性テ−プ150を沿わせるようにする。導電性テ−プ150を沿わせる場合、いずれの態様でも実施できるが、図1、図3および図4に示すとおり、構成する。チップ部分110およびシャンク部分120の外周において軸方向に案内通路160を延在させ、この案内通路160に沿って導電性テ−プ150を案内させ、このように導電性テ−プ150を介在させて溶接すると、チップ部分110が直接被溶接材Wに接触して溶接することがないため、被溶接材Wと融着することなく、円滑に溶接できる。とくに、溶接すべき溶接点は導電性テ−プ150を順次に送って溶接されるため、常に新しい接触面によってスポット溶接できるため、接触面は汚れることなくクリ−ンとなる。
【0035】
更に説明すると、スポット溶接はチップ部分110によって加圧、通電されて溶接が行なわれ、仮りに、チップ部分110が直接接触させ、これがくり返されると、チップ部分110の表面は局部的に溶融し汚染され、被溶接材の表面には溶接跡などが残り、汚されて溶接部の品質が劣化する。そこで、チップ部分110内は内部から冷却することになり、なるべくチップ部分110の外表面の近くまで冷却できる構造が望ましい。この点、本発明に係る溶接電極100はチップ部分110からホルダ部分130まで一体に構成されているため、内部の冷却水通路140は継ぎ目なくチップ部分110の外表面の近くまで(なかでも5〜7mm程度)達し、そこで冷却水を噴射させるため、チップ部分110は効果的に冷却できる。さらに、継ぎ目なく一体化のため、冷却水はもれる心配がなく水量や流量を自由に調整でき、この面からも冷却効果を上昇させることができる。
【0036】
しかし、このように優れている点があるが、チップ部分110が薄くなり、外面が汚染されるときにドレッシングをくり返すことも好ましくない。被溶接材Wにとっては常に新しい電極面が接触して溶接されるのが好ましい。この面から導電性テ−プ150を介在させるとともに、溶接毎に導電性テ−プ150を間欠的に送って常に導電性テ−プ150の新しい面が接触させて溶接する。このように構成すると、電極チップのドレッシングや交換などの作業から開放され、溶接時に発する溶接熱の相当部分が導電性テ−プ150に運ばれて抜熱され、その上に先にのべた冷却能力の上昇が加味されるため、チップ部分110は常に冷却された状態で溶接できる。
【0037】
このように本発明に係る溶接電極においてチップ部分110とシャンク部分120の外周には軸方向に沿って案内通路160を延在させ、案内通路160に沿って導電性テ−プ150を案内させ、チップ部分110の外表面との間で導電性テ−プ150に接触抵抗が少なくなるように沿わせる。案内通路160は、チップ部分110、シャンク部分120およびホルダ部分130から成る溶接電極においてそれと一体のものとして少なくともシャンク部分の外周にその軸方向に沿って方形断面の平坦溝161を形成し、平坦溝161を案内として導電性テ−プ150を送らせるように構成する。また、この平坦溝161を封鎖するために、一対の封鎖リング162を設け、さらに、チップ部分110の先端は、図3に示すとおり、一対のフラット面111を形成し、そのフラット面111に接触させて導電性テ−プ150を巻付ける。
【0038】
また、導電性テ−プ150は溶接毎に順次に送られることが必要である。このために、導電性テ−プ150を巻付けた巻戻しリ−ル151と巻取リ−ル152をシャンク部分120をはさんで設け、巻取リ−ル152は間欠的に回転するように構成する。すなわち、巻取リ−ル152には一点鎖点で示すのこ歯車153に連結し、これに係止片154をかみ合わせる。のこ歯車153は例えば反時針方向に係止片154によって送られ、単位ピッチづつ導電性テ−プ150が巻取られて送られる。なお、導電性テ−プ150の巻取り巻戻し機構は必ずしも上記のとおり構成しなくとも、適用するスポット溶接機の加圧機構に合わせていずれのものからも構成できる。
【0039】
また、冷却水通路140は往路141と復路142とから成るが、とくに往路141の先端はチップ部分110内で開孔させ、冷却水がそこで噴射させ、チップ部分110の外表面が速やかに冷却させるようにするが、この場合、図2に示すとおり、斜めに切断し、とくに開孔面積を拡大して冷却水が急激に膨脹して流速を失ない、冷却能力を高めるようにするのが好ましい。すなわち、冷却水による冷却はなるべく流速を低下させて冷却するのが好ましい。この点に、チップ部分110の内部に広い空間をとりそこに向けて噴き出すと、冷却水の体積は急に膨脹し、チップ部分110が壁面が薄いこともあって速やかに溶接熱をとり、冷却できる。このため、導電性テ−プ150とともに取り去られる溶接熱はその一部はチップ部分でとられ、その後、冷却水によりシャンク部分やホルダ部分の外周から取り去られるため、溶接熱はほとんど除去できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のとおり、本発明はスポット溶接機に供せられる溶接電極であり、このスポット溶接機としてテ−ブル式のものを中心に説明したが、テ−ブル式以外に一対の棒状電極から成るスポット溶接機一般に適用でき、とくに、冷却効果を向上させ、しかも、導電性テ−プを介在させるため、常に溶接は新しい接触面をもつ電極で溶接できることになって品質的にすぐれる溶接部、スポットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一つの実施例に係るスポット溶接機に供せられる溶接電極の構造の一部を縦断面で示す説明図である。
【図2】図1に示す溶接電極の先端チップ部分の縦断面図である。
【図3】図1におけるA−A線上の断面図である。
【図4】図1におけるB−B線上の断面を分解して示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 スポット溶接機
100 溶接電極
110 チップ部分
120 シャンク部分
130 ホルダ部分
140 冷却水通路
150 導電性テ−プ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポット溶接機の少なくとも一方の電極として供せられる溶接電極において、スポット溶接すべき機材などの被溶接材を加圧し通電するチップ部分とこのチップ部分に接続されるシャンク部分とこのシャンク部分に接続されるホルダ部分とを一体に構成する一方、このホルダ部分から前記シャンク部分を介して前記チップ部分に連通させて冷却水通路を設けて成ることを特徴とするスポット溶接で使用されるスポット溶接機に供せられる溶接電極。
【請求項2】
さらに、少なくとも前記チップ部分および前記シャンク部分の外周に導電性テ−プを沿わせて成ることを特徴とする請求項1記載のスポット溶接機に供せられる溶接電極。
【請求項3】
前記チップ部分および前記シャンク部分の外周において軸方向に案内通路を延在させ、この案内通路に沿って連続チップを案内させて成ることを特徴とする請求項1記載のスポット溶接機に供せられる溶接電極。
【請求項4】
前記案内通路は少なくとも前記シャンク部分の外周に形成した平坦溝とこの平坦溝を封鎖する封鎖リングカバ−とから構成することを特徴とする請求項1記載のスポット溶接機に供せられる溶接電極。
【請求項5】
前記冷却水通路は往路と復路とから成って、この往路の先端を前記チップ部分内に開孔させ、この開孔部分の径を往路の径より拡大することを特徴とする請求項1記載のスポット溶接機に供せられる溶接電極。
【請求項6】
前記往路の先端を斜めに切断して前記開孔を形成することを特徴とする請求項1又は5記載のスポット溶接機に供せられる溶接電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−61868(P2007−61868A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252298(P2005−252298)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000143112)株式会社向洋技研 (41)
【Fターム(参考)】