説明

スマートカードと端末装置とを結合した処理システムおよび当該システムに対応するスマートカード

【課題】アプリケーションの修正や追加が極めて容易で、端末装置を永続的に使用可能な処理システムを実現する。
【解決手段】スマートカードと端末装置とを結合したシステムは、端末装置とカードとを含み、特定の処理を制御するマスター手段と、この特定の処理を実行するためのマスター手段への要求を仲介するスレーブ手段とからなり、前記マスター手段が前記カード内に設けられると共に、前記スレーブ手段が前記端末装置内に設けられることを特徴とする。したがって、両手段の階層構造は逆転する。これにより、端末装置側は変化せずに維持され、カード側を修正することによって処理を追加したり修正することが極めて容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的な金銭処理等の多くのアクセス制御に適用可能なスマートカードと端末装置とを結合した処理システムおよび当該システムに対応するスマートカードに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートカードと端末装置とによるシステムは、現在広く使用されている。このようなシステムにおいて処理を制御する端末装置では、ある機能を実行するための要求を仲介する安全手段あるいは安全を守るカードが唯一存在する。それは、機密コードをチェックして持参人を確認するという質問を行い、持参人であることの確証を得るべく計算し、データ交換を認定する等の処理が行われる。換言すれば、端末とカードとからなるグループにおいては、端末がマスター(主)となり、カードがスレーブ(従)となる。
【0003】
この種の技術としては、ユーザーが持つマイクロプロセッサカードと端末装置とを組み合わせた処理システムが文献WO−A88 01818に記述されている。ここで、カードは、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)から構成され、そのメモリにはトークンエリアが定義される。本文献では、システムの各要素の機能とそれらの相互作用とが記述されている。この文献では、プリペイドカードに関する記載に基づき、オフライン支払モードについて記述している。ユーザーのカードと、借入の許可を認定する端末装置の内部に設けられ、郵便切手の印刷版のようなマイクロプロセッサモジュールとの間で、エンクリプト(encrypted)文字を交換する。これは、カードとのインタフェースと、キーボード、ディスプレイあるいはプリンタ等を含む端末装置のその他の部分とを制御する端末装置を指摘している。
【0004】
US−A−5,036,461には、財政機関によって発行されたスマートカードに記録されたアプリケーションルーチンを実行する端末装置が記述されている。カードが端末装置に挿入されると、手続きの保安のために端末装置がカードのメモリに書き込まれているコードを端末制御ルーチンが読み出す。読み出したコードは、端末側で実行される。しかしながら、安全な読み出しは、特に、スーパーハイウェイなどの公衆伝送路をアクセス制御するアプリケーションの場合、性能時間の点で不経済なものになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、上述した従来のシステムにおいて、処理を決定するアプリケーションプログラムあるいはルーチンプログラムは、端末装置に配備されて実行される。それは、通常、読み出し専用メモリ(ROM)に書き込まれており、書き換えができない。アプリケーションプログラムあるいはルーチンプログラムは、選択的にランダムアクセスメモリ(RAM)に書込み可能である。RAMに書き込まれた場合、その内容を修正することが可能になる。しかしながら、これは次の条件であることを前提とする。すなわち、端末装置が適当な通信回線ネットワークに接続され、新たな処理を実行する時間毎に対応するプログラムを、このネットワークを介して遠隔的に端末装置に与えるテレチャージングの実現を前提としている。
【0006】
現存システムの多くでは、端末装置とカードとを備える処理システムが特定のアプリケーションに専従しており、容易にアプリケーションを修正したり、他のアプリケーションを加えることができない。そうしたことは、端末装置を永続的に存在させることを困難とし、更には、端末装置を、スマートカードに接続されることによって得られる急速な進歩に適応させるには不経済なものになるという問題がある。
そこで本発明は、これら欠点を除去するスマートカードと端末装置とを結合した処理システムおよび当該システムに対応するスマートカードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明により提案するスマートカードと端末装置とを結合したシステムは、端末装置とカードとを含み、特定の処理を制御するマスター手段と、この特定の処理を実行するためのマスター手段への要求を仲介するスレーブ手段とからなり、前記マスター手段が前記カード内に設けられると共に、前記スレーブ手段が前記端末装置内に設けられることを特徴とする。したがって、両手段の階層構造は逆転する。これにより、端末装置側は変化せずに維持され、カード側を修正することによって処理を追加したり修正することが極めて容易になる。
【0008】
従来技術の欠点を解決する本発明によれば、アプリケーションルーチンは、現行のマイクロプロセッサカードによって実行される。これにより、もはや端末装置側からアプリケーションコードを転送する必要が無くなる。この発明では、端末装置は共通カードを利用し、基本的機能(キーボード入力、スクリーン表示およびデータ伝送等)は、カードの中のプログラムあるいはルーチンの動作によってコールされる。
【0009】
本発明は、こうしたシステムに利用されるスマートカードにも関する。このカードは、特定の処理のためのソフトウェアがロードされる少なくとも1つのメモリと、前記処理の実行を前記端末装置に伝えてスレーブ手段を制御可能にする手段とから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マスター手段をスマートカード内に設け、スレーブ手段を端末装置に設けておき、このスマートカードの制御の下で処理を実行し、端末装置で実行されないようにするので、アプリケーションの修正や追加が極めて容易になり、端末装置を永続的に使用でき、端末装置をスマートカードの急速な進歩に適応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
詳細な実施例において、本発明による端末装置は、後述のリストに余すところなく記載された範囲の機能を含む各種モジュールを組入れることができる。
アドレスTAの表示モジュール;キャラクタフォーマット(ボールド・フェイス、イタリック、アンダーライン等)、位置決め(左端、中央、右端、n行目のアドレス位置)等のモジュールによって実行される幾つかの機能が存在する。ここで、前記モジュールは、アドレスに対応した”書込み”制御を受信する。
アドレスTCのキーボードとなる入力モジュール;このモジュールは、”読み出し”制御を受信し、入力はマニュアルである必要はなく、データベースへ自動的に入力し得る。
アドレスTLの外側となる接続モジュールは、”読み出し”制御(受信時)あるいは”書込み”制御(送信時)を受信し得る。
【0012】
アドレスTMのメモリモジュールは、”読み出し”制御あるいは”書込み”制御を受信し、幾つかの機能が定義される。この機能としては、論理アドレスへの書込み、メモリエリア消去などである。
アドレスTCAMでスマートカードに接続される接続モジュールは、他のスマートカードの主メモリから来る制御信号、あるいは接続されたスマートカードに対する全ての制御信号、他のモジュールからの応答信号を受信することができる。
それら全てのモジュールはスレーブ手段となる。すなわち、以上のモジュールは、端末装置側にセットされたカード、あるいはセットされた複数のカードのいずれか一つのカードの下で制御される。
【0013】
次に、カードは、アプリケーションソフトウェアおよび他の端末装置と通信するための通信プロトコルを有する。このソフトウェアは、ROMに書き込まれているか、または読み出し/書込み可能なEPROM,E2PROMに書き込まれる。
処理は、カードの制御の下に実行されるものであり、端末装置の制御の下では為されない。カードは、処理実行のために必要な全ての制御信号を異なるモジュールと端末装置とに送信する。応答信号は次に行うべき動作を決定し、それを分析してカードに戻される。
【0014】
このように、スマートカードは、処理の主体として「マスター手段」となる。端末装置とそのモジュールとは、カードに従属する「スレーブ手段」となる。もし、1つの端末装置に複数のスマートカードが導入、あるいは接続された場合には、これら全てのカードの内、処理を開始したカードが暫定的に「マスター」となる。これは、端末のキーボードを読み出しすることによってマスターかスレーブかの動作モードを知るために行われる。キーボードによって与えられる応答から処理タイプの選択が定義され、これにより複数カードのいずれか1つがマスターを維持し、これ以外の他のカードはスレーブになる。
【0015】
例えば、処理が電子的な金銭処理EPPの時、セキュリティ・アプリケーションモジュール(SAM)カードは、その金銭処理EPPを制御する。金銭処理を行う2つEPPカードと処理を開始したSAMカードとは、端末装置に保持され、処理の種類を選択するキーボード操作を読み取る。SAMカードは、マスターモードになり、EPPカードはスレーブモードになる、EPPカードは、SAMカードからの指示があるまでその位置に置かれる。処理中、マスターカードはスレーブモードに移行でき、スレーブカードはマスターモードに移行できる。
【0016】
本発明による2つの実施例について図面を参照して説明する。図1〜4は、SAMカードによって制御される電子的な金銭処理EPPカード処理である。SAMカードには、取引人の機密情報が記憶される。取引人は、EPPカードから借り方に記入された総額の各支払額を貸し方に記入する。
図1〜4において言及されている”制御”と”応答”とに対する慣例的な記載は次の通りである。実行される機能が最初に表示され(例えば、”入力”、”初期化”など)、そして、丸括弧中にソースのアドレスと受領先とが表示される。例えば、”(TCAM1,TC)”は、ソースが第1のスマートカードに接続される”TCAM1”のアドレスを意味し、これを受領するキーボード”TC”のアドレスを意味する。角括弧中に制御あるいは応答(例えば、”総額”や”ユニット”)に関連するデータが表示される。
【0017】
図1〜4に図示される処理は、以下の操作からなる。
「端末装置およびSAMカード、EPPカードの初期化」、「SAMカードに対する支払処理要求の入力」、「EPPカードに対する支払処理要求の入力」「EPPカードの初期化」、「EPPカードの残高表示」、「総額の入力」、「総額の表示」、「取引先の受納入力」、「EPPカードの出金」、「SAMの貸方記入とEPPカードの借方記入の認証」、「EPPカードの新たな残高表示」、「端末装置側におけるSAMカードの総計記録」
【0018】
図5の場合における質問処理はEPPカードの残高読み出しである。この処理は、以下のステージからなる。
「端末装置およびEPPカードの初期化」、「残高読み出し要求の入力」、「残高表示制御」。
このように、アドレスTA,TC,TCAM1(EPPカード)によって識別された端末装置のモジュール単位で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例による金銭処理EPPの操作を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による金銭処理EPPの操作を示す図である。
【図3】本発明の一実施例による金銭処理EPPの操作を示す図である。
【図4】本発明の一実施例による金銭処理EPPの操作を示す図である。
【図5】本発明の一実施例によるEPPカードの残高読み出し処理の操作を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
EPP 金銭処理
SAM セキュリティ・アプリケーションモジュール
TA,TC,TCAM1 カードアドレス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置/カードアセンブリにおいて、
特定の処理を制御可能なマスター手段と、
前記マスター手段の要求時に動作して、この処理を実行するスレーブ手段とを備え、
前記マスター手段が前記カード内に配置されると共に、前記スレーブ手段が前記端末装置内に配置され、前記処理は前記カードの制御の下で実行され、カードは端末装置に処理の実行に必要な全ての命令を伝送し、端末装置は前記命令の各々に応じて応答信号をカードに返し、カードはこの応答信号を分析して次に行うべき動作を決定し、応答信号は、情報として、ソース、行先および実行される機能を含んでいることを特徴とする端末装置/カードアセンブリ。
【請求項2】
前記スレーブ手段は、表示スクリーン、情報捕捉手段、内部と外部とを接続する手段、および少なくとも1つのスマートカード読み取り装置を含む受動モジュールを有していることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記命令のうちの少なくとも1つは、応答信号の受領に応じてカードによって送られることを特徴とする請求項1または2に記載の端末装置/カードアセンブリ。
【請求項4】
命令は、情報として、ソース、行先および実行される機能を含んでいることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の端末装置/カードアセンブリ。
【請求項5】
前記端末装置は、ただ1つのカードに接続可能であることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の端末装置/カードアセンブリ。
【請求項6】
前記カードは、着脱可能であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の端末装置/カードアセンブリ。
【請求項7】
前記応答信号は、端末装置のモジュールによって返されることを特徴とする請求項2から6のうちのいずれか一項に記載の端末装置/カードアセンブリ。
【請求項8】
端末装置と共に動作することが意図されたカードにおいて、このカードはマスター手段を備えているので、処理がカードの制御の下で端末装置のスレーブ手段によって実行され、前記マスター手段は、端末装置に、命令の各々に応じて端末装置から応答信号を受信し、応答信号を分析し、かつ次に行うべき動作を決定する処理の実行に必要な全ての命令を伝送可能であり、応答信号は、情報として、ソース、行先および実行される機能を含んでいることを特徴とするカード。
【請求項9】
前記マスター手段は、端末装置のモジュールによって構成されるスレーブ手段を制御することが意図されていて、前記モジュールは、表示スクリーン、情報捕捉手段、内部と外部とを接続する手段および少なくとも1つのスマートカード読み取り装置を含むグループの中に含まれる受動モジュールであることを特徴とする請求項8に記載のカード。
【請求項10】
前記マスター手段は、カード自身によって実行されるアプリケーションプログラムを備えていることを特徴とする請求項8または9に記載のカード。
【請求項11】
前記命令のうちの少なくとも1つは、応答信号の受領に応じてカードによって送られることを特徴とする請求項8から10のうちのいずれか一項に記載のカード。
【請求項12】
命令は、情報として、ソース、行先および実行される機能を含んでいることを特徴とする請求項8から11のうちのいずれか一項に記載のカード。
【請求項13】
前記カードは、着脱可能であることを特徴とする請求項8から12のうちのいずれか一項に記載のカード。
【請求項14】
前記応答信号は、端末装置のモジュールによって返されることを特徴とする請求項9から13のうちのいずれか一項に記載のカード。
【請求項15】
カードと共に動作して特定の処理を実行することが意図された端末装置において、この端末装置は、カード内に配置されたマスター手段によって制御可能なスレーブ手段を備えていて、このスレーブ手段は、カードから、処理の実行に必要な命令を受信可能であり、前記端末装置は、前記命令の各々に応じて応答信号をカードに返すことが可能であり、応答信号は、情報として、ソース、行先および実行される機能を含んでいることを特徴とする端末装置。
【請求項16】
前記スレーブ手段は、表示スクリーン、情報捕捉手段、内部と外部とを接続する手段および少なくとも1つのスマートカード読み取り装置を含むグループの中に含まれる受動モジュールを備えていることを特徴とする請求項15に記載の端末装置。
【請求項17】
前記命令のうちの少なくとも1つは、応答信号の受領に応じてカードによって送られることを特徴とする請求項15または16に記載の端末装置。
【請求項18】
前記端末装置は、ただ1つのカードに接続可能であることを特徴とする請求項15から17のうちのいずれか一項に記載の端末装置。
【請求項19】
前記カードは、着脱可能であることを特徴とする請求項15から18のうちのいずれか一項に記載の端末装置。
【請求項20】
前記応答信号は、端末装置のモジュールによって返されることを特徴とする請求項16から19のうちのいずれか一項に記載の端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−276790(P2008−276790A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146243(P2008−146243)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【分割の表示】特願平7−1555の分割
【原出願日】平成7年1月9日(1995.1.9)
【出願人】(591034154)フランス テレコム (290)
【出願人】(594024774)
【Fターム(参考)】